かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「地底世界12」で検索した結果

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  • 地底世界11
    ...になった。 地底世界12
  • 地底世界10
    「若?」 誰もがしばらくのその老人――家老と呼ばれた者の話を黙って聞いていた。しかし耳慣れぬ単語の登場にカインが言葉を挟む。 「あ、はい若様の事です。王と王妃の間に生まれたご子息の事です。事件の当初、城を離れていたために難を逃れましたが、それ 以来姿を確認できていないのです」 行方不明。しかし、それは生きている可能性があるということ。同時に既に何処かで息絶えている可能性もあるということ。 「その心配はありません」 暗い方向性に目を向けたセシル達を家老が否定する。 「若はエブラーナ忍者の中でも頭一つ抜けた力を持っています。簡単にやられてしまう事はないでしょう。それに……若は一度 熱くなると止まらない性格。おそらくは両親の仇を討とうとしてるのでしょう」 そこが心配なのですが。と最後に小声でつけ加える。 実際にそのエブラーナの若こと王子が今どこでどうしているのか、果たして生き...
  • 地底世界12
    もう一つの結論、それは前述の守りとは違い攻めに関する事項であった。 それはすなわちゴルベーザの本拠地、バブイルへの攻撃を早急に開始する事。バブイルが二つの世界を結ぶなら当然、この地底にもその巨塔 は存在する。 そして、おそらくはその場所に奪われたクリスタルがある。それを奪還する事も目的の一つである。 しかし、それ以上にバブイルへ進行する事にはもう一つの重大な意味があった。前述の目的は願わくば出来ればいいのである。此方にクリスタル が残されている限りは。 地底側の弁によるとバブイルには巨大砲の開発がされているとの事。 そしてそれが完成すればすぐにでもこちらを一方的に攻撃できるような高性能長距離兵器になるという事。 シドの飛空挺援護が万全になるにはまだ時間がかかるし、例えそれがあったとしてもこちらが優勢になるという訳でもない。 巨大砲を破壊せねば事態は悪化する一方だ。それに守...
  • FF4 七章
    ...10 地底世界11 地底世界12 二節 罪の在処1 罪の在処2 罪の在処3 罪の在処4 罪の在処5 罪の在処6 罪の在処7 罪の在処8 罪の在処9 罪の在処10 罪の在処11 罪の在処12 罪の在処13 罪の在処14 罪の在処15 罪の在処16 罪の在処17 罪の在処18 罪の在処19 三節 去りゆくもの 残されるもの1 去りゆくもの 残されるもの2 去りゆくもの 残されるもの3 去りゆくもの 残されるもの4 去りゆくもの 残されるもの5 去りゆくもの 残されるもの6 去りゆくもの 残されるもの7 去りゆくもの 残されるもの8 去りゆくもの 残されるもの9 去りゆくもの 残されるもの10 去りゆくもの 残されるもの11 去りゆくもの 残されるもの12 去りゆくもの 残されるもの13 去りゆくもの 残されるもの14 去りゆくもの 残されるもの15 去りゆくもの 残さ...
  • 地底世界1
    カインが何故自分をこの島に連れてきたのかは先程のコリオとの会話では分からなかった。 しかし翌朝コリオ達の住んでいた集落を去り、飛空挺で上空へと飛ぶと、ものの数秒でその疑問は立ち消えることとなった。 むしろ着陸の際に何故気付かなかったのかと、少し前の自分に問いかけたくなる程であった。 飛空挺が離陸し、視界を地面が支配すると共に真っ先ににそれは目に入ってきた。 アガルトの町が位置するやや大きめな島の過半数を占める山岳地帯。その中でも一際目立った大きさの一山の頂上部分が 大きく穿たれていた。 否、穿たれる……という表現では少々物足りないかもしれない程であり、まるで其処には初めからそのような大穴が開いていた のではないかと思わせるほどである。 しかし、周囲に規則正しく並ぶ丘稜や山岳地帯が否が応にも以前の風景を証明するかのようであり、その大穴は周りから 浮足だっており、不気味さすら...
  • 地底世界2
    飛空挺が完全にその闇の中へと入る。空が遠ざかり、やがては周りを完全な暗闇が支配する。 どのくらいの時間その状態が続いたのだろうか。いつの間にか上空の蒼は消え去った。変わりに遥か眼下に大地が姿を現した。 恐らくはあれがセシルが慣れしんだ地上の裏と呼ぶべき地底世界なのだろう。 地底世界と認識した、その場所は段々と飛空挺との距離を狭めてきた。 よくよく目を凝らし観察すると、地底世界と呼ぶべきその場所は地上とは大きく違っていた。 焦げた茶色の地面はでこぼことしており、まるで未開の山道のようであった。そしてなによりも大地と大地を隔てるはずの 海と呼ぶものが存在せずに、変わりに灼熱の溶岩が一面を支配していた。 船など浮かべればたちまち燃えさかってしまうであろう。熱気は上空を浮かんでいるはずの飛空挺にまで伝わってきた。 はやく着陸場所をさがさねば――そう言ったのはシドであった。 この熱...
  • 地底世界9
    「……ごめんなさい」 ローザとしてはただ疑問をぶつけただけなのだろうが、結果的に二度も明るくない話題をふってしまうこととなった。 そのことを詫びているのだ。 「いえ、それよりも今は互いに協力してゴルベーザの野望を阻止すべきです!」 お互いを気づかうばかりの微妙な空気を入れ替えるべく、ヤンが喝とばかりに威勢を上げる。 「その通りです!」 それに呼応されるように円卓からも声が上げる。 「あなたは?」 見ると、一人の老人が立ち上がっていた。知らない顔であった。 「私はエブラーナの家臣、であった者です……」 その語りくちはまるで過去を回想する者のようだ。 「ではエブラーナは?」 カインも察しったのか、一つの疑問をぶつける。 エブラーナ? その言葉にはセシルも聞き覚えがあった。急いで記憶を回想するとすぐにも思い出された。 確かバロンの真南、アガルトから更に西へと向かった場...
