*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「19-929-1」で検索した結果

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  • 19-929-1
    二人がかりで 見た瞬間に「押さえ付けられて」以外思い浮かばなかったことをお許しください。 で、二人がかりで押さえ付けられるシチュエーションなんかもう一つしか思い浮かばないよね。 二人ということで双子設定を受信。 でもってほとんど見分けがつかないほど瓜二つで、しかも小悪魔系の美少年な双子とか。金髪とかもグー。 あとなにか特殊な能力故に他の人たちから、親からも疎んじられてて、 お互いだけが心の拠り所だったみたいな感じ。 そんな中現れる青年。彼は例えば仕事だったり命令だったり 双子の側にいなきゃいけない関係で、彼らの面倒をみる羽目になる。 でも互いしか自分の世界にいらないと思ってる双子は、青年に反発して むちゃくちゃ嫌がらせしてみたりして。 で、青年は「くそガキども!……ったく何で俺が。勘弁してくれよ」とか ブチブチ言いつつ面倒見のいい苦労性タイプ...
  • 19-929
    二人がかりで 何事も二人がかりで取り組めば、完璧に近い形を作り上げられた。 例えば、夏休みの宿題。 例えば、文化祭での二人司会。 例えば、大学での卒業研究。 一人では不可能に感じることも、二人がかりだと些細な事のように思えてくる。 俺らは自他共に認める最強のコンビで、行く先に怖いものなどない。…はずなのだが。 はぁ、と溜め息を漏らした俺を見て、相棒が困ったように笑った。 「そんなに緊張しないでよ。俺にまで伝わってくるじゃない」 ほら、幸せ逃げちゃうよ? と続けた相棒は、いつも通りへにゃりと表情を崩した。 「この状況で緊張しない方がおかしいんだよ。あー、汗かいてきた」 俺はそう言いながら、黒いスーツに両手を拭いつける。 落ち着かず、ソワソワと体を動かし続ける俺に呆れたのか何なのか。 急に相棒は俺に手を差し出した。 意図を掴めず、呆けた顔を上げた俺に、...
  • 5-929-1
    酔った勢い 酔った勢いだった。 おととい、俺は友人である男と寝てしまった。 酒を飲んで、調子に乗って、あろうことか自分から誘ってしまった。 行為がどんなものだったかは覚えていない。 (まあ、昨日はろくにバイトも出来ないほどずっと腰が痛かったから、 激しいものであったのは確かだとは思う) だけどただひとつ、俺に誘われたあいつが一瞬妙な表情で固まったあと、 赤かった頬を更に真っ赤に染めたことだけは鮮明に覚えている。 そして、その顔を思い出すたびに、ひとつの疑念が俺の中に浮かぶ。 今日もバイトが終わった。 コンビニで酒を大量に買い込んで、また、あいつの部屋に行く。 「お前さー、もしかして俺のこと好きなの?」 きっと、酔った勢いでなら、打ち明けてくれる。 酔った勢い
  • 16-929-1
    年の差主従 「今日からあなたさまにつかえることになりました、あーさーです!」 目をきらきら輝かせながらそう言ったその子を、僕はひきつりながら見下ろした。 「どうしましたか?あなたさまはこのお城のりょう主さまのこうけい者となったんですよ」 そうだ。僕は本当はしがない農夫だったのだが、 ひょんなことからここら一帯を治める領主様の命を助けて、養子になった。 大怪我をしながらも幸い一命を取り留めた領主様の口から飛び出たそれは夢のようなおいしい話で、 毎日腹の音を子守唄にしていた僕はすぐに飛びついたものだ。 しかし、うっかり口をぽかんと開けてしまったくらい立派で重厚な門をくぐり、 初めて乗った馬車に揺られながら美しい庭園を抜けて、車から降りようとしたとき、 馬車の出口で僕を待ちかまえていたかのように手を差し出してきたのが、この、金髪の男の子だった。 「え、あ、あの...
  • 26-929-1
    憎いはずなのに 俺が殺したかったアイツが切られて、嵐の海に落ちていく。 それを見た瞬間、俺は反射的に荒れた海に飛び込んでいた。 何をやってるんだ……。 嵐の海で意識のない人間を抱えて、岸まで泳げるのか? 第一憎んでいた相手を助けようとするなんて、自分で自分が分からない。 それでも動いちまった以上はやるしかなく、必死で俺は岩場まで泳ぎついた。 息も整わぬまま気を失った奴を引きずり岩場を上へ上へと歩き、波の届かない岩の隙間を見つけて中に入りやっと一息つく。 薄暗い中で奴の上半身から濡れた服を剥ぎ取り、絞ってそれを包帯代わりに腹に巻き付け止血を試みた。 思っていたより傷口は浅く、これで何とかなるかもしれない。 初夏だが濡れて体温を奪われ身震いした俺は、仕方なく意識のない奴を抱きしめる。 いつも余裕の冷笑を浮かべている顔は血の気を失い青ざめていたが、整っていて人間離れし...
  • 23-929-1
    いっしょにごはんをたべよう 人の機嫌を損ねないようにといつも自信なさげに喋る鴨居が、今日はいつにもまして気遣わしげな視線をよこす。 心配ごとでもあるのだろうか。不思議に思いながらも「どうかしたのか」と直接に聞くことはせず、大池は缶の中に僅かに残っていたコーヒーを飲みきって口を開いた。 「休みだよ、そりゃ」 「だよな、土曜日だもんな」 「いや、実際土曜休めるのとか久しぶりだよ」 「そうか」 鴨居が焦った顔になった。失言だった、と早くも後悔しているらしい。また迷ったように視線を泳がせ、右手に持ったままの手帳を開いたり閉じたりしている。 高校時代によくつるんでいた友人たちは、鴨居のこういったのろさを面白がって、ときには少し馬鹿にすることもあり、悪い言い方をすれば笑いもの扱いだった。 彼らの意識としては友達同士ののりでからかっているだけだし、鴨居も一緒になって笑っていた。し...
