*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「2-619」で検索した結果

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  • 2-619
    穏やかな優等生×やんちゃな熱血バカ 彼のどこが嫌いかって? そうだな、あの押し付けがましいところが苦手だ。独善的というか。 結局は一人で突っ走るくせに、チームワークが大好きだから何でも一緒にやりたがるんだ。 僕は一人で計画して実行する方が性に合ってるって、何度言っても聞かない。 口論になることもしょっちゅうだね。…仲直り?まったく問題ないよ。 なにせあの性格だろ?厭なことを後に引きずらないんだ。 喧嘩しても一晩寝れば忘れる。馬鹿だからな。 僕ら相性は最悪だと思ってるんだけど、何故か離れられないんだよなぁ。 あいつ無茶を無茶とも思っていないから、危なっかしくて目が離せないし。 勝手に暴走した挙句顔に傷なんかつくって帰ってきて心底頭にきてても、 あのしゅんとした犬ころみたいな顔見るとつい許しちゃうんだ。 悪かった、これっきりにするから...
  • 2-619-1
    穏やかな優等生×やんちゃな熱血バカ キャンキャン吠える仕草は、仔犬に似ている。 「だーかーらー、この公式が分かんねぇと俺、留年するかもしれねーんだよ!」 「…お前は、野球のルールを分かっても、数学の公式は解けないんだもんなぁ…」 期末試験前夜、隣に住む俺の部屋に来て、真っ先に教科書を広げて言う様は、 受験生のようだ。明日受験する訳でもないのに、一年先だろ?…少しは落ち着けよ。 他の連中ならまかり通る冗談もこいつにとっては、何の役にも立たない。 少し気を抜けばいいと思って、言った俺の言葉は奴のカンに触ったらしい。 あ、また吠える。きた。ワンワンワン。仔犬のような叫び。 「…っ…俺が、留年してもいいってのかよ?きちんと一緒に高校卒業してっ、  お前と一緒の大学行こうと思ってっ!ど、どーせっ、俺みたいなスポーツ馬鹿は、  お前の...
  • 22-619
    うたた寝 最悪だ、と田中は唇だけをその発音どおりに動かし、なんとか声は出さずに押し留めた。 目の前にはソファで眠りこける男が一人。 女性的な顔立ちをしてはいたが、その人物が男であることは間違いなかった。 なにせ鈴木は田中の幼馴染だ。彼が田中と同じくXYの染色体を有することは、子どもの頃から知っている。 「おい」田中はうたた寝をする鈴木を小突いた。 田中の住むアパートを、夕食時を狙って鈴木が訪れることは少なくなかった。 今日も今日で、食べるものを食べたら後片付けもせずにこのとおりである。 メグミはこんな男のどこがいいのか、と田中は考えた。メグミとは田中の妹で、どういうわけか このだらしがない男に思いを寄せている。なんでも鈴木には好きな奴がいるとかで、 彼女は可哀想なことに、もう二度も振られていた。 尤も、メグミのことをとやかく言えないのは田中も同じだ。 自分の感...
  • 22-619-1
    うたた寝 あぁ、腰が怠ぃ…。 よっこらしょ、と声を出した自分に苦笑しながら、縁側に腰を下ろす。 三十路の身体に一晩に3回はさすがにキツいか。 小春日和の日差しの中で中で、昨夜のことを振り返る。 「慎二さん、ね、もう一回だけ、いいでしょ?」 年下の恋人はとてもねだり上手だ。 可愛さにほだされてつい3回目もつき合ってしまった。 だって、しょうがねーよなあ。可愛いものは可愛いんだから。 「慎二さん、大好き!」 嬉しそうに抱きついてきた翔太の笑顔を思い出すと自然と頬が緩む。 今の俺、デレデレと締まりのない顔してんだろうな…。 そんなことを思いながら、日だまりの温もりに眠気を誘われて、 いつのまにかうとうとしはじめた。 バイトを終えて、弾む足取りで家へと急ぐ。 慎二さんは今日は仕事が休みで家にいるはずだ。 ただいまー!と元気よく玄関の扉を開ける。 「慎...
  • 3-619
    タバコ喫み×嫌煙家(リバ可) 「お疲れさまー。もう遅いし晩飯食っていこうよ」 「寄らないで下さい」 必死のアプローチにもかかわらず冷たい声で一言。 「なんでー。なんでー。俺お前のことがこんなに死ぬほど大好きなのにー」 「タバコの匂い嫌いなんです。何度も言ってますよね?いちいち忘れるんですか?馬鹿ですか?」 ああ、禁煙できない俺にいつもの台詞。 「死ぬほど大好きなら禁煙してから出直してくださいね。じゃあお疲れ様」 「いやいやいや、タバコはやめるとほんとに死んじゃうし…」 「じゃあその死ぬほど大好きなタバコ様と結婚でも心中でもしてください」 ……禁煙セラピー、買って帰ろうかなあ。 生徒会長な優等生×不良生徒
  • 7-619
    ヒトメボレ×ヒトデナシ この部屋に入居してまだ二週間ほどのことだ。 カタン、と物音がした。振り返ったけれど、誰もいない。 (気のせいかな。) そう思っていると、また、カタンと物音がした。 不動産屋が破格の値段で持ってきた物件だけに、なにか周囲に問題でもあるのかと思っていたけれど、 今のところそれはない。むしろ、周囲はとてもよくしてくれる。 「わざわざこんなところに来なくたってよかったんじゃないの?」 そういう声もあったけれど、気にしていなかった。そう、……その日までは。 〔カタン。〕 ぼくは振り返る。不自然な物音は少しずつ近づいている。 〔カタン、カタカタ。〕 ぼくはばっと振り返った。すぐ後ろに聞こえる物音に、心臓をびくつかせながら。 と、出し抜けに、 『ここ、ぼくの部屋です』 そんな声がした。か細い、ボーイソプラノのような声。 ぼくはがた...
