*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「16-889-1」で検索した結果

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  • 16-889-1
    来ないで だめだよ、と言って彼は笑った。 「どうして」 「まだ根を上げるには早すぎるんじゃない?もうちょっと頑張りなよ」 「俺は十分頑張った」 「まだ、まだだよ。君にはまだ、与えられた分が残っているだろう?」 そう軽い口調で俺を窘める目の前のこいつを、少しだけ睨みつける。 俺は今まで、精一杯この世の中で頑張ってきたはずだ。 俺の頑張りを俺の傍で見ていなかった奴に、何が分かる。 「あ、今ちょっと失礼なこと考えたでしょ」 「人の思考を読むな!」 「見てたに決まってるじゃない、そこら辺の草の陰から」 「な、うわ、お前そんな悪趣味な奴だったのか」 「別に、誰も彼もを覗き見してるわけじゃないって」 君だからだよ、 少しだけ目の前の男から身を離した俺との距離を詰めるように、 一歩こちらへと近づいたそいつは、俺の耳元でそう囁いた。 ...
  • 4-889-1
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「ちくしょー!!」 パソコンにかじりついていたKが、いきなり大きな叫び声を上げた。 夕食どきに近所迷惑な奴だ。とりあえず黙らせるか、そう思って振り返る。 だが、先にKの方がパソコンの前を離れて、泣きながら俺に抱きついてきた。 なんなんだ。そう思ってパソコンの画面に目を向けたけれど、 いい加減度が合わなくなってきている眼鏡では、 いくつかのウインドウが開かれているのがおぼろげに見える程度だ。 どうせもう外出しないからと、コンタクトを外してしまったのは失敗だったか。 仕方ない、まずは奴を落ち着かせよう。 「落ち着け。どうした」 「お、俺……ちくしょう……」 「いいから落ち着け。泣くな。そして説明しろ」 今度はどんなくだらない理由だ、と言いたかったがそれは呑み込んで...
  • 6-889-1
    握り返された手 お互いに嫌いだったはず。 相手は違う人だったけど、俺もあんたも長いこと片思いしてた。 その人を見る目や、気持ちが、手に取るようにわかった。 おんなじ、叶わない思いを持て余してた。 お互いの気持ちがわかる分、俺たちは近かった。 自分を見ているようで、あんたの事大嫌いだったんだ。 片思いの相手を諦めなきゃいけない時も、おんなじにやってきた。 気まぐれ、寂しさ、理由なんて何でも良かったんだけど、俺はあんたの手を握ってみた。 まさか、握り返されるなんて思ってもなかった。 いつのまにか近くにいる相手が大事になっちゃった所まで、おんなじなんて。 *8あいしてる
  • 4-889-2
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 書き込み完了!さぁて、次はどんな萌えリクが来るかな?と期待しながら 掲示板を閉じようとマウスを操作した瞬間、背後にとんでもなく冷ややか な風が吹いた。 全身が凍りつくのを感じながら後ろを振り返ると、いや振り返るまでも無 く、俺の顔の横には奴の顔があった。 「『 880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます』・・・・・・?」 「や、ややややっ山田!?」 「なにこれ、どういうこと?」 「なんだよ、ビックリすんじゃん。てっきり妖怪かなんかの類かと・・・」 「な、どういうこと?」 耳の近くで喋られるくすぐったい感覚に耐え切れず、俺は山本の顔を押し やった。山本は不満そうに眉を寄せ、睨みつけるように俺を見た。 「人が風呂、入ってる間に・・・」 「え?なに?」 山本が何...
  • 4-889
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「カメダ、ホントにグッジョブだよな~うま~」 カメダのかきピーを頬張りながらそう呟く俺の背中に、突然どさ りと何かが降って来た。 「いってぇ!何すんだよ!?」 床にうつぶせている俺の背中に、達哉のケツが乗っかっている。 「お前が掃除しないからだろ。何もしないんだったら座椅子 にでもなってろ。あー疲れた」 俺の幼馴染み・達哉は、異様な程の潔癖性だ。 大雑把でものぐさな俺とは全く正反対なのだが、だからこそ気 が合うのかもしれない。俺のアパートに遊びに来ると、あまり の散らかりように文句を言いつつも毎回掃除して帰って行く。 「またかきピーの袋溜めてる!!」 達哉は俺をにらみつけながら天板の上の大量の空き袋をゴミ 袋に放り込んだ。 ホントこいつ掃除好きなんだな… 俺の背中に腰掛けながらも、...
  • 16-889
    来ないで 君が、光る女性の唇を、かわいいねと褒めたから。 姉の口紅を塗ったのは、ほんの好奇心だったのに。 「―――来ないでッ!」 ドア越しに僕は怒鳴った。 こんな大声は久しく出していなくて、喉がヒリヒリと痛んだ。 「…どうした?」 僕のみっともなく掠れた声を聞いた彼が、心配そうに声を掛けてくる。 「君にだけは…見られたくないんだ…。」 噛み締めたピンクの唇はぬるりとすべって、人工的な味が惨めさと共に喉を流れた。 違うんだ。 僕が本当になりたかったのは。 こんな姿じゃなくて。 ドン!とドアを乱暴に叩く音にびくりとして、一瞬背が浮いた隙に彼はドアを開けた。 「!」 「お前、何――――…ッ?」 僕の顔を見た彼の口許がひきつる。 ああ、だから、君にだけは見られたくなかったのに。 だが彼は踵を返すこともなく、瞬きもでき...
