三日前、僕はばあちゃんの家に来た。 別に珍しいことじゃないだろう、夏休みだしよくあることだ。 だが僕のばあちゃんの家はど田舎だ。コンビニなんてあるわけないし電波だって繋がらない。 都会暮らしだった僕にとっては凄く辛い、だが一番僕の頭を悩ますのが・・・ 「おい、恭介遊ぼうぜ。」 ずっとここに住んでいる幹太だ。 毎日毎日1キロもの道のりを自転車も使わないで走ってくる。 「やだって言ってんだろ、僕は汚れたくないんだ。こんな山を走ってられるか。」 そんなことを言って本当は幹太の体力についていける自信が無いのだ。僕は一キロ走るのも辛い。 「じゃあいつもはどうやって遊んでんだ?」 「ずっと勉強してる。」 「つまんねぇじゃねえかよ。」 「僕はそれで満足してる。」 今日はいつもよりしつこい 「今日こそは絶対に遊ぶんだ。」 「あっやめろ。」 幹太は僕の手を掴んで無理やり玄関から引き剥がす。なんだかその瞬間から僕の一頁に新しいものが書かれた気がした。 「じゃあせっかくだし今日は虫網持ってきたんだ。」 「日本語がおかしいぞ、仕方ないから今日だけ遊んである。今日だけだぞ。」 そう言っていた僕は少し微笑んでいた気がする。 「恭介、遊んでくるのかい?」 「うん、ばあちゃん。きっと遅くなるかも。」 「いいよいいよ。いくらでも遊んできなさい。」 理解のあるいいばあちゃんだ。 「じゃあ行くぞ。」 「チョット待った、そんなに速く走るな。おい、ちょタンマだって。」 「だらしないぞ。まだまだ序の口だぞ。」 ---- 裏山についた。そうは言っても家が山の中なのだが・・・ 「よし恭介は特別だ。友達の証としてよく虫が取れる木を教えてやるよ。」 「ふぅん、何処なのそれ?」 口では冷たく装ってるが、内心は凄く興奮している。そして幹太もそれを察したみたいだ。 「おう、もう少しだぞ。」 「君の少しは何処までが少しかわからないのに・・・」 「じゃあ急ぐか?」 そう言って走り出したので僕は急いで止めた。 「冗談だって、恭介が付いて来れる分けないだろ。」 図星なのだがむかつく。 そうしているうちに目的のポイントに着いた。 「ここだぞ、ここ。」 見ると樹液が沢山出ている。 「おお、すごい。」 このときは素直に感心してしまった。 「おお、素直な所もあるじゃねえか。」 いちいちむかつく奴だけど図星なので反論ができなかった。 そこで僕はコクワガタを発見した。 「コクワガタだ・・・凄い。」 「そんな小物で感心しちゃダメだよ。」 「これよりもっと大きいのもいるの?」 「当たり前じゃないか。」 幹太は慣れた手付きでコクワガタを捕まえ、虫かごに入れた。