*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「10-769-2」で検索した結果

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  • 10-769-2
    オカマ受け 僕が『彼女』と出会ったのは、南へ向かう汽車の中だ。 僕は出発間際のデッキ、煙草をふかす彼女の足元に転がりこんだのだった。 目の周りに痣をこさえ、ちゃちな鞄ひとつを抱えたぼろぼろの僕を、 彼女は暫くぽかんと眺め下ろしてから 「こんにちは、家出少年」と言った。 汽車が南端の街に着くまでは、二日かかった。 その間僕は暇をもてあます彼女と、とりとめもなく話をしたり、 呆れるほどヒールの尖ったブーツを磨いて駄賃を貰ったりした。 「どうせ行く宛なんかないんでしょう」 「とりあえず南だ。友達がいる」 「そんなもん、あてにしない方が身のためよ」 「そういうあんたはどうなのさ」 「私はね、生まれ変わりに行くのよ」 「生まれ変わり?」 「医者がいるのよ、そういう…。体を思う通りにしてくれるの。性別だってね」 馬鹿な!そんなことってあるだろうか。担が...
  • 10-769-1
    オカマ受け 「な?一度だけだから。本当にこれっきりって約束するから」 懇願するヤツの右手にあるゴムが、生々しいほどのリアルを見せている。 スカートの裾を押し上げようとするヤツの左手から、どうにか逃げられないだろうか。 「止めてください!ココはそういう店じゃないんですよっ!」 小さく叫んでもヤツの手は止まらない。 片手で押さえているが、体格の違いは力の違いを見せ付ける。 「イイじゃん。どうせ誰かにヤられちゃうんでしょ?ヤられたいんでしょ?」 口調はふざけているように聞こえるのに、ヤツの目は笑っていない。 手に入った力が強くて、すごく怒っているのだとわかる。 好きでこんなカッコしたり、店に出たりしているわけじゃない。 何の資格も持っていないオレにとっては、コレが一番金になっただけだ。 おまえと離れたくないから、どうしても金が欲し...
  • 3-769-2
    またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為 酒の呑み方を教えてくれたのはあなたでしたね。 ビール、日本酒、焼酎に限らず、いろんな国の酒とともに、 それに合うつまみや料理の選び方。 それらは仕事の接待の席でとても役立っていますよ。 あなたがときどき買ってきてくれた白ワイン、 この間酒屋で見かけましたがあんなに高いものだとは思いませんでした。 一人暮らしで必要な生活術を教えてくれたのもあなたでした。 上京して間もない僕に、光熱費の節約方法から 効率が良い掃除や洗濯のやり方、果てはゴミの出し方に至るまで。 アパートに引っ越してきたその日にあなたが 「部屋の中に1つぐらい植物を置くと気持ちが落ち着くから」と プレゼントしてくれたサボテン、昨日1輪だけ花が開きましたよ。 ──雲の隙間から時々顔を出す太陽の光が、部屋の中をちらちらと照らす。 眩...
  • 20-769-1
    空振りだけどそこがいい 彼の姿勢はあまりよくない。 後ろから見るとその背には緩やかな山ができている。肩を起点にして肩甲骨が峰。 肩をつかみ、その峰を両手の親指で押してやる。分厚い肩だがあっさり動き、山は谷になる。 でも手を離せばぐにゃりと元通り。くらげのようだ。 「何だ、どうした」 彼が微笑む。雑誌からは目を離さず、顔を俯けて。 眉の上、短い前髪がぱさりぱさりと揺れる。低い笑い声が耳に心地好い。 俺は答えず、もう一度彼の肩を開いた。 どうせなら肩を揉んでくれよ、と彼は身をよじったが、やがて気にしないことに決めたらしい。また黙々とページを繰りはじめた。 彼の部屋に来たときは大体いつもこんな感じだ。ふらっと立ち寄る俺に、気にせず自分の時間を過ごす彼。 大学の講義さえなければこうして二人で過ごすのは最早習慣になっていた。 だが、毎回俺が行こうか行くまいか散々悩み、彼...
  • 4-769-1
    コスモスなど優しく吹けば死ねないよ 「君はコスモスのような人だ」 会うたび彼は俺に言う。 厳つい男だ。堅気とは思えないような顔をしているくせに、武骨なその手で花を愛でる。 そして同じ手で、まるで大切な宝であるかのように、俺の頬に触れるのだ。 「僕のかわいいコスモス」 「やめろよ」 そのたび俺はいたたまれない。 だって、男娼の俺にコスモスだなんて似合わない。 知らないと思ったのか。あんたが花屋だと聞いた時に、コスモスの花言葉なんてすぐ調べたさ。 「俺はコスモスじゃない」 「君はきれいだよ」 「どこが」 彼の言葉はまるで本心のような声音で、だからこそ泣きたいくらい信じられない。 ばかげている。 金で縁取られた時間と空間の内側で、吐き出されるのは熱だけでいい。 「あぁ、いっそ手折ってしまおうか。僕だけのものにならないのなら...
  • 3-769-1
    またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為 唐突に目覚めたばかりのような奇妙な感覚のまま呆然と立ち尽くしていた僕は、今 何をしようとしていたのだろうかという疑問からとりあえず片付けることに決めた。 ぼんやり立っている周辺を眺めてみるが、どうも見覚えがない。生活感がないを通り越して 廃墟のような多分部屋らしき場所に僕は今いる。どうしてこのような場所に立っているのか。 一歩足を踏み出してみると、剥き出しになった配線やパイプやらに躓きそうになったので 必死に体勢を立て直す。床とはもう呼べない地面に鋭い硝子の破片が無数に散らばっており、 それが薄汚いこの部屋で妙に煌いていた。その硝子の一つが光を反射するのを目撃した瞬間、 僕の首から吊り下げられた、今にも擦り切れそうな太いロープの先に紙の束が通されていることに ようやく気が付いた。目を通してみると表には見知らぬ人...