  • 7-889-1
    もうちょっとだったのに ごめん、すみません、面目無い、と 思いつくままの言葉で謝り続ける攻めを、受けは煙草をふかしながら横目で見ている 謝られたって、お人好しにいいよ、気にしないでなんて この状況じゃ口が裂けても言えない 「…自信満々だったくせに」 汗で湿った髪をかきあげて、受けはわざと大きく煙りを吐き出しすと、 「あーもう!」 と唸るように言い、乱暴に煙草をもみ消した 攻めが悪い訳ではないと、分かっているけど この火照ったカラダをどうしてくれよう 「…もうちょっとでイケたのに」 ぶーぶー文句を言いつつ。 最中も最中、めちゃめちゃいい時に気の毒にも情けなく ぎっくり腰を発症させた攻めを病院に連れて行くかと、 受けはタクシーを呼ぶべく携帯を手にした もうちょっとだったのに
  • 10-889-1
    煙突のある風景 投下させてください。あと長くなってしまいました、すみません。 ______________________________ 僕の住んでいる町には巨大な煙突がある。 町のどこからでも見える、とても大きな煙突だ。 煙突の横には小さな家がちょこんと建っているのだが、空き家のようなので誰が 何のために建てたのかさっぱりわからない。 両親や祖父母にも聞いてみたが知らないと言う。なんとも不思議な話だ。 煙突と、まるで煙突のおまけのように小さな家(廃墟と言ったほうがいいかもしれない)は 子供たちの絶好の遊び場だった。 まわり一面原っぱで民家がなく、雨をしのげる家までついている。 これで秘密基地にならないはずがない。 僕とあいつも毎日ここで遊んだ。道で拾ったエロ本や捨て犬を持ち込んだりしたな。 そしてなんともありがちな話だが、煙突には足場...
  • 21-889-1
    主人公×ラスボス ラスボス「よくぞここまでたどり着いた勇者よ」 ラスボス「我が右腕となれば世界の半分をくれてや…」 勇者「お前が欲しい!!!!!!!」 ラスボス「え?」 勇者「ラスボスたんラスボスたん本物のラスボスたんktkrハァハァハァァアあああああ!!!」 勇者「結婚してくれラスボスうぅうううううう!!!」ガバッ ラスボス「ひぃっ!!」 女戦士「バインド!!」ビシィッ 勇者「ハァン!」 女戦士「すまないラスボス。勇者はこちらで抑えておくから続けてくれ。」 ラスボス「いや、ちょっと状況がよくわからないんだが」 女魔法使い「とりあえず~、"断られた"ってことでぇ~、すすめて?」 ラスボス「あ、ああ…」ゴホン「では」 ラスボス「我が誘いを断るとは愚かな!では力づくでかかってくるがよ…」 勇者「 力 づ く...
  • 6-889
    握り返された手 ベッドに横たわりながら、俺は軽く彼の方を見た。 彼はぐっすりと寝入り、一向に目を覚ます気配がない。 無理もない、と思った。 先程、俺は彼に強い疲労を強いる事をしたばかりなのだから。 抱かれる側の疲労がどれほどのものなのかは、俺にはわからない。 だが、終わった後、気が付けばすぐに寝入ってしまっている彼の様子を見るかぎり、相当な疲労なのだろうと思う。 俺は半身を起こし、彼の、軽く汗の残る額にかかる前髪をかき上げ、唇でそこに触れた。 当然の事だが、やはり起きる気配はない。 彼の、力なく投げ出された手に触れて、軽く握ってみる。 その時、眠っていたはずの彼が俺の手を握り返した。 俺は驚いて彼の方を見たが、彼はいまだに間の抜けた寝顔で眠っている。 ふと、彼の唇が何かを呟いているのに気が付いた。 寝言だろうか。 俺は、彼の寝...
  • 26-889
    義兄弟 姉さんの3回忌に訪れた墓所で、俺と義兄さんは静かに手を合わせる。 親代わりになって歳の離れた俺を世話してくれた姉さん。 それを陰から支え続けてくれた義兄さん。 福祉課の職員と相談に訪れた市民という、色気の欠片もない出会い方をした二人は、バレンタインデーに告白して、ホワイトデーに返事をするという、今時小学生でもやらない幼稚で不器用な恋愛を経て結ばれた。 なのに、たった一年足らずで姉さんは逝ってしまった。 義兄さんは今も変わらず、市民の良き相談相手として働きながら、大学に通う俺の面倒を見てくれている。 まるで困っている人に尽くすことが、人生の生き甲斐みたいな人だ。 「お腹空いただろう? 何か食べて帰ろうか」 「はい」 合掌を解いた義兄さんの、眼鏡の奥にある瞳が少し潤んでいる。 二人に見守られて十代の後半を過ごした俺は、両親がいなくても十分に幸せだった。 本...
  • 7-889-2
    もうちょっとだったのに パチ まるで漫画のような擬音が聞こえそうな勢いで、アイツが綺麗に目を明けた。 「あーあ、もうちょっとだったのに。」 もうすでに起き上がりながら、アイツが俺に聞き返す。 「え、何が?俺何かした?」 「あー、いいから。こっちの話。気にするな。」 そう、今はまだ知らなくてもいい。 俺がお前のことを好きだとか、 寝ているお前にこっそりキスしようとしてたとか、そんなことは。 そのうち、このもうちょっとの距離を埋めてやるから。 素麺×ひやむぎ
  • 9-889
    受が攻を下克上(性的な意味で) 変だ、絶対。 背中には冷たいフローリングの感触がするし、しかも、あいつが俺に馬乗りになってる。 「ちょっと待って…どういうことだ?」 「俺だってやられっぱなしは嫌だ。お前も俺の気持ちを味わえ」 あいつの言葉に、頭の中がぐちゃぐちゃになる。 「え、どういうことだ?」 「こういうことだ」 いきなりのキス。 絶対におかしい。どうして俺がこんな事されなきゃいけないんだ。 どうして俺がこいつなんかに服を脱がされなきゃいけないんだ。 「ちょ…ぁ、待て…ッ」 どうして、俺がこんな声出さなきゃいけないんだ。 「どうですかぁ?下克上されてる気分は?」 黒い笑顔。 「さいあく、だよっ…ぁ、ンっ…」 「最悪?こんな事で最悪なんて言ってられないでしょ。まだこれからだから…」 冷たい笑顔に鳥肌が...
