かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「FF6-リターナ本部4」で検索した結果

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  • FF6-リターナ本部4
     ティナが目を開けると、そこはベッドの上だった。 視線を巡らせると、傍らにはロックがスツールに足を投げ出し、 両手を頭の後ろで組んだ姿勢で天井をぼんやりと眺めている。  その横顔を見つめながら、ティナはバナンの言葉を心の中で反芻していた。 自分が、彼らの希望になる……。 希望という言葉はあまりにも漠然としすぎていて、 考えてみても、霧のようにもやもやと捉えどころが無い。  今はただ、あと一歩踏み出す為の勇気が欲しい、ティナは考えていた。 「ロックは…どうしてリターナーに入ったの?」  いきなり声をかけられて少し驚いたようだったが、 ロックはティナに向き直った。 自分の右手をティナの額に起き、 次に自分の額に手をやる。そしてほっと小さく息を吐いた。 「熱は無いみたいだな。頭痛はもう大丈夫なのか?」 「うん。少し眠ったせいで気分は良いみ...
  • FF6-リターナ本部1
     険しい岩山の中に溶け込むようにして、そこはあった。  ティナ達は案内役を兼ねた見張りの兵士連れられ、 草木でカムフラージュされた狭い入り口をくぐった。 その先には、大人一人がやっと通り抜けられるほどの幅の通路が続いている。  その通路を抜けると、内部には自然の空洞を利用して作られた、 やや広めの空間が広がっていた。  ちょうど空間の中央あたりには、質素な作りの木製のテーブルと、 椅子が数脚置かれている。どうやらここは会議所として用いられているようだ。  案内役の兵士はティナ達に椅子を勧めると、 深々と一礼して再び持ち場へと戻っていった。  その後姿を見送ってから、ティナは隣に座っているロックに小声で話しかけた。 「ここがリターナーの本部なの?」  ロックは頷く。 「ずっとここを拠点として戦ってきたんだ。 帝国から俺たちの...
  • FF6-リターナ本部6
     現状では、ティナの力の源を探っていくしか、 帝国に対抗する手立ては無い。もし、ティナが協力を拒否すれば、 リターナー側が勝機を見出す事は永久に不可能となる。  しかもりターナー側につく事をはっきりと表明した今、 フィガロ国も共に自滅は回避できない。 エドガーにとってそれだけは選択できない道だった。 (──ただ、それは国王としての立場の考えでしかない)  エドガーは脳裏に浮かんだ考えを打ち消すと、 心配ないとばかりにティナに微笑んでみせた。 「心配ない。その時は別の方策を探すまでだ。ティナの意思を尊重するよ」  たとえ選ぶべき選択肢が決まっているとしても、  エドガーはティナ自身に自発的な選択をさせたかった。 ……かつての自分がそうであったように。  エドガーは最後にこう付け加えた。 「今の話とは矛盾するようだが…例え決められた...
  • FF6-リターナ本部10
     メンバーをホールに集めると、 バナンはゆっくりと階段を下り、全員の顔を見渡した。 テーブルの方へ一歩足を踏み出したところで、顔をしかめる。 「誰じゃ?こんな所にごみを捨てたのは…」  バナンはぶつぶつ言いながら足元の紙くずを丸めてくずかごへ放った。 ティナがぎくりと肩を震わせたのには気づかず、 バナンはふんと鼻を鳴らした後、改めて口を開いた。 「さて……。 帝国が魔導の力を用い、戦争を始めたのは皆も知っての通りだ。 だがガストラがどうやって魔導の力を復活させたか?…ポイントはそこだ」  ガストラの言葉を受けてエドガーが口を開いた。 「ロックに調べてもらったんだが、ガストラは世界中の学者を集めて、 幻獣の研究を始めたらしい。 こんな北方の雪山の事まで調べ上げるとは、 帝国の幻獣へ執念は並外れている」 「つまり、魔導の力と幻獣...
  • FF6-リターナ本部3
     バナンの容赦のない物言いに、ティナは思わず耳をふさいで悲鳴をあげた。 バナンは構わず、まるで追い討ちを掛けるように言葉を続けた。 「逃げるな!逃げても事実は変えられんぞ!」  そんなティナの様子を見かねたエドガーが、バナンとの間に割って入る。 「バナン様!お考えあってのお言葉でしょうが、 いくらなんでも酷すぎます!ティナは帝国の支配から解放されたばかりなのです。 もう少し時間が必要です」  バナンはエドガーを一瞥し、ふんと鼻を鳴らした。 「時間?たとえ一時、目の前の現実から目を逸らしたところで 時間は何も解決してはくれん。 その事はお前が一番よく知っているだろう、エドガー」 「ですが…」  バナンは何かを言いかけたエドガーを片手で制すると、 ティナを諭すように語り始めた。 「こんな話を聞いたことがあるか? その昔、まだ邪悪...
  • FF6-リターナ本部9
    外に一歩でてみると、洞窟内とは違い、 溢れる陽光と爽やかな一陣の風がティナを包む。 思わずティナは眩しさに目を細めた。 「答えは出たのか?」  振り返ると、岩壁にもたれるようにして、バナンが待ち構えていた。 ティナはまっすぐにバナンを見つめ、大きく頷いた。 「そうか。では聞こう。 我々の最後の希望となってくれるか?」  バナンの言葉に、ティナは再び頷く。 その表情は凛として、決意がにじみ出ている。 「はい。私のこの力が役に立つのなら…。 でも…本当は、まだ少し怖い…」  表情とは裏腹に不安をのぞかせるティナの言葉に、バナンが応えるように頷く。 今や彼の双眸からは険しさが消え、優しさすら宿っていた。 「おぬしが不安な気持ちになるのも無理はない。 だが今は一人ではない。彼らの助けを借りれば、 自ずと道は開かれよう」  そ...
