かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「変わる世界 交錯する言葉2」で検索した結果

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  • FF4 六章
    六章 一節 変わる世界 交錯する言葉1 299 変わる世界 交錯する言葉2 299 変わる世界 交錯する言葉3 299 変わる世界 交錯する言葉4 299 変わる世界 交錯する言葉5 299 変わる世界 交錯する言葉6 299 変わる世界 交錯する言葉7 299 変わる世界 交錯する言葉8 299 変わる世界 交錯する言葉9 299 変わる世界 交錯する言葉10 変わる世界 交錯する言葉11 変わる世界 交錯する言葉12 変わる世界 交錯する言葉13 変わる世界 交錯する言葉14 変わる世界 交錯する言葉15 変わる世界 交錯する言葉16 変わる世界 交錯する言葉17 変わる世界 交錯する言葉18 変わる世界 交錯する言葉19 変わる世界 交錯する言葉2変わる世界 交錯する言葉2変わる世界 交錯する言葉2変わる世界 交錯する言葉2変わる世界...
  • 変わる世界 交錯する言葉23
    聖域――それは彼女にとって唯一無地の存在であった。 それは誰にも汚させてはならない。親しい仲間であってもだ。 その時がくれば、彼女の相手を見る目は「好意」から「憎しみ」に変わるであろう。 事実、彼女はその聖域を崩さぬように常に気を払っていた。親や仲間達との付き合いも それだけにしても、ひょっとすると上辺を繕っていたのかもしれない―おそらくそうであろう。 あらゆるものを犠牲にして、あらゆるものを捨てて彼女は聖域を死守してきた……つもりだった。 崩壊は意外なところからやってきた。 セシル――カイン 彼女の聖域を構成するのに於いて欠かす事の出来ない二者――それは友人の域を超えた親友であり 誰を差し置いてでも優先するべき二人。勿論自分を差し置いてでもだ。 今まで彼女は自分の気持ちすらひた隠しにしてきたように振舞っていた。今思えば、嘘を吐くの...
  • 変わる世界 交錯する言葉2
    それのルーツは魔法と同一とものとされており、知性を研ぎ澄まし、魔力を爆発させるだけなのである。 ただ、鎖国状態同然であった一つの島に於いて亜流進化を遂げただけであるといっても間違いでは ないだろう。 どちらかといえば、白魔法的な性格よりも、黒魔法的な性格を持つ忍術であるが、原典たるそれにくら べるとやや特殊といえる部位が存在する。 黒魔法に比べると忍術は隠密行動時や、密集戦での働きを考慮して、単価の威力や魔法の効果範囲を 考える以上に、確実に相手へと命中させる事、無駄に味方を巻き込まないような性能を保持している。 また、黒魔法側に比べ各詠唱時間を極端にカットしている事もあり、術者は戦士とのコンビネーションを 取る事より、打撃を織り交ぜ、ヒットアンドアウェイを中心とした単独戦術に適しているのである。 近年、その存在を知った魔術師の一部からは中途半端であり、...
  • 変わる世界 交錯する言葉25
    日々、監禁生活が長くなる内に彼女も色々考えた。 残されたのは三組の二人。自分とセシル。自分とカイン。そしてセシルとカイン。 TWO OF US――残酷な時間により崩れ去ってしまった過去――結末なんて全て知っていたのかもしれない自分のアイデンティティー。 しかし決して消えはしない。 過去という事実は否定は出来ても、完全に消滅させる事はできない。そして誰もが持つその過去の「事実」は 「経験」として個人に刻まれる。 その道筋を常に振り返り、自分の軌道を常に忘れなければ、人は完全に変わってしまうことなどない。 いつかきっと、何度でも、どんな絶望が訪れても、立ち直れる。 本当の「強さ」とは、ただ今すぐにでも自分の力を誇示する事ではない。 己の実力をいかに客観視できるか、そして、常に今の場所を向上できるか、また、その力や才能を維持する事が出来るかだ。 今の...
  • 変わる世界 交錯する言葉22
    ファブールの邂逅以降、敵味方としてそれぞれ向き合う機会は何度もあった。 しかし、その時にはカインはそっけなく上からの通達を述べると颯爽と引き返して いくだけであっただろう。 <話すことはそれだけだ――> バロンの上空では一言だけであっただろう。 だが今、この瞬間カインはセシルに対し、久し振りと言ったのだ。 「ああ……そうだね…カイン」 実際にセシル本人も、<今>のカインには充分に接しているとは思っていなかった。 これが、事実上、カインとはファブール以降との再会になる―― カインは何を考えているのか? 何故そんな事をする? 戸惑いは尽きない時もあった。 考える時間も何度もあっただろう…… そもそも他人は他人。いくら血肉を分け合った程の兄弟や、揺り籠から墓場まで苦楽を 共にする程の親愛なる友、人生に多大な影響を与えるほどの恩師――いかに素晴...
  • 変わる世界 交錯する言葉21
    駆ける足音と共にセシルの脳裏を巡るものはただ一つしかない。 過去、現在、そして未来――それもそう遠くないもの。 その内容には思い出したくもない程の苦しい時もあったし、いつまでも心の内に留めて おきたい位の至福の瞬間もあった。 どれもが大切な時間。どれもが消せない時間……どれもが戻せない時間。 そして…反芻される全ての思い出は振り返っても振り返っても、何処にでも彼はいた。 そう――「彼女」も―― いつ間にか追尾しているはずのガードロボットの猛攻は止んでいた。 どうやら「彼」の目的からしても此処でセシルを始末する事は「予定」にはないのだろう。 見れば、随分と遠くまで来たらしい。 迷路のような通路を見渡せども、テラ達の姿は何所にもない。 「無事であればいいが……」 思わず一人ごちた。セシルにとってテラ達は大切な仲間であり、常に頼りにして...