  • 8-769-1
    冷たい手 大きな手が汗ばんだ頬を撫でる。 ゆっくり、ゆっくりとあやされるような赤ん坊の気分になったので、どういうつもりだと熱にかすんだ目で問いかけたら、大きな手の持ち主の、黒く澄みきった夜の葡萄みたいな瞳が、こちらの様子を案じて見守っているのが滲んだ視界にぼやけて見えた。 「僕の手は冷えているので、あなたの頬を撫でています」 その通りだ。確かにそうだ。男の手は大抵いつも冷えている。 そうして俺は、そのことを知っている。 「あなたが言ったんです。お前の手の冷たさには意味があると。手が冷たい奴は、その分心が温かいんだ、心配するなと」 確かにそうだ。その通りだ。いつかの日に、何かの拍子に俺が言った。どっかのドラマで使い捨てのセリフだったが。 「僕のことを。僕自身を、そんな風に肯定的に捉えてくれた人は、いなかったから」 だからこうして、あなたの頬を撫でていますと、大きな手で...
  • 7-769-1
    受で夫・攻で妻 「お前…アレだな、パ○パタ○マ。」 ガーガー掃除機を掛けていた僕は思わず手を止めた。 「は?」 何?なんか言った?と、問い返すと少し大きな声で、 「お前、パ○パタ○マみたいだな。」 と言った。 僕は掃除機を掛けるポーズのままフリーズし、 ベランダで喫煙中の彼を目を丸くしてまじまじと見つめた。 そのときの僕の頭には昔よく見聞きしたあの歌と映像がこれでもかと流れていて… (パー○パタ○マー パー○パタ○マー) 「…ぅ、ウソだっ!!な、なんでっ?!」 ガシャッと掃除機から手を放して、動揺しまくりカミまくりで彼を問い詰めた。 肩を掴まれた彼ときたら、大げさな…という顔で片眉を上げ、服に灰が落ちないよう 煙草を遠ざける。 「ね…なん、なんで?」 もう一度聞いた。 「なんかねえ…今お前見ててふと思ったの。」 「…………」 そりゃ僕は元々...
  • 6-769-1
    思い出になった恋 別れを告げたあの日がよみがえる。 彼と、それまでの総てを思い出に変えてしまったあの日。 彼はいつもどこか線を引いていて、 俺がそれを踏み越えることを許してはくれなかった。 でも向こうが線を越えたときは、俺に思う存分甘えてきたりして。 そんな風に付いたり離れたりしながら俺達は過ごしていた。 出会って別れがくるまで、 俺が彼について知っていることが減ることは無く、また増えることも無かった。 彼は自分のことをあまり話さなかった。 それが表面化したとき俺達は衝突した。 彼は俺だけの彼ではなかった。 「俺以外の奴と…」 彼を責めたが彼は潔白を主張した。 その目に涙が浮かんで、静かに落ちた。 俺は彼が泣くのを初めて見た。 あのときの俺は経験も浅くて、若くて、子供だった。 ただ…許せなかった。 独占欲や未熟さを抱えながら...
  • 17-769-1
    思われニキビ 「あー、思われニキビ!」 「はあ?何言ってやがる」 頬杖をつく右顎にポツリとできた吹き出物を指差して言えば、彼は面倒臭そうに視線だけをこちらへ寄越した。 朝日が射す教室でキラキラと照らされた彼の顔に、不似合いな赤い印。 プクリと腫れたそれはいやに性的で、硬派な彼の整った顔を、自分の劣情が汚しているんじゃないかなんて、自惚れた幻想がちらりと頭を過る。 自分のことながら朝っぱらからおめでたい頭だ。 思い思われ、振り振られってね、顔にできたニキビの場所で占いができるんだって そう説明すれば、一段と呆れたような顔をして、ナンパなテメーが女相手に話すネタだな、なんて嫌味を吐かれた。 「もー、こんなの女の子じゃなくたって誰でも知ってるでしょーよ」 「俺はそういう占い事にも、色恋沙汰にも興味ねえよ」 第一こんなの、テメエに言われるまで気...
  • 9-769
    昼行灯 気持ちばっかり先行して、うまく言葉にできない……だが語る 昼行灯萌えは、奥が深いというより根が深い。 いったん嵌ってしまうとずぶずぶいっちゃって、なかなか抜けられない感がある。 やはり基本は熱血や生真面目さんとの組み合わせだろうか。 普段は「この人、大丈夫かな?」「頼りないなー」と思わせておいて、いざという時のみ本気をみせる。 マジ役立たず系なら、勇気を振り絞って火事場の馬鹿力にすがり、 能ある鷹は爪を隠す系なら、ここぞとばかりに活躍。定番だが、間違いのないカタルシス。 あくまで、いざというとき、だ。 飄々としていても、力をひけらかしたり、有能さを発散させていてはいけない。 爪は周到に隠していただきたい。 爪や感情の棘を隠すということは、周りを威圧したり不用意に傷つけないための 配慮であったり、単なる照れであったり、 過去に出る杭...
  • 19-769
    犬と猫  いつも彼の接触は唐突で、そして気紛れだ。  例えば昼休憩、手洗い場にでも行こうかと席を立ったその時。突然がしっと背後から右肩に腕を回される。  そして左の耳元に響く、囁くような恋人の笑い声。 「どうした、辛気臭い顔して」  君のことを考えてたんだ。そう言えたらどれだけいいか。 「……この分だと今日も残業になりそうで。今夜こそ早く帰れると思ってたのにな」 「え、お前残業なのかよ。なんだ、今夜は飲みに誘うつもりだったのに」  意外にも、とっさに取り繕った別の理由に大きな反応が返ってきた。  頸を曲げて見上げた彼の表情は心から残念そうにしゅんと沈んでいて、まるで散歩に連れて行ってもらえないと 知ってしょげる犬のよう。  可愛い。  どくんと心臓が跳ねた瞬間、密着した彼の体温と匂いを一層強く意識する。こんなのいつものことなのに。 「今から昼食なんだ...
