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兄弟子×弟弟子 ---- (守備良くいったろうか。) 師匠の頼みとはいえ、己れで、弟弟子を連れ回して女郎宿に預けてきた。なんだかやるせない気持ちで、月明かりに照らされた河面をぼんやり眺めていると、後ろから駆けてくる足音がした。 まだいくらも経ってはいないのに。 半ば予期していた事とはいえ、嬉しさが込み上げる反面、困ったものだとも思う。 振り返ると、案の定、僅かに幼さを残した顔を紅潮させた一乃真が、此方を睨んでいた。 「どういうおつもりですか!あのような場所に私を置き去りにして!」 よく見ると、一乃真の着物の襟元は少し乱れていて、慌てて整えてきたのがうかがえる。 くすりと笑みをもらしながら、 「一乃、少しは大人になれたかい?」 と、聞いてみた。 「なっ!あんなっ、汚らわしい!」 プイと横を向いた。 「ねえ、一乃、師匠が…」 「父上が、何を言ったか知りませんが、私はもう充分大人です。」 「なら、好きな娘でもいるのかい?」 「……!」 瞬時、口をパクパクさせていたが、すぐに切り返して聞いてきた。 「な、ならば、新蔵さんはどうなんですか?」 女がいると嘘を言ってみたところで始まらない。余計に食い下がられるだけだ。 「私はそういう事には向かない質だから。」 そう、答えた。 「ならば、私も……私は、私は新蔵さんが…」 (言うな、言うな、それ以上は言うな。) 不意に、顔を間近に近付け、襟元をあわせてやりながら、 「移り香だね。一乃、桃かなんぞのように香ってる。」 と、一乃真の言葉の先を遮った。 一乃真は朱の様に真っ赤になって、うつ向いた。 「ねえ、一乃、いつまでも変わらないままじゃいかないんだよ。」抱き締めるのではなく、軽く背中に手を回して言い聞かせると、 一乃真は肩を震わせ、片手で眼の辺りを拭った。 「一乃、夜風が冷たい。帰って酒でも呑もう。」 肩を叩いて、歩き出す。 無理だ。一乃真に手を出したら、恩人でもある師匠が何れ程困惑し、悲しむことか。 このままでは、いづれ一乃真には黙って、京にでも発つ他ないかもしれないな。 見上げると、やけに冴えた光の月が見えた。 ほんっと、今宵はやけに冷える。 ----   [[落ち込んでるで。>4-399]] ----

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