他校の後輩 ---- 小さい頃から得意で続けて来た競技は中学で全国大会に出場するほどの腕前で、高校もその推薦で決まったくらいだ。 卒業式に柄にもなく花なんぞを手渡して見送ってくれた後輩達に、俺は明るく声を掛けた。 「後は任せたぞ」 「はいっ!」 「それで一年後、俺ん所に来い。また鍛えてやる」 「判りました!」 「頑張ります!」 高校に入学しても日々練習に励み、一年でも選手に選ばれ充実した生活を送った。 春が来て新入生の中には見知った顔が何人かいたが、一番期待していた奴はいなかった。 聞いてみると、進学のため県外に出たらしい。 一番伸びそうで期待していた奴だが、将来の目的のためじゃ仕方ないな……。 残念に思いながらも、鍛錬を続け迎えたインターハイ。 当然のように勝ち進み、地域ブロックの試合会場で見つけた懐かしい顔。 少しデカくなった? いやそれよりも、なんで進学校じゃなくて強豪で知られる高校にお前が居るんだ? 聞きたいことが沢山ある。 試合前のバタバタした会場内、イメトレや精神統一をやめて駆け寄った俺に気付くと礼儀正しく一礼した。 「お久しぶりです」 「お前、続けてたのか」 だったら何でうちの学校に来なかったんだ?とは聞けなかった。 けど顔に出ていたのか、後輩は昔と変わらずまっすぐ俺の目を見て話しかけてきた。 「オレ、強くなりたいんです。先輩に可愛がられたいんじゃなく、勝ちたいんです。だからこっちに入学しました」 「!そうか。頑張れよ」 一年見ないだけで生意気になりやがって……。 余裕ぶって笑顔で肩を叩いて別れたが、内心ムカついてしまう。 俺が一番気に入って期待していた後輩。 でも今は他校の選手になっていた。 なぜかは分からないが、無性に腹が立つ。 先輩としてのメンツだけじゃなく、絶対に負けられないって気になる。 闘志を燃やしながらも平常心を心掛け二回戦に進み、運よく対戦した奴をコテンパに負かしてやった。 それなのに、まだもやもやしたものが残っていて気分がスッキリしない。 この先もまた奴と戦うだろうが、勝ち続けなければと何故か焦りを感じた。 ---- [[ブルーカラー×ホワイトカラー>26-919-1]] ----