  • FF6-リターナ本部8
    「どうして、私がその事を考えているって…わかったの?」  そうティナがたずねると、マッシュは拍子抜けしたような表情になった。 それを見て、今度はティナが拍子抜けする番だった。 「わかってて言ってくれた…んじゃないの?」  マッシュは大げさに顔の前で片手を振ってみせる。 「まさか。俺は今思った事を口にしただけさ」 「そ、そうなの…」  ティナはあっけらかんとしているマッシュの言葉に、ほっと息を吐いた。  世界の命運さえ関わっている深刻な事態にもかかわらず、 まるでそれを感じさせないマッシュの態度は、 これから重荷を背負おうとしているティナにとって、 逆に心地よいものだった。 「おっと…俺がこんなこと言ってたなんて 兄貴には言っちゃだめだぜ。照れるからなー」  そう言って笑うマッシュの屈託のない笑顔に、 ティナは無意識のうちに自...
  • FF6-リターナ本部7
     ティナが会議の場として利用されている広場に戻ると、 その片隅ではマッシュが黙々と倒立腕立て伏せを行っていた。 マッシュはティナの足音に気づくと、 倒立したまま動きを止めずに言った。 「ティナもやるか?」  マッシュの唐突な誘いに、ティナは慌てて首を振る。 「身体の鍛錬が精神の鍛錬に繋がる、ってのが俺の信条でね」  それだけ言うと、マッシュはまた腕立ての作業に戻る。 切れた息の狭間で数を数えながら、黙々と鍛錬を続けるその姿に、 ティナは声をかけるタイミングを完全に逃がしてしまった。 190センチの巨体が一定のリズムで上下するのをただ眺めていると、 マッシュは体格に似つかわしくない身軽な動きで、 くるりと起き上がった。  マッシュは全身を流れ落ちる汗をタオルで拭いながら、 ティナの目をじっと見つめる。 「俺にはどうするべきかな...
  • FF6-リターナ本部2
    「ティナ」  ふいに名前を呼ばれてティナが振り返ると、 そこには、エドガーと見知らぬ初老の男が立っていた。 たっぷりとあごに蓄えられたひげといい、 さながらライオンのたてがみのように逆立っている茶色の髪といい、 初対面の者を怯えさせる程の威圧感を全身から放っている。  その男はティナを見下ろしたまま、値踏みするかのようにじろりと睨んだ。 「ほう、この娘か…氷漬けの幻獣と反応したというのは」  ティナは‘ゲンジュウ’という言葉を聞きとがめると、目を瞬かせた。 「ゲンジュウ?それがあの生き物の名前なの?」 「生き物?さて、な。 はたしてあれが死んでいるのか眠っているのか、 そもそも生き物なのかどうかすらわからん。 …ティナ、といったか。おぬしはどう考えておるのだ?」  その問いに、ティナは困惑した表情でただ首をふるしかなかった。 ...
  • FF6-リターナ本部5
     歩きながらティナは考えていた。 (大事な人の為に…。 でも、大事な人って、どうやって見つけたらいいのかしら…) 「真剣に考えるのはいいが、悩みすぎると思考の迷路に迷い込むぞ」  気づくと、すぐそばにエドガーが立っていた。 エドガーはティナと目が合うと、にこりと優しく微笑む。  この人なら、だすべき答えを知っているかもしれない。 ティナはエドガーにたずねた。 「エドガーは、どうしたらいいと思う?私には、やっぱりわからない…」 「今、ティナに対して、いきなり我々の希望になってくれ、 と頼む事がどれだけ酷い事かは十分承知している。 それでも、我々はティナに考えを無理強いしたりはしない。 それは帝国のやり方と何ら変わりの無い事だからな」  ただこれだけは覚えておいて欲しいんだが、と付け足してエドガーは続けた。 「ティナがたとえ...
  • FF6-リターナ本部11
    「枕元でばあちゃんが話してくれたのは…本当の話だったのか?」 「魔大戦の存在自体はな。フィガロにもいくつか古い文献は残っているが、 その詳細に関するものはほぼ失われている。 文字通り魔大戦が全てを焼き尽くしたというわけだ」  エドガーの答えに、ロックはお手上げとばかりに両手を広げ、肩をすくめた。 「しかしバナン様、またその時の悲劇が繰り返されるというのですか?」  バナンはふむ、と呟き、腕を組んだ。 「わからん。そもそもがもう千年も前の話じゃ。 それに歴史学者によっても諸説あるからのう。 一説よると幻獣から力を取り出して、人間に注入させたとのことだが…」 「それが魔導の…力?」  ティナの声音は不安に満ちている。  眉間に深い皺を刻んだまま、エドガーはしばらく沈黙していたが、 やがて顔をあげてバナンを見据えた。 「…だとすれば、...
  • FF6-リターナ本部14
     負傷した兵士の応急手当を手早く終え、バナンは立ち上がった。 「こっちはどうする?」  一気に慌しさを増した状況においても、 エドガーの態度はあくまで平静を保っている。 「ロックが足止めをかけているうちに、 レテ川を抜けてナルシェに逃げるのがいいでしょう。 炭鉱で見つかった幻獣の事も気にかかります」 「うむ。では裏口にイカダを用意させよう。 少々危険だが、他に手もあるまい」  バナンはすぐ後ろの兵士に指示を出すと、 自身も小走りで裏口へと駆け出した。  未だ状況がよく飲み込めず、呆然と立ち尽くしているティナの背中を、 エドガーは押し出すように軽く叩いた。 「ここは危険だ。一緒にナルシェへ向かおう。 自分の力を知るいいチャンスになるかもしれんぞ」  ティナは頷き、手渡された長剣を決意と共にしっかりと握り締める。  と...
