かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「穿つ流星17」で検索した結果

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  • 穿つ流星17
    死を覚悟した。 バルバリシア。それを指示するゴルベーザが自分をどうしようとしているのかは重々承知していた。 もうすぐ、上空にそびえたつ鋭利な<それ>が拘束された自分へと降りかかる…… ようやく固めた決意の中で果てていくのは不本意だと思っていた。 ただでは転びたくはない。そう願った結果だろうか。 気づかぬ内に自分の体を縛る拘束具が外れていた。始めは何かの冗談だと思った。 だが、すぐにでもローザは思考を切り替えた。 最前までは恐怖があったのかと聞かれれば、勿論そうだと答える他はない。 しかし、いつまでもそのような恐怖に縛らていては何所に行くことすらも出来ない――かつての自分がそうであったように。 そんな事は決してあってはならない。今はその恐怖を断ち切り、自分の成すべき事をせねばならない。 ましてや、絶望とすら思えた状況の中で、何かしらの奇跡とも思える状況...
  • 穿つ流星1
    「ようやく来たか……」 待っていたとばかりにゴルベーザは声をかける。 「どうやら一人だけのようだが……」 「一人で十分だ」 実はテラにとってその姿を実際に目にするのはこれが初めてであったりする。 しかし奴が自分の追い求めている人物であることは全く疑うこともなくわかった。 「強がるな……クリスタルは持ってきたのか?」 あくまで約束だとばかりにゴルベーザは言った。 「この通りだ」 見るとテラの衰弱した腕の中には濁る事なく輝き続けるクリスタルの光があった。 「どうやらきちんと条件は満たしたようだな……」 「約束だ」 ローザを返すのだ。そこまで言おうとしたが息が続かない。早く目的を果たさねば。 「ふ……」 そこまで言ってゴルベーザは不適な笑みを浮かべた。 「何がおかしい!」 「お前にとってはローザはかえしてもらわなくてもよいのではない...
  • 穿つ流星16
    「カイン。自分に対して懺悔する時間は終わりだ。今はもっと重要な事がある」 二人の言葉を聞いてもまだ沈黙をたもつカインにセシルが投げかける。 「…………」 「分かってるのだろ? 今君が一刻も早く顔向けしなければならない人物がいるって事に?」 「ああ。ローザか」 セシルの問いに疑問符をつけることなく返答する。 「そうだ。何所に居るかわかるか?」 カインのローザを想う気持ちがまだ健在であった事に嬉しさを感じ問いを返す。 「この奥にいるはずだ。だが、あまりいい待遇ではない。それに時間がないかもしれん」 「どういうことだ?」 「ゴルベーザの合っただろ。奴が言っていなかったか?」 <仕掛けとやらが作動しているかもしれん>短期間の濃い密度の中の一つの言葉が思い出される。 「まさか、本当だったのか?」 「ああ……俺も詳しい事情は分らん。だが奴が、ゴルベー...
  • 穿つ流星11
    「セ……シルか……」 その声は今にも消え入りそうであった。 見れば、肌は枯れ木のような褐色の色になり痩せこけている。そして、儚くも残ったその肉体すらも細かな魔力粒になって 拡散してしまいそうだ。 魔力を使い果たした者の末路……それはただの死ではない。肉体すらも残る事のない完全なる消滅。 「おい、喋るな!」 シドが叱責する。それは消えゆく灯火を必死に止めようとしているかのようであった。 「やはり――」 メテオがどんな魔法かは分かっているつもりであったし、今のテラにそれを行使する為にどんな代償があるのかも 分かっているはずだった。 だが予想できたはずであろう恐ろしい事態であろうともいざ実際に遭遇してしまうと、息を呑まざるを得ない。 長老の言いつけを守ればなかった……もし自分がここにいればテラを止める事ができたのだろうか? 「それははカイン――殿で...
  • 穿つ流星19
    「最初はね……私も怖かったの」 「お母さんかい?」 「うん……シャーロットの方はね快く思ってたんだけど」 「でもバロンに帰ったらちゃんと母さんの元には行くんだよ」 「分かってるわ。きちんと逃げることなく向かうわ。その時にはあなたも……」 「ああ……」 「…………」 「やれやれ、お熱いこっちゃ」 時々の沈黙を交えながら続く二人の談笑に、一先ずの割り込みを欠けたのはシドの銅鑼声であった。 「シド……」 その声に気づいたローザは恥ずかしそうに顔を赤めながら彼の名を呼んだ。 「いや、すまんな。なんだか邪魔を入れてしまったようで……」 恥ずかしがるローザを見たせいなのか、思わずシドは謝罪の言葉を述べる。 「いえいいの。それよりシドも来てくれたのね……」 思えばセシルの後を追ってバロンを飛び出して以降、ローザがシドに会うのは初めてなのである。 ...
  • 穿つ流星18
    嘘ではない。夢でもなければ幻でもない。 だが、セシルにとってはいまだに眼前にいる人物を前に今が本当に現実なのかどうかと確かめる気持ちで 一杯であった。 「ローザ。無事だったんだな」 そうやって率直に嬉しさを言葉に出来たのは、ローザとの対面から少したってからであった。 「ええ……セシル」 彼女も同じ気持ちなのだろう。その言葉を交わした後、しばらくの間は無言の間が辺りを支配していた。 お互いに言いたい事は数えきれない程にあるのだ。あまりに話すべき事が多すぎて、何から話してよいのか、 わからずにそのまま会話が途切れてしまっているのだ。 「ふふ……なんだか可笑しいわね」 再開という名の嬉しい沈黙を打ち止めたのはローザの微笑であった。 「あなたに会いたくて仕方無かったのに……沢山話をしたかったのに、言わなければならなかった事も あったのに、いざこうして...