  • 8-769
    冷たい手 「ぎゃあっ!」 「うわ、色気ねー」  急に俺に触れた手の冷たいことといったらない。何つーの? 女なら確実にああコイツは雪女なんだなぁとか思っちゃう 冷たさ。……男は何だろう。雪男……だとただのオッサンだし。  まあなんだ、そういった冷たい手が急に、しかも首筋に押し 当てられた俺の気持ちになってください。寿命縮むから。 「当てるんなら自分の首にしやがれこの野郎」 「やだよ。寒いじゃん」  俺の体温は奪っても構わねーっていうのかこの外道。 「そんだけ冷たいんだもんな。心の底から冷たいんじゃないの お前」 「そんな今更なこと言うなよ。黙って体温奪われてなさい」 「文字通りヒトデナシだなお前……」  けれどその後俺をすっぽり包んだ身体は、まんべんなく 温かかった。  そういえば雪女が迷い込んだ男に出す料理は温かかった っけと思いながら、俺は...
  • 7-769
    受で夫・攻で妻 剣道2段、弓道5段、柔道3段、合気道免許皆伝のこの俺は、 ずっと怖いものなんてないと思っていた。 そりゃ苦手なものはあったさ。 香水くさい女だのちゃらちゃらした男だの、 それでも怖いと思ったことはない。 あいつに出会うまでは。 「あっなったァ~!お帰りなさーい!」 寮に帰ると野太い声で色めいた声をあげ エプロン姿のガタイのいい男が突進してきた。 それをさっと交わし、首根っこに一撃を与える。 「いったぁい!なにすんのよダーリン!」 ダーリンという単語に不快感を覚え、 眉間に皺を寄せて睨みつける。 そんなことは全く気にしてない様子で腕を組んできた。 「ご飯にする?お風呂にする?それとも」 「風呂」 最後まで言わせるものか、と遮った。 たまたま不運にも同じ寮の部屋になったこいつは女装癖の持ち主で、 それを俺が偶然、女にしてはずいぶ...
  • 1-769
    シンガーとピアニスト あなたは自分を未熟者だと言います。 私はその弱さを叱ります。 そしてあなたの声を褒めるのです。 あなたのその声。甘く低く、よく響く声は素晴らしい。 あなたからそれを引き出す道具が、私の手元にある、このピアノです。 古いイタリア歌曲。意味も知らぬまま、あなたは歌います。    私の想いを縛り付けた    いとしい絆、やさしい結び目よ、    私は、自分が苦しみながらも楽しんでおり、    捕われの身に満足していることを知っている。 あなたは歌うたびに私に告白し、私は歓喜しつつキーを叩く。 ふだんの生活では許されぬ想いですが。 しかし舞台の上で、稽古場で、音の世界でだけならば、相思相愛でいられます。 そのくらい良いでしょう?  もうすぐ最後の小節を弾き終えれば、それで恋歌はおしまいですから。 卵とさいばしとフ...
  • 3-769
    またもう一本煙草に火をつけるのは、忘れることを習う為 暗闇の中にあってなお浮き上がるような黒髪。 淡い茶色の瞳。薄い唇。 「愛してるよ…」 耳朶に唇を寄せて囁くと、受はふと息を呑み、俺の肩に手を這わせた。 やがて訪れる開放感。 呼吸を整える暇さえ惜しんで深い口付けを交わす。 「僕もあいしてるよ…」 離れた唇がその言葉を紡いだ瞬間、俺の世界が壊れる音がした。 闇に慣れた目に映るのは、褐色の髪。 淡い緑の瞳。淫乱さをかもし出す小さく厚めの唇だ。 「…ひどいや。殴ることないのに」 恨みがましい、癇に障る声。 「あいつはそんな事言わねえんだよ。そんな目はしねえんだよ。 おまえは違いすぎんだよ!!」 もう一発殴って、ベッドから転がり落ちた淫売の腹を蹴る。 ベッドに腰掛けた体勢からとはいえ、腹に入ったその蹴りは相当効いたろうに 淫売野郎はゲタゲタと狂った...
  • 4-769
    コスモスなど優しく吹けば死ねないよ その場所で、その子は花を持って立っていた。 僕はかける言葉も無く、ただ後ろに立っている。 この場所で、彼は死んだ。ある朝、複数の人間に殴られ、裸にむかれ、冷え込む秋の朝、 この裏路地に放置されて、暴行と凍死で死んだ。犯人は、捕まっていない。 この前まで、僕と仲良く喋っていた、自分で自分のことを「チンピラ」と呼んでいた彼に、 花をたむけるのは、その子がはじめてだった。 僕は情報屋だった。 この前、刑事に、僕はある情報を流した。それは、麻薬取引について。 チンピラが漏らした情報だった。 その情報の結果、ある麻薬ルートが消滅した。 僕は、その情報を流す時、それでチンピラがどうなるかなんて、考えもしていなかった。 ただ無邪気に、この大きな情報を、お金に変えた。 だから…、目の前の子は、こんなに悲しんでいる。 目の前の...
  • 6-769
    思い出になった恋 「よう」  と肩を叩かれた。会社帰りにバス停でバスを待っているときのことだ。  振り返ると中学校の同級生だった川辺が立っていた。勤め帰りらしきスーツ姿で、あのころよりずっと背も高く大人っぽくなってはいたけれど、笑ったとき片頬に浮かぶえくぼがあのころのままだった。 「びっくりした。久しぶり」 「おまえ、変わってないな。通りの向こうからでもすぐ分かった」  走ってきたのだろうか、少し息を弾ませている。 「おまえも、変わらないよ」  肩に置かれたままの手がくすぐったい。  時間があるなら飲みにでも行こうという話になって、二人並んで歩き出す。  俺はふと思う。あのころ、こいつのことをずいぶんと好きだったな。  今はもう、声を聴くだけで胸が弾むことも肘がぶつかっただけで動悸が激しくなることもない。  寂しいような面映いような気持ちだ。 思い出...
  • 2-769
    レッカー車と、引っ張られてった車 広い通りを繋がったままの二つの車が走る。いかついレッカー車に引かれながら後ろから連行される車は言う。 「お前、俺をどこに連れて行く気なんだ!」 「ぎゃんぎゃん喚くなようるせえなあ」 「ご主人が、ご主人を俺は待たなきゃいけないんだ!」 「そのご主人様が戻ってこないから俺が今お前を連行してるんだが」 「俺たちがいったい何をしたってんだ!」 「さあな。お前のご主人様はそこんとこ、分かってるんじゃないかな」 「……まさか俺、捨てられたってことなのか」 赤信号を前に繋がったままの二つの車は止まる。 「もう俺は、要らない身なのかな」 目の前のバイパスに多くの車両が激しく行き交う。 「俺もう新車じゃないし、傷だって随分ついてるし」 横切る通りの信号が黄色に変わる。 「それでも今まで仲良くやってきたけど、もうおし...