  • 変わる世界 交錯する言葉28
    「デルタアターク」 反射された魔法が対象へと向かう。 「散れ! ダメージを分散させろ」 あくまで冷静を貫いたまま、テラは後ろ二人へと指示を出す。 「はい!」 「おう!」 すっかり取り残された感のあった二人であったが、急な事態にも迅速に対応していた。 「よし……それでいい。受け取れ、聞こえているか?」 ヒソヒ草を取り出し、シドとヤンに投げ、問いかける。 ギルバートの手渡した物を利用するのは、いまだ気がひけたのだが、さっさと物事を終わらせたい一心がテラの 執着心を揺るぎさせていた。 「奴らのデルタアタックを打ち破る。いいか……まずはマグをねらう」 「どいつじゃ!?」 「奴らの身の口上を聞いとらんかったのか? まあいい……長女じゃ、あの大柄の」 「わかりました」 ヤンが言った。 「デルタアタックというのは自らにリフレクの呪文を使う。...
  • 変わる世界 交錯する言葉27
    「とにかく大丈夫じゃ! 先を急ぐぞ」 何度この言葉をいっただろう。 それだけ言って、テラはまた率先して先へと進む。 焦りにより歩幅を速める最中、どこからともなく笑い声が漏れた。 だがそれは、年配者達のやりとりを微笑ましく見守るような笑いではなく、まるで こちらを嘲うかのような薄笑いであった。 「誰だ!」 テラは瞬時にそれが悪意ある者の声であると断定した。 先を急ごうと思う焦りと敵を前に気が立っている自分の早計な判断であったかと思ったが、 振り向くとヤンも今の声をよからぬ者と認識したのか、戦闘の構えをとっている。 「そんなに怒るなっての……!」 「そうそう……私達がわざわざ出向いてやったのよ」 聞くと。声は一つではなかった。 「のう姉じゃ?」 声の一つ――幼い子供の様に聞こえる声が言った。 「クリスタルは私等でいただく! 我ら姉妹の...
  • 変わる世界 交錯する言葉20
    ゾットはその機械的な外観と同じく、内部の様相や、構造も機械的であった。 幾多もの階層を登ろうが、同じような通路で構成され、景色は無機質な外壁から 代わり映えすることはなかった。 延々と自分が同じ場所を繰り返して歩いているのではないか? そんな疑問すらも 覚えてしまう程である。 そんな迷宮のような場所を進む中でもセシルの心は整然としていた。 ――全てを信じたといえば嘘になる。 疑問があったかと聞かれるとうなずくしかないと思う。 だが、己の中になる確信はそれらを雑念として処理してしまう程の確固たる強さであった。 仲間たちもセシルの覚悟を大なり小なりに感じ取ってくれたのだろうか……このまま先へ 進むことに対しても特に異を唱えはしなかった――勿論、周囲の警戒を怠ることはしなかったが。 ただ。テラに関しては、一刻も早くにゴルベーザと相まみえたいのだろうか、...
  • 変わる世界 交錯する言葉26
    額からだらりと汗が流れる。視界がぼんやりと滲み、足がふらつく。 最近何度も見舞われている症状だ。 口ではいくらでも強気な言動は出来るが、体は正直だ。 自分の体なのだ。自覚しないわけはない。 もはやこの体は―― だが…ここで倒れる事など、決してあってはならぬ。自分にはどうしても為さねば ならぬ事がある。 残された時間はもはや僅かなのだ、残り僅かなこの灯火の一欠けらでも多くを奴にぶつけて やらねばならない。 塔の中枢部へと進むにつれ、その感情はますます高ぶりを見せ、自然と歩幅も大きくなっていく。 「!」 瞬時に体へと激痛が走り、テラは声にならない呻きを漏らした。 「テラ殿! 大丈夫ですか?」 気の利くモンク僧はすぐにでもテラを気遣った。 「心配するなヤン――ご老体の我儘じゃよ。無視してくれ」 とてもでないが歳だけのせいにするには...
  • 変わる世界 交錯する言葉24
    あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。まだ自分は生きていた。 誰にも侵されない、自壊することなど有り得ない、そう信じていたものが打ち砕かれてから… もしかすると、あの時ゴルベーザの一撃をくらいこうやって拘束されることすらも、自分から望んだ のかもしれない。 それぐらい、聖域が壊れた瞬間の自分は取り乱していたのだろう。 捕らわれた後、彼女はすぐさま、今自分がいる所まで連れてこられた。 最低限の明かりだけの、闇に包まれたかのような無機質な部屋。ここに彼女はずっと閉じ込められている。 自分を此処まで連れてきた張本人――ゴルベーザ達が自分を何に使おうとしているのかは最初分らなかった。 ましてや、自分の信ずる聖域側の人物…であったカインの真意など知りようがなかったのだ…そう最初のうちは… 始めはあまりの衝撃の為、自棄になっており茫然と時間が過ぎていくのを...
  • 変わる世界 交錯する言葉29
    「テラ殿、助かりましたよ。あなたの提案がなければ今頃我々は……」 「本当だな。今回ばかりは感謝せねば」 繰り出される感謝の言葉。だが、それは老魔道士に聞こえる事はあったが胸に響く事はなかった。 「そうか……」 小さくそれだけ言ったテラはまたしても、ゆっくりと歩きだす。 「おいおい! そっけないぞ!」 あまり無関心なテラの腕をシドが引き止める 「――――」 瞬間、彼は言葉を失った。テラの腕は酷く痩せこけていた。それだけではなく皮膚もまるで枯れ木のような 色になっており、常に震えていた。 「離せ……」 これはどうしたのだ? いつものシドならそう聞けただろうか? おそらく出来たであろう。 だが、今の鬼気迫るテラを見てシドは無言を貫き通すしかなかった。 「どうしましたか……」 ただならぬ気配を感じたのか、ヤンも謙遜とした口調で訪ねてくる。...