  • 穿つ流星14
    <俺は捨てられたのか――> 未だ混濁する意識の中、夢と現実の挟間の中の竜騎士の脳裏にはその言葉だけがよぎっていた。 <妥当な線だ。ならばこのまま沈みゆくのも悪くはない> <本当にそれでいいのか?> <ゴルベーザの奴に一泡吹かせてやるべきではないか。それにセシルやローザとも> 様々な悩みが交錯する。 一旦、悩みが消えると新しい悩みが頭に浮かび、その後に先程までの悩みが再びわきあがってくる。 悩みが幾重にも絡まり、頭を支配する。 <二人にどう会えばいい?> 自分の都合で二人をひいては自分と彼らの絆を傷つけてしまった。 カインには負い目があった。 <どうすればいい> 駆け巡る悩みのどれにも明確な答えを返せずにいた。 <やはりこのまま沈むのが最善といえるのか> 人が何をどうしていいのかわからなった時に陥るもの、思考放棄の選択肢がカインの心を支...
  • 穿つ流星12
    「気にするな――何もかも私自身で決めて行ったことなのだ。結果がどうであろうと他人である誰かが文句をいう事 も咎める事も出来ぬ」 「長老は――あなたの無事を祈っていたのに……?」 「ふ……心配症なあやつらしい」 この場に及んで、テラの言葉は穏やかであった 「だが……人の今生は自分で決めるもの。始まりが誰かに授けられたものとしても、終わりは自分で幕を下ろすもの……」 「…………」 「これも憎しみに捉われて戦った報いかもしれん。私も奴も本質的には同じであった。似たような者がぶつかったとしても力を 擦り減らすだけなのかもしれん。だが、どんな結果であろうとも私はやることをやった。満足感はあるし後悔する気もおこらん。 正直、アンナの敵を取れなかったのは本当は悔しい……後はお前達に託すしかないようだ」 「そんな事をいうな!」 シドが言った。 「しっかりしろ...
  • 穿つ流星13
    「わしはお前の考えなど認めぬぞ! 認めぬぞ!」 しばらくしてシドが口を開いた。 テラの最期の言葉を認めれぬのか、何度もそう言い続けた。 「誰も干渉できぬだとふざけるな! 今まで、これまでの道程は一体なんだったのだ!」 セシルもヤンも怒れる技師を窘めることはしなかった。 彼が腑に落ちなかったテラの言葉対して、二人はただ受け止めただけで、否定も肯定もするような域にまでは達していなかった。 そんな気持ちではシドの怒りを収める事など到底できやしない。自分達が何をいっても今のシドを納得させる事は出来ないだろう。 セシルとヤン、二人の共通の見解であった。 「正直情けないです……」 ヤンが口を開く。 「仮にも一国の軍団を収めていた立場の私が……半生以上生きてきた私が何も言えないなんて」 「そう自分を責めないでくれヤン」 「ですが……」 「どんな立場の人...
  • 穿つ流星15
    「セシル!」 カインは、はっと起き上り口を開いた。 「目が覚めたのかカイン?」 「ああ……見ての通り体はなんともない。元気だ……」 「良かった」 純粋に嬉しさを言葉に出すセシルに対し、カインの様子には陰りがある。 「俺は確かに操られていた。その時の事は殆ど全部と言ってもいいくらいに覚えている。意識はあったのだ。 自分がとんでもない事をしていることも――自覚してたつもりだ」 悔しさがカインを支配していた。結局自分のやってきた事は誰かに利用されていただけ。どんなに意思をかがけようとも どんなに目的だと主張しようが、駒の一つに過ぎなかった。荒風が吹けばあっという間に崩れてしまう、その程度の脆い繋がり。 「だが、それも終わりだ。俺は奴、ゴルベーザにすら見放された。もはや何処にもいくところなどない」 「操られていたんだろう……僕は責めたりなんかしない」 ...
  • 穿つ流星10
    カインを抱えての半壊した機械塔の登頂は終わりを迎えた。 最上階――おそらくここにローザはいる。そう……遂に三人がそろう時がきたのだ。 バロンの門出から此処まで、きちんとした形で向い合うのは初めてだ。 「テラ」 だが……その前にもう一つやらねばならぬ事がある。 今までのセシルの長い旅路の中に、付き合ってくれた仲間――その一人である老魔道士テラ。 彼はどうなったのであろうか? 封印されし究極魔法メテオ。 テラがそれを行使した事は最前のゴルベーザとの会話でわかっていた。 そして、その事実が何を意味するのかもセシルには理解できていたのだ…… 最も今のゾットの崩壊っぷりをみればただならぬ事がおこっているのは理解できるであろう。 最上階には今までの狭苦しく張り巡らされた迷路とは違い、がらんどうとした大広間が広がっていた。 下の階へと続く階段と最深部へと続く扉...
  • 穿つ流星7
    砂埃と煙が視界を支配する。 「カイン」 おそらく近くにいるであろう友の名をセシルは読んだ。 予想通り、セシルが目を覚ましたすぐ近くにカインは横たわっていた。 「気絶しているだけか……」 それを確認してほっと一息つき、今度は周りを見回した。 「一体どの辺りなのだろう?」 一人ごちた。あれだけの爆風が訪れたのだ。遠くまで飛ばされていてもおかしくない。 それにしても……? なんだったのだろう今のは? 周囲の確認をしていく内に、それの原因が疑問に浮かび上がってきた。 「まさか……テラが」 可能性は高いのではないか。ポロムやパロムも禁忌と言っていた魔法。 これほどまでの威力なのだ、並はずれた事態でない事は間違いないであろう。 「ここで待っていてくれ――なんて事はできないか……」 いまだ気絶したまま、目を覚まさないカインの肩を抱え歩きだした。...
