*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「17-199」で検索した結果

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  • 17-199
    地獄に落ちろ 私のろくでもない…いえ、少々お口がよろしくないご主人様は、いつも決まって「地獄に落ちろ」とおっしゃいます。 人を呪わば穴二つという言葉くらいご存知でしょうに、まったく困った御方です。 ほら、また泣きそうな顔をして走ったりして…転んだらどうするんです、怪我をするようなものなど置いていませんが。 「おい、ピーター!」 いつもの時間、いつもの場所から私の所へ走っていらしたご主人様は、いつものように勇ましく叫びながら 私の目の前でお躓きになりました。 もちろん、私めはご主人様のお体を優しく抱きとめて立たせて差し上げます。 「はい、ご主人様。おやつの時間でございますね」 恭しく礼をする姿は、我ながらよく出来た執事だと思うのですが。 顔を上げればご主人様は可愛らしいほっぺたを林檎色に染めて仁王立ち、それがお約束でございます。 「ピーター、貴様は地獄に落ちろ」 ...
  • 7-199
    恋のプロセス 「まわりくどいの苦手なんですよ」 後ろ手に鍵を閉めると、彼は言った。 …一体何がいけなかったんだろう。何が、彼にこんな顔をさせているのだろう。 彼は、俺と出会って初めて自分の居場所をみつけたと言い、俺を求めた。 俺は、この世の誰よりも彼をわかる事ができると思ったから、彼を愛することを決めた。 お互い少しずつ、大切なものを分け合っていけたらいいね。 そう言って手を握ったら、彼は照れくさそうに俺の手を握り返してくれた。 寄り添い方はまだときどきぎこちないけれど、特別な体温だと思うと、それだけで どちらからともなく笑顔になった。 「…君の心がわからないなんて、耐えられない。」 ようやく彼の耳元で、それだけ、呟くことができた。 …伝わった?どんなふうに?わからないのがもどかしくて、…爪をたてた。 恋のプロセス
  • 7-199-1
    恋のプロセス 空きっ腹で部屋に帰ると、食料がなんにもなかった。外は土砂降り。 「おい…じゃんけんで負けたほうが買い出しな。」 俺は窓際で何か熱心に読んでる従弟に、いやいや声をかけた。当然のように返事がない。 「何読んでんだよ。」 俺が覗き込もうとすると奴は無言で、読んでいたものを俺との対角線上に遠ざける、が… しょ、少女漫画…見るんじゃなかった… 「例えばの話だが」 奴が無駄に重苦しく口を開く。いつものことなんだが、目線は明後日のほうをむいている。 「…今日みたいな雨の日にだ。もし俺が道端で捨てられている子猫を抱き上げて、優しく 話しかけている場面を目撃したとしたらどう思う?」 …。 「キモいと思う。」 「…もし学校が終わったら大雨で、朝傘を持って出るのを忘れたからどうやって帰ろうか 迷っているところに俺が現れて、無言で傘を渡して自分はそのまま雨の中を走っ...
  • 17-119
    下着の上から 脚の間で、俺を下着一枚に剥いた男が中途半端にエロいことをしてる。 「ん、んっ、ぁう……っトモっ」 草食動物に食まれる草って、きっとこんな気持ちだ。 もにもに、もしゃもしゃ、はむはむ、もしゅもしゅ、生殺し。 何度もいたぶられて、ひと思いにがっついてくれないの。 「と、とも、っ……あっ」 もどかしくてたまらない。 トモの厚ぼったい上唇と下唇が、下着越しに長い時間をかけて猛らせた熱を食む。 もにもに、揉み込むような動き。ときどき、舌でぐいぐい押し戻される。じれったい。 下着の前は俺の先走りとトモの唾液でしとどに濡れて色が変わってる。 もう、全部もどかしいしじれったい。 「トモ、トモぉ、も、無理、……いやだっ」 ついに音を上げると、トモがふっと顔をもたげた。にやりと、笑う。 「ひぁっ、あ!」 布地を押し上げている亀頭を微妙な加減で吸い、それから優...
  • 17-119-1
    下着の上から 酒の後の喉の渇きで目が覚めた。 室内が暑くて、エアコンの設定温度を一気に3度下げる。 すぐ横に横たわる大きな寝姿。同僚の鈴木が飲んだ後で泊まっていったのだ。 着替えたTシャツと、トランクスから伸びる重たそうな足。 鈴木と組んで2年目になる。長くとも1年でチームが代わるうちの職場では異例のことだ。 仕方がないだろうと自他共に認める。 「何しろベストコンビだからね、俺と上川先輩は」 自信満々に鈴木が笑う。何言ってるんだ、去年はあんなに不安そうな顔してたくせに。 無理もない、転属してきて、まったく経験のない部署に来て、 面識もなかった俺と組んで、それが噂になるほどの愛想無しと来ては不安にもなるだろう。 うち解けるのに、さほど時間はかからなかった。 人間、相性というものがある。俺と鈴木はよく合った。 人柄が軽快で愛想の良い鈴木と、堅苦しく押しの強...
  • 17-179
    敬語×敬語 「長野先生、その……どうしましょう、とりあえず脱ぎますか?」 「待ってください、池田先生、そんないっぺんに」 「脱ぎすぎですか?じゃ、下着だけ着ておけばいいですかね?パンツだけはいておけば」 「そんなに急がなくてもいいんですよ、僕が少しずつ脱がせ」 「あー!先にお風呂入らないと!長野先生、わかります?  聞いたんですけど、いろいろ準備が必要なんじゃなかったですか?  僕は趣味じゃなかったんで不勉強なんですが、その、浣腸が必要とか」 「今日はそこまでは考えてませんので、大丈夫です」 「そうなんですか?あーすみません!僕なんだか先走ってますね?  なんだか恥ずかしいなあ!照れますよね、こういうの。  大人の雰囲気っていうの、女の子相手にも苦手ですよ。すぐパニクっちゃって。  だから僕、生徒にもすぐ『彼女いるのー?』とか『昨日エッチしたのー?』とか ...