  • 変わる世界 交錯する言葉17
    「おうい……もうすぐじゃぞ!!」 少し間をおいて、更に割り込む声がもう一つ。 「見ろ、あれがそうらしい」 セシル、ヤン、テラ。三者共に会話を取りやめ、一斉にシドの元へ駆け寄る。 飛空挺の舵を片手に指さす先には人外めいた素材の外壁の円形物が遥か雲の上に伸びていた。 「…………」 高度数十メートル。今現在、飛空挺の飛んでいるこの場所においてさえ、最上階が見渡せないその高さは一同の言葉を失わせるには 充分すぎる程の材料であった。 「バブイルの塔……あれ以外にもこれ程の塔があったとは」 「バブイル?」 「ああ……知らないのか、エブラーナ国のど真ん中。遥か天を貫く程のドでかい塔があるんじゃ。あまりに異型めいたそれは長らく謎の 存在として、時に畏怖の対象、時に新興の対象にされたりしとる。、あれにそっくりだ……わしもあのあたりを一度飛空挺で航空した際 にし...
  • 変わる世界 交錯する言葉7
    「何者だ……」 見る限り、老人の出で立ちは明らかにこの国のものではない。白く全身を覆う程の大きさのローブの様な 物を羽織り、顔には両目をぴったりと隠すようにガラス片を装着している。 それも、ただ異文化たるこの国の人間ではないと納得して、他国からの来訪者として見ても、異質な存在 であるように見える事は確かである。 「わしはゴルベーザ様のブレインことルゲイエだよ……親密にぃ~博士と呼んでもらって結構じゃよ」 「ゴルベーザだと」 ひとり不気味に微笑み自己紹介する老人――ルゲイエを目前に王は一人ごちた。 その名前に王は聞き覚えがある。 他国との国交が殆ど無いとは言っても、世界の情勢を把握しなければ、一国は崩壊する。それは現王である 彼にも重々承知であった。 その為、王は各地に密偵として忍びを紛れ込ませ、世界情勢を大方把握していたのだ。 仕入れた情報に...
  • 変わる世界 交錯する言葉1
    エブラーナ。 おおよそ、バロンやトロイアといった北の大国からは随分と離れた 島一つから形成されるその国は他とは一線を画す、ある一つの特色があった。 そもそも、他国から幾分もの遠方のこの地に於いて、一つのまとまりである国家 が出来上がるのには少しの遅れが生ずるものであった。 長年、各地で少数勢力が、日夜紛争を繰り広げ、日進月歩のスピードで国は形成されていったのである。 理由のとして挙げられる事には前述の通り、他国に比べ、隣国との距離が非常に離れている事が あり、もう一つはエブラーナ国の周りの海流にある。 この島国を取り巻く海流は非常に激しく、他国が航海によっての外交的接触を果たす事は不可能 と断言できたのだ。 現実的にも、エブラーナ国が他国との関係をもったのも、約百年程前の事となるだろうか、 バロンの飛空挺という天駆ける船による、大空から介入であっ...
  • 変わる世界 交錯する言葉12
    ゾットの塔――全身機械仕掛けのその場所が長き沈黙を 破り、随分と久しい喧噪をあげる。 内部にいるガードロボットは定例化した円滑な動きを止め急速に動きを早め、 一つの場所へと集う。 飛空挺カタパルト。長らく使われていなかった――正確にはついこの間までは 使われたこともなかったのかもしれないその場所が急速に動きを帯び始めた。 「待ちなカイン」 その慌ただしい場所の中でも一際目立つ存在。全身黒衣の様な鎧を纏う者に 対して、これまた異彩を放つと言ってもいい女性が呼び止める。 「何用だ? バルバリシア」 自分の名を呼ばれたカインは、さほど気に留めぬ様子で聞き返す。 「何所へ行くつもりだい?」 「それだけか」 バルバリシアと呼ばれた女性の問いに、振り借りもせずに答える。 「見ての通りだ。どうやら奴らが用件を満たしたらしいのでな……こちらに招...
  • 変わる世界 交錯する言葉31
    ゾットの塔最上階。その中の最深部に属するこの場所に彼女は縛られていた。 <ご苦労だったな下がって良いぞ> ゴルベーザ労いの言葉を受けたバルバリシアは、少し様子を見てくると言ってその場所へと赴いた。 「元気かい……?」 たった数分振りの再開、それにこのような状況に於いてはひどく場違いな声掛けだ。 「バルバリシアといったかしら?」 彼女に返答する声はバルバリシアと瓜二つであった。 「ああそうだ……よく覚えてくれてたねローザ」 最初彼女と話した時は驚いた。初見の印象で彼女は自分にそっくりなのであった。 魔物と人間という相容れぬ存在であるのだが顔の印象はそっくりであるのだ……双子のような瓜二つ とまではいかなくとも、初見ならば見違えてしまうかもしれない。 それに声色――これは外見以上に聞き間違えてしまう程に似ていた。 「私を殺すつもりなの?」 「...
  • 変わる世界 交錯する言葉8
    「いっ……一体何が目的なのだ……」 これまで冷静さを保ち続けていた王ではあったが、ルゲイエの口から発せられる言葉とそこから滲み出る 狂気じみた気を感じ取り、段々と押され気味になっていた。 「この国にはクリスタルはないぞ……?」 「クリスタルですか。確かにそれは重要ですな。でも……」 「…………」 「他にも重要なものがあるんですよねぇ……折角集めた試金石も生かす<場所>ってのが必要ですしね。 それにわしもいい加減、地上の空気には飽きてきてねの、どうせなら地下深くとか……天高く――と言った場所 に行ってみたいって願望もあるからな……」 「もういい――」 ケタケタ笑いながら続く講釈を王は最後まで聞いていなかった。それどころか自らの語気でそれを打ち消した。 「兎にも角にもだ! みすみす乗り込んできた者を放っておくわけにはいかん! ただで帰られるとは思って...
  • 変わる世界 交錯する言葉3
    エブラーナは島の中央に位置する城が中心となり、その周りに散在するように、各集落が存在している。 とりわけ、国家の中心部と言えるエブラーナ城は国家の大半の人口が生活しており、王を頭領とした 忍術を使う者――忍者と呼ばれる存在で構成されたエブラーナ軍が組織されている。 建国からまだ浅い年月しか経っていない国は国を統一したジェラルダイン家による一族世襲制により 当主が決められている。 そしてその現当主。つまりは、この国を統治する者には一つの悩み種があった。 「エドワードのやつめ……」 現エブラーナ王。彼は自分を苦しめる元凶たる者の名を呟き、玉座へと腰を下ろす。 「あやつはまた何処ぞやをふらつきおって! 自覚という者はあるのかっ……!」 「まあまあ、落ち着いてください」 一人愚痴をごちる王をすぐ側にいる女性がいなす。 「そうはいってもお前、少しは国の次を...