  • 穿つ流星5
    瞬間、世界は震撼した―― 世界中のありとあらゆる生物が異変を感じ取ったであろう。 一瞬の内に強大な魔力が世界の一点――ゾットの塔へと集約されていく。 それは一人の高名な賢者の全身全霊の想いと力。 それは復讐に燃える黒き炎。 それは愛する者を大切に思う人として当然の心。 様々な要素が含まれるその魔力を察知し、甚大な威力を誇る大粒の隕石状の物体が大空より大量に降り注ぐ。 ただ一点に。今紛れもなく世界の中心として動いている場所ゾットへと向かって。 その世界の中心で精一杯に自我を叫び、血肉を己の想いへと変えた賢者の気持ちに応えるべく。 ミシディアの中核にそびえる祈りの塔。ゾットより遥か離れた遠方の地でも巨大な魔力は感じ取られていた。 「長老これは――」 祈りに専念していた一人の魔道士が耐えかねたかのように話を振る――しかし、長老は無言を貫きとおす。...
  • 穿つ流星4
    「無事か!」 ゴルベーザとテラ。二人に割って入る影が二つ。 「テラ殿!」 「お前たちか――」 くぐもった声で返すテラ。 「すまなかったな! 少し遅れてしまった!」 その理由は最前までの戦いのただならぬ雰囲気のテラに気後れしてしまった為なのだが……その事に一切悪びれること もなく、むしろ朗らかにシドは言った。 「私達も加勢しますぞ!」 ゴルベーザという巨大な敵との決着を感じ取ったのだろうか? 珍しくシドに負けぬ勢いでヤンが鼓舞の言葉を上げた。 「そうじゃ! セシルがおらぬが、一緒に戦えばやつとて――」 「いや――私は大丈夫だ――」 だが、老魔道士から出た言葉は、勢いづく二人の期待を無下にするものであった。 「なんだ折角来てやったのに!」 出鼻を挫かれた。怒りというよりもがっかりと言った感じの台詞であった。 「直に呪文は完成する。そう...
  • 穿つ流星2
    体に喝を入れ魔法を詠唱する。 ファイガ――炎の最上級魔法がゴルベーザの身を包む。 ブリザガ――凍てつく氷結の刃が漆黒の鎧を貫く。 サンダガ――幾多もの稲妻の渦がゴルベーザを囲いこむ。 そのどれもがすさまじい威力のはずであった―― ゾットの機械塔を切り刻み、幾重の爆風、爆煙が舞った。 だが、その中であっても漆黒の男は未だ、打ち倒す事は出来なかった。 「ほう……すばらしいな。たしかにこれでは私も完全に安全とは言い切れないな」 だが、危機的な言葉を口にするゴルベーザの言葉の影から常に余裕の言葉が見え隠れする。 「残念だが、これでは私を倒すことは出来ぬな。まずは、今の一撃は確かに見事であった。 だが、今と同じ程の威力の魔法を私に叩き込む事ができるのかな?」 「…………」 無言を貫くテラ。 確かに奴の言う通り、今の火氷雷の最上位魔法の一...
  • 穿つ流星3
    「まさか……メテオか?」 ただならぬ雰囲気を感じ取ったゴルベーザは自分から答えを導き出した。 「しかし、今のお前の体ではメテオを行使できるはずはない!」 珍しくはっきりと否定するゴルベーザ。 「ふ……」 幾度も続いたゴルベーザの指摘も、もはやテラには届いていないようであった。 「分かっているのか? あの魔法は特別なのだぞ! そんなものを使えば!」 黒魔法、白魔法。両者の全ての魔法を含めた中でも格段の破壊力を持つ魔法メテオ―― 「構うものかい!」 いつもにまして曇りも淀みも無い口調のテラ。 「あれを食らえばこの体も持たぬかもしれぬ――」 「行くぞ!」 ゴルベーザの言葉の意味をテラはどこまで理解できたのか分からない。 「やらせるか!」 さすがの危機を感じたが、慌てつつも、咄嗟の判断でゴルベーザは攻撃を開始する。 いかにメテオといえど弱...
  • 穿つ流星9
    「ふん、敢えて私に挑むというのか……見逃してやろうと思ったものの」 「……」 「私もこのザマだが、お前も相当疲弊しているのだろう?」 その通りだ。弱体化してるとはいえ巨大な力を持つ者にたった一人で挑むのだ。その上、気絶しているカインを守りながら。 分の悪い戦いであるのは明白だ。 「どうやらお前達には計画性という言葉がほとんど存在せぬらしいな!」 どこにこんな力を残していたのだというような勢いの魔法がセシルへと向けられた。 「ぐ――」 慌てふためき、身を翻しカインの守る。 自分はまだ意識がある。だが、カインは未だ覚めぬまま。攻撃がくるという意識のないままの奇襲は百戦練磨の戦士と いえども危険であることに変わりない。 自分よりもカインのダメージを抑えることが先決だ! その判断は正しかったのか……? 「ふん他愛もない!」 今の直撃が響いた。...
  • 穿つ流星8
    ゾット内はあちこちが破損し、迷路のような道であれも整頓された道の面影は無く、瓦礫の点在する道は 移動の労力は以前に比べると格段に掛かるようになっていた。 それに加え、常に薄黒い煙が周囲を覆い尽くし視界を遮り、足元だけでなく、前の見通しも立たぬほどで あった。 それに加え気絶したカインを抱えた状態なのだ。少し移動するのですらひどく骨の折れることであった。 「!」 どれほどまで歩いた時だろうか。セシルの視界に<それ>が入ってきたのは…… 漆黒の鎧に身をまとったその姿――声は何度も聞いたが直接会うのはファブール以来であろうか。 「ゴルベーザ!」 セシルは思わず声を荒げた。バロンからこの道まですべてはこの男が原因でもあるのだ。 「ぐっ……セシルか」 どうやら傷ついているようだ、苦しそうな声を上げている。 「まさかお前たちの仲間にメテオを行使できるもの...
