第7回三国志バトルロワイヤル ログまとめ内検索 / 「7-064 明日のために」で検索した結果

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  • 7-064 明日のために
    152 名前:明日のために 1/5 投稿日:2006/07/14(金) 03 54 25 参加者名簿を見ながら、郭嘉は考える。 線を引かれているのは死亡者の名前。 魏の将が、多すぎるのだ。 特に夏侯姓が目立つ。 呼ばれた順番が近いから、洛陽を出た直後に広範囲を攻撃できる武器で狙われたのか? 夏侯氏に恨みがある者の仕業か、あるいは…裏切り? 夏侯姓を持つ生存者―夏侯惇、夏侯淵、夏侯覇―の名前をちらりと見る。 いや、夏侯一族とは限らない。同じ魏将であることを利用して、隙を突いて、一気に…。 北へ行く道すがら、魏の誰かから情報の一つでも頂ければ好都合。 そう思ってここ、陳留へとやってきたが考えが甘かったか? 「あれは…満寵殿?」 陳羣に言われて郭嘉もそちらを見る。 一人の男がうずくまっている。確かに満寵だ。 「満寵殿!」 満寵はひ...
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    ... 益徳の泣く頃に 7-064 明日のために 7-065 希望は絶望の序曲 7-066 徐庶は曹操を始末するつもりです。 7-067 奇人と殺人マシーン 7-068 悲劇の幕開け 7-069 導かれるがままに… 7-070 この醜き世界 7-071 酒は飲むべし… 7-072 項王の再来 7-073 反逆の狼煙 7-074 汝、昇竜なりや? 7-075 八重にはためく忠の旗 7-076 馬超 7-077 とても文学的な出会い 7-078 妖刀と名門 7-079 ぬいぐるみと私 7-080 不思議の国の陳宮 7-081 夏侯楙は移動を始めました。 7-082 袁劉 7-083 その虚ろを満たすものは 7-084 見えない恐怖 7-085 四面楚歌 ワシ、韓玄だったんだけど 7-086 董衡&董超&…? 7-087 曹植・孟獲・祝融登場、許褚...
  • 7-075 八重にはためく忠の旗
    179 名前:八重にはためく忠の旗 投稿日:2006/07/15(土) 21 53 18 侯選「さて、このゲームに乗っちゃった訳だが・・・」 張横「退くことは許されないだろうな」 成宜「いざ我ら、進み行くのは、いずこへか」 楊秋「くよくよ考えたところでどうにもならんだろう」 梁興「そうそう、オレ達は勢いが行動理念だから」 程銀「考えよりもまず行動!」 李堪「よし、まずは生き残りと行くか!」 馬玩「我ら旗本八旗、大義のためにいざ戦わん!」 侯選「随分とでかいかなづちだな・・・」 そう思う侯選の手には、北欧神話に出てくる鎚、ミョルニルが握られていた。 程銀(・・・これ、なんなんだろう) そう思う程銀の手には、リンスとシャンプーがしっかと握りしめられていた。 このメンバーには、あまり生存の期待をかけてはいけないのかも知れない・...
  • 7-230 追憶のカノン
    9 名前:追憶のカノン 1/5 投稿日:2006/10/08(日) 18 20 31 この世界以外にも別の世界があって、そこでもこのようなゲームが行われているのだろうか。 そうならば私は願おう。何処かの『参加者』よ、負けるな、と。 こんな理不尽な世界に従うな。戦い、抗い、そしていつか世界に対して勝利してくれ。 決して我々の様な不幸な結末を受容するな、と―――。 「……あー?」 木陰で一時の休息を取っていた魏延は、寝ぼけた声と共に目を覚ました。 ほんの少し休むだけのつもりだったのに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 戦闘が続き、思った以上に疲労が溜まっているのか。 ―――決して我々の様な不幸な結末を 良く分からないが、どことなく不吉な言葉が脳裏に纏わりつく。 おかしな夢を見ていた気がする。馬鹿らしい、と頭を振り、木に手をつ...
  • 7-155 続いては禰衡さんの天気予報です
    437 名前:続いては禰衡さんの天気予報です1/2 投稿日:2006/07/28(金) 19 02 26 耳の中に響く献帝の声。 「お前ももう一度朕の為に尽くしてもらえるかな」 五月蝿い程に響いているというのに、どこか心地よかった。 しかし――確か、拒否した。 あの心地よさに取り込まれてしまいそうな気になったからである。 微笑みながら返された「そうか」という言葉はもう響いていなかった気がする。 潘璋が何かを叫びながら荊州へ向かって突っ走っていたあと、孔融たちも 汝南に差し掛かり、無難なところで自分達も荊州に行こうかという話になっていた。 肩を貸しながらゆっくりと歩いていく。 明日はきっと晴れるぞ等と呟いて禰衡は項垂れていたが 項垂れた首を見た途端、孔融は妙な感覚に陥った。 ―この首、絞めたらさぞ苦しんで―― ハッと眼を見開いて...
  • 7-124 餞
    310 名前:餞 1/4 投稿日:2006/07/23(日) 00 49 07 「お前か!ずっと俺の後をコソコソ尾けてやがったのは!」 「うわっ!」 良かった、幽霊じゃなかった。 安堵と、その反動からくる苛立ちは怒りになり張飛はその男の首を掴んで釣り上げた。 「てめえ一体何どういうつもりだ!」 「ちょ、ま、待ってください、張飛殿!」 名前を呼ばれて張飛は首を傾げる。はて、知り合いだっただろうか? 「わ、私は陳羣、字長文ですっ。お忘れですか、張飛殿っ」 首を掴まれながら陳羣は一応名乗ってみた。 だが張飛のことだ、きっと覚えていないだろう。 そもそも個人的に付き合いがあったわけでもない。 陳羣は半ば絶望的な気持ちでこれからどうするべきかを考えていた。 「う~ん…そう言われてみればどっかで…」 ああ、張飛殿。思い出す努力をしてくださる...
