*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「2-519」で検索した結果

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  • 2-519
    ポジ×ネガ 「リュクサンブールかな?」 色彩の反転した異国の街並みを、矯めつ眇めつ眺める。 いつもの事ながら奇妙だとポジは思う。 同じ景色を見ていても、うつるものは真逆なのだ。 けれど、こうして彼を頼りに、自分の姿を容易く思い描くことができる。 「君は写真であって写真じゃない。写実とは違う、不思議な魅力がある。」 何の前振りもなくポジは言った。 ポジは良くも悪くもストレートな男だ。忌憚がない。 「自分に無いものだから惹かれるのかも知れないな、君に。」 「…俺はあんたが大嫌いだ。あんたの色は一々目に痛い。」 ネガはとっさにそう返し、ポジは随分嫌われちゃったなぁとぼやいた。 しかし声色には僅かに笑いが滲んでいる。 ネガはそれを黙って聞いていた。 率直なポジとは対照的に天邪鬼な性分だから、 口を開けば思いと裏腹な事を言ってし...
  • 22-519
    ロボット×ヘタレ妖怪 昔々ある樹海に、一匹の弱虫なサトリが住んでいました。 本来サトリとは、他者の本音を漏らさず読みとる力を持ったとても強い妖なのですが、このサトリはどうにも臆病で脆弱な質でしたので、都で人間達の心の真ン中の、真っ黒くて汚い部分を嫌というほどに知ってしまった結果、 すっかり人間という存在に恐れ、そして不信の念を抱き、誰も訪れないような樹海の奥深くで、一匹ひっそりと暮らしていたのでした。 何十年、何百年と変わらない暮らしに変化が訪れたのは、一体何時頃でしょうか。度々、人間がサトリの住む樹海に迷い込むようになり始めました。 彼等は森をやたらに荒らすわけでもなく、ただ適当に居処を定めると、首吊り・服毒・断食とやり方は様々なれど、一様に己で己の命を摘み取るのでした。 それを不思議に思ったサトリが、偶然見つけた一人の死に損ないの心をぱっくりと覗きますと、どう...
  • 7-519
    駄菓子屋 久々に滞在した田舎は、ひどく懐かしく、そしてひどく空虚だった。 こんな季節外れに帰省したぼくが悪いのだけど、めぼしい幼なじみたちはほとんど不在で、 ぼくは誰と会うでもなく、ただ朝晩母の手料理を味わって過ごした。 それはこの町を出ていく人間がいかに多いか表している。 ぼくもその例に漏れない。 今の学校を卒業したら、そのまま東京に居着くだろう。 だってこんな空虚な町に。 ただ懐かしいだけの、今は空っぽな町に、どうして帰りたいだろうか…。 それは都会の密度に慣れた、ぼくの傲慢さかもしれないが、そう思わずにはいられなかった。 車の通らない路地をとろとろと散歩するぼくを、下校途中の小学生たちが駆けっこしながら追い越して行く。 ねえ君達、知ってるかい。あそこのシャッターが降りている店、あれは昔駄菓子屋だった。 ぼくは小銭を握りしめて、近所...
  • 1-519
    ぶっかけ スポーツマン系の新入社員、元気くんがいる。さわやか好青年で誰からも好かれるタイプ。 メガネの上司がいる。いつも冷静で、むだ口はたたかないタイプ。 でも、たまに笑うと目元にしわがよってかわいい感じになる。 それが元気くんにはたまらないわけだな。 元気くんとメガネくんはできていて、残業後の誰もいないオフィスで不埒な所業に及んだりする。 メガネくんは見た目のストイックさからは想像も付かないくらい、エッチには積極的。 元気君のうまい棒を自分から咥えて、あえぐ元気君の姿を上目遣いで見て楽しんだり。 元気君はすぐにガマンできなくなって、「もう離して……俺もう……ッ」とか訴えるんだけど メガネくんは面白そうに眉を上げるだけでしゃぶりついたまま離してくれない。 ムリヤリ引き剥がそうとした元気君、間に合わずに発射。メガネくんの顔に飛び散る白濁。 「すすす、すみません!」...
  • 9-519
    福袋 風邪で寝正月になったあの人に、福袋を買った。 早く渡して、喜んでもらって元気になってほしくて、小走りで道を急いだ。 それがいけなかったんだ。 道路脇の学校のグラウンドを囲うフェンスが破れてて、太い針金が歩道側に伸びているのに気付かなかった。 ちょうど雨が降っていて、足元は水溜り。 急いで歩く腕が振り回す福袋は、当然紙袋。しかも雨の水気を含んで若干ヨレヨレになっていた。 ビリっていって。 バサバサっていって。 ビチャビチャっていって。 「うわっ!? 」 って悲鳴を上げた時には、あの人の為に買った福袋は破れて大口を開け、 温かそうなマフラーやセーターや、中身の判らなかった商品が水溜りの水を吸って地面に広がっていた。 お天道様と同様に、両目から雨を降らせながらお見舞いに来た僕を、 あの人はまだちょっと熱い手の平でふわりと僕の頬を包...
  • 3-519
    魚屋×パン屋 同じ商店街にありながら魚屋は昔ながらの江戸っ子、パン屋は今風な新参者。 そこの息子たちはまあ801的必然から恋に落ちるわけだが当然ロミオとジュリエット。 魚屋がパン屋に行くとパパに「親子まとめて窯の中に放り込みますよ!」と怒鳴られる。 逆にパン屋が魚屋に行くと親父に「てめぇら親子の尻にマグロ突っ込むぞ!」と怒鳴られる。 (ここで魚屋親父×パン屋パパのフラグも立つので熟年萌えの人は分岐お勧め) 学校や放課後も短い時間愛し合う二人だけど家を捨てることは出来ない。 「なあ、高校卒業したら家出ねーか?」 「できもしない事言うなよ、馬鹿。」 「……ごめん。じゃあさ、じゃあさ!結婚しよーぜ!」 「もっとできないだろ。」 「(´・ω・`) 」 二人はまだこの世にフィッシュバーガーがある事を知らない…。 そんな田舎の出来事。 バ...