  • 変わる世界 交錯する言葉19
    疑問が確信に変わったのは、カタパルトフロアを抜け、何部通路までたどり着いた時であった。 未知ともいえる機械類で構成された壁が幾重にも連なり、迷路のような構造をなしている塔内部。 これなら待ち伏せされてようが、大多数を相手にしなくて良いか? だが……通路の構造次第では 挟みうちの危険が――等とこれから始まるであろう戦いの状況判断を頭に張り巡らせていた。 だが――そこにやってきたガードロボットは僅か一機だけであった、それも見るところ迎撃用の装備等 は到底持っていそうにない――そのガードロボットから発せられたが… 「なんのつもりだ?」 ガードロボットに、正確にはそこから発せられたカインの声に、真っ先にテラが言う。 「私達を罠にでもはめるつもりだと思っていたのだが……」 思った以上に穏便な向こうの歓迎に、此方の推論を打ち明け尋ねる。 「ふ……今はまだそ...
  • 変わる世界 交錯する言葉6
    「グゥゥーー」 刀は大臣の腹部へと勢い良く刺さる。 「え……?」 突如の奇行とも取れる王の行動を見て、王妃は少し震えた声を出す。しかし、その声は次第に別の事への 怯えへと変化する。 「どういう事?」 「やはりな」 二人の視線に注がれた大臣は呻きをあげ崩れ落ち動かなくなった。それは普通であった。しかし、大臣の体 からは血の一滴すら上げていない。 「人ではないの……?」 その疑問に答えたかのように大臣であったものが、再び動き出した。瞬時に王妃の元に飛び上かかろうとする。 「危ない!」 王は咄嗟に王妃を庇うように大臣から変貌した魔物に立ちはだかる。瞬き一つの時間で腰の忍刀をもう一つ 取り出す。忍者は他国の騎士達と違い、一太刀と盾を用いて戦うのでない。常に小振りの忍刀を二つ携帯 して、それで戦うのだ。これは二刀流と呼ばれ、忍術や投擲と同じく、忍者...
  • 変わる世界 交錯する言葉5
    「ひっ!」 大臣は身じろいだ。 「よくぞそこまでの罵倒が出るなっ! いくら放蕩な輩とは言え、我が息子! 戯れ言はそこまでにして もらおうか! 下がれぇ!!」 「はいぃぃ……」 王の逆鱗に触れた大臣は逃げるように扉へと手をかけようとした。 「待て」 「何か……」 まだあるのかといった様子の大臣は恐る恐る王へと振り返る。 「お前は誰だ?」 「は?」 「誰だと言っている」 「大臣です」 間が抜けた様子で問い返す。 「嘘を付け」 繰り出される王の言葉は最前、怒りを露わにした時とは違い、絶対零度の吹雪の様に鋭く冷たい。 そんな調子で淡々と繰り出される言葉は露骨な怒りの声以上に、人間には耐えられないものであろう。 「ですから……」 「もういい」 否、この時の王の言葉は見知った仲の者――人間に向ける言葉としてはあまりに気が無い。...
  • 変わる世界 交錯する言葉9
    「ぐっ」 「どうした!」 そんな中、突如王妃がその場に倒れ込んだ。 「……おいっ」 慌てて駆け寄ると、王妃は呻きを上げつつ嘔吐している。無理も無いだろう。国の統一後もしばらく続いた 内乱などを初め、男であり、武人たる自分は幾多もの戦場へと赴いた。当然ながら、命の奪い合いと消える さまにも必然的に遭遇しているし、今日、目前で起こった事の様な光景にも何度か直面してきた。 だが、そんな経験など微塵にも存在しない彼女にはこの状況はもはや耐えられないのであろう。 「駄目ですよぉ~言っときますが降参だなんて甘い考えはナシですよ。勿論、彼女だけ助けろとかいうよう な展開も許しません。わしが望むのは最低最悪のオチなんじゃ――」 「それくらいにしておけ」 一人暴走するルゲイエをとめたその声は扉の向こう――部下達の抵抗の跡から聞こえてきた。 「ああ……これは、ル...
  • 変わる世界 交錯する言葉4
    エドワード・ジェラルダイン。自分を含めエッジと呼んでいる自分の息子を、彼は本気で困り者だと 思ってはいなかった。妻の言うとおり、時間が経てば、いずれはやって来る事なのだし、息子が王になること に反対意見などは全く、心では安心しているはずなのだ。 だが、決して普段の素行が理想的だと言うわけでは無い為、無駄な心配をしているだけなのだ。一国の王とは いえ、彼とて親としての心配といった感情は多少なりとも持ち合わせている。 「あやつが王になるのも、そう遠くないのかもしれんな」 王は妻にだけ話すといった感じで言った。最も、今この王の間には自分と王妃の二人だけしかいないのだが。 「どういう意味ですか?」 不思議と言った感じで王妃は聞き返す。 「うむ……」 「失礼します!」 夫婦の穏やかな会話を打ち切ったのはやや乱暴なドア音であった。 「大臣か」 「誠に...
  • 変わる世界 交錯する言葉18
    「約束通り来てくれたか……嬉しいかぎりだ……」 正直驚いた。それが率直な感想であろうか。 罠が仕掛けてある事はほぼ間違いないと思っていたし、そうでなければ相手も総戦力を用いて こちらに襲い掛かってくるものであるだろう。そう、セシル達四人の誰もが思っていた。 なので、飛空挺をゾットのカタパルトに着艦する事にさえも十分すぎる警戒を払っていたし、 実際に着艦した後も、待ち伏せの危険もあると思い、常に周囲の警戒をおこたわることなく進むこと にしていた。 「おかしい……」 誰かが最初に疑問を発した。ヤンであっただろうか。 「うむ確かに」 「何を考えておる」 しだいに、あがる同調の声。 (てっきり僕らを待ち伏せしているものとばかり……) セシルも心で呟く。自分達はローザを人質にとられている為、向こうの案内で態々敵の本拠地とも 呼べる場所にやってき...