  • 5-769
    政治家と役人 「さぁ、これで話はおしまいだ。いいね?」 「……」 「こんな報告書は存在しなかった。なぁに、簡単なことだろう。  君はただ私の言うとおりにしていればいいんだ…これからもな。」 「…そんなの……です…」 「何?」 「そんなの、でも…裏切りです」 「裏切り…」 「国民の、信頼に対する…裏切りです…」 「…かわいいことを言うね。」 そう言うと、男は目の前の青年の額に指を触れた。 青年は少し顔を伏せただけで、振り払おうとはしない。 「しかしね、そんな甘いことを言っていては…勝ち残れないんだよ?」 「…甘い…こと……」 「…ん…?」 弱々しくつぶやかれた言葉を確かめようと、男は青年の顔に、自分の顔を近づけた。 そのとき、男の耳は青年がこう言ったのをはっきりと聴き取った。 「でも、貴方のほうが、ずっと甘くておいしそうですよね」 「...
  • 27-769
    もう会えないと思っていた 岐路に立つ看板の前にて。ある男たちの会話。 「何年ぶりかな」 「何年ぶりだろうね。君は変わらないな」 「そっちこそ」 「面白くない冗談だ。もうよぼよぼの爺さんだよ」 「外見じゃない。中身が変わらないんだ。僕を守ってくれようとしたあの時からずっと、君は変わらない」 「あれから何年経ったかな」 「何年だろう。君を待ってる間、10数えてやめちゃったんだ。ここは風景が変わらない場所だからね」 「そうか。俺もよくわからないな。何しろ必死だったからな」 「エヌ…」 「お前が理不尽な理由で命を奪われて」 「エヌ」 「多くの仲間やたった一人の愛する人、愛する星を失って、正気を保つのなんか無理だったよ」 「もういいんだ」 「だから俺は俺と同じ思いがする奴が出ないようにすべてを壊したんだ。草の根ひとつ残らなかったはずさ」 「エヌ、泣かないで」 ...
  • 10-269-1
    受けよりよがる攻め 無神経な奴だ、勝手な奴だ、ほんと下らない、どうしようもない男だ。 入れるのが駄目だったら、せめて素股でときたもんだ。 せめてって何だ。最初は手淫だけって言ってたじゃないか。 「あ、はあ、ああっ」耳障りな音が絶えず降り注ぐ。 シーツを噛み締め、内股を擦りあげられる、なんとも言い難い感覚に耐える俺とは対象的に、 奴は盛大に声をあげて、やりたい放題だ。 俺の眼球は渇き、唾液はシーツに奪われて、からからだというのに。 奴がはああと息を吐いて腰を引くので、あ、終わり?と思えば、 体を仰向けに返された。 「おい……」 だが文句をつけようとした俺の喉は詰まる。 視覚は暴力だ。 目を濡らし、頬ばかりか全身を赤く染めて、腿を震わせる男の姿に、思わず言葉を呑み込んでしまった。 ひどく甘ったるい調子で名を呼ばれる。 お前は何で、俺の脚でそこまで気持ち...
  • 13-769
    地球×冥王星 貴方の中でエリスの存在が大きすぎる。 そう言って君は、僕との関係性を断ち切った。 今はただ、カロンと踊る君を遠くから眺めるだけ。 最も遠い君。最も愛おしい存在。 (でも知っている、本当は君が太陽に惹かれていたってことを) (どうしてどうしてあの人ばかり) (ああでも僕も あの人からは逃げられない) 包容力のある28歳×背伸びしたい盛りの18歳
  • 17-769
    思われニキビ 昔の相方をなくした芸人は、どれぐらいかわいそうなんだろうか。 親兄弟をなくすぐらいなんだろうか。それとも、親友ぐらい? 「つらいでしょ?」とか、「しんどいだろうね」とか、訳知り顔で言ってくる人間や、 俺を痛々しそうに見てくる人間は、どれぐらいだと思っているんだろうか。 というか、何を理解しているんだろうか。 俺とアイツが、どんな関係だったかなんて、知らないくせに。 語るつもりもなければ、分かってもらうつもりもないけど。 それを口に出すと仕事がなくなるから、あいつに関しての質問は、全て曖昧な 笑みでかわしている。 新幹線でため息をつくと、今の相方が俺を見た。 「ため息ついたら、幸せが逃げますよ」 俺は彼の言うことを、無視する。しかし、それでへこむことはない。 「もー、新堂さんは、いつもそうですよ。ひどい」 ふてくされたように言う相...
  • 25-769
    ギャル男受け 勉強が好きか?と嗤われながら問われたので、僕は勉強が好きだ、そう答えた。すると、天才は違うなとかガリ勉とか、そんな言葉を掛けてくる。 勉強に勤しんでいる訳でもない。ただ、楽しいだけなのに。 しかし、周囲は嗤う。 そんな中で、1人だけ、周囲とは違う言葉を掛けてきた奴がいた。 奴とは今年から同じクラスになり、教師も手を焼いている。主に校則違反の髪型と、崩した服装、アクセサリー等において。 しかし、愛想が良くリーダーシップもとっていて、憎めない生徒とみなされている。 僕とは反対の奴と思っていた。 「いいんちょーって、勉強好きなんだ」 「ああ」 「オレもさ、服とか髪いじんの超好きなんだ!」 Mの字の前髪を触りながら満面の笑みで告げると、奴は手を差し伸べてきた。かと思えば、ぶんぶんと僕の手を握っては振る。 「おい、佐伯ー...
