彼氏と彼女

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<p>菫「ふ…私の彼氏になったからには、一人前の男になって貰わないとな」</p> <p> </p> <p>京太郎「はいはい。分かりましたよ」</p> <p> </p> <p>濃紺の髪が風に舞う。シャンプーか、コンディショナーか、柔らかな香りが漂って。</p> <p> </p> <p>楽しそうに笑う二つ上の先輩を見て、京太郎は思わずため息と、笑みを零す。</p> <p> </p> <p>菫「まずはそうだな…聖水は掛けるのと掛けられるのと、どっちがいい?」</p> <p> </p> <p>京太郎「一人前からは程遠い存在だろ!」</p> <p> </p> <p>気を抜かずとも、少女から漏れ出る言葉の色はいつもと何も変わらない。</p> <p> </p> <p>菫「聖水は嫌か…参ったな、それだと私にはこの後買い物をしつつ夕方のコンサートに行って、帰りに食事をするくらいのプランしか思いつかないのだが」</p> <p> </p> <p>京太郎「パーフェクトじゃんか! チケットも用意されてるんですけど!」</p> <p> </p> <p>菫「そうか…」</p> <p> </p> <p>京太郎「なんでそんな残念そうなんだよ! その…普通に行けばいいだろ!」</p> <p> </p> <p>おや、と少女の頬が、唇が吊り上る。悪戯っぽく。可愛らしく。</p> <p> </p> <p>菫「ふふ、私の彼氏はデートという単語には弱いようだな」</p> <p> </p> <p>京太郎「う…ま、まあ…初デートですから…これから慣れるんでいいですよ」</p> <p> </p> <p>菫「やれやれ。頼むぞ京太郎――これでも、本当に好きなんだからな」</p> <p> </p> <p> </p> <p>赤く染まる顔を見せないように少女の頭を撫でる手の平。</p> <p>手の温度を感じつつ、少女は笑う。年下の男の子に微笑み、見守るように。</p>

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