*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「20-849」で検索した結果

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  • 20-849
    彼のことを、知り合いの誰もが知っているのに僕は知らない ――彼は、僕と同じクラスに居るらしい 同じクラスに居るというのに、僕は未だに『彼』が誰だか分からない。 友達は皆話をはぐらかすから、噂話を盗み聞くしか僕に『彼』の情報を手に入れる手段は無い。 彼のことを思うと、胸がチクリと痛む。 ――彼は、天然ボケらしい 天然ボケなんてクラスに居ただろうか。思い当たる人物はいない。 そもそも天然ボケってのがなんなのかよく分からない。 そもそもここは特進クラスだ。頭の悪いやつなんかいる訳ないのだが… ――彼は、アイツに下の名前で呼ばれているらしい 正直、うらやましくて仕方が無い。 僕は何度心の中でアイツを名前で呼んだことか。 けれどいざ、アイツの前に立つと照れてしまって結局名字で呼んでしまうのだ。 ――アイツは、...
  • 10-849-1
    攻よりでかく成長したかわいい受 「…本当にお前なのか」 別れて居たのはほんの2年の事なのに、時とは残酷なものだ 最後に彼を見たのは向こうが14の春の事だったか 声が少女の様に甲高い事と華奢な体を大層気にしていたのに たった2年で私を追い抜く程背も伸び、声変わりも済んでいた 彼はお父さんの仕事の関係でアメリカに行っていた …向こうの食事が体に合った、という事なんだろうか? 「ショックだ、何たる悲劇」 あの、かわいらしかった天使の声も、少女とも少年ともつかない 曖昧な容貌も残っていなかった…これは世界遺産の遺失に近い がっくりと肩を落とした私を彼はきょとんと見ていた いや、悲しむまい 米食で見るも無残な姿にならなかっただけでも良しとしようではないか 「まー、向こうでバスケとか色々やってた所為かな~」 ちょっとは見られるようになっただろ?と彼は胸を張るが...
  • 25-849
    恋のライバル同士だったのに 849 「なあ、聞けよって」 「だから聞いてんじゃん、そんで」 見るともなく眺めているだけの雑誌から視線を上げずに答えると、○○はめげた様子もなく再び口を開いた。 窓の外では重く垂れこめた雲が日の光を遮って、辺り一面に夜の気配が漂っている。 凍った天から吹き降ろす寒風がフローリングの床に滲み渡っている所為で何時まで経ってもヒーターの電源を落とせない。 最後に頭痛薬を飲んで何時間になるだろうか。 痛み出した米神に手をやりながらローテーブルに置いた目覚まし時計を横目に見た。 「マジうけるよな、ホント訳分かんねー」 「…お前ホント、最近アイツの話ばっかりね」 「はは、妬いてんの」 妬いてんだよ、と勢いそう返しかけて、すっかり冷えたコーヒーと共に言葉を飲み込む。 人の気も知らずに全く能天気なものだ。 呆れて出た溜息をどう...
  • 2-849
    ほら吹きx素直 「でさあ、俺、昨日そのテレビに出てた歌手とマジで仲良くて!  これ誰にも言うなよ。実は、先週もオシノビで飲んで来たんだって」 「そっか。お前は本当に人脈が広いな」 本当は、ウソ。歌手の知り合いなんて一人もいないし、 今話題に出てる歌手なんて歌を1曲2曲聴いたことがあるだけだ。 …でも、何でかポンポンと口をついて出てきてしまう 「お前にも今度会わせてやるよ。そうだ、ライブ裏だって入れるんだぜ。  ただ地方に行かないと顔割れちゃうからムリだけど」 そっか。楽しみだなあ。と目を細めたこいつの笑顔がツキリとどこかに突き刺さった。 「俺はその歌手はよく知らないけれど、お前の友達だったらきっと良い曲なんだろうな。  今度会えた時に失礼しないために、CD買って予習しておくよ」 ツキリ、が再び胸を襲った。眉...
  • 9-849
    小学生の息子×父親 「絶対今日を逃したらだめだよね。来週の日曜日にまた風が強いとは限らないよ!」 お父さんが、うれしそうに言いながら玄関の戸を開けた。 絶対暗くなるまでには帰ってくるのよ!お母さんの声を背中に受けながら、 鋭い音をたてる北風の中に、ぼくとお父さんは飛びだしてゆく。 お父さんが脇に抱えたゲラカイトが風を切る。走るとほっぺが冷たいけど つないだお父さんの手があたたかいから全然気にならない。 お父さんは毎週日曜日には、ぼくと絶対絶対遊んでくれる。クラスの友だちは、 日曜日、朝寝坊してるお父さんは、首にラリアットしても起きないから困ると 愚痴ってたけど、ぼくのお父さんに限っては絶対そんなことない。 お父さんと遊べる日曜がぼくは大好きだ。 近所の河原でカイトを飛ばすのは、風が強い日にやろうねってお父さんと ずっと約束してたことの一つだ。まずはお手本って...
