かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「穿つ流星12」で検索した結果

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  • FF4 六章
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  • 穿つ流星12
    「気にするな――何もかも私自身で決めて行ったことなのだ。結果がどうであろうと他人である誰かが文句をいう事 も咎める事も出来ぬ」 「長老は――あなたの無事を祈っていたのに……?」 「ふ……心配症なあやつらしい」 この場に及んで、テラの言葉は穏やかであった 「だが……人の今生は自分で決めるもの。始まりが誰かに授けられたものとしても、終わりは自分で幕を下ろすもの……」 「…………」 「これも憎しみに捉われて戦った報いかもしれん。私も奴も本質的には同じであった。似たような者がぶつかったとしても力を 擦り減らすだけなのかもしれん。だが、どんな結果であろうとも私はやることをやった。満足感はあるし後悔する気もおこらん。 正直、アンナの敵を取れなかったのは本当は悔しい……後はお前達に託すしかないようだ」 「そんな事をいうな!」 シドが言った。 「しっかりしろ...
  • 穿つ流星1
    「ようやく来たか……」 待っていたとばかりにゴルベーザは声をかける。 「どうやら一人だけのようだが……」 「一人で十分だ」 実はテラにとってその姿を実際に目にするのはこれが初めてであったりする。 しかし奴が自分の追い求めている人物であることは全く疑うこともなくわかった。 「強がるな……クリスタルは持ってきたのか?」 あくまで約束だとばかりにゴルベーザは言った。 「この通りだ」 見るとテラの衰弱した腕の中には濁る事なく輝き続けるクリスタルの光があった。 「どうやらきちんと条件は満たしたようだな……」 「約束だ」 ローザを返すのだ。そこまで言おうとしたが息が続かない。早く目的を果たさねば。 「ふ……」 そこまで言ってゴルベーザは不適な笑みを浮かべた。 「何がおかしい!」 「お前にとってはローザはかえしてもらわなくてもよいのではない...
  • 穿つ流星16
    「カイン。自分に対して懺悔する時間は終わりだ。今はもっと重要な事がある」 二人の言葉を聞いてもまだ沈黙をたもつカインにセシルが投げかける。 「…………」 「分かってるのだろ? 今君が一刻も早く顔向けしなければならない人物がいるって事に?」 「ああ。ローザか」 セシルの問いに疑問符をつけることなく返答する。 「そうだ。何所に居るかわかるか?」 カインのローザを想う気持ちがまだ健在であった事に嬉しさを感じ問いを返す。 「この奥にいるはずだ。だが、あまりいい待遇ではない。それに時間がないかもしれん」 「どういうことだ?」 「ゴルベーザの合っただろ。奴が言っていなかったか?」 <仕掛けとやらが作動しているかもしれん>短期間の濃い密度の中の一つの言葉が思い出される。 「まさか、本当だったのか?」 「ああ……俺も詳しい事情は分らん。だが奴が、ゴルベー...
  • 穿つ流星17
    死を覚悟した。 バルバリシア。それを指示するゴルベーザが自分をどうしようとしているのかは重々承知していた。 もうすぐ、上空にそびえたつ鋭利な<それ>が拘束された自分へと降りかかる…… ようやく固めた決意の中で果てていくのは不本意だと思っていた。 ただでは転びたくはない。そう願った結果だろうか。 気づかぬ内に自分の体を縛る拘束具が外れていた。始めは何かの冗談だと思った。 だが、すぐにでもローザは思考を切り替えた。 最前までは恐怖があったのかと聞かれれば、勿論そうだと答える他はない。 しかし、いつまでもそのような恐怖に縛らていては何所に行くことすらも出来ない――かつての自分がそうであったように。 そんな事は決してあってはならない。今はその恐怖を断ち切り、自分の成すべき事をせねばならない。 ましてや、絶望とすら思えた状況の中で、何かしらの奇跡とも思える状況...
  • 穿つ流星11
    「セ……シルか……」 その声は今にも消え入りそうであった。 見れば、肌は枯れ木のような褐色の色になり痩せこけている。そして、儚くも残ったその肉体すらも細かな魔力粒になって 拡散してしまいそうだ。 魔力を使い果たした者の末路……それはただの死ではない。肉体すらも残る事のない完全なる消滅。 「おい、喋るな!」 シドが叱責する。それは消えゆく灯火を必死に止めようとしているかのようであった。 「やはり――」 メテオがどんな魔法かは分かっているつもりであったし、今のテラにそれを行使する為にどんな代償があるのかも 分かっているはずだった。 だが予想できたはずであろう恐ろしい事態であろうともいざ実際に遭遇してしまうと、息を呑まざるを得ない。 長老の言いつけを守ればなかった……もし自分がここにいればテラを止める事ができたのだろうか? 「それははカイン――殿で...
  • 穿つ流星19
    「最初はね……私も怖かったの」 「お母さんかい?」 「うん……シャーロットの方はね快く思ってたんだけど」 「でもバロンに帰ったらちゃんと母さんの元には行くんだよ」 「分かってるわ。きちんと逃げることなく向かうわ。その時にはあなたも……」 「ああ……」 「…………」 「やれやれ、お熱いこっちゃ」 時々の沈黙を交えながら続く二人の談笑に、一先ずの割り込みを欠けたのはシドの銅鑼声であった。 「シド……」 その声に気づいたローザは恥ずかしそうに顔を赤めながら彼の名を呼んだ。 「いや、すまんな。なんだか邪魔を入れてしまったようで……」 恥ずかしがるローザを見たせいなのか、思わずシドは謝罪の言葉を述べる。 「いえいいの。それよりシドも来てくれたのね……」 思えばセシルの後を追ってバロンを飛び出して以降、ローザがシドに会うのは初めてなのである。 ...
