*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「12.5-909-1」で検索した結果

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  • 12.5-909-1
    アリーナ ここはコンサート会場前で、手元にはチケットが二枚ある。 昨日、付き合ってくださいの言葉と共に渡されたものだ。 二枚とも渡したことで奴の馬鹿さ加減はわかろうというものだが。 あと30分で開場だ。誘った当人はまだ来ない。 もしかしたら来ないのかもしれない。 告白された瞬間、俺は思わず「アリーナじゃないとヤダ」と答えてしまった。 素直に頷いておけば良かった。頷ける性格だったら良かった。 きっと来ないんだろう。 一歩を踏み出せない俺に、お前から手を差し出してくれたのに、それを突っぱねたんだ。 来るはずがない。絶対に来ない。 俯いていたら涙が零れそうで、空を見上げる。 ……何か、見た。 妙なものが、上を向く際に視界を掠めていった。 徐々に視線を下げていく。 その妙な物体は明らかに近付いていた!ってか、来るな! 「ア○ーナ姫とーじょー...
  • 12.5-909
    アリーナ アリーナは自分の身体の上でたくさんの人を興奮させる 魔性なやつに思われがちですが、実は健気なやつだと思います。 だって自分が何をされても、黙って我慢しちゃうやつですよ? たとえ自分の身体を蹴られようが、落書きされようが、ゴミを落とされようが 黙って耐えてるんです。 そんな彼の心の支えは、静かに彼の身体を綺麗にして労わってくれる掃除夫さん。 汚されたアリーナの身体に落ちたゴミを拾って、落書きを拭いて消してくれて 尽くしてくれる掃除夫さん。 優しくされると、思わずアリーナの目から涙がこぼれてしまいます。 ただ、その涙は「雨漏り」と勘違いされちゃうんですけどね。 今日もアリーナは掃除夫さんに綺麗にされることを期待しながら 自分の身体の上で誰かを興奮させていることでしょう。 アリーナ
  • 12.5-969-1
    ドライブ 「頼むから乗って」 バイト帰り見覚えのある黒いワンボックスが止まると同時に窓が開いた。 びっくりしたじゃないか。 必死な形相で言ってくるモンだから助手席側に回ってドアを開けるとあからさまにほっとした顔になる。 ムカつく。 何も言わずにシートベルトを締めると車は走り出した。 「…車に俺を乗せて逃げ場無くす作戦か?」 「…ごめん、でも、乗ってくれるなんて思わなかった」 だってお前必死な顔してたもん。 駅前のCD屋の洋楽コーナーでよく見かけるスーツの男 という印象が変わったのは1年前 少女漫画みたいに一枚のCDを同時に取ろうとして手が触れ合った。 お互いびっくりしたけどスーツの男が「この店良くいらっしゃってますね、洋楽好きなんですか?」 なんて言ってくるから「好きですよ」なんて返しちゃって。 その後意気投合して俺たちは友達になった。 ...
  • 25-909-1
    閉鎖的な二人 あの二人は自己完結してる――それが二人の人間関係をよく知る僕の印象だ。 良くも悪くも二人だけの世界だ。すごい剣幕で喧嘩をしたかと思えば、誰も理由を知らないうちに仲直りしていたりする。 僕はそのことについて苦言をこぼすけど、「それで今まで問題がなかった」なんて気にもとめない表情で言われると頭が痛くなる。 この二人のことをクラスの大半は容認している。でも、それでも不満は貯まるんだ。 二人に言いにくいからって僕が愚痴に近い文句を言われていることを知っていて、こういったことを言うんだから嫌になる。 確かにこの二人は美形だ。顔がそっくりの双子だ。だからなんとなくふたりだけの世界を作っていても仕方がないという雰囲気ができている。 生徒はもちろん先生までだって「双子だもん心の奥底では通じ合ってるもんねー」なんていうくらいだ。 顔の似ている双子は似てない双子や普通の姉妹...
  • 12.5-609-1
    死亡フラグをへし折る受 「本当に行くのか」 「うん」 信孝は写真家だ。戦争の現状を撮りたいと言い、 今まさに紛争の只中にある某国へ旅立とうとしている。 …あの国で外国人が何人も拉致されたり殺されたのをまさか忘れたか? 全部自己責任だぞ自己責任。わかってんのかこのバカ。 「なぁ、悠」 「なに」 「一年以内には帰ってくるから…。そしたらさ、その、お前に話が…」 「…わかった。一年だろうが十年だろうが待っててやるから、  五体満足で帰って来いよ」 そんなに顔赤くしながら「話がある」なんて、バカじゃねーのかこのバカ、俺より10も年上のくせに。 全部つつぬけだっつうの。しかしバカに惚れた俺も相当バカだ。 「じゃあ、行ってくる」 「…ん」 気をつけてなとか、しっかりやれよとか、言いたい事は色々あったのに なぜか言葉にならなかった。 ...
  • 12.5-99
    日付が変わる 特別な日(好きな相手の誕生日とか)って、日付かわった瞬間に メールしたり電話したりしたくなるよね。 その時のいろんなタイプの攻め受け反応あれこれ考えると萌え! 例えばヘタレ攻めなら、日付かわった瞬間にメール送ろうとして でも受け寝てるかも迷惑かもってぐるぐる悩んでる内に日付 かわって一時間経ってたり。 ツンデレ攻めに健気受けがすごーく長いおたおめメール送って ツンデレは「うざい」って返信したあと、書き忘れたからとか 言ってお礼電話したり… 色々考えると妄想止まらないんだぜ! 成人式or同窓会
  • 12.5-979
    声 午後二時四十分。 日差しがまぶしいこの部屋に居ると人の声がする。 『…来たのか?』 「久しぶり」 『久しぶり、元気してた?』 「元気元気」 『そうか、また大きくなったな』 「この前来た時から三ヶ月しかたってねーじゃん」 『いや、顔つきが変わったよ。もう17になったのか?』 「あぁ、先週な」 『おめでとう』 「ありがとう」 姿は見えない。 俺以外誰にも聞こえない。 でもこの声の主はこの部屋に存在してるんだ。 「じーちゃんこの部屋どうするって?」 『取り壊して新しい部屋を作るそうだ。もうこの部屋も古いからな』 「明治からあるんだっけ?」 『あぁ』 「…お前は…この部屋が無くなったらお前はどうなるの?」 『さて…分からないな、また新しい部屋に縛られるか、この部屋と共にいなくなるか』 「そっか」 『あぁ』 「……」 『何...