  • 5-849
    これは夢だ 夢だ。 これは夢だ。 お前が、いつも女のケツを追っかけまわしてばかりのお前が俺の前に立っているなんて。 ましてや俺の手を握ったまま顔を赤くして立ち尽くしているなんて。 おいおいお前自称ヒャクセンレンマっつってたじゃねーか(どう考えてもカタカナ発音だったが)。 どこの純情少年だその反応は。 いや、そうじゃなくてな。 俺はお前の好きなオンナノコじゃないぞ。 俺はお前の親友で幼馴染でお前の女癖の悪さを口うるさく注意する男だぞ。 ・・・お前を、ずっと前から好きだった男だぞ。 驚いた顔してんな。まあそりゃそうだ。顔に出したことねーからな。 でも、本当の話だ。 お前は俺が友人の悪癖を心配してくれていると思ってたんだろうけどよ、俺はいつもお前の口説く女の子達に嫉妬していたよ。 俺は、いつでも振られて俺の所へ飲みに来るお前を見て安心していたんだよ。・・・良い...
  • 1-849
    「桜に攫われるかと思った……」 HEY!YO!!俺サマ陽気で小粋な春の妖精ッ!YO!SAY!でも構わないぜベイベ! 今年はうっかり寝坊しちゃった俺サマ!急いで日本各地に春をお届けするぜコン畜生!Yeah!! それそれそーれ!桜よ起きな!俺サマと同じようにネボスケさんしてんじゃねぇぜ! おうおう、起きたか?綺麗に咲かせたかァ? Oh!いいねー、いいねー、今年のお前らすっげぇイイよ。咲きたくて咲きたくてウズウズしてたんだな? 何?我慢出来なくて自分で咲いちゃったヤツもいるって?早漏かよ!! エロイねヲイヲイ!でもそんなお前ら大好きだぜ!Yeah! んぁ?何?好きなら春の国に帰らないでくれって? どうしたんだよ、早咲きのソメイヨシノ君。俺サマはいつも遠くからお前達を見守っ…… ぶわぁああーー! こらてめぇ!花びら一気に散らすなオイ!俺サマちいせぇんだから攫...
  • 7-849
    さいたま 「なぁ、俺らどうなんの?」 暗い雰囲気の中発せられた言葉に、浦和と大宮は何も答えなかった。 それもそうだ。 今まで慣れ親しんできたこの地をもうすぐ離れなければならないのだから。 自分たちが築き上げたものを、 どこの誰ともわからないヤツに横取りされるだなんてまっぴらごめんだった。 「ちくしょうっ……!なんであんなヤツに……!! 俺たち三人でうまくいってたのに今更なんなんだよっ!!!」 与野はそう叫ぶと壁にクッションを投げつけた。 「でも…これ以上はどうしようもないよ。僕たちでどうにかなる話じゃない」 大宮が宥めるようにそう言い、浦和は床に落ちたクッションを拾い上げる。 既に二人は諦めてかけていて、 自分だけがこんなにも必死なのだと思うと、与野は悔しくて涙が出た。 しばらく無言が続くと、 ガチャ、と扉を開けてさいたまが入ってきた。 「...
  • 3-849
    妖怪 電車を来るのを待っているため、自動販売機の近くにある汚いベンチに座って 俺は「萌える妖怪」という本を読んでいた。勿論カバーだけは外国の何だか有名な 哲学の本のカバーに変えている。何たって美しい俺が「萌える妖怪」なんて読んで いるなんてこの状況に相応しくない。こう、目が隠れる程に前髪が長い美少年が 憂い表情で読書っていう素晴らしい組み合わせに人間どもはこちらをちらちらと 見て通り過ぎていく。そうそう、もっと俺の美しさを見ろ。感嘆しろ。そして敗北しな! そんなこと微塵も考えてません、な潔癖そうな顔で「萌える妖怪」を読み続ける。何しろ最近の 人間達の流行りはオタクらしい。俺が妖怪だなんてバレないようにきちんと最新の 情報を仕入れないとなあと思い、この本を購入した。これの他にも、やたらと目が 大きくて頬を染めた少女が表紙の漫画が大量に置いてあったが、あちらは多分上...