  • 地底世界4
    「くっ……シド助けに入る事は……?」 言ってセシルは自分の言葉は無謀である事に気づいていた。数という絶対的な差で劣っている。 ましてやこの乱戦にいきなり割って入ると混乱を生むだろう、最悪両者から攻撃を食らいかねない。 「無理だな、悔しいがこの船は奴らのとは違ってこの灼熱に耐えれない」 シドが技師としての専門的な局地から否定する。 「一旦何処かへ不時着するしかない!」 そう判断し着陸できる場所はないかと二人は周囲へと目を張り巡らす。 「ねえ、あそこはどう!?」 そう言ったのはローザだ。彼女もこの状況を見極めていたらしい。 その指の指さす方向には高い石造りの壁に張り巡らされた。その壁の中にはこれまた石造りの砦が備え立っていた。 城壁と思われるその場所の入口と思われる巨大な門からは先程の鉄の兵器が続々と出撃していた。 交戦中の部隊の劣勢を覆す為の増援なのだろうか? あそこ...
  • 地底世界5
    その地底の城に辿り着くのには一苦労であった。 何故ならセシル達は思っていた以上に地底の民とゴルベーザの戦いは広がっていた。既にこの世界のあちこちで規模の違いは あれど戦いが始まっていたのだ。 エンタープライズが着陸するにはそんな戦いの渦中を突っ切るような無茶な行動を取らなければならなかった。 当然ながら流れ弾や誤射、敵と錯乱しての地底人の攻撃。その上ゴルベーザ達の方は此方の飛空挺がセシル達だと分かった のか地底人よりも優先して攻撃してくる有様であった。 そこまで長距離で無かったのが救いではあったものの、城の近くに辿り着いて着陸する頃にはエンタープライズ自体は完全にガタが きてしまっていた。 「これは再び飛び立つには修理が必要かもしれん……」 痛んだ装甲を見てシドが険しい顔をした。 「お前さんには辛い思いをさせたな」 そう言ってゆっくりと焦げた船首部分を撫でた。技師にと...
  • 地底世界6
    「!」 現れた人影は一人ではなく複数であった。そしてその集団の姿形はセシル達を驚かせる事になった。 どの者達も小柄で浅黒いを通り越した真っ黒な肌をしていた。集団の中には男と思われるものと女と思われるものの両者 がいたが、すぐには判別はつかなかった。そして男と判別されるであろう者達の頭には二本の角が生えた兜をかぶっていた。 これがこの大地に住む者達――地底人達だというのか。 「地上から来たのですね歓迎します」 驚きと戸惑いで困惑しているセシル達に向こう側から話しかけてくる。彼らの口から出たのは意外にも友好的な言葉であった。 「何故俺達を知っている?」 カインが警戒したかのような声を上げる。未知との遭遇ともいえるこの状況に対して、そう簡単に警戒心は解けないのだろう。 セシルも未だに信じてよいものか半信半疑であった。 「そう怖い顔をなさらないでください、カインさん――」 地...
  • 地底世界3
    着陸できるような場所を探し周囲を旋回していると、轟音と共にとある光景が飛び込んできた。 それと同時に上空を飛ぶ飛空挺がこのエンタープライズ以外にも飛び込んでくる。 何隻もの編隊を組んで飛ぶそれはかつてセシルの指揮していた赤い翼を彷彿させた。 しかし、それらの飛空挺にはバロンとシドが造ってきたものとは決定的な違いがあった。 編隊飛行をする全ての飛空挺の側面には巨大な砲塔が幾つも備え付けられていた。 「おのれ! ゴルベーザめ!」 それに気付いたシドが怒声を上げる。 「飛空挺を量産するは勝手だが……武装化するとはな! ましてやこのような暴挙に出るなど!」 飛空挺を武装化されていたのはダムシアンの悲劇から分かっていた事であるが、シドが実際に 見るのは初めての事なのだろう。ましてや技師として開発に関わった人物である。 怒りは相当なものであろう。 かつてのバロンの赤い翼と称された...
  • 地底世界8
    「ヤン……」 何故ここに? という疑問は口にする前に立ち消える事となった。 自分達がこの地底にやってこれたのもメテオが原因となっている。メテオが生んだ傷痕はあれだけではない。 ならばヤン達も何所かの<繋ぎ目>を使ってここまでやってきたのだろう。 「奪われたクリスタルはまだ半分です。後二つ残っています」 「それに一つはこの城にある。皆が頑張っている限りは奴らに侵入される事はないだろう」 後半はジオットが引き継いだ。 「頼もしい我ドワーフの民達が一丸となればどんな苦境すらも吹き飛ばしてやるぞ!」 ドワーフ――それが地底の民の名か。 「私だけではないのです」 だけではない。その言葉は先程のセシルの予想が正解であったということだ。 「既に地上の人々もゴルベーザと戦う為に続々と地底へと集結しています。各国も残存部隊をこちらに集め、全力で城を 死守するつもりでいるのです」 各...
  • 地底世界7
    またたく間に城へと案内されたのは、真っ先に目に入ってくる大広間を通り抜けた先にある大きな扉であった。 ここまでの道のりには複雑な順路を通ってきた。そこから察するに今招待されたこの場所は、普段王との謁見を果たすために 存在する王の間ではないであろう。そのような場所であれば大抵入口を道なりに行けば辿り着くからである。 ここまでの道案内をしてくれた地底人の男が、扉を開けて内部へと踏み込む。セシル達もそれに続く。 部屋の中には大きな円卓の机が一つ並べられていた。机を取り囲むように数えきれない程の人が着席している。 更には祭りや宴の類にしても大きすぎる円卓からすらもあぶれた人々があちこちに立ち尽くしていた。 「おお――あなたがバロンの!」 とてもではないが一目で何人いるのか到底判断がつかないその円卓の中心、そこにいる人物がセシルを見るなり声を上げた。 外見からして地底人の男である。そ...
