「18-659」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

18-659 - (2010/04/18 (日) 13:36:25) の最新版との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

片思い同盟 ---- 空気が乾燥しているのか喉が少し痛い。 誰もいない教室。静まり返った空気に咳払いが響く。 並んで座っている級友が照れ臭そうに笑う。 視線の先は俺じゃない。とても穏やかな眼差しだった。 「望はこれっぽっちも無いけどな」 放課後、いつもの雑談は教室から人がいなくなるにつれ、思わぬ方向に転がった。 彼が長い間、一人の女性に片思いをしていると打ち明けられた瞬間、 俺はどんな顔をしていたのだろう。 どんな顔だって構わない彼の視線の先に俺はいない。 「でも望は無いんだ。兄貴の彼女だし」 そう吐き捨てた彼に、どんな言葉も届かないような気がして 掠れた声で「そうか」と呟くのが精一杯だった。 「お前はいないの?好きな人」 「いるよ」 「誰?」 「言わない」 「そっか」 「お前と同じだよ。完全な片思い」 「そうか、なら振られた時には慰めてやるよ」 「お前が振られたら俺も慰めてやるよ」 「じゃあ俺達、今日から同盟だな。片思い同盟」 「なんだよそれ」 冗談めかして彼が差し出した右手を軽く叩いて二人で笑った。 その瞬間、止まっていた時間が流れ出したように 廊下の向こうから同級生達の騒がしい声が近づいて遠ざかった。 彼が大きく伸びをしながら「どっちが先に忘れられるか競争するか?」と立ち上がる。 俺は「そうだな」と気の無い返事をしながら彼に倣って体を伸ばした。 忘れる事なんて出来るはずが無い。 今、目の前にいる片思いの相手は何年経っても いつまでも俺の心に残り続けるだろう。 忘れる事なんて出来るはずが無い。 俺もお前も。 この苦しいくらい真っ直ぐな気持ちは紛れもなく恋なのだから。 ----   [[表示名>18-669]] ----
片思い同盟 ---- 空気が乾燥しているのか喉が少し痛い。 誰もいない教室。静まり返った空気に咳払いが響く。 並んで座っている級友が照れ臭そうに笑う。 視線の先は俺じゃない。とても穏やかな眼差しだった。 「望はこれっぽっちも無いけどな」 放課後、いつもの雑談は教室から人がいなくなるにつれ、思わぬ方向に転がった。 彼が長い間、一人の女性に片思いをしていると打ち明けられた瞬間、 俺はどんな顔をしていたのだろう。 どんな顔だって構わない彼の視線の先に俺はいない。 「でも望は無いんだ。兄貴の彼女だし」 そう吐き捨てた彼に、どんな言葉も届かないような気がして 掠れた声で「そうか」と呟くのが精一杯だった。 「お前はいないの?好きな人」 「いるよ」 「誰?」 「言わない」 「そっか」 「お前と同じだよ。完全な片思い」 「そうか、なら振られた時には慰めてやるよ」 「お前が振られたら俺も慰めてやるよ」 「じゃあ俺達、今日から同盟だな。片思い同盟」 「なんだよそれ」 冗談めかして彼が差し出した右手を軽く叩いて二人で笑った。 その瞬間、止まっていた時間が流れ出したように 廊下の向こうから同級生達の騒がしい声が近づいて遠ざかった。 彼が大きく伸びをしながら「どっちが先に忘れられるか競争するか?」と立ち上がる。 俺は「そうだな」と気の無い返事をしながら彼に倣って体を伸ばした。 忘れる事なんて出来るはずが無い。 今、目の前にいる片思いの相手は何年経っても いつまでも俺の心に残り続けるだろう。 忘れる事なんて出来るはずが無い。 俺もお前も。 この苦しいくらい真っ直ぐな気持ちは紛れもなく恋なのだから。 ----   [[愛させて>18-669]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: