通な客×ラーメン屋店主 ---- その客はいつも食事時を外してくる。こりゃ通だねぇ、と思ったさ。 何せ昼や夕時はこぢんまりとした店だが、それなりに人が並ぶ訳で。味には自身もあるからよ。 盛況はいいが手間は掛けられねぇ。いつだって迅速丁寧を心がけてはいるものの、一人ひとりに相手 なんざしてらんねぇ。バイトも総動員して上へ下への大騒ぎさ。そんな時間も楽しいっちゃ楽しいん だがね。 で、その兄さんはぶらっと現れては麺やスープを丁寧に掻き込んで行く。ツユまでちゃんと味わって くれてるのが分かると嬉しいもんでね。ついつい笑顔も出ちまうってもんさ。 ガラガラッと引き戸を開けて暖簾を潜る背高のっぽの影を見て、俺はまた微笑んだわけさ。 「おうっ! 兄さんいつものやつかい? ネギおまけしてやるよっ!」 「いや……いつものままでいい。満足しているから」 畜生、全く分かってくれてるねぇ。また張り切ってあんたのドンブリ用意さしてもらうよ。 ---- [[気弱後輩×強気先輩>1-999]] ----