  • 16-289-1
    1cm しこたま飲んで酔いが回り始めると、シュウはいつも決まってこう言う。ごめんねえ、と。 「ごめんねえ、またクビになっちゃった」 僕の知っている限り、シュウがバイトをクビになるのは今回で四度目。僕の部屋に転がりこむ前も数えたら、一体何回になるのだろう。いつも誰かと喧嘩をしては啖呵をきって辞めてきてしまう。 リビングに散乱するビール缶をごみ袋へと入れながら、僕は酔っ払いの覚束無い言葉へ返事を返す。 「いいって。家賃だってちゃんと半分入れてくれてるんだしさ、僕は何も困ってないよ」 「だって、俺がいたら、彼女も部屋に呼べないっしょ?」 そしてまた、ごめんねえ。 そんな、もうほとんど眠りに落ちかけているシュウに、苦笑いを浮かべた。 「そんなのは僕に彼女が出来てから心配してよ」 彼女なんて大学以来いたためしがない。 「俺のことは、いつでも追い出していいから。だから良い...
  • 16-089-1
    愛馬 夜の闇をつんざく呼子の音に、僕は飛び起きた。 夜襲だ。 直後に、抑える必要がなくなった敵のときの声が驚くほど近く で、とどろくように上がった。 馬番の寝所は厩の隣。息も凍るような寒さの中、上着を羽織る のも忘れ駆け出し、厩に飛び込み、入り口にある領主様の馬具を 抱き上げる。 他の馬達が外の騒ぎに鼻息荒くざわめく中、入り口に一番近い 柵の中の領主様の白馬は泰然としていた。 僕と目が合うと、早く鞍をつけろと催促するように前足を掻いた。 国王様から贈られた外国の白馬はとても大きな体をしていた けれど、とても気難しくて何人もの馬番を蹴り飛ばして怪我 させていた。 馬番見習いだった僕に白馬の世話が回ってきたのは、馬番として たいして役に立たないから蹴り殺されても惜しくないからだった のだと思う。 「汗を拭いておけ」と布を渡され、厩で初めて白馬の前...
  • 16-589-1
    君と会うのはいつも真夜中 草木も眠る何とやら、テレビの画面の向こうはやたらと騒がしい。 疲れた目に決して優しくない派手な色合いのセットの中で、あいつは一際大声を上げては周りの共演者にはたかれていた。 「俺、芸人になって、ゴールデンで冠持つのが夢なんだ」 高3の秋、図書館でせっせと勉強する俺の隣で、至って真面目な顔であいつはそう言った。 「東京行ってさ、休みなんてないくらいガンガン売れて、毎日テレビ出てさ、」 その夢物語には俺も登場するらしい。ある日一緒にコンビを組もうと誘われた。 「バカ言ってんなよ、俺は家継がなきゃいけないんだっつってんじゃん」 ひいじいちゃんの代から続いている医院を継ぐ事が、生まれた時から俺ら姉弟に決められた将来だった。 元々両親と反りの会わなかった年の離れた姉貴は、俺が小学生の時に外国人と結婚してそっちに移ってしまい、俺はそれから両...
  • 16-829-1
    男の娘受け 長い・無理矢理あり・厨 注意 世界は危機に瀕していた。 異次元からの侵略者が刻一刻と進攻してきており、この世界を我が物にせんと画策しているのだ。 しかし、地球に住む人類はその脅威を知らず平和に暮らしている。 なぜならば…!! 「ダイナミィイイイイィック!イクァイブリリウム!」 真紅の短髪を逆立てた少女がそう叫ぶと、彼女が持つステッキの先から火球が飛び出し、宇宙空間に浮かぶ戦艦を破壊した。 「よし!頼んだぞイエロー!」 「了解レッド!…本当の秘密は永遠に秘密のまま…クオリア…マリーズルーム!」 小爆発を続ける戦艦に向かい金髪を波打たせた美少女が手を広げると、空間がぐにゃりとゆがみ、月よりも大きな戦艦がたちまち収縮を始める。 「「ブルー!止めだ!!」」 「らじゃっ!」 軽快に答えたのは青のポニーテールもりりしい少女で、手に日本刀型のステッ...
  • 26-899-1
    他校の後輩  小さい頃から得意で続けて来た競技は中学で全国大会に出場するほどの腕前で、高校もその推薦で決まったくらいだ。  卒業式に柄にもなく花なんぞを手渡して見送ってくれた後輩達に、俺は明るく声を掛けた。 「後は任せたぞ」 「はいっ!」 「それで一年後、俺ん所に来い。また鍛えてやる」 「判りました!」 「頑張ります!」  高校に入学しても日々練習に励み、一年でも選手に選ばれ充実した生活を送った。  春が来て新入生の中には見知った顔が何人かいたが、一番期待していた奴はいなかった。  聞いてみると、進学のため県外に出たらしい。  一番伸びそうで期待していた奴だが、将来の目的のためじゃ仕方ないな……。  残念に思いながらも、鍛錬を続け迎えたインターハイ。  当然のように勝ち進み、地域ブロックの試合会場で見つけた懐かしい顔。  少しデカくなった?  いや...
  • 5-889
    誰もがそれを笑ったとしても 「笑えよ」 そう言って、向かい合う俺の幼馴染氏は、ぶすくれた顔でそっぽを向いた。 「そんなに笑って欲しいかよ」 「当たり前だろ! こんなカッコしてまでウケ取ってんだよ! 笑えよ!  終いにゃくすぐり倒すぞ!」 アイツ笑わないよな。気味悪ィ。だの何だのと俺が噂されてるのは知って た。こいつがムキになってそれを否定してたのも。 『ちげーよ! あいつは気ィ許した奴にしか笑わねぇだけだよ!』 って。お前、それフォローになってないのに気付かないのはおかしいぞ。 俺が手酷い振られ方をして以降、誰の前でも笑わないの、随分気にして くれるんだな。ありがとう。でも、よせよ。そんなことされたら、笑うどころか 泣いちまいそうだから。だから、もういいよ。 俺の目の前で、真っ赤な顔をしたセーラー服のお前。 うん。すごく変だ。ていうか誰...
  • 3-889
    年下攻患者×医者 高校二年の夏休み、俺は交通事故が原因で入院した。 事故さえなければ、今頃気の合う仲間達と夏休みを謳歌しているはずだった。 海でナンパしたり、花火大会でナンパしたり、夏祭りでナンパしたり……そんな予定が全てパア。 来年はもう三年だ。大学受験を控えた高校最後の夏休みは気楽に遊んでいられない。 つまり、素晴らしき青春といえる時間を俺は失ったのだ。 「A君、調子はどうかな~?」 担当の先生が決まった時間にやって来る。俺の担当の先生はまだ若いらしい。母親が「担当の先生が若くてかっこよくて嬉しいわ。なんでもまだ30前らしいわよ」と弾んだ声で話していた。息子が入院事故で入院したっていうのに、なんて不謹慎な。 俺が先生と直接会うのは三回目。一回目は全身麻酔が効いていいたためあまり覚えていない。二回目に会ったとき、この先生の口調にげんなりした。まるで子ど...
  • 2-889
    どうしようもないタラシだけど包容力のある兄×誠実な優等生だけど恋愛に不器用な弟 兄「弟ちゃぁん、暗いよ~どしたん?」 弟「顔合わすたびに抱きつくな。いま悩んでんだから」 兄「恋の悩みだったら相談のるよ~? 体位についてとか?」 弟「鯛とかじゃなくて…。俺、告白されちゃったんだ……クラスの女の子から」 兄「うん、うん」 弟「でも、俺、好きとかよく分からないから、付き合うのもよくわからない」 兄「うん」 弟「付き合うってどれくらい好きになったら、付き合うべきなの?   兄ちゃん、いっつもいろんな人と付き合うけど、どれくらい好きってこと?」 兄「いやー頭で考えちゃ駄目っしょ、そういうのは」 弟「でもこういうのはちゃんと考えないと、相手が傷つくから……」 兄「そんなん恐れてたら恋愛なんてできないぞー。ほら、ちょいこっち向け」 弟「そういうも...
  • 16-899
    if 「なあ、もしもの話しようぜ」 「明日地球がなくなるなら何したいー? とか? 俺とりあえず屋上から愛を叫ぶ!」 「誰にだよ。……そういうんじゃなくてさ、もっとこう、身近なかんじで」 「ひーみーつ!……身近?」 「たとえばー、もしも俺が女だったらどうする? とか」 「えっ! たっつん女だったのかよ! それ何てエロゲ?」 「ちげーよ。つーかお前、俺と何年の付き合いだよ。俺の裸さんざん見てるだろーよ。バッチリついてます。お前よりデカいです」 「いや、いやいやいや。知ってる。知ってるけどノってやっただけ。あとね、男はデカさじゃない。心意気!」 「うん。で?」 「だから……え、えー……うん。とりあえず、おっぱいもましてもらう」 「おっまえ……即物的すぎるだろそれ。  エロゲとかなんとか言ってたときも思ったけどいい加減思考が下半身直結すぎだよ」 「そんなもんだよ、...
  • 8-889
    さよならも出来ない 八つ年上の大好きな隣のお兄ちゃん。 僕がものごごろついたときには、いつも膝に抱っこして絵本を読んでくれたり、 お仕事で忙しいママを待つ間、お風呂に入れて綺麗に身体洗ってくれてご飯食べさせてくれたり、 優しい大好きなお兄ちゃん。 なのになのに、ある日学校から帰ってお兄ちゃんちに行ったら… 鍵開いてるのにお兄ちゃんいなくて、おばちゃんもおじちゃんもいなくて、 玄関に沢山出しっぱなしだった靴は半分くらいになってて、 お部屋の中はいつも通りみたいなのによく見るといつもあったものが無くなってたり、 なんか1日しか経ってないのに何年も経っちゃったみたいな違和感があって。。 お兄ちゃん何処にいるの? なんか不安になって、僕は狂ったようにお兄ちゃんの部屋もベッドの下もお風呂もトイレも押入も探したんだ。 だけど、いない。 何日も何日も待ってたのにお兄ちゃん...
  • 1-889
    クールなインテリメガネ×ちょっとお馬鹿な熱血君 カリカリ、とシャーペンの音だけが響く室内。 「…なぁ」 「…」 「なぁってば!」 耳元で大声を出してやると、やっとあいつは俺の方を向いた。 銀のフレームの奥の瞳に、鬱陶しそうな色が浮かんでいる。 「…何だ。」 「何だじゃねーよ!いっつもいっつも家で勉強ばっかで飽きねーのかよ!」 俺達は一応今現在、男同士だけど恋人関係にある筈だ。 それなのに、お互いの家に行く度に甘い会話をするでもなく、試験勉強だの物理のレポートだの、 と何かと理由を付けてこいつは勉強を始めてしまう。 それなのに 「…飽きない。」 きっぱりはっきりとそう言われては、もう言い返す事もできない。 俺はすっかり脱力して、またペンを動かし始めた男をじっと見つめる事に徹した。 男の俺でもドキッとしてしまう、シャープな輪郭のラインに、通った鼻筋。 切...
  • 6-189-1
    何度繰り返しても。  誰もいない、いや、正確には俺と先輩しかいない放課後の図書室。 俺は机の上に座って足をぶらつかせながら、本の整理をしている先輩を見つめていた。 「先輩、キスしていいですか?」 そう言って机から降りて先輩に近づく。  先輩は見事なまでに固まり、ギギッと言う効果音が付きそうな動作で俺から顔を背ける。 「キス、していいですよね?」 いつも顔を背けるだけで抵抗しないから、返事は聞かずに抱き寄せる。 短いキスをいくつもすると、強ばっていた体から徐々に力が抜けていくのを感じる。 何度繰り返してもキスに慣れない先輩が可愛くて、俺は抱きしめる腕に力を込めた。 何度繰り返しても。
  • 18-889
    先輩に対して信仰に近い尊敬を抱いてる後輩 先輩と俺が出会ったのは、高校二年のときだった。 廊下ですれ違ったその時、先輩はふと振り向いて、どうしてだか俺に声をかけてきてくれたのだ。 その時先輩は髪の毛を丁度黒く戻していた頃で、夕日にその黒髪は酷く優しく映えていたのを覚えている。 すっと切れ長に通った紅茶色の瞳を細めて、確かお前は崎塚っていったっけ、と呼びかけてくれたあの声を俺は今でも忘れていない。 その後の高校時代を、俺は先輩の後ろに付き従うようにして過ごした。 髪もぼさぼさで図体のでかいだけの自分が、いくら許容してくれるからと言って先輩のお傍にいてはならない。 それは分かっていたけれど、全くもって俺の体はそれを許さなかったので、せめて先輩のお役に立てるように努力したつもりだが、果たしてそれはきちんと功を奏していたのか分からない。 先輩が殴られそうならかわって殴られた...
  • 23-889
    葉桜はきらいだ 「身分違いの者が無理矢理寄り添っているようで、嫌いなんですよね。葉桜」 そんな洒落こいたことを呟きながら、八重樫は放課後ここへ来て二本目の煙草を消した。 三本目に手が伸びたので、我にかえってそれを止めた。 「八重樫、いつも言うけどここは禁煙だよ」 「それ以前に生徒の喫煙を嗜めるのが教師の役目では?」 …もっともだ。普段から見慣れていたせいで注意するのを忘れていた。 「そもそも葉が先で花は後でしょうに。順番がおかしい」 それだけ言うと八重樫はふぅ、と煙を吐いた。 髪の隙間まで燻されていく気がする。思わず眉間に力が入る。 「そんなイヤな顔しないで下さいよ、先生」 「生徒会長なんて名ばかりだな、お前みたいなのが一番危ない」 「だから、息抜き」 「お前の息抜きは私の息が詰まるんだよ」 八重樫は窓際の長椅子に腰掛けると、室内履きのサンダルを脱ぎ捨てて...
  • 14-889
    あいつじゃなきゃ駄目なんだ 「いいかげんにしろよ!」 俺は隆の腕を捕まえた。 「あいつはお前のことを都合の良いときに好きなように扱える玩具だと 思ってるんだよ。社長令嬢と結婚して、子供も生まれて、それでも 男遊びはやめられないから、口の堅いお前をキープしてるだけなんだ! こんな関係で、お前はいいのか?お前は幸せなのか?!」 隆は笑った。とても、とても寂しそうに。その笑顔を正視し続けることが できなくなって、俺は隆を抱きしめた。 「俺なら、お前だけを大事にする。贅沢なマンションは与えてやれないけど、 ずっとお前の側にいてやる。俺なら....っ!」 俺の腕の中で、隆はそっと、でも確かな意志を込めた手で俺の胸を押した。 うつむいたまま体を離し、隆は言った。 「ありがとう......でもごめん。あいつのことも、君の真剣な気持ちもわかって るんだ。でも、理屈じゃな...
  • 25-889
    本当の顔を知らない 財布を拾ってくれた君は、小さな顔には不似合いな大きなマスクをしていたね。 昔からの気性なのか、不信感を抱かない素直で優しい君は、お礼をしたいと言っても全く受け取ろうとしなかった。 …今思えば、ご飯でもなんてなったらマスクを取らなきゃならないもんね。うん。 それから、連絡先を半ば強引に交換して、根気よく友人関係を紡ぎ続けた。 そんなある日、ポツポツとマスクのお話をしてくれた。 10年前に受けた酷いイジメ。大きな火傷を負わされたという。 「貴方には話したかった。初めて信頼できた貴方には。マスクを取った本当の顔を知ったら、きっと貴方は気味悪がるよ?」 僕は黙って君のマスクを取り、ゆっくりと口付けた。火傷の跡をなぞりながら、それはもう、丁寧に。大切に。 キレイだよ、君の本当の顔は。 そう言うと、君はキレイな涙を流して僕を抱...
  • 21-889
    主人公×ラスボス お互い、あと一撃で勝負が決まることを予感していた。 肩で息をし、額から流れる汗と血を乱暴に拭うと、二人は同時に動いた。 一瞬の交錯。 倒れたのは、全世界の民に恐れられ続けてきた魔界の王の方だった。 聖剣と呼ばれるそれが、禍々しい体を突き抜ける。王の体からは黒い霧のようなものが吹き出して、その聖剣へと吸い込まれていった。 世界に平和が訪れた後、青年は目を覚ました。 見慣れない、簡素な山小屋。彼が固いベッドに身を起こすと、すぐ近くの扉が開いた。 「お目覚めか?」 両手にトレイを持って現れたその男こそ、聖剣を手に魔界の王と戦ったその人に違いなかった。 それを理解した瞬間、青年は男を殺そうと跳ね起きた。だが男は、口元に笑みを浮かべるだけだ。 それは、男がすでに青年が無力であることを知っているがゆえのことだった。 「どういう…...
  • 15-889
    パートナーに望むこと 「こっち持って」 そう言って制服のポケットから差し出されたのは、一本の赤い毛糸。 その、三十センチほどの紐の一端をこちらに向けて、諒はにこりと笑う。 「…なんだこれ」 夕暮れの帰り道、天下の公道。 燃えるように赤い光の中にあってなお浮き立つ毛糸を摘み上げ、俺は不信感たっぷりに言った。 「まぁいいじゃん。ちょっとしたお遊びだと思ってさ」 「なんの遊びだよ」 いいからいいから、とのらりくらりとかわされて、腑に落ちないながらも俺は渋々それを握る。 右の掌に馴れない手触りを確かめていると、反対側の端を諒が左手で握った。 「…なんなんだよ」 「まーまー」 何がまーまーだ、と苦々しく思ったけれど、一度握ってしまった毛糸は何となく離しがたくて、仕方なくそのままで歩き出す。 二人並んで、さりげなく歩幅を合わせて、ただ黙々と...