  • FF6-リターナ本部13
     その時、入り口付近から重量のある物体が床にぶつかったような、 鈍い音が皆の耳に届いた。 「何じゃ?今の物音は…」 反射的に全員が入り口へと向かう。 そこには背中に酷い傷を負った見張りの兵士が倒れていた。 荒い息をつきながら、懸命に身を起こそうとしている。 「た、大変です!バナン様。サウスフィガロ、が…」 「おい!何があったんじゃ!?」  駆け寄ったバナンが抱き起こすと、兵士は苦痛に顔をゆがませながらも、 顔を上げた。 「帝国が、こちらにむかっています。サウスフィガロは恐らく…」 「気づかれたか…作戦を急がなくてはならん!」  バナンは舌打ちし、エドガーを振り仰いだ。エドガーは黙って一度頷く。 「ロック!」  エドガーの声にロックが弾かれたように立ち上がる。 「わかってる。サウスフィガロで内部から敵を足止めするんだろ?」 ...
  • FF6-リターナ本部12
      バナンは周囲の動揺をよそに、再び話し始めた。 「危険だが…もう一度ティナと反応させれば、幻獣が目覚めるかもしれない」 「幻獣は…本当に意思の疎通を図る事のできる存在なのでしょうか?」 「エドガーの疑問はもっともだ。確証は何もない。 だが、ティナならば可能かもしれない。 危険な賭けだ、といわれればそれまでだが…」  バナンの口調は歯切れが悪い。険しい表情のまま大きく息を吐きだすと、 続けて言った。 「いずれにせよ…それを実現させるにはティナの協力が必要だ」  自然と全員の視線がティナに注がれる。 ティナは突然の注目に戸惑ってか、青ざめた顔色で忙しく瞼を瞬かせた。 そんな様子を見かねたロックはそっとティナの側に回ると、 その肩に手をかけた。 「ティナ」  そう言ってからロックはティナにだけ聞こえるよう声をひそめた。 「断った...
  • FF6-Mt.koltz-1
    翌日、日の出とともにサウスフィガロを後にした一行は、順調にその日の行程をこなし、正午過ぎには、コルツ山のふもとに着いていた。 「うっ…気持ちわりぃ…。」 朝からロックは、吐き気と頭痛に苛まれていた。 「自業自得だ。」 エドガーは呆れている。 「ん?ティナどうしたんだ、その靴?」 ようやくロックは、ティナの靴が、昨日までの靴と違うものであることに気づいたようだ。 「えへへ!エドガーに買ってもらったの!」 ティナは嬉しそうに『ダッシューズ』を見せびらかした。 「今日は登山だからな。ティナの足の負担を、少しでも軽くするのは当然だろう?」 「…どうやら、いつものエドガーみたいだな。」 ロックとティナは、お互いに顔を見あわせ笑いあった。 「何のことだ?」 「こっちの話さ。…っと、それよりこいつを渡すのを忘れてたぜ!」 ロックは、道具袋から『ミス...
  • ff6 - 34 figaro
     扉を叩く音に、ティナのまどろみかけていた瞼はハッキリと意識を持って開かれた。 「……誰?」  聞き返した声は擦れて、相手に通じたかどうかは分からない。そのまま少し待っていると、扉は軋んだ音を立ててゆっくりと開かれた。  入ってきたのはロックだった。 「すまない。窮屈な思いをさせてしまったみたいだ」 「ううん、大丈夫」  申し訳なさそうに謝るこの青年の仕草に、ティナ微かに微笑んだ。まだ出会って数時間も立っていないのに、彼は信頼できる、そう思っている自分がいる。  しかし、彼の表情は明るくない。ティナはさっきまで聞こえていた城内の慌しげな様子を思い出し、何があったのかを尋ねてみた。 「ちょっと面倒なことになりそうだ」 「……ガストラ帝国の兵士が来たの?」  少し間があったが、黙ってても仕方がないと思ったのか、ロックは首を縦に振った。 「彼らは……私...
  • ff6 - 06 narche
    「遅い」  ジュンは笑った。 「ドロボウがそんなんじゃ、盗れる宝も盗れなくなるな」  薄い鳶色の髪をした男は、ジュンの言葉に眉を上げる。 「ど・ろ・ぼ・う?」  ジュンは男のその返し方に満足する。もう25にもなるのに、一向に大人にならない。これが、この男の持ち味だ。それがたとえ表面上のポーズでも。 「相変わらず分かってないなぁ、ジュン。俺はトレジャーハンターだぜ?」 「どう違う?」 「ぜんぜん違う、ロマンがあるだろ」  なるほど、楽しげなその双眸には、ドロボウと言う言葉からは程遠い、涼しい光が確かにある。  しかし全身から漂うその身軽な匂いは、やはり堅気のものでもない。  上背はあるがどこかひょろっとした印象のあるこの男は、ロックと言う。  ジュンの所属している地下組織、反帝国派「リターナー」の協力者だ。 「で、俺を呼んだって事は、なんか...
  • ff6 - 15 figaro
    私の力を、知っているのに?  ティナは、明確に言葉にはしなかったが、エドガーが意を汲んだように微笑んだ。  そう、ジュンもロックも、追ってきた男たちも、目の前のエドガーも。みんな、ティナの魔導の力を知って、何らかのかかわりを持ってきている。  それは、リターナーだとか、帝国だとか、一国の主だとか。本当に、さまざまな人間が関与している。この、魔導の力を求めて。  魔導の力は、いったいあなたたちに、何を与えるの?  どうして私を追うの?  ロックにも訊かなかった事を、どうしてかティナはエドガーにぶつけた。 「どうして?」  やれやれ、という風に、エドガーが1度、深く目を閉じる。 「まず」  まず? 「君の美しさが心を捕らえたからさ。第二に君の好きなタイプが気に掛かる・・・魔導の力のことはその次かな。」 「…?」  エドガーがティナの反応を待っ...