  • 4-849
    誕生日がクリスマス 「なあなあ、何で俺のこと好きになったの?」 「いいじゃん、そんなこと」 「良くないって」 「やだ、笑うから」 「笑わない、ホント、笑わないから」 「…お前がね」 「うん」 「誕生日に、おめでとうって言ってくれたから」 「…は?」 「誕生日、おめでとう…って言ってくれたから!俺、あんま、言われたことなくってさ、だから」 「…馬鹿だなあ」 「あ、ほら笑ってんじゃん!」 「お前の誕生日におめでとうって言わないで、いつ言うの?」 「だって、俺の誕生日ってクリスマスだろ?だから、こう…忘れないでいてくれたのがさあ…。会ってから、五年目くらいにそれに気付いた時にさ…なんての?嬉しいのと…甘ったるくって胸の内側が痒くなったのよ」 「…馬鹿だなあ」 「馬鹿馬鹿言うな」 「だって馬鹿だろう?」 「なんでだよ?」 「お前の誕生日はお前の誕生日以...
  • 6-849
    ドアをはさんで背中合わせ 聞いてくれよ、とあいつが言う 帰れよ、と言う俺の声は震えていた 「誤解だって…」 勘のいい奴。 俺は何も言っていないのに ただ、暫く顔も見たくない、と言っただけなのに そして 本当は帰って欲しくなんか無いことも 奴には分かっているんだ 大きな溜め息が、ドア越しなのに聞こえて 「俺は、ここにいるから…」 おまえの気が済むまで。 金属のドアは、あいつの体温を伝えてくる 信じていない訳じゃない ただ苦しくて …抱き合って、誤魔化して笑えない痛みがあって それなのにあいつが必要で あとどのくらい、俺達は一緒にいれるのだろう 俺の体温を、おまえはいつまで感じてくれるのだろう おまえを感じる、背中が痛い …この痛みも、伝わるっているのだろうか? ドアをはさんで背中合わせ
  • 8-849
    木枯らしが吹いたので決心しました 会社を出た途端に吹き抜ける風に、スーツの胸元を押さえ、お世辞にも 小さいとは言えない体を屈めた。 いくら東京に出て何年も過ぎたとは言え、沖縄出身の俺。 晩秋の寒さは未だに慣れる事が出来ないでいる。 駅まで続く道を歩けば、屋台のおでん屋が旨そうな匂いを放っている。 学生時代には苦くて仕方なかったビールも飲めるようになったし、 いつの間にか日本酒の旨さも覚えた。 空にはほんの少しの星。あの形はオリオン座だろうか。 肌寒さもあいまって、ふとあいつに会いたくなった。 東京に出て初めての冬、ようやく有難みを知ったあいつに。 沖縄にいた頃は邪険にしてしまって、優しさと暖かさに目を背けていた 自分は今思えばどうしようもない子供だったのだろう。 胸ポケットから取り出した携帯電話でも 滅多に押す事のないナンバーを押して音に耳を傾ける。...
  • 15-849
    ナルシスト攻め苦労人受け ベタな設定というやつが自分は大好きです。 例えばなんですが、逃げた親が作った借金があって、 しかも弟たちを5人くらい抱えて、自分の収入は全部家につぎ込んで、 けなげに学校をやめて働いている青年がいるとします。 彼は若いのでちゃんとした会社に就職も出来ず、 掛け持ちでたくさんのバイトをしています。 その中の会社のひとつに、苦労知らずの勘違い二代目の男がいます。 自分大好き男なので、周りからは煙たがられているのですが、 誰もそれを指摘してくれる人はいません。 苦労青年は真面目で正直なので、ある日、クビになるのを覚悟で 彼をどなりつけます。はじめはびっくりする二代目でしたが、 そんなことを言ってくれた人はいなかったので、彼のことが気にいってしまいます。 最初はからかい半分で青年を口説...
  • 27-849
    お兄ちゃんと呼ばないで 「やっほー。お邪魔するよー勉強教えてくれ」 「嫌だ」 要求を一言で拒否すると、ええ、と背後で大袈裟な声が上がった。 それでもそいつは出て行こうとはしないで、駆け寄ってきて俺の首にしがみつく。重い。 ノートに数式を書き付ける手を止めて、渋々俺は振り返った。 毎朝懸命に撫で付けている焦げ茶色の癖っ毛、愛嬌のある顔。亡母譲りで真っ黒けな硬い髪と、父親譲りで強面気味な俺とは全く違う。 「あのな、けーすけ。お前がテスト前ってことは俺もテスト前なの。人の面倒見てる暇ないんだよ」 「そう言わずにさー、頼むよおにーちゃん」 「おにーちゃん言うな、気色悪い」 「ひっでー。そういうこと言っちゃう?」 「言う。俺は憚らず言うね」 こんにゃろう、と圭介が俺の首に圧力をかける。 たまらず椅子から転げ落ちて、俺は圭介の腹に手をつく。ぐえ、と呻くのは完全に自業自...