  • 5-619
    ひろゆき@どうやら管理人 創立者であり、神でもあるあの人。 周囲の奴らは「ひろゆき」なんて呼んでいる。 勝手に呼び捨てにするなよ、と何度愚痴ったことだろう。 俺は、あの人と呼ぶのが精一杯なのに。 俺と彼とは……きっと、絶対に結ばれないのだろう。 ある意味、親子みたいなものだから。 だけど、どうしても諦めることが出来なくて、 俺はそっと呟いているんだ。 ひろゆき ラブ。 俺がその気になれば1000回も言える。 場所を変えて、何度だって言いなおせる。 あの人の為なら、自分の体を捧げることなんて何とも思わない。 好きだ、あの人……いや、ひろゆき。 ……届いてくれ、この思い!! 削除人「……たまに2ちゃんが自動的に書き込みを始めるんだよな。     何だろこれ、ウイルスか?」 あぼーん。 ………そして、2ちゃんの思...
  • 6-619
    伝わらない 愛してるよ。 君を愛している。 「『愛してる』って分かんない。 父さんは大勢に言った。 母さんは僕を殴った。 姉さんは大金を使った。 でも、貴方の『愛してる』は僕の知るどれとも違う。 だから、僕は『愛してる』が分からないし、貴方に『愛してる』って言ってあげられない」 それでいいよ。 ここに私がいて、君がいて、そして私が君を愛している、そのことが重要なんだ。 それだけなんだよ。 「やっぱり分かんない」 分からなくていい。 伝わらなくていい。 ただ知っていればいい。 私は君を愛している。 愛してるよ。 伝わらない
  • 9-619
    記憶の中で苦しめる人 「好きだ」 舞い散る雪のなかでそう告げた。 チラチラと舞う雪の中のアイツは堪らなく美しかった。 雪にさらわれてしまいそうだった。 街灯の光はまるでスポットライト。 一枚の絵画か舞台のワンシーンのように目に焼き付いている。 今も思い出すだけで…… 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!」 「な、なんだよ」 思い出すだけで恥ずかしい! なんださらわれるって。 スポットライトとか言ってんじゃねえ。 何処の夢見がちな乙女だよ! 「いきなりどうしたんだよ」 「……恥ずかしい過去を思い出した」 恥ずかしい。 なんであんな風に思えたんだ。 コイツが儚げなのは外見だけで中身が全く違う事だって知ってたのに。 「恥ずかしい……ああアレか?告白の時の……」 「思い出すなー!」 「無理。思い出した。いきなり真剣な顔してさぁ」 「止めてくれー!」 ...
  • 4-619
    そろそろ手袋買わなきゃなぁ 「そろそろ手袋買わなきゃなぁ」  色付き始めた、ケヤキの並木道。  そこを幼馴染みの彼と歩いている時に、耳に独り言のような言葉が滑り込んできた。  視線を向けると、彼は寒そうに首を縮め、手に息を吹き掛けている。それに微笑ましいものを覚える。 「お前って、手冷たいもんな」 「だから、冬って嫌いなんだよ‥‥‥。霜焼けとかなるしさ」  寒さで赤くなった頬とか、鼻をすする仕種とか、そんなのを可愛いって思ってるなんて、お前は知らないんだろうな。  息を吹き掛けつつこすり合わされる手を掴み、ダッフルコートのポケットの中に引き込む。 「こうすれば、暖かいだろ」  びっくりしたようにこちらを見ていた彼は、はにかんだように微笑み 「うん」 と、短い返事を返してくる。  そうして半ば強引に、家に帰るまでポケットの中で手を繋ぎ続けた。色付いた葉より...
  • 1-619
    あう×ボーダフォソ まぁ、噂を聞く限りではあいつ自分を安売りして夜な夜な若い奴らと…その、なんだ、 いろいろやってるらしいからな。オレに目を向けるなんてことが有るわけないのさ。 昔はオレの方が人気者だったのにな…それに昔はあいつとも仲が良かったよ。 アレだよな、傲慢だけど、人気があったから周りに優しくできたのかもしれないな。 あいつと会う約束をしていたあの夜に出会った外国の奴に、ホイホイついていったオレがバカだったよ。 あの間違えさえなければなぁ。今はもっとあいつと仲良く出来たかもしれない。 今いつでもオレの隣にいるのはあの夜を共にした外国の奴さ。 今日も一日が終わりそうだ。いつも隣にいる奴は国に遠征しに行ってる。 そんなとき誰かがやってきた。こんな夜中に来る奴にろくな奴はいない。 追い返そうと思って窓を開けたら、あいつがいるじゃないか。 「…テレビ見せ...
  • 19-619
    ちょ、痛いって たとえば部屋で寛いでいるとき、二人で眠る前、情事の後なんか。そんなときにあいつは俺の体に噛みついてくる。コンプレックスだった白い肌に目立つ赤い歯形が独占欲の証のように増えていく。 俺はいつも、かすかな痛みと心地良さ、あいつに愛されているだろう事実がもたらす優越感に溺れてしまう。被虐嗜好があるわけでもないけれど、ほんの僅かな間残る跡は見るたび痛みと快感がつのった。 今日もあいつは俺を噛んだ。痛みと歯形が残る程度に、しかし傷にはならない強さで。 「ちょ、痛いって」 「いいじゃん。血だって出てないし、すぐ消えるよ」 そう言ってまた、肩やうなじや指や脇腹に噛み付くのだ。その控えめな歯形が消えるのを、どこか惜しく思いながら見ていた。 いっそ一生ものの跡がついてしまえば、あいつは俺から離れがたくなるんじゃないかなんて、浅ましいけれど、思わずにはいられなかった。 ...