  • 穿つ流星6
    やはりカインはカインであった。 たとえ心を操られていようが、槍先から繰り出される一撃は見間違うことの無いバロンの竜騎士のものであった。 以前、ファブールで相まみえた時は自分の気の動転せいや、カインが何故こんなことをするのか戦いながらも真意を探る事を考えてばかりであった。 そして繰り出された黒き一撃にカインはもはや自分とは違う……なにか黒き者に侵され染まりきって しまった しかし、今少しばかり冷静になって見ると、カインの腕は悪に染まりつつあっても、まだ竜騎士と しての腕前は衰えておらず、消えていない。 その事が嬉しかった。だが、それと同時に観念的でない現実的な問題がセシルを困らせていた。 「このままではいつまでたっても――」 そう、実際に決着をつけた事はないとはいえ、セシルとカイン。互いに何度も切磋琢磨し合った仲なのだ。 実力的には五分五分。それも手の...
  • 穿つ流星25
    「こうして一緒に戦うのはいつ以来かな……」 「ミスト時以降だね」 眼前に迫るバルバリシアを前にセシルとカインはそんな遣り取りを交わしていた。 「あの依頼を受けた時か……悪いことをしたな」 「リディアの事……?」 「ああ」 ミストに向かう途中、カインとの共闘の末に霧の竜に打ち勝った。だが、それは幼い召喚士の大切な人物を 奪ってしまう行為であった。 「俺はあの時……炎で焼き裂かれる町を見た時、笑いが止まらなかったんだ」 「……」 「おかしな言葉だろうが、だけど本当なんだ。苦しむ人々や崩れ落ちる建物、泣き叫ぶ少女を見て、何故か悔しさや憎しみ、恐怖 よりも先にケタケタと笑いが漏れたんだ……自分でも少しどうかしてると思った……」 セシルは黙って続く言葉を待った。 「今でもその気持ちをきちんと言葉にすることは出来ない、でも俺は――あのの俺は他人が苦しんだり、酷い目にあってるの...
  • 穿つ流星26
    瞬時に、幾多もの箇所から風が吹き荒れる―― 風はやがて一つの場所へと集う……バルバリシアを中心とした一点へと集まったそれはやがて刃と思えるほどの鋭さを備え、 彼女の身を守るかの如くセシル達の前へと立ちふさがる。 それは諸刃のような鋭さの武器としての役目を果たしているように見え、強靭な鎧として彼女の身を守る鉄壁の壁の役割 の両方を果たしているように見えた。 「まずいな……」 「どうしたカイン……?」 言いながらセシルは少し照れくさい気持ちになった。 本来なら――長い付き合いのある戦友に対して相槌を打つ事などは日常茶飯事の事であるはずだった…… しかし、長い対立の末に久し振りといえる<戦友>と呼べる相手に<戦友>として相応しい会話をするのだ。 まだ違和感が抜けない。 ひょっとしたら、平静を装っているように見えていきなり背後から裏切るのではないのかと不謹慎な考えすら、ふっと...
  • 穿つ流星23
    「カイン、待って!」 間にローザが割って入る。 「バルバリシアも!」 「ふん……ローザかい!」 バルバリシアはカインだけでなく、ローザの事も知っているようであった。 「今更どうしたっていんだい!」 「私達も始末するつもりね」 「そうさ」 「だったら、何故私を助けたの?」 その言葉にセシルは驚いた。どういう事だ? バルバリシアがローザを助けたのなら、何故今になって始末する必要があるのだ? 「どういう意味だ!?」 驚いたのは全ての事情を知らないセシルだけではなかった。カインも今の事実には驚いているようだ。 「私はゴルベーザに拘束されて始末されようとしてたわ……正直もう駄目かと思ってた。セシルやカイン達が助けてくれるのを 祈るしかなかった……」 その事はセシルも承知していた。だからカインと共に急いでローザの元へと向かったのだ。しかし、結果的にその心配は杞憂に終わった。...
  • 穿つ流星20
    「ギルバート達はいないの……?」 「彼は今、病床に伏せっておられます」 「え!」 言い淀みかけていたセシルに助け船を出したのはヤンであった。 しかし、堅気な性格の彼の言葉は逆にローザの心配を強くしたようだ。 「安心して……ローザ。ギルバートはね、旅の途中で少し怪我をしただけだよ。そんなに重い怪我では なかったからもう大丈夫だよ!」 嘘は言っていない。ギルバートの命に別状はない。 「そうだよね……ヤン」 「かたじけない」 自分の言葉にフォローを入れてくれた事に感謝の言葉を述べるヤン。だがその顔はまだ曇った表情である。 その表情から、やはりヤンもセシルと同じ気持ちであったのだろうと確信する。 ローザが捕らわれた後、すぐさまセシル達一向は目的を果たすべくバロンへと船を出した。 結果、セシルは仲間達と離れバロンから数えて二度目と言えるべき旅立ちを...
  • 穿つ流星22
    <ごちゃごちゃやっとる場合ではない――> シドの一声がゾットからの退避の幕開けとなった。 ゴルベーザとテラ。野望と復讐の激しいぶつかり合い。実際のパワーとして魔力がぶつかりあった。そしてその激戦のプレリュードを打った 古の魔法メテオ。 機械仕掛けの塔ゾットが受けたダメージは半端なものではなかった。 様々な思惑が渦巻いた舞台は、用済みだと言わんばかりの勢いで崩壊し始めている。 「ここは危険です――早く脱出せねば」 この困難な迷宮の脱出に先陣を切るのはヤンであった。 「ヤン無茶はしないでくれよ!」 危険を顧みず颯爽と歩を進める彼を気遣うようにセシルは言葉をかける。 「心配には及びません。丈夫な事が取り柄なのですから――」 常に仲間を気遣う事を忘れない堅気なモンク僧の言葉は途中で途切れた。 「ぐっ!」 突如、風を切るかの音と共に目前から何かが飛来し、先頭に立つヤンを切り...
