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15-679-2 - (2009/03/29 (日) 18:05:53) のソース

身長差
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「背が高いんですね」
 そう後ろから声をかけられたのは、俺が新入生に部活の案内をしていた時だった。
「バスケ部に興味あるのか?」
 そう勧誘したものの、彼の身長は俺よりも頭一つ低かったので、正直戦力として期待できず、
俺はそれほど熱心ではなかった。
 だが彼は嬉しそうに俺から入部用紙を受け取り、そのままその日に入部した。

 今は俺の隣でバスケットボールを磨いている。
「先輩、あの上の荷物とってもらえませんか?」
 実は俺がいない時に、自分で台に乗って荷物を降ろしているのを知っているのだが、
なんとなくこいつには弱くて言うことを聞いてしまう。
「ありがとうございます」
 こういう笑顔をもらえるのは悪くないし。

「先輩、こっちに来てください」
「何だ?」
「はい、ここ立って」
 俺は柱の前にたたされた。
「オレの身長がここなんですけど、先輩はここだから…。15cm差かな」
 そう言われて俺は言葉につまった。
 こいつは選手としては身長が低いので、いつもベンチに座っている。
 背はそのうち伸びるなんて、気休めは言いたくなかった。
 彼の家族は身長の低い人ばかりだと言っていたし、今伸びていないならこの先も見込みは薄いだろう。
 きっと永久にレギュラーにはなれない。
 彼がうつむくと俺にはまったく顔が見えないので、いつも慌てる。
「落ち込むなよ。好きなんだろ? それでいいんだよ」
「いいと思います?」
「そうだよ。好きだって気持ちが大事なんだからさ」
「先輩も?」
「おう、大好きだ」
「オレこんなに身長低いのに」
「関係ないって」
「嬉しいです」
「そうだよな。同じ思いのやつがいると嬉しいよな」
「でも不便ですよ」
「何が?」
「ちょっと下向いて下さい」
「ん?」
 チュッと音がした。あれ?と思っていたら、あっという間に机の上に体を押し倒された。
「こういう時。でも身長なんて関係ないですもんね」
 あれ? なんかおかしい。
「先輩の試合の邪魔はしないようにしますから。ああ、やっぱり同じ部活に入って良かったなあ。
スケジュールがばっちりわかるから」
 試合の邪魔って?

 その答えは数日後に充分すぎるほどわかった。
 とてもじゃないが、試合どころではなかったが。 
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[[ここぞという時>15-689]]
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