  • 終わりの始まり14
    「…………」 その言葉を聞いてもなおセシルは黙りこんでいた。言葉が出なかった訳ではない考え込んでいたのだ。 この地上世界と地底世界は完全に遮断された別世界などではなく、どこかでつながっている世界である。そして両者間の 世界を実際に移動する事は可能なのである。 しかし、それは手放しに喜べる事ではない。セシル達が地底へ行くことが出来るのならば、ゴルベーザも例外ではないだろう。 地底世界の存在をどれくらいの人間が知っているのかは良く分からないが、其処には人――地底人とでも言うべき存在がいる。 もう誰にも犠牲になってほしくはない。より一層急ぐ理由が出てきた。 「正確には<可能>ではな<可能>になったというのが正しいのだけどね」 意思を固め、地底へと行く方法を尋ねようとしたところでコリオが再び口を開いた。 「遂最近の話だけど、世界を大きく震撼させる衝撃があっただろう?」 心辺りは...
  • 終わりの始まり13
    複雑怪奇な迷路の答えをいきなり聞かされたようだ。 「地底……? 其処にクリスタルが?」 「そうだ、この世界の四つのクリスタルはいわば表のクリスタル。ならばさしづめ地底になる四つのクリスタル は闇のクリスタルというのであろう」 今度はカインは答えた。 「闇のクリスタル?」 情報がいきなりどっと流れ込んできて軽く混乱気味である。先ほどから新しく登場する言葉に疑問符を付けること しかできない。 少し頭を整理するべきか? 否ここは黙って話を聞くべきであろう。情報を整理するのはそこからでも遅くはない。 むしろ今の言葉だけでは判断材料が少なすぎる。一つ一つの言葉を頭に留めるように聞くのが最善だろう。 「その闇のクリスタルが本当に存在するのかを今ここで証明する事は出来ない。一応僕の専門外の分野って事になってる からね。疑ってもらっても構わない」 カインと入れ替わりにコリオが口を開...
  • 罪の在処15
    ゴルベーザは去り、辺りの黒の気配は微塵も感じられなくなった。 新たに周囲を覆っていた霧もいつの間にか消えていた。霧に関してはリディアが張ったものだ。 おそらくは彼女自身が霧の展開を止めたのだろう。元々黒龍の驚異を退ける為のもの。それが なくなったという事はこの場所での戦いは終わりを迎えたと言うことだ。 ひんやりとしたクリスタルルームに穏やかな雰囲気と共に視界が戻ってきていた。 一連の喧噪が嘘のように静まりかえったその場所には、一つだけ変化があった。中央に設置された台座、 そこに本来置かれるべきである光り輝くクリスタルが消え去っていたのだ。 主役とも言えるべきものを失ったこの場所は静けさと同時に寂しさが同居しているかのようだ。 「リディアなのか」 そんな音の無い世界でヤンの驚愕の声は大きく響き渡った。 「信じられない……」 ローザも同意見のようだ。 黒龍から受けた一撃...
  • 地上を救う者達13
    視界がぼやける 見えるものがすべて白。 そういった時間が数秒あっただろうか。 段々と目の前の風景がはっきりとしたものになる 「……シル」 聞き覚えのある声がはっきりするまでの時間はわずかであった。 「おおっ! きおったかーセシル」 驚いたというよりも、半ば予想していたといった感じのリアクション。 セシルが自分を頼ると思っていたのだろうか。 「シド!」 自分の知る元気のよいシドに対して安心と信頼の笑みを返すセシル。 「大丈夫なの」 少し心配といった表情のローザが質問する。その心配はもっともだ。 シドは地底世界からセシル達を逃がすためにその身を挺した。 その時はセシルもローザもシドはその時に死んだものだと思っていた。 しかしエッジと行動を共にしファルコンで地底、ドワーフの根城へと帰還した際に見たのは、 重傷を負いながらも生還した父親同然の老技師の姿であった。 ...
  • 決戦7
    「リディアを育ててくれた幻獣界にいっただろう」 地底世界での一幕。ふと立ち寄った彼女の故郷。人間とは強く関わりを持とうとしない幻獣たちであったが、リディアが帰ってきたものだとわかると 幻獣王はその力を貸すとともにセシル達を歓迎の姿勢で迎え入れた。 宴とともに沢山の餞別を貰った。回復薬や魔道具といった実用的なものから幻獣たちのささやかな気持ちの込められた記念的なものなどさまざまな内容であった。 その中に「鼠のしっぽ」とよばれるアイテムがあった。魔力を込められた鼠の尻尾。一説によると勇気の証とも呼ばれている。 それは一見セシル達には無用の長物とすら思えた。 「アガルトにいっただろう。その尻尾ほしがる人がいたんだよ」 その話はリディアにも覚えがった。 「あの小人のおじさん」 ミスリル鉱石の発掘などで栄える小人たちの島。その小さな島の離れ小島にある一際小さな島。 アガルト地方に...
  • 終わりの始まり12
    「入るぞ」 そう言ってカインは扉を開けた。 扉の中には一般的な民家と変わらない内装の部屋一杯に所狭しといったばかりの本と黴臭い匂い、それに一人の 男が本に囲まれて座っていた。 「やあ」 セシル達二人を見ると男の方は気さくな様子で挨拶を交わしてきた。 僅かな一声ながら、先程の声主の正体である事は分かった。 縁の太く、顔と比べれると少しばかり大きすぎる眼鏡をかけ、ボサボサに伸ばしきり肩下まで到達しようとする髪に 顎には不精髭を生やしっぱなしにしているその姿は一見するとみすぼらし印象を持たせた。 「君がセシルかい。始めてだよねこうして顔を合わせるのは――」 だが、一旦口を開くとすぐさま先の様な印象は薄れた。 その男の声色は澄みやかに透き通っており、口調も外見からイメージされるような暗さや気難しさはない。 むしろ気さくな様子で誰とでも仲良くなれそうな雰囲気を醸し出している。...