  • 穿つ流星28
    「行くぞ、セシル!} そして、その終わりを見届けぬうちにセシルへと言い放ち、駈け出そうとしていた。 「ゾットの崩壊は始まっている。早くシド達の元へ行かねば間に合わんぞ!」 「ああ!」 セシルも慌てて呼応する。 だが、既に崩壊を始めてからかなりの時を経ているゾットの塔を脱出するのはかなりの困難を要する事 は想像に容易かった。 「くそッ!」 「二人共! 私に掴まって!」 カインとセシルが分の悪い駆けに出ようとした瞬間、二人を呼びとめる声がした。 ローザである 「ローザ?」 「早く!」 考えている時間は無さそうである。二人はすぐさまローザの手を取った。 瞬間、セシルの視界は少しだけ歪んだ。 「これは……」 極一部の空間に捻じれを生じさせ、その限られた場所にいる対象――人や物――を別の場所へと移動させる。 転移魔法――その詠唱には強力な攻撃魔法程の時間がかからない...
  • 穿つ流星24
    「シド、悪いけど先に言っておいてくれないか」 「何? どういうことだ?」」 セシル以上に話に取り残されていたシドは自分に御鉢が回ってきた事、そしてセシルの急な要望が不可解であった事に対して二度の 驚きの声を上げた。 「あの魔物の狙いはどうやら僕達三人だけのようなんだ……だからヤンと一緒に」 「それだけでは納得いかんぞ!」 シドはすぐには首を縦には振らなかった。当然であろう。 「やっと皆がそろったのだ! お前達を置いていくことなどできるわけがないであろう……」 老技師は自分が今この場所に於いて不要だとされている風潮に対して怒っている訳ではない。 「ここでお前達三人を残していけばまた帰ってこなくなるのではないか? 儂はそれが怖いのだ」 セシルとカインの旅立ちで残されたのはローザだけではなかった。シド、赤い翼の仲間達も当然ながら残された者として寂しさを 持っていた。 「シ...
  • 穿つ流星27
    「ふん正面から来るなんてね……」 愚かな行為だ。そうバルバリシアは言いたいのであろう。 「まずはセシル。お前から葬ってやろう!」 バルバリシアの周囲に漂う風刃が容赦なくセシルへと襲いかかる。 「ぐっ!」 痛みがセシルの全身へと走る。しかしここで倒れることは決してあってはならない。 傷を堪えながらも上空へとちらりと目をやる。周囲に巻き起こる風によって完全な視界を確保する事は出来てはいないが、 友の蒼き鎧の姿を朧げながら確認することが出来た。 <此処で倒れればカインも――> 高い上空で一撃の機会を伺っている竜騎士の攻撃が今戦略の骨子である。この作戦が成功しなければ、状況は防戦一方、 悪くなっていくばかりであろう。 仲間達を守り、常に楯となる。パラディンである自分に課せられた使命とでもいうのだろうか。 その気概がセシルを踏ん張らせた。 「しぶといね……」 バルバリシア...
  • 穿つ流星21
    「…………」 ローザから凝視されてもカインは顔を落として無言を貫いていた。 「どうして……?」 ローザからこぼれる疑問の声。 無理もない。先ほどまでのゴルベーザの意に沿って動いていた自分の様子は彼女も充分に見ていたはずだ。 「安心して……もうカインは大丈夫だよ。ゴルベーザに操られていただけなんだ……」 「そう……良かった」 カインが無言を貫き通している間にもセシルによって自分の行いが弁護されていく。 それに対してローザも安堵したような言葉を上げる (俺は……) しかし、セシルやローザが納得しても自分の気持ちの整理はなかなかつかなかった。 先程セシルやシド達の前では操られていた自分に対しての悔しさを吐き出して、自分の行いに対して詫びる事も出来た。 しかし、彼女――ローザを前にしては、カインは何か言葉を出すことに躊躇いがあった。 自分がゴルベーザへと付け入られた最たる...
  • 絆17
    「しかしよ……お前みたいな奴がなんでまたセシルと行動してるのかちょっと疑問だぜ」 道中にエッジがぽつりと呟く。エッジからすれば軽い一言であった。 「……!」 しかしカインは足を止めエッジに振り帰る。 「何故……そう思った……?」 「えっ……ああ……嫌よ、お前は何処か近寄り難いっていうかさ。優等生的なセシルと一緒にいるにしちゃ 影がありすぎる……プライドが高いっていうか……」 エッジからしてみればカインやセシルは初対面の相手だ。詳しい事情を知らないものが率直な言葉を述べた だけのつもりだ。 「ふふ……面白い奴だ」 カインは苦笑する。そこには怒りの色はない。 「どうした……?」 好き放題言ったのだ。てっきり激怒するのではないかと思ったが、かえって気持ち反応だ。 「いや、本当面白い奴だ。本当に……俺とセシルとローザは幼馴染だ」 少しだけ間をおいてカイン 「何……! ...
  • 一節 航海17
    「・・とことん、逃がさないつもりなのか・・!」  もはや彼らになす術は無かった。神の絶対的な仕打ちは、それに抵抗することが罪ですら あるかのような思いを、船員たちの弱った心に植え付けていた。残った船員たちはただ終わりが 齎(もたら)される時を呆然と待ち、船長は船の舳先に座り、感慨深げに海を眺めていた。 荒波に覆われた水面には、先ほど飛び込んでいったヤンの姿も、水に沈んだままもはや見えない。 セシルは憮然として、地に視線を落とした。やり場のない絶望が彼を満たし、それに抵抗する ように彼は拳を床に叩き付けた。 (ここで終わりなのだろうか、・・・こんなところで・・)  セシルは膝をつき、目を閉じて胸の傷跡に手を添えた。 (・・・ごめんよ・・ローザ)  抗う気力を無くした船は、ただ引き寄せられるのみであった。  やがて、無数の悲鳴と...