  • 17-889
    バカップルのシリアス大喧嘩 「何で逃げた」 「逃げただと?貴様、この我輩が逃げたとぬかしたか」 「ああそうだ。お前は逃げたんだ」 「…ふん、いいだろう。では、我輩が何から逃げたと?」 「俺からだ」 「貴様ごときに我輩が逃げる価値があったとでもいうつもりか。 大した自信だな」 「ああ。あの時のお前にとって、俺は唯一絶対の存在だった」 「……」 「あの小さな辺境の村に似合わない程、お前は優秀だったな。 学問、人望、剣の腕…全てにおいて村の奴らより遥か高みに立っていた。 …俺の次にな」 「貴様…」 「あの時のお前にとって俺は絶対だった。最高に苛立つ敵で、どうしても 届かない羨望の先で、そして、共に力を磨きあう友人だった。 一人で見つからないものも二人でなら発見できたし、いつ追い抜かされるかと 気...
  • 24-889
    平凡攻×変人受 僕には変わった友人がいる。 彼は周囲の人が興味を持つことに一切関心を持たないで、周囲の人がどうでもいいと思っていることにのめりこんでいるんだ。 3年前には本と睨めっこしながら僕と自分のマフラーを編んでくれた。 ついでに手袋と耳あてと帽子も作ってくれた。 それは別にいいんだ。温かかったし嬉しかったし。 けれども彼はそれを全部犬で作ったんだ! まあ、犬と言っても皮を剥いだわけじゃないんだけどね。 ブラッシングして溜まった犬の毛を集めていた彼はネットで偶然見つけた犬の毛でセーターを編んだ人を見てコレだ! と思ったらしい。 毛を洗って、梳いて、紡ぎ車をドイツから輸入し――この異様な熱意はなんなんだ!!――毛糸にしてから編んだらしい。 普通に買えばいいじゃん。 マフラーとか手袋とか耳あてとか帽子を合計した金額より紡ぎ車1台のほうが絶対高いよ? ...
  • 22-889
    ギャップ萌え 僕の兄正直いつも仏頂面なんだけど この前兄の部屋が深夜になっても電気が消えない 僕よりも先に風呂に入ってたし、もう寝てると思ったのに… ひょっとしたら電気消え忘れて寝てるのかもしれない たまにこれがあるから困る ノックすると返事がないので開けてみる すると 兄がおばさんの土産で貰ったぬいぐるみを抱えて寝てる あんなに渋々もらってたのに… 顔は眉間にしわが寄ってるのに… そんなに大事そうに両手で包むようにして寝るなよ とりあえず僕はそっと電気を消して部屋から出た 雪の降る町降らない町
  • 6-089-1
    子育て ――俺はお前の親じゃない。何度言ったら分かるんだ。  そう言って睨んでも、いっこうに堪えたようでもなくへらへら笑って俺に懐いてくる。 ――お前は犬か? アヒルの仔か? いい歳して俺の尻ばっか追いまわすんじゃねえ。  うっとうしいんだよ、とはねのけてもはねのけても、痛くも痒くもない様子だ。  以前、お前が女に言い寄られているのを立ち聞きしてしまったことがある。  孤立してるからってあんたが世話焼く義務ないよ、もう放っておけば? そう迫った女をお前は笑って一蹴した。ごめんね、俺があの人から離れられないんだ、惚れてるから。 ――頭おかしいんじゃねえの、俺も男だしお前も男だし、惚れるとかありえねえ。  じゃあどうしてこんなことするのを許すの、と俺の上で息を弾ませながらお前が訊く。頬を汗が伝って、ほんの一瞬、泣いているように見えた。俺は黙ってお前の口を塞ぐ。  絶対に...
  • 6-489-1
    今夜もひとり生け贄になる 手足も口も動かぬままに 今夜も一人生贄になる。 手足も口も動かぬままに。 今日の男は巨大な長物とぬるぬるしたものを持っていた。 ぬるぬるする物を体中に塗りこめる。 長物を無理やり胎内に挿入する。 もう慣れた、そう思う躰が衝撃に揺れる。 内から外から別の物に変えられていく。 私が我慢すれば良いだけの話だ。もう慣れた。 「…今年の銅像は意外とシンプルっすね」 「単に色を塗り替えて、のぼりを突っ込んでか」 「疾…如く?はやしおかすな?なんて読むんだこれ?」 「はやきことかぜのごとく、しずかなることはやしのごとく。  武田騎馬軍団だな、これ」 「ヤンキーじゃなかったんすね」 今夜もひとり生け贄になる 手足も口も動かぬままに
  • 6-689-1
    好きで好きでどうしようもない それとこれとは関係ない 「本当に、辞めるのか?」 「はい」 迷わず答える俺に部長は少しためらって、でも引き止めようと身を乗り出してきた。 「スタメンになれたりなれなかったりするのは、監督が相手に応じて考え抜いた結果だ。身長というネックはあるが、お前のテクはうちの部にとって…―――」 「部長。それとこれとは、関係ねーっスよ」 間接的には関わってるけど。心の中で続けた言葉は部長には聞こえない。 名門と呼ばれるこのバスケ部に不満があったわけじゃない。部長でさえ時に外されるっていうのに、スタメン落ちに今更文句を言う奴はいない。 監督の鬼のような厳しさも、本気で最強を目指してのことだと誰もが知っている。同じように突っ走っている。 だからこれはただの、いや、どうしようもないわがままだ。 「……そうか」 それ以上何も言わないで、これは俺から監督...