  • 22-929-1
    鈍感な兄←好意を隠すのが得意な弟 質問者:Toya 質問内容:どうしたらいいんだろう  俺、クラスメイトに無視されてるかもしれないです。  俺高2なんだけど、一週間ぐらい前から避けられてるみたいなんです。  最初は一人だけだったのに、だんだん増えてきてて、  もう普通にしてくれるのは三人ぐらいしかいない。  何かした覚えもないのに、どうしたらいいんだろう。  解決方法知ってる人いたら、お願いします。教えてください。  こういうとこに書くのは初めてなんでヘンな事書いてたらごめんなさい。  お願いします。 回答者:AYA 解答内容:とりあえずさ  まず落ち着こうか。タイトルそれだと何の質問だか分かんないよw  んで質問内容だけど、いじめにあってるかもってことだよね?  いじめって特にきっかけなくっても始まったりするみたいだから、 ...
  • 18-929-1
    甥っ子と、おじさんと、おじさんの後輩と 「信じられないな……崎山さんとこうしているなんて」 「それは俺もだよ、そもそも男の子とつきあうことになるとはね」 「ジョシコーセーだったらよかった?これでもピチピチなんだけど」 「誘惑だなぁ、高校生とは清い交際を心がけるつもりだよ、前田さんと約束したしね」 崎山さんは叔父の会社の人だ。 半年前に家族会だとかに無理矢理引っ張り出されて、そこで運命の出会いを果たした。 初恋と気づくまでに一ヶ月、男性相手に悩むことさらに一ヶ月、叔父に相談するまで悩みに悩んでまた一ヶ月。 叔父はさすがにひどく驚いて「何かの勘違いだ」と頭ごなしに決めつけた。 胃を悪くするような思いで、夜もよく眠れなくて、やっと勇気を出して話したのに。 逆上した俺を見て、叔父は考え直してくれたらしい。 それからしばらくたった週末に、叔父は崎山さんとのアポを取ってくれ...
  • 9-929
    アフロ受け 「鬼はー外!福はー内!」 田中さんは4~5歳の子供たちに紛れて無表情で俺に豆をぶつけてくる。 しかも本気だ。俺を鬼だと思ってるとしか思えない。 これでも園児から絶大の人気を誇っている保育士だ。 俺はと言えば、このアフロのせいで豆まきの鬼をやらされる始末。 「やめ、やーめーてくだっ、ちょ!」 「鬼のくせに口ごたえか。むかつく。ユウヤ、行け」 田中さんの命令は絶対であるらしく、もも組のユウヤは何の疑問ももたずに深く頷いた。 目がマジだ。 「オニはーそと!ふくはーうち!オニはーそと!ふくはーうちっ!」 ユウヤ近っ!至近距離はずるいだろ!アフロに豆を絡ませるのをやめろ! 「よーし、これくらいで許してやるか。もう来るなよ、鬼」 もっと初期の段階で出るはずであった台詞のお出ましだ。 「『く、くっそー、おぼえてろー』」 古典的な捨て台詞を吐いてお遊戯室か...
  • 5-929-2
    酔った勢い 明日は結納だと言うのにこんな遅くまでいいのかと言ったら、飲みたいのだと奴が駄々をこねた。 男にも結婚前になんちゃらブルーとかいうのがあるんだろうか。 深酒になった。 「本当はさァ、結婚なんかしたくねぇのよ、俺は」 終電も逃して、飲み代で大枚はたいた後だけにタクシー代は二人合わせても俺の部屋まででギリギリで、いいよ泊まれよ、と久し振りに切り出した。 まだ入社間もない頃は良く終電が無くなるまで飲み歩いた。 こんな風にタクシー代を折半して俺の部屋へ雪崩れ込み、人肌が恋しくて、戯れに抱き合ったこともある。 唇を重ねたのは一度だけ。互いに我に帰り、『酔った勢い』だと笑い合い、それ以降、どちらからか飲みに行っても終電を逃す前にお開きにするようにしていた。 …今日までは。 「結婚したくねぇんだよ」 台所で水をコップに汲んでいる最中も、その声は繰り返した。 それ...
  • 18-929-2
    甥っ子と、おじさんと、おじさんの後輩と 今の10代の男の子ってのは何が欲しいんだろうな」 仕事も終わり駅へとむかう途中、隣を歩く先輩に聞かれた。 急に何を聞いてくるのかと驚いたが、すぐにピンときた。 「甥ごさんにですか?」 「ああ。この歳になるとさっぱり分からなくて困ってる」 先輩が、甥ごさんと一緒に暮らしてから半年が経つ。 先輩の兄である父親と二人暮らしだったそうだが、 そのお兄さんが急に海外へ行くことになり、甥ごさんは先輩と同居することになった。 慌てて部屋の片付けや掃除をする先輩を手伝ったので、俺も良く憶えている。 「俺も先輩と3歳しか違わないので、あまり分かりませんが。  好きなもの買いなさいって、お小遣いをあげるのはどうですか?」 「何度か渡そうとしたんだ。けれど『お父さんからお小遣い貰っているからいいです』って どうしても受け取ってくれなくてな...
  • 19-959-1
    そら涙 正座させてからおよそ十五分。両手で顔を覆い、ぐしぐし鼻を啜るのを目の前にしても、胡坐をかい た俺は沈黙を守っていた。まだ、まだだ。なぜなら、いまの、こいつの、これは、 瞬間、「うぅぅ」と呻いて肩を窄め、身体を前に倒した。丸くなった背が震えるのを見て、ぎょっと した。あ、やばい。まずい、これは、 「おい、亮。あのな、」 思わず「もういい」などと口走りそうになって、慌てて思い留まる。危ない。またうっかり許しちま うところだった。こいつのいつもの手じゃないか。なんでこう同じ手に引っかかるんだ俺は。こいつ は、風呂上りに着替え一式(パンツ含む)を隠して、タオル一丁で部屋をうろうろする俺をニヤニヤ 眺めてたんだぞ。上下とも見つけても、肝心のパンツがこいつの尻の下にあったもんだから、上は着 てるのに下は相変わらずタオルだけという間抜けな格好の俺を笑いやがったの...