  • 18-769
    言いなりわんこ×女王様  これが今回の報酬、との言葉と共にテーブルに置かれた布袋は重たい音をたてた。 「いつもありがとうございます」  袋の中身を確認し、懐に納める。  一連の動作を眺めていた青年は、ほう、と優雅に溜め息をついてグラスに口をつけた。 「それで」  今彼が飲むトカイワインのように甘ったるい声に呼ばれ、男は身を固くした。 「…もう、必要ないんじゃありませんか?」 「だめだ」  即座に返される否定に身をすくめる。 「だってあなた…もう充分に楽しまれたでしょう…それに私だって…」 「君だって?」  射すくめるような視線に言葉がつまる。 「…あんまり危ない橋は渡りたくありませんし」  からからと彼が声をあげる。 「君とても楽しんでいたではないか。ずいぶんといい思いをしたのだろう?」  ぐ、と言い淀むのを、楽しげに見遣ってグラスを煽った。 「です...
  • 22-769
    泥酔者とお巡りさん 「すらすらすいすいすいーっと♪」 「きみきみ!ちょっと!」 「ええ?はあ、はい」 「どこ行くの?家は?危ないよこんな夜中に」 「なんです?いきなり、子供じゃないんですけど」 「顔真っ赤にして、酔っ払いか?」 「酔ってる?俺が?酔ってなんかいませんよー、寒いだけです」 「いいからこっちきて、派出所で保護しますから」 「はーなーせ!」 「コンビニ袋にスウェットに、この寒いのにサンダル…風邪ひきたくなかったらお巡りさんと一緒にきて、ほらほら」 「お巡りさんはこっちだっつーの、へべれけリーマンめ」 「はいぃ?」 「ああもうせっかくの非番前夜なのに!こっちこい!」 「うひ、ほんものwwおつとめ、ご苦労さんでありまし!」 「黙ってろ酔っ払い!」 「おまわりしゃんそれスーパードゥラァイ?」 「発音うぜぇ!」 「おじさんはプレモリ派でしww」 ...
  • 24-769
    片想いの連鎖 【鉛筆】  これまで鉛筆削りしか知らなかったが、あるときカッターナイフにその身を削られてからというもの  その鋭さに心を奪われてしまった。削り終わったらさっさと離れていった冷たささえも鉛筆の心をかき乱す。  しかし一方で鉛筆削りへの後ろめたさもある。不安定な心を反映してか、最近は仕事中に芯がよく折れている。  「あんなにされたの初めてで……痛かったけど、でも……また彼に会えたら僕はどうなるんだろう」 【カッターナイフ】  最近はよく組んで仕事をしているプラスチック定規のことが気にかかってしかたない。  なぜなら、自分のミスで彼の身を僅かに削ってしまうことがあるのだが、  その自分のつけた傷を見ながら、定規が微かに笑っているところを目撃してしまったから。  上記の理由から他の仕事は若干上の空だが、刃のキレは衰えていない。  ...
  • 14-769
    野 『野』(や)という言葉には「官職につかないこと、民間」という意味があります。 対義語は『朝』(ちょう)。朝廷の『朝』です。 『朝』と『野』は、光と影のような存在です。 『朝』があるからこそ『野』という言葉が意味を持ちます。 反対に『野』が存在せず『朝』のみがあったとしたら その『朝』の存在はとてつもなく無意味なものとなるでしょう。 多くの場合、『朝』は大変に支配欲が旺盛です。 そのため常に『野』を支配したいと思っています。 『野』はただ自分に奉仕するために存在すればいい とすら考えているかもしれません。 『野』は『朝』にどれだけ虐げられても、最後まで『朝』に寄り添おうとします。 たとえ重税を課せられても、理不尽な法令がしかれても 文句を言いつつ結局は『朝』に従ってしまいます。 それは罰則に対する恐怖ゆえではありますが 自分には『朝』...
  • 21-769
    二人きりの同窓会 二拝二拍手一拝。 形式通りのそれを行って次の参拝者に譲ろうとしたらふいに肩を叩かれた。 「やあ、山本」 「え? ……おまえ、武内?」 無遠慮にまじまじと眺めると、声をかけてきた男の顔はおよそ一年前まで寝起きを共にしていた友人のものだった。 驚く俺に、奴は泣き笑いのような笑みを浮かべている。 きっといまは俺も似たような顔をしているはずだ。 そうして俺たちは、どちらともなく抱擁を交わした。 積もる話はたくさんあった。 だが互いに近況を二三言報告しあった後は、ただ静寂だけが続いていた。 「もう、部隊の生き残りは僕らだけになってしまったね」 唐突に沈黙を破ってぽつりと呟かれた言葉は、まだ痛みを伴っていた。 いまでも克明に思い出せる。火薬のはぜる音、血と硝煙の臭い。 「まさか、死んでないのに靖国で会うとは思わなかったけど」 「……そりゃ、仲...
  • 16-769
    教会の息子と寺の息子が付き合ってる 「ちはー、三河屋でーす」 「またあなたですか!まったく毎日毎日!なにが三河屋なもんですか!」 「おう、お前も毎日こんなとこでお仕事ご苦労さん。 ところでお布施くれよ、腹へってんだよ」 「あげませんよ!毎日言ってるでしょう! 私の父なる神はイエスキリストだけなんです、 異教徒の台所事情なんて知りません」 「なんだよー、今日も駄目か。 じゃあワインとパン頂戴、あとできたらナッツとかも」 「昼間っから何言ってるんですか!まったくあなたは! 本当にしょうがない!あなたみたいな人が跡取りになれるようじゃあ、 日本の仏教に未来はありませんね」 「なんだよ、怒ってんなよ。お前、そんなに寺嫌いかよ?」 「嫌いですよ!」 「そっか。残念だな」 「え、な、何がです」 「できたらさ、今日あたりうち案内してえなーと思ってたんだ。 兄ち...