  • 穿つ流星18
    嘘ではない。夢でもなければ幻でもない。 だが、セシルにとってはいまだに眼前にいる人物を前に今が本当に現実なのかどうかと確かめる気持ちで 一杯であった。 「ローザ。無事だったんだな」 そうやって率直に嬉しさを言葉に出来たのは、ローザとの対面から少したってからであった。 「ええ……セシル」 彼女も同じ気持ちなのだろう。その言葉を交わした後、しばらくの間は無言の間が辺りを支配していた。 お互いに言いたい事は数えきれない程にあるのだ。あまりに話すべき事が多すぎて、何から話してよいのか、 わからずにそのまま会話が途切れてしまっているのだ。 「ふふ……なんだか可笑しいわね」 再開という名の嬉しい沈黙を打ち止めたのはローザの微笑であった。 「あなたに会いたくて仕方無かったのに……沢山話をしたかったのに、言わなければならなかった事も あったのに、いざこうして...
  • 穿つ流星14
    <俺は捨てられたのか――> 未だ混濁する意識の中、夢と現実の挟間の中の竜騎士の脳裏にはその言葉だけがよぎっていた。 <妥当な線だ。ならばこのまま沈みゆくのも悪くはない> <本当にそれでいいのか?> <ゴルベーザの奴に一泡吹かせてやるべきではないか。それにセシルやローザとも> 様々な悩みが交錯する。 一旦、悩みが消えると新しい悩みが頭に浮かび、その後に先程までの悩みが再びわきあがってくる。 悩みが幾重にも絡まり、頭を支配する。 <二人にどう会えばいい?> 自分の都合で二人をひいては自分と彼らの絆を傷つけてしまった。 カインには負い目があった。 <どうすればいい> 駆け巡る悩みのどれにも明確な答えを返せずにいた。 <やはりこのまま沈むのが最善といえるのか> 人が何をどうしていいのかわからなった時に陥るもの、思考放棄の選択肢がカインの心を支...
  • 穿つ流星13
    「わしはお前の考えなど認めぬぞ! 認めぬぞ!」 しばらくしてシドが口を開いた。 テラの最期の言葉を認めれぬのか、何度もそう言い続けた。 「誰も干渉できぬだとふざけるな! 今まで、これまでの道程は一体なんだったのだ!」 セシルもヤンも怒れる技師を窘めることはしなかった。 彼が腑に落ちなかったテラの言葉対して、二人はただ受け止めただけで、否定も肯定もするような域にまでは達していなかった。 そんな気持ちではシドの怒りを収める事など到底できやしない。自分達が何をいっても今のシドを納得させる事は出来ないだろう。 セシルとヤン、二人の共通の見解であった。 「正直情けないです……」 ヤンが口を開く。 「仮にも一国の軍団を収めていた立場の私が……半生以上生きてきた私が何も言えないなんて」 「そう自分を責めないでくれヤン」 「ですが……」 「どんな立場の人...
  • 穿つ流星15
    「セシル!」 カインは、はっと起き上り口を開いた。 「目が覚めたのかカイン?」 「ああ……見ての通り体はなんともない。元気だ……」 「良かった」 純粋に嬉しさを言葉に出すセシルに対し、カインの様子には陰りがある。 「俺は確かに操られていた。その時の事は殆ど全部と言ってもいいくらいに覚えている。意識はあったのだ。 自分がとんでもない事をしていることも――自覚してたつもりだ」 悔しさがカインを支配していた。結局自分のやってきた事は誰かに利用されていただけ。どんなに意思をかがけようとも どんなに目的だと主張しようが、駒の一つに過ぎなかった。荒風が吹けばあっという間に崩れてしまう、その程度の脆い繋がり。 「だが、それも終わりだ。俺は奴、ゴルベーザにすら見放された。もはや何処にもいくところなどない」 「操られていたんだろう……僕は責めたりなんかしない」 ...
  • 穿つ流星10
    カインを抱えての半壊した機械塔の登頂は終わりを迎えた。 最上階――おそらくここにローザはいる。そう……遂に三人がそろう時がきたのだ。 バロンの門出から此処まで、きちんとした形で向い合うのは初めてだ。 「テラ」 だが……その前にもう一つやらねばならぬ事がある。 今までのセシルの長い旅路の中に、付き合ってくれた仲間――その一人である老魔道士テラ。 彼はどうなったのであろうか? 封印されし究極魔法メテオ。 テラがそれを行使した事は最前のゴルベーザとの会話でわかっていた。 そして、その事実が何を意味するのかもセシルには理解できていたのだ…… 最も今のゾットの崩壊っぷりをみればただならぬ事がおこっているのは理解できるであろう。 最上階には今までの狭苦しく張り巡らされた迷路とは違い、がらんどうとした大広間が広がっていた。 下の階へと続く階段と最深部へと続く扉...
  • 穿つ流星7
    砂埃と煙が視界を支配する。 「カイン」 おそらく近くにいるであろう友の名をセシルは読んだ。 予想通り、セシルが目を覚ましたすぐ近くにカインは横たわっていた。 「気絶しているだけか……」 それを確認してほっと一息つき、今度は周りを見回した。 「一体どの辺りなのだろう?」 一人ごちた。あれだけの爆風が訪れたのだ。遠くまで飛ばされていてもおかしくない。 それにしても……? なんだったのだろう今のは? 周囲の確認をしていく内に、それの原因が疑問に浮かび上がってきた。 「まさか……テラが」 可能性は高いのではないか。ポロムやパロムも禁忌と言っていた魔法。 これほどまでの威力なのだ、並はずれた事態でない事は間違いないであろう。 「ここで待っていてくれ――なんて事はできないか……」 いまだ気絶したまま、目を覚まさないカインの肩を抱え歩きだした。...