  • 12.5-929
    出征 俺はもともと虚弱体質だったこともあり、兵役から免れた。 しかし、あいつには容赦なく赤紙が送られてきた。 「行くな」と言いたい・・・・・・しかし、このご時世にそんなことを言えば 非国民とののしられること請け合いだろう。 俺は、せめてあいつに無事で帰ってきてほしくて、千人針を縫った。 出征当日。 「お国のために行ってくる!」 あいつの笑顔はいっそ清清しかった。 俺は千人針を渡す機会をうかがっていたが、 あいつは家族友人に囲まれていてとてもそんな機会は巡ってこなかった。 隅であいつをじっと見つめている俺にあいつが気がついた。 「お前も来てくれたのか」 あいつは穏やかな笑みで俺に駆け寄ってくる。 だめだ、来るな。俺の女々しい心が見透かされそうだ。 「・・・・・・生きて帰ってこいよ」 俺がやっと口にできたのはそれだけ。たったそれだけ。 それが、最後の言葉...
  • 12.5-959
    さみしんぼ 中学高校、大学まで同じだったあいつと俺は、いつも一緒だった。 休みにどっか行くのも、授業サボるのも、飯食うのも登下校も。何するにも二人で連れ立って動き回ってた。 他の奴らが彼女作ってやることやってる間も、俺たちは相変わらず遊んだり、喋ったり、家でだらだら過ごしたりしてた。 いつでも、当たり前のようにあいつの傍にいた。 一緒にいる時間の多さ、というより密度か。それがすごく高くて、家族よりも近い存在のように感じてた。 誰よりも、あいつといるのが一番楽しくて、気が楽で、自然なことだった。 きっとあいつもそうだったんだろう。 だから、いわゆる恋人という仲になったことも、自然な流れだった。 ずっと一緒だと、そう思ってた。 が。 今、あいつは海外出張中。 もう3ヵ月も会ってない。これだけ長く離れてるのは初めてだった。 電話やメールはしてる。毎日毎日ウ...
  • 12.5-939
    君が僕の事を好きな事はずっと知っていたよ 知ってた。気づいてたよ、初めて出会った頃から。 人懐っこいくせしてあんまり深い友達付き合いしないお前が 俺とはよくつるんでいろんなところ行って。 ゲーセン、カラオケ、買い物、水族館、映画館って それは好きな女の子と行けよってところまで 俺たちは男二人できゃっきゃと遊びに行った。 結構楽しかった。なによりお前がすごく嬉しそうで。 こいつ、俺のこと好きなのかなって、俺は勘違いしそうになる 自分を必死で止めてた。だって、普通に考えて男同士で お互い好きになるって確率はめったにない。 それに、お前は普通に女の子も好きで、ときどき彼女がいて、 そういうときは俺とは遊ばずに楽しそうにデートの報告なんか してきて、そのうちいつの間にか別れてたけど。 だから、そう。お前は俺のことは好きだけど、俺が望んでるような 好きじゃなくて、...
  • 12.5-969
    ドライブ 濃い海老茶色の列車が走る地下鉄の駅の階段を上がりながら、連れが楽しげに声をかけてきた。 「本日の乙女座の幸運の鍵は『ドライブ』やって」 「あぁ、朝のテレビな…。山羊座は『いつも行く場所でも、違った道を通るのが吉』とか言うとったな」 「乙女座と山羊座の結果ってなんか似ることが多いんやなぁ。同じ研究室のオカルト娘もそんな事言ぅとおわ」 たわいもない話をしながら少し歩いて、100円の自販機・500mLのミネラルウォーターを2本。俺は片方を相手に手渡した。 「ふーん。あ、ありがとぉ。で、どないする?ドー、ラー、イブっ」 「どないしようもないやろ。俺はペーパーやし、お前は免許も車もないやろ。  だいたいここ、俺らのお決まりのコースの日本橋やないか。こんなとこでレンタカーはもっと御免やからな」 そう、俺たちはどこからどう見てもヲタカップルってやつだ(男同士でもそう言う...
  • 12.5-919
    腐れ縁  お前が俺のこと大嫌いなのはよく知ってたさ。初対面から遠慮なく嫌がってくれたよな。  よくも言えたもんだぜ。俺がいないとダメなくせに。大体俺だってお前なんかに付き合うのは嫌だったよ。  ガサツでぶっきらぼうで、せっかく俺がついてやってるってのにろくに勉強もしやしねえ。  逆にバスケばっかりやりやがって。俺と一緒じゃ危ないって何度も注意されたくせにやめやしない。  おかげでお前怪我しただろ。自業自得だぞ。あの時は顔に傷が残るんじゃないかとヒヤヒヤしたもんだ。  そんな自分勝手でおまぬけなお前を、文句ひとつ言わずにここまで支えてきた俺に感謝のひとつもしたらどうだ。  映画も観たし、メシ食いに行くのも何回もつきあってやったし、合宿、カラオケ、花火、スキーにクリスマス。  体育祭で優勝した時なんかお前泣いてたな。バレてないつもりでも俺は知ってるぞ。  風呂はさすがに...