  • 12.5-769
    無意識な惚気 例えばそれは、彼にとっては昨日の晩飯の話をする位の感覚なんだろう、と思う。 「昨日さー、先輩とゲーセン行ったんだけどー。あの人ガンゲーめっちゃ上手くて」 コイツとその先輩がデキてるってのを、俺は知っている。 たまたま、本当にたまたま、公園でキスしてるのを見ちまったから。 「何か俺が3倍くらいお金使っちゃったんだけどさー」 「お前が下手なんじゃね?」 「ちげーって」 脚を広げて逆向きに椅子に座り、だらりと俺の机に上半身を預けて愚痴る相手をからかってみる。 するとコイツは、目線だけをこっちに寄越しながら、頬を膨らませて反論してきた。 高校生にもなって、ガキかっつーの。 「でもさー、ガンゲーやってる時の先輩って、むちゃくちゃかっこいいんだわ」 頬の膨らみを吐き出して、今度はだらしなく笑いながら、コイツは言う。 「何かさー、年上の迫力っての?目とか鋭い...
  • 10-789-1
    ミ/ス/タ/ー/ド/ー/ナ/ツ 『いいことあるぞ♪ミ/ス/タ/ー/ド/ー/ナ/ツ♪』 30歳の誕生日。 ゆうべ寝る前に仕掛けた洗濯機、ホースが外れてベランダが水浸しだった。 通勤電車で痴漢に間違えられた。 教室に入ったら俺のかわいい生徒たちが、「先生30歳おめでとう」「マジおっさんだね」と笑いやがった。 階段でふざけていた生徒にぶつかって落ちた。鼻血が出た。 誕生日を祝ってもらう飲み会で、学生時代からの友人達の三角関係が発覚。殴り合いの大喧嘩に。 止めに入ったら「ホモのてめぇに何が分かる!」と怒鳴られて店内の空気が凍った。 ……。 俺は何か悪いことでもしたんだろうか。 飲み屋の店員にひたすら謝って解散し、疲れと空腹からふらふらと近所のドーナツ屋に立ち寄った。 「いいことあるぞ♪」ってキャッチのCMを流してた有名なあの店だ。 ドーナツを何個...
  • 10-669-1
    腐兄 やっぱり基本はショタかガチムチなんかな?少数派の中の少数派じゃ厳しいよなぁ。 みんな見る目がねぇよ。 萌えキャラはキャ○バル兄様筆頭に兄キャラ!コレ世界のジョーシキNE! 萌えカプはド●ル×キャ○バル筆頭にゴツ男×兄キャラ!コレ宇宙のホーソクYO! あーあ、アイツ、なんでわかんねぇのかな。数少ないオフのオタ友なのに。 この頃イっちゃってるしなぁ。アイドルの何とかっつー男追っかけてるっていうし。 さすがにナマはさ、そのうちホモと間違えられるぞって言ったんだけど。 やっぱりダメなのかなぁ。ジョーシキもホーソクも通じねぇし。 ううっ……きもち入れ替えてサイトの日記でも更新しよ。 『今週のサ○デーはつまんなーい!お兄様にふさわしいガタイのイイ男出ないかなぁ(メソメソ』 あ、ココは大きい人のがカワイっぽいかな?えーと、顔文字コピっといたのドコいった? ん?チャイム...
  • 10-169-1
    道しるべ …春ニ貴方ヲ想フ あの人を失った、河原の道を歩く。 あの日も、今日と同じように、日差しが柔らかく暖かい春の日だった。 あの人は凛とした瞳で俺を見つめていた。 涙は無かった。 ただ、癖で噛んだ唇が赤く、痛々しかった。 どちらかが悪かったのではなく、多分、どちらもが悪かった。 子供だったと、幼かったと、若さのせいにしたら あの人は怒るだろうか。 それともあの日と同じように、冴え冴えと美しく微笑むだろうか。 俺とあの人は、何もかも危ういバランスの上で存在していた。 キスをして、抱き合って、笑い合っても 俺たち二人はいつも小さな傷を付け合って、いつも怖がっていた。 ――何を? 考えようとして、頭を振る。 今ではもう、思い出せない。 ただ、大切だった。 それぞれ違う道を歩もうとも 憧れで、目標で …本当に、大切な人だった...
  • 10-779-1
    ピアニスト×ヴォーカリスト ツアーバンドピアニスト×ポップヴォーカリストで  ピアニストにとって今回が初めての大舞台だ。『彼』のツアーバンドに選ばれたのは 幸運だった。―彼の代表曲にはピアノが欠かせない。 この経歴は今後、自分の役に立つだろう。 ―コンサート準備の喧騒の中、『彼』が一心にピアノの鍵盤を見つめていた。 微かに口元を動かしながら。  ピアニストがそれに気づく。 「なにか気になることでも?」  ヴォーカリストが軽く舌打ちする。ピアニストを振り返って軽く睨みつける。 「……数えていたのに。また数え直しだ」 「88鍵ですよ。ご存知でしょう?」  ヴォーカリストは軽く片眉を上げる。 「さあ、この前はそうだったけど。皆もそう言っているけど…  皆、僕に嘘を吐いているのかもしれないし、変わっているかもしれないから、  毎回確認する...
  • 10-759
    ショタ攻め 「おじさんおじさん!これ読んで!」 10になる甥っ子の裕太が満面の笑みを浮かべて差し出して来た本の表紙を見て 俺はげんなりとしてソファに沈み込んだ。 『どすこい熊五郎/亀頭攻め愛』 …なんだってこいつはこんな本ばかり読みたがるんだ?っていうかそもそも その本は一体どっから調達してきてやがるんだ? 「20年早えんだよクソガキ、ションベンしてとっとと寝ろ!」 本を取り上げると、ああーとかわいらしい声を上げて抗議してくる。 「だめーそれお年玉で買ったんだから返してー!」 「お年玉ならもっと人生に有意義な物を買え!」 「ゆういぎだもんーそれぼくにはゆういぎなんだもんー!」 手を伸ばして本を取り返そうとしてくるが、所詮リーチが違う。 上に掲げて取り戻そうとする手を避けていると、諦めきれない裕太が ソファに乗り上がってきた。 「こら、ソ...
