*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「16-149」で検索した結果

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  • 16-149
    誇り 「何をする!」 荒っぽくベッドに突き飛ばされ、僕は怒鳴った。 「何をするって、あなたを抱くんですよ、鳳家のおぼっちゃま」 ネクタイを緩めながら、奴は言った。 「さっき、食べるためなら何でもすると言ったでしょう?約束は守っていただかなくては 困ります」 抱く?男の僕を男の奴が? 混乱する僕に構わず、奴は僕の上に覆いかぶさろうとした。 四つんばいになって慌てて逃れようとする僕を、奴は体を使って背中から押し潰すように 押さえつけた。 ベッドカバーと僕の体の間に押し込むように手を入れて、さっき着たばかりの風呂上りに 用意されていた新しいスラックスのベルトを外しにかかる。 「やめろ!やめろよ!!」 「大丈夫、痛くはしませんよ」 「やめろっつってんだろ!東山!!」 かつての学友であり、元・父の秘書、そして、父の死後に会社を乗っ取り、僕を無一文で 路頭に彷徨...
  • 16-149-1
    誇り 自分なりの誇りを模索しつつ戦う王子の話はいかがでしょう。  以下、無駄に膨大なあらすじ&シーン抜き取りです。女の子も出てくるので注意。  舞台は小さいけど豊かな国。  美しい港、肥沃な大地、実直で勤勉な人々のおかげでその王国は栄えていた。  しかしその恩恵を受けようと、強欲な隣国の軍が王国への侵略を度々企んだ。  その度に人々は結束し、勇敢に戦って敵を退けてきた。  主人公は王子。若くして戦線に立って指揮を執り、 圧倒的に不利な状況をひっくり返して勝利を収めたために 他の国からも自国の民からも希代の名将として特別視されている。  王子は自国の平和を乱し、搾取を狙う隣国を激しく憎み、 「国のために戦い、誇りのために死ね」というモットーで鬼神のごとく戦った。  兵士達は王子の言葉に奮い立ち、死を恐れずに敢然と敵に立ち向かったのだった。        ...
  • 6-149
    GWの過ごし方 周りの友人たちは彼女とデートだの実家へ帰省だの忙しそうにしてるっていうのに… 「せんぱーい…何時までウチに居るつもりですか…」 「お前がバイトに行くまで…」 「あと4時間もありますよー…」 折角のGWなのに彼女も居ない、両親は旅行中で帰省も意味無しな俺は暇を持て余していた。 寮の隣に住む1コ上の先輩も俺と同じで暇らしく、朝も早くから俺の部屋に来て 人の布団の上でゴロゴロしている。 「先輩、どっか外行きましょうか?」 「ヤだよ。金ねーもん」 「ですよねー…。てか何で俺の部屋に居るんスか?他にも暇な奴等なんて一杯居るでしょう?」 「…なんてーか…お前の傍が妙に落ち着くから」 「…え…あははそれって告白?」 「そうだよ、俺お前好きだし」 「!?」 「嘘だよバーカ」 「ちょっ…マジ勘弁してくださいよ!この寮結構怪しいの居て密かにビビってんですか...
  • 26-149
    嫌いじゃないです 「今日の夕飯何がいい?」と俺が夕方に聞くのはいつものことなんだ。 それに「なんでもいいー」とやつが答えるのもいつものことだ。 そのくせ、何か作って食卓に並べると、「今日はそれの気分じゃないー」なんて言い出すんだ。 もうほとほと愛想が尽きるってもんだぜ。 しかもこの間なんて、パスタ食べたいっていうからあさりが入った和風のを作ったんだ。 そしたらすっげー顔しかめてさ。 「あさり嫌いだったか?」って聞いたら「カルボナーラがよかった」なんていいやがる! なら最初からそう言えよ!! 「作り直してやろうか?」と聞けば「ん、別に嫌いじゃないっていうか好きだし食べるけど?」 っておまえはなんなんだ! 女王様きどりか、くそっ! あ、なに? そんなにいやなら別れればいいじゃないかって?別に嫌いじゃねえよ 甘えていいよ
  • 7-149
    今年の紫陽花は何故か青い そろそろ紫陽花の季節になる。 この時期になると、赤紫色の紫陽花が咲き誇るのを、ここの窓から臨むことが出来る。 いや、出来る『はず』だった。 …何故だ。今年の紫陽花は何故か青い。 不思議に思って原因を考えていた所、奴が私を呼ぶ声が聞こえた。 相変わらずの無防備な笑顔で駆け寄ってくる姿は、まるで親元へ走る仔犬のように見える。 「・・・何か用か」 「見てくれましたか?外の紫陽花!青くなっているでしょう? この前、あなたが『青いものを好む』って言っていたので、 紫陽花の赤の色素を除去する薬を作って、外の紫陽花をあなた好みの色にしたんですよ!」 「・・・は?」 いまだに私は、こいつの行動への理解が追いつかないことがある。 私が青を好むと言ったからとはいえ、研究棟の周りに植えられた紫陽花―皆が見て楽しむもののはずだろう―を 私一人の好みに合わ...
  • 8-149
    この手を離したくない ふわりと広がる薄茶色の髪に手を伸ばす。 柔らかな感触を甲に触れさせながら、金鎖に絡まる細い髪を丁寧に解いていく。 くすぐったさに震えている彼女の細い肩と白いうなじ。 その儚げな風情が思い出させるのは、彼女とは好対照に力強い生命力の塊のようなアイツ。 昔、肩を組んだ時に当たった硬い髪は、チクチクと腕を刺して痛痒かった。 でも、その刺激ですらも愛おしかった。 そして、中学に入学する頃にはこのまま二人でいたいと望むようになっていた。 だから、この手を離した。離すしか、なかった。 考え込んでいた間も休ませることなく動かしていた手が捕われた髪を解放する。 「外れたぞ」 「ありがとう。お兄ちゃん」 彼女が軽く会釈をしながら礼を言う。大人びた従妹が見せる笑顔が眩しい。 俺が彼女のように柔らかな少女だったなら、アイツか...