  • 12.5-999
    病める時も健やかなる時も ふわ、と真っ白なドレスが揺れるのを横目で見ていた。 ところどころにあしらわれた真珠が太陽の光にきらきらと輝いて 今日という、素晴らしい日を手元の鮮やかな花々と共に祝っているようだった。 彼の病気が見つかったのは、今から六年前のことだ。 野球部のエースピッチャーとして来たる夏に向け日々鍛練を積んでいた彼の 異常に最初に気づいたのは、小学生の頃からずっとバッテリーを組んでいた俺だった。 そのまますぐに入院することになり、ついに彼がマウンドに立つことは無かった。 最後の夏だった。 高校を卒業したあとも彼の闘病生活は続き、退院してはまた入院を繰り返していた。 一番の親友でもあったし、なにより同じ病で父を亡くしていた俺は定職にも就かずに ひたすら彼の病室に足を運び、共働きの彼の両親の代わりに身の回りの世話を焼いた。 病気のせいで次第に卑...
  • 9-909-1
    お母さんみたい 「あったかい格好してけよ」から始まり「受験票は?」「地下鉄の乗り換えはわかる?」と続いて、 「切符はいくらのを買えばいいか」に到ったとき、俺は去年のことを思い出していた。 世の受験生は、皆このような朝を過ごすものなのだろうか。 昨日まで散々繰り返してきた会話を、当日の朝の玄関先で再びリピート。 俺、受験二年目ですが、昨年はかーちゃんがこんな感じだった。 そんで、朝っぱらからカツ丼食べさせられて、油に中って、惨憺たる結果を生んだのだ。 そのことについては恨んでいない。むしろ感謝している。 なぜかというと、一年間浪人させてくれた上、都内の叔父さんところに下宿を許してくれたからだ。 「それからこれ、頭痛くなったりしたら飲んで。眠くならないやつだから」 手のひらに錠剤を数粒のせて、差し出すこの人が、俺の叔父さん。 「お腹下したらこっち。気持ち悪くなった...
  • 12.5-129-1
    @田舎 「お前、東京の大学行くんだって?」 オレがそう聞くと、松田はちょっと驚いた顔をした。 「あれ、なんで知ってるの。まだ先生と親にしか言ってないのに」 「…や、昨日な」 昨晩の松田とおやじさんの大喧嘩が、隣りのオレん家まできこえていたのだ。 「ああ!やっぱりあれ聞こえてたのか。ごめんな~近所迷惑で」 松田はへへっと笑って頭をかいた。 「…なんでオレに教えてくれなかったんだ」 「だってまだちゃんと決まったわけじゃないし…でも絶対に行くよ。 やりたいことがあるんだ。地元じゃできないんだよ」 「おまえまで故郷をすてていくんかぁ!」 昨晩、そう怒鳴るおやじさんの声を聞いた。 この町にはなんにもない、だだっ広い畑と、年寄りと、雪があるだけ。 若者は職を求めて、あるいは寂れた町を嫌って都会へ出ていく。そうしてオレた ちの同級生もたくさん町を去ることを決めた...
  • 8-909-1
    一番星 それが言い訳ではないなどと訴えたところで、一体誰が信じるというのだろう? 彼も、自分自身ですらも。 今もなお、根限りと力の込められた指の強さを忘れられない。 「分かっています、あなたにとって今が一番大事な時期だということは。俺なんかに構っちゃいられないって事も。 けど、どうか忘れないで。あなたが大事。 あなたが大好きです。 いつだって、どんなあなたでも見つめていたいんだ」 それが、最後に会った彼の言葉。 「あ、いちばんぼしーい」 小さな指が紺色の天を差す。 ああ、そうだなと適当に相槌を打ちながら、買い物袋を提げた方とは反対の手で、幼稚園鞄をカタカタいわせて今にも駆け出しそうな手をしっかりと握る。それをブンブンと振りながら、 「いちばんぼしは、お父さんのほしー」 「おいおい、何だそりゃ。一番でっかいからか」 「ちがうの。ぼくらのこと、いつ...
  • 4-909-1
    「俺たち友達だよな」 「なぁ、僕ら友達やんな?」 「なんだよ急に。当たり前だろ」 そう、俺とお前は友達。それでいい。 この関係が崩れてお前を失うくらいなら、俺は本当の気持ちなんてずっと隠しておくよ。 「僕に友情を感じてくれてるんやんな?」 「もちろん」 嘘ついて、ごめん。 絶対に困らせないから。 「ほな、僕がどんなでも、友達や思てくれるか?」 「どうしたんだよ、本当に」 お前がどんな奴だったとしても、ただお前だから、好きになったんだよ。 「例えば、サツジン犯でも、ゴーカン魔でもか?」 「友達だよ。だから、殴ってでも更正させてやる」 「お前のこと、ホンマは殺したいくらい憎いて思てる、言うてもか?」 「……うん。それでも、友達だよ」 嫌われていたらきっと痛い。 でも、きっとそれでも好きだ。 「そっか。あ...
  • 6-909-1
    今日で五年目 吸い込まれる人、人、人、人。 吐き出される人、人、人、人。 毎日、毎日、繰り返される風景。 駅の前に、ボクは佇む。 春、夏、秋、冬、春、夏…何度繰り返したかな? 今日は晴れで、昨日は雨。その前も雨で、その前は曇り。 明日はきっと晴れで、その次の日は、曇りだったかな。 ボクは毎日、ここに来る。 通り過ぎていく人たち。 誰もボクを見ないし、ボクも誰をも見てはいない。 誰にも気に留められなくなるくらい、ボクはこうしているのだろう。 ただ、そこにいて、ただ、そこで待っている。 待っている。 ずっと待っている。 帰りを待っている。 きっと帰ってくる。 ボクは信じている。 ボクだけはずっと。 だって、おかしいじゃないか。 どうして死んだなんて言うのか。 遺体もないのに。 信じられるわけがない。 どうしてお墓...