  • 17-119-2
    下着の上から ──あと7ヶ月もある。本当にうんざりだ。 「木島は夏は嫌いかー」 相変わらずのほほんとした口調で先生が話しかけてくる。 放課後の教室はそれなりに暑い。 先生がおごったって言うのは内緒にしとけよ、と言って先生は 俺の額に冷たい缶ジュースを押し付けてきた。 自分でも缶のお茶を飲みながら、先生は俺の机に腰を下ろす。 礼を言って缶を受け取り、一気に飲み干した。 「夏は別に嫌いじゃないんですけど。早く時間たたないかなーって思って」 「早く時間がたったらやばいんじゃないのかー?お前今年受験生だろう」 「受験とかどうでもいい。早く卒業したい」 俺がそう言うと、先生は飲んでいたお茶から口を離して少し笑った。 俺の好きな笑い方。我慢が出来なくなって、先生の隣に座る。 「せんせー…」 「何ー?」 先生は俺の方を見ずに、窓の方を見てる。 「こっ...
  • 17-139
    禁断の恋に走る者と愛より安定を選んだ者 「骨を拾ってくれないか」 口吻の合間にふと思い付いたので呟くと、どうでも良さそうに私の唇を吸っていた男は 瞳にほんの少し面白がる色を浮かばせた。 「断るよ。しゃぶり尽くされた骨に興味は無い」 にやりと口端を持ち上げた表情は美しいのに、返答はにべも無い。 しかし、男が私のシャツを脱がせる手付きはいつもより滑らかなものになった。 彼は優しいのだ、私と違って。 「誰もしゃぶってくれやしないさ。腐ってだらしなく溶けるんだ」 「なら、尚更要らないね。犬の餌にでもなればいい」 「それは犬が可哀想だろう」 取り留めもない言葉を連ねている内に上半身を裸に剥かれる。 あちこち傷だらけの肌は愛しい人にも見せられないほどみっともないが、 男は気にせず掌を這わせる。 綺麗な手だ。彼は神が芸術の極みを求め造りたもうた作品だと言われたら、 ...
  • 17-169
    神様 横断歩道、突然目の前に現れた車体。なにが起きたのか判断する間もなく目の前が真っ白に染まり数秒の浮遊感。 あ、もしかしてこれやばい? 思った瞬間固い何かに叩きつけられ一瞬呼吸が止まった。 体中がびりびりと痺れ、あたまの中身が揺れる。 目の前にはコンクリート。赤い何かが広がって、あれ、俺死ぬ? 冗談じゃない神様。俺にはこれからやらなきゃならないことがあるんだ。 今日こそは今日こそは、思い続けて一年間。恋愛運は二重丸。おみくじは大吉。やっと踏ん切りがついたんだ。 あいつに言いたい事があるんだよ。 いっつもからかってばっかりだけど、俺はお前が好きなんだ。笑った顔も怒った顔も困った顔もぼーっとしてるときも、全部好きなんだ。 冗談じゃねえよ、これからあいつに伝えに行くところだったんだよ。待ち合わせの時間がもうすぐなのに、約束破るわけにはいかないんだよ。 初詣の時ぐらい...
  • 17-129
    敵同士 振り下ろされた剣を盾で弾き、白鎧の隙を逃さず自身の剣を突き刺した。  鎧の隙間をぬって確かな手ごたえを感じ、無意識に唇をなめる。  ――とった。  剣を引き抜いた反動で相手がバランスを崩したところに再度剣を振り上げる。  相手の首筋を狙って振り下ろそうとした瞬間、白兜がするりと抜け落ちた。  まさにいま殺さんとする男の顔が眼前にさらされた瞬間、俺は背筋が凍りついた。 「なぜお前が……!」  重力に任せて落ちようとする剣を止め、俺は愕然と立ち尽くした。  勝利を目前に控えた同胞の雄叫びが、急速に遠ざかる。  だがいまにも薄れ行く彼の息だけは不思議と耳に届いた。 「きみ、だったのか……さすがに良い腕だな」  ごぼり、と血を吐き倒れこむ彼を俺はあわてて受け止めた。 「なぜ、なぜお前が……」 「わたしの生まれ故郷を、見捨てるわけにはいかない」 「しかしお...
  • 17-109
    伝わらない 自覚してからは、境界線がどこまでなのか分からなくなってしまった。 学校帰りにコンビニ寄るのは友達。 そこで買ったアイスを一口交換するのは、 16年来の幼なじみとしては、まあ、アリだろう。 だけど、 俺のガリガリ君に近づくその唇を思わず目で追ってしまうのは、 唇からちらっと覗く赤い舌に反応してしまうのは、 汗ではりつくシャツに何故かこっちが汗をかいてくるのは、 最近目を合わせられないのは、 「和田、溶けてる!」 「あ!?うわ!」 「バッカ、何ぼうっとしてんだよ」 「何って、」 お前の事考えてんだよ とは言えないから、溶けたアイスでベタベタになった手を 佐野の腕になすりつけた。 「何すんだバカ!」 「うるせ、バカって言う奴がバカなんですぅ」 「ガキか!お前はほんと昔から変わんねぇな!」 昔と...
  • 17-189
    花火 「あっちいなぁー。」 暑いな。お前なんでサンバイザーなの。ソレ妙に似合うな。 「ヤブ蚊が多いな。」 な。俺はいいんだけど、 お前さっき腕にかけてたのただの8×4だぞ。 「お前花火好きだろ?」 好きだ。特に線香花火だな。地味って言うなよ。 「地味だよなぁ、線香花火好きとか。ネズミ花火とかのが絶対 面白いじゃん。」 うるさい。綺麗だろうが。 何だお前ソレ。まさかここでやるのか。 「ライター借りるよ。」 バカお前、こんなとこで 「ほれ、ついた。綺麗だなぁ。」 …ああ。綺麗だな。 「オレやっぱ線香花火好きだわ。」 うん。俺も好き。 「ほら、ここ入れとくぜ。」 あ、バカ!そこは線香供えるとこだっつの! いや線香だけど線香じゃないだろ!花火だよ! テングザルは天狗...