  • 16-619
    閉じこめる 現実か、あるいは長い夢か、僕の妄想なのか。 僕はあの男に閉じ込められている。それもかなり長い間。 あの男は僕のことが好きなんだろうか。だから閉じ込めているんだろうか。 あの男のことを考える。不思議と憎しみはない。 それどころか、あれが時おり見せる笑顔を思い出すと、胸が温かくなる。 けれど同時に切なくなる。どうしてだろう。 ふいに呻き声がして、そっと後ろを振り返る。あの男が小さな檻の中で蹲っていた。 足首に鎖が巻きつけられて、動けない状態だった。 「おかしい、これじゃあまるで、お前が僕に閉じ込められているみたいじゃないか」 そう呟くと、男は僕の方を睨みつけて、ああまさしくその通りだよ、と唾を吐きかけた。 何はともあれ、僕はこの男に閉じ込められている。それもかなり長い間。 現実か、あるいは長い夢か、それとも。 閉じこめる
  • 28-619
    10年以上の片想い 二度目の高校の同窓会で、懐かしい奴に逢った。 二次会に盛り上がる連中を尻目に抜け出して居酒屋に入る。日本酒をちびちびと飲みながら話を聞いた。 あの先生まだ生きてたんだな、二組のあいつ結婚してたんだな、○○は老けたよな、親御さんは元気か… 「しかしもう三十手前か…早いねぇ」 二杯を空にした辺りでどちらからともなく溜息を吐く。 「でも皆元気みたいで安心したわ」 その笑顔と言葉に、泣きたくなった。 変わっていない、“変われない”俺の親友。 今でも忘れられない二年の夏。あの日からこいつの時は止まったままだ。 「部屋、来いよ」 アパートへの道をゆるゆる歩きながら考える。傍には親友がゆらゆら漂っている。 果たして、俺はこいつに言えるだろうか。 あの時からずっと胸に押し込んでいた想いを。あの時言えなかった言葉の続きを。 果たして、俺は聞けるだ...
  • 10-619
    受の命令(お願い)で女装させられて、更に白昼堂々デートさせられる攻 「巧ィー。ネズミーランド行こうぜネズミーランド~」 俺は、もう買ってしまった前売り入場券二枚で巧の頬をぺしぺし叩いた。 巧は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せる。 可愛い顔が台無しなどと口に出したらまた怒られそうなことを考えつつ、 その眉間の皺すら扇情的に感じる俺は相当ヤバいとも思う。 巧が心底嫌そうにチケットを振り払った。 「嫌だ。何が悲しくて男二人でそんなとこ行かなくちゃいけないんだ」 彼は最高に険悪な表情だったがこれくらいでめげる俺ではない。 地道な努力を重ねに重ねて、漸く部屋の中まであげて貰えるような仲になった俺だ。 「でもさ、もうチケット買っちゃったんだよ。 お前ネズミーランド行きたいって言ってたじゃん、 お前の誕生日も近いしさ、 プレゼントだってことで俺と一緒にネズミーランド行って...
  • 13-619
    メガネとワイシャツと私 メガネもYシャツもあんたに触れられるのにネクタイの私は触れられない・・・ 「あんたにこんなに触れたいと思ってんのに・・・そんなに私は必要無いのか?」 「ご主人にはお前も俺もメガネだって必要だろ。ってか、お前俺じゃ足りないのかよ。」 ・・・Yシャツのことも好きだけど肉体をつなげてわかった。好きの違い。だから・・・ 「・・・・・・たりっ・・・ない・・・」 小さな声でボソリとつぶやくように言う。 「ああ、そうかよ!!じゃあ、もう俺を抱くのは止めろ!!」 あ・・・また捨てられる・・・嫌だ・・・ 「足りないから・・・埋めさせて・・・」 咄嗟についた嘘。 あれから、何ヶ月たっただろう・・・あの時体をつなげたYシャツ達はご主人にボロボロになるまで扱われ、捨てられた。もうすぐ私も捨てられるだろう。あんたにこの空白を埋められることのないまま。 ...
  • 23-619
    大好きだからさようなら 「おい、石川のちっちゃいの。酒」 「小石川です教授。お酒はもうダメです」 「ダメってなんで。俺の家だ、腐るほどある筈だろ。持ってきて」 「ダメです」 「いいだろもう日本には帰ってこないんだ、最後をお前と飲もうっていうのに」 「友達がいないだけでしょう。大体アメリカ行きだって自分で勝手に決めたくせに。最後を一緒になんて都合が良すぎます」 「………石川(小)」 「小石川です」 「俺だって別に行きたかないよ」 「じゃあどうして、行っちゃうんですか」 「逃げるためさ」 「どうして、最後の夜なのに酔おうとするんですか」 「それも逃げるため」 「根性無し」 「なんとでも言え。…なぁヒロキ」 「小石川です」 「愛してるよ。でもお前を見てると頭が狂っちまう、ごめんな」 「……もう二度と、あなたの様な意気地の無い意固地な人を好きにはならない...
  • 17-619
    花にたとえるなら あなたは 花にたとえるなら あなたはソメイヨシノ あれほど美しいのに 決して結実することの無い 花を咲かせはしても 子孫を残すことの無い徒花 通り過ぎる強い風が枝を揺らし 花びらを震わせ あられもなく乱し 身も世もなく舞い散らせても 次の年にはまた 何もなかったかのように 静謐に美しく咲く そんなところも似ている ソメイヨシノは傷に弱いのに 手折るとできた傷から 腐敗して 死んでしまうのに それがわかっていても 手折りたくなってしまうほどに 自分のものにしたくなってしまう そんなところも似ている 花にたとえるなら あなたはソメイヨシノ ただ 風にかき乱され悶え 狂ったように舞い散る様を私に見せ付ける 触れることを禁じられた花 結婚指輪のかわりに
  • 14-619
    冷たい人が好きなタイプだったのに何で? 彼がそっとさりげなく接近して来るようになったのはいつの頃か。 嬉しくてつい、はしゃいでしまう。 多分、気まぐれだと分かってる。 彼が好む相手と自分は、あまりにも違い過ぎだから。 手に入らないものを欲しがるばかりの人が、 こんな容易い僕に価値を見出すとは思えない。 ゲームでいえばレベル1で出て来るザコキャラみたく、 僕は落とし甲斐の無い代物だろうから。 そう考えると、酷く切ない。 自分は、目一杯弄ばれてるんだ。 柔いところを目一杯突かれて、優しくされて舞い上がって。 そして僕は、彼と寝てしまった。 嬉しくて嬉しくて、泣いて喜んで 馬鹿みたいだ。 遊びでもいいから離さないでと、切に願ってしまった。 何故自分と、問う訳でもなく。 深夜の車が行き交う喧騒の中で、聞こえた呟き。 ...
