「先生、寝ちゃったんですか?」 ---- 最後の問題をやり終え、僕は後ろで待っている家庭教師の方を向く。 そこに見えたのは、いつものしかめっ面ではない。 腕と足を組んだまま、顔を横に倒して、目は閉じていて、でも口は僅かに開いている。 「先生、寝ちゃったんですか?」 近づいてみると、寝息が聞こえてきた。先生は確実に寝ている。 「あの、課題終わったんですけど……」 眠りの世界からの反応はない。 ふと時計を見ると、課題を言い渡されてから1時間近く経過していることに気付いた。 「さすがの先生でも、待ちくたびれちゃうよなあ」 そのかすかな呟きにも、反応する様子はない。 とりあえず先生を起こそうと思い、肩に手をかけた。 「ん……」 口から漏れたその声に、僕は肩を揺すろうとした手を止める。 「んん……っ」 僕は先生の顔を見た。眉間にしわもなく、緩みきっていて、どこか無防備だ。 その寝顔は――意外にかわいい。 口許からよだれが垂れているなんて、普段の先生とは結びつきもしない。 軽く、親指でよだれを拭った。 「あ……」 カラダが一瞬固まった。そして、その声に誘われるかのように先生の唇にも触れる。 思ったよりも、柔らかい。 このまま起こしたら、またいつものしかめっ面に戻るのだろうか。 起こさないと勉強の続きは見てもらえないわけだが、もうちょっとこんな先生も見ていたい。 少しでも、このかわいい先生を見ていたい。 起こしたら起こしたで、どうせ怒られるのだ。だったら――。 ちょっとだけ開いた唇に、自分のそれを軽く触れ合わせた。 不安になって先生の顔を見たが、特に気付いた様子はない。 眉間にしわが寄っているようにも見えるが、きっと気のせいだ。 ---- [[すごい受っぽい×すごい攻っぽい>4-219]] ----