  • ff6 - 07 narche
    「ここでお前と引き合わせたかったが、ガードが嗅ぎ付けてな。裏から逃がしたが…、恐らくガードも探しているだろう」  この炭鉱都市ナルシェの高い自治力の一助を担うガードは、外敵から街を守るという使命に基づき動く。  が、近年、その自衛は度を増し、反帝国派でありながら、リターナーに加わらず、別個の反帝国派として動いている。  同じ帝国派でも、協力体制ではなく、友好関係も築いていない。 「あいつら、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって奴らだからな…」 「そういう事だ。魔導の少女に関しても、操りの輪のせいだと言っても、「帝国軍の手先だ」と言って聞かなかった」  ロックは右手を腰に、左手を顎にやって、思案顔になる。 「ロック、彼女をフィガロへ連れて行って欲しい。フットワークの軽さを見込んで、お前に頼みたいんだ」  ロックはじっと床の辺りを見ている。 「いつ出てったって?」 ...
  • FF6-Mt.koltz-7
    「マッシュ!」  戦いが終わり、谷底に視線を落としている男にエドガーは声をかけた。ゆっくりとマッシュは振り返る。  次の瞬間、ぽかんと口を開いた。 「兄貴?」 「お……弟、双子の!?」 「お……弟さん? わ、私……てっきり大きな熊かと…………」  マッシュ以上に驚きの声をあげたのはロックとティナだった。 「熊ァ!? 熊か……そりゃあいい!」  二人の驚きも無理もないだろう。エドガーといえば、女性という女性に片っ端から声をかける軟派な男である。まさかその彼の弟が、熊と間違えられて大笑しているこの大男だとは誰も思うまい。 「マッシュ、今の男は……」 「あぁ……さっきの話を聞いてたろう? 俺が弟子入りした人の息子で、俺の兄弟子だ。どうやら、奥義継承者が俺になってしまったらしく、それに逆上して師を殺して姿をくらませたんだ。  だから一度、会って話をしたく...
  • ff6 - southfigaro-1
    照りつける太陽の下、半日ほど、チョコボに揺られながら南東の方向に下った一行は、 サウスフィガロの洞窟へたどり着いた。 洞窟の入り口では、二人のフィガロの兵士が立っている。 フィガロ本国とサウスフィガロを結ぶこの洞窟は、フィガロの管轄化でもある。 エドガーはチョコボから降り、駆け寄ってきた兵士にチョコボの手綱を手渡した。 「エドガー様!ご無事で!?」 「あぁ。なんとかな。」 もう一人の兵士は、ロックとティナのチョコボを預かり、慣れた手つきで自分たちの荷物をまとめ始めた。 「本国から緊急用の伝書鳩がこちらへ参りましたので、大体の事情は察しております。心配しておりました。」 「大臣め、手はずが良いな。」 自身の判断に間違いはなかったことにエドガーは確信を持った。 彼ならばエドガーがおらずとも家臣団をまとめることができるだろう。 「それで、これからど...
  • ff6 - 42 figaro
    「エドガー、その甲冑は…?」 「あぁこれかい?フィガロの技術を結集して完成させた機械甲冑さ! 事態にそなえて急ピッチで仕上げたから、 さすがに新開発のドリルまで搭載するまではいかなかったが…。それより、ロック、大丈夫か?ティナは?」 「おれは、軽傷だ。ティナ?」 ロックは震えるティナを抱き起こした。 「あの人たち、悪い人なの?私…こわい…。」 「ティナ、会ってほしい人がいる…。」 エドガーがおもむろにきりだした。 「俺達は地下組織リターナーのメンバーだ。」 「その指導者バナンに会ってくれないか?今度の戦争は『魔導』の力がカギになっている。」 「魔導……。」 ティナは自分の中に眠る力を呪っている。 無理もないことである。その力のおかげで、帝国に利用され、 幾人もの命を奪い今も自分を苦しめている。 彼女は考える。 もし、この力を持...
  • ff6 - southfigaro-2
    フィガロ、サウスフィガロ間を結ぶこの洞窟は「サウスフィガロへの洞窟」と称されている。 砂漠のキャラバンや、行商人、旅芸人などかなりの交通量があるため、 暗がりではあるが、最低限のたいまつが炊かれ、道もある程度舗装されている。 洞窟内は外に比べて、気温が低く、熱射の砂漠を通ってきた一行にとっては、とても快適だった。 「実は、彼らに少し調べものを頼んでおいたのだよ。」 エドガーが二人を先導する。 サウスフィガロはフィガロの姉妹都市であり、エドガーもこの洞窟は何回か通ったことがある。 「何をだ?」 ロックがすかさず聞き返した。 「…ティナ、前のこと、といっても二日前ほどのことだが…思い出せるか?」 エドガーの問いにティナは少し不安そうな顔をしたが、静かにうなずいた。 「やってみる。それで…何を思い出せばいいの?」 「どうやってナルシェまで来たのか教...
  • ff6 - 07.5 narche ナルシェ援軍6
     ガードを退け倒れている少女の元に戻ったモーグリ達は、役目を終えた事を知ると 自分たちの暮らす洞穴へと帰って行った。相変わらずクポクポと賑やかな一行が 去った後の洞窟内は、驚くほど静かだった。 「モーグリ達、恩に着るぜ!」  モーグリ達が去っていった方向に叫んではみたものの、自分の声が反響するだけで 返事はなかった。  心からの礼と感謝を口にした彼の手に、ミスリルシールドや複数のポーションが握られて いるのは、職業柄か身に付いたアビリティのお陰だと言うことにして。もっとも、この場で それをとがめる者もなかった。  膝をついてかがみ込み、少女の様子をうかがう。まだ目覚める気配が無いことを知ると、 ロックは少女を抱え上げ、炭坑の出口へと向かった。  ロック=コール。  胸にはロマンを、両手に戦利品を持った彼は自らを「トレジャーハンター」...