  • 24-619
    自転車二人乗り 「……違う。確かに俺は自転車で二人乗りがしてみたいといったが、これは違う」 「何が違うんだ、立派に二人乗りしてるだろ」  そう、確かに今俺が乗っているこれは自転車に分類される乗り物で、そして二人乗りだ。  だから決して間違っているとは言えない。けれど、それでもこれは違うと叫んで許されると思う。 「普通、二人乗りがしたいってリクエストに対して『二人乗り用自転車』を持ちだしてくるか!?」  普通の自転車より長い全長。小さめの車輪。縦に2つ並んだサドルとペダル。  休日に突然呼び出された俺の前にこいつが嬉々として出してきたのがこの面白自転車だった。  こんな漫画でしか見たことのない自転車が普通に存在するということにまず驚いたが、 自分が発した「二人乗りをしてみたい」という発言に対する答えがこれだということに更に驚いた。 ...
  • 26-619
    狼男と吸血鬼 「んで、旦那。これからどうします?」  日の当たらない深い森の中、青白い肌をした少年が立っていた。周りには動物の屍が 散乱し、血液が全て抜き取られていた。少年は口の周りを無表情で拭いながら、ゆっく りと近づく男に目を向ける。 「お食事も済んだことですし、そろそろ俺の方も何か頂けないでしょうか?」  飄々とした口調で少年にせがみながら、背後から白い首筋に手を優しく当てた。男の 目はギラギラと光らせ、鋭い舌と歯を覗かせていた。 「気安く触るな」  少年は男の意図が分かると、抑揚の無い言葉でそれを拒むが、男はお構いなしに首筋 に唇を近づけていた。 「もう一度言う、俺に気安く触るな」 「旦那は半分人間の血入ってますから俺のことを完全には支配出来ない……なんなら今 ここで」  そういいかけた瞬間、男は殺気を感じ、後ろに退く。向かい合った少年の手には短剣...
  • 18-619
    相容れない敵同士が一時的に手を組む 窓のない小部屋に、男が二人座り込んでいる。一種異様な光景である。 部屋と呼ぶのも憚られる殺風景な空間には調度品の一つもなく、 重厚な金属製の扉は頑なに閉ざされている。静かな午後だった。 その静けさに抗うように、男の片割れが絶え間なく喋り続けている。 「よく喋る男だ。すこし口を閉じていろ」 それまで無視を決め込んでいたもう片方の男が、とうとう耐えかねて声を上げた。 やけに剣呑な目つきをしたこの中年男、正体は私服警官である。 元より愛想の良いタイプではないが、ここまで不機嫌なのには理由がある。 一つには、敵意ある組織に監禁されているというこの状況。 もう一つには、武器を没収された上に怪我を負い、これという打開策も浮かばない己の状態。 そして何より神経を逆撫でるのは、同室に閉じ込められているのが名うての詐欺師という事実である。 ...
  • 21-619
    愛さないでください ああ、まだ玄関付近をうろついてる…。 窓からこっそり覗き見て、俺は酷く後悔した。 今、俺ん家の玄関付近をフラフラしている彼は部活の後輩。 明るくて親切で男なのに超綺麗。そんな後輩に懐かれて、俺も最初は悪い気はしていなかった。 けど仲良くなるにつれて、どんどんスキンシップが過激になって 抱きつかれたり、キスされたり、「抱かせて下さい!」とまさかのお願いをされたり 花束を手渡されたり、毎日弁当を作って来てくれたり、誕生日に指輪をプレゼントされたり 最近ではなぜか原点復帰して「手…繋いでもいいですか?」と不安げに聞かれたり 「俺の事嫌いですか?先輩が嫌ならもう二度と近づきません。」って気を使かってくれたり その事で考悩みすぎて知恵熱出した俺のお見舞いにわざわざ来てくれたのに 何故かチャイムを押さずに玄関前で考え込んでたり。 いくら鈍感...
  • 25-619
    爪を切る ヒリつく背中に眉を寄せて、気の抜けた声で騒ぐ頭をはたく。一通りの作業を終えた右手を解放し、緩慢にパタパタと動く左手を取っ捕まえて、爪切りをあてがう。 「いっ、ひっ」 「……………」 「きょっ」 「……いい加減面白い声出すのやめてくんないか」 「だってなんか人に爪切られんのって思ってたよりくすぐった……いひっ」 パチンパチンと小気味良い音を立てて爪が切れる度に、短く意味の分からない悲鳴をあげてはプルプルと震える。 「あーもうやすりはやめてー」 「丸くしなきゃ意味ねえだろ、爪痕から血ぃ滲むとか尋常じゃねえぞ」 「あっちょっ、あーあーもうやっぱりゾワゾワするし…!」 「自業自得だ、我慢しろ。……ほら終わったぞ。」 「あ゙ーー…」 唸りながら枕に顔を埋めるのアホを横目に、ついでに俺も切ってしまおうかと思い爪を見る。が、すぐにそんな必要は無いと知る...
  • 20-619
    慣らす キャベツの味噌汁に文句を言わなくなった。 炒り卵なら自分で作れるようになった。 焼酎を飲むようになった。 肘をついて食べるのをやめた。 俺が納豆を食っても顔をしかめなくなった。 おでんの汁は飯にかける派だとカミングアウトした。 やっと自分の歯ブラシを覚えた。 パジャマを買った。 たまに連れだって外出しても、スパイみたいな挙動不審をしなくなった。 一駅くらいなら歩けるようになった。 そんで次の日筋肉痛を起こさないでいられる体力がついた。 俺の好きなガムを覚えた。 読んだ新聞をたたむようになった。 熱帯魚にやる餌の適量を覚えた。 俺がすすめた本をやっと読んだ。 俺の煙草をやめさせた。 見つめても、すぐには視線をそらさなくなった。 電気さえ消していれば、体を強ばらせなくなった。 好きだと言ってもう...