  • 3-149
    田舎から都会へ引っ越す子×都会からの転校生 僕の赤い自転車を、まるで女子の乗るヤツみたいだなって最初のころビーは言った。 使いこんで、暇があるときにはぼくがいつも磨いていたから、ぴかぴかでとてもいい色になっている。赤い自転車。 ゲコゲコとたんぼで蛙がないている。蛙の声はとぎれない。あたりはまさに夏の夕方六時というかんじに薄く明るく暗い。 水をはったたんぼの上を過ぎた風はひんやりしていて心地よかった。 「なぁー。俺さ、十日誕生日なんだよね」 ぼくのシャツの背中を片手でつかんだまま、ビーが言った。 「十日?来週の?」 ジャー!舗装されてない砂利道を勢いよく下る。がたんと自転車が揺れる。 ビーはなんでぼくにしがみつきもしないのに、荷台から落ちないんだろう。 「うん、だから、なぁ、なんかくれよ」 「いいよ。何がいい?」 ぎゅ、とシャツを握る手に...
  • 5-149
    会場まで行ったのにキャンセルかよ! 鳴らない電話をずっと待っている。 寒空の中、待ち合わせの10分前にはこの場所に着いていた。冷たくなった手が温もり を求めてガタガタと震えている。タメ息と共に吐き出した息は真っ白で、涙が出そうになった。 俺がこの場所に着いてから、もう2時間が経過している。いい加減帰りたくなってきた。 「早く来いよ・・・待っててやってんだぞ・・・」 愚痴を零しながら携帯電話を睨む。時間は無常にも俺だけを置き去りにしてどんどん 進んでいった。人の洪水が、目に痛い。 誘ったのはあいつの方からだった。何かと忙しいあいつの仕事が休みだというこの貴 重な日に、俺に二枚のチケットを見せながら映画に行こうと言って来た。三週間ぶり のデート。俺がその甘美な誘惑に勝てる訳が無かった。俺は主人に尻尾を振る子犬の ように喜びを露にしながら、貴重な約束をしっかり...
  • 1-149
    洋菓子職人×和菓子職人 フランスで厳しい修行を積んだ気鋭の新進パティシエ 今やカリスマ菓子職人、テレビや雑誌の取材も引きも切らない だから、一度テレビで自分の引き立て役のように出演した、 中年の和菓子屋主人のことなど最初は軽蔑していた しかし、偶然付き合いを重ねるうち、なぜか心にその男のことがひっかかっていく 頂点を目指すわけでもなく、ただ淡々と季節の菓子を作り続けるだけ 茶道の名門の茶会でも目指せばいいのに、ちゃらいお茶教室の注文を受けて 今時の女のコが和菓子の美味しさに目覚めるのがいい気分だ、とか言いやがる そんな男の作る和菓子が、しかし、ホントに美味いのだ イライラする  どうしてだよ  この程度の男が ある日、雑誌の取材を逃げ、奴の仕事場の隅っこで茶なんかすすっていた時、 餡を煮ていた奴が、いきなり真剣な表情を作り、しかし退屈な日常会話でもするよ...
  • 2-149
    サラリーマン×宅配業者  バイクを社員通用口の近くに停めると、ヘルメットを脱ぎ、手櫛で髪を整えて、とりあ えずブルゾンの埃など払ってみる。まあ、それでどうなるという訳でもないが、儀式的な もので。  キーをポケットに納めて、深呼吸をする。何度も通ったのに緊張するのは何故だろう。  ……まあ、理由など分かり切った事だが。  ガードマンに用件を告げて屋内へ。ブーツの踵が立てる音が耳につく。心なし足を速め エレベーターのボタンを押した。  もうすぐ、彼に会える。それだけで心臓がどかどか音を立てて疾走する。けれどこの 落ち着かない気分は嫌いじゃない、うん、むしろ、好きかな。  都内某オフィス街。ありがちなビルのありがちな複合テナントの一角に、俺の目指す 場所はある。  エレベーターが目的の階に停止する。かすかな音を立ててドアが開くと...
  • 9-149
    オークション 『・・・・・・・・・・・・・・・  お近くでしたら手渡しも可能です。 それではご連絡お待ちしています。  000-0000 ○○県××市△△町1-1  ☆☆ユウジ』 送信クリックしてから、しまったと思った。 あるはずもない出会いを期待したりして、つい手渡し可能としたことを後悔した。 相手は還暦のジィさんかも、いやヤーサンかもしれないのに。 ヤバい!どうしよう…。 コンビニバイトもさすがに深夜のこの時間は暇だ。 「ケイさん、手渡しってしたことあります?」 「いやないよ。面倒だしな」 「俺昨日落札されたんだけど、間違って手渡し可能ってメールしちゃったんすよ。 まだ返事はこないんだけど…やっぱそんなこと書くんじゃなかったな」 「大丈夫だろ。相手も郵送希望って言ってくるさ、普通。 万一手渡しって言われたらちょちょっと渡してくりゃ...
  • 4-149
    俺ダメなんだよな~。 「俺だめなんだよな~……、こういうの」 情けない顔で俺は呟いた。目と鼻から塩辛い物体が零れおちる。 視線の先はTVアニメ。丁度いま、幼い少年が教会で息を引き取った所だった。 【パララッシュ……もうボクは疲れたよ……】 そうして天使が少年を連れてゆく。愛猫と共に、幸せそうに――― 「ううっ、もう駄目。目ェ開けて見てらんねぇ~~」 「………」 オレがチーンと鼻水を咬む様子を、悪友の男はじーっと見ていた。 無表情なのが怖ぇ。でもこいつはいつもこんな感じだ。 「なんだよ、お前なんでそんな冷静で見てられんだよ~これ見て泣かない男は居ねぇぜ?」 うわ なんかチョー鼻声。なさけねーなー。 ってか眺めてねーで何か言えよ。一人泣いてる俺が非常に気まずいだろ…… 「……俺、だめなんだよな……」 ぽつり、とそいつが俺の口真似をして言った。 ...