  • 変わる世界 交錯する言葉30
    「それで……ローザは?」 「ああ……言う通りにしといたよ。でもいいのか……ゴルベーザ様?」 ゴルベーザ――現在の自分にとって従うべき対象である者の前でも、彼女の言動はいつもとは 変わらぬぶっきらぼうな口調を貫き通している。最も様付けする事は欠かさないのだが。 「どうした?」 「いや……ゴルベーザ様? あのままローザを始末するんですか?」 「承知の上なのだろう? お前もカインも?」 「…………」 ゴルベーザの命令は彼女にとっては絶対である。勿論彼女もそれに反抗するつもりはないし、不満も 持った事などない。今までもこれからも…… 「あの女の安否など私にとってはどうでもよいクリスタルさえ手に入ればな……そっちの方はどうだ?」 「……ああ、私の方から手下を差し向けたよ。優秀だから首尾よくやってくれるさ」 メーガス三姉妹。風の四天王である自分の片腕。こ...
  • 変わる世界 交錯する言葉13
    カタパルトから引き返す際。バルバリシアは考える―― 「何故こうも気に掛ける?」 それは自問であった。 自分はルビカンテを始めとした<四天王>と呼ばれるもの、今までにも幾度もの争いや災いに加担し、 人間という存在も飽きるほど見てきていた。その記憶の中の大半の人間は脅え逃げまとい、中には命乞い をする無力なもののイメージであった 魔物と呼ばれる中でもトップクラスの実力と知恵を兼ね備える、彼女にとって人間は特にこれといった 力を持たない無力かつ、見下すべき存在であり、無関心であるべき存在であった。 なのに何故? 「ようぉ~バルバリシアではないかぁ~」 疑問が声になる瞬間、通路前から聞こえてきた声がそれをかき消す。 「ル……ルゲイエ。どうしたの任務の方は?」 「あ~それはのうーもう十分に用事を済ませたからの。後はルビカンテ様に任せておけばいいと...
  • 変わる世界 交錯する言葉14
    ――あのカインという男はある一人の女性の為に此処にいる―― 当然ながら、カインはゴルベーザによる術をかけられている。それが原因でゴルベーザに従っている。 これは間違いない。 だが、あの男が操られた理由。何か心の奥に付け込まれる要因があっての事であろう。 力への欲求。妬み。劣等感の排除。優越感の保持。それはどれも、誰もが誰かに対し多かれ少なかれもっており その一部、若しくは全てが肥大化すればするほど、ゴルベーザには見透かされ、付け込まれる。 そこまで肥大化するには何か大きな理由が特定の誰か、又は自分に存在しているのであろう。 そしてカインには――カインが此処にやってきた際、一人の女性を連れたって、正確にはゴルベーザが 捕虜として一緒に連れてきた女性がいたのだ。詳しい事がバルバリシアもよく知らない。その女性は 今、塔内部でも厳重な警備網が敷かれているブ...
  • 変わる世界 交錯する言葉15
    幾多ものハプニングに見舞われつつも、多くの助けがありつつも無事にダークエルフを退け磁力の洞窟から セシル達は帰還した。 だが帰還の後、休む間もなく夜が明けた。そして未だ朝日も昇らぬ程の早朝、カイン達が再び飛空挺でやっ てきたのだ。 <ローザの命はそのクリスタルと交換だ> 忘れもしない友――まだそう呼ぶ事を<彼>は許してくれるのだろうか?――否、愚問であろう。 セシルは脳裏によぎった考えを即座に否定した。その関係を取り戻す。<彼>と<彼女>と誰でもない <自分自身>三人のだ。三人の二人でなく、三人全てのだ。二度目のバロンからの旅立ちの時に決心 した。セシルの大きな目的の内の一つ。その為に今ここにいるのだ。 (カインは俺についてこいと言った。今のあいつが何を考えているのかは分かる……分かっているつもりだ。 だから僕にはあいつがこのまま俺達に罠...
  • 変わる世界 交錯する言葉10
    「ちょ……待てっ! 待ってくだされ!」 慌ててルゲイエが横槍を挟む。 「それはどういう事ですかね?」 「言ったとおりだ。私は正々堂々とした勝負が好きだ」 「奴らにチャンスを与えるというのですか……」 「不服か?」 「それは、折角最悪の展開になっていたというのにのぉ……惜しい」 「残念だが、お前とは趣味が会わぬな。一方的な抑制などつまらぬ事この上無い。戦いとはお互い全力を 出してこそのものだからな」 そこまで言って再び王へと向き直り―― 「幸い、この国にも相当な手練れがまだのこっているようなのでな……もし、貴殿が勝てば、我々は退こう。 勝てばこの国は我々がいただく。どうだ?」 王は静かに立ち上り、王妃へと手を差し出す。王妃も静かにその手を取る。顔色はいぜんに悪いままだが、 大分落ち着いてはいるようだ。そしてそのまま肩を抱え、後ろ側へと数歩歩...