  • 12.5-289-1
    機械の体 「正気か!? 身体を機械にするなんて……! クローン技術だってあるだろ!」 「生身のままじゃ、奴らを殺せない!!」 幸せだった2人に突然襲い掛かった悲劇。 テロに巻き込まれ、目の前で恋人を殺され、自分も瀕死まで追い込まれた彼はすっかり復讐鬼となっていた。 この前まで、虫を殺すことも嫌がるような奴だったのに。 そしてあいつも、死んでいい理由なんか何一つなかった。 本当に、いい奴だったのに。 「だけど、あんたがサイボーグ技術士でよかったよ。他の奴だったら、理由知ったら絶対やってくれないし」 「……だろうな」 復讐のためか、こいつのためか。 どっちにしても不毛なこと。 ただわかるのは、他の奴にだけは任せられないってことだけだ。 悪の総帥に惹かれる正義の味方
  • 12.5-479-1
    強敵と書いてライバルと読ませたい攻めとそれを鬱陶しいと思いつつも構ってしまう受け 「はーっはっはっはっ、また俺勝っちゃったじゃん?ごめんねー俺強くって」 うぜえ、こいつすげえうぜえ。 初めて見たときは強くて綺麗な奴だと思っていただけに このギャップにへこたれそうだ。 ちくしょう、何で一緒の学校になっちまったんだお前。 お前と部活一緒じゃなけりゃ、俺にとってはただの強くて見た目のいいやつってだけだったのに。 口は災いの元とはよく言ったもんじゃねーか。 「次はお前だろ?かかってこいよ。今日は絶対に俺が負かしちゃうけどねー?」 ケツを叩いて挑発って子供かお前は。 つか何で俺にばっかりうざさ三割り増しなんだ。 弁当のおかずの大きさが自分が大きいっていっちゃ自慢して、 身長が0.3センチ高いっていっちゃ自慢して、 俺よりも多く連勝したっていっちゃ自...
  • 12.5-719-1
    青春真っ只中な二人 青春18きっぷって年齢制限無いのは有名だけど、乗車期間限定なの知ってた? 新宿から山形まで8時間かかるなんて事聞いてない。しかも全部各駅停車と来たもんだ。 反対側の座席の窓からは、梅雨真っ只中のどんよりした暗い空しか見えない。今どの辺だろう。 今年の夏切符は7月から使えるんだけど、さくらんぼ食べれるの10日くらいまでなんだよね。 さくらんぼと聞くとドキッとする俺は変なんだろうか。 一年でこの時期しか味わえない果実。とろけるほど甘くて酸っぱくて、すぐに傷ついて膿んで腐って。 茎を結べるとキスが上手。2個くっついて描かれる。どう考えてもレモンより青春ぽくて恥ずかしい。 よりによってそんな物、今じゃないと駄目だから一緒に腹いっぱい食おうぜなんて熱心に誘うなんてさ。 冬は毛蟹となまこ、あと明石焼きを食べにいったんだ。うまかったよ~と思い...
  • 12.5-339-1
    水の中 水の中では、僕らに言葉は要らなかった。 ただ泳いでれば、水は僕とアイツを繋いでいて、言葉を使わないで互いを分かり合えた。 「俺、水泳辞める」 「え、何で」 高校からの帰り道、唐突に天野は言った。いつもみたいに、ぶっきらぼうな声で。 あんまりあっさりと言うもんだから、僕の耳がおかしくなってしまったのかと思ってしまった。 小さい頃からあんなに水泳好きだったのに。なんで辞めるなんて言うんだろう。 「何でだよ」 立ち止まった僕から数歩歩いて、天野は振り向いた。 よくわからない、恥ずかしそうな、気まずそうな複雑な顔をしていた。 「お前は、大会とか行きたいんだろ」 「うん」 「俺は、そういうの、思ってなくて、ただ、水泳が好きなだけで、泳げれば、それでいい」 口下手な天野は、ちょっとずつ考えながら言葉をつむいでいる。 「うん、知ってる」 昔から、天野...
  • 22-909-1
    滅亡する王朝の少年皇帝の最期 それを望んだのは、彼だった。 そうでなければ私のような者が、彼をこの手に抱くことなど無かっただろう。 病に侵され深い眠りに付くときに、私の歌を聞いていたいそうだと、皇帝の側近から告げられた。 正確には、私でなく私の母の歌だ。 母は若い頃、楽師としてこの宮中に出入りしていた。 琵琶の腕前では右に出るものはなく、当時の皇帝から名指しでお声をかけていただくほどであったと聞いた。 母がよく歌ってくれたのが、山向こうの遊牧民たちから聴き覚えた子守唄だった。 そんな母は舞楽の仲間達数名と共に他国へ向かい、道中山賊に殺されてしまった。だからもうこの子守唄を歌える者は私しか残っていない。 宮廷の下の下仕えである私が宮殿内へ入ることなど、あとにも先にも今だけだろう。 そうでなくともこの国は、もうすぐ幼き皇帝のものではなくなる。 先代皇帝...
  • 18-909-1
    探偵(職業探偵でなくても可)と、助手(職業助手でなくても可) 殺人事件現場にて 「若様、若様」 「こら猫介、『館花先生』と呼べと言ったろう」 「若様は僕に先生と呼ばれるほど立派なお方でしたでしょうか」 「……間をとって『若先生』で許してやる」 「では若先生、今日のこれはどういったお遊びなのですか」 「当屋を知っているな」 「勿論ですとも。 若先生ととおぉっても仲のよろしい当屋一馬さまでしょう」 「お前はあいつのことが嫌いだったな……。 まあその当屋がな、 先日推理小説を書いて賞を貰ったのだそうだ。 本を送ってよこしたが あいつの本なぞ読む気になれなかったからな、とりあえず書店に売っていた 推理小説を一通り読んでみた」 「面白かったのですか」 「猫介は読むなよ。推理小説と言うのは大抵人が死ぬからな、子供が読む物じゃあない」 「そんなことを言ったら新聞も...