  • 17-149
    いいことあるぞ 失恋した。それも自業自得で。 クラスメイトの女子にあいつとの橋渡しを頼まれて、断る事も出来ずに放課後の屋上にあいつを呼び出した。 のこのことやってきたあいつに彼女を紹介して、あいつの反応を見るのが怖くてそのまま屋上から逃げ出した。 息が苦しい。目の奥が熱い。心臓がいたい。 このまま、ばらばらになってしまいそうだ。 俺の方が彼女よりもずっと前からあいつだけを見てたのに。 俺の方があいつの事を好きなのに。 でも、男の俺じゃ駄目なことくらい嫌ってほどわかってる。 「…い、おいッ!!カナメ!」 「…っ?!」 後ろからぐいっと腕を引かれ、そのままの勢いで腕の中に倒れこむ。 「ひ、ろ?」 「何で、逃げてんだよ」 「…あの子は?」 もう告白は終わったんだろうか。ヒロは、あの子になんて答えたんだろうか。 「…お前が俺に用があったんじゃない...
  • 17-159
    二人まとめて 「兄様」 私が夜枷の術を教えたこの子達は、血の繋がっていない私をそう呼ぶ。 まだ声変りもしていない、少しだけ高く涼しげな声が、二つ。 つい、と藍色の着物の両袖をそれぞれ引かれ振り向けば、案の定そこには二人の少年の姿があった。 「兄様、今日の相手は僕でいいでしょう?」 そう言って笑い、左腕に仔猫のように纏わりついた少年は、それが当然の事であるかのように目を細めて笑う。 プライドが高く、高飛車で、どこか常に人を見下すような態度で他人に常に敵意を抱いている少年。 初めこそそのプライドの高さに手を焼いたが、慣れた今ではこうやって私に対しては本物の猫のように懐いてくる。 「ずるい、今日は僕が相手してもらうんだから」 そう言って私の右腕にぎゅう、と両の腕を絡ませた少年は、小さく細い声だったが強い意志を含んだ目を光らせた。 いつもおどおどとしている...
  • 3-199
    眼鏡とネクタイとスーツ 舌を絡め、上あごをなめあげ、 貧相なビジネスホテルの一室は甘い水音で満たされる。 「ん、ちょっとA太郎、メガネ。あたって痛い」 取ってやろうと手を近づけてやれれば、目をぎゅ、とつむる。 ああ、こういうのは「反射」というんだっけ。 理由は分からないが、なんとなく可愛い。 めがねを取らせるとまた口を押し付ける。 肩口に手をやり軽く押せば口付けを惜しむようなトロンとした目をしたままベッドにくず落ちた。 「オマエ、スーツも脱がずに…シワになったらどうするの」 「風呂入る前に押し倒されるとは思ってなかったから…脱ぐよ」 「着たままで良いんじゃん?  シワ寄ったそのスーツのまま明日会社行って勘ぐられれば良い」 ネクタイをほどきながら首に口付けてやっても、A太郎は笑ったまま止まらなかった。 ...
  • 1-199
    フロッピーディスク×PC 彼は、いつも突然にやって来る。 何の前触れも無く押し入り、体を揺さぶり、中を掻き回すと、 あっさりと出て行ってしまう。 半ば無理矢理に抱かれても、彼を嫌いになれないPC。しかし 元来意地っ張りな性格で、「寂しい」と素直に言うことはなかった。 ある日、彼が「もうお別れだな」と言って出て行こうとする。突然の 事に、PCが驚いて問い詰めると、「今度からは、新しい奴が来る」 と返事が。 「もう俺らの時代じゃない。これからは、CD-ROMが お前の所へ来る予定だ。あいつは俺と違って性格もいいし、お前もその 方がいいだろう」 PCは愕然としながらも、必死に言葉を紡いだ。 「俺はあんただから…だから今まで、ずっと、来るのを待ってたんだ。 あんたじゃなきゃ、誰だって待たない」 初めてPCが心から言った言葉に、胸...
  • 6-199
    午前二時 丑の刻になると奴が来る 普段は忍家業をしているが その習慣なのか、仕事が無い日も奴は 月が沈むこの頃に闇に紛れ 俺の所へ来るのが、非常に好きなようだ 俺としては、丑の刻なんて不吉な時間に 合いに来るのは止してほしいのだが・・・・・ 奴にとってこの時間は俺に逢いに来れるとても幸せな時間らしい 午前二時
  • 5-199
    小指と小指 ゆびきりげんまん うそついたらはりせんぼんのます ゆびきった 幼い頃の約束。 交わしたあいつは、結局蜂の巣にしかならなかった。 親父は、あいつのことを「何の役にも立たない奴だった」と、罵った。 ぼんやりと、冷たくなった身体を想像してみる。 うそついたからだ はりせんぼん のんだから からだじゅうが あなだらけになったんだ こっそりと、激怒する親父を置いて、自分の部屋に戻る。 机の引き出しを開けて 中から、新聞紙にくるまれた固まりを引き抜いた。 「いっしょにいるっていったのに  うそつきは だめだよ  こんどこそ うそついたら はり いちまんぼん のませるからな」 久しぶりにした指切りは、酷く冷たかった。 小指と小指
  • 2-199
    オサーン×ショタ イイトシこいた大人ですからね。まあ色々あったわけですよ。 追い掛けたり追い掛けられたり捨てたり捨てられたりね。危ない橋も渡ったしね。 そんなこんなで、もうすっかり人生の玄人気取り。 でもその分潤いにかけているというか、胸に穴が空いているような空しい気分にもなったりしますよ。 そんな時、一人のショタっ子に出会ってしまうわけですね。 いいトコのお坊ちゃんで、恵まれてて、オッサンとは正反対。 でもそんなショタの純粋さに、少しずつオッサンは参っていくわけなんですね。 実は元親友の息子だとか、そんな裏設定もあったりしてね。 こいつは俺は見守ってやらなくちゃ、と使命感に駆られるわけですよ。 一方のショタっ子は、実はすれっ辛いこの時代を生きていける素質十分の現代っ子で。 愛情に飢えているオッサンにつけ込んで、意のまま操ろ...