  • 14-149
    食事当番 「おまえ食事当番やる気ないの?」 酢豚とカレーと水菜サラダと豚汁が並んだテーブルを見ながら恋人が言う。 「今日だって一日家にいたんだろ?」 俺は売れない役者をしている。 同じ劇団で知り合った恋人は早々に自分に見切りつけてサラリーマンになった。 金がない俺を見かねて、同棲を提案してくれたのは三ヶ月前。 最初の一ヶ月は新婚生活、二ヶ月目はお互いの粗が見えてきて、今は譲歩ラインをさぐっている状態だ。 「百歩譲ってカレーと水菜と豚汁はいいけど、なんでそこに酢豚なの」 「酢豚が好きだって言ってたじゃん」 「好きだからってコレはないだろ」 「じゃあいいよ。酢豚は食べなくて。そしたら百歩譲ってくれるんだろ」 今キレてテーブルをひっくりかえしたら気持ちいいだろうななどと思いながら、 文句をなんとか押さえ込む。 好きだって言ってたから作ったのに。出来たてじゃない...
  • 16-169
    サボテン 春の暖かい日差しがいっぱいの、俺が住むボロアパートのベランダ。 ここのアパートのベランダは隣二部屋ずつで繋がっていて、 俺の部屋は、今年から一緒に上京した幼馴染の蒼の部屋の隣だった。 蒼くん、一緒の大学に行くのならお隣に住んでくれないかしら、ってうちの親が蒼を説得したのだ。 なんでかわかんないけど。 そんな共用のベランダに、あるものを置こうとしていた俺の背中に、鋭い声が突き刺さった。 「おいてめえ、共用のベランダに何置いてんだ」 蒼の声はいつもトゲトゲしている。俺と話すときは特に。いつもバカって言うし。 あーあしかもこの声は怒ってるな。 「え、えっとね、サボテンだよ~ジャーン!」 蒼の方を振り返りながら変なポーズでサボテンを掲げる。あ、さらに怒った。 「誰が育てんだよ」 「俺ががんばる」 「無理だろーが!いつも放り出してあとは俺がやってやってんだ...
  • 22-149
    あなたとは違うんです! 起:「なぜ僕に構うんですか、いい加減鬱陶しいんですが――寂しそう?     ……僕はあなたとは違うんです! 自分の価値観だけで、変な哀れみを持たれるのは不快です」 承:「僕の歩むべき道は既に決まっている。自分の思うままに生きられる、あなたとは違うんです。    ――寄り道? いえ、そういう意味で言ったんじゃ……まあ、それもいいですね。あなたと過ごす時間は嫌いじゃありませんから」 転:「確かに僕もあなたが好きですよ、でも僕の『好き』はあなたとは違うんです!     これ以上、こんな不純な感情のままで、あなたの真っ直ぐな友情に応えられる気がしないんです!」 結:「僕はどうしたって、育ちも価値観もあなたとは違うんです。それでも、お互い違うままで、こうして同じ気持ちで共にいられる    ――そのことが、すごく不思議で、とても嬉しいん...
  • 18-149
    寺、教会、神社の息子で三すくみ 「巫女服着ろよ。そんでそのままヤろう」 和装の青年はうんざりしたように竹箒の柄を振り上げると、少年の頭へ振り下ろした。 「仮にも寺の次代なら言葉を慎みなさい」 「比叡山が男色の総本山って知ってるだろ、お前。俺は歴史を受け継いでだな…」 「受け継いだ時点で貴方が末代です。歴史も何もあったものですか」 ぴしゃりと言い捨てると、やいのやいの言っている少年を微笑ましそうに見つめる金髪の 青年を見遣った。 金髪の青年はその視線に気づくと、ひらひらと手を振って寄越す。 咄嗟に振り返そうとしてしまい、慌てて竹箒を握り締めた。 「主は仰いました。”隣人を愛せよ”」 金髪の青年は、騒がしい少年をねっとりと愛おしそうに見つめる。 少年はうざったそうに近寄る金髪の青年を押し退けた。 「隣人って俺らただなんつーか...
  • 20-149
    もうどーでもいい もうどーでもいい、と大の字に寝っころがった。 竹下は困った顔をして、「お、おい……俺は、そんなつもり、じゃ」とモゴモゴ言った。 「そんなつもりなんでしょ? もうわかったからさー、1回だけいいって言ってんの」 俺は意地悪くせせら笑った。 竹下のことは嫌いじゃないが、ウジウジとまわりくどいのにたまにイライラさせられる。 もともと竹下が言い出したんじゃないか、俺のことが好きだって。 でも見てるだけでいいから、このまま友達でいさせてって。 わかった、と俺は答えた。正直すごく驚いていたし思いも寄らなかったし、 なにより恋愛感情とか隠しそうなキャラだと思っていたから、男らしいじゃんとちょっと見直しさえした。 ところがだ、その日からジットリ熱視線攻撃がすごい。 講義もそうでない時間もまとわりつくって感じで、そんで話すことが 「藤井は女の子とつきあったこと...
  • 13-149
    ヤリチン男にお仕置き 部屋に入るなり、佐野はいきなり俺を突き飛ばした。 「ちょっ……! 何すんだよお前!?」 不意を突かれて床に倒れ込む俺の上体を、大きな手が押さえ付けてくる。 痛みに顔をしかめる俺を、佐野は無表情に見下ろした。 「お仕置きだ」 「はぁ?」 事態が飲み込めず、俺は十年来の親友をまじまじと見上げた。 お仕置き、という言葉が何故こいつの口から出てくるのか。 しかも俺にはそこまで悪いことをした覚えもなく。 「お前がヤリまくって捨てた女達の代わりに、俺がお仕置きするんだよ」 こいつに不似合いな乱暴な言葉。吐き捨てるような口調。 今まで見た事もない佐野の姿に、不安が沸き上がる。 「な、何で? だって俺の女好きなんて今に始まったことじゃないし――」 「お前、相手の本当の気持ち分かってる? 口には出さないけど、 どれだけお前のこと好きなのかって……分か...
  • 25-149
    弟に依存する兄と、依存されていることに気が付かない弟 いつも通りの夕飯を終えて2階へ上がっていく弟の背中に、僕はいつも通りに声をかけた。 「春也、宿題たくさん出たんだって?兄ちゃんが手伝ってやろうか」 じりじりとした気持ちの揺らぎが声へ現れないよう、頭痛がしそうなほど細心の注意を払った。 弟の答えもいつもと同じ。 「なんでだよ。自分でやるからいいよ」 「そうか、わからないところがあったら言えよ」 僕の答えもいつもと同じ。 「ありがと。おやすみ」 「ああ、おやすみ」 カチャリと軽い金属音を残して閉まった部屋の扉を、僕はいつまでも眺めていた。 こんなことを考えている間にそれほどの時間が経ったのだろうか。はっきりとした感覚がない。 自分の立ち位置すら不明瞭に感じる。 それは2年前から徐々に、僕を蝕んでいた。 15歳の誕生日を目前に控えた春也が、深夜に僕の...