  • 6-619-1
    伝わらない いやいやいやいや、ありえないから。 絶対ないね。まじでない。 伝わってるわけねーじゃん。 だってほら、今だってすごい目で睨まれてるわけで。 はい、すいません。静かにしますよ。 俺なんかちょっとうるさいクラスメイトくらいの存在です。 いいのいいの伝わらなくても。 俺、今のままで充分天国。 大体、引っ込み思案な俺っちは、伝えられるようなことを何にもしてないからね。 精々できてるのは、授業中にじっっっっっと背中を見つめるとか、 プリント渡すときにそっと手を握るとか、 体育の授業のときにさりげなく身体をすり寄せてみるとか、 登下校のとき、10メートル後からついてってるとか、 あいつのバイトしてるコンビニの周りを、2~3時間うろうろするのが日課とか、 そんな程度ですから。 「立派なストーカーだな」 ストーカーとは失礼な! 失礼...
  • 8-619-1
    さあ踏んでくれ ……え?ホントにいいの? いつもパリッとしたスーツを着て、颯爽とビジネス街を歩く一流企業のサラリーマンが 僕の前に素肌を晒している。 「……でも……」 「いいんだ。思い切り踏んでくれ……それが快感なんだ」 高校時代、ラグビーで鍛えた体はうっすらと日に焼けて、逞しくて。 綺麗な逆三角形を描く、胸から腰のライン、引き締まった太腿。まるで彫刻のような体。 あぁ、どうしよう。 身長も体格も、体重だって完全に負けている僕なんかが、この人を踏みつけにするなんて。 いつもなら、乗っかられるのは僕の方なのに。 「なぁ、頼む。我慢できないんだ。酷くしていいから」 そんなに、切なそうに切れ長の目を潤ませないで。 あなたの望むように、僕は何でもするから。 「あっ……あぁ、イイ……」 僕の体の下から、快楽の声が聞こえる。...
  • 21-619-2
    愛さないでください 「……そんなに嫌われることもないのに」 「え?俺?」 「あ、いえ、えっと」 ぼそっと口をついて出た言葉だったが、黒川さんにはしっかりと聞こえてしまったようだった。 黒川さんのスーツにピンマイクを付ける俺をじっと見つめる黒川さん。 テレビ画面の中からでも鋭いとわかる視線が直接俺に向けられているものだから沈黙など十秒ともたず、仕方なく俺は続きを話し始めた。 「いえ、あの、黒川さんてその、番組の中じゃ悪役、っていうかどうしても嫌われる……あ、すみません失礼ですよねすみません!」 「いいよ別に。そういう風に見られてるのは知ってるし、愛されキャラとか似合わないだろ」 「……そんなこともないと思いますけど」 お世辞でなく、そう思う。きつい感じの顔立ちだけれどその辺の俳優に負けないくらい整ってはいるし、こうして俺と普通に喋る分には優しい声をしてい...
  • 12.5-619
    最後に伝えたい言葉 「十中八九脳漿ブチ撒けて御陀仏、やな」 ヒュゥ、と場違いな口笛の音。こんなときでも口許には狂犬じみた笑み。 ――嗚呼、神様仏様。 この人のこのカオが見れなくなることだけが心残りです。 つい先刻まで縛られていた手首をさすりながら窓を覗き込む。 ここから飛んで助かる可能性は五分…というのはあまりに楽天的過ぎる数字だろう。 まぁ、どちらにしろ連中はおれ達を生かして帰すつもりはあるまい。 それならいっそ今ここでこの人と一緒に死ぬ方のも悪くない。 想い人と共に死ぬ。なかなか甘美な響きじゃないか。ああ、ますます悪くない。 死の間際の感傷か、押し殺してきた言葉が自然に口をついて出る。 「神崎さん、最後に聞いて欲しいことがあるんですわ」 「ぁア? なんや改まって」 「――おれ、ずっとあんたのこと愛してました」 「へッ! 寝言ぬかしよる。お...
  • 20-619-1
    慣らす 「ここが今日からお前の部屋だ」 背負ったままのリュックをぽんと軽く叩くと、細い身体が大袈裟に跳ね上がった。 直接触れたわけでもないのにこれほど大きな反応を示すのは、親戚中をことごとくたらい回しに されたその過程で何度か虐待を受けたからだろう。目で確認したわけではないが、季節外れの 長袖の下にはいくつも痣が隠れていると聞いている。 俺は気づかれないようにため息をついて、小さな部屋を見回した。 簡素なベッド、勉強机、押し入れにすっぽりはまっている小さな箪笥。それがこの部屋の家具の 全てだ。 「悪ぃな、テレビも本棚もなくて。必要なら揃えてやるから、しばらくはこれで我慢してくれ。 押し入れに箪笥が入ってるから、好きなように自分で収納しな。荷物はそれで全部か?」 リュックを指し示すと、ゆらりと頭が前後する。頷いたのか揺れただけなのか、判別が難しい。 無言で半歩身...
  • 21-619-1
    愛さないでください  ひとつだけお願いがあるんです、と青年は静かに言った。 ――私を愛さないでください。  烏色の髪が風に撫ぜられて蒼ざめた頬にかかり、ただでさえ感情を内に秘めがちな青年の表情を一層読み辛くしていた。  けれども、日頃から禁欲的な彼が、そうして一陣の風の中に無防備に身を置くさまを見るのが、私は存外に気にいっていた。  だからたびたび夜になると、青年を連れて、この静かな湖畔を訪れた。  ここに吹く風は無粋な障害物に遮られることはなく、ただ穏やかにさざ波の上をやってきた。  そして、私と青年に沈黙が訪れると、その間を優しく風が通り過ぎていくのがわかるのだった。  青年もまた、この時間を好んでいた。  明るい日差しの中では人目を集める彼の容姿は夜の帳にしっくりと溶け、湖畔に吹く水気を含んだ風は彼の故郷の風にどことなく似ているのだと言う。 ――私を愛さない...