  • 三節 山間17
    「じゃあ、そろそろ行くよ二人とも。きっと空耳か何かだよ」 「はい、セシル様」 セシルに声を掛けられると、ポロムは途端に上機嫌になった。 「行きましょう!」 元気よく駆け出そうとする。 「あーあ、全く調子いいぜ」 少し顔を膨らましたパロムもしぶしぶといった感じで歩き出す。 「しかし、さっきの声は本当に何だったんだろうな?」 二人を見送るセシルは釈然としない思いであった。 彼らにはああはいったものの、とても空耳には思えなかったからだ。 「やはり、お主にも聞こえたのか?」 後ろからテラが同意を求めるかのような疑問を投げかけてくる。 「二人に嘘を言うのは気が引けましたけど……」 「やはりお前は優しすぎるぞ。いずれはその甘さが命取りになる可能性もあるぞ、 少しは他人にも厳しくならないとな」 「……分かりました……」 「では行くか」 ...
  • 二節 試練17
    「・・わかりました・・・」  ────運命。あまりに実感の湧かない言葉。  だが、今このとき自分がここに、それもたった一人で訪れたことが偶然とは思えなかった。  この人は試練と言う。何だっていい、もしも僕が、既にその道を歩み始めているのだとしたら。  ・・どのみち、今の僕にはこの人にすがるしかない。信じてみよう、この人の言葉を。  他のなによりも、僕自身を救うために。  「では・・、すぐにでも東に向かおうと思います」 「あいや、待たれよ」  踵を返すセシルを長老が引き止めた。 「多くの者が試練の山を志していったが、誰ひとりとて戻ってはこなかった。そうして志半ばで 倒れていった彼らの骸は山の魔物にとりつかれ、今では山は不死者たちの巣窟じゃ。そなたの 暗黒剣だけでは分が悪かろう。ひとつ、魔導士の供をつれてゆくがよい」 「供・...
  • FF5 17 海賊2
    3人は今まさに海賊船の舵の前に居る。 結局『ガラフ案』が採用になった、というより提案者が言う通りそれしか方法が無かった。 バッツは腹をくくっていた。もうなるようになれ、と。元々あてのない旅なんだからこれでいいじゃないか、と。 3人が乗り込んだ海賊船は驚くほど手入れが行き届いている。 『海賊』と言うイメージからもっとゴチャゴチャしてる事を想像していたからなおさらだ。 ここのリーダーは相当しっかりしてるんだろう。 だから疲れた部下があんな風に居眠りしていたのかもしれない。 バッツはそんな事思いながら舵を手に取った。 「よーし、出発だぁ!行けぇっ!」 舵をぐるぐる左右に動かすバッツ。その顔はまるで子供のように無邪気だ。 「………あれ?」 バッツの想いとは裏腹に船は全く動かない。 「やっぱり風が無いから…」 レナは力なく呟く。またし...
  • FF5 63 飛竜17
    一瞬我を忘れたマギサは、ハッとして空中で体勢を整える。 しかしもう遅すぎた。 マギサは今断崖へと向かって空中を進んでいる。そのまま行けば何とか崖に落ちるか落ちないか、というところだろう。 ファリスが、かすかに震える掌をマギサへと向けた。 「アッ・・・」 思い出す。つい数秒前、マギサがガラフへと放った魔法。そのときのマギサを流れる魔力の練られ方、流れ方・・・全てを。 その手に流れる自らの魔力を感じ、解き放つ! 「エアロ!!」 放たれた風の塊は、マギサの服と体を引き裂きながら、吹き飛ばす。 エアロ、そして特大のファイアと連続して魔法を放ったマギサは、瞬時にさらに魔法を放てるほどに魔力を練ることができ なかった。 下級の風の魔法、しかしマギサほどの体重の人間を2mほど空中で押し出すには十分な威力だった。 「ウ・・・アアアアア...
  • 罪の在処17
    クリスタルルームにいる誰もが黙って彼女の言葉を聞いていた。 「まずはあの時の事を話さなきゃ……覚えている?」 セシルとヤンはすぐさま頷いた。カインとローザは黙ったままだ。 「セシル説明を?」 「ああ、ローザが捕らわれた後に僕たちはすぐさまバロンへと向かった。シドの協力を借りる事、そしてローザを 助ける為、だが途中で謎の海龍に襲われて離ればなれになった……」 リディアに促されセシルは二人に簡潔に説明する。 「そうだったの……」 ローザが口元に手を当て嘆くような口ぶりで答える。カインの方も無言ではあるが考え込んでいる表情だ。 お互いに色々あった時期だ……その裏でこのような事があったのは思うところがあるのだろう。 「あの時の原因は全て私にあるの……」 「!」 その言葉はセシルを凍りつかせるには充分であった 「そんな訳はない!」 ヤンが慌てて否定する。セシルも同じ気持ち...
  • 四節 これから17
     言いながらセシルはがっかりしていた。先程思いついたばかりの利点が、もう通用しなくなって いることに気付いたからだ。  確かに自分が赤い翼のセシルだということは知られていないだろう。だが先程の騒ぎで、今度は 肝心のパラディンの自分の顔も、衛兵に覚えられてしまった。晴れて正真正銘のお尋ね者である。 こうなってしまっては迂闊に動けない。  とりあえずこの場を離れなくてはならなかったが、どこへ行ったものか。  安易に宿などに泊ればすぐに見つかってしまうだろうし、第一、町人の様子を見る限り、泊めて くれるかどうかすら怪しいものだ。  あれこれ考えを巡らせかけて、セシルはやめた。  考えるまでもない。この街にきて、どのみち自分が頼れる場所など、一つしかなかった。 「行こう、こっちだ」  街の一端を示して、セシルたちは足早に歩き出す。ぼんやりと成り行きを見守...