  • FF6オープニング:ナルシェ行軍6
                        ***  これまで帝国同盟にも反帝国組織にも加わらず、中立の立場を貫いて来たナルシェ。 蒸気機関と炭坑の発展に裏付けられた富と、ナルシェの民である事への誇りが、この 都市の独立を支えてきた。  家々の戸は吹雪から室内を守るために堅く閉ざされ、わざと細く作られた道路は 外敵の侵入に備えたつくりだった。常に降る雪と吐き出される煙とで、視界は良好とは 言えない。しかしそれさえも都市防衛の一環だ。  そんなナルシェを守る屈強の『ガード』達は、たった三名の侵入者に愕然となる。街の 入り口に見た侵入者の姿が、南方大陸三国を武力で制圧したと噂に聞く、帝国軍の 魔導アーマーだったからだ。  反帝国組織リターナーとか言う連中が最近、長老に「近々ナルシェに帝国が攻めてくる」 などと言ってきたらしいのだが、どうやらそれは事...
  • ff6 - 07.5 narche ナルシェ援軍3
     ちなみにロックは、モーグリがガード側の味方につくという可能性はまったく考えて いない。自称トレジャーハンター(兼・反帝国組織リターナー関係者)にとって、持ち 合わせたロマンとプラス思考は最大の武器なのだ。自分のことをドロボウ扱いする 人々に対して、この主張は今後も続けるつもりである。  数えてみると11匹のモーグリが、どこから持ち出してきたのかそれぞれ武器を手に 隊列を組んでいる。みなぎる闘志は、言葉を通わせない相手からでも直に伝わって くる。いつか目にした文献通り、見た目に似合わず獰猛な生き物なのだなと実感し ながら、群の中のモーグリに目が止まった。 「クポ!」  周囲のモーグリ達に比べて一回り体格が大きいように見えた。言葉こそ分から ないが、槍を振って他のモーグリを誘導している姿から察するに、どうやら配置を 指示しているようである。そのこと...
  • ff6 - 07.5 narche ナルシェ援軍5
                        ***  薄暗い炭鉱内の細い道。出会うべくして両者は出会い、鉾をまみえる。  口汚く少女の事を罵りながら、ガードの連中は剣先を向けて来た。  きっと彼らにも、理由があるのだろうとは思う。武器を持って戦う理由、相手の 命を奪うことも厭わない、その理由が。  ――もちろん、それは俺にだって言えることだ。  ロックは手に持った短剣をためらい無く振り下ろした。彼は、彼の目的のために 武器を取り、戦いの場へと自らの意志で身を投じている。その理由を日頃から、 あるいは戦場で敵として向き合った者に教える必要性はない。  勝つか負けるか、戦いの結末はその二択でしかない。そして、自分に求められて いるのは「勝つ」という結果のみである。この場では逃走という選択肢も敗北を 意味している。どうあっても引き下がるわけには行かな...
  • ff6 - 10 narche/figaro
     蒼い空、オレンジの砂漠。  真上からの光はビームのように強い。  この国の太陽は、植物も水も枯らすのに、何か生命の起源をも思わせる。  この砂漠を歩くとき、なぜかいつも、命は光から生まれるんだと思う。そして、自分はいつも光を求めている。 「ティナ、あと少しだから」  ロックはティナの腕を引く。慣れない暑さと疲労で、足元がふらついている。既に半日も歩いているのだ。今日に限ってチョコボを見かけないな、とロックは忌々しく思った。  記憶を失った魔導の少女は、何度も転びそうになりながら、それでも負ぶろうとするロックを固辞した。それは拒絶の色ではなかった。そういう習性なのだろう。野生の動物は、なかなか馴れない。  魔導を持つ人間なんてものは、要は、天然記念物のようなものだとロックは受け止めている。群れに慣れないのではなく、群れを知らないのだ。そして、自分の仲間を探し続け...
  • ff6 - 11 figaro 「the turning point !!!」
    ff6 - 11 figaro 「the turning point !!!」  一歩一歩が砂の中に深くめり込む感覚に、いよいよティナが膝をついた時、冗談みたいなタイミングでチョコボが現れた。  乗りますか?  yes / no
  • ff6 - southfigaro-10
    ロックは、ノックの音で目を覚ました。目をこすりながら、時計をみるともう夕暮れ時である。 オレンジ色の西日がロックのすすけた革靴を照らしていた。 「ごめん。まだ、寝てた?」入ってきたのはティナだった。 「いや、そろそろ起きようと思ってたところだし…。」 背伸びをしながら、ロックはベッドから立ち上がった。 「…それで、どうした?」 「うん、あのね。海…」 ティナは少しうつむいている。 「海?」 「うん。海を見に行きたいんだけど…。」 (ダメかな?)と言いたげな表情でロックのほうを見上げた。 ロックは、内心驚いたが、少し嬉しかった。ティナ自ら、何かをしたいと発言することは滅多にない。 「うしっ!じゃあ行くか!」 宿屋を後にし、二人は海岸線に向かった。 途中、サウスフィガロの市場を通ったとき、 突然「おっ!ロックじゃねぇかっ!?」と...
  • FF6オープニング:ナルシェ懸軍7
    「な、何だ?! ウェッジ、おい!! どこへ消えた!?」  ――よせ。なんの冗談だ!?  彼にとってそれは初めて味わう恐怖だった。戦場に転がっている死の恐怖、そんな ものには慣れていたはずだった。しかし、今感じているのはそれとは別のものだ。  ――もしかすると我々は、とんでもない過ちを……。 「あっ、か、かっからだが……」  なにも知らなぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、 ビックスの思った真実を誰も知ることはない。  残された少女は誘われるようにして氷づけの幻獣へ向けて歩を進める。拒むように 何度も光を放つが、この少女には通じなかった。  通じないどころか、同調するように力が増幅される。行き場を失った魔導エネルギーは 洞窟の岩肌を這うように拡散し、やがて両者の間に戻る。それを繰り返しながら蓄積された ...