  • 7-163 楊儀くん
    45 名前:楊儀くん1/3[sage] 投稿日:2006/07/30(日) 23 45 55 荊州魏興の小集落。そこで楊儀は三回目の放送を聞いていた。 「だんだんと人の死ぬペースが上がってきているな…」 次々と呼ばれる死亡者の名を付け終わった後、自分を初め、魏延に狙われそうな人物の名、特に諸葛亮の名が出ていない事に安堵する。 「やはり丞相達を探すべきなのだろうか」 楊儀はこれまで、幾度となくそう思った。だがその後には浮かぶのは、決まって魏延の凄惨な笑顔。 迂闊に動けば殺される。その恐怖が楊儀を支配する。 「どうしたものか…」 これからの事を考えあぐねている楊儀の腕が、自然とMDウォークマンに伸びる。 「ふぅ、曲でも聴くか。何かいい考えが浮かぶかもしれん」 一曲目と二曲目の曲は自分に勇気と活力を与えてくれた。きっと次の曲もそういった物を与えてくれるに違いない。 そう信じ...
  • 7-238 Reminder Of The Past
    62 名前:Reminder Of The Past 1/6 投稿日:2006/10/15(日) 17 39 55 泣いたら駄目だと自分に言い聞かすのだが、苦しそうな姿を見ていると自然に涙が浮かぶ。 元々感受性の強い方ではあったが、その実どこか達観して冷め切った己が存在した。 長かった人生で泣くことなどほとんどなかった。ましてや人のためにだなんて! 手を握ると、弱々しい力で握り替えしてくる。 額に浮かぶ汗の粒が彼の衰弱を物語っているかのようで、 もともと頑強とは言い難い小柄な身体はすっかり痩せ細ってしまっている。 陸機は両手で顔を覆った。 黙っているとネガティヴな思考に支配されそうで、 他のことを考えようと努力するのだがなかなかままならない。 「大丈夫ですよ、すぐ治るから。今、尚香殿が薬草を探しに行ってますから。  だから、もうすぐで...
  • 7-042
    94 名前:1/4 投稿日:2006/07/11(火) 10 17 28 夏侯和は焦っていた。 あの会場で一枚の紙片が兄達から回ってきた。 『長安にて集合されたし 夏侯淵』 いかにも無駄のない親父らしい文面ではないか。 だが、スタートしてからが大変だった。 妙な2人組(馬忠と廖化)に追い回され、撒くのにだいぶ時間がかかった。 早いところ長安に着かないと、確実において行かれるだろう。 「あの低脳どもめ…」 舌打ちして思い出した。なにせこの訳のわからない状況下で、 「グループを 組 ま な い か?」 しかも大声でだ。他に参加者がいたら蜂の巣だろう。 まぁああいう連中は早晩死んでいくが。 95 名前:2/4 投稿日:2006/07/11(火) 10 19 40 ようやく長安に着いた頃には、燃えるような夕日...
  • 7-217 生存願望
    305 名前:生存願望 1/5 投稿日:2006/09/02(土) 17 30 46 沛国譙([言焦])県 曹操を初めとする多くの曹・夏侯一族の故郷に、曹熊はいた。 曹熊もまた例外ならぬ譙の人である。とはいえ、譙にいたのは幼い頃の一時期だけであり、以降は鄴([業β])の地で育っていった。 だから曹熊にはわからない。今自分がいる豪勢な生家が、父・曹操が生まれ育った桃仙院だとは。 昨日の惨劇を、曹熊は頭の中で繰り返していた。 張虎、夏侯淵、銃、銃声、血、死、曹仁、曹洪、銃、銃声、夏侯淵、曹仁、斧、弓、矢、銃声、死、死、銃、手、死、死、死、死――― 両手に持つ拳銃が、小刻みに震えていた。 拳銃は曹熊が今まで見たこともない形状のものだったが、それは見れば見るほど優美であり、握り心地も悪くはなかった。 ベレッタM92F、夏侯淵の袋にあった説明書には、そう書かれてい...
  • 7-252 Baroque
    157 名前:Baroque 1/10 投稿日:2006/11/19(日) 02 33 00 緑の匂いを絡ませた風が、さやさやと心地よく吹き抜けていく。 蔡文姫達と別れた凌統、馬謖、陸遜の3人は、木陰で小休止をとっていた。 大きな木にもたれ、銃剣を抱いて凌統は仮眠を取っている。 その傍で鼻歌を歌いながら、馬謖が花を摘んでは編んでいる。意味は多分ないだろう。 暇な陸遜は馬謖の編んだ花をつついてみたりする。 「……楽しいですか、これ」 「それなりに。美しい花輪にするには手先の器用さのみならず色彩感覚や配置の感覚も問われるからな、奥が深いぞ」 物珍しげに覗きこむ陸遜の頭に、可憐な花冠が乗っかった。 「うむ、いい出来だ」 「頭の上に乗っけられたら、僕には見えないんですが」 「根性で見ろ」 「無茶言わないで下さい」 ぴちゅぴちゅと小鳥が歌を奏...
  • 7-234
    28 名前:1/7 投稿日:2006/10/11(水) 01 15 55 錦馬超とはよく言ったものだと思う。 その見事な武勇や鮮やかな馬術はもちろん、 西涼という土地柄が為し得たのだろう彫りの深い顔立ち、 馬家の跡取りとして育った故に身に付いている所作の美しさ。 それらの美徳はごく自然に、馬超の一部だった。 錦が、それを成す糸の輝きも、綾の妙も、織られた柄の見事さも その全ての美しさを自然にはらんでいるように。 幼い頃からこの美しい従兄弟は馬岱の誇りだった。 そしてただ一人の主君であった。 誰に打ち明けたこともなかったが、蜀に下った後もずっと。 馬超が星になってからも、ずっと。 共に歩く従兄弟の美貌は全く変わらない。 馬岱が憧れ、尊敬し、忠誠を誓った錦馬超そのままである。 だが、何かが足りない。 例えば、その瞳に宿って...
  • 7-221 星
    327 名前:星 1/3 投稿日:2006/09/12(火) 19 51 07 瞼にうっすらと感じる日の光に、曹丕は目を覚ました。 胸にある暖かな感触。 曹幹が自分にしがみつくように眠っている。 体が、頭が重い。 何も動かせないが、意識だけが妙にはっきりしている。 「…、…か…、…」 胸にある、暖かな感触。 戦いの中で、自分を正気に繋ぎ留めて来た唯一のもの。 大切な。 「…そ…」 口が、喉が上手く動かない。だが動かさなければならないのだ。 「曹幹…」 やっと、声が出せた。 それを聞いて、曹幹が弾かれたように飛び起きる。 「とうさま…!」 泣いているのか、笑っているのかわからない表情。 曹幹はほとんど半裸の状態だった。 恐らく、服は自分の傷をふさぐのに使ってしまったのだろう。 本人の体は、泥でぐしゃぐしゃだ。 幼...