  • 一節 刻む足跡17
    カインは有名な家柄に生まれ父に続き、竜騎士を率いた。 それだからローザとは誰もが認めるくらいに相応しかった。 しかも、ファレル一家とカインの父親は親戚にあたり、ローザの母も カインとの付き合いは好んでいたのだ。 そして、カインもローザに対し、特別な意識を持っていた。 ローザは……ローザはその関係を知っていた。 そして自分の思いが何処にあるのかも自分で分かっていた。 でも、それでも……いつまでも続く三人の関係を望んでいた。 だから彼女は必死に、孤独な戦いを続けていた。 そう、自分やカインが彼女に対しての意識を変えていく中で彼女だけが。 自分の気持ちを抑制してまで。 そして自分はそれを知らなかった…… 挙げ句、ローザの気持ちにも答えずに……
  • 二節 剛の王国17
     ローザは名高い竜騎士と白魔道士を両親に持ち、カインに至っては前竜騎士団 団長の実子であった。そんな学内でも一目置かれた立場の二人が、なぜ自分などに 話しかけてきたのか、セシルは今でも不思議に思っている。それでも、それは彼に とってたまらなく嬉しい出来事だった。  彼らは三人だけの特別に親密な輪を形成し、いつも行動をともにした。セシルと カインは幼い少年らしく、すぐにお互いの技に興味を持ち、何度も手を合わせた。 未知の武器であった槍との出会い。加えて、格の違いすぎる王との稽古と違い、 実力の均衡したカインとの仕合は楽しかった。二人は日夜お互いを切磋琢磨しあい、 めざましい勢いで進歩を遂げていった。  また、敗者の方は、治療と称したローザの怪しい白魔法の練習台にされるという 過酷なルールが、いっそう二人を必死にさせた。  様々な時間を共有し、...
  • 三節 Two of us17
     やがて決意したようにローザはそっと立ち上がると、ゆっくりとカインに歩み寄って いった。慌てて止めに入るヤンを制して、踞る友の側に膝をつく。そして、彼女は震える カインの背にそっと手をかけようとした。  そのとき、コツリ、と床を踏みしめる音が響いた。  固く、乾ききったその音は気味が悪いほどよく響きわたり、その場の全員が言葉を 発することも出来ぬまま、ただその主が訪れるのを待っていた。  開かれた扉を、一点に見つめたまま。  やがて、どす黒い影と、凍り付くような空気を纏ってその男は現れた。 「何を血迷っているのだ・・カイン」  カインの震えが止まった。彼の言葉を待たずして、皆はその男の正体を悟っていた。  「ゴルベーザ・・様・・」 「ゴルベーザ・・!」  長身のヤンよりもさらに二回り以上もあるその男は、巨大な...
  • 三節 光を求めて17
    地下水脈の最深部──ダムシアンに続く闇と静粛に支配されたこの場所に響くのは中央に流れる滝の音だけであった。 「奴はいつもここで獲物を取ろうと待ちかまえている」 テラはそう言って滝の下にできている湖を指す。 「お前は奴を引きつけろ、私が魔法で援護する」 「分かりました」 セシルは剣を抜き近くの足場に飛び移った。 「あとこの娘にも手伝ってもらおうか」 そう言って後ろにいるリディアの方を見る。 「黒魔法は使えるか?」 「…………」 無言のまま首を横にふる。 「そうか……分かった」 その声はどこか腑に落ちない物であった。 セシルはその声に疑問を感じつつも周りの様子に意識を集中する。 辺り一帯は静かであった、本当に此処に魔物がいるのだろうか? 「セシル後ろに!」 そんな事を考えているとリディアの叫びが聞こえ後ろを振り返る、だが振り向く前...
  • 六節 双肩の意志17
    玉座が備え付けられた王の間と、城の中心部にある大広間。 この場所は直接繋がっている訳ではない。 その間には、控えの間と呼ばれる小広い部屋がある。 王との謁見を許された者はまずはこの部屋に通される。その後、一通りの手続きの 上で、改めて王との謁見に入る。 当然ながら、王が殺されてから今までの間、新しき王は謁見する事を許さなかった為、 しばらくは使われていない。 そして、二度と聞きたくないと思っていた、その声が聞こえてきたのは、 セシル達全員が王の間より足を踏み入れた直後であった。 「クカカカ……」 「カイナッツォ……!」 セシルは静かに声の主の名を呼んだ。 「この俺を倒すとはなあ。だがおれは寂しがり屋でな。クカカカ……」 その言葉がセシルの読みが当たっている事を示す。更にはカイナッツォが何かの 企み――策を用意している事を想像させ...
  • 二節 再開の調べ17
    「ところで、この竪琴を弾いている方をご存知だろうか?  以前はぐれた仲間のものと、似ている気がするのだが」 「竪琴、ですか?」 「そうだ、教えてくれないか?」 ヤンが用件を思い出してくれたおかげで、セシルは居たたまれない思いから解放された。 楽器を手にした巫女たちが姿を隠しても、最初に聞いた竪琴の音だけは未だに続いている。彼らの会話を聞いてでもいたように、ぴぃ──ん、とひときわ高く澄んだ音を響かせた。 「……もしかして、今の音ですか?  これは水琴と申します。地底に据え付けた瓶に水滴が落ちると、空隙に反響してこのような音がするのです。  人が奏でている訳ではありません」 「そう……なのか」 「ですが、ひとつ思い当たることがあります。少し前、この近くに流れ着いた者の話が、あなた方のそれと良く似ているのです。  当人はダムシアンの王族と名乗っています...