  • 罪の在処10
    「教えてやろう」 どれくらいの時間が経ったか? どうすればいいと思考するときの時間は無限とすら思えた。 だが、時間としてみればそれほどの時間は経ってないだろう。 牙を刺された三人は未だに苦しんでいる。だがそれはまだ苦しむだけの命が残されているということだ。 「私がクリスタルを集める目的を」 「何故だ?」 急に口数の増えたゴルベーザに疑問の声をぶつけた。 「お前は僕たち始末するつもりだろう。だからなのか?」 「まあそんなところだ」 簡単な答えを言った後ゴルベーザは続けた。 「地底と地上の二つの世界のクリスタル。光と闇あわせて八つのクリスタル。それらが 揃う時、封印されたバブイルの塔の真の力が復活する」 バブイルの塔――ゾットと同じ、謎に包まれた機械巨塔。 「あそこは地底と地上を結ぶだけではないのか……?」 「ゾットの内部を見たであろう?」 質問に対し質問を返すゴ...
  • 月へ1
    地底に閉ざされた世界には地上と違い昼夜の概念は存在しない。 しかし、生活の規則は存在し、そこに住む人々――主にドワーフと呼ばれるものは地上で言う朝がくれば 活動を開始し、夜がくれば帰路につきゆっくりと休む。 地上から来たものにとって朝と夜をすぐに見分けるのは困難ではあるが、皆が寝静まると家や通路の 明りは最低限なものとなる。そうなってくると自然と人影は少なくなり人通りからも活気は薄れる。 空に太陽や月が存在しなくとも、雰囲気という面において朝と夜の概念は存在するのだ。 月へ2
  • エブラーナ11
    「やめて!!」 悲壮の声がセシルの声をかき消す。 「これ以上誰かがいなくなるのは嫌だよぉ……テラのお爺ちゃんも、ヤンも、シドのおじちゃんもみんなみんないなくなっちゃった……」 自分を恥じた。セシルの言葉もリディアを傷つけていた。 見るとカインも伏せ目がちになっている。セシルと同じ気持ちなのだろう。 「私はもう誰にもいなくなってほしくないよぉ……」 それ以降はえぐっえぐっと泣くだけで声にならない。 「泣くなよ」 泣きじゃくる彼女に真っ先に声をかけたのは以外にもエドワードであった。 「こんな綺麗な姉ちゃんに泣かれたんじゃあ仕方がねえな。しょうがねえ……ここは一発……手を組もうじゃねーか」 同意を求めるようにセシル達に向き直る。 「あっ…ああ……」 はっきりとしない口調で今度はセシルがカインに同意を求める。王子の急な身の代わり、調子の良さに調子を狂わされたからだ。 「俺...
  • FF4 六章
    六章 一節 変わる世界 交錯する言葉1 299 変わる世界 交錯する言葉2 299 変わる世界 交錯する言葉3 299 変わる世界 交錯する言葉4 299 変わる世界 交錯する言葉5 299 変わる世界 交錯する言葉6 299 変わる世界 交錯する言葉7 299 変わる世界 交錯する言葉8 299 変わる世界 交錯する言葉9 299 変わる世界 交錯する言葉10 変わる世界 交錯する言葉11 変わる世界 交錯する言葉12 変わる世界 交錯する言葉13 変わる世界 交錯する言葉14 変わる世界 交錯する言葉15 変わる世界 交錯する言葉16 変わる世界 交錯する言葉17 変わる世界 交錯する言葉18 変わる世界 交錯する言葉19 変わる世界 交錯する言葉20 変わる世界 交錯する言葉21 変わる世界 交錯する言葉22 変わる世界 交錯する言葉23 変わる世界...
  • 変わる世界 交錯する言葉12
    ゾットの塔――全身機械仕掛けのその場所が長き沈黙を 破り、随分と久しい喧噪をあげる。 内部にいるガードロボットは定例化した円滑な動きを止め急速に動きを早め、 一つの場所へと集う。 飛空挺カタパルト。長らく使われていなかった――正確にはついこの間までは 使われたこともなかったのかもしれないその場所が急速に動きを帯び始めた。 「待ちなカイン」 その慌ただしい場所の中でも一際目立つ存在。全身黒衣の様な鎧を纏う者に 対して、これまた異彩を放つと言ってもいい女性が呼び止める。 「何用だ? バルバリシア」 自分の名を呼ばれたカインは、さほど気に留めぬ様子で聞き返す。 「何所へ行くつもりだい?」 「それだけか」 バルバリシアと呼ばれた女性の問いに、振り借りもせずに答える。 「見ての通りだ。どうやら奴らが用件を満たしたらしいのでな……こちらに招...
  • 明かされる想い 目覚める力1
    月までの航海は穏やかなものであった。 海での旅と違って日は見えなかった為、どれだけの日数が経過しているか は正確には把握できなかったが。 しかし、そこから先は一転して激しい道中となった。 月世界の様相はセシル達のいた青き星とは全くの別物であった。 踏みしめる大地はどこまでも荒れ地が続き、草木一本すらない。おまけに地面の所々には クレーターと呼ぶべき窪みが散見し、歩行を妨げた。 空に日は昇らず、朝と夜の変化もない。 そんな今までとは違う困難な状況に更なる追い打ちをかけたのが、月の世界に生息する 魔物達の襲来であった。 セシル達のいた星に比べても、月の厳しい環境を生きるその物達は地上や地底の魔物達に 比べても桁違いの生命力と力を持っていた。 加えて知能も卓越しており、セシル達を外部からの侵入者だと判断するやいなや、群れをなして 襲いかかってきたのだ。 月の魔物達の思...