  • 7-070 この醜き世界
    166 名前:この醜き世界 1/3 投稿日:2006/07/15(土) 01 40 45 頭に衝撃。星が飛ぶ。 不快な耳鳴りがキーン…と満寵の頭蓋の中を駆け巡る。 不思議に少年のころに帰ったような満寵。 純粋だから?殺意だけは? 『伯寧』 ころせ、ころせと騒がしいノイズの中、公明の声が聞こえた気がする。 「酒糟喰らいが。酔っておるのか」 命のやり取りの合間でさえ禰衡の口からは毒がこぼれる。 誰だ?これは。 …公明じゃない。じゃあ、いらない。 満寵の脳裏に背景のように目の前の垢じみた男の情報が浮かぶ。 禰衡。不愉快な男だった。 酒樽を叩けとかなんとか言われたらしい。 後は、そう、 確か犬殺しとか豚殺しとか言われた、そう、 公明が…。 公明が、殺しで、犬…豚だったかも…ころす… 殺す、殺すのは僕、…...
  • 7-218 守りたい大切なものがあるなら
    310 名前:守りたい大切なものがあるなら 1/9 投稿日:2006/09/06(水) 21 22 15 燃えるように赤い空。 有無を言わさずに参加させられたこの奇怪な遊戯も、まもなく4度目の夜を迎えようとしている。 洞窟の前での見張りを買って出た陸遜は、沈み行く太陽に手を差し伸べて辛そうに目を細めた。 重傷を負った姜維はおそらく早晩死ぬだろう。今夜かもしれない。 所詮は殺し合いのための世界なのだ。いまさら1人死人が増えた所で何ほどのことでも無い。 ……しかし洞窟の中に居ると、気が沈んで仕方ない。 陸遜が溜息をつこうとした時、少し離れた茂みががさがさっと音を立てた。 即座に銃を構え、いつでも撃てる状態で「誰ですか! 出てきなさい!」と声を張り上げる。 きゅうぅん、と愛らしい鳴き声がした。……鳴き声? がさっ、と茂みから顔を覗かせたのは、白い仔犬だった...
  • 7-107 虞翻と夏侯覇
    259 名前:虞翻と夏侯覇 1/4 投稿日:2006/07/19(水) 22 29 18 虞翻は荊州の道を歩いていた。 その道は左右を100メートル半ほどの崖に挟まれた谷間の道で、幅は5~8メートルだが、 その両脇には少し小柄な男性の肩くらいの背の茂みがあるため、実際にまともに歩けるのは石畳で舗装された、人二人が詰めて並び歩けるくらいの範囲しかない。 だが、隠れ歩くには茂みの方がいいであろう。 なので虞翻は右方の茂みの中に身を落としつつ、慎重に辺りを見回しながら移動していた。 最初は驚異のカードの数々に喜々として馬鹿騒ぎしていたのだが、しばらくして彼はいくらか冷静になっていた。 いくらカードが凄かろうと、後ろから撃たれてしまえば、まったくもって意味をなさない。 そう思えば馬鹿騒ぎしていた自分が恥ずかしくなった。あそこで銃とやらを持った誰かに気がつかれ、忍び寄...
  • 7-246 故郷へ
    117 名前:故郷へ 1/15 投稿日:2006/11/01(水) 07 21 30 二人の旅は、終わりを向かえようとしていた。 二人は実際には、西涼はおろか涼州にもたどり着けない。涼州に行き着くためには、必ず雍州を通らなければならない。 荊州と雍州との境に踏み出すその瞬間、旅は唐突に終わる。 夜通し歩き続けた馬超と馬岱は、そろそろ陽が昇ろうとする時間に、荊州北西部の魏興郡へ着いていた。 もうすぐだ。 馬岱は今いる岩だらけの荒野の、地平線を見つめながら歩く。 もうすぐ、なんだ………… 雍州と荊州の境は、この殺風景な荒野にある。あと一時間もしないうちに、雍州に入る。 二人には、少なくとも馬岱には疲労もあり、眠気もあった。それでも決して足を休めることなく先へと進む。 死ぬための旅。 非道く暗い旅に、馬岱はほとんど何も言わずに歩いてきた。馬超に話しかけ...
  • 7-226
    358 名前:1/2 投稿日:2006/09/24(日) 14 24 11 予州東部、汝南城近くの高地。。 劉備玄徳は、Uターンをくらった挙句にこんな所まで南下させられていた。 「だって仕方ねえだろうがよぉ」 それに士元なら、幽州が禁止区域になってもどこか自分に縁のある地で待っていてくれるだろう。関・張の義兄弟達もしかり。 「……そういや子竜の奴は何やってんだかなあ」 今は天を仰ぎ、頼れる仲間を想うしかない、それくらい恐怖の体験を劉備はした。 冀州に入り、平原で合流を図ろうとした頃。 劉備は見てしまった。あの男が『我々』を狩りにきていることを。 呂布。 平原の城の城壁にて外を見ていた時、視力には自信のある眼がその姿を捉えた。 その陰に隠れた驢馬男の姿までは視認できなかったが、天下無敵のあの男が、闘気全開で足を向けていた。そう、城...
  • 7-037
    84 名前:1/3 投稿日:2006/07/10(月) 21 52 38 陳到は汝南に至る間道を歩いていた。 「ひとまず知ってる場所に行かんことにはな。劉備様は蜀へ行かれるかもしれんが……」 不自然に縮小された中華。その外はどうなっているのだろうかという疑問もあったが、今の陳到にそれを確認するほどの余裕はない。 支給された武器──二丁の奇妙な銃を構えながら、彼は南へと歩いていった。 十分ほど歩いただろうか。空は夕闇に包まれ、陳到の歩む道も次第に暗くなっていく。月が出そうなのが不幸中の幸いであるが。 やがて林を通る道に差し掛かったところで、彼はぴたりと歩を止めた。 (いる……。一人、いや二人か) 五十歩ほど先に、何者かが隠れている。おそらくは待ち伏せだろう。 (フ……だが俺程度に悟られているようではまだまだか。この距離で仕掛けてこないということは飛...