  • 19-229-1
    華道家とフラワーアレンジメント講師  花を生けていると背後で人の気配がした。斜め後ろの方からじっとこちらを見てくる気配はまず間違いなく彼だろう。いつもの紺の着流しを着て、腕組みをして。妙に熱心に観察してるはずだ。  いつものことだ。邪魔をしないようにとの気遣いだろう声をかけられたことはない。気になったのは、この家に住み始めた頃のこと。今はごく当然のこととして受け止めている。彼いわく、西洋の文化の良いところも学んで取り入れようと思うとか何とか。そのくせ、派手すぎるとばかり言っている。外国の文化にわびさびを求められても。 (ん……?)  背後の、どこか落ち着かないようなそわそわした気配に気づいて、そっと苦笑する。横目に時計を見て、もうこんな時間だったかと少し驚く。 (まあ、もう終わりますし)  もう少しだけ待ってもらうことにして、終わらせる。 (……よし) 「用事があるな...
  • 19-529-1
    夏休みの宿題が終わらない 「やべえ、提出出来ねー」 「は?宿題は僕が教えてあげたでしょ。何が残ってるの」 「一行日記」 「…はあ?書くネタならあるだろ」 「んなあからさまに見下した目すんな」 「夏祭りも植物観察も図書館も海も、そう不足しなかった筈だけど」 「いやネタ不足って言うか…そもそも完成してない訳じゃねえよ、毎日つけてたし」 「余計意味分かんない。」 「いや、あのな。夏祭りも海も森も図書館も全部、お前と一緒に行ったろ」 「だから?」 「だから、今見直したら俺の日記は、お前と~した、ばっかなわけ。」 「ふぅん。…で?」 「え、『で?』って」 「提出出来ない理由」 「だって彼女とかいないのまるわかりだろー?カッコ悪いじゃん」 「…君は不満なの」 「へ」 「君は不満なの、夏休みの大半を僕と過ごしたのが」 「まあそりゃ、俺もお年頃だか…ん?」 ...
  • 19-119-1
    「ん?」 「なーなー、聞いてんのかよ」 「ん?」 「だから!明日の最終の夜行列車!発車時刻はわかってるよな?」 「ん」 「なにその適当な返事。ホントにわかってる?」 「最終」 「そうだよ最終列車だよ!でもなんか今の言い方ですげー不安が増した!逆に!」 「ん?」 「今の、耳に入ってきた単語を適当に繰り返しただけだろ?アンタやる気あんの!?」 「ああ」 「その『ああ』はどっちへの『ああ』だよ!」 「後者」 「本から目ぇ離さずに言われても、全然説得力ねーんですけど!?」 「ああ」 「だから『ああ…』じゃねえっつーの!自覚してるんなら改善しようぜ改善!」 「ん」 「心こもってねえ……いいやもう。とにかく!明日の最終の夜行列車だからな!」 「ん」 「発車時刻は二十二時、五十三分!脳髄に刻み込めよ!?」 「ん」 「あーもー…知ってるけどな!アンタの性格...
  • 19-129
    手が触れた  携帯が鳴ってる。俺のじゃない。こんなセンス悪い着メロ、断じて違う。 「あ、奥さんからだ」  何だっけな、メロディ。聴いたことあるぞ。  ていうかお前、自分の母さんを奥さんって呼んでるのかよ。 「メール?」 「うん。仕事が終わったから帰るよって」 「仲いいな」 「だろう」  ふふん、と得意気に笑う。マザコンか、こいつ。  違うな。多分母親思いなんだろうな。こいつの口から父親の話なんて出てきたことがない。  だから、きっとこいつの家庭は…。いや、やめとこ。  ぱちん、と携帯を閉じる音。返信はえーな、おい。 「お前さん、夏休みに入ったら何をするのかね?」 「何だよ、その口調は」  呆れた。 「いいじゃないの教えなさいよ。母さんとあんたの仲でしょ」 「誰が親子だよ。同い年だろ。電車来るぞ」 「はい、黄色い線...
  • 19-919
    止めを刺される 昨日一晩考えた。俺は立石のことをどう思っているのか。 一晩中真剣に考えて真剣に自分の気持ちと向き合ってみた。 …まあ時々体育祭とか、あとついこの間の文化祭の時の立石の写真を見ながらだけど…。 他にも立石から来たなんてことないメールとか、くだらない写メとかも見たけど…。 そしてとりあえず出た結論は、やっぱりあいつ外見も内面もイケメンだわ、だった。 うん、俺の気持ちはほら、あれだな。憧れ。だってあいつマジですげえもんな。 顔はもちろん、努力家で頭もいいしスポーツも好きだし人望だってあるし。 ああ見えて実家が寺だかで結構真面目だし、かといってふざけないわけでもなくノリもいいし。 かっこいいからうらやましいって感じなんだな、うん。 「お、おはよう伊藤」 全く罪な男だぜ畜生…なんて思っていたら、正に張本人の立石が下駄箱の前にいた。 「うわ立石!なんだよ...
  • 9-979-1
    息子の友人×父親 「おとうさんを僕にくださいっ!」 それは我が最愛の息子の、晴れの成人式の日のこと。 本日はお日柄もよく滞りなく式も執り行われ、凛々しい紋付袴姿に惚れ惚れと 息子の健やかなる成長を、天国の妻に報告しようと仏壇に向かって手を合わせた時だった。 先ほど帰宅した息子が、友人と二人で引き篭もった奥座敷から、大きな声が聞こえてきた。 何事かと思い襖の陰から中を窺えば、袴姿の若者が二人向かい合い、 我が息子の親友A君が、畳に頭を擦り付けるようにして土下座をしている。 息子は神妙な顔で腕を組み、そんな彼を見下ろしている。 そして再び、 「おとうさんを僕にください」 今度は噛締めるようにしっかりと、腹の底から響くような頼もしいA君の声。 何か昔のテレビドラマなんかであった結婚を許しをもらいに行くシーンみたいだなと、 少しワクワクしてみたけれど、ちょっ...