  • 27-149
    おしゃべり×無口 そういえばさ、隣のクラスの矢原に告られたって本当かよ? 見てたとかじゃない!俺、そんな後ろ暗いこと絶対してない! 噂でこっそり聞いたんだって、ほら三竹の彼女って矢原と仲良いだろ。 それに矢原って結構人気高いらしいから疎い俺の耳にも入ってきただけだって。 鉄弥、前に好きな子いるって言ってたし振ったんだろうとは思ったけどさ。 誤解のないように言うけど告ったって噂はあるけど振ったとかは聞いてない。 けど鉄弥の好きな子って明るくて元気でお節介な奴なんだろ? 矢原、去年同じクラスだったけど、すげー物静かでお嬢様ってタイプだから絶対違うじゃん。 ていうか、そうだ。夏までに告るんじゃなかったっけ? 脈なさそうとか言ってたけどさ、元気出せよ。 お前って爽やか系のイケメンだし、ちょっとクールって言うか不器用なとこあるけど頭すげー良いし。 ほら、ギャップっていう...
  • 15-149
    脇役のジレンマ 「いい加減にして下さい」 小さなオフィスに苛立ちを含む男の声が響く。 「先輩が早く進めてくれないと僕の仕事まで遅れます。」 「だって…最近森本が口聞いてくれなくて仕事どころじゃ…」 「仕事なめてるんですか?勤務時間は勤務する時間であってそんな隅っこでめそめそする時間じゃないんですが。」 「うわぁ…社会人一年生に怒られた…」 古びたデスクに突っ伏したまま情けない声を出す男を見て、南はわざとらしく溜息をつく。 「で、何なんですか、森本先輩が口を聞いてくれない原因は」 「え?あぁ、こないだ森本といる時さ、偶然前の彼女に会って…」 へぇ、と関心なさそうな返事をする南にこいつは本当に聞く気があるんだろうかと思う。 「……でさ、その彼女と昔話でしばらく盛り上がって。なんかそのあたりから森本機嫌悪くなって、それ以来喋ってくれなくなった。」 ...
  • 28-149
    輪廻転生 「前世で俺とお前は夫婦だった」  克利が真顔でいうので、飲んでたビールを吹きだした。 「……なにそれ、前世とか信じてるの。霊感ありだったっけ、克利」  思わずからかい口調になったら、克利は口をとがらせて 「夢で見たんだよ、お前が俺の嫁さんでさ、どっかの外国でいっしょに暮らしてるの」 「どっかってどこだよ、なにそれ、全然なんにも具体的じゃないのな。どんな妄想だよ」  こいつさっきから結構な酔っぱらいだ。相手にしてられない。 「だって、夢だからよくわからないんだよ」 「じゃあ、ヨーロッパ? アメリカ? アジア? 時代は?」 「……さあ?」 「お前、もっと設定練っておけよ」 「だから、本当にわからないんだって」  克利はどこまでも引っ張るつもりらしかった。なんだかちょっと、俺はイライラしてきた。 「夫婦って、なんで俺が女なの...
  • 10-149
    知性派×肉体派 「というわけでだ。同性愛者という種類の人間は近年ようやく市民権を認められつつあるとはいえ、まだまだ奇異の目で 見られたり、不遇な立場を強いられることも多い。だがな、特定の天敵の存在しない人類は実際増えすぎているとは 思わないか?天敵のいない人類を淘汰するために、定期的に世界的な規模で死亡率の高い病気が流行したり戦争が 発生するという説だってあるくらいだ。だとしたら種の保存を真っ向否定する我々同性愛者という存在は、地球に優しい、 実はものすごーく重要な宿命を背負った新人類だっていう結論に結びつかないか?」 息もつかずそこまでを一気に喋り、直太郎は既に冷めてしまったコーヒーでようやく喉を潤した。 「あのさぁ」 こちらはすでに飲み乾してしまって、細かな氷しか残っていないグラスをしゃぐしゃぐとストローでつつきながら、祐真は 呆れたように頬杖をついた。 「そ...
  • 24-149
    草食獣×肉食獣 あぁ腹減ったなぁ どっかに旨そうな肉おちてねぇかなぁ 群れるのは嫌いだからおこぼれもねぇしなぁ おっ?岩の上に旨そうなうさぎ発見! 後ろから忍び足で… 「なにか用です?」 「へっ?」 いでえええええええええええ! 落ちた!岩から落ちたあああ! くそぉあのうさぎ! 何がなにか用です?だよ! 狐の俺がうさぎに用なんて『食う』以外ねぇだろーが! 足挫いたし、まじついてねぇ あ?何見てんだよ、食うぞ 「足、大丈夫ですか?」 「うるせぇ食うぞ」 「あぁあちこち傷だらけですね」 「触るな食うぞ」 「お仲間は近くにいないのですか?」 「俺は一匹狼なんだよ」 「狐ですよね?」 「うるせぇ」 つか近ぇよ、しかも体中ベタベタ触るな! 「てめっ何してやがる!」 「手当てですが?」 「はぁ?!食われてぇのか!」 「そうですねぇ…出来れば食...
  • 17-149
    いいことあるぞ 失恋した。それも自業自得で。 クラスメイトの女子にあいつとの橋渡しを頼まれて、断る事も出来ずに放課後の屋上にあいつを呼び出した。 のこのことやってきたあいつに彼女を紹介して、あいつの反応を見るのが怖くてそのまま屋上から逃げ出した。 息が苦しい。目の奥が熱い。心臓がいたい。 このまま、ばらばらになってしまいそうだ。 俺の方が彼女よりもずっと前からあいつだけを見てたのに。 俺の方があいつの事を好きなのに。 でも、男の俺じゃ駄目なことくらい嫌ってほどわかってる。 「…い、おいッ!!カナメ!」 「…っ?!」 後ろからぐいっと腕を引かれ、そのままの勢いで腕の中に倒れこむ。 「ひ、ろ?」 「何で、逃げてんだよ」 「…あの子は?」 もう告白は終わったんだろうか。ヒロは、あの子になんて答えたんだろうか。 「…お前が俺に用があったんじゃない...