  • 8-199
    新学期 例えば小学校。 夏休みプールに通いつめて真っ黒になってた元気っ子 「おまえ何やってたんだよー?真っ白じゃん?」 内気インドア少年の腕を、幼いながらも逞しさを感じさせる手で引っ張って並べてみる どき、っと胸が鳴ったのは元気っ子なのか、インドア少年なのか 理由はその色のコントラストに驚いただけなのか 例えば中学校。 休み中も毎日みたいに部活で顔を合わせてたのに ジャージじゃない久しぶりの制服姿が何故か眩しくて そして背が伸びてたことに気が付いて 嬉しいヤツと、悔しいヤツ 「おめー、ずりぃ!」なんて八つ当たり 「大きくなれよ」と得意気な顔してグシャグシャと髪を撫でたり 例えば高校。 明らかに大人の階段を上がった彼 休み中のあんなことやこんなことを思い出して、にやけてたり赤面してる 教師ぶった表情を繕って教室に入って来た恋人が 自分を...
  • 9-199
    あと1学期 三学期の始業式の日。 あと一学期で高校を卒業する、カウントダウンの始まった日。 三学期はセンター試験までは特別日課で、その後は自宅学習期間に入る。 学校に来て勉強することもできるけど、SHRなんかはもうない。 大好きなあの人に会う時間も少なくなる。 それでも、俺は少しも悲観的な気分になんてならない。 たとえ受験という難関が目の前に立ちふさがっていても。 目の前の道が少しずつ形を成し、かすかな光が導くような、そんな確かな手ごたえを感じる。 始業式の後、図書室で自習して時間をつぶし、他のクラスメートが帰ったのを見計らって、数学科資料室に行く。 クラスの担任が、優しい笑みを浮かべて部屋の中に招き入れてくれた。 いつから好きになったのか、先生の気持ちに気づいたのはいつだったのか、もう思い出せないくらい一緒にすごした。 子ども過ぎる俺は、何度も...
  • 17-189-1
    花火 岡田が、花火大会に誘ってくれた。 「あれ、俺なの?誰か女の子誘えばいいのに」 内心嬉しかったが、同時に不思議に思った。 岡田はバイト先の女の子やらゼミの後輩やらにもてまくり、よりどりみどりのはずだ。 「んー、いいのいいの。……どう?行く?無理?行けるよな?」 自分でそう豪語していたくせに、今日は俺を強引に誘う。 「……はいはい、行くよ、人が多いの苦手なんだけどな。早めに帰ろうな」 小さな地方都市である我が市の、この夏唯一の大イベント。 当然結構な人出だろうと思っていたが、これは想像以上だった。 これでも余裕を見て、始まる30分前には会場の駅に着いたのだ。 だけど、駅から河川敷までの道が、すでに人の波に逆らえない状態。 「……これじゃ、屋台でビールって無理かな?」 「無理じゃないかな、並ぶのも厳しい」 「ッ……はぐれそうだ、加野、手ぇつなぐ?」...
  • 17-139-1
    禁断の恋に走る者と愛より安定を選んだ者 勇者と村の司祭でどーぞ 「本当に行ってしまうのか」 「ああ、俺を待っている人が居る」 「行くなよ、この村にいてくれよ」 「すまない。俺が勇者である限り、俺は自分の運命に従う義務がある」 「お姫様か」 「ああ。魔王に囚われた姫君が、俺の助けを待っている」 「姫を助ければ、お前は間違いなく勇者から王子様へジョブチェンジだな」 「ああ。この運命からも解放される」 「その先に待っているのは輝かしい未来だな」 「そうだな。飢えも寒さもない、一生を保障された生活だ」 「そこに愛はないのか」 「えっ」 「見たこともない姫を愛しているという訳でもあるまいに」 「しかし運命から解放されるためだ、致し方あるまい」 「そうか、わかった。気を付けて行って来い」 「ああ。ところでお前はどうするんだ」 「この村で生活するさ」 ...
  • 16-199
    純情 「…ふざけんなよお前!」 「ビックリした!ちょ、どうしたんスか先輩、急に」 「どうしたじゃねぇ!何?彼女できたからだぁ?!」 「そうなんスよ、実に7ヶ月ぶりの女なんスよぉこれがw」 「そんなこと聞いてねぇよ!てか彼女と遊んでたから練習無断欠席だと!?しかも1週間も!?そんなバカみたいな嘘で許されると思ってんのか?!」 「ちょっと落ち着いてくださいよ!それに嘘じゃないっスよ!…ほら、これ、彼女の写メです。なかなかっしょ?」 「…っ、どうでもいいそんなの!お前な!お前の勝手で部員全員に迷惑掛けたってこと自覚してんのか?!それなりの覚悟はあるんだろうな!?」 「…」 「なにニヤニヤしてんだ気持ち悪ぃな!黙ってないで何とか言えよ!」 「…じゃあ、先輩」 「なんだよ」 「今の先輩ってさぁ…『部の先輩』として『後輩が不甲斐ない』から怒ってるんじゃなくて実は『想い人』...
  • 22-199
    虐められっ子×不良 なんなんだお前。 ヒトの喧嘩にへっぴり腰で割り込んできて次の瞬間ノされてるとか、ホントになんなんだお前は。 「あ、青木君には、この前、助けてもらったし、囲まれてるの見たらつい」 助けてねえよ。馬鹿が調子こいてるのムカついたから追っ払っただけだっつうの。 たまに顔出してみれば……碌なとこじゃねえなあのクラスは。 「でも、却って足引っ張っちゃったみたいで、ごめん……」 自分の上履きも取り返せないような奴が、足手まとい以外の何になるつもりで来たんだ。 メガネ割れてんじゃねえか。成績くらいしか取り柄ねえのに、勉強どうすんだ不便だろが。 「ごめん」 ああもう、いい、いい、いい!前は見えねえ足もガクガクで無理に肩貸そうとすんなアホ。 「でも、俺、あの時すごく嬉しかったんだ。こんなこと言われても嫌だと思うけど。 ...