  • 6-519
    クルデレ×ツンデレ 部活が長引いて帰る頃にはずいぶん暗くなっていた。 帰り道、俺はいつもどおりあいつを乗せて川沿いの土手を自転車で走った。 風が涼しいせいか、いつもより背中の温かさが嬉しくって、つい 「俺、この学校に来て、お前と会えてほんとによかったよ。」 と、思った事をそのまま口にしてしまった。…ちょっと唐突だったかな、 とか思っていたら、突然転げ落ちるようにあいつが自転車から飛び降りた。 「な…、大丈夫か?弥生。」 「……っっ、それは俺の台詞だっ!!何言ってんだお前、馬鹿じゃねぇの!?」 俺は自転車を止めて、地面に転んでるあいつに手を差し伸べた。 「いや、だって本当にそう思ったから。」 「思うなそんな事っ!!俺は全っ然、一回もそんなこと思った事ねぇ!!」 あいつの白い肌が、暗がりでもわかるくらい真っ赤になっている。 「…そうなのか。」 俺がそう言うと...
  • 8-519
    失望させないで 「陛下? もう会議が始まる時間ですが」 コンコンと扉をノックして、彼の私室へと足を踏み入れた。 室内へと目をやれば、視線の先にいる男は、未だ寝台に横になったまま面倒くさそうに頭を掻いている。 殆ど裸同然の格好でふわぁと大欠伸をする彼に、私は思わず語気を荒げて詰め寄った。 「……まだ、御支度なさっていなかったんですか!?」 「ああ」 相手はそう生返事をして、にやりと愉しそうに口の端を歪める。 「こいつが、ついさっきまで放してくれなくてな」 言いながら、彼は自分の横で眠っている少年の髪を、骨ばった指先で乱暴に梳いた。 カールした毛先に指先が絡まるのを力任せに引き抜くと、その指先をあろうことかそのまま少年の胸元へと持っていく。 こちょこちょとくすぐられる指の動きに反応するかのように、少年の吐息が荒く、けれど甘いものへと変わった。 思わず目を逸らした私...
  • 4-519
    星の王子さま 十一月十七日(木) 晴 あいつは不思議で、変わり者だった。もうそれくらいのことしか思い出せない。 子どものくせにインテリを気取っていた僕も、傍から見れば十分に変わり者に 違いなかったのだろうが、しかしながらその僕から見ても、いや、その僕から 見れば余計に、彼は変わっていて不思議だった。 思い出すだに懐かしい。 損得でしかものごとを捉えられない、嫌な大人のミニチュアだった僕を、あいつは 笑いながら粉々に砕いていった。 嗚呼、今、彼はどうしているのだろう。 元気でいるのだろうか。元気でいてほしい。 そして出来ることなら、彼に今の僕を見せてやりたい。 物語など古文・漢文・英文しかまともに目も通さない学生だった僕が、今こうして この生業で大成している、この姿を。 すべて君のおかげだ。ありがとう。 今日の午後、図書館で久々に...
  • 5-519
    ツンデリズム 最近、ハルのやつはツンデレツンデレと煩い。 そんなに好きなら、僕がそのツンデレとやらをやれば喜んでもらえるだろうか。 まずは調査。インターネットなどによると、どうやらツンデレとは性格の一種らしい。 『人目のあるところではツンツン、二人きりだとデレデレ、略してツンデレ』だそうだ。 つまり、人前ではつれなくして、誰もいない時にベタベタすればいいようだ。 よし、今日にでも早速、と考えたところではたと思い出した。 今日は一日、家の中で二人だけで過ごす予定だった。ということは終始ベタベタすることになる。 これではいつもと変わらないじゃないか。 困り果てていると、ふと、ツンデレにはもうひとつのタイプがあるらしいことに気付いた。 『表面上はツンツン、内心はデレデレ、略してツンデレ』というのがそれだ。 一言で言えば、意地っ張り、のようなものか。 これなら...
  • 13-519
    両片想い 俺は知ってますよ。あんたがずっとあの人の事を好きだってこと。 ずっと横にいて、ずっと一緒の時間を過ごして、 その間ずっと気持ちを隠し続けて来たってこと。 あんたがあの人の事を好きって言うなら、俺はそれでかまいません。 でも俺が好きでいる事も許して下さい。 オレは知ってる。お前があいつの事を好きだってこと。 オレがあいつを紹介した時、お前は一瞬で心を奪われてただろう。 その後も、あいつと一緒にいる時間が長いオレを辛そうな目で見てきて、 それで気づかない方がバカだ。 お前の気持ちを分かってるのに、無視してあいつとお前の間に入る。 こんなイヤな先輩を持って不幸だったな。 こんな先輩に好かれて…かわいそうな奴だなお前は。 「これ、俺の彼女!なーかわいいだろー」 「はづきです、初めまして~」 親友の中条が紹介した彼女とやらは、女子高生...
  • 17-519
    腹痛 しまった、腹がいたい…… きっと朝飲んだフルーツ牛乳がいけなかったんだな。 それとも昨日の夜飲みすぎた酒の残滓が今頃、腹の中で暴れだしたんだろうか…。 そんなことを考える間にも、額に冷や汗が玉になって浮かび上がる。 汗はつぅ、と眉頭を越え、メガネの弦を伝ってポタリと滴り落ちた。 落下する雫を目で追うと、それは臙脂のネクタイに着地し、生地を黒ずんだ色に染めた。 伏し目になってそれを睨みつけた俺は、傍目には硬直しているように見えるだろう。 だが、内なる俺は悶絶している。それはもう、もんどりうって転がりまくっている。 電車は中途半端に混んでいる。 座れないけど、不審な動きをすれば注目されてしまう程度には空いている。 いっそ満員だった方が気が紛れただろうに……。 「――大丈夫?」 「……」 「具合悪りぃの?」 不意に横からかけられた柔ら...