  • 21-909-1
    舞台はスラム 荒廃した街の片隅。 泥と埃、血と汗にまみれて今にも呼吸をやめそうな少年が横たわっていた。 本来なら白く柔らかい肌には殴打された痕が無数に散らばり、身につける衣類はもはやぼろきれでしかなかった。 少年の目は天に広がる空をまっすぐ見つめていた。 澄み渡る青を憎むかのように、もしかしたら憧憬するように、徐々に光を失っていく瞳で睨みつけていた。 「死ぬのか?」 青空を遮るようにして少年の視界に男が顔を出した。仕立てのいいスーツに身を包んだ男だった。 後ろには屈強そうな男を2人従えている。 右腕にはめられた時計は、貧乏人には死んでも手が届かない代物だ。 物心ついたころよりこの街で育った少年にもそれは理解できた。 「君、死ぬのか」 男がもう一度訊ねる。少年は答えない。 「わかった。質問を変えよう」 泥と血が固まってこびりついた頬に、男は躊躇いなく触...
  • 5-909
    ゴルゴ 「ほわちゃあ!」 「…なにするんだよ!後立っただけじゃないかよ」 「俺の後ろに立つな!立ったやつは死ぬんだぞ!」 …また始まった。こいつの悪い癖は、直前に読んだ本の影響を受けることだ。 床に転がっている漫画を見ると、マユ太ヒットマン漫画。 あー、よく判らんが、今日はでゅーくなんだろうな。 「…依頼を聞こうか、振込先はスイスの銀行だ」 「あーはいはい、じゃあ、2時間ぐらい黙れ」 「…では依頼を受けた」 そう言いながら、奴は俺を押し倒しにかかる。 まて、でゅーくはスナイパーだ。グラップラーじゃないぞ! 「…依頼を持ってきたものとは、その後寝るんだぞ、ごるご」 …お前、良い様に解釈するんじゃねえ! 年下のわんこ系わがまま攻×年上でぬこ系のツンデレ受
  • 12.5-109
    成人式or同窓会 来るだなんて、思いもしなかった。 心のどこかではなから来ないものだと思い込んでいたから、全く思考に掠めもしなかった。 小中を共にした懐かしい顔が並ぶ中に見つけた顔を、一瞬理解できなかった。 「おい立花、見ろよ。あいつ菊池じゃね?」 随分と頭身が高くなって、あの頃見下ろした目線が見上げた先にある。 女のような顔をしていた菊池は、男らしさが面差しに見え隠れする華やかな男になっていた。 そうだ。あの頃菊池はなよなよとして、友達も女ばかりだった。 男だか、女だかが曖昧なあいつが気に食わなくて、気持ち悪くて。 俺は、幼稚な残酷心でもって菊池をいじめ抜いたのだ。 「立花君」 式の半分は、やれ誰が可愛くなっただの、今どうしてるのかだの雑談を聞き流しているうちに終わった。 ざわついた会場の外で肩を叩かれ、俺は随分怯えた顔をして振り返ったように思...
  • 25-909
    閉鎖的な二人 「あなたが気になってたんです。」 そう言って悲しげに微笑んだ男の顔を、俺は初めて正面からちゃんと見た。 きれいな顔だと思った。 その男は黒崎という最近アパートの隣の部屋に引っ越してきた男だ。 会うのは時々玄関先ですれ違う程度。 背が高いが地味で、「変なポケットの男」というイメージしかない。 見るといつもコートのポケットが片方だけ妙に膨らんでいるからだ。 今日自分の郵便受けの中に宛先が隣の部屋番号の分厚い封筒が混ざっていた。 黒崎、という名前もそこで初めて知った。 それを彼の郵便受けに適当に押し込もうとしたところにたまたま本人が帰ってきたのだ。 さすがに会釈だけで立ち去るのはばつが悪かったので、 イヤホンで聞いていたiPodを止めて話しかけた。 「すみません、手紙が俺のところに混ざってて」 「ああ、そうでしたか。ありがとうございま...
  • 15-909
    大麻智くん 「智君、智君」 「なに」 「僕はきっと、智君がいなくちゃ生きていけないんだ」 「ふーん?」 「智君のそばにいたい、智君の声を聞いていたい、智君に触れていたい」 「それで」 「智君が、そうやって冷たい態度をとっても、僕は智君のそばにいないと生きていけない」 「…」 「ダメなんだ。智君がそばにいないと、息が出来なくなる。動けなくなる。きっと狂ってしまう」 「そんなこと、」 「ありえない?ううん、僕は君がいないと死んでしまう。それは、事実だ。」 「は、」 「無いと生きられない、無くなったら僕は狂って、狂って、どうしようもなくなってしまう」 「お前、」 「空気…よりは麻薬…大麻?みたいな存在。君の存在を知らなければ僕は普通の高校生として過ごせたけれど、」 「…」 「君に出会ってしまったから、僕はもう君なしでは生きら...
  • 12.5-139
    深爪 「…あっ!痛っ」 またやってしまった。 「気をつけろって言ってるだろ。ばか」 「ごめんごめん」 離れてしまった細くて長い指に再び触れる。 「今度は丁寧にするから」 もう一度ごめんと呟いて傷つけた指を口に含むと、君は真っ赤になった。 君は爪の手入れすら面倒臭がるからせっかくの綺麗な手が台無しだ。 清潔にしておくために短くしろよ、と言ったのが始まりで爪切りは僕の仕事になった。 いつも切りすぎて怒られる。 君は知らないだろう?伸びた爪が僕の背中に傷跡を残していると。 君は知らないだろう。爪痕を見るたび僕の心が痛むことを。 今日も僕は君の爪を切る。もう君が僕の背中に過去を刻まぬように。 むしろ僕が君に跡を残せるように。 「何笑ってんだよ。気持ち悪いな。早く切るなら切れよ…痛い!」 「ごめんってば」 「わざとかよ」 うん。わざと。 ...
