脱衣麻雀スペシャル

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あえて言うなら、地獄。それ以上の言葉があるだろうか。

 

和「リーチ」ヒュンッ

 

咲「カン」ゴッ

 

久「んー…それじゃ、私もリーチしようかしら」フフッ

 

京太郎「……ふぅー」

 

和「須賀君? どうしたんですか?」

 

どうしたんですか、とはまた嫌な言い方だ。

その目を見ればお前らが何を期待しているのか、まるっと御見通しだっつーの。

 

京太郎「……ツモ」パタン

 

咲「わー、京ちゃん強いねっ!」

 

和「本当に。実際私達も本気なのですが…」

 

久「まいっちゃうわねー。それで須賀君? 次はどれにする?」

 

京太郎「……」

 

選べと。どれにするかを選べと、みんなの目が突き刺さる。

和はおそらく上…上に視線が行ってるからな。

部長は下。目が面白そうに笑ってるが、正直狩人っぽくてこえーよ…

咲は…更に下、か。そこはもう何もないんだが…何もないからこそ見てるってか?

 

京太郎「……上に、します」

 

和「っ!」グッ!

 

久「あらそう? そっちはそっちで楽しみだから別にいいわよー」

 

咲「わ、わ…!」

 

咲さんよ、目を覆うんならきっちり覆ってくれませんかね。それだとガッツリ見えてるよね。

和…ガッツポーズはやめろ!

部長はもうどうにもならん。諦めよう。

 

京太郎「ふー…これで、満足ですか」

 

久「あらあら? それはこっちのセリフ…ダントツトップの須賀君は、今満足かしら?」

 

和「プールで見るのとはまた違いますからね、部室で見るからこその背徳感が、ええ、ええ! 実にすばらです!」

 

咲「京ちゃん大丈夫? 風邪引かないように…ネギ買ってこようか?」

 

こいつらのテンションだだ上がり。俺のテンションだだ下がり。

何でもってこんなことが始まってしまったんだろうか。そして、俺ってなんでここに座ってるんだろうか。

むき出しの背中が、少しざらつく椅子の感触に違和感を覚えてしまう。

 

久「さあ、残り二局。存分にイキましょうか…!」

 

 

久「和了ったら一枚脱ぐ、スペシャル脱衣麻雀!」

 

ほんと、どうしてこうなった。

 

 

 

――南三局――

 

残り二局。正直言って絶望的な状況だ。

どれだけ早く終わっても、二枚脱ぐ。誰かが二回かもしれないし、一回ずつかも。とにかく和了った奴が脱ぐ。

 

和「けれど、須賀君以外みんな焼き鳥なんて…どういうことでしょうか」

 

久「そうねえ…これが須賀君の能力なのかしら?」

 

どんな能力だ。相手のエロボケを封じるのか? 超役にたたねえ…いや、立つのかもしれないけどさ。

まあいい、今はそんなことよりもこの状況だ。

 

咲「カン」

 

他の三人に和了らせるわけにはいかない。

そんなことしたら、一枚目から何を脱ぐか分かったもんじゃないからな…

だから俺が今までは和了ってきたわけだけど、もう、俺にはズボンとトランクスしかない。

最悪ズボンは仕方ない…トランクスを海パンと思えば、まあ、いい。問題は二枚目だ。

 

和「ポン」

 

くそ…どいつもこいつも、最速トップギアできてやがる…!

どうする? 二枚目脱いでもこいつらは嫌がらない気がして物凄く嫌なんだが…俺が嫌すぎる。

かと言って三人の誰かに和了らせると、それはマズイだろうし。

 

京太郎「…チー」

 

手が進む。咲のカンも、和の確率も、部長の悪待ちも避けて面白くないくらい手が入る。

これでテンパイだ。きっとツモるんだろうけど…俺は、どうすればいい?

ベルトなんて奇手はとっくに使っちまった。正真正銘ズボンとトランクスじゃ、どうにもならねえ。

 

久「ふふ、須賀君困ってるわねえ…」

 

京太郎「ええ…むちゃくちゃ困ってますよ」

 

久「正直でよろしい。それじゃあそんな須賀君に、ひとつプレゼント」

 

京太郎「…なんです?」

 

久「ふっふっふ。私はねぇ…次和了ったら、ブラを外すわ」

 

何言ってんだこの人…暑さで頭トンだのか?

