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死んだはずの君を見る ---- 「何できゅうりやナスにぶすぶす割り箸を刺すのか、昔は分からなかったなぁ。 多分こんなことにならない限り、理解しても納得出来なかったろう」 そう言ってからやっと、久しぶり、と笑いかけてきた奴の顔を、俺はまじまじと 見つめた。 「なんだい、ちっとも嬉しそうじゃないな。来た甲斐が無いな」 「いや、嬉しくないわけじゃない」 むしろ泣きたいくらい嬉しい。 しかしそうして涙を流せば、半透明のお前の輪郭は、ますます曖昧になって しまうだろうと思ったのだ。 ぽつり、ぽつりと言葉を交わす俺とそいつ。 お前、両親の所には行かなくて良いのか? 先に行ったさ。それに僕は君といたいんだ。 近況を語るのは俺だけで、そいつは相槌しか打たない。 それが無性に寂しいが、世の理を曲げる術を、こいつも俺も持ち合わせている はずもなく。 「なすを」 「うん?」 「箸の刺さったなすを、全て隠してしまえたら……お前が帰らずに済むように ならねぇもんかな……」 至極奇妙な、夢だった。 生きているはずの僕が死んでいて、死んだはずの君を訪ねる夢。 しかも僕が君として、僕を迎える夢だった。なんて悪趣味な夢だろう。 そうとも知らず今頃君は、君の家族のところにいるのだろうか。あのきゅうりの 馬に乗って。 そしてなすの牛に乗って帰るのだろうか。僕のところには寄りもせず。 ひどく生温い風が吹く。まるで人に撫でられるような感触。 僕は未だきゅうりやなすに箸を刺す行為に納得がいかない。 ----   [[大好きだけど、さよなら>8-079]] ----

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