  • 27-519
    一人称「僕」×「私」 大丈夫です。安心して下さい。何があろうと僕はあなたの側から離れませんから。 男は口もとを綻ばせた。私の右手を両手で握り、親指のはらで慈しむようにそっと撫でる。 このまま何も言わなければ、足を折って恭しく手の甲にキスもしかねない雰囲気だった。慌てた私はその手を振り払い距離をとって男を睨んだ。 「睨まないで下さい。あなたを困らせるつもりはないんです」 確かに、この男に困らされたことはなかった。それどころか私がこの男を困らせていたくらいだ。 「おい、お前、俺の側にいろ。命令しやすいからな」 男とは高校からの付き合いだった。友人としてではない。この男はいじめの対象だった。 背だけは昔から高かったが、骨と皮しかない軟弱な身体をしていて、おまけに話すことも苦手だった男は、あの頃やんちゃだった私にとって恰好の餌食だった。 いじるのは楽しかったし、男は...
  • 18-519
    ホームステイ 日本なんかに来るんじゃなかった。 誰だよ。日本人はみんなシャイだなんて言った奴。 めっちゃ話しかけてくるんですけど? ホームステイ先のオカーサン、めっちゃ話しかけて来るんですけど。日本語で。 意味わかんねーよ。日本語わかんねーよ。せめて「ハロー」くらい言えつーの。 誰だよ。日本人は真面目だなんて言ってた奴。 オトーサン「U・S・A!U・S・A!」って手拍子してるぞ。めっちゃ笑顔で。 外人ナメてんのか。テンション高すぎだろハゲ! 誰だよ。日本人はみんな親切だなんて言った奴。 この家の長男、ケンイチとかい言う奴、めっちゃ無愛想だぞ? 唯一英語が喋れるのに。喋れるのに!! お前いる意味ねーだろ。何の為に英語可のステイ先を選んだと思ってんだよ。 サムライか?サムライだから喋らねーのか? 何時代だっつーの。江戸か?お前だけ江戸時代なのか?...
  • 16-519
    ポケットティッシュ 「何、ポケットティッシュなんて買ってんだよ。駅前でいくらでも配ってる じゃないか」 「駅前で配ってるのは質が悪いんだよ。保湿ティッシュじゃなきゃダメなんだよ」 「貯金したいって言ってたのユタカじゃん。協力してくれなきゃ、金なんか溜まんないぞ」 「それはそうだけど、生活必需品ってのはあるんだよ」 「生活必需品はティッシュであって、保湿ティッシュじゃない」 「お前、今、全国2000万人の花粉症患者を敵に回したぞ!自分が花粉症じゃないから って、人を思いやる気持ちを忘れやがって!」 「大体、なんで急に貯金なんだよ」 「...そりゃ、誰にも頼れないゲイカップルの老後に必要なのは金だから...」 「へ?」 「何?お前、俺と老後を過ごすこと、考えてなかったの?」 「...考えてなかった...」 「......何だよ、真剣だったのは俺だけか?」 ...
  • 10-519
    勘違いしないで 「お前がね」 彼がこちらに視線を向けて、にこりと微笑む。 「俺のことを好きだって、見てればわかるんだ」 「…そんなとんでもない勘違いしないで下さい。アナタらしくもない」 僕は鼻で笑って、彼の視線を受け止める。 「勘違いぐらい好きにさせろよ。…なあ」 そんな僕に、彼は優しい。昔も今も。 「なんです」 「好きだよ、俺も」 その言葉に、僕はなにも言い返せない。言いたいことは なにひとつ言えないままだ。今も昔も。 そんな僕のために、アナタは勘違いしてくれる。優しい人。 (どうか、お願いですから) ずっと、勘違いしていてくださいね。 僕がアナタを好きだって。 フォーウ
  • 21-519
    言葉が通じない そう、五月三十日。今から二週間前の、五月三十日です。 僕は彼の待つ河川敷に出かけました。生憎の雨でした。 何をしにって?兄さんの手紙を彼に渡すためですよ。 可哀想に、彼は僕らの国の言葉が理解出来ないのです。 そしてとても恥ずかしがり屋なのです。 折角、碧色の綺麗で大きな瞳をしているというのに、彼は兄さんを見ようとしない。 だから兄さんが何を言っているのか、何を言おうとしているのかすら、分からないのです。 兄さんの方は彼の事を好いているというのに。 しかし手紙なら彼も平気な筈だと、僕は兄さんに手紙を書くことを薦めました。 僕が昔父に買ってもらった辞書を片手に、一晩かかって、兄さんは手紙を書き上げました。 先ほども言いましたが、その日は雨だったので 僕は兄さんから預かった手紙を大事に大事に懐に入れて、走りました。 前髪が雨に濡れて額に張り付...
  • 14-519
    体育会系×体育会系  校舎裏にある今は使われなくなった焼却炉の傍、俺はそこに隠れるようにしゃがみこんでいた。  明日は高校生活の最後になる試合だった。大会決勝戦そして初の優勝。長年目指していたものが目の前にあった。小学校からあいつとずっとバスケをやり続け、やっときたチャンス。  けれど俺はそこには出れない。  ゆっくり腕をあげる。やはり肩から上にはいかず鈍い痛みが広がった。必死にやった練習に寝る暇も惜しんだトレーニング。親や先生に「無理をするな」と注意されても無視したツケが、ついにきた。  止められるのを恐れて二カ月間肩の痛みを我慢し続けた。その結果がこれだ。情けなさすぎて涙も出ない。  体育館なんて行けるわけがない。練習なんて見ていたら自分が何をするかわからなかった。 「遠矢」  かけられた声に反射的に顔を上げる。上げなければ良かったと思うが遅かった。そこにはキャプ...