  • 9-909-1
    お母さんみたい 「あったかい格好してけよ」から始まり「受験票は?」「地下鉄の乗り換えはわかる?」と続いて、 「切符はいくらのを買えばいいか」に到ったとき、俺は去年のことを思い出していた。 世の受験生は、皆このような朝を過ごすものなのだろうか。 昨日まで散々繰り返してきた会話を、当日の朝の玄関先で再びリピート。 俺、受験二年目ですが、昨年はかーちゃんがこんな感じだった。 そんで、朝っぱらからカツ丼食べさせられて、油に中って、惨憺たる結果を生んだのだ。 そのことについては恨んでいない。むしろ感謝している。 なぜかというと、一年間浪人させてくれた上、都内の叔父さんところに下宿を許してくれたからだ。 「それからこれ、頭痛くなったりしたら飲んで。眠くならないやつだから」 手のひらに錠剤を数粒のせて、差し出すこの人が、俺の叔父さん。 「お腹下したらこっち。気持ち悪くなった...
  • 9-989-1
    ふたりだけにしか分からない 市民公園の大きなケヤキ、それをぐるっと取り囲むベンチに座る人影ふたつ。ケヤキを挟んで背中合わせのふたり。 つまらん昔話でもしようか、と、片方が呟く。昔を語るにはあまりに幼すぎる声。 「…昔々、黒い妖(あやかし)がいてな。ここらの村人は皆、夜になると家に閉じこもって震えておった」 背中合わせに座った人影が続ける。 「妖は家畜を襲い、作物を荒らし、井戸の水を濁らせた。  挑みかかった剛の者は皆、翌朝には骨になり転がっていた」 「…訂正しろ。骨なら食えんが、あれはまだ食えた」 「細かいところにこだわるな、お前」 「犬畜生と一緒くたにされるのが不快なだけだ」 明らかに機嫌を損ねる幼い声に思わず苦笑を漏らす、その声も決して年経ているとは言い難い。 「…まぁよい、続けるぞ。  ある日、村に武者修行なんぞという名目で旅をする若造がふらりと現れた...
  • 9-949-1
    妻子持ち×変態 散る火花、電動ドリルの回転音、荷を積載して行き交うトラックの軋み、砂埃、 天を突く事を恐れず真っ直ぐ伸びていくクレーン車の腕が、白日の空には余りに 不調和に過ぎる黒い鉄骨を高々と吊り下げる下で、労働者達の怒号が交差する。 決して気短な人間ばかりではないのだが、種々の工程に付随した騒音が 鼓膜を刺激しない建設現場など未だ有り得ず、スピード、効率を高めることに腐心する 人々は拡声器を握り締め、腹の底から大いに声を張り上げる一方で、かつ瓢箪型を した小さな耳栓に世話になりもした。 作業音に限らず、どんな職場にも耳を塞いでしまいたくなるような害音は存在 するもので、特にそれが人の喉から発された聞くにも耐えない言葉であり、己が身を おびやかす予感すら匂わせていた場合、鉄拳の一つも見舞いたくなるのが 人情というものだ。決して、自分は気短な性質ではなかったは...
  • 9-119-1
    dat落ち 「それじゃ!名無しにもどるよ」 そう書き込んだ君は、それを最後に本当に現れなくなった。 見慣れたトリップはもう使われないんだろう。 『ボロ原付で日本を一周するスレ』 そんなスレがたったのは、一ヶ月くらい前だったか。 「スペック 男 18歳 童貞 原付歴1年半 相棒もうpしとく」 お決まりの文句とともに書き込まれていたURLをクリックすると、 そこにはホントにボロとしか言いようがないカブが どこか頼りない後姿の君とともに写真でうpされていた。 君は左手を細い腰に当てて、右手は人差し指を伸ばしたポーズで立っている。 その指先をたどると『名古屋駅』の文字が見えた。 細い体の君と、ボロボロのカブ。 「無理だってwwwwwもう止めとけwwww」 そう煽られる事もあった。 でも君は気にする様子も無く、旅を続けた。 そしてその...
  • 19-949
    剣の刃を渡る 「今度はスパイだって?随分と無茶をするんだな」 部屋から出た瞬間、そう話しかけられた。 「ええ、まあ任務ですから」 にこやかに答えると、目の前の男は大きく肩をすくめる。 「いくら百の顔を持つあんたと言えど、さすがに内部調査は危険だろう」 「そうですね…もちろん覚悟の上です」 「これはこれは。素晴らしい忠誠心だ、尊敬するよ」 まるでお手上げだ、とでも言うように男は笑う。 「当然のことですよ」 自分も笑いながら対応する。 「では、私は準備がありますので」 そう言いながら背を向けると、トン、と背中に硬い物が当たる感覚がした。 「…なんの真似です?」 後ろを振り返らず、冷静な声のまま尋ねる。 「はは、流石だな。もうとっくにスパイのあんたがこんな物にビビるわけねえか」 先程と変わらないトーンのまま男も続ける。 「分かってるだろ?俺はあんたの正体...
  • 1-919-1
    わんこ×ぬこ 「私の前でそのデカイ尻尾を振り回すな鬱陶しい…」 目の前を、茶色くて大きな尻尾が緩やかにパタパタ動く。 ついつい習性でその尻尾をパンチしながら、私は気だるげに言った。 「ああ、すまん…。今日はご主人様がお出かけで、お前と二匹っきりなのが嬉しくて、ツイな」 馬鹿なことを言うので、私はその尻尾を両手でハシッと掴んだ。 そのまま口元に運び、柔らかく歯を立ててじゃれてやる。 「こら、くすぐったい。……ああでも、お前の肉球は気持ちいいかな」 「犬の肉球と一緒にしないで貰いたい。いいか、我々の肉球の柔らかさと言ったら―――」 「肉球話はもう何度も聞いたよ。……さてと……」 そう呟いた犬は、のっそりと立ち上がり、私の首ねっこをアムリ、と咥えた。 そのままダランとした状態で、私は運ばれてゆく。 「……何処へ行くんだ」 「今日はとても天気がいい。窓際...
  • 8-919-1
    小さな死  大きな体を震わせて、君が泣いている。  太陽のように明るくて、何時だって元気な君。そんな君がこんなに泣くだなんて思っていなくて、俺は慰めることも出来ずに立ちすくんでいた。  足元には小さな墓石。良く見なければ庭に落ちている単なる小石と思ってしまいそうなそれに、君の歪な字が並んでいる。  君の目から溢れる涙が墓石と土を濡らして、まるで雨の跡のように大地が色付いた。 「笑うなら、笑えよ……」  何も言えず立ちすくんでいた俺を、見る事無く君が言う。自嘲気味な色を含んだ沈んだ声は、押さえきれぬ涙を笑って欲しいといっているようだった。  俺はゆるりと首を振って、静かに君の頭へと手を伸ばした。母親が子供を慰めるように、ゆっくりと撫でてやる。  ごわりとした短い毛が掌にあたって、ほんのりくすぐったい。 「笑うもんか。大切だったんだろ」 「……格好悪いだろ、小鳥一匹...