  • FF6-Mt.koltz-2
    象ほどの大きさを誇るゴルギアスや、毒性の触手をもつテラリウムなどのモンスターを相手にしつつ、 山越えを目指す一行は、山頂付近の吊り橋にさしかかった。 「エドガー…誰かがおれたちの跡をつけている。」 ロックが後方に細心の注意を払いながら静かに話し始めた。 「…帝国の手の者なのか?」 「いや、そんな気配は今のところない…が、かなり手強いことは確かだ。」 「…仕掛けてくるなら、もうそろそろだろう。」 コルツ山を越えるとサーベル山脈が連なり、さらに陸路を進むと、世界でも有数の商業都市、港町ニケア方面へと向かうことが出来る。 しかし、機械の発展と共に、造船分野が発達したため、各港からの海路で二ケアに向かう人が増えた。 以降、サウスフィガロ・二ケア間においても、時間も労力もかかる陸路は衰退していった。 現在では、コルツ山ふもと付近ならともかく、頂では人通りもほと...
  • FF6-Mt.koltz-3
    とっさの判断で身を伏せたため、ロックを狙った奇襲者の一撃は、地面を直撃し砂塵が巻き起こった。 「…マッシュの手の者か?」 砂埃の中から現れた男と対峙し、只者ではないと見たエドガーとロックがティナの前に立った。 「マッシュだと?マッシュはいるのか!?」 「…『マッシュ』、その名前どこかで…。確か、エドガーの双子の弟!!」 エドガーの動揺した様子から、ティナはフィガロの神官長の話を思い出した。 「さっきから うろちょろしてたのはお前だな?」 「知るか!ふ、貴様らが何者とて捕まるわけにはゆかん。 このバルガスに出会ったことを不運と思って死んでもらうぞ!!」 バルガスは、ロックの問いに答える様子もなく、指を口にくわえ指笛を鳴らした。 すると、エドガーたちの背後の大岩から、のっそりと熊のようなモンスターが二匹姿を現した。 「こいつらはオレの可愛いペットでな...
  • ff6 - 00
    ああ、世界が終わる。  自分の爪の先から走った小さな稲妻を見て、ティナは予感した。  そうして、この物語は始まる。  かけがえのないものを探しに、かけがえのないものを引き換えに。
  • FF6-Mt.koltz-5
    「マッシュはどこにいる!?」 「…聞きたいのはこちらのほうだ!!」 エドガーは華麗な槍捌きを放ちつつ、バルガスに問いかけたが、バルガスはエドガーの槍を紙一重でかわしていた。 「ハアァアァ!!」 エドガーがバルガスの動きを読み、隙をつき渾身の一撃を突き出した。 槍は大岩に見事に突き刺さったものの、バルガスは超人的な動きでこの一撃も回避し、刃先の上にゆうゆうと立っている。 「なかなかの槍捌きだ…が、しかしこの程度ではおれを倒すことは出来んぞ!」 「くっ…!!」 エドガーは槍を引き抜き、バルガスと距離をとった。 「エドガー!大丈夫か!?」 その時、ロックとティナがエドガーのもとに駆けつけた。 「ほぅ…!その様子だとイプー共を倒したようだな!まぁ、何人集まろうともおれの敵ではないわ!…烈風殺!!」 突き出したバルガスの片手の掌から、強烈な真空波がロッ...
  • FF6-Mt.koltz-4
    「ロック!少しの間、時間を稼いで!」 ティナは瞳をとじ、魔法の詠唱を始めた。 そのティナをめがけ、一匹のイプーが鋭くとがった爪で襲いかかった。 ロックはティナの前に立ち、イプーの爪を『ミスリルナイフ』で受け止めようとしたが、 イプーの硬質な爪は細身のナイフの強度を上回り、ロックのミスリルナイフは真二つに折られてしまった。 ロックは腹部にかすり傷を負ったが、先ほどコルツ山中の宝箱から入手した『マインゴーシュ』を、 予備の腰鞘から手早く取り出した。 もう一匹のイプーの攻撃に備えようとマインゴーシュを構えた時、ティナの魔法が発動した。 「『ファイア』!!」 二匹のイプーの足元から火炎が巻き起ったが、イプーたちはダメージ以上に、このような場所・状況で突如炎が巻き起こったことに驚いた。 イプーたちは錯乱し、一匹はロックたちから一目散に逃げ出し、もう一匹は炎を巻...
  • FF6-Mt.koltz-6
     筋肉に覆われた2メートルに達しようかという巨躯。短く刈り込んではいたが、自分とよく似た色の金髪。わずかに伸びている後ろ髪は赤いリボンで結っている。  風が吹いた。  土や草の匂いに混じって、僅かに茶の香りがした。かいだことのある、あいつの好きな、お茶の香りが。 「大丈夫か、エドガー?」 「……エドガー?」  昔はあんなに病弱だったのに、大きくなったな……  ティナとロックに助け起こされながらも、エドガーはその逞しい後姿を眺め続けていた。 「マッシュか!」  鼻血をぬぐいながら、バルガスは怒りと憎しみのこもった声をあげた。  対するマッシュの表情は、戸惑いと、悲しみ。 「バルガス、なぜ……なぜ、なぜ、ダンカン師匠を殺した? 実の息子で、兄弟子の貴方が!」 「それはなあ……奥義継承者は息子の俺でなく……拾い子のお前にさせるとぬかしたからだ!」...