  • 穿つ流星5
    瞬間、世界は震撼した―― 世界中のありとあらゆる生物が異変を感じ取ったであろう。 一瞬の内に強大な魔力が世界の一点――ゾットの塔へと集約されていく。 それは一人の高名な賢者の全身全霊の想いと力。 それは復讐に燃える黒き炎。 それは愛する者を大切に思う人として当然の心。 様々な要素が含まれるその魔力を察知し、甚大な威力を誇る大粒の隕石状の物体が大空より大量に降り注ぐ。 ただ一点に。今紛れもなく世界の中心として動いている場所ゾットへと向かって。 その世界の中心で精一杯に自我を叫び、血肉を己の想いへと変えた賢者の気持ちに応えるべく。 ミシディアの中核にそびえる祈りの塔。ゾットより遥か離れた遠方の地でも巨大な魔力は感じ取られていた。 「長老これは――」 祈りに専念していた一人の魔道士が耐えかねたかのように話を振る――しかし、長老は無言を貫きとおす。...
  • 穿つ流星4
    「無事か!」 ゴルベーザとテラ。二人に割って入る影が二つ。 「テラ殿!」 「お前たちか――」 くぐもった声で返すテラ。 「すまなかったな! 少し遅れてしまった!」 その理由は最前までの戦いのただならぬ雰囲気のテラに気後れしてしまった為なのだが……その事に一切悪びれること もなく、むしろ朗らかにシドは言った。 「私達も加勢しますぞ!」 ゴルベーザという巨大な敵との決着を感じ取ったのだろうか? 珍しくシドに負けぬ勢いでヤンが鼓舞の言葉を上げた。 「そうじゃ! セシルがおらぬが、一緒に戦えばやつとて――」 「いや――私は大丈夫だ――」 だが、老魔道士から出た言葉は、勢いづく二人の期待を無下にするものであった。 「なんだ折角来てやったのに!」 出鼻を挫かれた。怒りというよりもがっかりと言った感じの台詞であった。 「直に呪文は完成する。そう...
  • 穿つ流星2
    体に喝を入れ魔法を詠唱する。 ファイガ――炎の最上級魔法がゴルベーザの身を包む。 ブリザガ――凍てつく氷結の刃が漆黒の鎧を貫く。 サンダガ――幾多もの稲妻の渦がゴルベーザを囲いこむ。 そのどれもがすさまじい威力のはずであった―― ゾットの機械塔を切り刻み、幾重の爆風、爆煙が舞った。 だが、その中であっても漆黒の男は未だ、打ち倒す事は出来なかった。 「ほう……すばらしいな。たしかにこれでは私も完全に安全とは言い切れないな」 だが、危機的な言葉を口にするゴルベーザの言葉の影から常に余裕の言葉が見え隠れする。 「残念だが、これでは私を倒すことは出来ぬな。まずは、今の一撃は確かに見事であった。 だが、今と同じ程の威力の魔法を私に叩き込む事ができるのかな?」 「…………」 無言を貫くテラ。 確かに奴の言う通り、今の火氷雷の最上位魔法の一...
  • 穿つ流星3
    「まさか……メテオか?」 ただならぬ雰囲気を感じ取ったゴルベーザは自分から答えを導き出した。 「しかし、今のお前の体ではメテオを行使できるはずはない!」 珍しくはっきりと否定するゴルベーザ。 「ふ……」 幾度も続いたゴルベーザの指摘も、もはやテラには届いていないようであった。 「分かっているのか? あの魔法は特別なのだぞ! そんなものを使えば!」 黒魔法、白魔法。両者の全ての魔法を含めた中でも格段の破壊力を持つ魔法メテオ―― 「構うものかい!」 いつもにまして曇りも淀みも無い口調のテラ。 「あれを食らえばこの体も持たぬかもしれぬ――」 「行くぞ!」 ゴルベーザの言葉の意味をテラはどこまで理解できたのか分からない。 「やらせるか!」 さすがの危機を感じたが、慌てつつも、咄嗟の判断でゴルベーザは攻撃を開始する。 いかにメテオといえど弱...
  • 穿つ流星9
    「ふん、敢えて私に挑むというのか……見逃してやろうと思ったものの」 「……」 「私もこのザマだが、お前も相当疲弊しているのだろう?」 その通りだ。弱体化してるとはいえ巨大な力を持つ者にたった一人で挑むのだ。その上、気絶しているカインを守りながら。 分の悪い戦いであるのは明白だ。 「どうやらお前達には計画性という言葉がほとんど存在せぬらしいな!」 どこにこんな力を残していたのだというような勢いの魔法がセシルへと向けられた。 「ぐ――」 慌てふためき、身を翻しカインの守る。 自分はまだ意識がある。だが、カインは未だ覚めぬまま。攻撃がくるという意識のないままの奇襲は百戦練磨の戦士と いえども危険であることに変わりない。 自分よりもカインのダメージを抑えることが先決だ! その判断は正しかったのか……? 「ふん他愛もない!」 今の直撃が響いた。...
  • 穿つ流星8
    ゾット内はあちこちが破損し、迷路のような道であれも整頓された道の面影は無く、瓦礫の点在する道は 移動の労力は以前に比べると格段に掛かるようになっていた。 それに加え、常に薄黒い煙が周囲を覆い尽くし視界を遮り、足元だけでなく、前の見通しも立たぬほどで あった。 それに加え気絶したカインを抱えた状態なのだ。少し移動するのですらひどく骨の折れることであった。 「!」 どれほどまで歩いた時だろうか。セシルの視界に<それ>が入ってきたのは…… 漆黒の鎧に身をまとったその姿――声は何度も聞いたが直接会うのはファブール以来であろうか。 「ゴルベーザ!」 セシルは思わず声を荒げた。バロンからこの道まですべてはこの男が原因でもあるのだ。 「ぐっ……セシルか」 どうやら傷ついているようだ、苦しそうな声を上げている。 「まさかお前たちの仲間にメテオを行使できるもの...