  • 25-519
    全部嘘だったんだ 祖国があって、組織があった。そこにはお互いを同志と呼ぶ人たちが出入りしていた。 彼らは熱心に話をしたり、武器の手入れをしたり、肖像画の男を崇めたりして過ごす。 暇なときには銃の扱い方や、理想の世界や、悪い政治家の話を僕に聞かせたりもした。 気まぐれに、煙草やキャンディをくれることもあった。 決まった時間に「先生」がやって来る。長い時間をかけて一通りの勉強をする。 僕が十七歳になった日、「先生」は言った。 「君は優等生だ。祖国のため、立派な働きを期待しているよ。同志」 返答に迷っていると、彼は親しげな仕草で僕の肩を叩いた。 「大丈夫、君は本来は存在しないはずの人間なんだからね。何者にだってなれる」 名前と経歴と身分証明書をもらって、僕は組織の人間になった。 外へ出て人と接触し、情報を持って帰る。 特に満足感も不満もなかった。蜜蜂にでもなっ...
  • 15-519
    グーチョキパーの三角関係 隙を見て繰り出したはずのチョキの目突きは、グーの左拳にあっさりと はじかれ流された。 喧嘩にしては物騒な最後の手段を簡単にガードされ姿勢を崩された チョキのボディに、グーの右拳がめり込んだ。 「チョキ!」 膝を突くチョキにパーは駆け寄った。 「もう勝負はついたよ、このくらいで勘弁してあげてよ!チョキ、チョキ、 大丈夫?」 チョキはパーの手を振り払った。その手が軽くパーの頬にぶつかり、 チョキははっとした。 しまったという気持ちは心の奥にはあった。しかし、素直な謝罪の言葉よりも 先に、またもグーに負けた苛立ちがチョキの口からあふれ出た。 「うるさい、触るなっ!」 「チョキ、貴様...」 目潰しをしかけられても冷静だったグーの表情が変わった。 「グー!駄目!!」 パーが慌ててグーとチョキの間に...
  • 11-519
    褐色の肌 生まれつきでした 焼いたわけじゃありません、だから子供の頃は本当に野蚕の布のようでした …こちらから売りに出さなくても売れたものです まぁ、今では少し上背が高くなりすぎてしまいましたかね でも、あれから十年ほどたった今でも、この肌は私の持つ貴重な財産です このように産んだ親を恨むことはありませんでした。元から居ませんでしたから 逆に心中しないで置いてくれた分、今の主に出会えましたからね。今では感謝していますよ 今の主はこの肌を、『本から出てきた英雄のようだ』と、誉めて下さるのですから 少なからずこの肌のおかげで、今の主に仕えることができたのですから 真面目×(゚∀゚)アヒャヒャヒャ!
  • 7-519-1
    駄菓子屋 アイス食いたい。 部活帰りに寄り道して久々に小学校前の駄菓子屋に足を向けたら、 店先を絵に描いたような外人の兄さんが行ったり来たりしていた。 「あのさ、…日本語オーケー?」 「あ、はい。大丈夫です」 金髪碧眼、貴公子みたいなその兄さんは、予想外に流暢な発音で俺に答えた。 「ここのばあちゃん耳遠いから、この呼び鈴押さないと聞こえないんだ。」 俺らの代から学校前と言えば万引き商店、とかも言われていた。 まあ実際は、近頃のガキは駄菓子屋で万引きするほど貧しくもかわいらしくも ないし、最近は小学校の警備員もいるんで実害はそれほどでもないんだそうだが。 呼び鈴で出て来たばあちゃんは相変わらず無愛想で無口で小さかった。 俺はばあちゃんにアイスと言って小銭を渡し、クーラーの中をまさぐった。 「あとさ、ばあちゃん、そこの外人さんの兄さんがなんか用みたい...
  • 14-519-1
    体育会系×体育会系 松田がアパートに帰ってきたのは10時を過ぎた頃だった。 風呂から上がったばかりの竹原がおかえりと声をかけると、松田は玄関に座り込み手招きをした。 「何」 「脱がして」 泥だらけの両足を投げ出してそんなことを言う。 松田は子供のような驕慢さがあるのだが、生まれ持った愛嬌のおかげで何故か憎まれない男だ。 「甘ったれ」 そう言いながらも竹原はシューズの靴紐を解き、汚れたソックスを脱がしてやるのだった。 机の上に用意されていた野菜炒めと鶏の竜田揚げをレンジで暖め、すぐに遅い夕食が始まった。 「それどうしたの」 食べながら話すので、松田の口元から米粒がこぼれ落ちる。 黙ってティッシュを渡すと松田はそれで洟をかんだが、もう竹原は口を出す気も起こらなかった。 「それってどれ」 松田は箸で竹原の右腕を指す。 そこには握りこぶし程の大きさの青黒い...
  • 20-519-1
    ごめんなさい。空気読めなくて 「お前ほっんと空気よめねーなー」 ベッドの上から、ケイ君が僕を蹴り飛ばす。 「ごめんね、本当ごめんね、邪魔しちゃって」 怒声とまではいかずとも、イラつきが充分伝わるような声に、 弱弱しくお腹を押さえながら応える。 「ごめんねじゃねーよ、毎度毎度ヘラヘラしやがって!」 ベッドの上にはケイ君の服と一緒に、女物の靴下が忘れられている。 多分取りに来ないとは思うけれど。 「勝手に入ってくるとかザケんなよ、それもこういう時に…それとも何か、 お前みたいな未だに女も居ないキモ男には何してたか判りませんってか!?」 胸倉を掴まれてすごまれる。僕の目の前には今ケイ君の怒った顔がある。 「ごめんね、だって、お客様ならもてなさなくっちゃって…」 床にひっくり返されたお盆を指差そうとした直後、後頭部を蹴られ顔面を打ち付けた。 「お客様じゃねえよボケ...
