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12.5-619 - (2013/08/15 (木) 01:23:38) のソース

最後に伝えたい言葉 
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「十中八九脳漿ブチ撒けて御陀仏、やな」
ヒュゥ、と場違いな口笛の音。こんなときでも口許には狂犬じみた笑み。
――嗚呼、神様仏様。
この人のこのカオが見れなくなることだけが心残りです。

つい先刻まで縛られていた手首をさすりながら窓を覗き込む。
ここから飛んで助かる可能性は五分…というのはあまりに楽天的過ぎる数字だろう。
まぁ、どちらにしろ連中はおれ達を生かして帰すつもりはあるまい。
それならいっそ今ここでこの人と一緒に死ぬ方のも悪くない。
想い人と共に死ぬ。なかなか甘美な響きじゃないか。ああ、ますます悪くない。
死の間際の感傷か、押し殺してきた言葉が自然に口をついて出る。

「神崎さん、最後に聞いて欲しいことがあるんですわ」
「ぁア? なんや改まって」
「――おれ、ずっとあんたのこと愛してました」
「へッ! 寝言ぬかしよる。おどれは恋愛ドラマの見すぎじゃ、あほんだら。
そんなナマっちょろいモン見よるからこんな目に遭うとるんじゃ、え? このくそボケ」
「……あんたかて同じ目に遭うとるやんけ」
「あぁ? 舐めたクチ利きくさって、余裕やないかいクソボケ。
ええか、“生きて帰れたら一発ヤらせい”」
「……は、」
「どうせ言うんやったらこん位言うたらんかい、ドマヌケ」
「……言うたら、ヤらしてくれるんですか?……嬉しいな」
「おもろい、万が一生きとったら一発と言わんと腰抜かすまでヤらしたるわい」

男の口許が挑発的に釣り上がり、笑みの形を作る。
ギラギラと光る、敗北を知らない瞳で。
獰猛な獣のような、見る者の飢餓感を底無しに煽るような――。

「さ、行くぞ。腹括れよ」
「……ええ、さっきの約束、忘れんといて下さいよ」
「ハハ!その意気じゃ!」

――前言撤回。心残りありまくりじゃクソったれ、絶対生きて帰ったる!
おれは、強く誓いながら宙に向かって跳んだ。
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[[青より赤が似合う>12.5-629]]
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