  • 変わる世界 交錯する言葉11
    「受けて立とう」 「それでこそだ!」 王の脳裏には様々な者の面影が浮かんでは消えていた。親愛なる部下達、いつも――そして今も自分を後ろで 支えている最愛なる王妃。そして―― 「エッジ―」 何故、その名が出たのかは彼にも分からなかった。そしてその声は誰にも聞こえなかった。 「その手負いでは戦えまい。回復してやろう!」 言うとルビカンテは白魔法を唱える。先程負った傷の痛みが引いていく。 「では……」 間髪いれず、ルビカンテが言う。 王も黙って頷く。準備万全という意味だ。 「いくぞ」 戦いの火ぶたが切られた。 <あやつが王になるのも、そう遠くないのかもしれんな> そんな中、王はいつか言った自分の言葉と形容する事の出来ない息子の顔が頭に浮かんでいた。
  • 変わる世界 交錯する言葉16
    「ふん、どちらにしろ好都合だわい!」 ふいに二人の間に一つの声が割り込んだ。 「いずれ、ゴルベーザのやつには直接此方からしかけてやろうと思っていたところだ。手間がはぶけてよかったわ!」 「テラ……」 彼もまたヤンと同じくゴルベーザを恨む者――愛娘を最悪の形で奪われた一端を担いだ――その怒りはヤンのような国を 愛する形ではなくたった一人小さな存在のためにある。 ……それゆえに根はとても深い。 「ふん、ギルバートがあのザマだからな……私があの男のぶんまでアンナの怒りをぶつけてやらねば……」 磁力の洞窟からの帰還の後、ギルバートに対しては少し心境の変化があったようだ。 以前は「ギルバート」とその名を呼ぶことすらしなかったし、彼に関係する事であるのなら、すぐさま敵意をむきだしたり 無関心を決め込むのが常であった。事実ヒソヒ草の時も、ギルバートの名が出た瞬間に...
  • 変わる世界 交錯する言葉32
    「今までの私では駄目だった。だけど今なら言えるわ! どんなに遅かろうが、どんな状況だろうが言わなければ駄目! 本当の……」 「でもあんたはどこにも行けない……行くことが出来ない!」 揺らぐことも曇ることもなさそうなローザの言葉に対してバルバリシアは語気を荒める。何故そうなったのかは自分でも 良く分からない。だが、焦燥にかられているのは間違い無く自分だ。 「分ってるわよそんな事……でも以前の私とは違うのよ」 「カインと言ったかな……奴は此方に付いたようだが?」 バルバリシアは紛れもない事実を突き付ける。否定する事が出来ないだろう。 「そうね……でも彼は他人」 「大切な人じゃなかったのかい!?」 質問をはぐらかされたような気分がしてバルバリシアは語気を荒める。実際は平静さを保っている彼女に対して――否定も肯定も しないセオリー外の態度を取る彼女にどう...
  • 二節 試練26
     静まり返った街路を、一人の少女が走り抜ける。いや、少女という呼称は相応しくないかも しれない。長い髪が走り流れる横顔は、美しくも、どこか硝子のように儚く、それでいて人を惹き つけてやまない、すっかり成熟を遂げた女性のそれであった。だが今、彼女の横顔は溢れ出る涙で 濡れていた。  涙の理由は彼女にも分からなかった。交錯する思いが胸の内でぶつかり合い、弾け、尖った 欠片となって不安定な心に突き刺さった。  いっとき、彼女は振り向き、もうとうに見えなくなった墓地の方向を見やる。それなのに、未だ 悲しそうな視線の名残がまとわりついているようで、それが彼女をまた夜道に追い立てる。  ────お前とて、変わらねばならぬのだ────  遠く、どこかで犬が切なげに吠える声が轟いていた。  セシルが館を出てまもなくのこと。 「………長...
  • 終わりの始まり2
    「失礼します」 結論を出し横になった体を起こそうとした瞬間、部屋の外から入室の合図を告げる声が聞こえた。 (ローザか?) 扉越しからでも曇ることなく聞こえる澄み切った声は間違い無く女性の者であった。 (違うな……) 即座に自分の第一案を否定した。声の色はまだあどけなさが残りきっていた。 「あ……お目覚めになられましたか!」 声主の少女――セシルの部屋を任された幼さの残るメイドは入室と共に驚きの声を上げた。 「失礼しました! 返事も待たずに勝手に入ってしまって……でも良かったです」 最後の方は敬語から安堵の息を感じさせる言葉になっていた。 「もうこのままずっと起きてこないものかと思いました……」 そう言って彼女は瞳に涙を浮かべた。 「私の様な者がセシル様の心配をするなんて失礼かもしれませんが……」 「そんな事ないよ……」 従者という身寄りから来るのか、慌てふためく...
  • 終わりの始まり13
    複雑怪奇な迷路の答えをいきなり聞かされたようだ。 「地底……? 其処にクリスタルが?」 「そうだ、この世界の四つのクリスタルはいわば表のクリスタル。ならばさしづめ地底になる四つのクリスタル は闇のクリスタルというのであろう」 今度はカインは答えた。 「闇のクリスタル?」 情報がいきなりどっと流れ込んできて軽く混乱気味である。先ほどから新しく登場する言葉に疑問符を付けること しかできない。 少し頭を整理するべきか? 否ここは黙って話を聞くべきであろう。情報を整理するのはそこからでも遅くはない。 むしろ今の言葉だけでは判断材料が少なすぎる。一つ一つの言葉を頭に留めるように聞くのが最善だろう。 「その闇のクリスタルが本当に存在するのかを今ここで証明する事は出来ない。一応僕の専門外の分野って事になってる からね。疑ってもらっても構わない」 カインと入れ替わりにコリオが口を開...
  • 罪の在処18
    「でもあの時の私には一つだけ凄い力があった。それは怒りと憎しみ……」 リディアはセシルを見た。 「セシルには守ってもらった。だから私は一緒について行く事にした。でも……やっぱり時々思い出したのミストが燃えさかる光景を…… それでやっぱり憎しみの心を思い出したの。表では許そうと思っても、裏の心では憎しみを捨てきれずにいた」 「ミストか……やはりあの幼子だったのだな」 その言葉はカインにも響いたようだ。 「許してくれと言うつもりはない。俺はセシルと違ってあの後もゴルベーザに付き従ったのだからな……」 何か言わないとカインも気が済まないのか。謝罪の言葉を述べた。 「いいの」 それだけ言って彼女は再び本題へと戻った。 「それでゴルベーザがローザお姉ちゃんをさらっていった時も当然の用にゴルベーザを憎んだの、そしてその想いは焦りを生んだ……」 もはや誰も何も言わなかった。 「全...