  • 五節 忠誠と野心17
    「その……魔物になっているのを直接この目で見ましたから……」 嘘はつけないだろう。それにつく理由が全くない。彼女にとってこの二人は長らくの 不安を打ち消すために現れた救世主のようにすら見えたからだ。 「よし、そうと分かったなら急ごうか!」 「ええ、早くしませんとセシルさんが……」 「え! ちょっと!?」 またもや、新たな疑問がわく。 「セシルさんって……今此処に来ているんですか?」 「え……あんちゃんの事しってのか!」 その事にパロムは驚いたようであった。 「それならば私も連れて行ってもらえますか……」 合ってどうするのだ? 彼は自分の事など知らない。そういう間柄のはずなのに…… 「どうする?」 「訳ありのようですわね……一緒にいきましょう」 そして答えが了承であった。 「はい!」 だが、今此処にセシルがいるなら猛烈に合いたい。そう思った。それだけであった。
  • 一節 闇と霧の邂逅17
    そんな二人を余所目に炎はますます勢いを強くしていた。 ほんの少し前まで人が暮らしていた建物は見るも無残な炎のかたまりと化して 中から逃げ場を失った熱気が勢いよく窓や扉を吹き飛ばす。 ――ガシャン! 粉々になった窓ガラスと内側から噴出す炎の渦が、身を竦ませて怯える少女にも襲い掛かろうとする。 吹き荒れる火の粉を軽く手で振るい払って、低い声でカインはセシルに問う。 「それよりここは危ない。早く村を出ないと…あの子はどうする?」 セシルはカインの方へ向き直らず、軽く頷いて意思を伝えた。 「ぼくらが連れて行くしかあるまい! さあ…ここは危険だ。とにかく…ぼくらと一緒に!!」 セシルは視線を少女の方へ戻した。少女はまだ呆然と膝をついたままで赤い炎を背に やり場がないように手を宙に浮かせて悲痛な表情でセシルとカインを見ていた。 株との隙間から見える世界か...
  • FF4 四章
    四章 一節 航海1 297 一節 航海2 297 一節 航海3 297 一節 航海4 297 一節 航海5 297 一節 航海6 297 一節 航海7 297 一節 航海8 297 一節 航海9 297 一節 航海10 297 一節 航海11 297 一節 航海12 297 一節 航海13 297 一節 航海14 297 一節 航海15 297 一節 航海16 297 一節 航海17 297 二節 試練1 299 二節 試練2 299 二節 試練3 299 二節 試練4 297 二節 試練5 297 二節 試練6 297 二節 試練7 297 二節 試練8 297 二節 試練9 297 二節 試練10 297 二節 試練11 297 二節 試練12 297 二節 試練13 297 二節 試練14 297 二節 試練15 297 二節 試練16 297 二節 試練17 297 二節 試練...
  • FF4 七章
    七章 一節 地底世界1 地底世界2 地底世界3 地底世界4 地底世界5 地底世界6 地底世界7 地底世界8 地底世界9 地底世界10 地底世界11 地底世界12 二節 罪の在処1 罪の在処2 罪の在処3 罪の在処4 罪の在処5 罪の在処6 罪の在処7 罪の在処8 罪の在処9 罪の在処10 罪の在処11 罪の在処12 罪の在処13 罪の在処14 罪の在処15 罪の在処16 罪の在処17 罪の在処18 罪の在処19 三節 去りゆくもの 残されるもの1 去りゆくもの 残されるもの2 去りゆくもの 残されるもの3 去りゆくもの 残されるもの4 去りゆくもの 残されるもの5 去りゆくもの 残されるもの6 去りゆくもの 残されるもの7 去りゆくもの 残されるもの8 去りゆくもの 残されるもの9 去りゆくもの 残されるもの10 去りゆくもの 残されるもの11 去りゆくもの ...
  • 一節 新たなる旅立ち17
    「リディア……」 ミストがどうなったのかはここに来るまでにローザも見ていたし、リディアの事もセシルから聞いていた。 「…………」 ローザはそっとリディアの頭を撫でた。 「ねえ、リディア。こんな事を言える立場ではない事は分かっている。でも言わせて、 あなたは逃げているわ」 「逃げている?」 涙声のリディアが聞き返す。 「そう、自分が悲しいから目の前の事を全て見ないようにしてる。そうやって自分だけ楽をしようとしてる」 「…………」 静粛の中、ローザはさらに続けた。 「リディアがそうしてる間にもっと多くの人が悲しむ事になるわ。だから……勇気をだして」 「でも……」 「大丈夫よ……もしリディアが苦しくなって逃げ出したくなっても私が支えてあげるから。あなたは一人ではないわ」 そう言った後、少し笑ってこう続けた。 「もちろんセシルやギルバート...
  • FF4 三章
    三章 一節 モンク僧1 299 一節 モンク僧2 299 一節 モンク僧3 299 一節 モンク僧4 299 一節 モンク僧5 299 一節 モンク僧6 299 一節 モンク僧7 299 一節 モンク僧8 46-48 一節 モンク僧9 46-48 一節 モンク僧10 46-48 一節 モンク僧11 299 一節 モンク僧12 299 一節 モンク僧13 299 二節 剛の王国1 196-199 二節 剛の王国2 196-199 二節 剛の王国3 196-199 二節 剛の王国4 196-199 二節 剛の王国5 196-199 二節 剛の王国6 196-199 二節 剛の王国7 196-199 二節 剛の王国8 196-199 二節 剛の王国9 196-199 二節 剛の王国10 196-199 二節 剛の王国11 196-199 二節 剛の王国12 196-199 二節 剛の王国13...
  • FF4 五章
    五章 一節 刻む足跡1 299 一節 刻む足跡2 299 一節 刻む足跡3 299 一節 刻む足跡4 299 一節 刻む足跡5 299 一節 刻む足跡6 299 一節 刻む足跡7 299 一節 刻む足跡8 299 一節 刻む足跡9 299 一節 刻む足跡10 299 一節 刻む足跡11 299 一節 刻む足跡12 299 一節 刻む足跡13 299 一節 刻む足跡14 299 一節 刻む足跡15 299 一節 刻む足跡16 299 一節 刻む足跡17 299 一節 刻む足跡18 299 一節 刻む足跡19 ◆HHOM0Pr/qI 一節 刻む足跡20 ◆HHOM0Pr/qI 一節 刻む足跡21 ◆HHOM0Pr/qI 一節 刻む足跡22 ◆HHOM0Pr/qI 一節 刻む足跡23 299 一節 刻む足跡24 299 一節 刻む足跡25 299 一節 刻む足跡26 299 一節 刻む足...
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