  • 22-849
    貿易港そばのグラウンド あの頃、港町は猥雑で、グラウンドの金網の向こうからは常に湿った風が吹き荒れていた。 グラウンドは四角に仕切られただけのただ広い空間で、古びたバスケットゴールがわびしげに佇んでいる。 幾つものネオンが港に瞬く頃、グラウンドで遊ぶ子どもらは段々とその姿を消していき、最後にはひとりの少年だけが残る。 少年は俺だ。唇を噛みしめている。 燃えるような夕日を、落ちてくる夕闇を、親の仇のように鋭く睨みつけている。 俺が宇宙人と出会ったのは、そんな繰り返しの日常の中だった。 無人のグラウンドに色濃く落ちた影に視線をうつして、俺はいつものように数を唱えている。 ゆっくり百まで数えたら家へ帰ることにしていた。 六十過ぎまで数えたころだったろうか、ふと背後から物音が聞こえた。はっとして振り返ると、ひとりの少年が怯えたように立ち竦んでいる。 年の頃は俺と同じ...
  • 14-849
    筋肉に憧れる小柄で華奢な少年が攻め 「…なによ」 「いや」 視線を感じて振り向いた俺に慌てる様子もなく、奴は少し不機嫌そうな顔で、首を傾げた。 「相変わらず、マッチョだなーと」 「悪いかよ」 「むしろ羨ましい」 俺、つかない体質だろ。そう言って、またふてくされたようにパソコンに向き直っている。 画面は流行りのネットゲーム。奴のアバターはガタイのいい狩人。 「なんでそんなにこだわるんだ?」 マッチョと称された俺的には、結構どうでもいいのだ。 部活をやってれば嫌でもつくが、正直バランスが悪い。着たい服も限られる。 こう挙げてみると、案外不満あるな。 そんな旨を語ると、奴は再び俺に向き直った。 「ガキに見られたくないのがひとつ」 あー。茶髪にしたら補導されかけたこともあったっけ。頷く。 「オタクだと思われたくないのがひとつ」 なるほど、ヒョロい=オタクだ...
  • 18-849
    同性結婚 「結婚して下さい!」  プロポーズされた。  街中で、しかも知らない男から。 「…は?」 「あ、っと違った、結婚を前提にお付き合いをしてください!」  ちょっと睨んだにも拘らず、やけにさわやかなイケメンはそう言って俺に手を差し出してくる。なんだそれ握手しろとでもいうのか。反射的に握りそうになっただろ危ない危ない。  俺はそのイケメンの面を見た。イケメンは目をきらきらさせて俺を見つめている。その瞳には一筋の曇りもなかった。  俺は俺の格好を見た。おろしたてではないが普通にスーツ。ついでに俺は女顔では決してない。身長もこういってはなんだが日本人離れしているし、友人曰く俺は憎らしいほどたいそうなイケメンだそうである。  ああなるほど。 「ただの残念な奴か」 「えっ、ちょ、違います!違いますって――」  なにかまだわめく奴に背を向けて俺は歩きだす。さて取引...
  • 26-849
    両片想い 親同士が仲が良くて、あいつとは生まれる前からの付き合い。いわゆる幼馴染だった。 人付き合いが苦手で勉強が趣味なんていう根暗な俺とは違い、あいつはいつだって明るくて、誰に対しても優しくて、俺には勿体無い友人だ。 中学、高校、大学まで同じ所に通うことが出来て、友人の少ない俺にとってはありがたいことだったが… いつからだろう、あいつの女癖が悪くなっていったのは。 女に縁がない俺からしたら羨ましく思えるぐらい昔から女にモテてはいたんだ。けど、取っ替え引っ替えに恋人を作るなんて真似はしなかったのに。 あいつの女癖の悪さに口を出すつもりは無かったんだ。強く言って、嫌われたくなくて。 でも今回ばかりは口出しせざるを得ない。 大学で俺が世話になってる先輩があいつと付き合い、こっぴどくフラれたらしい。 泣きじゃくる先輩を慰めながら俺は、あいつに対して初めて怒りを...