  • 月へ6
    竜の口より生まれしもの 天高く舞い上がり 闇と光をかかげ 眠りの地に更なる約束を持たらさん 月は果てしなき光に包まれ 母なる大地に大いなる恵みと 慈悲を与えん ミシディアに広まる言葉。 地底に伝わる伝説。 伝説の剣に刻まれた文字。 三種に共通したそれが何を意味するのかは今まで誰も知らなかった。 今現在も知る者はいない。 だが今目の前に現実として再現されようとしているのだ。 先にあるのは何なのか―― それはこれから始まる運命の氷解が教えてくれる―― 月へ7
  • FF5 41 漂流
    さっきの戦いから1、2時間が経ち、辺りは暗くなり、海は鮮やかな青から漆黒の闇のように変わっていた。 主を失った船はただその波の流れに身を委ねるしかなかった。 「ファリスは……」 「ふむ。今は、そっとして置いてやるのが良いじゃろう…」 バッツはシルドラを紹介するファリスの生き生きとした顔を思い出していた。 もし自分があんな状況になったら?自分も良き『相棒』がいる。 ボコを待たせっぱなしにしている事を後悔し、反省し、何事もないよう祈るしかなかった。 ファリスはただ黙って俯いていた。自分の『兄弟』同然のシルドラが目の前で、いなくなった。 波に飲み込まれてゆくシルドラの悲しそうな瞳をファリスはただ見ているしかなかった。 「ファリス…」 レナはそんなファリスを前にしてどう声をかけてやればいいか分からなかった。 そんな時、ふとファリスのある言葉を...
  • 二節 再開の調べ7
    「知っていたのですか?」 セシルは、見通すかのような態度に驚き質問する。 「これでも一国を統治する責任を背負った身。無知である事を許される立場では ありません」 「では……僕たちをここに呼んだのは……」 「それは大臣の独断です。あなた達は私達に敵対する者とは違うと思ったからでしょう。 ですが、我々も彼女とは同意見です」 「そしてあなた方がクリスタルを欲するにも、今までの国を襲ったもの達とは違う理由がある事も わかっています」 「そうですか……」 八人の神官達によって次々に語り継がれる言葉にセシルはほっと息をなで下ろした。 国に来て囲まれた時はどうなる事かと思ったのだが、トロイアの神官達の対応は思ったよりも 円滑に進んだの嬉しい誤算であった。 「ですが、クリスタルは奪われた事に変わりはありません」 そうセシルが思っている間にも話は続いて...
  • 五節 忠誠と野心25
    「では!」 そこから先に発せられる言葉に、嫌な予感を感じ取ってか、声色には自然と力が入る。 「いえ……処分はされていないんですよ」 自分よりも一回りは大きいであろうヤンに迫られ、青年は少しおどけつつ、彼の抱く懸念を否定した。 「この先、少し行った先に……閉じこめられています」 「そうか、では……」 歩き始めようとしたヤンに、未だに立ちつくしているテラが、目に入った。 「行きましょう……」 その様子にそれ以上の促しは困難であった。 「ああ……」 そう言って、僅かに後ろにいる魔導士達を見ると、静かに歩き出した。 「あの!」 その一人が呼び止める。 「いくら、変わろうともテラ様はテラ様です……私達はあなたにどんな事情があろうと、 あなたを信じます。それが、自分達が間違えていても……」 「…………」 テラは無言であった。 それは彼らにしてみれば精一杯の励ましではあ...
  • 地底世界8
    「ヤン……」 何故ここに? という疑問は口にする前に立ち消える事となった。 自分達がこの地底にやってこれたのもメテオが原因となっている。メテオが生んだ傷痕はあれだけではない。 ならばヤン達も何所かの<繋ぎ目>を使ってここまでやってきたのだろう。 「奪われたクリスタルはまだ半分です。後二つ残っています」 「それに一つはこの城にある。皆が頑張っている限りは奴らに侵入される事はないだろう」 後半はジオットが引き継いだ。 「頼もしい我ドワーフの民達が一丸となればどんな苦境すらも吹き飛ばしてやるぞ!」 ドワーフ――それが地底の民の名か。 「私だけではないのです」 だけではない。その言葉は先程のセシルの予想が正解であったということだ。 「既に地上の人々もゴルベーザと戦う為に続々と地底へと集結しています。各国も残存部隊をこちらに集め、全力で城を 死守するつもりでいるのです」 各...
  • 去りゆくもの 残されるもの8
    「絶望したのだよ……魔法というものにねぇ……」 しかし続く言葉は最前までの狂気の陰りを充分に感じられるものであった。 「白魔法とは傷ついた人を癒す魔法である。だが、所詮はそれだけなのだよ……ほんの少しの痛みしか和らげる事の出来ぬ 気休め程度の魔法。失われてしまったものを完全に再生することなど到底かなわない、出来そこないで不完全なものなんだよ」 答えとは程遠いルゲイエの絶望の叫びが辺りに響き渡った。 「私は可能性を感じていたのだ! 魔法に! 人が新たなる段階に進めるのではないかと!! だから探し求めたのだよ!!! 魔法を使うことで、新しい世界がやってくるのではないか? 全ての人間に幸せを!! 人の誰もが理想通りに生きることが できる万能な世界。素晴らしき世界がやってくるはずだ。 しかし、魔法には限界があった。所詮は昔に生まれた古臭い概念 でしかなかったよ!!」 演説気味に喋...
  • FF5 32 風の神殿6
    「お父様!!」 「なに、親父さんの声か!」 そう、レナの父、タイクーン王の声。しかし、声だけ。姿が見えない。 「お父様!!何処にいるの!!」 レナは必死で父を探そうと辺りを見回すが当然姿は見当たらない。 「…レ…ナ……」 やがてクリスタルがあった祭壇に王の姿が浮かび上がった。 「!?」 ファリスはその王の姿を見て、一瞬動揺する。何処かで見覚えがあるような、運命的な何かを感じたようだった。 「お父様!生きてたのね…」 レナは安堵の表情を浮かべる。やっと、捜し求めた父が見つかったのだから… しかし、残酷にもその安息は長く続かない。 「よく聞くのだ。お前達は、選ばれし4人の戦士…4つの心が宿る者」 「え?…お父様!どういうことですか?」 レナは奇妙に感じた。父がこちらの問いかけに答えようとはせず、一方的に話し始めたことを。 「風のクリス...