  • 14-199
    受に抱かれて眠る攻(攻を抱いて眠る受) 「……ぅん…」 寝ぼけて軽く身じろぎをしたカズヤの髪をそっとなでる。 茶色いふわふわした髪に指を絡ませているこの瞬間が俺の小さな幸せだ。 俺の腕の中で眠っているまだあどけなさの残るこの男は、さっきまで俺を組みしいていた。 年下だけど、ときどきそれを忘れそうになるぐらいしっかりしていて頼りになる男。 普段の生活はもちろん、情事の最中までも頼りない俺をリードしてくれる男。 でも、こうして眠っている時だけは年相応に見える。 起きている時は絶対にこんな顔見せてくれないだろう? こんな風に俺に甘えてはくれないだろう? お前が俺達の年齢差を気にしてることは知ってる。 俺は別に気にしてないけど、お前にとっては大きな差だってことも。 だからって、無理して大人になろうとする必要はないのに。 そう言ってもきっとお前は聞...
  • 24-199
    猛獣使い 猛獣使い……人には懐かないとされる猛獣をいとも容易く手懐け、 それを連れてあてどない旅を続ける孤高の存在…… 人々はそんな猛獣使いに、ある一種の憧れと畏れを抱いていた…… 「よぉ、"蛇使い”のエルじゃねぇか!相変わらず辛気臭ぇ顔だな!」 「"獅子使い”レオンか……」 馴れ馴れしく話しかけてきたこの男、馬鹿みたいに陽気で話していると疲れる…… --こいつと会わないように、反対方向に旅してきたのに…… 何故出会ってしまったのか……エルはふっと、溜息をついた。 「どうした?また今日はいつにもまして元気が無ぇじゃねぇか」 「いや……この暑さでチャッピーの元気がなくてな」 「ちゃ、チャッピー……?」 「……あぁ、あいつのことだ」 エルが指さした先に居るのは、大きな白蛇……エルの相棒だ。 「……あいつチャッピーって顔か!...
  • 28-199
    ハーゲ○ダッツを買い込む客とコンビニ店員 よれっ……と効果音の書き文字をつけたいような姿だった。 コートには雨が滲みて、髪もびしょびしょで、寒いのか顔色も悪くて、目の回りだけが赤い。 深夜2時過ぎの住宅街のコンビニに、客なんか滅多に来ない。ましてや今夜は雨だ。 そこへきてそのサラリーマンらしい男が棚のハーゲ○ダッツを全部、全種類カゴに入れて持ってきたので、普段客に干渉したりなんかしない松永だったが思わず「すごいっすね……」と話しかけてしまった。 「……大好きなんだよ、悪いか」 男が気分を害したようだったので、しまったと思い黙る。ピッ、ピッ、と次々にハーゲ○ダッツをレジに通すと 「……以上、37点で11273円です」 と男に告げた。 男は万札2枚を叩きつけると「釣りはいらない」といった。 「や……あの、困るんですけど」 「だっていらないもん」...
  • 18-199
    言い間違い んだから。 前から言ってる。 好きだと言ってる。 お前が信じてないだけ。 お前も周りも信じてないだけ。 つか、んだからさ。なんべんも言うわ。好きだよ。好きなんだよ。 身体はまぁもちろん欲しいですけど? んでも……んだから、心も欲しいんだよ。 お前の気持ち良さそな顔みたいけど、そんだけじゃイヤなんだよ。 や、気持ちいいと思ってくれるならいい。 でもんだから身体だけじゃイヤなんだって。 あー。 アホ臭い。 青臭い。青臭いですまんけど、アンタの心も欲しいんだ。 だから。 だからさ。 だから。 だから、こんな時ぐらい…っつーか、こんな時だけじゃイヤなんだけど、でも今だけでいいから。 今は、今だけでいいから。 今だけでもいいから、俺のこと好きって言ってくん...
  • 20-199
    胡蝶蘭 その噂を聞いたのは、偶然だった。 『ある娼館に、絶世の美を誇る女性が居る』 『彼女見たさに様々な者が金を積むが、なかなか会うことを許されない』 『彼女の名は、胡蝶蘭』 ありきたりではあるが、私はとても、興味をそそられた。 何せ、正体不明ではあるが、『絶世の美人』だ。 しかも、ほぼ誰も彼女の顔を知らないとなれば、好奇心の湧かない男は居ない。 私が窓越しに町並みを眺め、ほくそ笑むと、ノックの音と共に、一人の青年が入ってきた。 黒い髪を後ろに撫でつけ、銀縁の眼鏡の似合う端正な面立ちの彼は、最近雇ったばかりの秘書だ。 名を、青嶋と言う。 「旦那様、にやけ面していかがなさいました?」「ん?今日こそは、あの胡蝶蘭に会わせて貰おうと思ってな。ようやく、それらしい娼館を見つけたんだ。他の奴に取られぬうちに、顔くらい拝みたいじゃないか」 「それは結構なこと...
  • 13-199
    わんこ貴族受け 目の前の男は独身貴族(27)で、いい年にも関わらず 未だに幼馴染の俺の家に毎日やって来ては女のひっかけ方だとかを教わりに来る。 半引きこもりなせいで不健康な白さを放つ肌に、モテようと中途半端に染めた赤い髪が際立つ。 しかしそれ以上に主張しているのは、男の瞳に覆い被さる紫縁のメガネだ。悪趣味極まりない。 「なーなー、教えてくれよー。どうやったら女つかまるかさー」 俺は大きく溜息をつく。 「そんなにヤりたいならまずその悪趣味なメガネを外せ、どっちつかずな髪の色をやめろ、あと肌でも焼け!」 俺が勢いよく叫べば、そいつは「あ、そっかー」などとマヌケな声をあげて、メガネを外した。 「これでモテるかなー」 嬉しそうなその姿は、犬によーく似ていた。 あー、何なんだって感じだよな。人の気も知らないで。 え、オレが受けなの?