  • 6-869-2
    40年ぶりの再開 定年を期に私は、十六まで過ごした故郷へ帰ることにした。 両親はとうに他界し、独身の私には家族と呼べるものもない。 いざ自由の身となって何がしたいのかを考えたとき、私の中にはひとつの選択肢しか浮かばなかった。 会いたい人がいる…故郷を離れて以来、会いに行くことができなかった、あの人に会いたい。 初恋とは、こうも忘れられずにいるものかと、この歳になって恥ずかしく思う。 今でも自らの内に鮮やかに痕をのこす、情欲の日々。 あの頃、私の世界はまさに彼一色だった。 日がな一日彼のことを考え、時間が許す限り触れ合っていたかった。 まだ年若かった私は、自分の内にある熱を、ただただ彼にぶつけることしかできずにいて、 時に卑怯とも言える手段で陥れることもした。 それが彼をどれだけ苦しめ、追い詰めていたかも気付かずに。 私たちの関係はあまりに危険...
  • 6-669-2
    福岡 デリヘル ヴィーナス に元アイドルが・・・? 「なー福岡、『デリヘル ヴィーナス』に元アイドルが働いてるって知ってた?」 仕事帰りの居酒屋で同僚の長崎にそう訪ねられ、俺は飲んでいたビールを吹き出した。 「デ、デリヘル?」 「何こんな話くらいで慌てんの?お前は乙女か」 長崎は普段の爽やかさからは想像できない意地悪な顔でニヤリと笑った。 「い、いや、急に『デリヘル』とか言うからさ……で、アイドルが居るって?」 そう答えて笑ったものの、俺は正直女の子には興味はなかった。 目の前のこいつにも内緒にしているが、俺は同性愛者だった。 自分の性癖に気付いたのは大学生の時。だからといって出会いを求める勇気も無く…… 「福岡ってさ、もしかして女に興味ナシとか?」 「なッ、何でだよ!?」 「あんまりこの話に食い付いてこねーし」 「そんな事は--」 「つーか普通興味ある...
  • 6-369-2
    最後のメール 『別れたい。』 恋人からの突然の別れ。 なぜこんなことを言うのか・・・ それすら分からず、部屋の中に立ちすくむ。 理由を聞くことすら阻む、決定的な四文字。 電話することが震えて出来なかった・・・ 彼はいつでも俺を喜ばす言葉をメールで言う。 たとえば、デートの予定とか。 たとえば、好きとか愛してるとか。 俺だってまぁメールするけど、圧倒的に電話することが多かった。 彼にも、たまには電話しろとよく言った。 俺は感情が見え隠れする彼の声が聞きたかった。 だからメールは嫌いだった。 メールだと一切の感情を消してしまう気がするから。 それ故に、『別れたい。』の四文字が今、一層と際立った。 未だ立ち尽くしたままの俺はそれを感じて携帯を閉じた。 鈍感←ツンデレ
  • 6-169-2
    笑わない人 君の笑顔が見たい。 それだけが僕の望みだった。 君は何故だか僕にだけ笑顔を向けてくれなかった。 切れ長の瞳に宿る冷ややかな視線。他の人間にならば、よく喋り朗らかに笑う魅惑的な唇も、頑なに閉ざされたまま。 僕が君の目の前に立っても、君は僕から目を逸らし、まるで僕など傍にいないかのようにふるまう。 その冷たさに、どうしてなのだろうと悲しい気持ちを抱えたまま、それでも僕は君になんでもしてあげたかった。 防音の行き届いた広いマンション。寝心地のいい豪華なベッド。 有名レストランのケータリングは間違いなく美味しかったし、君が読みたがっていた洋書もほら、取り寄せたんだ。 退屈しないように揃えたゲームもパソコンも、好きに使っていいんだよ。 この部屋にある物は全部、君のためだけに揃えたんだから。 金任せかと君は言うかもしれないけれど、それでも僕は君に笑ってほし...
  • 10-259
    10-259 http //web.archive.org/web/20060219134238/http //www.ismusic.ne.jp/nyoitaph/music/276-400.mp3 この曲のイメージでどうぞ。 微グロ電波注意 +++ いつか、大切な人と、ずっと一緒に暮らせるといい。 僕はずっと一人で旅をして来た。死んだ弟を生き返らせる方法を探して。 旅は十の時から始まり、どこにあるとも分からないその方法を追い求めて、 大陸中を巡ってもう18年も経った。弟は既にあの家で腐り、骨になっている事だろう。 それでも僕は旅をやめる事はできなかった。 旅の途中、色々な人と出会い、別れた。辛くないと言えば嘘になるが、 それでも目的の為には仕方がないのだと諦め続けていた。 だけどひとつだけ、どうしても離れがたいものができてしまったの...
  • 21-269-2
    俺様とおぼっちゃま 深窓の、ときたら、普通その後に続くのは「麗しき御令嬢」であるべきだと 誰でも思うだろう。 幼い頃の俺ももちろんその例にもれず、ある夏俺は町外れの大きな屋敷へと 忍び込んだ。誰もが一度はやってみたくなる冒険ごっこだ。 獰猛な魔犬…という設定の、その屋敷で飼われていた愛らしいスピッツをおやつで 従えて、こっそり潜り込んだ、別荘地でも一番上等な家の、一番上等な窓の下。 そこにいるはずのお姫様は、あろうことか、生意気でこまっしゃくれた、 同じ年くらいの餓鬼んちょだった。 あんまり癪に障ったから、つまらなさそうに本を読むそいつを無理やり外に 連れ出して、それから毎日のように、日が暮れるまで野山を引きずりまわしてやった。 そうして遊んだ懐かしい夏休み。 今じゃどこでどうしているんだか、もう会うこともないだろうと思っていた。 そして立派な一...
  • 10-779
    ピアニスト×ヴォーカリスト 「ピ、ピアニスト……! お前、俺をこんな所に連れ込んで一体どうする気だよっ!?」 「決まっているじゃないですか。あなたの穴をアナリーゼするためですよ」 「や、やめろっ! そんな所、カプリッチョしたら汚い……っ!」 「フフ……どうです、私のマウスピースは?」 「アッ……アアーッ……アレグロ、アレグロ、アレグロ・モデラートーッ!」 「嫌だ嫌だと言っていた割りに、すぐにフィーネしてしまいましたね」 「う、うるさい……放せよ! な、なんだよやめろっ! 対位法は嫌だっ……!」 「さあ、私とフュージョンしましょう」 「んんっ……耳元でドルチェなブレスを吹きかけるな……っ!」 「大丈夫ですよ。最初はピアニッシモから始めますから」 「くっ……! こんな奴に2回もリコーダーを#させられるなんて……くやしい……でも感じちゃう!」 「さあ、どうして欲しい...
