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牡牛座×山羊座 ---- 牡牛座  忍耐強い、嫉妬深い、依怙地、暴君的、粗野、貪婪(どんらん)、執拗、利己的、 急に凶暴になったり残酷になったりする。 山羊座  極端な場合や切迫した場合、摩羯宮の性質を述べるには、心の底で安定を求めている形で現れる。 隠す、怖がる、吝嗇(りんしょく)、非同情的、厳しい、疑い深い、利己的、物質的、考え込んで自己本位 「俺を、殺すか」 咽喉元に差し出された一振りの剣を前に、彼は不遜な態度を崩さずに低い声で尋ねた。 その落ち着いた姿を眼前にして、私は剣を握る掌から溢れ伝う汗を止めることが出来ない。 「貴方は最早、王ではありません。ただ馬鹿で我侭なだけの、一人の男です」 窓から差し込む月明かりに照らされ、抜き身の刃がぎろりと不穏当に輝きを増した。 この手に握られた長剣も、この胸に付けられた騎士団の徽章も、全ては貴方に頂いた物。 この身を奮わせた敬愛も、この心を焼き焦がせた恋慕も、全ては貴方に抱かされた物。 ――けれどそれは、酒に色に溺れ非道を繰り返す今の貴方とは違う方。 「貴方にこの国を統べる資格はありません。今宵で、王位を退いて頂きます」 私はごくりと固唾を飲んで、彼の首筋へと刃先を寄せる。 それでも不適な瞳で笑ったまま、彼は腰に差していた己の剣に指をかけ優雅な手つきですぅっと引き抜いた。 にこりと唇を持ち上げて冷笑すると、微塵の焦りも感じられない余裕に満ち満ちた顔で私に告げる。 「だが俺は、お前如きに命を奪われるほど弱い憶えはないぞ」 「ええ、勿論承知いたしています。私も、他の誰であっても、貴方の剣技には敵わないでしょう」 「ならば」 「ですから、私が参りました。――貴方に私は殺せません」 その言葉に、途端彼は腹を抱え大声で激しく笑い始めた。 眦に光る笑い涙を軽く指先で拭うと、未だ抑え切れない笑声を残したまま私に返す。 「成る程確かに、俺にはお前を殺れん」 「……申し訳ありません」 彼に与えられた長年の信頼を、愛情を、私は卑怯にも利用する。 彼が自身の命と秤にかけても唯一殺すことの出来ない人間が、恐らくこの私であるから。 「いや、惚れた弱みというヤツだ。仕方ないな」 そう告げて、彼は手にしていた剣を無造作に床へと放った。 柄に王家の紋が美しく彫られたそれをひどく無頓着に投げ捨てる様は、 彼が自身の血筋に元より深い執着などしていなかったのだということを強く印象付けさせた。 薄く微笑して、こんなときですら尊大な態度で居る男の姿は、息を張り詰めずにはいられないほどに美しかった。 「さあ、殺せ」 「はい」 私はそれ以上何も言わず、柄を握る手に力を込めた。 ――彼の目と同じ色の赤い赤い血が、私の肩に降り注いだ。 ----   [[番人さん>5-069]] ----

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