  • 12.5-519
    剣豪×ごろつき集団 「嗚呼、清左衛門様、格好良いやなァ…」 「“我が刀の錆となるか”…なぁんつって、渋いやねェ」  細く開けた襖の向こう。  皆で顔つきあわせてきゃいきゃいと頬に手ェ付けて騒ぐ様は、芝居見物を終えた町娘と大差ない。  しかし、その風貌はと言えば頬にゃ刀傷、髭は不精に伸びてやがるし、可愛さとは無縁の顔の造作。 「…おい、おめェら…」  頭領である俺の声も聞こえねェのか、浮かれたそいつらはあの憎き清左衛門の言葉を反芻してやがる。 「なァ、清様が俺を斬ろうとした時の台詞は“観念せよ”だったか?」 「いや、それは俺ン時だ、お前の時は、そうだな…“地獄に落ちよ”じゃあなかったか?」 「嗚呼!清左衛門様に斬られるんなら地獄にだって落ちますよ、ってなもんだな!」 「俺ら一人一人に声かけてくれる辺りに優しさ感じちまうよな」  …あいつら...
  • 2-599
    ロック野郎×文学青年 きっかけは、富士テレビ。 …じゃなくて。 こんな時ですらおちゃらけてしまう自分が悲しい。 きっかけは、図書館の君の指定席に 置き忘れてあった一枚のMD。 普段はロックしか聞かなくても、CMとかでもよく耳にする ボズスキャッグスの"We re all alone"だけが入っていた。 必要以外のことは全くと言っていい程に口にせず いつも固そうな本を読んでいる君の、意外な一面を知った気がして それから目が離せなくなって。 「ツンデレ(wに纏わりつく姿が犬みたいだ」なんて悪友どもにからかわれながらも 今のように打ち解けてくれるまで、かなりの時間が掛かったなぁ。 明日のライブには、あの曲を演奏するから。 思いを口にすれば振られるのは分かってるし…これが俺なりの告白。 キーボード...
  • 2-529
    乙女×乙女 乙女×乙女、百合の香りのする組み合わせですね。 個人的には、二人が無自覚にいちゃついている様子を、 周囲の人々が「ヲトメだヲトメがいる!」 と遠巻きに見ているシチュだけで丼三杯の白米を消費できるところですが、 「いい加減行動を起こせよ!」などと苛々しながら見守るもいいでしょう。 如何せん乙女×2なので、どちらがイニシアチブをとるのか予測し難いのも特徴といえます。 突然の押し倒しや襲い受けなどは控えて頂きたいですね、乙女ですから。 攻受の組み合わせとしては、おくて乙女×鈍ちん乙女が理想です。 恋愛下手なのは乙女のたしなみであり魅力でもあります。 しかしながら、親友以上の仲に進展しずらいという諸刃の刃。 場合により、二人の仲を引っ掻き回してくれるものが必要かも知れません。 百戦錬磨の野獣系ライバルが出現するも良し、 理事長の...
  • 2-549
    首席×教師 連戦連勝、常に成績トップの俺は、当然教授たちの覚えもいい。 しかしあのぼんやり教師には関係ないようで、顔を覚えてもらうだけで随分とかかった。 自分でも何をそんなに頑張ってるんだかよく分からなかったが、 何事にも手抜きを許せない性分の所為なんだろうと思った。その頃は。 「ああ、君か。よく来たね。」 お世辞にも片付いているとは言い難い研究室を訪ねると、 そこらじゅうをもそもそとひっかき回して道具を揃え、不慣れな手つきでお茶を淹れてくれた。 深緑の、あり得ない濃度のお茶を二人で啜りながら、論文のテーマについて話しはじめる。 (近いなぁ…。) 向かいの椅子から身を乗り出すように喋っている(彼の癖なのだ)ので、距離がとても近い。 おかげで、話の内容がものの見事に脳の表面を上滑りしていった。 視線が無意識にくちびるの輪郭をたどる。十...
  • 2-569
    攻めより体格がいい受けのカップル あれですね。 攻めさんは、受けさんを押し倒したいけれど、 自分より明らかに体格のいい受けさんにコンプレックスとか 覚えちゃって、行動に踏み切れないのですね。 いざ勇気を出してその気になっても、服を脱いだ受けさんの たくましさに、なんだかorzとなっちゃうのですね。 受けさんは、そんな攻めさんの気持ちがわからなくて、 何で抱いてくれないんだろう?とか、嫌いなのかな?とか 悶々としちゃうのですねっ! で、攻めさんがその気満々になっても、受けさんがイヤ!となると、 無理やりガッチュンできなくてまたorz となるわけですね。 なんだか攻めさんを押し倒したいですね(マテ のほほん社員×やる気が空回りバイトの子
  • 2-579
    のほほん社員×やる気が空回りバイトの子 社員は主任に怒られているバイトを見てまたかと思った。 やる気はあるんだけどねぇ。と思いながら三時のお茶をすする。 お客さんの目を引きたいと商品陳列をがんばったらしいが工夫しすぎて一つ取ったら雪崩が起きた。 幸いそれに引っかかったのは自分だったのだけれども。ちょっと痛かった。 うん、痛かったよ。それにびっくりした。 長い説教が終わってバイトが帰ってくる。僕を見て、泣きそうな顔をする。 「すみませんでした」 「まぁ、いいよ。死んだわけじゃないし」 「殺すつもりなんてありませんよ!」 あのさ、冗談なんだからそんなに真っ直ぐ受け止めなくても。 「お茶飲む?」 「いらないです」 「お茶請けはギコせんべいだよ?」 バイトが余計に泣きそうな顔をする。彼がさっきやらかした商品がこれだ。 「君が売...