  • 11-149
    たまには素直になってみた 「抱いて」 「え?」 「せっくすしよう」 寝転がってポテチの袋を抱えてテレビに夢中な君を、ぼーっと見てたら ポテチの油で光る指先を丁寧に一本一本口で舐めてから(あーあ、ティッシュそこにあるのに) いきなりこっちを向いてそう言われた。 「え、な、抱いてってやっぱそういうこと?まだ9時だけどって、え?」 僕はばかみたいに口ごもって、君は呆れた顔をした。 「なに焦ってんの、いつもやってるじゃん」 そりゃいつも……だけど、そんなに綺麗な目で見つめられると君の口から発せられた「せっくす」 という言葉が信じられないみたいな変な気分。それに、しよう、と自分から言い出したわりに 君は僕を見つめるだけでポテチの袋も抱えたまま。 「しないの?」 「する」 そこだけは即答して、僕は違和感と一緒にぎこちなく君の隣に寝てそっと腰に手をまわす。 習慣で目...
  • 19-149
    俺の方が好きだよ! セフレだったはずだ。 次の恋までの繋ぎ、俺も、向こうも。それがいつからこうなったんだろう。 体をつなげた後の、なんとなく別れがたい気持ち。 ぐずぐずとベッドの上からバスルームへ、体を拭いて着替え、キッチンへ。 今までなら、奴はシャワーを浴びたら、脱ぎ捨てた服をまた身に付け、「じゃあな」と言ってドアの向こうへ消えた。 今はキッチンで俺と一緒に、食事の用意をしている。 和食党の奴に合わせて、米を炊いて、魚を焼き、大根のみそ汁を作る。 奴は時々俺の背後から抱きつき、顎を肩に乗せてただ黙って俺の手を覗き込んだりする。 これではまるで、恋人同士のようだ。俺は少なからず動揺する。 好きという気持ちがあるのかどうかすら覚束ないのに、背中の温かみに胸が締め付けられるような気がする。 「案外手つきいいな」 奴が感心したように、耳元で囁...
  • 4-149-1
    俺ダメなんだよな~。 付き合って、もう半年になる。 けれど指一本触れてくれないあの人に、僕はいつもの仏頂面で何度目か分からない質問をする。 「どうして? 僕、……そんなに魅力ないですか?」 「別に、そんなわけじゃねぇっての」 そう言って困ったように笑う咥え煙草の彼が苛立つくらいかっこよくて、僕はまた泣きそうになる。 いつもこうだ。年上だからって兄貴ぶって、僕の心をちくちくと痛ませる。 抱いてくれないのだって、どうせ僕がまだガキだからなんだろう。 「煙草」「ん?」 「一本、頂戴」 シャツの胸ポケットに入った箱を無理やり取り出そうとして、その手を押し留められる。 僕とは百八十度違う大人の力に押さえ込まれて、身動きできなくなってしまう。 「だーめ。まだ十八なんだから、身体大切にしろ」 代わりにこれ、と手渡された小袋に入ったキャンデーを、僕はつい床に投げ捨ててしま...
  • 5-149-1
    会場まで行ったのにキャンセルかよ! 今日はA男の誕生日パーティー。 誕生日プレゼントは、以前好きだといっていたブランドの物をプレゼントしようかとも思ったが バイトだけで身を立てている俺には高すぎたために花束。 わさわさと楽しそうにゆれる俺と花束を、町行く人々はほほえましげに見送った。 到着したのは、人気者のA男に似合いのオシャレなバー。 とは行ってもチープさを売りにしているバーなのでご大層な高級感はない。 さて。どう入っていこうか。こういうのは印象が大事なのだ。 すでに盛り上がっていると、コッソリ入ったのでは気づかれなくて主役に最後まで触れないことがある。 俺はニヤリと笑い、扉に激突していった。 「イィヤッホゥオォォォォォォォォ!!! 盛り上がってるかてめえら!!!」 それは文字通り、激突する結果となった。 したたかに打ち付けた体の前半分が...
  • 16-109
    秘密を告白したあとで お慕いしていました。 貴方が戦火の中の村から俺を拾って下さった時から。 「おまえはもう私の子なのだから、下を向く必要などないのだ」と微笑んで下さった時から。 拾われてすぐに教え込まれた学問も剣術も、学ぶ喜びが無かったわけではありません。 ですが、貴方の喜ぶ顔を見たくて、大きな手で頭を撫でてほしくて、 私のことを誇らしげに語る貴方の姿を見たくて努力していたことを、貴方は知っていたでしょうか。 下賤の子だという侮蔑と嘲笑、暴力には、絶望を感じたことはありませんでした。 貴方がいたから。貴方さえそばにいて下されば、他のことなどどうでも良かったのです。 私のすべては貴方のためにありました。 あの日、国の領土を広げるため決断した結婚に、貴方は苦渋の色を浮かべました。 「おまえには愛する人と一緒になって欲しい」と静かに私の目を見つ...
  • 7-149-1
    今年の紫陽花は何故か青い 死にネタ注意 ―――――――――――――――――――――――― 「おお、綺麗に晴れたなあ!」 若旦那が太陽と一緒に笑いながら庭へ出てきた。 しばらく雨続きで出られなかったから嬉しいのだろう。 下駄をころころ鳴らし、機嫌よく庭の植木を見て廻る。 「うん、皆元気そうだ。お前の様な腕のいい庭師を雇えて俺は幸せもんだなあ。  で、これはなんてえ木だい? みかんか? 柿か?」 「みかんも柿もこの庭には植わってませんよ…」 「何ぞ実がなるモンは無いのかい。楽しみがないよ楽しみが」 「大旦那が虫が寄るからと言って嫌ってらっしゃいますからね。さ、薬を撒きますよ」 ひゃいひゃいと子どもの様にはしゃぎたて、若旦那は口元を押さえて逃げ出す。 少しユルいとは思うが、こんなに喜んでくれるならば庭師冥利に尽きるというものだ。 「...