  • 12.5-149
    喧嘩友達 「誉れ高き勇者殿ともあろうお方が私如き一介の使用人にいちいちいちいちいちいちいちいち 突っかからないで頂きたいものですねえうっとおしい」 「普通の一介の使用人は魔王討伐に来た勇者を何度も何度も何度も何度も落とし穴に落とさねー んだよ!てか何だあのこの間の落とし穴は!中身ぎっしりナマコってどんな罰ゲームだコラ!」 「ああアレは某南の島に大量に生息するナマコを捕獲・飼育した『対侵入者撃退用自由落下式罠 325番:通称必殺ナマコ穴』と申しまして、落ちた相手の精神的ダメージに対してコストが 少なく皆様には中々の好評を博しております」 「皆様って誰だよ!っつーかそのネーミングセンスはどうなんだ!!」 「ちなみに彼の島では亡くなられた方がナマコになるという伝承がございまして、落ちた方には もれなく悪寒とラップ現象のオマケ付き」 「二重...
  • 12.5-189
    思い出すために 異音がするビデオデッキに不安を覚えたが、今回もなんとか無事に再生できた。 画面の中で大写しになった歯を見せて笑う口元、 それが誰のものかなんて考えなくても分かる。 映像はとうに古くなって黄ばんでいたけれど、俺の中ではいつだって原色のまま変わらない。 ”お前達って友達のくせに仲いいよな” いつだったか誰かにそう言われて、苦笑いしながらも誇らしいような気持ちになったのはいい思い出だ。 けれども今、「友達」の俺に残っているのはこのビデオテープだけだった。 気づけば暗い部屋の中、映像を映し終えたテレビがぼんやりと光っていた。 巻き戻しボタンに手をかけながら考える。 きっと俺はこのテープを壊れるまで、壊れるほど見返すんだろう。 そうやって年々かすれていく思い出を繋ぎとめていくんだ。 いつもの人
  • 12.5-159
    試合で破った敵校の先輩と偶然再会 「あっ!」 渋谷の繁華街でばったり出会った俺達は同時に叫んだ。 一人はもちろん俺で、もう一人はこの間バスケの試合で負かした相手校の先輩だ。 俺のめちゃくちゃ恋い焦がれてる人でもある。 去年の大会で彼のプレイを観て一目惚れしたんだ。 もっと早くに彼の存在を知っていたなら同じ高校に入っていたのにと悔しく思う。 「先輩」 「なっ!お前なんか俺の後輩でも何でもねえだろ!気安く先輩なんて呼ぶなよ!」 やはりこないだの試合の時、彼ばかり散々マークしてること根に持ってるようだ。 あれは何も嫌がらせした訳ではなく、ましてや勝つ為の戦略などでもなく、 俺の個人的問題だったんです、先輩。 監督からエースの彼のマークに付けと言われた時は小躍りしたくなるほど嬉しかった。 こんなに密着出来る機会なんてそうそう無い。 試合なんかどうだって...
  • 12.5-609
    死亡フラグをへし折る受 「俺、今回の仕事を最後にしようと思うんだわ」 ―――だからさ、 そこまで言いかけて彼は急な呼び出しに飛んでいってしまった。 彼の仕事は時間を選ばずで、ベッドで甘い囁きでも交わそうかという時にでも非情だった。 おまけに会うたびあちこちに新しい傷ができていて、常々僕はそれを問い質した。 「お前はいつも馬鹿面で俺を待ってりゃいいんだよ」 なんて言葉で丸めこまれて、いつも僕は黙るしか他なかった。 知っていたからだ。 図体ばかりが大きくあまり気の強いほうではなくて、幼い頃に蟻の行列を踏ん付けたことをまだ気に病むような小心者の僕に心配させまいとしていた彼の心情を。 そんな彼は、結局一年が過ぎても戻らなかった。 僕は後悔している。あの時、彼を引き止めなかったことを。もっと早くに足を洗ってくれと言い出さなかったことを。 ―――だからさ、 彼は何を、言...
  • 12.5-169
    年の差、一回り以上 2月3日 日よう日 ぼくは、きのう、お母さんといっしょに、おばさんのうちにいきました。 いとこのはるきにいちゃんと、ウィーをしたり、サッカーをしてあそびました。 はるきにいちゃんは、大がくという、小がっこうじゃないがっこうにいっています。 せがたかくて、サッカーがうまくて、かっこいいです。 いっしょにおふろにはいったら、ちんちんが、ぼくのより大きくて、 かたちもちがくて、ぼくはびっくりしました。 「でっけー。」 と、いったら、 「おれのは、ふつうだし。」 といって、かおがまっかになりました。 おしっこするときみたくさわったら、かたくなりました。おもしろかったです。 だから、もっとさわりたかったのに、にいちゃんにおこられたので、やめました。 にいちゃんは、 「おとなになったら、おまえもこうなるよ。」 と、いいました。 ぼくは、...
  • 12.5-809
    同じ顔同士 ばかな話だと思った。自分と同じ顔をしている弟に見惚れるだなんて、ばかな話だ。 好きな人がいるんだ。 双子の弟が、そう私に告げてきたのは、つい先週のことだった。 同じ月日を一緒に過ごしてきた仲だというのに、それまでにそういう話を打ち明けたのは、弟も私も初めてだった。 私にはそれに理由があった。同性愛者だということを知られてしまったら、軽蔑される、そう思っていた。 (今思えばなぜもっと早く気づかなかったのだろう。私と彼は同じ細胞でできているということに) 弟に好きな人がいるというのは、単純な気持ちで嬉しかった。 少しでも力になってやろうと、私は照れながらも、相手の名前を聞いた。 弟が口にしたのは、私が交際している男だった。 唖然としている私に、弟は続けてこう言った。 「あの人と、兄貴が、好き合ってるのは知ってるんだ」 「ごめん」 ...
  • 12.5-409
    目が覚めたら、愛の続きを  おはよう、ロイ。  今日は2138年3月9日だ。  今日は一日風もなく暖かい、いい日だったから、愛犬のジョッシュを連れてドライブに行ってきた。  海浜公園に行ってジョッシュを思い切り走らせて、俺は木陰のベンチでずっと本を読んでいた。  君はホラーが苦手だとか古臭いとか言って毛嫌いしているようだけど、やっぱりキングは面白いと思う。  まあ、春の公園で読むのに適した本かどうかは微妙だと言う自覚はあるけれど。  君と飼っていたレトリバーのジョーを覚えているかな。ジョッシュはジョーのひ孫のそのまた孫にあたる。  今年で三歳になるジョッシュはとにかくやんちゃで、僕は振り回されっぱなしだ。  今まで飼ってきた中でも一番の甘えん坊でいたずらっ子で、この間なんか俺をでかけさせないために気に入りの革靴を庭に埋めて隠してしまった。  ジョッシュを宥め...