  • 2-539
    汁だく 「ああっだめ、そんな…変だよ…」 「変じゃないさ」 「だめだったら…そんなにしたら、僕っ!」 「うん?どうするって?」 「もう君と一緒にご飯食べないからっ!」 受は今にも汁が溢れそうになみなみと盛られた牛丼を前にふくれてみせた。 「お前、汁だくの良さがわからないなんてお子さまだなぁ」 「お子さまでいいもん。そんな表面張力発生するほど汁だくでどうやって食べるんだよ」 「こうすればいいだろ」 俺は丼に口をつけて汁をすすった。受が不服そうな目を向けてくる。 「お行儀悪いよっ」 「この最初にすする汁が美味いんじゃないか」 「…ぶー。わかったよ…。でも、僕と一緒にご飯食べるときだけね?」 「わかった、約束する」 やった、約束取り付けちゃったよ。 首席×教師
  • 2-589
    聖職者萌え ええい皆の者ここは ス ト イ ッ ク 萌 え の出番じゃ! 聖職者と言えば低露出。まあ南の島の祭司が小麦色の肌に頭から爪先まで刺青 入れてるってのも燃えるんですが、まあそこは。 黒づくめいいよー。黒……禁欲的でいて一歩間違えば背徳をも連想させる。 あんなもので全身を覆うなんてなにを考えているのか。 黒い教服から覗く白い首筋。 でもね、白くてもいいと思いませんか。白いたっぷりとした布が汚れるところがいいと 思いませんか。 敢えて言いましょう、あの布々した服装は脱がすためだと。 そもそもね、十字架の辺りの人だと男色自体禁忌じゃありませんか。 禁忌……燃える響き。 聖職者というからには神と教義の存在が欠かせないと思います。 ここはプラトニック推奨で。背筋を伸ばして立つ司祭様に触れたくて触れられない、 汚したくて...
  • 2-559
    ttp //www.youtube.com/watch?v=SGXfnwS_vVw←店員がこれを行うに至った心境を萌え語ってください。  深夜のコンビニには出会いがある。マジだって。だから、こんな信じられないことも起こるんだよ。  暇だ暇だとだらけていたら、招かれざるお客さんの登場だ。 スキー帽にサングラス、テンプレ的な強盗ルックで。  自動ドアからずかずかレジまで一直線にやってくる気配に顔を上げたら、奴は真正面で一瞬怯んだ。 けれど引くに引けなくなったのか、ナイフを突きつけて「金を出せ」などと凄んでくる。  ――バッカじゃね?  もみ合いになりながらナイフを持つ手を押さえつける。俺は多分、笑ったのだろう。 奴が逃げようとしたから、無理やり頭を引き寄せて熱烈なキスをくれてやった。 無鉄砲なくせにビビリなところは昔のまんま。 ...
  • 2-509
    軽薄人気者窓×堅物マニア受けな林檎 「ってーかさ、お前の存在意義ってなによ?」 「なにって言われても」 「正直さァ、昨今マウスに押しの一手しかないなんてどうよ?」 「いいじゃん別に」 「俺を見てみ?スクロールに左右クリックに、最近あと二つ機能追加したぜ」 「そんなにあったって使わないから」 「だいたい発色だって負けてねーぞ?」 「でも動画の処理なら負ける気はしないよ」 「俺なんてメールにネットにテレビにエトセトラ、もち写真屋も絵描きも対応済」 「そう………」 大きなオフィスの中で、仲間はたったの2,3機。 CMや新聞の広告ででかでかと威張る大勢から『マニア向け』と罵られても、 それでも彼らは挫けはしない。 昔もいまもこれからも、確かに心から彼らを愛し、いとおしむ人たちがいてくれるから。 ポジ×ネガ
  • 22-579
    日韓友好 「邪道だ」 俺は激怒した。 必ず、爽やかなはずの朝の食卓に鎮座する、邪悪な赤色の物体を除かなければならぬと決意した。 わりと本気で言っている。冗談を言っているわけではない。 「その赤い悪魔をすぐさま下げろ!不愉快だ!!」 「またそれ?もういいじゃんか。おいしいから食べてみろって。納豆キムチ」 赤い悪魔を食卓に置いた張本人、いわば悪魔を裏から操る大魔王は、実に嫌そうな顔をして言い放つ。 食卓に並ぶのは、まだ米がよそられていない空の茶碗と、白いパックに入ったままの納豆。と、その隣の小鉢にいれられたキムチなる赤い物体。 朝からこの悪魔と大魔王の嫌な顔をいっぺんに見なきゃならないなんて、まったく腹がたつ。 「ふざけるな!納豆はな、ストレートに食うのが一番うまいんだよ。ありのままでうまい納豆になにか別のものを混ぜるなんて邪道でしかない。生卵だ大根おろしだ、そんなチ...
  • 22-589
    140文字の恋 今日の夕食。明日の予定。昨日見た新作映画の感想。 楽しそうな呟きに、無難な言葉だけを返す。 こんな希薄な繋がりを、それでも必死に掴む自分はどんなにか寂しい奴だろう。 ワンクリックで繋がった関係は、同じワンクリックでいとも簡単に切れてしまうだろうから… 僕はまた、鍵をかけた世界に閉じ籠る。 140文字の恋
  • 22-539
    ピロートーク 「蕎麦殻か、羽毛か、それが疑問だ」 夕飯の買い出しから帰ると大学の先輩がイエスとノーがプリントされた布を前に苦悩していた。 「ああ柴田くん遅かったじゃないか」 「いやなんでいるんですか」 「二人のうちどちらかがいるところには、いつも二人ともいるんだよ」 「さっきまで俺いませんでしたけど」 「僕はいた」 相変わらず話が通じない。 目の前で薄気味悪い笑みを浮かべている(多分愛想笑いのつもりなんだろう)男は所謂天才というやつで、 学部生にもかかわらず何やら画期的なシステムの構築と運用に成功したらしく業界内では最注目されている。 らしい。 というのも俺は文系学部の学生で校舎も違えば学年も違うし所属しているサークルも違う。 しかし何故目の前の男が親しげに接してくるかというと、理由は以下に記される。 新歓で潰す側であるはずの人間が勝手に自爆して潰れて、偶...