  • 穿つ流星6
    やはりカインはカインであった。 たとえ心を操られていようが、槍先から繰り出される一撃は見間違うことの無いバロンの竜騎士のものであった。 以前、ファブールで相まみえた時は自分の気の動転せいや、カインが何故こんなことをするのか戦いながらも真意を探る事を考えてばかりであった。 そして繰り出された黒き一撃にカインはもはや自分とは違う……なにか黒き者に侵され染まりきって しまった しかし、今少しばかり冷静になって見ると、カインの腕は悪に染まりつつあっても、まだ竜騎士と しての腕前は衰えておらず、消えていない。 その事が嬉しかった。だが、それと同時に観念的でない現実的な問題がセシルを困らせていた。 「このままではいつまでたっても――」 そう、実際に決着をつけた事はないとはいえ、セシルとカイン。互いに何度も切磋琢磨し合った仲なのだ。 実力的には五分五分。それも手の...
  • 穿つ流星25
    「こうして一緒に戦うのはいつ以来かな……」 「ミスト時以降だね」 眼前に迫るバルバリシアを前にセシルとカインはそんな遣り取りを交わしていた。 「あの依頼を受けた時か……悪いことをしたな」 「リディアの事……?」 「ああ」 ミストに向かう途中、カインとの共闘の末に霧の竜に打ち勝った。だが、それは幼い召喚士の大切な人物を 奪ってしまう行為であった。 「俺はあの時……炎で焼き裂かれる町を見た時、笑いが止まらなかったんだ」 「……」 「おかしな言葉だろうが、だけど本当なんだ。苦しむ人々や崩れ落ちる建物、泣き叫ぶ少女を見て、何故か悔しさや憎しみ、恐怖 よりも先にケタケタと笑いが漏れたんだ……自分でも少しどうかしてると思った……」 セシルは黙って続く言葉を待った。 「今でもその気持ちをきちんと言葉にすることは出来ない、でも俺は――あのの俺は他人が苦しんだり、酷い目にあってるの...
  • 穿つ流星26
    瞬時に、幾多もの箇所から風が吹き荒れる―― 風はやがて一つの場所へと集う……バルバリシアを中心とした一点へと集まったそれはやがて刃と思えるほどの鋭さを備え、 彼女の身を守るかの如くセシル達の前へと立ちふさがる。 それは諸刃のような鋭さの武器としての役目を果たしているように見え、強靭な鎧として彼女の身を守る鉄壁の壁の役割 の両方を果たしているように見えた。 「まずいな……」 「どうしたカイン……?」 言いながらセシルは少し照れくさい気持ちになった。 本来なら――長い付き合いのある戦友に対して相槌を打つ事などは日常茶飯事の事であるはずだった…… しかし、長い対立の末に久し振りといえる<戦友>と呼べる相手に<戦友>として相応しい会話をするのだ。 まだ違和感が抜けない。 ひょっとしたら、平静を装っているように見えていきなり背後から裏切るのではないのかと不謹慎な考えすら、ふっと...
  • 穿つ流星23
    「カイン、待って!」 間にローザが割って入る。 「バルバリシアも!」 「ふん……ローザかい!」 バルバリシアはカインだけでなく、ローザの事も知っているようであった。 「今更どうしたっていんだい!」 「私達も始末するつもりね」 「そうさ」 「だったら、何故私を助けたの?」 その言葉にセシルは驚いた。どういう事だ? バルバリシアがローザを助けたのなら、何故今になって始末する必要があるのだ? 「どういう意味だ!?」 驚いたのは全ての事情を知らないセシルだけではなかった。カインも今の事実には驚いているようだ。 「私はゴルベーザに拘束されて始末されようとしてたわ……正直もう駄目かと思ってた。セシルやカイン達が助けてくれるのを 祈るしかなかった……」 その事はセシルも承知していた。だからカインと共に急いでローザの元へと向かったのだ。しかし、結果的にその心配は杞憂に終わった。...
  • 穿つ流星20
    「ギルバート達はいないの……?」 「彼は今、病床に伏せっておられます」 「え!」 言い淀みかけていたセシルに助け船を出したのはヤンであった。 しかし、堅気な性格の彼の言葉は逆にローザの心配を強くしたようだ。 「安心して……ローザ。ギルバートはね、旅の途中で少し怪我をしただけだよ。そんなに重い怪我では なかったからもう大丈夫だよ!」 嘘は言っていない。ギルバートの命に別状はない。 「そうだよね……ヤン」 「かたじけない」 自分の言葉にフォローを入れてくれた事に感謝の言葉を述べるヤン。だがその顔はまだ曇った表情である。 その表情から、やはりヤンもセシルと同じ気持ちであったのだろうと確信する。 ローザが捕らわれた後、すぐさまセシル達一向は目的を果たすべくバロンへと船を出した。 結果、セシルは仲間達と離れバロンから数えて二度目と言えるべき旅立ちを...
  • 穿つ流星22
    <ごちゃごちゃやっとる場合ではない――> シドの一声がゾットからの退避の幕開けとなった。 ゴルベーザとテラ。野望と復讐の激しいぶつかり合い。実際のパワーとして魔力がぶつかりあった。そしてその激戦のプレリュードを打った 古の魔法メテオ。 機械仕掛けの塔ゾットが受けたダメージは半端なものではなかった。 様々な思惑が渦巻いた舞台は、用済みだと言わんばかりの勢いで崩壊し始めている。 「ここは危険です――早く脱出せねば」 この困難な迷宮の脱出に先陣を切るのはヤンであった。 「ヤン無茶はしないでくれよ!」 危険を顧みず颯爽と歩を進める彼を気遣うようにセシルは言葉をかける。 「心配には及びません。丈夫な事が取り柄なのですから――」 常に仲間を気遣う事を忘れない堅気なモンク僧の言葉は途中で途切れた。 「ぐっ!」 突如、風を切るかの音と共に目前から何かが飛来し、先頭に立つヤンを切り...