  • 6-829-1
    金魚すくいにいる亀  自分より小さい「魚」は、自分の餌だ。  私は長い間かけて自分の居場所の特徴を悟った。このつるんとした場所は 仕事場。自分の仕事は「そこにいる」こと。もう大人となったこの身体で。  ごく稀に、遊びとして<モナカ>の―あるいは<紙>の―網を身体の下に 滑り込ませる客もいる。しかしもちろん自分を持ち上げられるはずはない。  そんな時興行主はこう言う。 「お客さん、あの亀、とって帰ってくれませんかね。こいつ、金魚を喰っちまう  んですよ。全く仲間意識のない奴でね」  時には、私が水槽中で食欲を抑え切れなかったときには特に、こう話すことで 彼は客からの更なる数回分の散財を引き出すことに成功するのだ。 ―ばかな。餌をちゃんともらっていれば、彼らを食べる必要などないのに。  ああ神様、彼を食べさせないで下さい。どこで聞いてきた...
  • 6-869-1
    40年ぶりの再開 先に見つけたのは奴の方だった。 「有川?有川じゃないか?」 「う、植野?」 少し離れた、取引先からの帰り道。 直帰しようかなぁ、書類を取りに帰ろうか。そんなことをつらつら考えながら上っていた階段の途中。 呼び止められて振り返ると、そこには懐かしげに笑う、旧友の顔があった。 「久しぶりだなぁ」と言いながら俺の横に並ぶ。少しも変わらないその態度に戸惑った。 もう20年も前になるのか。俺と植野は、一人の女性を取り合った。 幼馴染の3人組。仲良く手をつないで歩いていた頃から続いていた争いは、 互いに大人になり、働き出し、それなりの蓄えと責任を持つ立場になって真剣なものとなった。 「みぃちゃん」が選んだのは植野。物静かに笑う、優しい植野を、彼女は望んだ。 転勤が決まっていた俺は、みぃちゃんが妊娠したのを聞いた頃に遠くに移った。 何だかんだと転勤...
  • 6-859-1
    人形のような男 興味を引く人物がいる。 二月ほど前に会社の向かいに出来たコンビニのバイト店員だ。 その男ははとにかく何をしていても無表情で愛想のカケラも感じられ無い。 このコンビニの店長は一体彼のどこが気に入って雇う気になったのかと不思議に思う。 いや、もしかしたら顔でバイトに選ばれたのかもしれない。 初対面の子供には大抵目が怖いと泣かれるような俺とは違い、少し可愛らしいが『人形のような男』という形容がよく似合う、彼の端正な顔立ちに表情が浮かぶ瞬間を見てみたいと俺は思うようになっていた。 「いらっしゃいませ。」 自動扉が開くと同時に、小さな声で彼が挨拶をする。 最近は仕事帰りに雑誌の立ち読みをしつつ、窓に映る店内から彼を観察するのが俺の日課になっていた。 店の商品を並べている、やはり無表情。 「ありがとうございます。」 そう言って客に小さな袋を手渡す、や...
  • 6-839-1
    しーずむ ゆうーひにー てーらされてー まーっかーな ほっぺたのー きーみとぼくー 沈む夕日に照らされて 真っ赤なほっぺたのキミとボク 部活動の声があちこちから響いてくる放課後のグラウンドを、一人ゆっくりと通り抜ける俺、帰宅部。 いや、本当はいくつかの部活を掛け持ちしてるんだけど、現状として帰宅部。 けど今日は、各クラスの学級委員の集まりがあって、さらに帰りがけ担任に捕まり雑用を仰せつかって大分帰りが遅くなった。 もうすぐ部活も終わりの時間じゃないか…校門に向かっているつもりが、いつの間にか立ち止まってグラウンドの一団を見ていた。 ストレッチをしている陸上部の面々のうち、一人がこちらに向かって手を振っている。 あ、見つかった。 あ、こっち来る。 まったく、俺にはときどきあいつの尻にシッポが見えるよ。 ブンブン千切れんばかりに振ってるシッポがね。 「委...
  • 6-849-1
    ドアをはさんで背中合わせ 逃げるようにして部室に入ると鍵をかけた。 と同時にノブを回しドアを叩く音と瀬田の声が聞こえる。 「先輩ここ開けてください、先輩?」 「嫌だ!絶対開けねー!」 「開けてくださいよ、どうして逃げるんですか!?」 「瀬田があんなことするからだろうが!!」 そう言うとドアを叩く音が止んだ。 俺は深く息を吐くとドアにもたれて座った。 「…すみません、でも俺…」 気配はするが、その後に続く声は聞こえない。 正面の窓から見える青空をぼーっと眺めながら考える。 瀬田の事は好きだ。 部活も熱心だし、賢いし、性格も良いし、話も合う、一番仲の良い後輩だ。 しかし、だからと言って、その、あんなことをする対象として見た事なんか無い。 「俺さ、瀬田のことそういう目で見たことないんだ。」 正直にそう話すとややあって「知ってます。」と答えが返ってくる。 瀬...
  • 16-829-2
    男の娘受け          ,. -‐'""¨¨¨ヽ          (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!           |i i|    }! }} //|          |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは女の子に痴漢をしていたと         i| !ヾ、_ノ/ u { }//ヘ        思ったらいつのまにか男の子だった』         |リ u }  ,ノ _,!V,ハ |        /´fト、_{ル{,ィ eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが      /   ヾ|宀| {´,)⌒`/ | ヽトiゝ        おれもナニを触ったのかわからなかった…     ,゙  / )ヽ ...
  • 26-389-1
    秘密の関係 いつも真面目で、誰からも信頼されて、俺に常識をわきまえろと説教してくるくせに、佐内は俺の『セフレ』をしてる。 最初はじゃれ合いで、悪戯しあってるうちに、お互いなんだか気持ち良くなってきてエッチした。 次は甘えてきた。佐内からだ。 甘い言葉を俺に囁くので、佐内にとってそれが遊びでも、嬉しかったから、またヤった。 気がついたら習慣化してた。 気持ちのいいことを追求する習慣に。 佐内はどれだけヤりたいんだろう。 俺は毎日でもヤりたい。 だからだろうか。普通に友だちと話しながら笑ってる佐内にイライラしてきた。 そいつ、その笑い声よりもっと高い、スゴい声出すんだ。それを俺は知ってる。 真剣に答弁する佐内を見ながらイライラしてきた。 そんな澄ました顔なんかじゃなく、快感にうっとりしてる表情の方が自然だ。それを俺は知ってる。 口うるさく俺に説教して...