  • 絆12
    ルビカンテは強きものとの正面からの戦いを生き甲斐としているだけあって実力は確かなものであった。 エッジがいくら力を増したとはいえ、正面から立ち向かっていってもその一撃の一つ一つをあっさりと 交わしていった。 無論回避するだけで手いっぱいというわけではなかった。エッジに向かって本気の一撃を下さないのも 戦いを長引かせ楽しんでいるのだろう。 しかし、だからと言って外野からの攻撃に対して無頓着なわけではない。回避行動を続けるルビカンテの隙を ついてローザが弓による援護射撃、リディアが冷気魔法での一撃を狙う。しかしルビカンテはみすみす攻撃を喰らっては くれない。 攻撃がくると察知すると、身にまとったマントで身体を包み。冷気魔法の直撃を受けとめる。 「効かない!?」 リディアが驚きの声を上げる。あのマントには炎をつかさどる四天王の弱点である、冷気魔法に耐えうる防御力があるのだろう...
  • 罪の在処19
    「この事はあちらの世界でも話題になったわ」 ここからは、リディアが最初に言ったその後の出来事になるのだろう。 「あの津波には私自身も巻き込まれた、だけど流れ着いた先は地上ではなかった。幻獣界だったの」 どうりでリディアは世界中の何処を巡ってもいない訳だ。 「なんで其処にたどり着けたのかは私にも分からない。幻獣王様を呼んだ召還士が現れた事、結果的にそれが王様の暴走を招いてしまった事は 幻獣界でも深刻な問題として扱われたの」 「ちょっとした騒ぎになったって事?」 「ちっとどころじゃなかった。もの凄い騒ぎで事の発端となった人物――私の処理については大きく議論される事になったわ。危険だからこの世界に 閉じこめておこうとか、記憶を全て消して地上世界に返すべきだとか。どれも厳しいものだった」 向こうの世界を統べる王の力を意のままに操ったのだ。幻獣達がリディアを危険視するのも無理はない...
  • 去りゆくもの 残されるもの1
    リディアとの再会、そして彼女の口から語られたゴルベーザの現状は刻一刻と進みつつ ある作戦をより後押しする事になった。 ただでさえ城内のクリスタルは奪われてしまったのだ。もはや迷っている時間は無い。 躊躇する気持ちもなくなり、こちらが有利だと思えるような情報も掴んでいる。 バブイル奇襲作戦はゴルベーザを退けた後、それほど間をおくことなくして実行に 移されることになった。 作戦の具体例として、まず残存の戦車部隊がバブイルを攻撃する。クリスタルを奪還されて 以降、ドワーフ城内を攻撃するゴルベーザ部隊は日に日に少なくなっていた。 これはクリスタルを奪還するという第一目標を達したからであろう。ゴルベーザ達は何よりクリスタル を目標にしていた。手段を選ばないとはいえ目的を果たしたのならその場所には全く興味が無くなる。 それが彼らの考え方なのは、地上の時から大体想像がついた。 とに...
  • 地上を救う者達12
    セシルの言葉が戦いの狼煙であった。 ジオットを始めとしたドワーフ戦車隊。シドが用意した飛空艇部隊。 それぞれが攻撃を開始した 「これが最後なんじゃ! これが終わればもう戦車はいらん。だからどんどんうちまくれ!」 「そうじゃこっちも武器にはせんわい!」 地底と地上二つの世界の技術の枠がバブイルの巨人の進行を食い止める。 すでに戦闘が始まって小一時間は立っているだろうか 巨大な敵を相手にここまで戦闘を継続するシド達には頭が下がる思いだ。 だがそんな気持ちとは裏腹に巨人がダメージを受けた様子はなかった 「巨人がひるんでいる!?」 最初に驚くのはローザ。 確実に巨人の接近を拒む攻撃の動きが鈍くなっているのに気付いたのだ。 「時間稼ぎにしかならんと思っていたが――」 最初から地上の攻撃を当てにしていなかったと思われるフースーヤもこの変化には驚いている。 「今の内に内部に入...
  • 月へ2
    薄闇の中動く人影が一つ。地上でいう夜という時間においてひっそりと行動を開始する者がいた…… 「待ってくれカイン!」 騒ぎを起こさぬよう、それでいて相手に聞こえるような声で影を引きとめる声が一つ。 「一体どうしたというんだ」 無視を決め込む影に対し声を強めていく。 「しつこいぞセシル」 「今ならまだ引き返せる!」 「言いたいことはそれだけか」 「カイン!」 平行線を辿る二人の会話に割り込む女性の声が一つ。 「お願い……正気に戻って。あなたはまた操られているだけなのよ!」 「違うな」 何を言われても動じない淡々とした声。 「おれは正気に戻った」 全てを突き放すような冷徹な声は地底のマグマすらも凍りつかせるほどに冷たい。 「これが本来の俺だ。今までの俺の方がおかしかったのだ。セシル、お前がパラディンになったようにな」 「カイン! クリスタルを返すんだ!」 視線を...
  • エブラーナ3
    エブラーナに来ていた。 飛空挺も無事に修理できたのでこのまま地底に帰りドワーフの城に戻っても良かった。 だが、巨大砲は無事に破壊したもののクリスタルを取り返してはいない。加えてヤンやシドは犠牲になった。 結果的には目前に迫った危機は回避したものの、総合的に見れば状況は不利になってるとまではいかないものの 好転しているとは言い難い状況であった。 このまま安全策として拠点に帰り、防御を固めつつ作戦を練る。そういう決断を下すのも決して間違いでは 無かっただろう。 しかし、今のセシルには戻ってヤンやシド達の事を含め今の状況を報告する事は嫌であった。 多少危険であっても再びバブイルへと舞い戻りクリスタルを奪還する目的を果たしたかったのだ。 とはいってもその為の手段を講じる必要はあった。飛空挺を修理し、地底に戻ることは出来たとしても警戒を 強めたバブイルに再び正面からはいる事など不...