  • 穿つ流星28
    「行くぞ、セシル!} そして、その終わりを見届けぬうちにセシルへと言い放ち、駈け出そうとしていた。 「ゾットの崩壊は始まっている。早くシド達の元へ行かねば間に合わんぞ!」 「ああ!」 セシルも慌てて呼応する。 だが、既に崩壊を始めてからかなりの時を経ているゾットの塔を脱出するのはかなりの困難を要する事 は想像に容易かった。 「くそッ!」 「二人共! 私に掴まって!」 カインとセシルが分の悪い駆けに出ようとした瞬間、二人を呼びとめる声がした。 ローザである 「ローザ?」 「早く!」 考えている時間は無さそうである。二人はすぐさまローザの手を取った。 瞬間、セシルの視界は少しだけ歪んだ。 「これは……」 極一部の空間に捻じれを生じさせ、その限られた場所にいる対象――人や物――を別の場所へと移動させる。 転移魔法――その詠唱には強力な攻撃魔法程の時間がかからない...
  • 穿つ流星24
    「シド、悪いけど先に言っておいてくれないか」 「何? どういうことだ?」」 セシル以上に話に取り残されていたシドは自分に御鉢が回ってきた事、そしてセシルの急な要望が不可解であった事に対して二度の 驚きの声を上げた。 「あの魔物の狙いはどうやら僕達三人だけのようなんだ……だからヤンと一緒に」 「それだけでは納得いかんぞ!」 シドはすぐには首を縦には振らなかった。当然であろう。 「やっと皆がそろったのだ! お前達を置いていくことなどできるわけがないであろう……」 老技師は自分が今この場所に於いて不要だとされている風潮に対して怒っている訳ではない。 「ここでお前達三人を残していけばまた帰ってこなくなるのではないか? 儂はそれが怖いのだ」 セシルとカインの旅立ちで残されたのはローザだけではなかった。シド、赤い翼の仲間達も当然ながら残された者として寂しさを 持っていた。 「シ...
  • 穿つ流星27
    「ふん正面から来るなんてね……」 愚かな行為だ。そうバルバリシアは言いたいのであろう。 「まずはセシル。お前から葬ってやろう!」 バルバリシアの周囲に漂う風刃が容赦なくセシルへと襲いかかる。 「ぐっ!」 痛みがセシルの全身へと走る。しかしここで倒れることは決してあってはならない。 傷を堪えながらも上空へとちらりと目をやる。周囲に巻き起こる風によって完全な視界を確保する事は出来てはいないが、 友の蒼き鎧の姿を朧げながら確認することが出来た。 <此処で倒れればカインも――> 高い上空で一撃の機会を伺っている竜騎士の攻撃が今戦略の骨子である。この作戦が成功しなければ、状況は防戦一方、 悪くなっていくばかりであろう。 仲間達を守り、常に楯となる。パラディンである自分に課せられた使命とでもいうのだろうか。 その気概がセシルを踏ん張らせた。 「しぶといね……」 バルバリシア...
  • 穿つ流星21
    「…………」 ローザから凝視されてもカインは顔を落として無言を貫いていた。 「どうして……?」 ローザからこぼれる疑問の声。 無理もない。先ほどまでのゴルベーザの意に沿って動いていた自分の様子は彼女も充分に見ていたはずだ。 「安心して……もうカインは大丈夫だよ。ゴルベーザに操られていただけなんだ……」 「そう……良かった」 カインが無言を貫き通している間にもセシルによって自分の行いが弁護されていく。 それに対してローザも安堵したような言葉を上げる (俺は……) しかし、セシルやローザが納得しても自分の気持ちの整理はなかなかつかなかった。 先程セシルやシド達の前では操られていた自分に対しての悔しさを吐き出して、自分の行いに対して詫びる事も出来た。 しかし、彼女――ローザを前にしては、カインは何か言葉を出すことに躊躇いがあった。 自分がゴルベーザへと付け入られた最たる...
  • 絆12
    ルビカンテは強きものとの正面からの戦いを生き甲斐としているだけあって実力は確かなものであった。 エッジがいくら力を増したとはいえ、正面から立ち向かっていってもその一撃の一つ一つをあっさりと 交わしていった。 無論回避するだけで手いっぱいというわけではなかった。エッジに向かって本気の一撃を下さないのも 戦いを長引かせ楽しんでいるのだろう。 しかし、だからと言って外野からの攻撃に対して無頓着なわけではない。回避行動を続けるルビカンテの隙を ついてローザが弓による援護射撃、リディアが冷気魔法での一撃を狙う。しかしルビカンテはみすみす攻撃を喰らっては くれない。 攻撃がくると察知すると、身にまとったマントで身体を包み。冷気魔法の直撃を受けとめる。 「効かない!?」 リディアが驚きの声を上げる。あのマントには炎をつかさどる四天王の弱点である、冷気魔法に耐えうる防御力があるのだろう...
  • 三節 山間12
    「バロンへ向かう途中リバイアサンに襲われて……」 重い口を開いて出てきたのはその一言だけであった。 「何と!……死におったのか!」 さすがに驚きを隠せず声を荒げる。体はわなわなと震えていた。 「いや……きっと……きっと生きてますよ」 その言葉がまずあり得ない事だというのは自分でも分かっていた。 しかし、例え絶望的な可能性でもセシルは皆が生きていると信じたかった。 例えどんなに空しい行為だとしても…… 「ところでテラ。あなたは何故この山に?」 もうこの話を続けたくはないと思い、少し気がかりであった事を訪ねる。 ゴルベーザを倒すのならバロンに向かったのだとばかり思っていたのだが、 何故、バロンより遙か離れたこの場所にいるのだろう。 ひょっとするとこれもまたミシディアの長老の言うように偶然ではなく 運命が引き合った結果なのだろうか。 「実は...