  • 7-125 記憶
    314 名前:記憶1/3 投稿日:2006/07/23(日) 10 43 38 寝息が聞こえる。 良かった。拙い応急処置しか施せなかったが 眠れるくらいならきっと大丈夫だろう。 潘璋は孔融の傍らで何か考えていたようだったが、やがて口を開いた。 「俺が馬鹿だったんだ。過去の下らない記憶なんかに拘って」 泣きそうな顔で潘璋が呟くと、孔融が振り返る。 それ以上は言うなとその眼が言っているような気がした。 「もう過ぎたことだ。あとは彼の言葉を理解するのが先決だろう。」 そう言いながらも表情は暗い。彼自身田疇に助けられた身である。               待て。 過去の記憶? 「でもまさかあいつがあんな死に方するとは思わなかったんだ。」 「潘璋殿、過去って…何だ?」 二人の間に沈黙が流れた。 「どれくらい前の過去なんだ?私は何も覚...
  • 7-206 さようなら、文挙殿
    257 名前:さようなら、文挙殿 1/4 投稿日:2006/08/26(土) 22 35 40 「文挙殿、お久しぶりです。この世界でお会いするのは初めてですね」 孔融は無言で頷いた。この男は…荀文若。 名門荀家の俊才として華々しい栄華に包まれていた男。 朝廷で、私的な場で、幾度か顔を合わせて会話を交わし、表面上は友好的な態度を取っていた。 しかし、孔融は彼を嫌っていた。 漢室に忠誠を誓うように見せて、その実逆臣曹操を補佐し簒奪に導く偽善者と見ていたからだ。 しかしそれも今では昔のこと。 己の感情なぞこの珍奇な世界では何の役にも立たぬであろう。 「……これは文若殿、久しいですな」 258 名前:さようなら、文挙殿 2/4 投稿日:2006/08/26(土) 22 36 14 禰衡は相変わらず奇天烈な行動を取りたがった。 ...
  • 7-128 それを互いに埋めるように
    328 名前:それを互いに埋めるように 1/3 投稿日:2006/07/23(日) 20 46 15 「ああ、君か。王允の事は残念だったね」 薄笑いを浮かべた献帝はそう言い放った。 「規則違反をした朕にも不手際がありましたからね。  君には特別に王允に支給されるはずだった物もあげましょう。  まあ朕の慈悲というかお悔やみの気持ちというか、そういうやつかな?」 献帝は楽しげにザックを漁る。恐らくそれが王允のザックだったのだろう。 「おや、救急箱か。でもさすがに頭が吹き飛んでいては役に立たないね。  あはははははははは!」 目も眩むほどの怒り、というものを貂蝉はその時初めて知った。 睨む視線にそんな力がこもったのだろう。献帝はフンと鼻を鳴らした。 「歌妓風情があまり調子に乗らないことだね。さもないと、」 献帝は握った手を手のひらを上にして開くゼス...
  • 7-233
    24 名前:1/3 投稿日:2006/10/10(火) 16 58 35 「ふんおーーーーーーっ!」 許チョの巨大な体が大地を蹴る。その姿はさながら小さな彗星。凄まじい衝撃で、流石の夏侯惇も押しつぶされたかに見えた――。しかし、夏侯惇はまだ生きていた。 「さすが将軍だぁ。これはかわせるかぁ!?フンフンフンフンフン!」 その巨体からは信じられないスピードで攻撃が繰り出される。全力を尽くし全ての攻撃を捌ききったように見えた夏侯惇だったが……。 (なんて力と速度だ…!得物で無くともこの強さとは!おまけに、受け流したはずなのに手に痺れがきている!) 今更ながら、何故この許チョが典韋の後を任せられたか理解した。無類の忠誠心と、純粋にして最高の膂力。これこそが許チョを許チョたらしめていたのだ。……だがな。 「許チョ!!孟徳を守りたいならば...
  • 7-114 第二の侵入者
    279 名前:第二の侵入者 1/5 投稿日:2006/07/21(金) 00 06 18 顔良は歩いていた。 右腕は肘から先が吹き飛んでおり、その傷口は焼けて閉じている。 顔もひどい有様だった。右目は完熟した卵のように固まり、頬は溶けた蝋のように垂れており、 口は端がくっついて開かず、髪はほとんどが燃えて焼けた頭部の皮膚が晒されていた。 服は焦げてところどころに大小さまざまな穴が空き、その穴の先に膨れ上がった皮膚が見えている。 足取りはもつれ、左右に不安定にふらつき、転びかけ、まともに前にも進めていない。 それでも顔良は歩いていた。 東、陳留、曹操、殺す 方向も地図も確かめないまま、ただがむしゃらに進んでいても陳留へ着けるはずはない。 しかし。顔良の朧気な思考の中では、彼は東の陳留へ歩いていた。 陳留、曹操がいる所、曹操、宦官の孫、乞食の息子、袁...
  • 7-126 八旗と楊阜と夏侯淵
    317 名前:八旗と楊阜と夏侯淵 1/9 投稿日:2006/07/23(日) 11 48 12 夏侯淵は前世の記憶を思い出してみた。 生を受け、育っていったことはよく覚えていない。 親の顔もまったく思い出せない。厳しい親だったか優しい親だったか、それすら思い出せない。 自分が記憶ははっきりし始めるのは、曹操に着いて行こうと決めたときからだった。 曹操がまだ県の長官だったとき、曹操は彼を疎ましく思う誰かに罪を着せられ、夏侯淵は身代わりとなってその罪を被った。 あやうく死刑となるところだったが、すんでの所で曹操に救済され、以後、夏侯淵は曹操に付き従うこととなった。 曹操を援助し、曹操の旗揚げに集い、曹操の将となり、曹操の敵を屠っていった。 曹操の危機を救い、曹操に重宝され、涼州掃討の大将となり、漢中防衛の総司令官となり、そして、曹操の敵に殺された。 夏侯淵の...