  • 月へ6
    竜の口より生まれしもの 天高く舞い上がり 闇と光をかかげ 眠りの地に更なる約束を持たらさん 月は果てしなき光に包まれ 母なる大地に大いなる恵みと 慈悲を与えん ミシディアに広まる言葉。 地底に伝わる伝説。 伝説の剣に刻まれた文字。 三種に共通したそれが何を意味するのかは今まで誰も知らなかった。 今現在も知る者はいない。 だが今目の前に現実として再現されようとしているのだ。 先にあるのは何なのか―― それはこれから始まる運命の氷解が教えてくれる―― 月へ7
  • 三節 山間12
    「バロンへ向かう途中リバイアサンに襲われて……」 重い口を開いて出てきたのはその一言だけであった。 「何と!……死におったのか!」 さすがに驚きを隠せず声を荒げる。体はわなわなと震えていた。 「いや……きっと……きっと生きてますよ」 その言葉がまずあり得ない事だというのは自分でも分かっていた。 しかし、例え絶望的な可能性でもセシルは皆が生きていると信じたかった。 例えどんなに空しい行為だとしても…… 「ところでテラ。あなたは何故この山に?」 もうこの話を続けたくはないと思い、少し気がかりであった事を訪ねる。 ゴルベーザを倒すのならバロンに向かったのだとばかり思っていたのだが、 何故、バロンより遙か離れたこの場所にいるのだろう。 ひょっとするとこれもまたミシディアの長老の言うように偶然ではなく 運命が引き合った結果なのだろうか。 「実は...
  • 一節 航海12
    「無事か!」 「私は大丈夫だ! それよりも・・!」  駆け寄ると、ギルバートが胸を抑えたまま苦しげに踞っていた。 「ここにいたのかギルバート! 君の方は、」   「ゲホゴホゴホッ、ガハッゴハッゴホッ……!」 「!?」  咳き込む口を抑えるギルバートの手から、赤い色がにじみ出ていた。 「ギルバート! 怪我をしたのか!?」 「ぼ、僕のことは気にするな! もう一度、来……ゴホ、ゲホゲホッ!」  苦しみながら彼が指し示す方を見ると、海神は再び尾を振り回し始めていた。 「セシル殿! 彼は私が!」  ヤンがギルバートの背に手を添えながら、リヴァイアサンを目で示す。セシルは頷き、 剣を抜いて船の先端に走り出た。 「船長! 僕の身体を支えていてくれ!」 「お、おう!」  彼の声の強さに気圧され、船長は少しだけ躊躇した後に舵を離すと、その野太い腕で...
  • 二節 試練12
    ピタリ、と押さえつける手が止まった。  セシルは途切れそうな意識を総動員して水からはい出す。息を切らしながら、やがて周囲の 異変に気づき彼は顔を上げた。  黒魔導士と、先ほどまでは姿の見えなかった厳格な面持ちの老人が対峙していた。 「掟を忘れたのか」 「・・・」 「掟を忘れたのか、ジェシーよ」 「・・いいえ、長老様」 「それならば、すぐにその者を元の姿に戻してさしあげよ」  しばしうなだれていた魔導士は、やがて消え入りそうな声で詠唱を始めた。セシルの頭に 再び焼け付くような熱が訪れ、次の瞬間、めまいとともに彼は暗黒騎士の姿へと戻っていた。  ジェシー、と呼ばれたその魔導士は、意外にも女性だった。なにしろ女の黒魔導士というのは 滅多にいないものである。そもそも黒魔法というのは、一般に男性の方が多くの素質を秘めている もので、同じように白魔導...
  • 変わる世界 交錯する言葉7
    「何者だ……」 見る限り、老人の出で立ちは明らかにこの国のものではない。白く全身を覆う程の大きさのローブの様な 物を羽織り、顔には両目をぴったりと隠すようにガラス片を装着している。 それも、ただ異文化たるこの国の人間ではないと納得して、他国からの来訪者として見ても、異質な存在 であるように見える事は確かである。 「わしはゴルベーザ様のブレインことルゲイエだよ……親密にぃ~博士と呼んでもらって結構じゃよ」 「ゴルベーザだと」 ひとり不気味に微笑み自己紹介する老人――ルゲイエを目前に王は一人ごちた。 その名前に王は聞き覚えがある。 他国との国交が殆ど無いとは言っても、世界の情勢を把握しなければ、一国は崩壊する。それは現王である 彼にも重々承知であった。 その為、王は各地に密偵として忍びを紛れ込ませ、世界情勢を大方把握していたのだ。 仕入れた情報に...
  • 絆2
    再び侵入したバブイルの塔は恐ろしいほど守りが手薄であった。 地上から侵入したのだ。地底と地上の両方にそびえるこの塔において、侵入した現在場所はおそらく上層部分なのであろう。 おそらくは地底での騒動で守りを下の層へ強めたのだろう。たいした――否、まったくといっていいほどの交戦をせずに 順当にバブイルの道中は進んでいた。 敵もまさかこんなところから侵入してくるとは思っていなかったのだろう。 更に驚いたのはエッジである。エッジの忍者としての腕前は王子であること、各地の放浪で腕をあげていたこともあるだろうが かなりのものであった。 決して口だけではないその力で塔内部の罠や障害物をくぐりぬけた事もあった。 全てが順調にいっているようにさえ思えた。 「これならクリスタルも早く奪還できるかもね」 そんな安心と確信に満ちた台詞がリディアから零れた。 「もちろんルビカンテもだぜ」 エ...
  • 穿つ流星12
    「気にするな――何もかも私自身で決めて行ったことなのだ。結果がどうであろうと他人である誰かが文句をいう事 も咎める事も出来ぬ」 「長老は――あなたの無事を祈っていたのに……?」 「ふ……心配症なあやつらしい」 この場に及んで、テラの言葉は穏やかであった 「だが……人の今生は自分で決めるもの。始まりが誰かに授けられたものとしても、終わりは自分で幕を下ろすもの……」 「…………」 「これも憎しみに捉われて戦った報いかもしれん。私も奴も本質的には同じであった。似たような者がぶつかったとしても力を 擦り減らすだけなのかもしれん。だが、どんな結果であろうとも私はやることをやった。満足感はあるし後悔する気もおこらん。 正直、アンナの敵を取れなかったのは本当は悔しい……後はお前達に託すしかないようだ」 「そんな事をいうな!」 シドが言った。 「しっかりしろ...
  • FF5 61 飛竜12
    やがて人影は四人の前に完全に姿をさらした。 腰に鞭を巻く、30前後の女。 「何者だ!」 バッツが剣を突きつけながら叫んだ。が、別段気にした風もなく、というよりまったく意に介せず、 蛇のような視線を四人にめぐらせる。 その視線が、レナを捉え、口の端を持ち上げニタリと笑った。 「ヒッヒッヒ、何か獲物が掛かるかと思えば、タイクーンのお姫様じゃないか」 「貴様っ・・」 『獲物』という言葉に逆上したファリスが腰の剣を抜きはなち、突進する。が、 「ふん、馬鹿だね!」 女は急にしゃがみ込み、縄らしきものを引っ張った。するとファリスの足元の土が音を立てて 勢いよく下界の森へ落ちていった。 「ファリス!!」 「落ちたよー、ヒッヒ・・・何!」 しかしファリスは落ちなかった。硬い地層に剣を突き刺し、落下を免れていた。そして器用に、す いすいとあっさり上...
  • 罪の在処12
    視界の黒が一瞬のうちに白に入れ替わる。 「これは……」 辺りの空気を支配する雪のような白は次第にその勢力を増し、前を見ることすら困難なほどになった。 この感覚には見覚えがある。 「霧」 セシルが旅立ち最初に立ち寄った場所。ミストへと続く場所。長い旅の始まりの場所。 しかし何故、急にこのような事態が? 霧の先からかすかに見えるゴルベーザの姿にも動揺がうかがえる。 つまりこの状況はゴルベーザにとっても誤算だという事だ。 お互い何がおこったのかすぐには理解できずに立ち尽くしていると、霧が一つに集まり始めた。 黒き波動が黒龍を生みだしたように、白き霧も今何かの形を生み出そうとしている。 輪郭を描いたそれは見覚えのあるものだった。 「これは霧の龍」 そんなはずはない。頭によぎった可能性を否定した。 霧の龍――過程がどうであれ結果的にセシルはあのミストへと続く洞窟で霧の龍を傷...
  • 二節 剛の王国12
    再びなだれ込んでくるバロン軍。 ガーゴイルの突然の奇襲に浮き足立っていたモンク達に、彼らは容赦無く襲いかかる。 もはや戦況は絶望的だった。 ファブールのモンク僧は方々でバロンの魔物に打ち負かされている。 「やむをえん!クリスタルルームまで下がろう!」 圧倒的に不利な状況を察したヤンが、空になっている玉座の後ろにある扉を指差す。 「急げ!中へ!」 ギルバートもモンク僧を促すと、部屋の奥へと走り出す。 と、その時、背中に一本の流れ矢が突き刺さった。 呻き、そのまま前のめりに倒れるギルバート。 「ギルバート!」 セシルが振りかえり、彼のもとへ一目散に駆ける。 そしてギルバートにのしかかり、頭を握りつぶそうと手を伸ばすサハギンの右腕を切り落とし、首をはねた。 傷を押さえるギルバートを担ぎ、クリスタルルームへと急ぐ。背中には矢が刺さったままだ。 ...
  • 変わる世界 交錯する言葉31
    ゾットの塔最上階。その中の最深部に属するこの場所に彼女は縛られていた。 <ご苦労だったな下がって良いぞ> ゴルベーザ労いの言葉を受けたバルバリシアは、少し様子を見てくると言ってその場所へと赴いた。 「元気かい……?」 たった数分振りの再開、それにこのような状況に於いてはひどく場違いな声掛けだ。 「バルバリシアといったかしら?」 彼女に返答する声はバルバリシアと瓜二つであった。 「ああそうだ……よく覚えてくれてたねローザ」 最初彼女と話した時は驚いた。初見の印象で彼女は自分にそっくりなのであった。 魔物と人間という相容れぬ存在であるのだが顔の印象はそっくりであるのだ……双子のような瓜二つ とまではいかなくとも、初見ならば見違えてしまうかもしれない。 それに声色――これは外見以上に聞き間違えてしまう程に似ていた。 「私を殺すつもりなの?」 「...
  • 一節 刻む足跡12
    「僕に……責任があるんだ……」 セシルは言った。 「そうですか」 副長は平坦な口調で言葉を受け止めた。 彼は、セシルとカイン。二人の親交を深く理解していた。 しかし、其処に介入する「三人目」である人物については知らなかった。知りようがなかった。 それを理解してくれたのか、彼は深く追求をしてくる事はなかった。 「わかりました……カインさんの事をよろしく頼みます……」 深々とお礼をする姿はまるで親が子供の事を御願いしているかのようだ。 「ところで――」 そんな考えがよぎったのでつい訪ねてしまった。 否、今の様な関係だからこそ、カインの事をもっと詳しく知りたいと思っていたのかもしれない。 「カインの両親はどんな人だったんだ……?」 既に死別している事は知っていた。だけど、どんな人かは聞いた事がなかった。 孤児である自分が聞くのは、厚かましい...
  • 四節 これから12
    近衛兵団に所属するその兵士達の主な任は王の護衛である。 国家の中心人物の信頼を全に受けるこの兵士達の選定には厳重な試験が有り、陸軍の中でも屈指の 実力者を中心の組織されている。 単純に剣を交えるのならセシルやカインにも引けを取らない者達ばかりであろう。 その近衛兵が四人。状況は向こうに傾いている。 だが、そんな中でセシルとヤンの表情は比較的穏やかである。 「手伝ってもらえるか、セシル殿?」 「勿論だよ……」 「では行くぞ!」 「くっ……」 その余裕な有り様に少しばかりたじろぎつつも近衛兵の一人は剣を払ってきた。 「!」 だが剣を振るった後、その兵士は驚愕した。 確かに捕らえたと思ったヤンが忽然と姿を消していたからだ。 満身の剣の一撃は石で舗装された道を砕き地面を露出させるだけにとどまった。 慌てて視線をあちこちに巡らした兵士には更...