  • 24-849
    高額賞金首と賞金稼ぎ その世界は全てにおいて貧しかった。 警備隊が腐敗、自警団が役立たずの代名詞として謗られる世で、 唯一発展を遂げたのがハンターギルドと呼ばれる組織だった。 どんな軽犯罪でも、どんな貧乏人でも、報酬らしきものを用意すれば誰でも憎い相手を賞金首として手配できる。 ギルドに登録されたハンターが、その報酬のために人を狩る。 依頼者とハンターの間に立つ、情報を統括する中継ぎ人として、それは存在していた。 「旦那ー」 「………………」 「腹減ったぁー。ひもじいよ、旦那ぁ」 「…………うるさい」 体を引きずるようにだらだらと歩いている男に力のこもらない苛立ちをぶつける。 もう数日、何も食べないまま歩き続けていた。 果てしない荒野の中、思い出したようにぽつぽつと点在する町までまだ距離がある。 「やばいよ旦那。今度こそ年貢...
  • 16-849
    主従忍者 主「四つん這いになれ」 従「あの、今夜だけあなたが跪いてくれませんか」 主「断わる」 従「一度でいいんです」 主「生意気だな。私の上に乗ろうなんて」 従「さすがに身体が持ちません。連日連夜で疲れてしまって」 主「知らん。下っ端のくせに」 従「あなたひとりでいつも高みへ……。結局私は自分でどうにかしなきゃいけないなんて、辛いんです」 主「うるさい! 静かにしろ誰か来てしまう。おとなしく身体をまかせろ」 従「ううっ」 従忍は仕方なく跪く。 主忍は軽く勢いをつけると、四つん這いになった従忍の背中を思いきり蹴って館の塀の上に登った。 主「ほら、お前も早く登ってこい」 従忍は恨めしそうな目を上に向けると、背中をさすりながらノロノロと塀をよじ登っていった。 従「(やってらんねー)」 お母さんみたい
  • 17-849
    誘蛾灯 私は君に出逢つてしまつた。 君の何処に惹かれてゐるのか説明するのは難しい。 或る雨の夜だつた。 傘を忘れて途方に暮れてゐる私の横で 君の差し出した淡い黄色の傘ばかりが眩しく思へた。 以来、君ばかりを瞳で追つてゐる。 君に近づくようになつて、 私のような男が君の周りには沢山居ると気付いた。 君の優しさに非道く惹かれてゐるのは私ばかりではない。 惹かれてゐるのではなく、君が引き寄せてゐるのではないかと時々考へる。 私が余りにも君のことばかり考へるので、帝大の友人に相談を持ちかけた。 このような気持ちになるのは初めてだが、はづかしいとは思わなかつた。 友人は君からフェロモンでも出ているのではないかと茶化したが、 私はフェロモンが何かわからなかつたので曖昧に濁した。 ただ、理性では抗えない本能的な所で私が君に惹かれていることだけが解かるのみ...
  • 3-849-1
    妖怪 二年勤めた会社を辞めて、俺は久方ぶりに田舎に帰った。 今日から数ヶ月は、誰も居ない離れの奥座敷に寝泊まりする。 子供の頃、近所の子供達とよく遊んだ懐かしい場所だ。 雨戸を開けて光を通すと、クスクスと微かな笑い声が風に乗って幻聴のように聞こえた気がした。 一瞬間の後、先程まで誰も居なかった筈の座敷の奥に和服を着た同じ位の年頃の青年が座っていた。 呆然として、その青年の顔を見ると、何処か懐かしい面影がして、不思議と恐ろしさは感じなかった。 「やっぱり馨には僕が見えるんだね。」 青年はさも嬉しそうに、にっこりと微笑んでそう話し掛けてきた。 「ああ、お前‥‥えっと‥。ごめん。名前が‥」 「分かる筈ないよ。名前、話してないし。」 そうだ。いつの間にか仲間に混じってにこにこ笑って付いて来た色白のおとなしい子。名前も聞いてな...
  • 6-849-2
    ドアをはさんで背中合わせ 「迷惑だ」 強く言い切った瞬間、彼の目が凍りついた。 「そんな戯言、二度と口にするな。不愉快だ」 向かい合えば少し見上げる彼の顔。 紅潮していた頬が蒼褪めていくのを睨むように見つめる。 「今の言葉は忘れてやる。明日までに頭を冷してこい」 言外にチームを辞めることは許さない、と告げると彼の凍り付いていた瞳がひび割れた。 裂け目から溢れてくるのは苦しみ、怒り、絶望。そして悲しみ。 かすかに震えだした彼のふっくらとした唇から目を逸らし、背を向けた。 そのまま部屋を出て、ただ一人、彼を置き去りにする。 後ろ手にドアを閉めてはじめて、身体が震えだした。 だいじょうぶ。彼の前では冷徹さを保てていたはずだ。 口調も表情も、眼差しさえも揺るぎはさせなかった。 かみ締めた奥歯が、今ごろのようにカチカチ鳴る。 目の奥が刺すように熱く痛む。だが泣くこ...
