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14-239 - (2009/03/24 (火) 12:40:39) の最新版との変更点
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「ったく……何で俺まで来なきゃ無いんだよ」
ぶつぶつと文句を言うと、背中のシャツがぐいと引っ張られた。
俺のシャツにしっかりと掴まっている幼馴染が、上目遣いで俺を見上げる。
「ご、ごめんてば。だって、怖いし……」
プルプルと震えながら体を縮こまらせるその姿は、まるでハムスターのようで、
俺はうっかり可愛いななどと考えた。
あわててその考えを振り払い、俺はあきれたようにため息をついて見せる。
「夜の学校が怖いとかって。お前何歳だよ。本当に俺と同じ歳? 本当に男か?」
「うう~~……」
「一人で取りに来るのが怖いなら、プリント忘れたりするなよ」
「だって、明日が提出だって忘れてたんだもん……」
「せめて暗くなる前に思い出せ」
更に大きくため息をつくと、相手はすっかりしゅんとして俯いてしまった。
そのまま会話が止まってしまって、少し言い過ぎたかな、と俺は僅かに後悔する。
何か声を掛けようと、口を開いた瞬間、足音だけが響いていた夜の学校に、水滴が滴る音が響いた。
「っぎゃーーーーーー!!」
「おわ!? ちょっコラ、しがみつくな!!」
「だってだってだって!!」
「蛇口から水が垂れただけだろ!! 落ち着け!!」
力いっぱい飛びついてきたその体を何とか受け止め、震える背中を落ち着かせるように撫でてやる。
「大丈夫だから……俺がついててやるから」
「ほんと?」
ようやく顔を上げたその瞳にはうっすらと涙が溜まっていて、その表情にどきりと俺の心臓が跳ねた。
ああもう、昔っから、俺はコイツには弱いんだ。
「ああ。何があっても、いつでも俺はお前の傍に居るから」
「……うん。なら、何があっても大丈夫だよなっ」
あっという間に笑顔になったその顔を見て、俺は苦笑するしかできなかった。
見た目チャラ男なのに成績優秀な攻め・見た目ガリ勉なのに学業不振な受け
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なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ!?
何でそんなこと言われなきゃならない?
「お前は本当に見た目はなぁ……」
言葉を濁すなよ。
見た目だけなら成績優秀、はっきりそう言えばいい。
実際はイマイチなのになって、そう言えばいいじゃないか。
俺がそう言われるのは、あいつのせいだ。
明るい色に染めた髪、ピアスやバングルをじゃらじゃら着けて、
制服の着方もだらしない。
リョウタの見た目はどこから見てもチャラ男だ。
なのにあいつはいつも成績トップ。
あいつがいるから、俺がいつも引き合いみたいに貶されるんだ。
悔しくて下唇を噛み締めてたら、背中をポンと叩かれた。
「委員長、今帰るとこ?遅いじゃん」
ジャラリと腕のバングルの鳴る音がする。
「俺、委員長じゃないし」
「いいじゃん、そのメガネ、委員長って感じだし」
「かけたくてかけてるわけじゃない」
苛立ちを隠しきれない声で答えたのに、リョウタは意にも介さず、
「で?」
隣に並んで歩き出す。長い足だ。ムカツク。
「でって何だよ」
「今帰りなの?って聞いてんの」
「見ればわかるだろ」
「ははっ、何か拗ねてんなぁ。どうしたんだよ。
先生に怒られでもした?」
お前のせいだよ。
お前がそんな見た目のくせに成績がいいから、俺が見た目だけ優秀とか
言われるんだよ。
「何でもない」
「ふぅん。まぁ、気にしなくていいんじゃね?」
「何が」
「見た目とかさ」
「お前……聞いてたのか!?」
クソ!!何てやつだ!
恥ずかしい、腹が立つ、俺は……俺にだってプライドがある!
「あのさ」
俺が羞恥と怒りで絶句していると、リョウタがまた口を開いた。
「委員長……今度一緒に勉強しない?」
「は……?」
意外な言葉に面食らう。
「な、なんで俺がお前と!
だいたい、俺なんかと勉強しても、お前には何の得もないだろ!」
「それが……あるんだな」
何を言ってるんだ、こいつは。
「まぁいいじゃん。それはおいおいってことで」
「意味がわからない」
「いいからいいから。とにかく一緒に勉強しよ。約束な」
一方的に決めて、リョウタはニカッと笑った。
意味がわからない。
わからないのに、なんとなくその笑顔につられて俺も微妙な笑いを返してしまう。
「ヘヘ」
それを見てまたリョウタが笑う。
嬉しそうな顔だ。変なやつ。
「じゃ、また明日な!」
言ってリョウタがまた俺の肩を叩いた。
また、じゃらり、とバングルの音がした。