  • ff6 - 05 dreams
     夢を見た。  色あざやかな宝玉、高い飾り天井。物物しい武具の並ぶ、絢爛豪華な装飾が施された一室。 「魔導の力を持つ娘か…」  道化のような姿の男が真紅の口許を裂くように笑ませている。 「操りの輪で、私の思うが侭…、ひいては、世界すら手中だ」  含み笑いは嵩じて、やがて高笑いが辺りに響き渡る。  瞳孔は虚空の星を映し、鋭角的な白い顎は仰け反る。  風景が変わる。 「すべて焼き尽くしてやる」  そこは赤い光で滲んでいる。  滲んでいるのは、熱のせいだ。  陽炎に、世界は滲んでいるように見えるのだ。  この腕から生まれる炎。炎。炎。 「すべて焼き尽くしてやる!あっはっは…」  世界は赤い。  風景が変わる。 「我がガストラ帝国は魔導の力を復活させた」  重鎮といった風情の軍人が会する場で、最も豪奢な衣装で身を...
  • SubStory 2 nao chora mais(2)
    「わがままばっかり言うんじゃないわよ!」 「勝手に決めるなよ!」 口論を再開したふたりを、テラとヤンが引き離す。それでも双子の興奮は覚めず、足をばたつかせて言い争いを続けた。 「セシルさんだって、やりたくてやったわけじゃないのはわかってるでしょ!!」 「やりたくないなら、やらなきゃ良かったじゃんか!」 「そんな虫のいいことできるわけないでしょ!!」 「じゃあ何のためにパラディンになったんだよ!!」 宙に抱え上げられながら、双子の喧嘩はなおも続く。 彼らなりに事実を受け止めようともがく子供らに、かけられる言葉をセシルは見つけだせなかった。 「わたしたち、セシルさんのお手伝いをするために来たんでしょ!?  邪魔しに来たんじゃないでしょ!」 ヤンの腕から解き放たれ、ポロムが床に飛び降りる。テラの戒めを振り切って、パロムがそれを迎え撃つ。 「そんなこ...
  • 地底世界7
    またたく間に城へと案内されたのは、真っ先に目に入ってくる大広間を通り抜けた先にある大きな扉であった。 ここまでの道のりには複雑な順路を通ってきた。そこから察するに今招待されたこの場所は、普段王との謁見を果たすために 存在する王の間ではないであろう。そのような場所であれば大抵入口を道なりに行けば辿り着くからである。 ここまでの道案内をしてくれた地底人の男が、扉を開けて内部へと踏み込む。セシル達もそれに続く。 部屋の中には大きな円卓の机が一つ並べられていた。机を取り囲むように数えきれない程の人が着席している。 更には祭りや宴の類にしても大きすぎる円卓からすらもあぶれた人々があちこちに立ち尽くしていた。 「おお――あなたがバロンの!」 とてもではないが一目で何人いるのか到底判断がつかないその円卓の中心、そこにいる人物がセシルを見るなり声を上げた。 外見からして地底人の男である。そ...
  • 終わりの始まり14
    「…………」 その言葉を聞いてもなおセシルは黙りこんでいた。言葉が出なかった訳ではない考え込んでいたのだ。 この地上世界と地底世界は完全に遮断された別世界などではなく、どこかでつながっている世界である。そして両者間の 世界を実際に移動する事は可能なのである。 しかし、それは手放しに喜べる事ではない。セシル達が地底へ行くことが出来るのならば、ゴルベーザも例外ではないだろう。 地底世界の存在をどれくらいの人間が知っているのかは良く分からないが、其処には人――地底人とでも言うべき存在がいる。 もう誰にも犠牲になってほしくはない。より一層急ぐ理由が出てきた。 「正確には<可能>ではな<可能>になったというのが正しいのだけどね」 意思を固め、地底へと行く方法を尋ねようとしたところでコリオが再び口を開いた。 「遂最近の話だけど、世界を大きく震撼させる衝撃があっただろう?」 心辺りは...
  • 穿つ流星21
    「…………」 ローザから凝視されてもカインは顔を落として無言を貫いていた。 「どうして……?」 ローザからこぼれる疑問の声。 無理もない。先ほどまでのゴルベーザの意に沿って動いていた自分の様子は彼女も充分に見ていたはずだ。 「安心して……もうカインは大丈夫だよ。ゴルベーザに操られていただけなんだ……」 「そう……良かった」 カインが無言を貫き通している間にもセシルによって自分の行いが弁護されていく。 それに対してローザも安堵したような言葉を上げる (俺は……) しかし、セシルやローザが納得しても自分の気持ちの整理はなかなかつかなかった。 先程セシルやシド達の前では操られていた自分に対しての悔しさを吐き出して、自分の行いに対して詫びる事も出来た。 しかし、彼女――ローザを前にしては、カインは何か言葉を出すことに躊躇いがあった。 自分がゴルベーザへと付け入られた最たる...
  • ff6 - 27 figaro
     ――どうすればそんな顔で笑えるの?  目の前に立ちはだかって扉の前をふさぐ衛兵から視線を離せずに、ティナは 不可解に思う。  たとえ過去の記憶を持たなくても。自分以外の女性達が普通に抱く感情を持て なくても。  ――私は、他の人たちが持たない“力”を、持っている……。  そのぐらいは分かっている。そして、いま置かれている状況も。  ナルシェで目覚めたあの時と一緒なのだろうと思った。  この扉の外では、私を捕まえようと必死になっている人達がる。そして、扉の外へ 出ていったロック達は、ナルシェにいたあの老人と同じ事をしようとしている。  ――また、ひとりで逃げなければならないの?  恐かった。  放り出されてしまうことが。  拠となる過去の記憶を持たず、休まる場所を知らず。  また、ひとりで走り続けなければならない。 ...
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