  • 三節 Two of us12
     どくん、と胸の奥が震えた。 「・・いいかローザ。お前さんのそんな有様を見て一番悲しむのは、わしでもなければ お前さん自身でもないんじゃぞ」 「・・・」 「赤い翼の・・わしらのセシルが惚れた女は、こんなくだらない人間か?」 「・・セシル・・・・」 「立ち上がるんじゃ。お前さんを失って、セシルがどんな顔をすると思う。  あやつを慰める役目なんぞ、わしはまっぴらごめんじゃぞ!!」  ぐい、とシドがローザの身体を引き上げる。幽閉され、いっそう細身のかかった肢体は 急な反動にふらついたが、その瞳にはいまや毅然とした輝きが宿っていた。  シドは満足げにニヤリと笑った。 「信じるんじゃローザ。ここにいてはいかん。信じてセシルを追え!」 「えぇ・・そうね、シド。私たちのセシルを信じるわ!」 「素直に" 私の "と言わんかい」 ...
  • 絆18
    セシル達と無事合流したカインとエッジはその目的通り格納庫へと向かっていた。 「これは」 たどり着いたその場所は機械塔の内部にしてはわずかながらの明りに照らされるだけの 場所であり、薄暗いその場所に慣れるには多少の時間を有した。 「敵の飛空艇かっ!」 飛び込んできた光景に最初に口を開いたのはセシルだ。 「それも見たこともない形……おそらくは新型だろうね」 シドに教えられたのか、はたまた元飛空艇隊の隊長であったからか、冷静に分析した結果を口にする。 「どうやら、俺の読みは当たっていたようだな」 「それじゃ早速こいつを使って脱出だな!」 カインとエッジも勝ち誇ったような口調で続ける。 「でも敵の飛空艇なんだよ!」 強気な態度の男性陣に待ったとばかりに口を挟むのはリディア 「都合が良すぎると思わない?」 「そうよ罠じゃないかしら……」 ローザもリディアの考えに同意する...
  • 一節 モンク僧12
    セシルは影の方に目をやる、影の正体は男であった。歳はセシルと同じくらい、もう少し若いだろうか。 男は片方の手から血を流し、もう片方の手でそちらを押さえていた。側には輝きを失ったナイフが転がっていた。 一体誰があの状況で攻撃できたのだ。ヤンもギルバートも驚いた顔をしている。 セシルは辺りを見回す。するとローザと目が合った。 「ローザ、まさか君が……」 「ふふ、そうよ」 そう言って右手の弓を見せ、笑う。 セシルはバロンにいた頃の事を思い出した。ローザは弓の腕に関してはセシル以上の力を持っていた。 現にセシルが幼少の頃、バロンで弓の訓練をした時に飛び入りで参加したローザは一番の成績を残し、回りを驚かせたものだった。 「ちっ! しくじちまった」 男が舌打ちをする。 「その勲章はバロンの!」 セシルは男の腕の勲章に目をやる。 「くっ……」 「一...
  • 変わる世界 交錯する言葉1
    エブラーナ。 おおよそ、バロンやトロイアといった北の大国からは随分と離れた 島一つから形成されるその国は他とは一線を画す、ある一つの特色があった。 そもそも、他国から幾分もの遠方のこの地に於いて、一つのまとまりである国家 が出来上がるのには少しの遅れが生ずるものであった。 長年、各地で少数勢力が、日夜紛争を繰り広げ、日進月歩のスピードで国は形成されていったのである。 理由のとして挙げられる事には前述の通り、他国に比べ、隣国との距離が非常に離れている事が あり、もう一つはエブラーナ国の周りの海流にある。 この島国を取り巻く海流は非常に激しく、他国が航海によっての外交的接触を果たす事は不可能 と断言できたのだ。 現実的にも、エブラーナ国が他国との関係をもったのも、約百年程前の事となるだろうか、 バロンの飛空挺という天駆ける船による、大空から介入であっ...
  • 去りゆくもの 残されるもの10
    「急がねば!」 一部始終を見終わらない内にヤンはルゲイエから受け取った鍵束を持ち走り出した。 「先にゆく――」 簡潔にそれだけ言ってヤンは姿を消した。 巨大砲を止めねば、地底も地上の国々と同じように甚大な被害をだしてしまう。それだけは断固として阻止をしたいのだろう。 セシルも同じ意見ではあるが、ましてや国を焼かれたことのあるヤンならばなおもその想いは強いのであろう。 本来ならばすぐにでもヤンの後を追うべきであるのだが、まだセシルにはやることがあった。 「…………」 「ローザ」 がっくりと膝をつき顔を項垂れている彼女にセシルは優しく声をかける。 彼女にとっては狂気にとりつかれ今この場所から飛び降りた人物は昔からの恩師なのである。 数多くの非人道的な行為やゴルベーザへの加担があってもその事実は変わらない。 だからこそ、余計に今の状況はつらいのであろう。良心との板挟みにあ...
  • FF5 12 洞窟探検2
    洞窟の中は狭く、薄暗い。さらに天然の迷路のように道が、壁がうねっている。 「薄気味悪いのう」 ガラフが辺りを警戒しながら呟く。 レナは無言だ。しかしナイフを手に握り締めたまま離さない。 「うわー、湿っぽいな、なんか」 バッツは旅慣れてることもあって余裕の顔だ。 しばらく進むと左手に泉が見えた。 「天然の水が湧いてるの…?」 あたり一面の綺麗で透き通った泉。 レナは少し感動を覚える。 ここ最近ずっと不安を抱えてた彼女にとってそれは文字通りのオアシスだった。 不気味な洞窟への警戒感も少しだけ和らぐ。 「ちょっと一休みするか…」 バッツが疲れた顔で言う。と言うよりこの言葉を言ってる時にはすでに彼は休んでいた。 3人の中で肉体的に一番しんどかったのが彼であろう。精神的には充分、大丈夫なのだが。 洞窟に入って早くも休憩である。 ...
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