  • 22-599
    やんちゃヤリチン×穏やかジジイ 廊下を走る足音で、吉岡が来たと判った。 「……センセッ!」 喜色満面の大型犬にも似た男が、大きく研究室のドアを開く。 「吉岡君、廊下は走らない。……と、先日申し上げたはずですがね」 柔らかく微笑んだまま、佐々木は研究誌に向けていた顔を上げた。 は、と小さく息を吐き、穴の開いた風船のように瞬間しおれる。 「丁度良い、いただき物の和菓子がありますよ。お茶をお願いします」 「ッはいっっ!」 吉岡は顔を上げ、嬉しそうに電気ポットで茶を淹れ始めた。 大きな体躯に似合わず、繊細に気を使いながら丁寧に淹れる吉岡の茶が、佐々木は好きだ。 ピッチではあんなに大胆なプレイをしているのに、意外な面だと思う。 この研究室に吉岡が足繁く通うようになったのは、サッカーボールばかり夢中で追いかけて、単位という物に無頓着だったせいだ。 基本この大学は、スポー...
  • 22-529
    和と洋 ずっと憧れ続けてきました。 明るくて華やかで、僕にはないものを持っていて。 真似してみたりもしたけど、やっぱりうまくいかなくて。 僕は洋さんのようにはなれなくて 。 でもそんなとき、洋さんは「君は君のままでいいんだよ」って 優しく頭を撫でてくれるのです。 小さな君の頭を撫でると金木犀の甘い香りがそっと鼻をくすぐる。 誰とも関わらずにずっとひとりで生きてきた君が、少しだけ僕に心を許してくれたようで。 君が作ってくれた肉じゃがを食べながら 君はいつでも僕を君色に染めてしまうんだね、と笑った。 和と洋
  • 22-549
    農民受け 書かれていた文字は「農民」だった・・・オレは絶望した・・・ ここはダーマの転職樹という場所だ。樹齢十万年と言われる巨大な木の根元にある小さな祠がこの世界で唯一つの転職が行える施設だ この世界の転職システムは自分が希望する職に就くことは不可能だ。全て転職樹の思し召し次第だ 転職希望者は転職樹によじ登って若葉を一枚だけゲットしてくる。それを祠の神官に渡す。神官は呪文を長々と詠唱する そうすると葉にあぶり出しのように文字が浮かび、転職希望者はそこに書かれていた職業に転職することになる。拒否は不可能だ 転職するとレベルが二十に達するまで再転職は不可能だ。ハズレを引くととてもつらいことになる・・・ オレの幼馴染兼恋人の職歴は華麗だ。最初にいきなり「四元使い」を引き当てた。火水風土の四元属性のスキルを全部覚えられるお得な職業だ そして次に「黄金騎士」になった。戦士系の上...
  • 22-569
    彼女持ちクール攻め←ウザ可愛い受け 「あっ先輩! 先輩せんぱいせんぱいうあああ今日も可愛いいぃい!!」 「……わあ、今日も相変わらずキモいねー」 今年ももうぼちぼち終わろうとしている、今日この日。 さすがに四月当初のような不覚は取らなくなった。 踏みとどまってしゃんと立っていられるようになったし、さすがに慣れたもので 冷静な反応が出来るようになったと思う。 自分よりタッパのある後輩に背後から思いっきり抱きつかれるのは、 やはり慣れていないとすぐにバランスを崩してしまうから。 こんな状況に慣れるなんて、甚だ不本意ではあるけれど。 ――我が家を出て高校へ向かう道程、三つ目の曲がり角。 朝この道を通ると、決まって後輩がこうして奇襲をかけてくる。 もはやこれは毎朝の日課と言ってもいい。 「お前さあ、挨拶もなしに『それ』ってどうなん?」 「あー先輩...
  • 22-529-1
    和と洋 自分の親父は名門料亭の凄腕の板前だった。創業者の一人娘のお袋と結婚して自分が生まれた。名前は和(なごむ)だ 親父は料理人としては最高だったが、父親としては最悪な人間だった。とにかくどうしようもない女好きだった。 まず行きつけのラーメン屋の中国人店員に手を出した。腹違いの弟の中(あたる)ができた 次に懲りずにどうやって出会ったのかタイ人留学生とデキた。腹違いの弟の泰(やすし)ができた 親父はますます調子に乗った。今度は近所のカレー屋の夫と子供のいるインド人女性と不倫した。腹違いの弟の印(しるす)ができた お袋は・・・親父に対抗するように不倫に走った。 まず行きつけの焼肉屋の韓国人店員と関係を持った。中絶という選択肢はお袋にはなかったようだ。種違いの弟の韓(かん)ができた 次にベトナムを旅行して現地の行きずりの男性と関係を持った。一度だけだったらしいが大当たり。種...
  • 22-539-1
    ピロートーク 「さて、桃太郎が歩いていると、向こうから一匹の犬がやって来ました。  『桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな』――」 「おい善紀、なんでこの犬桃太郎の名前を知ってるんだ。初対面なんだろう?」 「なんでって……まあ、有名人だから?」 「なるほど。桃から人が生まれるのはその世界でも異常事態なんだな」 「多分――で、犬の頼みを聞いた桃太郎は、『鬼退治についてきてくれるならあげましょう』と――」 「団子一個で戦場へ行けというのか。随分乱暴な話だ」 「うん、正直それは俺も思った。……ああ、きっと半年予約待ちレベルの激レアきびだんごなんだよ」 晃にせがまれ、この前から寝る前に昔話を聴かせている。 が、この「おはなしの時間」は心地よい眠気と倦怠感に満ちていて、 二人とも、ともすればいつの間にか寝入ってしまう。 おまけに、晃は...
  • 22-509-1
    天然同士のバカップル 天然同士のバカップルって、お互いのことしか見えてないしそれが当たり前ってイメージです。 例えば、 受けが友達と立ち寄ったコンビニで食べた新作の食べ物が美味しかったら 「ウマッ! これ絶対今度Aと食べよーっ」と語尾にハートマークつきで笑顔で話す。 攻めが友達と食事に行ったら、 「友は本当に美味いもの知ってるな」と言いつつ、一口食べただけで無理にテイクアウト。 「腹へってるのにどうした?」と聞かれると、 「確かに空腹だけど、美味い物を受けと一緒に食べたらもっと美味しくなるんだ。だから、持って帰って食べる」 と平然と言って、友達残して帰ってしまう。 食べ物だけでなく、生活全てがこの調子。 何をしていても誰と居ても、攻めは受けの、受けは攻めの、話題や行動になってしまう。 最初はポカーンな友達もすぐになれて、「あー、はいはい」「ったくバカップルが...
