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ぴょこんと突き出た耳、ぺたんと下がった尻尾。花咲く道に、お腹をすかせた狼が一匹。 「うう、腹減ったあ…」 狼がしょぼんと俯くと、前方においしそうなけものの臭い。そう、狼の大好きな…。 「羊だ!それも子供の羊だー!」 狼はささっと様子を窺って、飛びつこうとしました。しかしその子羊は、よく見れば狼のよく知る羊だったのです。 「ああっ、てめえ!」 そう、この子羊、狼と数年前から因縁があったのです。 そしてとうとう狼がその因縁に決着をつけようと、先日子羊に飛びかかったのですが…。 「ん、狼くんじゃないか。調子はどう?」 「サイッッッアクだ、お前のおかげでな!」 狼が顔面蒼白で叫ぶと、子羊はふん、と鼻を鳴らします。 「しょうがないじゃない。僕だって君に食われそうだったんだから、正当防衛だよ」 「何が正当防衛だ、あれから俺は、俺は…」 そこで、狼の顔は真っ白から真っ赤に変わります。先日の出来事を思い出しているのです。 「俺は?」 「…ぜっ、全身が痛くて動くのも辛いんだよ!」 「ふーん」 子羊がにやにやと笑うのに、狼はますます真っ赤になります。 「じゃあ僕の家においで。手当てしてあげよう」 「てっ、てっ、手当てって、どうせまたこの前みたいなことするつもりだろ!」 「この前みたいなことって?」 羊が狼に詰め寄ってそっと耳に触れると、狼の体はびくりと跳ねます。 「…や、やめ…耳は…」 「そうだね、この前も耳に触ったら可愛く反応してたもんね。弱いんだ」 「…ハッ」 目が覚めたら、汗だくだった。そりゃそうだ、あんなおぞましい夢を見りゃな。 まったく俺としたことが、こないだは一度あいつに不覚を許してしまった。 でも二度目はない、二度目はないぞ…。 「目が覚めた?」 「って、ぎゃあああ!何でお前がいるんだよ!しかも、じ、上半身ハダカで!」 「そういう君は全裸じゃないか。まあ僕が脱がせたんだけど」 「!?う、うわあああ!」 確かに俺は裸だった。しかもよくよく見れば、ここは憎たらしいあいつの家。 「昨日も可愛かったよ。二度目だったから、最初の時より素直だったし…」 そこまで言われて、じわじわと昨日のことを思い出す。 ものすごい声をあげてしまった、ような。 ものすごい勢いでシーツを掴んでいた、ような。 「ところで朝食はパンがいい?ごはんがいい?」 「…い、う、うるせえ!!俺は羊の肉しか食わねーよ!!」 そう言って、奴に一糸報いようと飛びかかる。子羊のやつの不敵な笑みを崩してやろうと。 しかし勢いにまかせて向かっていけば、足を引っ掛けられて、そのままベッドの向かいのソファに倒れこんだ。 即座に起き上がろうとすれば、ぎしり、とソファに体重が預けられる音がして。 羊の奴が、俺の上にのしかかって。また、にやりと笑っていた。 「まだ僕のこと食べようとしてるんだ。二回も僕に食べられたのに。しかも結構ガードがゆる…」 「うっ、るっ、せーー!!」 俺はちゃっちゃと服を着て、奴の家から飛び出した。もう二度とあんな仕打ちは受けまい、と思って。 お気に入りの湖にたどりついて、自分の顔を映してみれば。 ひどく情けない顔が、そこにはあった。
子羊×狼 ---- ぴょこんと突き出た耳、ぺたんと下がった尻尾。花咲く道に、お腹をすかせた狼が一匹。 「うう、腹減ったあ…」 狼がしょぼんと俯くと、前方においしそうなけものの臭い。そう、狼の大好きな…。 「羊だ!それも子供の羊だー!」 狼はささっと様子を窺って、飛びつこうとしました。しかしその子羊は、よく見れば狼のよく知る羊だったのです。 「ああっ、てめえ!」 そう、この子羊、狼と数年前から因縁があったのです。 そしてとうとう狼がその因縁に決着をつけようと、先日子羊に飛びかかったのですが…。 「ん、狼くんじゃないか。調子はどう?」 「サイッッッアクだ、お前のおかげでな!」 狼が顔面蒼白で叫ぶと、子羊はふん、と鼻を鳴らします。 「しょうがないじゃない。僕だって君に食われそうだったんだから、正当防衛だよ」 「何が正当防衛だ、あれから俺は、俺は…」 そこで、狼の顔は真っ白から真っ赤に変わります。先日の出来事を思い出しているのです。 「俺は?」 「…ぜっ、全身が痛くて動くのも辛いんだよ!」 「ふーん」 子羊がにやにやと笑うのに、狼はますます真っ赤になります。 「じゃあ僕の家においで。手当てしてあげよう」 「てっ、てっ、手当てって、どうせまたこの前みたいなことするつもりだろ!」 「この前みたいなことって?」 羊が狼に詰め寄ってそっと耳に触れると、狼の体はびくりと跳ねます。 「…や、やめ…耳は…」 「そうだね、この前も耳に触ったら可愛く反応してたもんね。弱いんだ」 「…ハッ」 目が覚めたら、汗だくだった。そりゃそうだ、あんなおぞましい夢を見りゃな。 まったく俺としたことが、こないだは一度あいつに不覚を許してしまった。 でも二度目はない、二度目はないぞ…。 「目が覚めた?」 「って、ぎゃあああ!何でお前がいるんだよ!しかも、じ、上半身ハダカで!」 「そういう君は全裸じゃないか。まあ僕が脱がせたんだけど」 「!?う、うわあああ!」 確かに俺は裸だった。しかもよくよく見れば、ここは憎たらしいあいつの家。 「昨日も可愛かったよ。二度目だったから、最初の時より素直だったし…」 そこまで言われて、じわじわと昨日のことを思い出す。 ものすごい声をあげてしまった、ような。 ものすごい勢いでシーツを掴んでいた、ような。 「ところで朝食はパンがいい?ごはんがいい?」 「…い、う、うるせえ!!俺は羊の肉しか食わねーよ!!」 そう言って、奴に一糸報いようと飛びかかる。子羊のやつの不敵な笑みを崩してやろうと。 しかし勢いにまかせて向かっていけば、足を引っ掛けられて、そのままベッドの向かいのソファに倒れこんだ。 即座に起き上がろうとすれば、ぎしり、とソファに体重が預けられる音がして。 羊の奴が、俺の上にのしかかって。また、にやりと笑っていた。 「まだ僕のこと食べようとしてるんだ。二回も僕に食べられたのに。しかも結構ガードがゆる…」 「うっ、るっ、せーー!!」 俺はちゃっちゃと服を着て、奴の家から飛び出した。もう二度とあんな仕打ちは受けまい、と思って。 お気に入りの湖にたどりついて、自分の顔を映してみれば。 ひどく情けない顔が、そこにはあった。

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