  • 6-849-1
    ドアをはさんで背中合わせ 逃げるようにして部室に入ると鍵をかけた。 と同時にノブを回しドアを叩く音と瀬田の声が聞こえる。 「先輩ここ開けてください、先輩?」 「嫌だ!絶対開けねー!」 「開けてくださいよ、どうして逃げるんですか!?」 「瀬田があんなことするからだろうが!!」 そう言うとドアを叩く音が止んだ。 俺は深く息を吐くとドアにもたれて座った。 「…すみません、でも俺…」 気配はするが、その後に続く声は聞こえない。 正面の窓から見える青空をぼーっと眺めながら考える。 瀬田の事は好きだ。 部活も熱心だし、賢いし、性格も良いし、話も合う、一番仲の良い後輩だ。 しかし、だからと言って、その、あんなことをする対象として見た事なんか無い。 「俺さ、瀬田のことそういう目で見たことないんだ。」 正直にそう話すとややあって「知ってます。」と答えが返ってくる。 瀬...
  • 12.5-849
    追う者×追われる者 忘れもしない光景。 体育祭最後の華、選抜リレー。 その時のアイツのカッコ。何故か女子の制服を着てコースに着いた。 「うちの団のコンセプト、男女衣装取替えなんだよな」 そういって不適に笑うあいつの顔が、今でも焼きついている。 結果は惨敗。 陸上部では、短距離で負けたことなかったのに、アイツの背中に追いつく事だって出来なかった。 そのときは悔しくてただ泣いていた。 あれからもう3年経った。 「なぁ、お前陸上やらねぇの?」 「だからもうやらないって言ってんだろ!!」 気がつけば、あの時と立場が逆になっていた。 しつこく陸上部に勧誘してくるアイツに、『俺を捕まえられたら入ってやる』なんていった日からまだ3日。 俺の肩に手がかかる日は、多分近い。 最後の一つ
  • 26-849-1
    両片想い 先輩は有能な営業マンで上司にも部下にも厚い信頼を得ている 俺は気さくで仕事にひたむきな先輩にすぐに懐いて…恋情を抱いた そうしてみると途端に真っ直ぐに尊敬の眼差しを向けてきた事が恥ずかしくなった 先輩には奥さんがいる 先輩はあまり話したがらないけれど、絶世の美女とだけ言っていた 「俺の眼鏡どこにある?」 「童顔隠しの伊達なら給湯室にありましたよ」 「…お前生意気だぞ」 大丈夫、先輩の幸せを壊すつもりはない 俺は後輩として先輩を尊敬してるんだ 俺には男前の部下がいる たまに生意気だが素直で仕事の覚えも速いいい部下だ 「甘党な先輩にケーキのストラップ買ってきました」 そういって面白半分に買ってくる乙女チックな物が年々溜まっていく 「あなたって意外と乙女なのね」 そうレズビアンの妻から笑われる 相手はストレート、しかも直属の後輩...
  • 20-869
    色気のある男 二重だけどパッチリ系じゃない切れ長の目。 髪は黒髪で、艶があるストレート。仕事では地味な紺のスーツ。中肉中背。 手はきれいかな。細長い白い指をしている。 後ろから耳元で話しかけられるとゾクッとする。なんだっけ、赤い彗星みたいな声っていうの? それが同じ会社の同じフロアにいる三年下のあいつだ。ごく普通のどちらかと言えば地味系に入るやつだが、かなりのくせ者である。 夜の会社のトイレは注意しなければならない。たまにいかがわしい声が聞こえてくるからだ。 夜だからって職場でやるなよ。しかも男子トイレ。AVかよ。 俺は隣の個室で用をすませて、電気を消して出て行った。何かぶつかる音がしたが、多少の嫌がらせは許されてもいいだろう。 そんなことがあった翌日も注意しなければならない。大抵あいつが俺を待ち伏せしているからだ。 「鈴木さん、おは...