  • 22-579-1
    日韓友好 夕食を早食いして、洗面所でセミロングの髪を輪ゴムでポニーテールにまとめて、俺は家を出た 行き先は歩いて五分の距離にある築五十年の剣道場。十一月下旬。かなり寒い 短いが急な坂を上った先に旧式の電球型街灯に照らされた日本家屋が晩秋の夜に浮かび上がっている 黒船が浦賀に来航した嘉永六年生まれの俺から六代前のご先祖は、幕末の剣豪の生き残りたちから剣術を直伝された剣士だった 明治の終わり頃に土地を買って、後世に技を伝えるために剣道道場を開いた。数度の建て替えを経て道場は今に至る 実はこの道場の所有者は高校二年生の俺だ。自由に使えるという意味ではない。民法上、正式に俺の名義なのだ 前の所有者は道場開設のご先祖のひ孫、つまり俺の父方の祖父だ。その爺ちゃんが去年の春に急病で倒れた 爺ちゃんは死期が近いと思ったらしい。爺ちゃんの子供は一人娘の俺の母親だけ。娘婿の俺の父親は剣...
  • 22-589-1
    140文字の恋 奴からメールが来た。 元気か? たった4文字の素っ気ないメール。 ……それだけなのに。 何で俺は、こんなに泣いているんだろう。 言いたい事は沢山ある。 聞きたい事も。 今は遥か異国の空にいるお前に……俺の想いは、どうすれば伝わるのだろうか。 まずは短くメールを返した。 お前を待ってても良いか? と。 やんちゃヤリチン×穏やかジジイ
  • 12-151
    ツッコミ×ボケ 「やっべー、またリロミスっちゃったよ」 朗らかな顔でわざわざネット上での失態を口に出す暮卦。同部屋で、唯一奴の独り言を聞かざるを得ない俺に何を求めているのか。 「なー津込、おれ文章書けないんだけれどどうすれば良い?」 無視。どうせ「ちゃんとリロれ!」と突っ込みを入れてももうこのリロミスは取り消せない。反省させる意味も込めて暮卦自身に後処理をさせよう。 「なーなーなー、無視かよー。こんな可愛いおれが困ってるのにー。」 勝手に困ってろ、お前の蒔いた種だ。 そう自分に言い聞かせる。自分が不覚にもやってしまう過保護が顔を出さないように。 とは言っても「うー」とうなりながらディスプレイを睨み付ける暮卦の姿、この姿に庇護欲をそそられない人物がいるだろうか。 「見るだけだ」と自分に言い聞かせ、画面を覗き込む。 http //sakura03.bbspink...
  • 19-559
    こんな筈じゃ無かったのに 2年ぶりにあいつとすれ違ったのは雨の日の夕暮れだった。 背の高い見知らぬ男と傘をさして寄り添い歩くその様子がとても幸せそうだったから あいつの方はおそらく俺には気付いていなかっただろう そのまま角を曲がって行く2人の後ろ姿を見つめながら、そうであって欲しいと俺は痛切に願った。 2年前の中学時代、俺は大切な友人を傷つけた。 「君のことが好きなんだ」 オドオドしながらも、はっきりと告げるその声 気の弱いあいつにとってこの告白がどれほどの勇気を振り絞っているのかが 空気を通して痛いほどに伝わってきていた。 夏も終わろうという季節 蝉の声が途切れることなく空に溶けていく 温い空気と頬に伝った汗の雫の冷たい感触が妙に生々しく今も記憶に残っている。 「笑えない冗談はよせよ」 俺の口から出たのはひどい拒絶の言葉だった。 気持ち悪い、吐...
  • 19-569
    大好きだけどさようなら 珍しく深く眠っている彼の前髪は、先ほどまでの行為の名残か汗で少し湿っていた。 眉間に皺を寄せた難しい顔で眠っている彼の頬を、起こさないよう、そっと撫でる。 僕より十も年上のくせに、子供のように安心しきった顔で眠る彼を見ていると、自然に顔が綻んだ。と同時に、目尻が濡れる。 喉がひくりと震え、慌てて口元を押さえた。泣いたりなんかしたら、彼を起こしてしまう。 ゆっくり静かに深呼吸をして呼吸を落ち着け、のそりと体を起こして枕元に置いてあった眼鏡を掛ける。 鮮明になった彼の顔をじっと見つめ、溜息を吐いた。 僕がこのひとに告白をしたのは、半年前の事だ。 大学の准教授をしていた彼に一目惚れをして、興味なんかなかった彼の授業を受けては質問をしに通った。 十も年下の学生で、しかも男など相手にされないだろう。 そう思っていても、日に日に募る思いを打ち明...
  • 19-529
    夏休みの宿題が終わらない 「よっしゃあ英語終わった!」 「見せて――よし、ちゃんと所々間違えてる。じゃあ次は数学だね、はい」 「えー!? ちょっとは休みたいんですけどー」 「え? どこぞの馬鹿の読書感想文をゼロから書かされてる僕の目の前で、 単純な書き写し作業しかやってない君がどうしたいって?」 「や、何でもないっすスミマセン……」 「全く、どうしてここまで溜め込めたんだよ。 最初から期限に間に合わせる気がなかったとしか思えない」 「いや、そんなつもりはゃなかったよ? ただ、お前と海行ったり花火やったりしてたら楽しすぎて忘れてたっていうか」 「なっ――人を言い訳に使うなよ。それを言うなら僕だって条件は一緒だ」 「ですよねー……けど手伝ってもらえてホント有難いわ。マジ感謝、マジ愛してる」 「気持ち悪いこと言うな馬鹿、僕は君なんか――はぁ」 「ん? どした?...
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