  • 23-199
    騎士 「……来た、か」 暗闇の中、低い声が静謐な室内に凛と響く。玉座に在りし王は謁見の間の大扉が開くのを目にし鋭い視線をそちらにやった。 喧騒はもうすぐそこまで迫っている。血の香を纏う空気がどろりと流れ込んで来る。 窓から見下ろした庭はかつて神の苑と謳われた面影はなく、ただ薔薇より赤く染まっていた。 「……」 越権の間に入り込んだ男が持つは赤い雫を滴らせた斧、ゆらりゆらりと歩く様子は既に正気を失っている様子である。 「……王、おうは……どこに」 まるで精神を病んだかのように絶えず身体が揺れ無表情のくせに瞳は血走り、尋常でない雰囲気を放っている。目の前の男こそ王であるとは気づいていないようで、焦点のあわぬ瞳を向けて尋ねた。 王はその口元に笑みすら浮かべて、応えた。 「喜べ、暴徒よ……貴様の前にいる男こそ、この国を統べる王、クライスト=フォン=ルーデルだ」 その口...
  • 25-199
    真っ直ぐな人と裏のある人  時折、お前が眩しい。 いつだったかお前が太陽みたいだと例えたことがあったけれど、それは嘘じゃない。 また適当なこと言って、と笑っていたけれど紛れもなく事実だ。 優しくて明るくて格好良くてまっすぐで可愛くて、輝いていて。 俺にとっての太陽はお前なんだよ。  だからこそ、本当に時々。眩しすぎるお前は俺に暗い影を落とす。 何もかもがダメで汚い俺の、濁った感情を全て浮かび上がらせる。 「や、 やだ、 やめ、ろ……」 「嫌だ」 「と、もあ、き」  きっかけは些細なことだ。単なるヤキモチ。それだけ。でも俺の狭い心をぐちゃぐちゃにするには充分なほどで。 赤らんだ頬に綺麗な涙が一滴流れる。 慌てて彼はそれを隠すけれど、その表情をもっと見ていたくて、右手を無理矢理にどけた。 すると恥ずかしそうな表情で、見ないで、とハスキーな声...
  • 15-199
    トラウマ  洋介は触れられた指先に反応して、コーヒーカップを落とした。  陶器の割れる音がして、黒い液体がフローリングの床に散らばった。 洋介は少年の服に汚れがないのを確認し、あわてて破片を片付ける。  片付けを手伝おうとした少年は 「いいから! 本当にいいから!」 と洋介に全身で拒否され、おとなしくソファに座りなおした。 「なあ、海人」 「あー?」 「お前の兄さんさ。俺の事嫌いなのかな」 「なんで?」 「この前も同じ事あったじゃん。俺が近寄るとビクビクしてるしさ」 「洋介は男が苦手だからな」 「男なのに?」 「男だからじゃない?」 「意味不明」 「わからなくていいよ」 「教えろよ」 「洋介はトラウマ持ちなの。はい、終わり終わり」 「なんだよー」  釈然としない様子で、少年は出されたチョコを口...
  • 10-199
    年下攻め 「あんたなんて大嫌いだ」 「奇遇だな俺もお前のことは好きじゃないぞ」 「大体お前年下のくせに生意気なんだよ」 「働き出したら年下も年上も関係ないでしょう」 「亀の甲より年の功って言うだろうが!」 「そんな言葉ありませんよ」 「あー言えばこう言う!」 「そっちこそ!」 年上だったら、俺がどうしてあんたにだけこんな態度になるのか 気づけよバカ 「もーいい知らない。お前の顔なんて二度と見たくない」 「…あ」 「なんだよ」 「なんでもないですよ!こっちだってあんたの顔見たくないんですから…」 やばい、なんでこんなになってんだ俺… 「…な、なんで泣いてんだよお前」 「泣いてません」 「ちょ、悪かったって!だから泣くなよ!俺いじめっこかよ」 「だから泣いてないって言ってるでしょうが…」 「どう見てもボロ泣きじゃねえかよ!...
  • 8-199-1
    新学期 夏休みは終わった。 久しぶりの教室、俺の席……に、何故かすでに机に顔を伏せて寝ている奴がいる。 「どけ」 椅子を蹴ると、そいつはごろんとうつろな顔をこっちに向けた。 「おー……てっつん、おはよ。」 移動するどころか起き上がるそぶりすら見せないそいつを椅子ごと押しのけ、 代わりにまだ登校していない隣の奴の椅子を持ってきて、俺は席についた。 それでもそいつはまとわりつくように俺に倒れかかってきて、俺はそれを払いのける。 休み前と全く変わらない日常の光景だ。 「おれさぁ、けっきょく昨日もアレでさー、寝てねーんだよ。ねっむー。」 「アホか」 「……あ、てっつんはどうなった?」 「まだ。この前のあそこ」 「あー、あれは意外とヤバいよねー。」 「そういえばお前、この前言ってたアレ何なんだよ。どう見ても……」 「えー?ウソ違うって!何言ってんの!!絶対まじ...
  • 5-199-1
    小指と小指 だれにもみつからないように ちいさくつないだ こゆび ずっと いっしょ そういって わらうあんた ごめんな うそつきなおれで おれがあんたにしたやくそく ほんとうは 熱い固まりが、喉から込み上げてきた。 冷たい棘に延々と刺され続けているような、それでいて何処か生温い幸せ。 崩れ落ちながら、彷徨わせた視線の先には 赤い糸に絡め取られた、四本指の 己の手。 はりは のんだよ でも やくそくは まもったから だから もういちど  そのゆびで  『ゆびきりげんまん こんどは おれのばん  さあ いっしょに おちようか』 恥ずかしがるオッサン
  • 6-199-1
    午前二時 「もー1回だけ!もー1回だけだから!」 「お前なぁ、さっきからそう言ってもう何回目だよ…。」 「んー?何回目だっけー?」 無邪気な笑顔でそう答えられて、疲れが倍増した気がする。 時計を見るともう午前二時。 いい加減もう眠い。 「なーやろうよー、オレ1人でやってもつまんないよー。」 肩を揺するな。 上目遣いでこっちを見るな。 「これで最後だから!ゼッタイおまえ置いて先にいったりしないからさー。」 「…本当にこれで最後だぞ?」 「やったーサンキュー!」 嬉しそうにコンティニューを選択して自機を選ぶのを横目で見つつ、寝るのはまだ先になりそうだとため息をついた。 あつくなったりさむくなったり
  • 17-189-2
    花火  高層マンションで見る花火は素晴らしい。  必死になって場所を取らずに済むうえに、人込みも気にしなくていい。  革張りのソファに座りながら、私は優越感を覚える。これに酒があれば最高だった。  夜空に咲き誇る花達に見とれていると、ドアの開く音がした。玄が帰ってきたらしい。 「ただいま」 「遅かったな。どこに行ってたんだ?」  振り向きもせずに問いかける。玄は隣に座り、片手に持っている袋を見せる。 「花火大会だよ」 「花火ならここで見られるじゃないか」 「いや、花火を見ていたら急に食べたくなったんだ」  彼は袋から次々と中身を取り出した。  たこ焼きに焼きそば、ベビーカステラやチョコバナナ。様々な食べ物がテーブルに並べられる。  落ち着いた色合いのテーブルクロスにはいささか似合わない面々だ。 「わたあめも買おうか迷ったんだが……」 「いい年した大人が...
