痛みを愛する ---- きゃっきゃっと甲高い耳障りな声が聞こえる。 痛い。 公共の場で人目も憚らずはしゃぐカップルも、それを羨ましいと思ってしまう自分も。 羨ましいと思うなら、彼女を作ればいい。そんなことぐらい分かってる。 でも、あいつがまだ俺のことを甘ったるい声で呼ぶから、いつまで経っても俺はあいつに囚われたままなんだ。 心の中でたかし、とあいつを呼べば、あいつは蕩けるような笑顔でなんだよ、と返してくれる。 痛い。 いつまでも過去のことを引きずって、男らしくない。 痛い。痛い。痛い。 痛いと言っておきながら、痛みから抜け出そうとしない自分が。 でも、やっぱり俺はこの痛みを忘れる気はない。 絶対に、忘れたくない。 だって、この痛みは確かにあいつを愛してた証だから。 この痛みを忘れないうちは、あいつを愛していられるから。 ---- [[踏み踏みしてほしーの>19-389]] ----