  • 一節 航海12
    「無事か!」 「私は大丈夫だ! それよりも・・!」  駆け寄ると、ギルバートが胸を抑えたまま苦しげに踞っていた。 「ここにいたのかギルバート! 君の方は、」   「ゲホゴホゴホッ、ガハッゴハッゴホッ……!」 「!?」  咳き込む口を抑えるギルバートの手から、赤い色がにじみ出ていた。 「ギルバート! 怪我をしたのか!?」 「ぼ、僕のことは気にするな! もう一度、来……ゴホ、ゲホゲホッ!」  苦しみながら彼が指し示す方を見ると、海神は再び尾を振り回し始めていた。 「セシル殿! 彼は私が!」  ヤンがギルバートの背に手を添えながら、リヴァイアサンを目で示す。セシルは頷き、 剣を抜いて船の先端に走り出た。 「船長! 僕の身体を支えていてくれ!」 「お、おう!」  彼の声の強さに気圧され、船長は少しだけ躊躇した後に舵を離すと、その野太い腕で...
  • 二節 試練12
    ピタリ、と押さえつける手が止まった。  セシルは途切れそうな意識を総動員して水からはい出す。息を切らしながら、やがて周囲の 異変に気づき彼は顔を上げた。  黒魔導士と、先ほどまでは姿の見えなかった厳格な面持ちの老人が対峙していた。 「掟を忘れたのか」 「・・・」 「掟を忘れたのか、ジェシーよ」 「・・いいえ、長老様」 「それならば、すぐにその者を元の姿に戻してさしあげよ」  しばしうなだれていた魔導士は、やがて消え入りそうな声で詠唱を始めた。セシルの頭に 再び焼け付くような熱が訪れ、次の瞬間、めまいとともに彼は暗黒騎士の姿へと戻っていた。  ジェシー、と呼ばれたその魔導士は、意外にも女性だった。なにしろ女の黒魔導士というのは 滅多にいないものである。そもそも黒魔法というのは、一般に男性の方が多くの素質を秘めている もので、同じように白魔導...
  • FF5 61 飛竜12
    やがて人影は四人の前に完全に姿をさらした。 腰に鞭を巻く、30前後の女。 「何者だ!」 バッツが剣を突きつけながら叫んだ。が、別段気にした風もなく、というよりまったく意に介せず、 蛇のような視線を四人にめぐらせる。 その視線が、レナを捉え、口の端を持ち上げニタリと笑った。 「ヒッヒッヒ、何か獲物が掛かるかと思えば、タイクーンのお姫様じゃないか」 「貴様っ・・」 『獲物』という言葉に逆上したファリスが腰の剣を抜きはなち、突進する。が、 「ふん、馬鹿だね!」 女は急にしゃがみ込み、縄らしきものを引っ張った。するとファリスの足元の土が音を立てて 勢いよく下界の森へ落ちていった。 「ファリス!!」 「落ちたよー、ヒッヒ・・・何!」 しかしファリスは落ちなかった。硬い地層に剣を突き刺し、落下を免れていた。そして器用に、す いすいとあっさり上...
  • 罪の在処12
    視界の黒が一瞬のうちに白に入れ替わる。 「これは……」 辺りの空気を支配する雪のような白は次第にその勢力を増し、前を見ることすら困難なほどになった。 この感覚には見覚えがある。 「霧」 セシルが旅立ち最初に立ち寄った場所。ミストへと続く場所。長い旅の始まりの場所。 しかし何故、急にこのような事態が? 霧の先からかすかに見えるゴルベーザの姿にも動揺がうかがえる。 つまりこの状況はゴルベーザにとっても誤算だという事だ。 お互い何がおこったのかすぐには理解できずに立ち尽くしていると、霧が一つに集まり始めた。 黒き波動が黒龍を生みだしたように、白き霧も今何かの形を生み出そうとしている。 輪郭を描いたそれは見覚えのあるものだった。 「これは霧の龍」 そんなはずはない。頭によぎった可能性を否定した。 霧の龍――過程がどうであれ結果的にセシルはあのミストへと続く洞窟で霧の龍を傷...
  • 地底世界12
    もう一つの結論、それは前述の守りとは違い攻めに関する事項であった。 それはすなわちゴルベーザの本拠地、バブイルへの攻撃を早急に開始する事。バブイルが二つの世界を結ぶなら当然、この地底にもその巨塔 は存在する。 そして、おそらくはその場所に奪われたクリスタルがある。それを奪還する事も目的の一つである。 しかし、それ以上にバブイルへ進行する事にはもう一つの重大な意味があった。前述の目的は願わくば出来ればいいのである。此方にクリスタル が残されている限りは。 地底側の弁によるとバブイルには巨大砲の開発がされているとの事。 そしてそれが完成すればすぐにでもこちらを一方的に攻撃できるような高性能長距離兵器になるという事。 シドの飛空挺援護が万全になるにはまだ時間がかかるし、例えそれがあったとしてもこちらが優勢になるという訳でもない。 巨大砲を破壊せねば事態は悪化する一方だ。それに守...
  • 二節 剛の王国12
    再びなだれ込んでくるバロン軍。 ガーゴイルの突然の奇襲に浮き足立っていたモンク達に、彼らは容赦無く襲いかかる。 もはや戦況は絶望的だった。 ファブールのモンク僧は方々でバロンの魔物に打ち負かされている。 「やむをえん!クリスタルルームまで下がろう!」 圧倒的に不利な状況を察したヤンが、空になっている玉座の後ろにある扉を指差す。 「急げ!中へ!」 ギルバートもモンク僧を促すと、部屋の奥へと走り出す。 と、その時、背中に一本の流れ矢が突き刺さった。 呻き、そのまま前のめりに倒れるギルバート。 「ギルバート!」 セシルが振りかえり、彼のもとへ一目散に駆ける。 そしてギルバートにのしかかり、頭を握りつぶそうと手を伸ばすサハギンの右腕を切り落とし、首をはねた。 傷を押さえるギルバートを担ぎ、クリスタルルームへと急ぐ。背中には矢が刺さったままだ。 ...