  • 10-459-1
    10-459-1 君が代 体育館で彼は言った。君が代を聞いたことがないのだと。 これからこの地域に越してきて初めて聞くのだと。 唖然とした僕を見つめて広島出身なんだ、と笑った。 その歌は彼の親や彼の教師、彼の故郷によって禁忌とされ、どのような歴史があり、 どんな意味でどんな風に国民が歌ってきたかを知っているからこそ歌えないし 絶対に歌いたくないのだと言った。 僕はそのような環境には育っていないし、ましてやその歌を憎んでもいない。 何故歌うのかもその意味も考えたこともない。 無知な自分を環境の違いだ、と恥じもしなかったが、普段共にふざけあい笑う彼の真剣な眼差しに小さな隔たりを感じた。 そっと隣にいる彼をみるとその顔はぐっと口をつぐみ、まっすぐ前を見据えていた。 騙す人騙される人
  • 10-739
    うなじ舐め 「着物ってのは日本の文化の至高だと思うね」 ぐぃ、と日本酒を呷ると、金髪碧眼の男が言った。 彼の目線は、向かいに座る、黒髪の青年に向けられている。 「これは浴衣ですけどね」 何故、情感たっぷりの旅館の一室で男同士で酒を呑まなきゃいけないのか、と彼は溜め息をついた。 目の前の、傲岸不遜厚顔無恥、という言葉がぴったりなこの男に、強引に連れてこられてしまったが、別に僕じゃなくても。 大学には、こいつに誘われたら何処へでも、なんて女の子がいっぱいいるのに。 まぁ、確かにこんな高級な旅館、彼に連れてこられなかったら一生泊まることなんて出来なかっただろうけど。 和紙で出来た丸いランプの、柔らかい光が、ほのかに室内を照らす。 窓から見える庭も、趣があって素敵だ。 「浴衣だって着る物、着物だろう、キク」 「キクはやめてください」 質問には答えず、彼は眉を顰めた。...
  • 10-749
    夕立と雨宿り 夏。夕暮れ。 第五週目の金曜日。 不意打ちのような、にわか雨。 この条件が揃うと、学園の南門の柳の木の下に幽霊が出てくるんだって。 「まっさかぁ。そんなことあるわけないって」 「でも、歩はそういうの見えるんでしょ?」 「小学生の頃まで…な」 「じゃあ、もしかしたら会うかもしれないよ」 雨宿り、してるんだって。柳の木の下で。 傘を忘れたから、誰か入れてくれる人が来ないかなって待ってるんだって。 「じゃあ、あれか。誰かが傘に入れてあげれば成仏するのかね」 「……そうかも」 「なんだかそれも、可哀想な幽霊さんだなぁ」 そういって歩は、持っていたビニール傘を傾けて 隣を歩いているサトルの肩が濡れないように気をつける。 夏休みの部活帰り。天気予報通りの夕立。 下駄箱から南門までの距離は意外とあって 問題の柳の木まで...
  • 10-799
    近親相姦! 「ハ……父さ…ん…ッ」 「涼…」 父さんに触れられる所は徐々に熱を帯びて、掌の中で波打ち始める。 「ゃ…ッあ!…駄目…ダメ…!!」 「“駄目”じゃないだろう、“イイ”だろう?」 「ん…イ、イ…」 「良い子だ」 大きな掌が上下に行き来する度僕に何かの限界が迫る。 「あっ、あっ、父さん…何か、何か来る…!!」 「いいぞ、涼。出しなさい」 「ぅ…ぁ…出ちゃ…!ああああぁぁっ!!!」 ――――――……… ………―――――― 僕のアソコから出た白いものを父さんは手に付けると、何を思ったのか僕の口に無理やり指をねじ込む。 「ッ~?!!!…うぇ…マズい…」 「だろうな」 「知っててやるなんて酷いよ!」 「ハハハ、涼の反応が見たくてな。すまんすまん」 本当に酷いや…。 「もう、父さんのバカ!」 「はいはい」 「いつか仕返しして...
  • 10-719
    チャリで2ケツ 背中に感じる相手の体温とか 肩から胴へとおずおずと回した腕とか いつもより重たいペダルが、幸せの重みなのだとか 横座りなんか女の子みたいで嫌だとか けど股関節が痛いとか からかったらぶつけられた、華奢だけど逞しい拳の固さとか 腰やらあらぬ辺りの鈍いだるさとか 仲良いなぁ、と冷やかされたり 普段、思っているより広く感じる背中とか ふざけてて、チャリごと河原へと滑り転がっていった事とか パンクしたチャリを、 ジャンケンで交代でひいて歩いた事とか コラ!二人乗り止めなさい!とお巡りさんに怒られた事とか 喧嘩して無言で、それでも二人乗りの帰り道とか 声が聞こえなくても、触れ合った場所の振動で 笑った事が分かったり。 向き合って、お互いの顔が見れない事はもどかしかった でも二人、頬にうける風は気持ち良かった 見つめ合わなくても、心が通...
  • 10-709
    ちんぽおおそうじww 「領収書下さい。」 「お前まだそんな細々と領収書集めてんのかよ。」 珍宝は昔から気持ち悪いほど几帳面な奴だった。 小学生の頃からお小遣い帳を付け出し、高校時代には生徒会の会計も務めていた。 高校の時に一緒に遊びに行ったときには自販機で買ったジュースですら記録していた。 まぁ言ってみればケチ、だった。金持ちの癖に。 「食事代も経費で落とせるんだよ。こういうのを集めとくと後で役に立つしね。」 え、領収書があったら何かいいことあるんだ。知らなかった。 そう言えば珍宝は昔から頭もよかった。一流大学卒で一流企業に入って、25歳で役職持ちだもんな。 「でも折角のおごりなのに領収書取られたらあんまご馳走になった気しねーよな」 「ばか、御荘寺お前が……ニートの癖によく言うよ」 しかも性格もきつい。人が気にしていることを…。もう少し慰めてくれるとかしてくれ...
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