やたら得意満面の笑みだし、どうにも読めないなこの人は…

 

京太郎「それならなおさら、和了らせるわけには――」

 

久「あらそう? でもルールでは脱げるのは一枚だけ…ブラを脱ぐから、制服は決して脱がないわ」

 

久「ヘソチラも無し。肌が見えないように私はブラを脱ぐ…露出度としては、低いと思わない?」

 

この、人は…! 確かにそれなら露出自体は低い。けど、確実にアブノーマルだ。

俺にそれを選べと言うのか…! 俺に、それを選ばせる気か、この人は…!

くそっ…笑ってやがる、この部長、ホント面白そうに笑ってやがる…っ!

 

 

和「では私はショーツを…いえ、ブラ…今日はどっちもありませんでしたね」

 

とりあえず和だけは和了らせないようにしよう。

 

 

 

さて…もう南三局も8巡目。そろそろ和了ってもおかしくない巡目だ。

俺自身、もういい形の聴牌になってるし、いつ和了ってもおかしくないが…やっぱりトランクス一枚はキツイ。

かと言ってここで、仮に部長に和了られたとしても次に和了れるとは限らない。そう考えると今和了してしまったほうが…くそっ、どうすればいい?

 

久「あら? あらあら…」

 

っ…和了ったか…!?

 

久「ふふっ、ざんねぇん。これじゃあ無かったわ」

 

ちらりと向けられる北…しらじらしい、自分で鳴いた牌じゃねーか。

 

久「須賀君? ほっとしてるところ悪いんだけど、これにも何か意味があるのかも知れないわよ?」

 

……嫌な、顔だ。別に歪んでるわけじゃないし、いつもの楽しそうな部長の顔。それがこんなにも、嫌に感じるものだなんて。

平常心、平常心。咲じゃあるまいし、そうそう嶺上なんて出るもんじゃない…

 

久「カン…あら、これも違ったわ。残念無念」トン

 

汗が滲んでくる。どっと疲れが襲ってくる、そんな感覚。

そしてその感覚が全く薄くならない間に――ツモった指先に走る悪寒。牌を見るまでもなく、俺の和了り牌だと分かる。分かっちまう。

そしてもう一つ…これは、部長の和了り牌だ…!

 

久「あらあら…いい牌が来ちゃったんじゃないの? 須賀君。私のカンのおかげかしらー」

 

卓に肘をついて、小さな顔を細い指で支える。悪役の仕草が驚くほど似合うのが、この部長だ。

くそ…どうする? どうすればいい――!?

 

 

 

手を崩して安牌…いや、それだと部長か和が和了る。その気配がはっきり伝わってくる…

 

久「ほら須賀君、あんまり長考されると困っちゃうんだけど?」

 

京太郎「分かってますよ…」

 

やっぱり切る訳には行かない。なら和了るしか…

いや…ちょっと、待てよ?

 

京太郎「咲…お前、本気でやってないだろ」

 

咲「え? そんなことないよ?」

 

京太郎「そっか…」

 

目に映るのは、靴を脱いだ可愛らしい足、白いソックスが映えていて。

咲がもし、和みたいに脱ぎたい意思が強いわけじゃなければ…!

 

京太郎「じゃあ、さ。くつろいで打った方がいいんじゃねえの?」

 

咲「え?」

 

ワザとらしい俺の口調。部長も呆れ顔だが…あいにく、咲との付き合いは俺のがずっと長い。

 

咲「そうだね…うん、それじゃあ」

 

咲は、これくらいの言葉でも素直に動くんだよ!

 

京太郎「待てって咲、脱ぐのは和了ってからだっての」

 

咲「あ、そっか。うぅー…なんか言われると、早く、『靴下』脱ぎたいよぅ」モジモジ

 

京太郎「ははは…そうだな!」

 

指を左端の牌へ。こいつはそのまま河へと投げ捨てれば――

 

咲「あ、京ちゃんそれカン!」

 

すかさず拾ってくれる牌なんだよ!