  • 19-909
    二対二 ……合コンって、普通もっと人数を集めるべきだろう。 そう思ってしまうのは、現在この場に居るのが男女合わせてたったの四人、 つまり男二人に女二人の、二対二という酷過ぎる状況だからだ。 その上、俺以外のもう一人は顔よし性格よしおまけに仕事は銀行勤めという、非の打ち所のない好青年だ。 今を遡ること二十年、俺とこいつがまだお互い小学生だった頃は、 泣きながら俺の後ばかり付いてきていたというのに、一体どうしてこうなってしまったのか。 まったくもって、時の移ろいのはかなさ空しさばかりを感じてしまう次第だ。 ちなみに向かいの席に座っている女の子二人はどちらも容姿のレベルが高く、ついでにプライドも随分とお高いようだ。 よくて中の下、悪くて下の上のフツメン以下の俺など眼中にも無いようで、二人揃ってヤツのことばかりを虎視眈々と狙っている。 「坂元さんって、東部銀行にお勤めな...
  • 19-969
    インテリと不良の攻防 踏み出すたびに深く沈み込む、絨毯の感触に閉口する。 最上階が奴のオフィスだ。馬鹿と成金は高いところを好むらしい。 入口に背を向け、硝子越しに夜景を眺める人影に声を掛ける。 「相変わらず羽振りはよさそうだな。ヤクザな商売だ」 人影は特に驚いた様子もなく、ゆっくりとこちらを振り向く。 「どういたしまして。社会正義のために粉骨砕身働いているよ」 奴は備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを二瓶取り出し、一瓶を勧めてきた。 「済まないが、仕事場にアルコールは置かない主義でね」 「…………」 「ああ、別に何も入ってないよ。神に誓ってただの水だ」 ほら、と開封して一口飲んだそれを、押しつけるように手渡される。 少なくとも無害ではあるらしいが、飲みたい気はしなかった。 ただ、ひんやりとした感触が火照った掌に心地いい。 「聞いたぞ。最近黒いお...
  • 19-979
    正統派RPGの勇者と魔王 黒く長い髪に金色に煌めく瞳、豪奢な刺繍の入った漆黒の衣を身に纏う男がひとり、暗闇の中に佇んでいる。 彼は「魔王」だった。人類が文明を築く遥か以前より存在し、数多の魔物を従える魔族の王。 いつしか地上を我がもの顔でのし歩くようになった人類と、過去何度も地上の覇権をかけて争い その度に勇者の力を持つ人間に倒されては地の底に封印されてきた。 そんなことをもう何百年も繰り返している。 今回もその繰り返しの中のひとつだった。長い時間を経て緩んだ封印を破り、魔王は再びこの世界に姿を現した。 早速各地に魔物を放ち、幾つもの国を支配下に置いた。 魔王城は連日の宴に沸いたが、魔王の心は満たされない。未だ己を倒すに値する「勇者」が現れないのだ。 兆しがあったのは半年ほど前だった。 辺境の国からひとりの少年が旅立った。取るに足らない存在であると思っていたのも...
  • 19-959
    そら涙 1年ぶりの町は何も変わっていなかった。電車を降りてこじんまりとした駅に着くと 俺はまっすぐにあいつの元へと向かった。 空はオレンジ色に染まり、そろそろ日が沈もうという頃。田舎の小さな駅だけあって 行き交う人の姿もまばらだ。 そんな駅から歩いて10分程の墓地に、あいつは眠っている。 「去年ぶりだな」 墓石に水をかけて花を供えると、俺は奴に話しかけるようにそう声をかけた。 こうして毎年墓を訪れるようになって、もう5年になる。 「なあ」 一呼吸置いてから、俺は再び口を開いた。これも毎年のことだ。 「…俺はお前なんて嫌いだったよ」 こいつとはこの町で2年と3ヶ月一緒に暮らしたけれど、次第に嫉妬深くなり友人と遊びに 出かけただけで誰と何処へ行ってきたのか、俺に逐一報告させようとするこいつに段々と 嫌気がさしていったのはやむを得ないことだっただろう 暴力を...
  • 7-929
    ラブホテル相手が目の前にいるのに自家発電 どうしてこんないかがわしい内装の部屋で、そんなにすっきりした顔で眠れるんだよ…。 心の中でそう呟いて、俺は何度目かのため息を吐いた。 二人で旅行しようと計画を立てたのは昨日。 月曜日が祝日だからと、三連休を一緒に過ごそうと話し合った。 けれど、それは単なる話のネタだったはずなのに、 今日になって杉浦は俺の家を訪ねてきた。 「旅行に行くんだろ?」 不思議そうにそう言った杉浦の顔を、俺は決して忘れない。 いい思い出にしようなと言い合いながら、二人で自転車に乗って家を出発したのはいいものの、 何の準備もしていなかったからこんなホテルに泊まるしかなかったのだ。 つまりは、ラブホテル。 金欠の高校生が入るには敷居が高かったけれど、杉浦は何の抵抗もなく入っていった。 もしかして彼女と来たことがあるのかもしれないとか、 も...
  • 10-929
    ttp //www.post.japanpost.jp/navi/r-133.htmの **くん×書き手 俺宛てにあいつから相談メールがきた。 連絡なんて卒業してから今の今まで一本も寄越さなかったのに 突然すぎる。 結構びっくりはしたが、あいつらしい 慎ましい文章に懐かしさを感じ、同時に少しだけ胸の奥が痛んだ。 この気持ちが恋だと気付いたのは出会って3年目、高校最後の春。 ん、告白さ、したかったんだけど…俺には無理だった。 仕方ない、せめて少しでも一緒にいられるように俺は積極的に話し相手兼相談相手役になった。 なんだかんだであいつといるのは楽しかった。どんな些細なことでもあいつが話すことなら何でも聞いた。 いつの間にかこんなに月日が経ってたんだな、とメールを見て改めて思い知らされた。 彼女についての相談を、俺はあの頃と同じように聞くことができるだ...