  • 一節 刻む足跡12
    「僕に……責任があるんだ……」 セシルは言った。 「そうですか」 副長は平坦な口調で言葉を受け止めた。 彼は、セシルとカイン。二人の親交を深く理解していた。 しかし、其処に介入する「三人目」である人物については知らなかった。知りようがなかった。 それを理解してくれたのか、彼は深く追求をしてくる事はなかった。 「わかりました……カインさんの事をよろしく頼みます……」 深々とお礼をする姿はまるで親が子供の事を御願いしているかのようだ。 「ところで――」 そんな考えがよぎったのでつい訪ねてしまった。 否、今の様な関係だからこそ、カインの事をもっと詳しく知りたいと思っていたのかもしれない。 「カインの両親はどんな人だったんだ……?」 既に死別している事は知っていた。だけど、どんな人かは聞いた事がなかった。 孤児である自分が聞くのは、厚かましい...
  • 四節 これから12
    近衛兵団に所属するその兵士達の主な任は王の護衛である。 国家の中心人物の信頼を全に受けるこの兵士達の選定には厳重な試験が有り、陸軍の中でも屈指の 実力者を中心の組織されている。 単純に剣を交えるのならセシルやカインにも引けを取らない者達ばかりであろう。 その近衛兵が四人。状況は向こうに傾いている。 だが、そんな中でセシルとヤンの表情は比較的穏やかである。 「手伝ってもらえるか、セシル殿?」 「勿論だよ……」 「では行くぞ!」 「くっ……」 その余裕な有り様に少しばかりたじろぎつつも近衛兵の一人は剣を払ってきた。 「!」 だが剣を振るった後、その兵士は驚愕した。 確かに捕らえたと思ったヤンが忽然と姿を消していたからだ。 満身の剣の一撃は石で舗装された道を砕き地面を露出させるだけにとどまった。 慌てて視線をあちこちに巡らした兵士には更...
  • 三節 Two of us12
     どくん、と胸の奥が震えた。 「・・いいかローザ。お前さんのそんな有様を見て一番悲しむのは、わしでもなければ お前さん自身でもないんじゃぞ」 「・・・」 「赤い翼の・・わしらのセシルが惚れた女は、こんなくだらない人間か?」 「・・セシル・・・・」 「立ち上がるんじゃ。お前さんを失って、セシルがどんな顔をすると思う。  あやつを慰める役目なんぞ、わしはまっぴらごめんじゃぞ!!」  ぐい、とシドがローザの身体を引き上げる。幽閉され、いっそう細身のかかった肢体は 急な反動にふらついたが、その瞳にはいまや毅然とした輝きが宿っていた。  シドは満足げにニヤリと笑った。 「信じるんじゃローザ。ここにいてはいかん。信じてセシルを追え!」 「えぇ・・そうね、シド。私たちのセシルを信じるわ!」 「素直に" 私の "と言わんかい」 ...
  • 一節 モンク僧12
    セシルは影の方に目をやる、影の正体は男であった。歳はセシルと同じくらい、もう少し若いだろうか。 男は片方の手から血を流し、もう片方の手でそちらを押さえていた。側には輝きを失ったナイフが転がっていた。 一体誰があの状況で攻撃できたのだ。ヤンもギルバートも驚いた顔をしている。 セシルは辺りを見回す。するとローザと目が合った。 「ローザ、まさか君が……」 「ふふ、そうよ」 そう言って右手の弓を見せ、笑う。 セシルはバロンにいた頃の事を思い出した。ローザは弓の腕に関してはセシル以上の力を持っていた。 現にセシルが幼少の頃、バロンで弓の訓練をした時に飛び入りで参加したローザは一番の成績を残し、回りを驚かせたものだった。 「ちっ! しくじちまった」 男が舌打ちをする。 「その勲章はバロンの!」 セシルは男の腕の勲章に目をやる。 「くっ……」 「一...
  • FF5 12 洞窟探検2
    洞窟の中は狭く、薄暗い。さらに天然の迷路のように道が、壁がうねっている。 「薄気味悪いのう」 ガラフが辺りを警戒しながら呟く。 レナは無言だ。しかしナイフを手に握り締めたまま離さない。 「うわー、湿っぽいな、なんか」 バッツは旅慣れてることもあって余裕の顔だ。 しばらく進むと左手に泉が見えた。 「天然の水が湧いてるの…?」 あたり一面の綺麗で透き通った泉。 レナは少し感動を覚える。 ここ最近ずっと不安を抱えてた彼女にとってそれは文字通りのオアシスだった。 不気味な洞窟への警戒感も少しだけ和らぐ。 「ちょっと一休みするか…」 バッツが疲れた顔で言う。と言うよりこの言葉を言ってる時にはすでに彼は休んでいた。 3人の中で肉体的に一番しんどかったのが彼であろう。精神的には充分、大丈夫なのだが。 洞窟に入って早くも休憩である。 ...
  • エブラーナ12
    「おいローザ!」 リディアの後ろ、今まで会話に参加していなかったローザに声をかける。 「おいっ!」 反応が薄かったのかもう一度言うカイン。 「えっ! ああ御免なさい……回復魔法ね」 少し間があってローザが答える。 言い終わらぬうちにエッジの元へ駆け寄る。 「私はローザ。じっとしててね」 しばしの間薄暗い闇の洞窟に沈黙と温かい回復魔法の光だけが時間を支配した。 「おおっ……これが白魔法ってやつか! さっきまでの傷が嘘のようだぜ!」 そう言って完治した事を全身で表現するエッジ 「サンキュー ねえちゃん! さっきは傷のせいでよく見てなかったがあんたも可愛いぜ!」 「おいっ!」 急に馴れなれしくなったエッジにカインが制止の言葉をかける。 当然ながらセシルもいい気分がしない。 だがエッジは聞く耳を持たずローザに駆け寄り、挙句の果てには手を握る。 「これからも俺が傷つい...