 

咲「――嶺上開花」パタン

 

久「……へぇー? やるじゃない」

 

京太郎「ええ、咲はさすがですよね」

 

…アンタの顔が相変わらず笑ってることが、俺には一番怖いんですよ。

 

 

 

久「さて…それで、南四局。オーラスに入ったわけだけど…これは須賀君の勝ちかしらね」

 

こりゃまた簡単に言ってくれる。それはつまり、俺にパンイチになれってことだろ。

さて…オーラスもオーラス。全員本気ときたもんだ、正直俺がこの卓にいること自体、妙な感じがする。

 

咲「うん、すっごくくつろげてる感じだよ…これならイけそう」ペチペチ

 

久「あらあら。これは私も全力でイク必要があるわよねぇ…」

 

和「……それではサイをマワしますね」ピッ

 

いちいち耳につく個々のイントネーションだが、今は置いておこう。

配牌はまあまあ。鳴いて早和了りもできそうだけど…微妙な感じだ。

まずはセオリー通りの打ち方で様子見、そんなとこだろう。

 

久「なかなか無難な一打ねえ…ま、それは須賀君の打ち方なワケだけど」

 

京太郎「そういう部長こそ、第一打はオタ風じゃないですか。無難もいいとこですよ?」

 

久「定石こそ後の一手に繋がる奇手…なんてのはどう?」

 

京太郎「意味わかんないっすね」

 

故意でのトラッシュトークというわけでもなく、部長の話し方は大概こんなもんだ。

思ったことをそのまま口にするから、時々支離滅裂に感じることがあるし、下ネタも普通にエグい。

 

久「ほら、開発しすぎると正常位が逆に新鮮みたいなコトってあるじゃない?」

 

ほら、意味わかんないじゃない?

 

和「……」トン

 

咲「うー…京ちゃん、裸足だとエアコンで寒いよぅ」スリスリ

 

こいつらマイペースだな。まあこうしてる分には安全だし、別にいいか…

 

久「須賀君、咲の足をあたためてあげないと。そのための太くて熱い棒でしょ?」

 

咲「うーん…やったことないけど、あらかじめ足の裏をあっためておいたほうが良いかな?」

 

久「冷たいと血流悪くなるかもしれないし、ナイスアイデアじゃない?」

 

京太郎「ええい、コイツらときたら…」

 

 

 

トン、トンと牌が卓に吸われていく。

相当の時間が経ったと感じるけれど、河はまだまだ一列目。とはいえテンパってる奴もいるだろう。

 

京太郎「……部長? どうしたんですか、部長の番ですよ」

 

久「あ…ええ、ごめんね」トン

 

京太郎「……咲、次はお前だって」

 

咲「わ、わっ! ごめんね京ちゃん…えっと、これ」トン

 

なんだろう、どうも二人の様子がおかしい。二人の目線が俺に向いていて…? 下のほうか?

よくよく見れば二人の表情は険しい感じなのに目が泳いでいる。どことなく、頬を染めて。

 

久「須賀君やるわねえ…ここにきて精神攻撃ってわけ?」

 

咲「うー、うー…」チラチラ

 

京太郎「は?」

 

どちらかというと日々精神を削られてるのは俺の方なんですけどね。

 

咲「もー…女の子の前でそんな格好して、襲われても知らないよ?」

 

その言葉、男が女の子に言う言葉じゃねーのかなぁ。

 

久「須賀君って良い肌よね。舐めてもいい?」

 

京太郎「部長のレベルが違いすぎてチョイ引くんですけど」

 

 

久「咲、今のって言い過ぎ?」ヒソヒソ

 

咲「うーん、どうなんでしょうか…わかんないです」ヒソヒソ

 

京太郎「おーっと麻雀部全体のレベルが高かったかあー」

 

 

 

しかしアレだな、部長と咲がトークに熱中してて進みが遅い…個人的には悪くないんだけど。

そのくせ打ち方は、容赦ゼロのガチなんだからタチが悪すぎて困る。

 

咲「カン」

 

咲のカンは二回目。正直和了られたかと思ったけど、なんとか首の皮一枚か。次は和了るだろうな…

 

久「ふんふーん…それじゃそろそろ、私もリーチといこうかしら」

 

でもってこっちもリーチですか。いつもの悪待ちとなると、和了れそうで怖いっすね。

 

京太郎「やー…参ったな、まだ聴牌できてないんですけど」

 

久「ふぅん? ウソ、ってわけでもなさそうね」

 

京太郎「ええ、まあ」

 

はは、と笑いが漏れてしまう。結局こんなもんで、ガチ本気の三人相手には俺程度じゃ敵わないわけだ。

 

京太郎「この局は…譲るしかないですね」

 

事実上の敗北宣言。それを聞いた部長はニンマリと、少しだけ物足りなそうに笑った。

 

久「素直でよろしい。誰になるか分からないけど、最後に脱ぎ終わるまで途中退席は無しよ?」

 

京太郎「……分かってますよ、ははっ」

 