  • 9-229-1
    たんぽぽ 春になると幼稚園以来の友人がよく持ち出す話題がある。 幼稚園の頃オレがあいつを苛めて困らせた思い出話だ。 当時あいつはタンポポの綿毛を飛ばすのが大好きで、 綿毛になっているのを見つけては吹き飛ばしまくっていた。 あいつがあんまりタンポポに夢中だったから、まわりの子どもや先生も あいつにタンポポの綿毛をあげたりしていた。 でもオレはそういう奴らの差し出すタンポポの綿毛を横から ぷうぷうと吹き飛ばしまくった。 オレは結構そういう悪戯をする子どもだったけど、あの時は 徹底的に邪魔をした。 そうするうちにタンポポはどれも葉っぱだけになった。 「あれすごく嫌だったなあ」 「…ほい、どうぞ」 友人に綿毛のタンポポを差し出した。 友人は笑みを浮かべて受け取るとふうっと校庭に向かって吹いた。 友人にタンポポの綿毛を差し出すのが昨年以来の二人の遊びになった。...
  • 9-829-1
    ノンケ親友に片思い 兄さん、お元気ですか。そちらは相変わらず暑いですか。 今日は下宿先に春日が、貸していた本を返しにやってきました。 上は白い袖なしのランニングシャツに、紺色のジーンズを履いて、 足元は健康サンダルと、いつも通りの気安さでした。 春日とオレは本の好みが似ているみたいで、 この時の本も気に入ってくれたようでした。 板塀沿いの木戸をくぐったら裏庭があって、犬小屋があって、 縁側が張り出していて、棹に干した洗濯物が揺れていて、 お世話になってる下宿先のご夫妻は旅行に行ってて、だから今日は 日がな一日オレが留守番をしていて、冷蔵庫を開いて麦茶のグラスに 氷を入れて、しま模様のストロー立てて、 風鈴がちんちろ鳴ってる下で、サンダルの足をぶらぶらさせながら、 春日とオレは本の話をしました。今度映画になるのもあって、 それは見てみたいなあと、春日は言っ...
  • 19-139-1
    好きな人に似た人 「そういえばさー」 ようやく書き終わったレポートやその他諸々をバッグに入れて席を立とうとしたとき、 向かい側に座っていた雪也が口を開いた。 「ここのところ、先輩に似た人をよく見かけるんだよね」 『マックにでも寄って帰るか。レポートの面倒みてもらったし、今日は奢ってやるよ』 そう声をかけるつもりでいた俺は、不意をつかれて眉を寄せた。 「なんだよ、急に」 「最近、近藤先輩に似た人を見かけるって話」 雪也から『近藤先輩』の名前を聞くのは久しぶりだった。 久しぶりと言っても、雪也がその名前を口にすることを避けていたわけではない。 単に、俺が聞くのを避けていただけだ。 「……先輩に似た人?なんだそりゃ」 「なにって、まんまだよ。先輩によく似た人」 あの先輩のことを話す雪也はいつも嬉しそうで楽しそうで、俺はその度に複雑な気持ちになっていた。 今も...
  • 19-169-1
    あなたの子供が欲しいのに 「貴仁義兄さん。いきなりですが、今日は折り入って義兄さんにご相談が」 「まあ茶飲めや。しかしお前が俺に相談なんて珍しいなあ」 「あなたのお子さんを俺に下さい」 無情にも彼の率直な願いは、彼の義理の兄によるアッパーフックではね除けられた。 「義雄よ、俺は残念だよ。非常に残念だ」 「クッ……義兄さん、危うく脳震盪起こしかけるほど見事な攻撃でした……」 「誉めんなよ。照れんだろ?」 「誉めて無いですよ!」 「で、なんの話だったっけか」 「だからあなたの子供が欲しいからおくれって話……や、ちょっ構えを取らないで構え」 「ああ、スマンいつもの癖でイラッと来るとつい。……えっと何?お前ってホモだったの?」 「ええ。姉は知ってますよ。ちなみに俺の初恋兼恋人は義兄さんの同僚の義純さんです」 「マジでっ!?あ、あーでも確かにアイツボディ...
  • 19-149-1
    俺の方が好きだよ! 「あ、猫!」  俺の隣を歩いていたツレが、突然足を止めて声を上げた。  振り返ると、道の隅に丸くなってまどろむキジトラの猫。  ツレは猫から1m程離れたところにしゃがみこむと、猫に向かって手を伸ばし、ちちち、と舌を鳴らした。  それに気付いた猫が目を開け、億劫そうにツレを見上げる。 「エサもねぇのに、野良猫が寄ってくるわけ……」  言いかけた俺の言葉が、途中で切れた。  のっそりと起き上がった猫がツレに歩み寄り、ふんふんと手の匂いを嗅いだ後、その掌に顔を擦り寄せる。 「うわー、かわいい。人に慣れてるんだね」  満面の笑みを浮かべるツレと、その手に撫でられて満足そうに目を閉じている猫を見て、ただ呆然。  いやいやいや、ねぇから。  学校の行き帰りに何度も見かけたその猫を、俺が何回撫でようとしてシカトこかれたと思ってんだよ。  最後の手段と...
  • 19-109-1
    ウザカワ受け 幼馴染でクラスメイトの巧は相手の迷惑というものをまず考えない 今日も突然家に訪ねてきたと思ったら、シャツを2着突きだして聴いてきた 「将志はどっちがいいと思う?」 「は?」 俺は勉強の手を休めて巧が持ってきたシャツを見比べた。どちらがいいと聞かれたって 俺にはファッションの知識もセンスも全くない。 普段着ている服だって、マネキンが着てるやつを丸ごと買ってるからそれなりになってる だけであって、趣味もこだわりも何も無いのだ。それは巧もよく知っている筈なのだが… 「どちらでも同じじゃねーの?」 「全然違うよ!どこに目を付けてるのかなぁ?」 巧はさも信じられない!と言いたげに語気を強めたが、俺にはどちらもヒラヒラしていて 女が着るような服だとしか思えない。 だがそんな服でも巧は似合ってしまうのだ。 小柄で細身、睫毛の長い大きな目、ふんわりした栗色の...