  • 2-149-1
    サラリーマン×宅配業者 「済まないけど、それを運び終えたらもう一度来てもらえるかな?」 その日彼はそう言った。 こんな時間に? 今頼まれた分を届け終わったらもう一度? 壁に掛かった時計が示しているのは午後10時をちょっと過ぎた時刻。 配達するのは1件だけで、 それに科せられたタイムリミットの午後11時30分までにはなんとか間に合うが、 それを運んだ後ここへ戻ってくるとなると、 どんなに急いでも往復2時間は掛かるはず。 「実はもう1件あるんだけど、まだ最終チェックが終わってなくて…」 と彼は苦笑しながら机の上の書類を指先でトントンと叩いた。 「君が行って戻ってくるまでの間にチェックを済ませて準備しておくから、  それを先に運んでもらえると助かるんだけど…」 「わかりました、ではそちらをお預かりします」 と封筒を受け取って一礼し、俺はバイクを置いてある駐車場...
  • 16-179
    昨日 昨日はたった一度きり そしてそれは取り返しがつかない1日だったり 何もなかったように忘れさられる1日だったり 昨日が終われば今日になり 今日は明日には昨日になる もう戻れない、もう戻らない昨日 けれど忘れてはいけない 昨日があるから今があり そしてそれは未来へと続いて行く それは、 ささやかな光 ささやかな幸福 ささやかな記憶 ささやかな痛み そんな昨日を、僕は愛する 昨日
  • 16-139
    つ まとめBBSのチラシの裏 ソムリエスレのコピペ マンション一階の郵便受けを覗いたら見慣れたDMに混ざってチラシが入っていた。 近所のスーパーの安売りチラシ。 黄色いざらざらする紙は片面刷りで、裏には鉛筆で文字が書かれている。 【ゆーきくんがだいすきです。  おおきくなったらおれのおよめさんになってください。】 俺の名前はユウキだけれど平仮名の手紙を貰う覚えはない。 差出人の名を探したけれど、どこにも書かれてはいなかった。 「ゆーきくん、か……」 まだ俺が高校生だったとき、俺の名を優しく呼んでくれた人がいた。 近所に住んでいた松本さんを俺は愛していた。 松本さんは奥さんを早くに亡くされて、まだ二つの息子さん、あきらくんと二人暮らしだった。 その時の俺はとにかく夢中で松本さん以外は何も目に入らなかった。 だから近所や親が俺と松本さんの仲を疑ってるのに気づけな...
  • 16-189
    丁寧語天然ぼけ優等生×幼なじみで口の悪い不良だけど常識人 ゴトン。ザクッ。何の音だ! すっげー不安。見ててはらはらする。 「おい、なんだその包丁の握り方は」 とうとう我慢できなくなって、まな板に向かう背中に声を掛けた。え?とピンクのエプロンをつけた健也が振り向いて、 包丁の切っ先がひゅっと目の前をかすめる。危なえな! 「そんな持ち方で大根切れんのかお前はよ」 「嫌だなあ、剛くんは黙って待っててくださいよ。今日は僕が家事全部するって約束じゃないですか」 さわやかな笑み。俺は昔から――幼稚園の砂場にいたときからルームシェアを始めた今までずっと、 この笑顔には勝てない。 「さっき洗濯もしましたよ。それから今お風呂にお湯ためてます。ご飯食べたら、入ってくださいね」 「お、おう」 はっきり言おう。健也には生活能力が極端に不足している。いわゆる天然ちゃんだ。 小学校の思...
  • 16-119
    愛してはいけない人 「ご結婚、決まったそうですね。おめでとうございます」 仕事終わりの合図であるコーヒーに砂糖を2杯溶かし、社長室のシンプルな椅子に座るまだ年若い幼馴染に差し出す。 「それ、本気で言ってるのか」 いつもより低い声がかすかに震えているのが分かる。 「ええ、秘書として社長の幸せを喜ばしく思っていますよ」 「そうじゃない!」 縋るような目で見上げられる。 若くして父親の会社を継ぎ、毎日それなりの人数を動かしている男のものとは到底思えない情けない表情。 「好きだって、言っただろう」 「何のことです?」 「俺がずっと、学生の頃からお前が好きだと言ったとき、お前も俺が好きだと言ったはずだ」 「はい、言いましたね」 じゃあなんで、というような表情で僕を見上げる。なんて情けない。 そうか、僕の前では貴方の弱い部分も全部見せてください、なんてくだらない台詞を...
  • 16-199
    純情 「…ふざけんなよお前!」 「ビックリした!ちょ、どうしたんスか先輩、急に」 「どうしたじゃねぇ!何?彼女できたからだぁ?!」 「そうなんスよ、実に7ヶ月ぶりの女なんスよぉこれがw」 「そんなこと聞いてねぇよ!てか彼女と遊んでたから練習無断欠席だと!?しかも1週間も!?そんなバカみたいな嘘で許されると思ってんのか?!」 「ちょっと落ち着いてくださいよ!それに嘘じゃないっスよ!…ほら、これ、彼女の写メです。なかなかっしょ?」 「…っ、どうでもいいそんなの!お前な!お前の勝手で部員全員に迷惑掛けたってこと自覚してんのか?!それなりの覚悟はあるんだろうな!?」 「…」 「なにニヤニヤしてんだ気持ち悪ぃな!黙ってないで何とか言えよ!」 「…じゃあ、先輩」 「なんだよ」 「今の先輩ってさぁ…『部の先輩』として『後輩が不甲斐ない』から怒ってるんじゃなくて実は『想い人』...
  • 16-159
    女顔がコンプレックスな攻め 一年前、職場に新人が入ってきた。 大学出たてほやほや。俺の初めての後輩だ。 「──今はまだ未熟ですが、早く成長して有能な社員と呼ばれるように頑張ります!」 意欲的な、でも緊張で少々たどたどしい、誠実で初々しい挨拶に 好感を持たなかった奴はいなかったと思う。 教育係は別のベテランがついたが、俺もできるだけこの後輩、矢野に目をかけた。 簡単な書類の書き方でも教えれば、クリクリお目々を輝かせて 「ありがとうございます、石田さん!」 なんてニッコリ微笑む。 壁に当たったのか何やら真剣に考え込む姿には、アドバイスの一つも与えずにはいられない。 ああそうか。ある日急に思い当たった。 こいつ、顔が可愛いのだ。 間近に見ればヒゲもある、骨格のやや尖る、粗い肌を持つ成人男性であることに 間違いないのだが、遠目で見ると一瞬女の子に見える……気のせい...
