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金刃 憲人 - (2007/10/02 (火) 04:48:13) の編集履歴(バックアップ)


金刃 憲人(23歳・巨人) 176/80 (市立尼崎高-立命館大)

 

今回は巨人に希望枠として入団し、ルーキーながら7勝(6敗・9/30時点)を挙げた左腕・金刃について書いてみたい。本来はシーズン終了後の予定だったが残り2試合で先発機会もなさそうだろうから早めに書いてしまう事にする。

 

金刃は希望枠ながらそこまで評価の高い選手ではなかったが、上原・パウエルといった主力の先発投手が故障しチャンスを得る。オープン戦での好投を評価され、ルーキーながら開幕ローテーション入りを果たす。4/4の中日戦でプロ初先発(5回1/3無失点も勝敗付かず)、4/11の広島戦(6回1失点)でプロ初勝利。それ以降ルーキーとしては順調に勝ち星を挙げている。

 

金刃の魅力は内角をドンドン攻めてくる強気の投球スタイルとそれを可能にする高い制球力だ。114回2/3を投げて与四球数は32と投球回数の約1/4程度しか出していない(何よりあれだけ内角を攻めて死球4とは素晴らしい!)。完成度の高さという点では06年組屈指の存在だろう。

 

勿論課題も多い。最大の問題は被本塁打率の高さだ。

金刃の被本塁打は20(リーグ3位)と彼の投球イニング数を考えれば間違いなく多い。被本塁打率(被本塁打÷投球回×9)も1.57とかなり高い――これがどれぐらいの数字かというと99年横浜の斎藤隆(現ドジャース)が32本塁打で配球王になったが、彼の被本塁打率が1.56だからそれを上回っている事になる。加えて奪三振率も5.65と低く如何に彼が三振を取る事に苦労している投手である事が分かるだろう。ただ、本塁打はかなり打球の飛びやすい東京ドーム(6本)を本拠地にしている事もあり、多少同情の余地はあるかもしれない。

 

何故これ程までに一発を浴び三振が取れないのか。

それを説明する為には彼の投球内容を説明する必要がある。

金刃の投球は大体130中盤から後半-速くても140前半の直球(MAX144、5)にスライダーが大半を占め、たまにシュートを混ぜるくらいという球種の多い現代の投手としては非常に単純な構成だと言える。フォークも一応あることはあるのだが三振の取れる球ではなく、投げる事は滅多にない。彼が「決め球不足」と言われ奪三振率が低いのはこういう所にあるのだろう。加えてどの球もプロの打者なら球筋にさえ慣れてしまえば空振りの取りにくい球、楽に粘られるので球数も増える。事実彼がプロ初完投をした5/30のSB戦では投球数は150球と非常に多い。彼が大学時代大隣(近大-SB)や岸(東北学院大-西武)と比べ評価が低かったのはこういう理由もあったのだろう。

 

私はルーキー時の木佐貫を「三振でしかアウトの取れない投手」と評したが逆に金刃は「三振でアウトの取れない投手」だと言える。彼が夏場以降成績を落としていったのは勿論疲労が溜まってきた事もあるだろうが、慣れられてしまったという面も強い。本人もそれを前々から自覚していたようでチェンジアップ(シンカー?)を使ってみたりしているが実戦レベルで使えるボールではなさそうだ。金刃の制球力で内海クラスのチェンジアップがあれば鬼に金棒なのだが……。

 

また、決め球不足が結果的に被本塁打の増加に繋がったとも考えられる。

金刃は制球力の高さから追い込むまでは苦労しないのだが打者に当てる事に集中されると投げる球が無くなってしまう。この点で捕手の阿部もかなり苦労していたようで悩んだ末に消去法で金刃の一番得意な内角直球を選択するケースも多かったように思う。内角は外角よりも本塁打が出やすい事は今更語るまでもないだろう。

 

木佐貫とは違い制球力は安定している投手なので2年目以降もいきなり大崩れする事はないかもしれない。ただ、このままではジリ貧になる事は確実だろう。何とか三振の取れる球を身につけるか、それとも土肥(横浜)のようにいやらしい実戦型の投手に徹するか。彼がプロの世界で生き続けるにあたり、この問題は常に突きつけられる事になるだろう。それでも彼の制球力と平気で内角を攻められる度胸の良さには価値がある。この問題さえ解決出来れば巨人投手陣の中でも最も安定して勝てる投手になるだろう。