  • 16-619-1
    閉じこめる 綾乃と駆け落ちをする、と、透は俺の眼を真っ直ぐに見つめて告げた。 叶わない恋だと嘆く、かつての弱々しい眼差しの面影は既に無く、瞳は強い光を帯びているのに気づいた。 遠くで蜩が鳴き、畳には、ふたつの影が這うように伸びていた。 「家はどうするつもりだ」 尋ねると、透は痛みを堪えるような顔をしたが、それも一瞬のことだった。 「知るものか。あいつらの傀儡にはならない。そんなものはもう御免だ」 「――いつ、発つんだ」 「明日の深夜、綾乃と峠で待ち合わせる。……和志、すまないがおれを助けてくれないか」 瞳の輪郭が和らぎ、幼い頃と変わらない眼差しが俺を捉えた。透が頼みごとをするときの眼だ。 頷くと、食い縛っていた透の唇が綻んだ。 「助かる。おれひとりでは囲いを越えられないんだ」 しばらくの間の後、透は大きく息を吐き、眉根を下げた。 「本当にすまない。…...
  • 14-619-1
    冷たい人が好きなタイプだったのに何で? 「なんでおまえ手袋もしてないんだよ。」 ほら、手貸せ。 一方的に繋がれた手から、相手の体温が流れ込んでくる。 冷てーなおまえの手。昔から、冷え症だっけか。 彼は、優しい苦笑いを潜ませた声でそう言って、歩き出す。 温かすぎるその熱にめまいを感じながら、手を引かれて歩いた。 半ば俯けていた視線を少し上げて、繋いだ手を視界の中心に据えた。 手を引っ込めようとするのに、その度に掴み直されて、指は絡め合ったまま。 その内に互いの温度が混ざり合って、何処から何処までが自分のものなのか、 境界が曖昧になってしまう。 堪えきれなくなって、眼を逸らした。 胸が痛い。悲しさや苦しさでなく、得体の知れない切なさが喉を締め上げる。 辺りはもうすっかり冬景色で、明け方には雪が降った。 時折氷点下の空を過ぎる風は首筋を脅かし、...
  • 10-619-1
    受の命令(お願い)で女装させられて、更に白昼堂々デートさせられる攻 「ねえお願い。女の子になって?」 「は?」 いきなりの言葉に耳を疑った。 「だから、女装して」 そういいながら差し出される服はヒラヒラだ。 「こんなもんいつの間に用意したんだ!」 「今日。さっき買ってきた」 「無駄使いすんな!」 いやまて、そういう問題じゃない。 「……女装したオレにヤられてみたいとか?」 「バカか。デートすんだよ、外で」 「羞恥プレイかよ!」 「まだ恥ずかしいと思うだけの理性はあったのか」 「普段理性飛ばしっぱなしですいませんね」 「悪いと思うなら言うこと聞けよ」 「それは嫌」 キラキラと見つめてくる目は期待に満ちている。 ……諦める気はないらしい。 「そもそもどっから出てきた思いつきだよ」 そう言うと目を反らして口ごもってしまう。 言えないような理由でもあ...
  • 2-669
    兄×弟 「おい!アニキ起きろ!!」 朝から大きな声で叫んでる、うるさい。 「まだ7時だっつーの。せっかくの休みくらいゆっくり寝させてくれって」 眠い。なんなんだよ、ふざけんな。 「早く起きろって!駅まで送ってくれるって言ったのアニキだろ!?」 そうだった…忘れてた。 部活の試合でどっか行くから駅まで送れって言ってたっけ。 仕方ない、かわいい弟の為だ起きてやるか。 「はーやーくー!時間ない時間ない!!」 「うるせーよ。駅まで10分もあれば余裕で着くだろーが」 何か良い夢見てた気がするから、ちょっと意地悪してやった。 俺より10cmもでかいくせに、気は小さいんだよなぁ。 すっげー焦ってる。時計気にしすぎ。 だから間に合うから、てか間に合わせるから。 かわいいかわいい弟の為におにいちゃんはがんばるから、心配すんな。 でもねお兄...
  • 2-699
    魔王×天使 成すべきことを持たない生活を余儀なくされていた。 囚われの身となって三日、時間の感覚は既に希薄であった。 巨大な宮殿の一室に設えられた檻の中から、天使は暗がりを眺めている。 檻を離れた場所から見れば、それが鳥籠を模したものだと気付くだろう。 しかし今の彼にはどうでもいいことだった。 ふいに空間がぐにゃりと歪み、何かが姿を現した。 背に四枚の翼を持つ漆黒の獅子だ。 前肢を揃え優雅に座り込んだかと思うと、獅子は男の姿を成した。 「いつまで、わたしを閉じ込めておくつもりです。」 男は問い掛けに答えず、銀のゴブレットを手渡した。 天使は口を付けようとはせず、両手で包んで顔を寄せる。 「恐怖でひとを縛るとは、あまりに傲慢ではありませんか。」 「異なる価値観を認めずに排除し、盲信を強いるおまえの主は、傲慢ではないか。」 「...
  • 2-659
    多弁×無口 大抵、攻めくんが一方的に喋っているっぽい。 けど、受けさんはそんな攻めくんの様子を見ているのが好きなんだな。 攻めくんの、話の端々にも浮かぶ、他人に向ける優しい気持ちや視線も大好きなんだな。 声もなかなかな美声なんだ、これが。 受けさんは元々毒舌というか、口下手。 甘えたな口調になる自分の滑舌が余り好きじなゃいし、 面白い事とか気の利いた事を言おうとしても、裏目に出る事が多々。 性格曲がってるね、なんて誤解されたりもする。 けど、何も話さなくても、攻めくんは分かってくれてるから。 攻めくんも、不器用だけど本当はとっても素直な心根の受けさんが大好きだから、 相槌しか帰って来なくても無問題。 それに本人は気付いてないけど、 受けさんの声って少し甘く掠れてて 色んな意味でヤバいなーと思ってる。 余談。...
  • 2-609
    ぬこと鳥の純愛 喰いたけりゃ、とっくに喰ってる。 いや、今でも喰いたい。本能が俺を掻きたてる。 でも――― ルリリ、ルリリ、ルリ…… 綺麗な声。蒼い空に吸い込まれていく歌声。 この耳に涼やかな音を、手放すことは出来なくて。 「そろそろ僕を食べてくれますか?」 歌い終わった鳥が訊く。こいつは最愛の相手を失って久しいらしい。 「やだね。脂が乗ってない鳥野郎なんて。胃液が勿体無ぇよ」 もっと歌って。ずっと歌っていて。 時の流れの違う者同士、いつ終るとも分からない逢瀬を、もっと惜しんで。 「歌えよ。歌わないお前になんて興味ねーんんだから」 「変わった猫ですね。お仲間を追い払ってまで、一羽の鳥に執着するなんて」 だって、それは、仕方が無いだろ。 何よりお前が愛しいから。 穏やかな優等生×やんち...
