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14-669 - (2009/03/24 (火) 14:20:40) の編集履歴(バックアップ)


「斉木、馬を出せ」
「先の週も外にお出でになった様ですが」
「こんな屋敷にいると息が詰まって仕方ない」
「詩学はどう為されたのです」
「あれは好かん」
「殿がお嘆きになりますぞ」
「構わぬ。歌ばかり詠んで政を蔑ろにするお方だ」
「若!」
「独りではない、椎名を付けてゆく」
「ですが……」
「退け、これは命だ」
「……お気をつけて往ってらっしゃいませ」

「まったく、斉木は煩くて敵わぬ」
「若がお可愛いのですよ」
「もう童ではない」
「この椎名がお供するのも、若がいっとう大切だからです」
「よせ、気が重くなる」
「失礼致しました」
「椎名、例の物は持って来たか」
「此処に入っております」
「見られてはおらぬだろうな」
「城の者の目を盗んで参りました」
「さすが椎名だ。腕が立つ」
「勿体のうお言葉で御座います」

「馬が来るよ」
「馬?」
「お侍さんかしら?」
「いや、若様だ!」
「若様!」
「若様がいらっしゃるの」
「椎名様もご一緒よ」
「お師匠様、お外に出てもよろしい?」
「其の書写を終えてからに為さい」
「あーい」
「かしこまりました」

「みな良い子にしておったか」
「若様ァ!」
「若様、椎名様、お久しゅうございます」
「豊川、筆子らはどうだ」
「みな賢い子でございます」
「あら、お師匠様いつもは褒めてはくださらないのよ」
「康孝、手習いは進んでおるか」
「おいら此れを書きました」
「百人一首か。見事なものだ」
「若様、此れあたしの」
「どれ、見せてみろ」
「とよは顔が丸くなった」
「非道ォい」
「はは、違いねえ」
「歳を取れば美しくなるぞ」
「とよ、椎名様に娶っていただけ」
「いや、私が貰ってやろうか」
「えらい玉の輿だ」

「さ、並べ。順々だ、押すのではないぞ」
「城に届いた大福餅だ。礼を言えよ」
「わァい、椎名様、有難う御座います」
「若様の計らいであるぞ、若にも申し上げよ」
「若様、有難う御座います」
「どうだ、美味いか」
「甘ァい」
「頬っぺたが落ちそうだ」
「おや、きよは食べぬのか」
「持って帰ってお父様とお母様に差し上げたいのです」
「優しい子だ、もう一つやろう」
「その一つは若様と椎名様でお召し上がりください」
「何を申すのだ」
「きよはお二方にも召し上がって戴きたいのです」
「では3つに割ればいい。此れできよも食べられる」
「おお善道、素晴らしい案だ」
「……豊川、この寺子屋の筆子は真に賢いな」
「有難う御座います」
「そなたのお陰だ」
「お気遣い、感謝致します」

「若、何故此のことをお隠しになるのです」
「表沙汰にしなければならぬことでもなかろう」
「殿や斉木が喜びます」
「それが気に食わぬ」
「若、あなた様は良い殿になられます」
「よせ」
「若は椎名の誇りで御座います」
「其れは当たり前であろう。お前と私は一蓮托生だ」
「……嬉しゅう御座います」
「さあ飛ばすぞ、日が暮れると斉木が煩い」
「畏まりました」