  • ff6 - 09 narche
    「あの…」 「…大丈夫だ」  男は息を吐いた。何かを決めたように、ティナを見据える。 「俺が守る。記憶がなくても、必ず守る。見捨てたりしない」  ティナを安心させようとしているというよりは、寧ろ自分に言い聞かせるような口振りだった。  それでも、ティナはそこに真実を感じて、頷く。  ティナの反応に、男は満足そうに笑った。 「俺はロック。トレジャーハンターだ」 「…トレジャーハンター?」 「そう。」  トレジャーハンターって言うんだ、とロックは繰り返す。  彼は、ティナよりもずっと年上なのだろうが、全く威圧感を感じない。役人や軍人特有のにおいがしないからだろうか。  落ち着いて周りをよく見ると、洞窟の中らしい。夜だと思ったが、外からの明かりは見えない。  今は一体何時なんだろう。何度も目覚めたせいで、時間の感覚が曖昧だ。 「ここは?」 ...
  • ff6 - 20 memory
    「…フカ・パラッツォ、聞こえますか?分かりますか」 「ここがどこか分かりますか?」  薄いグリーンのマスクをしたドクター達が、自分を覗き込んでいる。  ケフカはゆっくりと首を動かす。後頭部に当たるベッドを硬く感じた。 「名前は言えますか?」 「ケフカ・パラッツォ…、ここは、ベクタの、研究所…」  唇が乾いていて、少し口をあけづらかった。 「大丈夫そうですね、19時24分、意識スケール…」  部屋の全ての注意は自分に集中している。しかし、どの顔も、ケフカの反応に緊張がほぐれた。成功だろう。  まぶしい。  天井の電灯は強力で、自分は被験者である事をやたらと意識させる。  ケフカは、やや離れて立つシドに気付き、ゆっくり首を向ける。  ガストラ帝国で、最も有能で権威を持つドクターであるシドは、腕を組み、いつになく気難しい表情をしていた。 「博士...
  • ff6 - 26 figaro
    「いかがだったかな? 私の城は」  フィガロ城、謁見の間へ戻ってきたティナを出迎えたのは国王エドガーの優美な 笑顔であった。問いかけながら微笑むエドガーの表情は柔らかく、ティナはつられる ようにして首を縦に動かした。  ティナが口を開こうとした時、背後から聞こえてきた兵士の声が彼女の言葉を遮った。 「エドガー様! 帝国の者が……」  恭しく頭を下げ、状況を告げた兵士の声に、エドガーの表情から笑顔が消える。 「ケフカか!」  そんなエドガーの言葉に、ティナは心の中に小さな痛みを覚えたのだった。  ――その名前を、どこかで……?  不安に表情を固くするティナの肩に優しく手を置いたのはエドガーだった。自分の肩に 置かれた手に気づいて顔を上げ、見上げた先にあったフィガロ国王は相変わらず柔らかな 笑みを浮かべている。 「ティナはここで待ってて」 ...
  • ff6 - 19 bekta
    常勝セリス。  そう言われるようになってから久しい。弱冠19歳のセリスが現在将軍職に就いているのは、己の天稟ではなく、揺籃期に注入された魔導によるものだった。  英才教育の果て(帝国はきっとそれを「賜物」と呼ぶのだろうが)に魔導を自制できるようになり、皇帝はその褒美とばかりに将軍職をセリスに与えた。「登りつめる」と呼ぶには、余りにも安直な登用。抜擢と言うには平易な、まるで子供にお菓子を与えるような簡易さであった。  真紅のベッドに倒れこむ。天蓋が揺れた。ようやく戻った自室で、セリスは脱力する。  感情はフラットに。  何重にもプロテクトして。  躊躇も逡巡も葛藤も黙殺して。  眠りに落ちていく瞬間は、いつも、節の目立つようになった己の指を見つめる。うつ伏せになった肩に落ちかかる髪が、重たげな月光を反射する。  お菓子に喜ぶ子供でいられればよかった...
  • ff6 - 18 bekta
     終わって欲しい一日が終わる時は、大抵この男と行き会う。巡り合わせが悪いのだろう。  魔導師ケフカ。 「お前。」  真っ白の顔に、つやのない赤い唇。きつい染料に彩られた眦。無視するのも困難な奇抜な姿。  闇が宿る灰色の目は、値踏みするように細められている。  セリスの倦怠感は一気に増した。戦場から離れて、これほど見たくない顔もない。 「…何か」  回廊は暗く、声はよく響く。 「このところ、シドが何か企んでいるそうじゃないか」  浮世離れした驕慢な面持ちは、意思の疎通すら疑わしい。相性が悪いのではない。この男と相性がいい人間など一人もいないだろう。早く部屋に戻りたいと思った。 「さて…」 「ふん」  ケフカは形よく整えた眉を皮肉げに寄せる。涼しげな香水の匂いが風に乗ってきて、それがやけに気に障った。 「まぁ、今日のところは、快勝に免じて見逃...
  • ff6 - 41 figaro
    「私が、みんなを…!」 もうティナは魔導アーマーの射程内に完全に収まってしまっていた。 「魔導レーザー起動!ターゲットロックオン!」 胴体の主砲がティナに向けられる。 「ティナーー!!」状況を察知したロックが叫び、ティナに飛びかかった。 直撃だけでも避けなければならない。 「発射!!」 魔導アーマーから放たれた青白い光がティナの周囲を蹴散らした。 「ごほっ、ごほっ!!ティナ!大丈夫か!?」 間一髪ロックがかばったおかげで、ティナは無傷ですんだようだが、 頭を抱えたまま、歩くことすらままならない状態だ。 ついに、ティナとロックの眼前にまで魔導アーマーが近づいてきた。 「直撃は免れたようだな!だがこれで終わりだ! このメタルキックで踏み潰してやる!」 「くそっ!!」ロックは覚悟を決め、ダガーを抜き構えた。 そのとき、「ロック!!伏せろ...