  • 26-489-1
    あえぎ声がうるさい攻め(notショタ)と声を我慢する受け ドン、と。地鳴りのような音がした。 すぐにわかった、誰かが壁を叩いた音だと。 陶酔していた雰囲気の中から急に日常に引き戻される。俺が真昼間っから男とセックスしている間、隣の誰かがテレビを見ている洗濯をしている友達と電話している。 途端に顔が熱くなる。「恥ずかしがっている」それをこいつ知られるのが殊更に恥ずかしく、耳元がカイロでも押し当てられたみたいに熱い、それが触れなくてもわかった。 2階建ての安アパート、当然のように薄い壁、最初から声は抑えていたつもりだったが、こいつの実家から持ってきたというちゃちなパイプベッドが高い音を立てながら軋んでいるのに気が付いた。 「うぁ、沢原ぁ……、ちょっ、ゆっくり…」 助けを求めるように後ろに首を向けると、俺とベッドを揺らしている男が幸せそうに笑っていた。 「なに?なんでーこ...
  • 26-089-1
    やっと愛するお前のところへ行ける 港を一望できる小高い丘の頂に造成された公営墓地 その東側の片隅にアイツの墓はあった 少しだけ伸び始めた白髪混じりの坊主頭に初冬の風は冷たい 自分は24歳だけど今の自分を見て誰もが40代だと思うだろう あれから7年ですっかり老け込んでしまった ずっとこの日を待っていた ただいざこの日を迎えるとそれが何なのだという虚しさが猛烈に込み上げて来る アイツとはずーっと幼馴染みでダチだった 高1の夏に部活の合宿で行った長野の山奥で関係は劇的に進んだ それからは猿みたいにやりまくった 男子高校生なんて性欲の塊みたいなもんだからな あの日はオレもアイツも17歳の高2の秋の夜だった 一緒に帰る途中に寄ったコンビニで実に他愛ないことで口げんかした コンビニを出て別々に帰宅の途に就いた アイツはオレと別れてから約10分後に何者かに刺され...
  • 26-819-1
    旅行先で出会った運命の人  あいつとは沖縄を旅行中に知り合った。今から六年前で、あいつは卒業旅行中の大学生。  馴れ馴れしく写真撮影を頼まれて、成り行きで会話をしていたらお互い近くに住んでいることが判明し、  微妙に付き合いが始まって、いつの間にか恋人になっていた。  俺はその頃から、男の癖に占いに凝っていた(性差別的な文言だが)。  当たると噂の占い番組で、「今週の天秤座は旅行が吉。運命の相手に会えるでしょう」といわれたことが、  旅行の一つのきっかけだったほどだ。  両思いになってからそれを思い出し、俺は他愛もなく、そして年甲斐もなく浮かれた。三十前の男がである。  男同士であることも、年が八つほど離れていることも、その時は大したことには思えなかった。まあ、若かったのだ。  付き合って三ヶ月くらいした頃だったか、俺は、酔った勢いで、その占いのことを喋ってしまった...
  • 26-869-1
    狸×狐 「あっはは、また騙されてやがる。無様なやつめ。気分が良いなあ。うすのろをからかうのは気分が良い!」 俺の腹の上に跨がって、目尻をきゅ、と細め、口角を吊り上げケラケラ笑う奴の顔を見上げ、溜め息をつく。 襦袢の裾から飛び出た奴の尻尾がぱたぱたと動いて俺の太ももの辺りを着物越しに掠めるのがこそばゆい。 「いい加減どいてくれないか」 「嫌だね」 「なあ、ならせめて、俺の腕を膝で抑えるのはやめてくれよ、痺れてきた」 「ふうん」 そう言うやいなや、ぴしゃりと俺の手の甲を叩く。 指先が痺れる感覚に眉をしかめると、奴は一層ニンマリと笑った。 「な、僕は綺麗だったかい?まったく綺麗な女だったろ?お前はいつも、あんな風に女を口説くの?お前なんかに着いてくる女なんて、いるの?答えてみてよ、さあさあ」 言い淀んでいると、またぴしゃぴしゃと痺れた手を叩いてくるので、仕方なく口を開...
  • 26-859-1
    暑くても離れたくない 続編というかおまけ ============================== 「ごめんっ…俺べとべとだった」 身体を離そうとするとぐいっと押し戻された 「俺も涙でべとべとだから気にしないで…俺も離れたくないし」 普段の余裕のある智ではなくて、 「やっぱもういっ「だめ」 「キスだけ…」 いつもとは違うぎこちないキスは心地よかった 狸×狐
  • 26-849-1
    両片想い 先輩は有能な営業マンで上司にも部下にも厚い信頼を得ている 俺は気さくで仕事にひたむきな先輩にすぐに懐いて…恋情を抱いた そうしてみると途端に真っ直ぐに尊敬の眼差しを向けてきた事が恥ずかしくなった 先輩には奥さんがいる 先輩はあまり話したがらないけれど、絶世の美女とだけ言っていた 「俺の眼鏡どこにある?」 「童顔隠しの伊達なら給湯室にありましたよ」 「…お前生意気だぞ」 大丈夫、先輩の幸せを壊すつもりはない 俺は後輩として先輩を尊敬してるんだ 俺には男前の部下がいる たまに生意気だが素直で仕事の覚えも速いいい部下だ 「甘党な先輩にケーキのストラップ買ってきました」 そういって面白半分に買ってくる乙女チックな物が年々溜まっていく 「あなたって意外と乙女なのね」 そうレズビアンの妻から笑われる 相手はストレート、しかも直属の後輩...
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