  • 17-189-3
    花火 「たまやーっ」「かぎやーっ」 カラコロと楽しそうな足音が表を駆けていった。 がらり、戸を開けると待ちきれぬ高揚が通りを埋め尽くしている。 とろけるような夕日が、江戸の町並みを照らしていた。 「何だ、お前ぇんとこのがよく見えるってのによ」 裏から上がり込んだおれを見て、弥太郎は変な顔をした。 「親父が棟梁達と酒盛りだ。わざわざ相模から親戚まで見物に来やがってうるせぇったらねぇ」 はは、と弥太郎は眉を寄せて笑うと、つけていた帳面を閉じる。 「今日は商売になんねぇな」 早めに店仕舞ぇだ、と云って立ち上がった。 屋根に登ると日はすっかり落ちていた。 川辺の喧騒からは遠く、川から吹く風が心地良い。 隣で胡坐をかいている弥太郎は、蚊に食われたと云って脛をぼりぼりと掻き毟っている。 「どれ、貸して見ろ」 「止せ、お前ぇまた噛むんだろうよ」 伸ばし...
  • 17-299-1
    なんて男らしい 話があると部屋に呼んで、小柄な体をすっぽりと胸に包んだ。 ……堪らない感情からと、顔を見ずに済むという理由のためだった。 「祐一のことは大好きだ……でも、別れよう」 髪にそっと口づけながら、とうとう言った。この3ヵ月、考え続けた結論だった。 同僚から恋人へ、想いがゴールを迎えてハッピーエンドのつもりだったが、人生はそう単純じゃなかった。 人は、恋だけに生きられない。 三十という年齢を過ぎて、社内での責任が重くなり、他の同僚が家庭を築き、 家族や親戚から圧力が高まり…… ありがちな、しかし誰でも直面する壁が俺達に立ちふさがった。 祐一はひとり息子だ。これ以上、俺に縛りつけておく訳にはいかない。 「このまま関係を続けても、俺達は幸せになれない。  このあたりが潮時だよ……素晴らし思い出をありがとう、祐一」 なんとか、重くならずに言えたと思う。し...
  • 17-799-1
    敏腕秘書とアラフォー社長 3時のコーヒーをローテーブルに置き「ご休憩をどうぞ」と声をかける。 会社規模にふさわしからぬ手狭な社長室の、重厚な木製に見えるが実は既製品のオフィスデスクに座って、 私が仕える我が社の代表取締役は山と積まれた資料の中で 「ああ、ありがとう、もう3時か」 と、没頭していたパソコンからようやく頭を上げた。 「そろそろ一息お入れになった方がよろしいです、  今日はどうぞこちらで。資料を汚すといけません」 「うん、久しぶりに講演なんか頼まれたからね、なかなか勘が戻らない」 そう言いながらさも美味そうにカップをすする。淹れ方も豆もお好みのはずだ。 「おっしゃいますね。この業界、現場を離れたといえやはり社長は第一人者でいらっしゃるというのに」 我が社は中堅菓子メーカー、社長はその3代目だ。 社長の息子でありながら食品化学の分野で博士号をとり、ず...
  • 17-599-1
    立ち切れ線香 「お前が死んでしまったら、俺は嫌だなぁ」 なんとなく呟いた言葉に、お前は薄らと微笑んで俺の頭を一つ撫でる。 「もしも貴方より先に死んでしまったら、そのときは貴方にこの三味線を線香一本立ち消える間だけ届けてあげますよ」 よくわからないことを言われて眉根を寄せれば、お前の唇がそこに落ちてくる。 「そういうね、お噺があるんですよ」 「ふぅん、そうか」 よくわからなくてもそういう噺があるのだと言われれば、それで納得するしかない。もとより興味があるわけでなし、どういう筋の噺なのかは聞かずにおいた。 それよりもお前の膝が気持ち良くて、俺は目を閉じて意識を眠りの淵に追いやることにした。お前の手が俺の頭を撫でるのもまた気持ちいい。 「……私は、貴方がいなくなっても嫌ですから、どこにもいかないで下さいね」 お前の淋しそうな声に、どこにもいかないと答えたかったけど、俺...
  • 17-899-1
    君だけは笑っていて 痛みという感覚は最早殆どなかった。 しかし死ぬんだなという静かな覚悟だけが存在していた。 その中で思い出したのはやはり弟たち2人の姿。 弟とはいっても俺とは血の繋がらない二人。 寡黙だが心根の優しい慎二と明るく穏やかな幸成。 (兄貴・・・)(兄ちゃん!) こんな頼りない俺の事をそれぞれの形で慕ってくれた。 事故で両親を失って以降はあいつらを幸せにする事だけが俺の生き甲斐だった。 哀しい、辛いと感じた事などは一度たりともない。 ああ、でも結局俺の貞操は保たれたままだったな・・。 薄れゆく意識の中で未だ煩悩が残っている事に冷静に驚く。 好きな人に抱かれるのはやはり何より気持ち良かったんだろうか。 体験してみたかった。 一度でもいいから触れてみたかった。 あいつはどんな顔をしたんだろう。 ここまで考えたところで己のくださなさ...