  • 20-809
    同情でもいいから 「痛い」 「ちょっとは我慢しろって」 「だって、痛いもんは痛いの」 「わかったわかった。ていうかな、てめぇなぁ、いいかげん学習しろっつうの」  むくれた頬が赤い。溶けた氷嚢を外すと、すでにうっすらと青く腫れ上がっている 「まったく毎度毎度飽きもしねぇで、もっとロクなやつと付き合えよ」  言いながら、手の甲に絆創膏を貼っていく。  こいつの薬指には刺青が入っている。鎖でできた指輪。  昔はピアスだって嫌だって言ってたくせに。  "お友達"に進められて入れた、って、あっけらかんと言いやがって。頭悪すぎるだろ。 「ほっといてよ」 「ほっとけるか、馬鹿」  顔のすり傷やらに薬を塗っていく。ああ、何でこう手馴れてんだ、俺?マジ勘弁して欲しい。 「もう帰っていいよ」 「自分から呼んどいて、その態度はね...
  • 20-859
    痛々しい あいつは非常識だ。 本人は格好いいと思っているらしいが、客観的にみると痛々しいことこの上ない。 まず豹柄のスーツ。どこで売ってるんだそんなもん。というか何故買った。 そしてご当地モノのキャラクターのネクタイ。 ご当地キャラは別に良い。なんでショッキングピンクに青の配色を選んだ。 そんな格好をするから行く先々で残念なイケメンなんて言われるんだ。 挙句にそんな目立つ格好をしながら毎朝赤いバラを持ってくる。 クサイ。2重の意味でクサイ。しかも渡す相手は男。 痛々しいにもほどがある、なんなんだこの男は。 で当たり前ながら毎回断られる。そのたびに「なんで~」なんて泣きながら私にすがりつく。 喚くな鬱陶しい。失敗するたびにそうやって引っ付いてくるから近所から変な噂が流れるんですけど。 朝のショックも昼には回復してまたアタックする...
  • 20-879
    受けさんはずるい大人です 喫煙とは、無意識下の自殺である。  どこのどいつが言ったか知らないが、きっとそいつは一分の隙もなくスーツを着込み、 死の煙で肺を満たしたりはしないんだろう。  ちょうど今、俺の目の前に立つ、こいつのように。 「なんで……!」  絶望の表情を浮かべる顔を引き寄せて、ゆっくりと紫煙を吹き付ける。  やかましく何か囀ろうとした口が、たまらず咽る様子が可笑しい。 「なんでって言われてもねえ」  二本目の煙草に火をつけて、空っとぼける。 「お前の体、もう飽きたわ」  そうして、にっこりと微笑んで言ってやる。  作り笑顔がばれない自信はあった。何て言ったって年季が違う。  何事もなかったように別れていくのには、慣れている。   煙草の毒が俺の致死量を超えて積もり積もったとしても、それが無意識の作用ならば致し方ないのだ...
  • 20-819
    さよならの季節 もう少しで4月になる。 卒業生は新入生や新入社員となり、 彼らはさよならの言葉を残して新たな旅立ちを迎える。 丁度12年前の今日、卒業式の日、私は大切な友人と別れを迎えた。 高校時代の3年間、初対面から、ひたすら眩しい彼の笑顔に惹かれ続けていた。 地味な私と違って彼は明るく賑やかで、友人も多く、私の記憶の中では彼の周りにはいつも側に誰かがいた。 それなのに、何処が良かったのか彼は私をいたく気に入り、私にだけ、やけにくっついて回った。 彼は私を純粋に、本当の親友のように扱ってくれた、そう思う。 そして、私は親友という文字通りのその関係が心底から、辛かった。 「ずっと好きだった」「もう親友では居られない」 私は彼に想いを告げた。もうそれ以上行き場のない想いを抱えては居られなかった。 「知って欲しかっただけだから」 ...
  • 20-829
    受けの逞しい筋肉にうっとりする攻め 素晴らしい。 風呂上がりの彼の姿を見て、いつものことながら見惚れてしまった。 硬く、鍛えられた上腕二頭筋・三頭筋に三角筋。 背中の脊柱起立筋もなかなかに良いフォルムを描いている。 首を動かしたときの胸鎖乳突筋の素晴らしさ。 大胸筋は全てを語っている。 今日の夜は寝かさないってことだろ? 「風邪ひくよ」 春だと言っても夜はまだ寒い。暖房のついた部屋だからと上半身裸の彼に、服を渡す。 「あー、サンキュ」 何故か恥ずかしそうにしながら、受け取った服をモソモソと着る。 服の上からでも、彼の体はとても魅力的だとわかる。 あの体に触りたい。あの体と繋がりたい。 なんて性的な体つきをしているんだろう! 後ろからそっと近付き、その体を抱きしめる。 「今日、良い?」 今日こ...