  • 9-729-1
    お墓参りの帰り さっきから小さな足音がついてくる。 振り返るのがこわい。 逃げるのもこわい。 (大丈夫。きっとばーちゃんが守ってくれるから) 最後にばーちゃんから貰ったお守りをギュッと握りしめて、何度も自分に言い聞かせていた。 今日は三年前に死んだばーちゃんの命日だった。 お墓には花とまんじゅうだけで、お線香の煙も寂しかった。 去年は三回忌で、一昨年は一周忌だった。 父ちゃんも母ちゃんも『今年は特別じゃないからさみしいね』って言ってたのに。 でも、ぼくがいるからね。 ばーちゃんの大好きだったビールと、いい匂いのするお線香を、お年玉の残りで買って来たよ。 ばーちゃんに『また来るね』って言って、お寺から出るときに気付いた。 さっきからずっと、誰かが後を歩いてる。 ぼくが早足になると、足音も速くなる。 ゆっくりにすれば、ゆっくりになる。 おばけ...
  • 19-159-1
    優しい手 「ちょっと二人で話がしたいので席を外してくれないか?」 久しぶりに遊びにきた友人が彼に言った。ドアのしまる音がする。彼の気配がなくなる。 「最近誰もこの館に来ない理由を知っているかい?」 「忙しいんじゃないのかな」 「違うな。君に愛想を尽かしたんだ」 「そりゃあ、僕といてもつまらないだろうね」 「君が事故で視力を失ってもう10年経つ。いい加減ある程度のことは自分でできるようになっているはずだ。なのに君は未だに彼がいないと何もできない」 「彼の仕事は僕の世話をすることだ。彼は僕の目になってくれる」 「食事くらい一人でできるだろう? 階段を下りるくらい抱えられなくてもできるだろう? シャワーを浴びる時でさえ彼はそばにいるらしいじゃないか」 「君は目が見えるからそう言えるんだ」 「彼がわざと皆と君を遠ざけているという話も聞く。僕は友人のひとりとして心...
  • 8-929
    ホットカーペット 「おい、なんでカーペットのスイッチ『半面』にしちゃうんだよ。電気代対策か?」 「『全面』にするとお前が離れるから」 悪いことしよう
  • 2-929
    慇懃無礼部下×短気真面目上司 「なぁー飯いこ、飯ー」 「‥‥昼休みまで後1時間あるだろ?仕事しろ、仕事」 「腹減ったぞー、カレー食べにいくぞ、カレー。あ、お前の奢りな」 「聞いてるのか!?仕事しろと言っただろ!」 「カツ丼でもいいぞ」 「だからまだ早い!そして何で私がおまえと昼食を食べないといけないんだ!」 「恋人同士だから当然だろ?」 「誰がだ!ふざけるな!!!」 「あ、なんなら昼にお前を食べるというお約束でも…」 「仕事場で変な事するな!」 「仕事場じゃなかったらいいんだな?」 「…は?」 「よし、じゃあ晩飯一緒な。で、晩飯がお前」 「は!?お、おい、こら、ふざけるな!」 「お、真っ赤だな、まんざらでもないって事か、よしよし」 「うるさい!」 「じゃあまず、昼飯な」 「人の話を聞けーーー!」 夏祭り、花火を見つつさりげなく…(告白、キ...
  • 6-929
    ツンデレ攻め×素直クール受け 「全く……どいつもこいつも使えない馬鹿ばっかりだ!」 俺達以外誰もいない、しんと静まり返ったオフィスに怒号が響く。 会議から戻ったあいつは盛大に毒付きながら、資料を机に叩き付け、 苛立ったように椅子を蹴飛ばした。 どうもまた部下達の成績が思わしくなく、上にチクチク嫌みを言われたらしい。 机から滑り落ちた書類を丁寧に拾い上げながら俺は溜息を吐いた。 「お前やり過ぎ。あんなに年中頭ごなしに怒鳴りつけてたら、連中だって萎縮して当然だろ。 俺にしてくれるみたいに、他の奴にも少しは優しくすればいいのに」 「ハ!真っ平だね。あれ位で音を上げるようならサッサと辞めちまえばいいんだ。 大体俺が誰に優しくしようと俺の勝手だろう。お前が口を出すな!」 「まあ、お前が俺だけに優しいのは嬉しいけど」 ほらよ、と拾い集めた書類を差し出せば、あ...
  • 19-019-1
    滅びを予感する軍師 その軍師は、今帝の物心ついた時分より老人であった。 年輪のように刻まれた皺は深く顔に貼り付き、まるで生まれた時から老人であったようでさえある。 その灰色の眼は、今帝、先帝、先々帝と三代に亘る治世を見守ってきた。 実の正体は仙人であると囁かれるのも無理はない。若い姿を知る者は最早この宮廷には居ないのである。 さて幼き頃よりこの軍師に稽古をつけられし帝もちらほらと白髪の混じり始めた初春、 かねてより勢力を増していた西の異国が大陸の向こうより騎馬20万もの大軍で押し寄せてきた。 対する自軍は5万、小国ながら軍師の策により初めは拮抗していたものの、 夏にもなると若き国、若き軍に押され始め、遂に疲弊しきった自軍は僅かに宮廷を守るのみとなってしまった。 かつての美しかった都は焼け、民は南の国へ次々と逃げ落ちた。 今にも帝の玉間に敵軍の蹄の音が聞こえ...
  • 9-629-1
    年下の先輩 昨今の囲碁ブームに踊らされて、初級者教室の門を華麗にくぐったのが 半年前だ。仕事帰りに一端緩めたネクタイを、鉢巻代わりに、も一度 きりりと締め直すのが毎週水曜夜七時。パチリパチリといい音響かせ、 「音は良くなりましたね」と無理のある褒め方をしてもらったのが、 ついこの間の水曜日。たまにはサロンの方にも顔を出して、へぼ碁の 相手を探そうかなあと同じビルの階段を一つ昇ったところ、人の影、 聞き覚えのある話し声、震える言葉、駆け降りてくる、駆け抜けていく 見慣れた学生服の見知った少年の背に不穏なものを感じ、踊り場を 見上げると、いつも馴染んだ羽織姿の、温かな笑みを崩したことのない 指導の先生のその瞳、縁なし眼鏡の奥の底、青ざめた表情に反射的に きびすを返し、何があったのか、とにかくさっきの高校生の姿を求めて 追っかけっこを始めたのが五秒前、日曜日の午後...