  • 12.5-509
    真夜中に届いた、たった1行だけのメール。 朝起きてメールを確認すると、受信メールが二件あった。 どっちも親友。なんだろうと思ってメールを開く。 『好きだ』 件名、無題。本文、三文字。 送信時間は深夜一時。 『ごめん』 件名、無題。本文、三文字。 送信時間は深夜二時。 たった一時間の間に何180度回転したメール送ってんだよ! 自己完結?!俺の返事は待たんのか?!そりゃねーよ!! 剣豪×ごろつき集団
  • 12.5-309
    パパがライバル 一番の味方は一番身近に居るという。 しかし、一番の敵も一番身近に居るという。 俺の場合、後者だけははっきりしていて。それは母親でも妹でも姉でもなく。 「てめぇぇぇ!人のデータで勝手にクリアすんなって何度言ったらわかんだコノヤロウ!!」 「うるせぇなお前こそ父親を『てめぇ』呼ばわりしてんじゃねぇクソガキ」 「お前なんか父親だなんて思ったこともねぇよ!!…母さんと姉貴が居たらぶん殴られるからいわねぇけどな!」 「胸はって言うな」 目の前にいるこの男は、戸籍上では俺の父親ということになる。 五年前、俺の本当の父親だった刑事が死んだ。逃げた強盗を取り押さえる際の怪我に因る殉職というやつだけど今は割愛しておく。 その父親の後輩がこの男だった。 父親の葬式に現れて、精神的にぼろぼろだった母さんを支えたりしているうちに仲良くな...
  • 12.5-709
    子供じゃない! 「免許証と保険証、クレジットカードに社員証、好きなの選べ」 「――――ごめんなさい」 好きな人に振られて、自棄酒を飲もうと思ってコンビニに行ったら、高校生に間違えられた。 むしゃくしゃして財布の中にあるカード全部ぶちまけてやったら、店員に平謝りされた。 その姿に、ちょっと気分がよくなって意気揚々と酒を買い、家について財布丸ごと置いてきたことに気づいた。 「免許証と保険証、クレジットカードに社員証、アナタの財布と僕のアドレス、全て預かっています」 「――――お前のアドレスはいらない」 高校の制服に着替えた笑顔の店員に、俺は丸めた紙を投げつけてやった。 青春真っ只中な二人
  • 12.5-209
    いつもの人 午前7時15分。決まった時間にその人は現れる。 「キャスター下さい」 「はい」 言われた銘柄をストックから取り出してレジのカウンターに乗せる。 小銭を差し出す指は爪の先まで整っていて、繊細な手というのはこういうのなんだろうと思う。 男の手ではあるけど。 お釣りを渡すと、ありがとう、と礼を言ってその人は立ち去る。毎朝の1分足らずの出来事。 スーツ姿も、その上にコートを着ても、少しの隙も乱れも無い、細身で背が高めの、サラリーマンらしい人。 この近所に住んでいるはずなのに、自分の周りにはいないタイプだ。 閑静な住宅街は、昔からある下町と、新興の住宅や低層マンションとが所々入り混じってる。 自分は前者、あの人は後者の住人なのらしい。 「大げさだけど、神様、もしいらっしゃるなら感謝します。  それと、いつもはうるさいとしか思わない町内会の取り決めも。...
  • 12.5-59
    悪堕ち 「おや、これは手ひどくやられたものだね」 獄につながれた青年は床の上で上体を起こし、声の主をねめつけた。 その鋭い視線を受け止めて、壮年の男は白々とわらってみせた。 数日に渡る拷問は精悍な面差しに濃く疲労の影を刷いていたが、心は折れていないようだった。 絆の力が、青年をあちら側につなぎ止めている。 その強さを、男は認めざるを得なかった。 しかし、いかに密な結びつきとて弱点がないわけではない。 やり方さえ間違えなければ、思いの強さを逆手にとることも出来る。 しばし言葉を吟味して、男は穏やかに語りかけた。 「君が何故これほどまでに頑なな態度をとるのかは分かっているよ。 我々に与しないことで”あの男”に義理立てしているつもりなのだろう?」 青年は応とも否とも答えなかったが、聞こえていることは確かだった。 男は気にするふうもなく話を続ける。 「...
  • 12.5-89
    筋肉 眠っている彼の背をそっとなぞる。 学生のころから均整の取れた体は変わっていない。 たくましい腕、引き締まった腹筋、無駄な肉のないきれいな背中。 俺の体とは大違いだ。自分の弛んだ腹を見て思わず苦笑が漏れる。 疲れているのだろうか。 背中から腕をなぞりだしても一向に起きない。身じろぎもしない。 疲れといえば、筋肉痛が2日後に来るとか言ってたな。 俺は3日後だった、と言ったらおじいちゃん呼ばわりされた。 変わらないように見えても、お互い少しずつ年をとっているのだ。 いつの間にか小学生の子供がいたっておかしくない年になってしまった。 こいつの年の割りにしっかりした腕に抱きしめられるのは可愛らしい奥さんで、 がっしりとした肩にしがみつけるのは彼に良く似た子供であるべきなのだ。 こんな中年男でいいはずがない。お前にはそっちのほうが似合ってるよ。 お前...