  • 17-499-1
    指舐め 校舎の屋上で、俺と高梨は5限のグラマーをサボっていた。 高梨は、屋上の入り口のドアのところにある段差に座りながら、誰かが置き捨てていったらしい エロ漫画雑誌をどうでもよさそうにめくっていた。立って反対側からそれを覗き込みながら、 ふと思いついて俺は言った 「口でされるのって、どういう感じなんだろうな?」 「口でされる...?」 俺の言葉に、高梨はきょとんとした表情で俺を見上げた。 「フェラだよ、フェラチオ」 「ああ...そういう意味か」 なあんだという高梨の表情に、俺はちょっとむっとした。 「なんだよ、お前、興味ないのかよ...それとも、経験済みか?!誰だ?クラスの女か?!」 「女と経験なんかしてねえよ。興味も、ないわけじゃない」 経験無いという高梨の言葉に、俺はほっとした。 高梨は顔立ちの整った、穏やかな性格で、女子の間でも人気がある。ぱっと見...
  • 17-419-1
    思い出のなかに生きる人と見守る人 双子の弟が事故でいなくなってしまった。 しばらくして、弟のパソコンを開くと沢山メールが届いている。 全部同じ人物からで、英語だった。 内容は、メールが返ってこないことへの不安がひたすら書かれていた。 弟は最近まで留学していたから、多分そこでできた友達だろう。日本の知り合いには一応連絡をしていたけれど、彼のことは気づかなかった。 僕は弟のメールソフトから、彼に弟はもういないことを告げた。 なのに、未だに彼から毎日のようにメールが送られてきている。 内容は、今日何をしたとか、こんなことがあったとか、そんな些細なことが綴られていた。勉強し始めたのか、短い拙い日本語でメッセージが添えられていた。 「あいたい」「さびしい」「またあいましよ」 彼のメールを読んでいると、まだ弟がここにいるような気がする。 「日本 い...
  • 17-019-1
    売れっ子俳優の弟と普通のサラリーマンな兄 上司のやけ酒に付き合って終電で帰宅。 誰もいない狭苦しい部屋に帰ってテレビをつける。 先に風呂に入ってから持ち帰った仕事をやろうか、などと考えながらチャンネルを回すと、 とても見慣れた、だが何度見ても不思議に見飽きない顔が現れた。 本当に同じ両親から生まれたのか?と思わず親の不義を疑ってしまいそうな、 自分とは違う繊細で、だが男らしい面立ちの男。 ちょうど主役の女性を追い掛けて走ってきた所で苦しそうに肩で息をしている。 その顔ですら男前だから軽くムカつく。 これはたしか去年の秋ドラマの再放送だ。 何度も見たから知っている、この後、男は女に「愛してる」と囁き口づけるのだ。 「俺はさぁ、台詞で愛してるって言う時は全部兄ちゃんのこと考えてるんだ」 「…それは相手の女優さんに失礼じゃないか? それに役者ってのは役に成...
  • 7-179
    きまじめボディーガード×わがまま社長? 「お願いですから、勝手に抜け出すのだけはやめてください。」 今日も懲りずに警備の目をかいくぐって抜け出そうとした社長を何とか捕まえて、いつものお願いを繰り返す。 「お前も本当に真面目だよね。ちょっとぐらい平気だって。」 頭が痛くなってきた。この方はいつもこうなのだ。 ご自分がどれだけ大きなものを背負っておられるのか、それがわかっていないわけではないのだろう。 ただ、警戒心が足りないのだ。有り体に言えば、お人好しで鈍感。 背負っておられるものの重さはわかっていても、ご自分の価値をわかっておられないのだ。 そうして奔放に生きておられるあの方を、人はわがままだと言う。 だが、実はそうではないと私は思う。そう見えるだけだ。 あの方が求めていることは、欲しているものは、同年代の青年なら普通に持っているもの。 ただ一般的な若者が...
  • 7-119
    また、明日 ゆっくり歩いて、今日もふたり、並んで自転車を押しながら、帰り道、人気のない河川敷をゆく。 他愛ないくだらない話をしながら、意味もなく笑いあいながら、僕たちはふたり、歩いてゆく。 芹沢が自転車通学だと知ったのは高校に入って一週間が過ぎたころで、 電車通学にあこがれていたはずの僕は、定期が切れるのを三ヶ月待って、その後すぐに 自転車通学に切り替えた。 理由なんて単純だ。ちょっとでもたくさん、こいつと一緒にいる時間が欲しかったから。 そしてこうしてふたりで帰るようになって、もう二年以上が経とうとしていた。 一年生のときにクラスメイトだった僕たちは、何かの縁でもあるんだろうか、二年生のときも、 三年生になった今も、同じ教室で授業を受けている。 それについて僕は「これって運命じゃない?」とことあるごとに茶化し、 芹沢は「んなわけねーよ」とこと...
  • 17-499
    指舐め 「あっ…、ん…」 下半身に与えられる快感に思わず身体を振るわせる。 すると首輪に繋がっている鎖がジャラと音をならした。 僕を拘束する鎖はご主人様に与えられたものだ。 鎖を意識するとさらに快感が身体中に駆け巡った。 「あぁ…っ」 「汚い…」 達した余韻に浸っていた僕の目の前にずいっと指を近づける。 僕が出した精液がご主人様の指に絡み付いていた。 それを躊躇せず口にくわえ、指の間に舌を這わす。 これは合図だ。 ご主人様が僕に抱かれたいという合図。 一通り指を舐めちゅっと音をさせて口をはなし、手首から肘にかけて唇を這わす。 「自分の精液を舐めるなんて、変態だな…」 ふっと鼻で笑い僕を見下ろす。 汚いものを見るような目付きだが、その奥に興奮の色が見える。 「ごめんなさい…」 言いながらご主人様の股間に顔を埋める。 そこは既に硬くなっており...
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