  • 7-212 悪木盗泉
    284 名前:悪木盗泉 1/6 投稿日:2006/09/01(金) 00 59 52 夢を見た。 つまらぬ夢だ。 自分は洛陽にいた。西晋の都洛陽に。 呉が滅んで北に来てからこの方、中書令、後将軍、大都督と順調に出世した。 上に立つ人間が次々に変わる。醜悪な内輪もめを見せつけられ、 しかし己はあの混沌に入るわけがないと頭から思い込んでいた。 ひどく達観していた。 今から考えると実に愚かだが、あの時は呆れるほど無防備だった。 宮廷内の埃だらけの書庫で偶然見つけたひとつの竹簡。  ……薫香は夫人たちに分け与えるように  ……手に職のない妾たちは、飾り紐や履の作り方を覚えて生活の足しにせよ 敬愛していた魏武帝の遺令だった。 それを見て深い失望を覚えた。 くよくよと細かい家事を気にかけるなんて。 広大な製品を飾り紐で悩...
  • 7-073 反逆の狼煙
    173 名前:反逆の狼煙 1/3 投稿日:2006/07/15(土) 16 38 35 「お前、何故それを扱える?」 木の根元に座り込んで探知機を弄っていた凌統は、唐突に声を掛けられて顔を上げた。 「え?」 「その探知機、正直取扱説明書なしですぐに扱えるものじゃないぞ。  嫌がらせみたいに人間の直感の逆をいく操作を要求しているから」 馬謖は懐から探知機に付属していた分厚い説明書を取り出し、ばっさばっさと振る。 お世辞にも操作が単純とは言えないその機械を、凌統は平然と使いこなしていた。 「だってこれ前にも使った事が―――」 ……使った事がある? さらりと言いかけて凌統は動きを止めた。 まさか。こんな非常識な装置、初めて見たはずだ。 「前にも使った事がある、のか? ……それはいつだ。思い出せ」 相変わらず威丈高な口調ではあるが、妙に真剣な目付...
  • 7-106 運の王様
    254 名前:運の王様 1/5 投稿日:2006/07/19(水) 03 15 39 夜が明けて、二度目の放送を聞いてなお、袁尚と劉禅は林から脱出できずにいた。 というのも、視界が少しでも開けている場所に移動するとそこにはすでに劉諶が待ち構えており、 これはまずいと反対側に回れば、やはりそこにも劉諶が回り込んでいるのである。 「まったくどうなっているんだ。何故奴にこうも我々の位置が知れてしまうんだ!!」 「はあ。でも正確に分かっているわけではないですよ。  もし正確に位置を知る術があるなら、我々はとっくにあの諸葛弩でハリネズミですから」 「なら!! 一体なんだってこうも回り込まれるんだ!!!」 随分イライラが溜まっているのか、袁尚は身を潜めるものにしては少々大きすぎる声で怒鳴る。 劉禅はとにかく落ち着かせようとバナナを一本勧めた。 袁尚は...
  • 7-138 重なる歌よ凱歌となれ
    369 名前:重なる歌よ凱歌となれ 1/4 投稿日:2006/07/26(水) 16 35 40 陳宮は、お友達がたくさんできてとってもご機嫌。 みんなのご用事のために、陳宮は元気よくお歌を歌います。 お空には、まんまるにちょっぴり足りないお月様と、 すいっと流れたほうき星。 おや?あれはほうき星ではないのかしら? まあ、あれはRPG-7の弾頭ではありませんか。 さあ大変。メルヘンしている場合ではありません。 「! 散れ!」 いち早く異変に気づいたのは司馬懿だった。 砲弾は少し離れた箇所で一人歌っていた陳宮を狙っていたようだったがそこからも逸れ、 砕けた岩の欠片が陳宮と司馬懿に掠ったが行動に支障があるほどの負傷ではなかった。 「ちっ!」 司馬懿は舌打ちする。 かなり威力のある兵器だ。だが命中率はさほどでもないようだ。 ...
  • 7-055 その時がきても
    129 名前:その時がきても 1/4 投稿日:2006/07/13(木) 11 35 17 民家に飛び込んだ曹丕はどうにか鍵を閉め曹幹をそっと降ろした。 自分にまだそんな繊細な動きが出来ること自体が驚きだった。 次の瞬間、糸が切れたように崩れ落ちる曹丕。涙でくしゃくしゃになった顔で曹幹が寄ってくる。 「とうさま!とうさま!」 喉がカラカラで声も出ない。うん、と曹丕は頷きだけで返事をしたが曹幹の涙は止まらない。 「…大、丈夫、だ…」 唾をかき集めるようにして唇を湿らせそう言うと、ようやく曹幹はいくらか落ち着いたようだ。 仕草で静かにするようにと曹幹に伝える。 曹幹はこくこくと何度も頷いて懸命に涙を拭いしゃくりあげる声を抑える。 ようやく狂乱の中を抜けたかと速度を緩めかけた瞬間、突如一人の男が飛び出してきた。 凶弾が曹丕に襲いかかってきたのはそ...
  • 各話リスト(2)
    タイトルが付いているものはそのタイトル、付いていないものは概要を併記します。 1スレ目続き 7-121 ※于禁 気配を消して観戦 7-122 ※張角さんのDEATH NOTE 7-123 最凶最悪四人衆 7-124 餞 7-125 記憶 7-126 八旗と楊阜と夏侯淵 7-127 連なる回旋 7-128 それを互いに埋めるように 7-129 于禁 7-130 甘寧帰郷 7-131 第3回放送 7-132 ※夏侯楙 南門より脱出 7-133 in the Mood 7-134 血統 7-135 ※劉備 仲間を探すため単独行動開始 7-136 傀儡は尚も抗う 7-137 ※張コウ 許昌へ移動開始 7-138 重なる歌よ凱歌となれ 7-139 ※馬玩・梁興死亡 7-140 ひぐらしが鳴く 開かずの森へ 7-141 焔の夢 7-142 馬鹿の一人踊り...