  • 2-679
    ガ/チ/ャ/ピ/ン/×ム/ッ/ク(中の方でも…) 「が茶ピーン! あーさでーすぞー!」 ムッ苦はふさふさの赤毛を揺らしながら駆けてきた。 「うん。ボクも起きてるから、朝だってコトは判るよ…?」 「やや! 確か、に」 ぺちん、と額をたたいたつもりなんだろうが、彼の桃色の手はふさっと毛にうまってしまう。 ボクは、それがいつもおかしくて、見ていて笑いがこぼれてしまうんだ。 「さ、今日は一緒に何をしてあそびましょうかな?」 「ゴメン。今日はボク、スカイダイビングの収録があるんだ。晴れて良かったよ」 「…ガ茶ピンはいつも忙しいですな…」 仕方がないけれど。と付け加えたものの、ムッ苦の気持ちはすぐわかる。 生来判りやすい空気をまとっているし、それ以前に、ボクはムッ苦がスキだから。 でも、ムッ苦は絶対次にヘタな笑顔を作ってこう言うんだ。 「私はが...
  • 2-629
    大正浪漫 男は几帳面な所作で便箋を折りたたむと、通りに目を遣った。 晩夏とは言え、日差しは真夏と然程変わりはないようだ。 人力車の間を縫うようにして 思い思いの装いをした人々が行き交い、 胡散臭さと活気が雑多に混じり合った、 一種独特な雰囲気を醸し出している。 「先生、そろそろ御昼になさいませんか。」 引戸を開け、書生が遠慮がちに呼びかける。 先生、と呼ばれた中年の男は申し訳なさそうな顔をして、 眼鏡の蔓を指で押さえた。 「済まないが後にして呉れないか。こうも暑いと食欲が湧かなくてね。」 「なら、水菓子は如何です。西瓜が冷えて居ますよ。」 「それは好い。少し頂こうか。」 二人並んで西瓜を齧る。うまい具合に冷えており、咽に心地よい。 「先程から何を御覧になってたんです?」 「益田から手紙が来た。細君が君に宜しくとの事だ。」 ...
  • 2-689
    主従関係  非常に優秀で、数多くのエリートを輩出させた名門家出身だが、その性格ゆえ王に嫌われる文官。  彼が各部署をたらい回しにされ、たどりついた場所は第一王子の教育係。  王子は正妻から生まれた王太子の有力候補であったが、  側室を愛し、側室との子である第二王子を設けた王にとっては邪魔な存在だった。  彼らはお互いがよく似通っていた。  特に「嫡男である」ことを理由に、父に折檻に近い教育を受け、  一度として父に抱きしめられ愛されなかったという点を知り、  彼らはお互いに惹かれあい、心の闇を共有しあうようになった。  「王に嫌われた者同士」お似合いだとの嘲笑を周囲から受けながら、二人は暗躍する。  外には、王子の軍師として参戦した文官とともに、数々の戦場で戦功を挙げていく。  内には、王子が父に任された国務をこなし、文官も疲れを厭わ...
  • 2-649
    警察官と893の許されざる愛 子供の頃は「一緒に警察官になろうな!」なんて話してたっけ。 いつも一緒に遊んで、勉強して、同じ高校入って、 大学は別になっちゃったけど、一緒によく遊んだよな。 ずっと「お互い立派な警察官になろう!」って 一緒に夢追いかけてきたはずだったよな。 なのになぜコイツは、こんな形で俺の前に現れる? いつからだっけ、コイツとすれ違ったのは。 大学何年の頃だっけ?コイツが始めたヤバいバイトの件で喧嘩して、 あんまり連絡しなくなって…連絡しづらくなって。 コイツが大学辞めた事や、ヤバい仕事続けてる事とか 友達から聞いたのが最後、一切コイツの話聞かなくなった。 あれから何年だ? なんでこんな姿で俺の前に現れるんだよ! なんだよ、組同士の抗争って! 警察になる予定だったんじゃないのかよ!? なんでこんな傷だらけ...
  • 2-639
    東京×大阪 いきなりお役目任されて、あいつ変わってもうたんや。 それまでは、垢抜けなくて頑固で、そやけど愛嬌のある可愛い奴やったのに お役目任されてからはみるみる内に荒れていきよった。 元々離れたとこに住んどったし、俺もその頃から どんどん忙しぃなってきてたもんやから、暫くは気付かれんかった。 ......気付いた時にはもう遅い、て奴やな。 荒んだ目ぇしてぴりぴりしてるアレに会った時には、誰かわからんかった。 そんくらい、変わっとった。 必死になってお役目果たそうとして、そんなんなってしもうたんか。 そう思うたら、腕が勝手にあいつ抱きしめとった。 もう昔みたいな可愛え笑顔は出来んのかも知れんけど、 おまえが笑えるようになるなら、どんなことでもしたるから。 警察官と893の許されざる愛
  • 11-610
    スクールデイズ 「~~~でね、本当最高に優しいの!いい彼氏だよねえ!」 馬鹿みたいにでれでれしてるあなたは、あの頃と同じように可愛い。 「よかったな」 「うん、幸せ」 そう言ってくいっと酒を飲む仕草が、俺に何かを思い出させた。 あの頃俺たちが飲んでいたのは酒じゃなくてサイダーで、 しゃべっていたのはローカル線の駅のベンチだったけど。 口に入りきらないほどの量を一度に飲んでむせるんだ、あなたは。 「……っごほ」 ほらね。 「一気に飲むなよ」 俺が背中を軽くさすると、あなたは微笑んで俺を見る。 「なんか懐かしいね、この感じ」 「……うん」 あの頃、あなたに恋していた俺は、あなたのことばかり見ていた。 学校で一緒に授業をサボり、屋上で寝ていた春の日。夏期講習に汗をたらして 自転車二人乗りして行った夏の日。文化祭準備で学校に泊り込んだ秋の日。 二人で屋台の...
