お幸せに ---- 「大丈夫だと言われたんだがね、それが全然大丈夫じゃなくてね」 「はあ…それで先生はどうしたんですか」 「どうしたと言われても…我慢したとしか…」 「…お気の毒に」 「全然気持ちよくなんかなかったよ、下手くそで」 「それは、その、ごめんなさいと言うべきでしょうか」 「謝罪の気持ちがあったら君は治療に専念したまえ」 「はあ…でも僕の病気が治っちゃったら教授が困りませんか」 「…君も言うようになったな。そもそも君の病気…まあつまり多重人格だが、それはそもそも 君の抑圧された感情によって起こっているわけで…その兆候が薄まりつつある今、確実に回復に向かっているわけだ」 「ですから、そうしたら教授が」 「困るものか、あんな男、私は別に好きじゃあない」 「でも…したんでしょう、あいつと」 「…それは」 「でもちょっと矛盾してますよね、俺たち。あなたは違う人格の俺が好きで、 でもあなたは医者で、あなたと会ってばかりいたら、あなたの好きな俺は消えちゃうわけで」 「……」 「俺がいる限りあなたがたは幸せになれないってことなんですよね」 「違う、それは違うぞ」 「そうなんですよ、結局。俺がいるから…それに」 「…それに?」 「俺はあなたのことが好きです」 「…」 「昨日あなたと寝たのが俺だって言ったら、どうしますか?」 「君は…何か勘違いをしている」 「先生こそ勘違いをしてます。俺の病気はとっくに治ってるんです」 「君だって」 「先生?」 「君だって勘違いをしている、医者をなめるんじゃない。君の病気が治ってることなんて、とっくに気付いている」 「……は」 「私は君のことが好きだ」 ---- [[仲間はずれ>15-479]] ----