思わず、笑みがこぼれてしまう。徐々に部長の笑みが困惑に変わるのが分かっても、止められなくて。

後で聞いたところ、さっきからツッコミのキレが悪いし、これでツッコミが嫌になったんじゃないかと心配になったらしい。いや…心配のしどころがおかしいだろ。

 

京太郎「部長。この卓は凄いですよね? 俺も含めて四人とも、大会と同じくらい本気になってるでしょう」

 

久「…そうね、脱衣を抜きにしても楽しい卓だわ。それが?」

 

それですよ部長。それだけが、俺の望みだったんです。

 

京太郎「そう…みんな、本気なんですよ」

 

京太郎「和を含めて、ね」

 

 

 

久「――須賀君、まさか」

 

キラリと光る部長の目。睨む感じは欠片もなくて、心底面白そうな色をしている。

 

京太郎「はい、まあ」

 

久「ふふ…そう、そういうこと。ツッコミがやけにキレがないと思ったのよ。要は時間稼ぎだったってことね?」

 

さすがは部長。こっちの狙いはすぐにバレちまうか…まあ、終わってからバレたわけだし、成功だよな。

 

咲「え? なにがですか…?」

 

咲は分かってないような顔。実際分かってないんだろうな…咲らしいぜ。

そんな咲に対して、部長はなぜか得意満面の笑み。なぜだ。

 

久「そうねえ…ギアがかかるというか、発熱というか。それまで私達に和了らせないように、ツッコミを雑にして対局を長引かせてたわけ」

 

京太郎「ま…脱衣なだけあって、煩悩が強いせいか時間がかかっちまったけどな」

 

咲「…?」

 

こてん、と擬音をつけて咲が首を傾ける。お前の目はぽんこつか…

 

京太郎「さっきから全然喋ってないやつ、いるだろ」

 

咲「……あっ」

 

ようやっとお気づきのようで。

赤く染まった頬、荒い息。濡れた目は山と河と手牌を見つめて、手は微動だにせず次のツモ巡を待っている。

桃色の髪を揺らすことなく、お得意の下ネタもなにもなく。

 

真面目な顔をしたのどっちが、静かに座っていた。

 

 

 

久「まったく、やってくれるわね」

 

ため息とともに広がる表情は、どこか諦めたような、それでいて楽しげなもの。

正直蛇足だろうけど…咲もいるし、説明しとくべきだろう。

 

京太郎「…のどっちに頼ろうと思ったのは、だいぶ最初の頃です。東二局くらいかな…」

 

久「そう、そうでしょうね。のどっちの下ネタ嫌いを考えれば、脱衣麻雀なんか…なんで気が付かなかったのかしら」

 

京太郎「別に不思議じゃありませんよ。ガチ麻雀とは言っても、脱衣がかかった麻雀です。どうしても下ネタフィルターが入ってそっちに思考が持っていかれるし、事実和も最後の局まで覚醒しなかった」

 

京太郎「…正直、南三局になっても覚醒してなかった時点で諦めてましたけど…最後まで悪あがきをしてみるもんですね」

 

久「なるほどね。ちなみに、目覚めてなかったら?」

 

おっと、キツイ質問だ。正直そっちの方が可能性としては高かったからな…

 

京太郎「その時は、トランクス一丁になるつもりでしたよ…もう策がありませんでしたからね」

 

大げさに肩をすくめると、部長がおかしそうに笑う。咲は分かっているのか分かってないのか、ほへー…と間の抜けた顔をしていた。

 

久「あーあ…惜しいわねえ、外したブラは須賀君にあげてもよかったんだけど?」

 

いらんわ!

ったく、どこまでも…もういいけど。慣れてしまったわけだし。

手牌の真ん中にある牌を摘まむ。じっと動かない和、その和了り牌を。ゆっくりと、河へと流す。

 

和「ロン。これで対局終了ですね」

 

ピンフのみ。点数に関係のない対局だからこその、4確和了。そして――

 

和「ルールですから仕方ありませんが…」

 

しゅるり、と服の擦れる音。

胸元を飾る赤いリボンがセーラー服から離れて、1枚の布になる。

 

和「1枚、脱ぎました。ではこの下らないルールはおしまいですね? 須賀君は早く服を着て下さい」

 

一切の下ネタのない和の瞳。

それに急かされるように、部長も、咲も、俺自身も。脱衣麻雀と言う地獄から抜け出して、いつもの麻雀へと戻るのだった。