  • 9-529-1
    男ばかり四兄弟の長兄×姉ばかり四姉弟の末弟 「駄目だ」 掴んだ腕は、簡単に振り払われてしまう。 「お前には背負っているものがあるだろう」 それでも僕は追いすがる。 離すものかと、両の手で彼の右腕を掴む。 「背負っているのは総一郎さんだって同じことだ。僕も一緒に」 「それは出来ない」 「どうして」 「お前がいなくなったら、家督は誰が継ぐ」 「元々僕には家を継ぐなんて無理です。知っているでしょう、僕は絵描きになりたいんだ」 「……」 「それに、才覚だったら夏子姉さんの方がずっと」 「篠塚の家に、男子はお前だけだ」 突き放すように言われた言葉に、僕は言い返すことができない。 ――嫌だ。 彼に会えなくなるのは嫌だ。 彼が僕の前から姿を消すなんて、耐えられない。 「黙っていますから」 気がつけば、自分でも惨めだと思うほど、彼に縋り付いて...
  • 3-929
    色黒攻めと色白受け 事を終えてぼんやりとする頭の中ガウンを羽織ろうとした俺に、奴が後ろからがばりと抱き付いてきた。 三度もイかせてやったのに何でこんなに元気なんだと思いながら向き直ると、相手は子供のようにぷぅっと頬を膨らませている。 「ずるいと思う」 「何が」 「だって、お前の肌だとキスマーク目立たないじゃん。不公平だ」 どうやら、首筋に点々と付けた口付けの痕に対して不平を言っているらしい。 今までそんな文句を吹っ掛けてきたのは皆無だったのでよくよく話を聞いてみれば、 なんでも仕事場の同僚に襟から覗いたそれを見咎められてしまったそうだ。 「すっげからかわれたんだ、俺は」 「あ、そう」 「だから今日は、無理やりにでもそっちの肌に痕を残してやろうと思います」 ぐっと拳を硬く握って宣言する奴に、俺は少々うんざりとした顔で尋ねる。 「……いや、お前俺の仕事知ってて...
  • 1-929
    壁一枚の隔たり カタカタカタ、とタイプ音が狭い部屋に響く。 部屋の電気は切れかけているから、 ライトスタンドとディスプレイの青白い光だけが部屋を照らす主な光源。 いつものようにパソコンを立ち上げる、いつもと同じ午後十時。 そろそろだ。 ディスプレイから目を離して軽く伸びをした。 マグカップに手を伸ばしたとき、望んだその音を耳がしっかりと捕らえる。 ガチャリと響く音も、聞き慣れたいつものもの。 「…………」 息を殺して軽く耳をそばだてる。薄い壁の向こうでキッと椅子が鳴り、 すぐにブウ…ゥンとパソコンの起動音が聞こえてきた。 家賃が安いだけが取り柄のマンションだ。 プライバシーなんてあるようでないのかもしれない。 「……っと、やべ」 ほの青く光るディスプレイに目を戻す。キーボードに指を滑らせて、 またいつものスレッドを開く。カタカタ、カタカタ、微かに重なる...
  • 5-929
    酔った勢い 「俺はホモじゃない」 素面の彼は少し困ったような、そして何か忌まわしいものを見るような表情で俺を見た。 分かっていたはずなのに。思春期になって初めて好きな女の子ができたとき、彼が真っ先に向かったのは俺の所だったのだから。 それ以来彼は無類の女好きで、俺が自分のセクシャリティーについて悩んだ時も彼は女性を目で追っていたのを覚えている。 なのにどうして告白なんか…。言ってしまってから気が付いた。 もう友達には戻れない。「お酒の所為で…」なんて言い訳、通じない。 下唇を噛み締めて、震える身体を彼から隠した。 酔った勢い
  • 4-929
    キセキ 「復学おめでとう」 十二分考えて出た台詞を口にすると、ようやく俺の存在に気付いた南野は振り向いた。 「ありがとう」と短く答えて微笑む頬は、痛ましいほど痩せている。 久しく無人だった研究室の中は、たった半日でずいぶんと片付いていた。 珪酸塩鉱物の結晶の成り立ちにしか興味なかったはずの教授が、息子の年のような舞台役者と一緒に冷たい滝壺に飛び込んだ一年前。教授を文字通り敬愛していた南野は壊れた。 教授の死の話題が出た時、得たりとばかりに老いらくの青年愛について下世話な一説をぶち上げた助教授の顔面に拳を叩き込んだ南野は、明らかに助教授を殺す気だった。 俺は人生で、あそこまで殺気に満ちた人間を見たことはない。 退学になった後、南野は故郷に戻ったという話を聞いたが、俺はそこを訪ねることはしなかった。 そもそも一高時代の同級生という縁だけで、深い交流があったわけで...
  • 26-919-1
    ブルーカラー×ホワイトカラー 蒼、蒼、藍色瑠璃の色。 濃淡様々な青色が、空と海とを描き出す。 一見冷たい印象を抱かせるその色が、暖かみを得るその一瞬が、他の何より好きだった。 「青」 一息ついた背中に声をかける。キャンバスに向かっていた青い瞳がこちらを移し、明らかな喜色を孕んでみせた。 「白」 その笑みに微笑み返し、俺はキャンバスの前まで歩みよる。 「見事なものだな」 巨大なキャンバスを目の前にして、俺は言った。すると青は少し照れたようにしながら、あの人に捧げるものだもの。と胸を張った。 1ヶ月後の今日。俺たち色は、全てを作りだして下さった方に会う。それは一年に一度のお祭りで、その時俺たち色は、全員で協力して描いた一枚の絵を、あの方に捧げる。中心となる絵は毎年変わるが、今年は青が、その大役に就いていた。 「見事なものだな」 空と海をとっくりと眺め、もう一度、俺...
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