  • 7-247 出会いの数だけ繋がる物語
    132 名前:出会いの数だけ繋がる物語 1/5 投稿日:2006/11/02(木) 16 29 27 出合ったとき、兄の部下であったその男は狂っていた。 「『桂陽デ待ツ 猫耳 キヲツケロ』……?」 突然高熱を出して寝込んだ曹操のために薬草を摘んできた孫尚香を待っていたのは、 仲間たちではなく地に刻まれた謎の書き付け、そしてちろるちょこ1個であった。ちなみにきなこ味。 「猫耳……。って、猫の耳よねぇ、やっぱり」 凶暴な山猫でもいるのかしら。でもそのくらい、呂蒙にどうにかできない訳が無い。 病を得ている曹操を動かしてまで、移動する訳も無い。 よっぽど大きな群れだったのかしら? でも猫って確かあんまり群れないし。 そもそも耳だけに注意を促している意味がわからない。 「まぁいいわ、桂陽へ向かえばいいんでしょ」 ひとり呟くと、ちろるちょこを拾い上げ地...
  • 7-157 ふぞろいの林檎たち
    441 名前:ふぞろいの林檎たち1/5 投稿日:2006/07/29(土) 00 57 06 それは、ほんの些細なことがきっかけだった。 蜀を目指して上庸のあたりを歩いている頃だったか。 三人は疲弊しきっており、ろくな食料も手に入らぬせいで空腹でもあり、気が立っていた。 馬忠は少し遅れて足を引きずりながら無言で歩き、 夏侯惇と廖化は肩を並べていたものの、言葉を交わす元気も無かった。 辺りは静まりかえり、時折聞こえるは鳥の鳴き声とお互いの荒い息づかいだけ。 「玄徳様がいればなあ」 廖化が、漏れる吐息に忍び込ませるようにそっと呟いたのだ。 「玄徳様がいれば、こんな目に会わずに済むのに」 下を向いて黙々と歩いていた彼は途端に顔を上げ、 妙にキラキラとした目で夏侯惇を見やってきた。 「聞けよ、元譲。俺ってばさ、すげー玄徳...
  • 7-078 妖刀と名門
    185 名前:妖刀と名門1/3 投稿日:2006/07/15(土) 23 12 57 第一回放送の始まる少し前、袁紹は今後の方針について考えていた。 「…とりあえず、顔良や文醜達わが配下、それに孟徳やその配下なら、顔見知りを探すために、河北に向かう可能性が高い。ならば私は仲間を探すために河北一帯を周る事にするか」 そう言うと袁紹は洛陽にある、先ほど自分が出てきた城を見据える。 「…見ていろ、劉協。この袁紹本初が貴様に引導を渡してくれる!」 城を見据え、袁紹は啖呵を切る。 「む、いかんいかん、支給品の確認を忘れていた。」 そう言って、いそいそと自分の鞄を漁る。さっきまでの決めのシーンが台無しである。 「これが私の支給品か…あまり見ない剣だな」 そう言って袁紹は鞄から一振りの刀を持ち出し、鞘を抜いた。刀身が、鈍く、妖しい光を放つ。 「おお、これは何とも美...
  • 7-171 張角さんのDEATH予定NOTE
    79 名前:張角さんのDEATH予定NOTE 1/2 投稿日:2006/08/02(水) 14 22 12 「しっかし、使い方がわかんないねぇ」 張角は自らの持つDEATH NOTEを眺めて、首を傾げた。 おそらく使用法であろうという注意書きは付いているのだが、見たこともない異国の字によって記されているため 学のある張角といえども解読は不可能だった。 ためしに1ページ切り取って、紙飛行機を折ってみる。 投げてみる。 普通に飛んで、すぐに落ちた。もちろん、何も起きはしない。 「駄目かぁ」 この手帳から異様な気配は感じるのだが、それがどうやったら発揮されるのかがさっぱり見当も付かない。 そうなると張角が気持ちを切り替えるのは速かった。 「……日記にでもするかぁ?」 手帳はものを書くために使うものだ。発している奇妙な気配はこの際無視してしまうことに...
  • 7-101 妖刀対妖槍
    244 名前:妖刀対妖槍(訂正)[sage] 投稿日:2006/07/18(火) 22 41 21 ―俺はどうしたんだ― 確か、入り口を出た。そこに荀イク殿がいた。声をかけた。荀イク殿は笑っていた。笑いながら、俺に斬りかかった。咄嗟の事で反応が遅れ、腕を少し斬られた。荀イク殿とその槍から尋常じゃない気配が感じられた。 殺される。そう思って、俺は逃げた。奴をまくため、近くの茂みに、身を隠した。すぐにばれた。殺される。濁った双眸に睨まれながらそんな事を感じた。そして槍が振り下ろされた。 斬られたというより殴られた感じだった。途切れる意識の中、荀イク殿の呟きが聞こえた。 「あなたにも手伝ってもらうとしましょう、曹彰殿。これを差し上げます。かわりにあなたの支給品は頂いていきますよ」 それから、どうなったんだ? 目が覚めた気がする。近くに槍が落ちていて、俺の鞄が荒らされていた。わけもわ...
  • 7-240 誓
    74 名前:誓 1/7 投稿日:2006/10/17(火) 23 58 01 張飛は焦っていた。 呂布の得物は関羽の青龍偃月刀。対して張飛はただの鉈だ。 武器の質もリーチも違いすぎる。懐まで飛び込まねば勝ち目はない。 もちろんそれを許してくれる呂布ではない。 青龍偃月刀を振るう軌跡は重量感のある軽やかさだ。 ビョオ、と風を切り翻る銀の刃と朱塗りの柄は 赤く輝く闘気のように呂布を縁取り、張飛に付け入る隙を与えない。 張飛はギリ、と奥歯を噛む。 自分にももっとましな武器があれば。いつもの蛇矛さえあれば。 長く戦いを共にした相棒さえあれば、こんな糞野郎すぐにぶっ飛ばしてやるのに。 「どうした、猪。命乞いをしたくなったか?」 「ふざけんじゃねえ!!」 足を払う横薙ぎを僅かに下がってかわし怒鳴る。 蛇矛があれば、とは思う。 だが押されている...
