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思い出になった恋
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「よう」
と肩を叩かれた。会社帰りにバス停でバスを待っているときのことだ。
振り返ると中学校の同級生だった川辺が立っていた。勤め帰りらしきスーツ姿で、あのころよりずっと背も高く大人っぽくなってはいたけれど、笑ったとき片頬に浮かぶえくぼがあのころのままだった。
「びっくりした。久しぶり」
「おまえ、変わってないな。通りの向こうからでもすぐ分かった」
走ってきたのだろうか、少し息を弾ませている。
「おまえも、変わらないよ」
肩に置かれたままの手がくすぐったい。
時間があるなら飲みにでも行こうという話になって、二人並んで歩き出す。
俺はふと思う。あのころ、こいつのことをずいぶんと好きだったな。
今はもう、声を聴くだけで胸が弾むことも肘がぶつかっただけで動悸が激しくなることもない。
寂しいような面映いような気持ちだ。
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[[思い出になった恋>6-769-1]]
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