  • 五節 忠誠と野心12
    「やはり、お主も感じておったか……」 セシルをベイガンを見送った後、テラが言った。 「私の思い違いという事ではないという事だったのか?」 それだけでヤンにはこの賢者が自分と同じ認識を同じ人物に抱いていた事を理解する。 そして、疑問は確信へと変わる。 「あのベイガンという者ですか……」 「そうだ」 あの立ち振る舞い、何か打算的なもので行動しているような素振り。 怪しいのは自分だけかと思っていたが、テラも同感だったようだ。 「では……どうしますか?」 例え、あの男が何かを隠している事が事実でも、その事を本人が簡単に露呈するとは思えない。 「早急に捕まっとる者を救出し、セシルに追いつくべきだろうな……」 少なくとも、自分たちがいればセシルに及ぶ危険は、減るだろう。そして今はそれしか策を 思いつかなかった。 「やはりそうするしか……」 「早く行くぞっ!」 促す口調は...
  • 三節 光を求めて12
    「知っているんですか!」 セシルは驚いて聞き返す。 「ああ、あらゆる病を治療する幻の宝石と言われておるが詳しい場所は私にも分からん」 「そうですか……」 セシルは落胆する。 「そうがっかりするな詳しい場所は分からなくとも砂漠の光の伝説はダムシアンから生まれたと言われとる ダムシアンに行けば何か情報が得られるかもしれん」 「本当でしょうか?」 「おそらくはな、なので少し手を借してくれないか」 「何をですか?」 「この先の地下の湖にいる巨大な魔物がいる、とてつもない力を持った奴じゃ。 私の魔法だけでは太刀打ちできん、みればお主暗黒騎士の様じゃなお主の暗黒剣とならば」 テラはそう言って協力を申し出てくる、どうも上手く利用されているような気はしたが今は ダムシアンに行くのが一番最良の方法にも思えた。 「分かりました、協力しましょう」 この...
  • 六節 双肩の意志12
    「なら、ローザも!」 セシルが期待に満ちた声で言う。 「ローザ?」 だが、疑問を持ったのはシドの方であった。 「お前と一緒ではなかったのか?」 「いや……ゴルベーザに捕らわれて、それで助けに……」 元々このバロンへと戻ってきた最終目的はローザを助け出す為であった。 ファブールでゴルベーザは去り際に、バロンへ来いと言った。その言葉を信じて此処まで来た。 「そういえば、ゴルベーザとやらは何処だ?」 今まで黙っていたヤンが言った。 「奴らがバロンを取り仕切っているのならば、当然此処にいても可笑しくはないのでは……」 「ではいないという事か……」 王に四天王であるカイナッツォが化けていたのだ。任せて別の場所に移ったと見て間違いないだろう。 当然ローザも一緒だろう。 「ならばローザは……」 「今だ囚われの身という事になるのか……」 シド...
  • 二節 再開の調べ12
    途端、聞き覚えのある音色が聞こえてきた。 「どうした、セシル?」 「テラ、何か聞こえないか?」 「そうか……」 セシルに促され、テラも耳をこらす。 「確かに……」 見ると、行き交う城内の兵士達もが、その足をとめて、始まった演奏に 耳を傾けている。 「何処から……」 ふいに疑問がよぎる。 それは遠く風に乗って聞こえてくるのか、それともすぐ近くからの音色なのか、 いやそんなことはどうでもよかった。 問題は音色はセシルの聞き覚えのある音なのだ。 そう、これは竪琴の……音。 その音や楽器――結びつくのは唯一人それも良く見知った。 「セシル殿……?」 半ば、答えに辿り着きかかってたヤンは、セシルへと訪ねる。 「ヤン! この音は竪琴だよ! 君も聞いた事があるだろう!」 「竪琴……っ!」 そこまで言われるとヤンにもわかったのだろ...
  • 一節 闇と霧の邂逅12
    押し寄せる魔物に気付いた村人たちの悲鳴が届く。 ボムの体が爆散する音が立て続けに空を裂くたび、大気は焼け焦げ、苦しげな唸り声を上げた。 ミスト村の入口でふたりを迎えたのは、村境をなす石柱の列を足場に踊り狂う炎の群れだった。沈みゆく太陽が、誤って堕ちてきたかのような光景だ。 張り巡らされた柵が燃え落ち、代わりに真紅の壁が、村への進入を永遠に阻んでいる。 「……これは!」 せめてもの抵抗のようなカインの叫びは、鉛のように鈍い。 「このために、僕らはここまで……?」 「この村を……焼き払うため……」 声の震えをセシルは自覚した。冷汗が背を濡らす。火傷した指先の痛みも、心中の激情に比べればどうということはなかった。いっそ潰れてしまえとばかりに、強く拳を握る。 そのときだ。村全体を巻き込んで渦巻いた炎の中に、人影のようなものが見えた。 一瞬の迷いもなく、セシル...
  • FF4 七章
    七章 一節 地底世界1 地底世界2 地底世界3 地底世界4 地底世界5 地底世界6 地底世界7 地底世界8 地底世界9 地底世界10 地底世界11 地底世界12 二節 罪の在処1 罪の在処2 罪の在処3 罪の在処4 罪の在処5 罪の在処6 罪の在処7 罪の在処8 罪の在処9 罪の在処10 罪の在処11 罪の在処12 罪の在処13 罪の在処14 罪の在処15 罪の在処16 罪の在処17 罪の在処18 罪の在処19 三節 去りゆくもの 残されるもの1 去りゆくもの 残されるもの2 去りゆくもの 残されるもの3 去りゆくもの 残されるもの4 去りゆくもの 残されるもの5 去りゆくもの 残されるもの6 去りゆくもの 残されるもの7 去りゆくもの 残されるもの8 去りゆくもの 残されるもの9 去りゆくもの 残されるもの10 去りゆくもの 残されるもの11 去りゆくもの ...
  • FF4 八章
    八章 一節 エブラーナ1 エブラーナ2 エブラーナ3 エブラーナ4 エブラーナ5 エブラーナ6 エブラーナ7 エブラーナ8 エブラーナ9 エブラーナ10 エブラーナ11 エブラーナ12 二節 絆1 絆2 絆3 絆4 絆5 絆6 絆7 絆8 絆9 絆10 絆11 絆12 絆13 絆14 絆15 絆16 絆17 絆18
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