  • 7-216 武人の魂
    299 名前:武人の魂 1/5 投稿日:2006/09/02(土) 02 06 17 関羽と裴元紹は、幽州の桜桑村に辿り着いていた。重要な地だからだろう、桃園も縮小されながらもしっかりと残っている。 暫く探索を続けてみたが、禁止エリアになる寸前のこの地域にはもはや人っ子一人いない。 「やはり誰もいませんね、旦那」 裴元紹は桃を齧りながら、静まり返った村内を見渡す。 「……今はな。だが見ろ」 関羽は指し示す。桃園にはまだいくつも桃が実っていたが、関羽らが獲った枝以外にもいくつか痕が見える。 「それに、この家もだ」 歩を進めた狭い民家には、ばかでかい酒壷が転がっていた。無論、中身は完全に空である。 「すげえ、これを空けるだなんてちょっとやそっとじゃ出来ないっすよ」 「だが、一人でこの酒壷は空けられているようだ」 そう言う関羽の目に、どこか懐かしむよう...
  • 7-016
    31 名前:1/2 投稿日:2006/07/07(金) 22 37 59 最初はゲームに乗るつもりだった彼だったが、そんな思いはもう消え失せた。 本当の父に会わせてやろうか。この幼い弟を。 曹丕は曹幹の小さな手を握って外に出た。その暖かさに知らず笑みがこぼれた。 確か父は東門から外に出たはずだ。 しかし。曹丕はわずかに目を伏せる。 自分が父の元に出向いたとしても父は自分を信じるだろうか。 心残りだったろう末の息子を連れていれば…いや、それすらも策と取られるかもしれない。 父の信頼する臣下、例えば夏侯惇とか郭嘉だとかに託したほうがこの子のためか…。 「とうさま?」 きゅっと眉根を寄せた曹幹が曹丕を見上げている。 「とうさま、どこかいたいの?」 「…いや」 確かめるようにその手を握り返して、曹丕は微笑む。 「何でもないよ」 3...
  • 7-242 (・(エ)・)
    88 名前:(・(エ)・) 1/6 投稿日:2006/10/20(金) 17 49 14 曹熊が鄴城を目前にした時、血がべっとり付いた獲物を、血まみれの誰かが引っ提げて城門を出てきた。 とっさに曹熊は木の影に身を潜め、その人物を見た。 武骨。彼を一単語で表すと、こうなる。 巨漢で、服の上からでも大きく膨れ上がっているかのような筋骨がわかり、角張った威圧的な顔は、並の人には見つめることすらもままならないだろう。 張遼、字を文遠。その人に違いなかった。 張遼が去るまで待ち続け、曹熊は城内に入った。 曹熊が育った地であり、曹熊の第一の居場所だった都市は、廃墟へと化していた。 大雨のせいだろう、所々引ききっていない水が見え、地面はぬかるんでいた。 もう決して戻ることはできないのだと、宣言されているように思えて、曹熊はしばらく立ちすくんだ。 それからしばらく歩...
  • 7-142 馬鹿の一人踊り
    382 名前:馬鹿の一人踊り 投稿日:2006/07/27(木) 00 54 23 献帝の臓腑をえぐり取らんばかりに苛立つ声が響き始めた。 その声は、各地で戦いが起こり、皆々が殺し合っていることを告げた。 夏侯楙「いゃぁ~、どいつもこいつも威勢が良いなぁ、いやっほぅ!」    (くそっ、どうなってるんだ・・・!?     ボディーガードをつける前に皆死ぬつもりか!?     困ったな・・・誰かと相談してでもこの危機を乗り越えなくてはならないのに。     頼りになる者と言えば・・・     親父殿に夏侯淵叔父、先帝殿、そして曹丕、か・・・     誰でも良い、誰かに会って、伝える事は伝えないと・・・     絶対に私達は死ぬわけにはいかないんだ、その全てが生き残るためにも     これだけの火が出ているんだ、必ず誰かが寄ってくる、その中に知...
  • 7-095
    225 名前:1/2 投稿日:2006/07/17(月) 20 43 03 「そりゃぁぁぁ!」 「くッ」 一方こちらは、照明弾が打ち上げられる直前の陳留。 「おのれ…往生際が悪いぞ…!」 「…ハァハァ…何度も言うが、私と貴殿は面識が無いはず!恨まれる覚えはない!」 「洒落臭いわ!!」 ヒュン! 再び刀が田疇に襲いかかる。 辛うじて避ける田疇。 潘璋は重い日本刀を振り回し、肩で息をしていた。 だが、その斬撃は次第に正確さを増していっている。 田疇にも切り傷やかすり傷が目立つようになった。 (…このままでは斬られる。かといってこんな本じゃ話にならん) こちらも疲労してきている。おそらく、遠からず一刀両断にされるだろう。 その時、背後で強烈な光を浴びた。思わず振り向いてしまったが、それがまずかった。 「しまっ…!」 ...
  • 7-020
    38 名前:無名武将@お腹せっぷく 投稿日:2006/07/08(土) 14 56 22 よくはしゃぐ、元気な獲物だった。 一発目は外れてしまった。 逸れたその弾丸は一人の忠実な臣下の頭とその主の青い瞳を抉ったが、それは彼の知るところではなかった。 もし知ったなら彼は幸せそうに微笑んだだろう。それは何よりでした、と。 あるいは悲しそうに笑ったかもしれない。殺せたのは一人だけでしたか、と。 獲物は必死で走っていた。彼の唇は優しい微笑を形作る。 昔から、逃げ足だけは早い方だった。 でもいけません、このライフルの射程から逃れるためにはもっともっと頑張って走らなければ。 それを許す私ではありませんけれど。 さて、じっくりと狙いをつけなければ。 空の箱のお礼に、貴方に死を贈りましょう。 黒光りする銃身とガラス玉の瞳が、鈍く輝く。 私は漢室最後...
  • 7-084 見えない恐怖
    196 名前:見えない恐怖 1/4 投稿日:2006/07/16(日) 10 25 50 暗闇の中で微かに動く人影を木陰から見つめる4つの瞳。そのうち2つの瞳は、陰の姿が朧にしか見えていない。 その影は、長柄の武器と、持ち手のある細長いもの(おそらく献帝の護衛が持っていた『銃』というものと同種の ものだろう)を持っている。 「……馬岱どの(註1)、見えますか?」 闇に視界を遮られている2つの瞳の持ち主――姜維が問う。 「んー、ちょっと待ってな、今確認するから……」 残り2つの瞳――馬岱は木陰から身を乗り出し、人影の横顔を良く観察する。50m程離れているようだ。 馬岱の瞳が一瞬大きく見開かれ、そして止まる。軽く歯の根が震える音。汗が額と背中に伝うのを感じる。 「おい……」 ぎりっ。歯噛みする音が不快に響く。もし周囲が明るかったら、その苦々しい表情も見え...