  • 12.5-019
    変身ヒーローと共闘する刑事。実は正体の方でも非常に親しい人だけどそれは知らない この町に怪人が現れるようになったのと時を同じくして、奴が現れるようになった。 正義の味方だか何だか知らないが、俺が怪人から人々を守っていると必ず現れる。 そしてさっさと怪人を倒して去っていく。 おかげで刑事としての俺のプライドはズタズタだが、 人々の平穏な生活が守られるなら俺のちっぽけなプライドぐらい安いものだ。 それにしても最近本当によく奴と会う。 たとえ俺がいようといまいと怪人が現れたら奴も現れるのだろう。 たまたま怪人の出現回数が増えてるだけなのかもしれない。 だが、そう考えても腑に落ちないぐらい奴に会うのだ。 「なあ、どう思う?」 「それ俺に聞かれても…。偶然だと思うけど。」 確かになじみの喫茶店のマスター代理に聞くことじゃないかもしれない。 だけど、幼い頃...
  • 9-909
    お母さんみたい 「オラとっとと顔洗ってメシ食えメシ」 寝ぼけ眼でリビングへ行くと、ごはんとみそしるのいい匂いがふんわりと 俺の鼻をくすぐる。そして聞こえて来る野太い声。これは夢だろうか。 ジムで知り合ったノンケの一哉さんに一目惚れをしたのは俺だった。 178cm70kgの平均的な体格の俺に比べて、一哉さんは190cm100kg、 握力80kg、背筋200kg越えの鍛え抜かれた身体に男らしい精悍な顔立ち。 それでも顎に生やしてるヒゲは触ると意外と柔らかい事を昨日知った。 そう、昨日、俺は、一哉さんとひとつになったというかなんというか まあぶっちゃけ口では言えないような夢のひとときが色々とあって、 なんだ、その……苦節2年、とにかく俺の想いは彼に通じたらしい。 鍛えてるだけあって、あらゆる意味で一哉さんはすごかった。 腰なんかもうがくがく。腕も筋肉痛でがた...
  • 6-909-4
    今日で五年目 ここで、懺悔したのでいいんですか。 あ、この板の向こう側に、神父さんがいらっしゃるんですね。 すみません、こういった所ははじめてなもので。 キリスト教徒じゃなくても、懺悔ってしていいんですよね。 …ええ、では話させてもらいます。 彼と出会ったのは、僕が大学に入学した時でした。 彼は2つ上の先輩で、岩のような顔をしているのに、優しくて小心者な ところがあり、僕はいつのまにか、彼の飼い犬のように、彼の後ろを ついてまわることが、至上の喜びとなっていました。 彼が、僕に「バンドやらないか」と話をしてくれた時は、天にものぼる 心持ちでした。 僕はその頃、この幸せな時間が、いつまでも続くものだ、と思っていました。 状況が変わったのは、僕が大学2年になった時です。 彼と一緒にいることが、僕の生活の全てになっていました。 しかし、彼は大学を卒...
  • 6-909-2
    今日で五年目 朝起きて、何も変わらない部屋を見渡して、ああすっかり慣れたんだな、と思った。 相変らず散らかっていて汚い部屋だな、としか感じなくなってからもう大分経つ。 妙に広くて寂しいとかそういうことを考えなくなって、もう大分経つ。 顔を洗って、ひげをそって、食パンをかじって、歯を磨いて、寝間着から外に出られるだけの格好に着替える。 今日もバイトだ。未だに僕はフリーターだ。 夢なんか追いかけて馬鹿みたいだと母は言う。僕もそう思う。そう思うけど、まだ踏ん切りがつかない。 あの頃、僕たちはふたりで夢を追いかけてた。目指す方向は違ったけど。 あいつのCDジャケットは僕がデザインするんだとかぬかして、そりゃお前ミュージシャンとデザイナーが 恋人だったら一大スキャンダルだとか冗談を言って笑い合った。 そのあと僕を置いてかれは夢を掴み取った。このおんぼろアパ...
  • 6-909-3
    今日で五年目 手首に当てた刃に、ぐっと力を込める。 全身から汗がどっと吹き出し、ガチガチと歯が鳴った。 切りつける腕に力が籠もりすぎて、刃がうまく刺さらない。 それでも赤い線が走って色が零れる。血は雫になって腕を伝っていく。 体の震えが増す。生理的な涙がこみ上げたそのとき――― 「開けろ!ここに居んだろッ!クソッ…クソ…がァァァ!」 ガシャン、という音とともにガラス戸が破られた。 「こん……ッの馬鹿!!」 ガラスの散乱する浴室にためらいなく足を踏み入れた弟は、 茫然と見上げる僕の手から刃物を取り上げ、頬を張り飛ばした。 「な……なんで………」 「なんで、なんて言うなボケ!」 憤怒の表情で現れた弟の顔が、泣きだす寸前のように歪む。 「ちくしょ……誰が許したよ…こんな…こんな…!」 弟の激情に圧倒されて、僕は体をこわばらせてその場に固まっていた。 弟はケー...
  • 4-909-2
    「俺たち友達だよな」 「俺たち、友達だよな」 わけがわからない。 好きだと言われて、俺もだと答えて、手を繋いで、キスをして、セックスをして。 なのにお前は「『友達』だよな」って聞くわけ? なんだよ、それ。 「そうなんじゃん」 俺は今初めて知ったけど。 俺らの間にあるものが、お前の中では『友達』に当てはめられてたなんて。 「そうだよな」 わけがわからない。 何でお前がそんな哀しそうな顔すんだよ。 自分で聞いたんだろ。 「『友達』だよな」って。 その言葉選んだの、お前じゃん。 「なあ、」 俺、今のお前の顔、信じていいのかよ。 信じて、さっきの言葉、撤回してもいいよな? 言い直しても、いいんだよな…? 口調人称変化自由
  • part12.5
    part12.5 口下手な人の告白 変身ヒーローと共闘する刑事。実は正体の方でも非常に親しい人だけどそれは知らない 演劇部×野球部 年賀状 二人まとめて 悪堕ち ヘタレ×天然 ネタ扱いされる男(2ちゃんねる的な意味で) 筋肉 日付が変わる 成人式or同窓会 30代やもめ男×偏屈な専門家 ...
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