  • 22-649
    わんことにゃんこ うちの犬は賢い。 室内犬で大人しい。名前を呼べば飛んできて、尻尾をブンブン振って大きな瞳でこちらを覗き込む。 膝の上に乗せればされるがままで、ブラッシング中も静かに横になっている。 俺が風呂に入ればトトトッとついてきて、いつの間にか一緒にバスタイムを堪能する。 お風呂上がりはドライヤーの後にミルクを一杯。 うとうとし始めると我先にとベッドにダイブし、俺を待っている。 「あいつもこれくらい大人しけりゃ良いのに」 眠りにつく前、飼い犬を見て思ったのは秘密。 うちの猫は気まぐれ。 いつでもどこでもフラッと行ってしまう。朝起きたら姿が見えないなんてザラ。 帰ってきたかと思えば、こちらを一瞥し『いたの?』と言わんばかりの態度。 帰ってきたならばと名前を呼んでも聞こえないフリ。何故かこちらが猫なで声でご機嫌を伺いながら近づけば、仕方がないと隣に...
  • 22-629
    俺の子供を産んでくれ 俺の子供を産んでくれ。 「……って告白したらふられた?当たり前だろ、馬鹿」 「なんでだよ!俺の心からの想いをそのまま言葉にしただけなのに、なにがいけないんだよ!」 馬鹿な告白をしてふられたらしい馬鹿な男が、若干の涙目で訴えてくる。 なんでって、それをわかっていないところが馬鹿だというのだ。 「あのな、普通の女の子はそんな告白されたら、どん引きこそすれキュンとはならないの。なんでおまえはもっと言葉を選べないかね」 「だって、だってしょうがねぇじゃん。俺にとっての恋愛は、そういうことなんだもん。好きになった人とは、結婚して、子供産んで家族つくって、死ぬまで添い遂げたいって、俺は本気でそう思うんだもんよ」 大の男が、もん、とか言ってるんじゃねぇよ。 この男はいつもこうだった。毎回、誰かを好きになるたびに、こんなくそ重いことを言い出して相手に引かれてふ...
  • 22-609
    インド人DK 私は大きな通りの片隅でケータリングカーでドルネケバブを作って売っています 今はすっかりこの場所にも馴染んで、それなりに売れるようになりました 昼時なんか凄い列になったりもします 私にはとても意識しているお客さまがいました それは近くにある高校の生徒さんでした 公立高校ですが、東大や早慶合格者をゴロゴロ出すような凄い進学校でした 低偏差値おバカ高校を経て調理師専門学校卒の私には想像も付かない世界です 私が始めてここに店を出したのは七年前の秋の酷い雨の日曜日でした 昼からずーっと一人もお客さまが来なくて泣きそうでした 夕方頃に初日はお客さまゼロのまま諦めて帰ろうとしたら、車の前に一人のブレザー姿の若い男性が立ってました 「あのー、もう終わりですか?」 「いや、やってますよ」 「ならドルネケバブ下さい。肉はビーフとチキンですか? 自分はヒンドゥーなん...
  • 22-669
    国際会議 『○○大学学園祭 提携校親善試合』 本学サッカー部-韓国・××大学サッカー部 本日10 00~ 於:メイングラウンド 本学バスケ部-中国・△△大学バスケ部 本日13 00~ 於:第一体育館 本学バレー部-ロシア・□□□□大学バレー部 本日15 00~ 於:第二体育館 オレたち○○大学サッカー部は韓国の××大学に2-1で勝った いつも学園祭でやる記念の親善試合だ。ラフプレーもなく乱闘もなく実にまったりと終わった 去年は向こうで試合して2-1で負けた。あの日は悔しくて仕方なかった 終わった後の食事会でマッコリをがぶ飲みした。とにかく雪辱を果たせてよかったわ 夕方から両軍関係者が集まっての飲み会がある。オレ的には本当の試合はそれからなんだけどな 私たち○○大学バスケ部は中国の△△大学に89-91で勝利しました 20回目の開催にして記念すべき初勝...
  • 22-699
    天然な先輩とずる賢い後輩 「お」 「……あ」 コンビニの入退店と共に聞こえてきた、おそらく自分に向けられたであろう声に藍川は顔を上げた 「あれ、お前家この辺って言ってたっけか」 「はぁ」 相変わらず声でかいな ほんのり頬を染めてへらへら呑気に歩いてくるその男をちらと見ながら、藍川は自販機脇の灰皿に煙草を押し付けた 「…まだ呑むんですか」 「お前いつの間にか先帰っちゃうんだもんなー」 「俺呑めないって言ってるでしょう」 「いいんだよ、呑まなくても」 「もう誘わないで下さい、誘われると断れないので」 あんたに誘われると、と心の中で付け足して、数時間前の居酒屋の情景を思い出す 横にいた同僚に自分の飲み代を預けて席を立ち、去り際に見たこの男は、別の同僚の肩を抱き親身に話を聞いていた 周りの騒音に掻き消されないように耳許で何か囁...
  • 22-679
    眼鏡白衣×ガテンのおっさん 『今日の21時、空いてます』 最後は[。]か、はたまた[?]かはっきりさせずにメールを送る。今はちょうど昼の休憩時間だろうから、携帯くらい弄ってるはずだ。 最近の機械は苦手だと言う癖に、携帯もパソコンも難なく使用していることくらい承知済みだったりする。 証拠に彼からの返信がすぐに来た。 『暇だったら行く』 暇じゃなくても来いと散々言っているのに自分から来たことは一度もない。俺にしてみれば週3でも足りないくらいだ。 しかし、今日のところはこちらに顔を出してくれるようだ。 携帯の電源を切り受付に向かう。 「ひなちゃん、21時に一件入ったから」 うちの事務兼受付嬢に声をかけたらあからさまに嫌な顔を見せてきた。 「受付時間終わってますよ?誰ですか?」 「いつもの熊さん」 熊と言うと彼は怒るが、これが一番通じるのだ。 「あぁ、田所さん。院...
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