  • ff6 - 24 figaro
    「この部屋はね、エドガーが子供のころに使っていた部屋なのよ。  あの人が王位を継いでからは、私にこの部屋を譲ってくれたの」  招き入られた神官長の部屋の中。二人分のお茶を煎れながら、老女は嬉しそうに話す。 「婆やなら、このベッドでも十分な大きさだろう、ですって! 馬鹿にしてるのよ!」  そうやって腹を立ててみせる彼女は、けれどそれがエドガーの紛れもない愛情の表現だと もちろんちゃんと知っているようだった。  部屋を見回してみる。老女はその印象通り慎ましい生活を好むようで、小さな部屋には よく整頓されており質素な空気が満ちている。でもよく見ると本棚に童話が入っていたり、 壁に背比べのような傷がついていたり、確かに昔はそこに子供がいたという名残がたくさん 残っていた。  ふと、ティナは首を傾げた。 「二つありますね」 「え?」 「ベッド、二つ...
  • ff6 - 25 figaro
    頭上に広がるのは濃すぎる程の青色、雲一つなく晴れ上がった紺に近い青空の中央で、 煌々と輝いている太陽。  眼下に広がるのは、うねるような起伏と美しい風紋を持った熱砂の海――人の侵入を拒む でもなく、だが歓迎していると言うには厳しすぎるこの大地に人々がつけた名は、フィガロ砂漠。  吹き抜ける風が生み出す波紋が、砂の芸術を生み出す。そんな砂漠の中で小さくため息を 吐き出した者が居た。 「ふゥ~。ガストラさまの命令とは言え……」  砂漠を渡るという割にはローブなどを羽織っただけの軽装で、顔面に施された必要以上の 厚化粧は、さながら道化師だ。彼は帝国の兵士2人を従えてフィガロ城を目指していた。旅の 一座と言うにはいささか不穏な出で立ちと顔ぶれである。  それもそのはずで、「ガストラ」と言えば今や世界で知らぬ者はいない。圧倒的な軍事力で 世界を支配しようと...
  • ff6 - 43 figaro
    チョコボたちを三人で待っていると、ティナはロックが右腕に怪我をしていることに気づいた。 「ロック、その傷…。」 「うん?あぁこれか、ポーションでも使えば治るさ。心配するな。」 「ちょっとジッとしてて…。」「ティナ?」 ティナは、傷口に両手をあてがい、静かに瞳を閉じ精神を集中させた。 淡い緑の光が傷口をみるみる回復させていく。 ティナが瞳を開くころには、ロックの右腕は完治していた。 「おっ!治ったぜ!すげーよ、ティナ!!ん、どうしたエドガー?」 「ロ、ロック君!ちょっと!ちょ~っとこっちに来てくれたまえ!」 一部始終を見ていたエドガーがロックを呼び出し、ロックの右腕を触り始めた。 「な、何だよ!気持ちわりーな!」 「ほ、ほんとに治ってる!?」「だから、これがティナの凄い能力なんだろ。」 「何が凄い能力だよ!!これは魔法だよ!ま・ほ・う!!」 ...
  • ff6 - 02 narche
     ふっと空気が緩み、その瞬間唐突に、単語が浮かんだ。小さく、刺すような頭痛がした。 「ティナ…」 「うん?」 「私、名前はティナ…」  ジュンが、優しく笑った。 「強い精神だ。……しまった、もう来たか」 「え?」  ジュンは自らの肩越しにドアを振り返る。 「招いていない方の客だ」  思ったより早い、とジュンがつぶやく。 「すまん、少し黙っといてくれ」  ティナが問うより早く、ジュンが俊敏な動きでドアへ向かい、錠の確認をする。傍の机をドアの前に倒した瞬間、ドアが大きな音で鳴った。 「開けろ!」 「帝国の手先がいるだろう!」  荒々しい声がドア越しに聞こえ、ティナはベッドから立ち上がる。 「帝国…?」
  • ff6 - 03 narche
     ジュンはティナの手を引き、ドアと反対側の続きの間へ連れて行く。扉を叩く音は途絶える事がない。 「この裏から、炭鉱に出られる。ティナ、あとで説明をするから、今は早く逃げなさい」 「逃げる?」 「あいつらには話は通じない。早く!」 「でもあなたは」 「急ぎなさい!」  ティナは、ジュンの勢いに押されて勝手口を出た。風が強く、後ろで結った髪が目の前をはためいた。  皮膚からしみ込む冷気に眼が覚めていく。  頭痛が遠退いていく。  私は。 (何を、忘れてしまっているの?)  振り切れない不吉な月あかりの下を駆け出した。  背後に、不穏な気配を感じながら。
  • ff6 - 14 figaro
     緊張を走らせたティナを、注視するような目で見ていたエドガーはふっと表情を和ませる。 「心配はいらない。フィガロはガストラ帝国とは同盟を結んでいる。しばらくここでゆっくりしていくと良い」  ガストラ帝国。  耳に残るその言葉を反芻する。  不吉。  ティナはわけも分からず、そう直感する。 「ティナ?」  何も思い出せないと言いながら、ティナはひとつだけ、覚えている事があった。  魔導の力。  記憶喪失だと言ったからなのか、ロックは敢えて、魔導の事について、ティナに訊きはしなかった。  だが、ティナの頭の中には、魔導という言葉が太陽を隠す雲のように漂っている。薄暗く、陰湿で、それはいかずちさえも喚びだせそうな禍々しさ。 「まだ、緊張している?」  気分を害してしまったかな。言いながら、エドガーが、推し量るようにティナの顔を覗き込んだ。その仕草の...
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