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こたうじ1  「氏政様、あんなところに風魔殿が」 城下を見回ってきた帰り、家臣が天守閣を指さした。 「ぬ?あやつまたあんなところに…」 凄腕忍の風魔小太郎は雇われて日は浅いが城内では信頼も篤い。寡黙というか言葉を発する場面にすら雇用主の氏政は遭遇したことがないが案外不自由もなかった。 そして彼は任務がない時は大抵高いところで日がな一日何をするでもなく過ごしている。 「どうじゃご先祖様がごらんになってきた北条家の栄光の眺めは。そこからじゃとよく見えようて」 天守閣に上った氏政が小太郎に声をかけてみた。気配はとうに読んでいたのだろう、屋根瓦から微動だにしない。 「ほれ、もうちょっとこっちに来んか。北条家代々に伝わる銘茶をこの儂直々にふるまってやるぞい」 茶の相手をせいと言うと嫌がる素振りもなく風魔は氏政のそばにやってきた。ご先祖様をはじめとして輝かしすぎる前任者に比べると氏政はぱっとしないが茶道もいまいちだ。ほとんど下手の横好きである。 「ウム、茶室も悪くないが栄光の小田原城下を眺めるのも乙じゃのう」 「…」 春風うらら小田原は穏やかそのものだ。 若干渋すぎる茶を小太郎はすする。あんまり見えないが特に顔色に変化はない。 「なかなか儂の茶につきおうてくれる輩はおらんでのう」 どうじゃ小太郎、と氏政は碗を片手に言った。 「たまに儂の道楽につきあってくれんかのう。もちろんそれも報酬にいれてな」 すると小太郎は不思議な動きを見せた。頷くのだが瞬時に首をふる。素早いだけに妙だ。 「なんじゃ、お主も茶は嫌いか」 ぶんぶん これには躊躇いなく否定。 「ほお、じゃあ茶につきおうてくれるか」 こくこく 忍らしい動きで頷く小太郎。 「んん?なにがいやなんじゃ?」 「…」 小太郎は答えなかった。 「ひょっとして、『ぼらんちあ』かの?」 「…」 まだ何か違うようだが概ねあっているらしい、忍が頷く。 「そうかそうか、うむ、じゃあ頼むぞい小太郎」 こっくり 小田原の天守閣で主従はそんな新たな契約を交わした。 唐突に小田原主従萌え。氏政じいちゃんを支えるこた。けなげ度はかすが以上かと。
こたうじ2  「わっかんねえなあ、あんたほどの忍がさ」 花散る風情も美しい小田原城の屋根瓦の上、いつものようにぼーっとしていた風魔小太郎に声がかけられた。大鴉をつれた武田の忍、猿飛佐助であった。 「…」 ちゃきん 「いや、今日はちょっと通りがかりだから勘弁してよ、ね?北条のじいさんも俺らとやれって言ってないっしょ」 軽く威嚇された佐助はへらと笑って敵意を散らす。 特に今武田ともめる理由もない、と考えたか小太郎は手裏剣を仕舞い、また遠くを眺め始めた。 「やれやれ…まあ実際のとこ、あんた勧誘してうちに迎えれば~って話もあったけどさ、腕のよすぎる忍は二人もいらないよな」 「…」 こっくり 「ま、あの神経質なじいさん…失礼、氏政殿にはよろしくな。同盟組んでる仲だしね」 そんじゃ、と言いたいことを言った佐助はさっと鴉につかまり風に紛れた。 「…」 覆面の向こう小太郎は何を思うのか。 「む?小太郎、ここに来るとは珍しいの」 氏政が私室にて「子孫が語る栄光の北条家物語」を執筆していたところに小太郎が音もなく訪ねてきた。 「ちょうどよいわ、小太郎、ちと肩を揉むのじゃ。ご先祖様がいかに素晴らしい生き方をなさったか文言を考えておったら凝ってきたわい」 こっくり 氏政の背後にまわった小太郎の手が老人の肩を包む。老いてもかくしゃくとしている氏政だがやはり忍の手には小さく感じられた。 「おぉ~そこじゃそこじゃ、小姓どもは力がなくてヘタクソでのう、あ、もうちょっと右…」 こっくり 氏政の指示に従いながら小太郎は肩の凝りをやわらげていった。 「うむ、楽になったぞい。また今度は腰を頼むぞい、小太郎、よいな」 こくこくこく 若干小太郎のうなずきが素早かったのを見つつも、氏政は契約した報酬にもうちょっと色をつけねばのうと考えていた。 天下の忍、風魔小太郎に肩揉みをさせていようとはさすがに佐助も思い至らないことだろう。それも本人が進んでやりたがっていることなどは、特に。

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