  • 7-149-2
    今年の紫陽花は何故か青い 「これ、一緒の買おうよ」 そう言われたのは確か、大学二年の夏だったと思う。 二人で出掛けた神社の縁日で恵介にそう誘われて買った指輪は、つけるのが恥ずかしいほどチャチな作りだった。 どう贔屓目に見ても子供の玩具にしか見えないそれは、けれど当時の俺たちにとって確かに宝物だった。 安っぽく、下品な輝き方をする、ギラギラしたアルミの指輪。 それを人気のない陰で、結婚指輪か何かのような慎重さで互いの指に嵌めあったのを覚えている。 頬を真っ赤に染める恵介にその場で口付けて、「ずっと一緒にいような」と囁く。 それにこくんと首を頷かせる彼をきつく抱きしめて、もう一度、今度は深いキスをした。 ――大抵のカップルは、自分達に終わりがあるなんて予想していない。 俺たちも当然その例に漏れず、この指輪を外す日が来るなんて事は夢にも思っていなかった。 ...
  • 5-149-2
    会場まで行ったのにキャンセルかよ! 「会場まで行ったのにキャンセルかよ!俺、すげー虚しくねえ?」 『ごめん!本当にごめん!!朝、急にクレーム入っちゃって…午前中に処理出来ると思ったんだけど長引いて。本当にごめん!!』 「あー嘘、嘘。だーいじょうぶだって。映画なんて一人でも見れるしさ。こっちは気にしなくていいから、お前はちゃんと仕事しろ。給料分きっちり働いてこいや」 『ごめん、本当にごめんな、ヒロ。今度絶対埋め合わせするから』 「おう。たっかいもの奢らせてやるから覚悟しとけよー?」 『うん。何でも喜んで奢るよ。……ヒロ、好きだからね』 「……俺も好きだよ、ユキ」 携帯の通話を切ると、つい溜め息を吐いてしまったた。 一体何度目だろう、ユキの仕事でデートがなくなるのは。 目の前にあるのは小さな映画館。 お互い学生の頃は二人でよく来ていたけれど、今年度に入って...
  • 7-149-3
    今年の紫陽花は何故か青い 今年の初めに日本へやって来たばかりの、金髪の友人。 彼は梅雨の湿気にやられてか、ここのところ随分と気が沈んでいるように見えた。 ちょっとでも気晴らしになればと、やってきたのは紫陽花で有名な寺…は混んでいるので、 その近くにある、あまり知られていない紫陽花園。 平日の昼前だから僕たちの他に人影はなかった。 こじんまりとした敷地内に、所狭しと咲く紫陽花。 小雨がぱらつき出したが、傘を差すほどではないと思った。 雨に濡れて、花はしっとりと美しさを増す。 僕の少し前を歩く友人は、園の入り口でその光景を見渡し、すぅっと大きく息を吸い込んだ。 そして小さく呟く。 「青い…」 ああ、紫陽花の色に、驚いているのか。 確かに、ちょうど盛りの紫陽花は、インクを流し込んだように深い青色をしていた。 「日本は雨が多いから、紫陽花は青が一番濃くなるのが普通...
  • 21-149-1
     *9×*8 「君はどうしていつも僕に尽くしてくれるんだい?何の得もないのに」 「か、勘違いすんなよな!俺は別にお前の為にしてるんじゃない。単にMなだけだ!」 「でも、初めてだったり、ちょっと不安そうにしてたりするじゃないか」 「プレイの一環だ。ちゃんと女王様キャラの時もある」 「僕の為にいつも踏み台になってくれる君を見るたびに、僕は…」 「やめろ!お前は自分の欲望を晒け出しながら、俺を踏めばいいんだ!」 「君はルールの中でしか自分を解放出来ないんだね…わかったよ」 「ふん、わかればいいんだ。さあ、さっさと踏め。いつものように欲望をぶちまけろ」 「*9×*8」 「なっ…」 「これならいいんだろう?」 「お前…何考えて…」 「今度こそ、君は僕のものだ」 最後の約束
  • 22-149-1
    硬貨で六角関係 僕の名前は若木一(わかぎ・いち)といいます。このたび日本硬貨に新入社員としてやって参りました いきなりこんなことを言うのもどうかと思いますが言います。好きな先輩が居ます。一年先輩の稲穂計五(いなほ・けいご)先輩です 実家は林業だそうです。なんか金色にピカピカしているようなオーラの見える素敵さです 僕にはライバルが居ます。常盤十郎(ときわ・じゅうろう)先輩です。京都出身。実家は平等院鳳凰堂の近くだそうです もの凄いチャラ男です。日焼けサロン通いで冬でも銅線のような肌の色です。もちろん髪も真っ茶っ茶です どうやらこの常盤のクソが稲穂先輩に手を出しているのです。稲穂先輩がアンアン言わされているみたいなんです ひどいことに常盤のボケは二股をかけています。その二股のもう一人は五十嵐菊(いがらし・きく)先輩です 五十嵐先輩はとても気が弱い人のようです。本命さんが居...
  • 19-149-1
    俺の方が好きだよ! 「あ、猫!」  俺の隣を歩いていたツレが、突然足を止めて声を上げた。  振り返ると、道の隅に丸くなってまどろむキジトラの猫。  ツレは猫から1m程離れたところにしゃがみこむと、猫に向かって手を伸ばし、ちちち、と舌を鳴らした。  それに気付いた猫が目を開け、億劫そうにツレを見上げる。 「エサもねぇのに、野良猫が寄ってくるわけ……」  言いかけた俺の言葉が、途中で切れた。  のっそりと起き上がった猫がツレに歩み寄り、ふんふんと手の匂いを嗅いだ後、その掌に顔を擦り寄せる。 「うわー、かわいい。人に慣れてるんだね」  満面の笑みを浮かべるツレと、その手に撫でられて満足そうに目を閉じている猫を見て、ただ呆然。  いやいやいや、ねぇから。  学校の行き帰りに何度も見かけたその猫を、俺が何回撫でようとしてシカトこかれたと思ってんだよ。  最後の手段と...
