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エクセレント下僕 - (2007/08/14 (火) 21:42:15) の編集履歴(バックアップ)


BACK(戻れない)



騒動のあった酒場を後にしたレラは、煉瓦作りの家屋に挟まれた、せまく細い通りを歩いていた。
この街に限らず、最近では碁盤目状に家々が建ち並ぶケースが増えている。
家屋の隙間を縫うようにして、大小の通りが広がっているという仕組みだ。

大通りだけを避けるようにして歩くのは容易なことだが、一方で似たような景色ばかりが続き、
位置をよくよく確認していないと単純な街並みとはいえ、迷子になってしまうことも珍しくない。
そのことを心配する意味も含めて、数ブロックおきの十字路に騎士警団の詰め所が存在し、
街の安全と治安とを守っている。

今は、ツヴァルスという名のついた大通りにある詰め所から、大勢の騎士が捕り物に向かったとの事。
夕暮れ通りはにわかに騒がしくなっている。
どこからか騒ぎを聞きつけた市民達が野次馬がてら出かけて行っており、
そのうちの数人はうつむき加減に歩くレラとすれ違った。
しかし皆にして、やはり騎士の活躍のほうが気になるようで、レラの奇抜な服装にも、
彼女が手にし眺めていた写真にも無関心だった。

レラが手にした写真には、聖職者が身につける群青のローブを身にまとった青年が写っていた。
青年は華奢であり、髪を逆立て、眼鏡をかけているところまでは見て取れる。
遠くからこっそりと撮影したものなのだろう。
被写体はあさっての方向を向いてしまっている。けれどその表情はまるで刃のように引き締まっており、
あとコンマ数秒もあれば、撮影者に向き直り射抜くような視線を浴びせたのではないだろうか。
今にも静止画の青年の眼が、ぎらりと見る者を凝視し返してきそうだった。

レラは先ほどからずっとその写真を、天にも昇る気分で見つめているのだ。
道こそ確かなようだが、前方などほとんど見ていない。
そして時折空を仰いでは、「お兄様、ステキ」などと呟く、完全に危ない人である。