  • 7-190 炎の女神と傀儡の軍師
    161 名前:炎の女神と傀儡の軍師 1/8 投稿日:2006/08/11(金) 13 48 55 「アンタ、ぼやぼやしてないで暇なら兎か猪でも捕まえて来とくれよ」 「いや、だがなぁ、その間にお前に何かあったらと思うと」 「アタシを誰だと思ってんだい? この祝融様がそんじょそこらの男どもに負けるはずがないよ。  女に飯食わせるのが男の甲斐性ってモンだろ」 一日目に兎を捕まえたおかげで節約できたパンという食料も、もう底をつこうとしていた。 南の物であれば食用の植物も少しは分かるのだが、漢の植物は見たこともないものばかりで、 さすがに口に入れようという気にはなれない。 動物の肉はどこのものでも普通食えるだろう、と考えた祝融に尻をはたかれ、 孟獲は素手はきついなあとぼやきながらもサーマルゴーグルを手に立ち上がった。 ―――その瞬間、孟獲は急に真剣な目付きにな...
  • 7-253 人間だから
    167 名前:人間だから 1/5 投稿日:2006/11/28(火) 13 14 11 何故だろう。 今日の月は何故あんなにぼやけた光を放っているのだろう。 何故自分は今震えているのだろう。 別段寒くはないのに。 「堪えるな」 大きな暖かい手が、励ますように曹彰の肩を二、三度叩いた。 堪える?自分は今、堪えているのか? 「堪えずに、泣けばいい」 そう言われて初めて理解した。自分は今、泣きたいのだ。 今目頭に熱く溜まっているのは涙なのだとようやく分かった。 父を連想させる袁紹の手が彼の肩を力強く叩く度、 不思議な程素直に涙が溢れた。 後継者問題で揉め、拗れ、恨みもした兄弟だったのに、 その死を知った今は悲しみしか沸き上がって来ず 思い出されるのは共に無邪気に遊んだ幼い日々ばかりで、 曹彰は何故かそれを狡いと思った。 その懐か...
  • 7-130 甘寧帰郷
    336 名前:甘寧帰郷 1/5 投稿日:2006/07/24(月) 14 51 57 「おお懐かしき蜀の地よ」 甘寧は荊州から永安に入り、永安から成都へと向かっていた。 狙いはもちろん蜀の猛将。蜀といえば、なんといっても天下に名高い五虎大将。 張飛は天下無双と呼ばれた呂布に次ぐというし、関羽も張飛と実力はほぼ僅差だという。 馬超は呂布にも劣らぬと言われ、黄忠は漢中にて魏の猛将夏侯淵を討ち取り、趙雲の単騎駆けは呉の内でも語り継がれていた。 「くくく……虎に今から会えるかと思えば、全身がざわついてくるぜ」 実際には五虎の誰一人として蜀の地にはいないのだが、もちろん甘寧はそんな事は知らない。 劉璋は成都城の城壁の上にいた。 かつての自分の本拠地であり、劉備に降伏した後は劉備の本拠地となったこの地。 城壁から内を見れば、劉璋の時代にはなかった、劉備一族...
  • 7-195 遭遇
    195 名前:遭遇 1/3 投稿日:2006/08/17(木) 19 30 41 開始当初から、幽州を目指していた関羽だったが、彼はまだ并州にいた。 人が避けそうな、深い山岳地帯を選んで進んだのが間違いだった。 二日目の昼のこと、并州北部の険しい山の中を歩いていたら、突如として、歩いていた崖沿いの道が崩れ落ちた。 関羽は抵抗する暇もなく、崖下へ転がり落ちていった。 途中、崖の急斜面に細々と生えていた木の幹にしがみつき、九死に一生を得たが、 上を見上げても歩いていた道はすでに高く、下を見下げても深い崖底の一面に荒い巨石が転がっている。 周りを見回してもこの木のようなとっかかりになるものは特になく、そのまま時を過ごさなければならなかった。 寒い夜を堪え忍ぶと、明るい日が斜面に降り注いできた。しかしすぐに雨雲がやってきて、陽を覆い被し雨を降らせてきた。 激しい...
  • 7-185 周瑜の夢
    129 名前:周瑜の夢 1/11 投稿日:2006/08/09(水) 11 54 38 幻想的な音響と、宝玉のようにキラキラと輝き動く絵、そして頭脳を使って絵の中の四角形を組み消す作業は、曹植を熱中させた。 最初はこの札は何の役に立つのかと思ったが、張遼が読んでいなかった説明書によれば、どうやらこれは遊具であるらしい。 しかしPSPはただの遊具ではなかった。説明書通り、右に付いていた金具を持ち上ると、それまで黒かった部分がいきなり光りだした。 その後の、めまぐるしい光る絵の動きに曹植は圧倒されたが、それは数秒で止まり、淡泊な一絵で止まった。 「え、えっと?」 説明書によれば、ソフトと呼ばれる、盤上のものを札の中へ入れなければならないらしい。張遼のバックを見ると、確かにそれらしきものが多くあった。 「ルミネス モンスターハンター ぼくのなつやすみ ウイニングイレブ...
  • 7-199 共鳴
    211 名前:共鳴 1/11 投稿日:2006/08/21(月) 03 20 35 司馬孚達は黙々と、夜の北の地を歩いていた。出発したばかりの時は劉禅が気楽なことを話しかけていたが、 司馬孚がそっけない返答しかしなかったため、劉禅はそのうち飽きたようだ。 途中、休憩をした。劉禅にははっきりした目的地でもあるのか、時計のいう二時間ほど休んだら再び歩くつもりらしい。 劉禅はその間、食料探しに出かけた。司馬孚が黎明の時に集めた食料がすでにあったが、劉禅はそれでは不満らしい。 司馬孚はすでに十分疲れていたので参加しなかったが、外見いかにも鈍そうな劉禅がまだ疲れを見せないとは、どういうことだろう。 司馬孚はひとり残された。逃げることが頭によぎったが、すぐに振り払った。仇は、この手で取らなければ意味がない。 休憩場所は、涼しげな林の中だった。司馬孚は木に寄りかかって、身を休...
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