  • 7-149-4
    今年の紫陽花は何故か青い 瀟洒な家々の建ち並ぶ住宅街の小道を折れると、いきなり鮮やかな蒼が目に飛び込んで来た。まるで海の色をそのまま映したかのような鮮やかな蒼。 小さな庭先に丸い球を幾つも並べて咲き誇っている紫陽花が皆、それはそれは見事な蒼に色付いていた。 彰の蒼い紫陽花だ。 彰と出会ったのは20年程前の事。 彰は俺たちの海辺の小学校にやって来た少し内気な転校生だった。 海の無い地方で育ったという彰が海を見たのは、それが初めての事だったらしく、まだ海水浴には相応しくない季節だったが、彰は転校してすぐに仲良くなった俺にせがんで海岸に行き何時間も飽きずに目を輝かせて海を見ていた。 海があるのが当然の事として育った俺にはそれが大層不思議な事で、思えばその時から俺は彰に惹かれていたのだろう。 俺はよく彰に付き合っては海辺に行って遊び、海を見詰める彰のキラキラと輝く笑顔...
  • 16-179-1
    昨日 昨日のことを思い出した。 村上と、夕方まで一緒にいた。 駅で別れる時間まで、駅ビルのでっかい本屋で心ゆくまで新刊漁ったり、専門書パラ見したりした。 本屋に入る前に公園で飲んだ暖かい缶コーヒーのおかげで、実にゆったりした気分で過ごした。 公園の桜はすっかり散ってしまっていたが、枝変わりなのか、 一枝だけ、もうまばらな花を残している木があって、 それが風に吹かれて最後の花びらを散らすのを、ベンチで見ながら飲んだ缶コーヒーだった。 村上が、 「まるで祝福の」 言ったと同時に、自分でも無意識の正拳突きが奴の腹に決まったっけ。 「さっき食べた天津飯がぁ……」 悶えた村上。これ見よがしに大盛りなんか食べたからだ、馬鹿。 あいつのアパート近くの中華料理屋は天津飯が美味いんだ。ラーメンは不味いけど。 俺の方は少々食欲不振だったから、嬉しそうに注文する村上にちょっとむ...
  • 12.5-149
    喧嘩友達 「誉れ高き勇者殿ともあろうお方が私如き一介の使用人にいちいちいちいちいちいちいちいち 突っかからないで頂きたいものですねえうっとおしい」 「普通の一介の使用人は魔王討伐に来た勇者を何度も何度も何度も何度も落とし穴に落とさねー んだよ!てか何だあのこの間の落とし穴は!中身ぎっしりナマコってどんな罰ゲームだコラ!」 「ああアレは某南の島に大量に生息するナマコを捕獲・飼育した『対侵入者撃退用自由落下式罠 325番:通称必殺ナマコ穴』と申しまして、落ちた相手の精神的ダメージに対してコストが 少なく皆様には中々の好評を博しております」 「皆様って誰だよ!っつーかそのネーミングセンスはどうなんだ!!」 「ちなみに彼の島では亡くなられた方がナマコになるという伝承がございまして、落ちた方には もれなく悪寒とラップ現象のオマケ付き」 「二重...
  • 16-179-2
    昨日 実は僕は超能力者でしてね、妙な時間に俺を呼び出したそいつは素っ頓狂な事を言い出した。 「といっても気づいたのは最近で、どうやらある『1日』を何度もループさせる力があるんみたいなんです」 じゃあお前は『今日』を何度も体験してたりするのか? 「その通り。かれこれ1週間は今日…というか僕にとっては、昨日であり一昨日でもありそのまた前の日でもあるというややこしい状態なんですが、4月20日が続いています」 ずっと同じことをやり続けているのか? 「仮説ですが、僕が今日という日にやり残した事を悔やむ思いから、こんな力が芽生えたのかと思いまして」 起きる時間、通る道、食事のメニュー、話相手などなど、とにかく片っ端から違う『今日』を試してみたのだと言う。 「試行錯誤した結果、やはりあなたしかいない、と思いまして」 確かに俺は明日から結構な期間海外研修に出る身だが、なんか俺に恨み...
  • 16-499-1
    次男 「ただいま」 がちゃり、と扉の音と一緒に聞こえた声で、一気に気分が落胆する。 俺の隣で本を読んでいた佐藤が、あれ、といってからすぐに本を置いて振り返る。 「お邪魔してます」 「あれ、佐藤。久しぶりだなぁ」 「そうですね。え、いつもこんな時間に帰ってきてましたっけ?」 「今日から中間テストなんだよ」 二人の会話を背中で聞きながら、心の中で舌打ちする。ああ、テストか。 俺と佐藤の高校ではテストは再来週なので、兄が早く帰ってくることなんて 忘れていた。なんでもいいから、早く、部屋を出て行け、と思う。 結局それからしばらく佐藤は兄と喋り続け、兄がこれから塾に行くから、というまで終わらなかった。 兄が部屋を出てすぐに、佐藤が俺の腹を裏手で軽くはたく。 「一言くらい喋りなよ」佐藤の顔は笑っていた。少し困っているようにも見えたが。 「うるせえよ」はたき返し...
  • 16-049-1
    夜桜 人文学部棟と教育学部棟を結ぶ道の両脇には桜が植えられていて、北国の遅い 春に合わせて四月半ばに満開を迎える。 道の途中に作られた小さな広場の横にはひときわ大きなソメイヨシノ があって、その広場がN大文化人類学ゼミの花見の定位置だ。 20年前、俺が文化人類学ゼミに入った頃にはもう、そこが定位置と言われていて、 俺が、院生になり、オーバードクターから助手になり助教授になって、退官した教授 の後釜として文化人類学ゼミを担当するようになった今までも、ずっと伝統を守って ここで花見をやっているのだ。 近所のスーパーの惣菜やら乾き物やらのつまみと、俺が資金を出して 銘柄指定で買ってこさせた俺好みの地酒5升と、水落の父親から今年も 送られてきた緑川純米吟醸と、軽い酒が好きなゼミ生達のための大量の ビールやらなにやらを広場の半分を占めるブルーシートの上に広げて、 花...
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