  • 20-899
    俺が君を壊しました  俺が君を壊しました。 「――実は……その、お前に話したいことがあるんだ。聞いてくれないか」  その言葉を聞いた時、俺は心から歓喜しました。  だって君の顔は仄かに赤らんでいて、恥ずかしげな目は俺を見るに見れないでいたし、それは恋心を含んでいることを疑うべくも無かったのだから!  俺はもう何年も前から君に恋をしていたけど、臆病者だから、恐くて、怖くて、君の一番近くにいる自覚はあったけど、俺は最後の決定打を打つ言葉を告げることができないでいたのです。  だが俺だけじゃなかったんだ、君も同じ想いを持っていたんだと、俺は本当に、いつもの無表情がだらしなく崩れたのを自覚しながら、情けなくも喜びました。  だから俺は快諾しましたよ。俺と君以外誰もいない部屋で、俺は君の話を聞くことを。 「……お前の後輩に、秋山光というのがいたろ...
  • 20-879-1
    受けさんはずるい大人です 結城さんは、こわい人だった。 高校の剣道部で出会った一つ年上の彼は、それはもう他の部活動の生徒の間でも噂になるようなスパルタで、当時からヘタレを体言したような根性なしだった俺はたっぷりとしごかれた。 そのあまりの容赦のなさに、入部当初の俺は密かに彼に“鬼”とあだ名を付けて、決して面と向かっては言えない愚直や悪口を心の中で吐き出したものだった。 だけど、そんな鬼のような彼が実はホラー映画が大の苦手だったり、ストイックな見た目に似合わず風呂上がりの楽しみはよく冷やした牛乳プリンだったり。――ちなみにこの牛乳プリンをこっそり他人が食べてしまうと世にも恐ろしい事態になるのだが、それはまた別の話である―― “先輩と後輩”という枠の中で交わされる他愛ない会話から時折覗く、そういう可愛い一面を見つける度に、俺は彼を好きになっていった。 そうして。俺がただ...
  • 20-839-1
    黒い騎士と白い騎士 忠誠を誓わないかわりに、紋章の入った盾と鎧を黒く塗りつぶす。 俺は黒騎士と呼ばれるただの雇われ傭兵だ。 金がないから金を稼ぐために兵になる。だが決して忠誠は誓わない。 戦うのは名誉のためでもなく主のためでもなく自分のため。 王直属の騎士達は俺達を蔑み、国王も俺達を捨て駒として使う。 俺達も死にたくはないからより一層腕を磨く。そうして力でねじ伏せていく。 ある日、俺達の戦場に若い銀髪の騎士が来た。その美貌は見るものすべての心を奪うほどだった。 代々国王の近くで仕えてきた貴族の跡取りだという。 ただ彼は果てしなく潔癖で、傭兵達の秩序の無さを非常に嫌った。 ただでさえ傭兵は争いで気が立っているというのに、ことあるごとに叱責されてはたまらない。 次第に黒騎士達は彼に反発心を抱くようになった。「白騎士さん」と彼を揶揄して呼ぶものもいた。 しかも...
  • 20-809-1
    同情でもいいから キッチンというほど広くもないけど、それでも部屋とはガラス戸で区切られている。 けどもちろん鍵なんかかかってないから、結局のところ言い訳でしかない。 その証拠に、戸を開け、薄い布団に潜り込んで取り出したものは、さわる前から立ち上がっている。 「甲野君、駄目。来ないで」 固い声が俺をたしなめるけど、構わず握る。 本気で駄目だと思ってるんなら、蹴り飛ばせばいい。 戸川がいたから俺は駄目になった。 失恋というには客観的にだってひどい仕打ちだったから、だから立ち直れないという甘えに身をまかせた。 半ば当てつけだった。ひとりだったらちゃんと何とかしたんだ。 こいつが俺を病院に連れて行ったり、飯を食わせたり、無くした金をくれたりしなければ。 部屋にひとりにならないよう、と布団を持ち込んでこなければ。 馬鹿じゃねぇの、と罵倒すれば、もう何かを無くすのは...
  • 20-899-1
    俺が君を壊しました すえた臭いが鼻について離れない。悪いのは洗うつもりもなくおざなりにシンクに重ねた食器か、30分前にしこたま掻いた俺の汗か、それとも腹に絡んでかぴかぴに乾いた白いアレだろうか。  白昼から不健全に締め切った狭い密室だ。空気が淀むのは無理もない。  あるいは、この酷い臭いは俺達の内側が腐り落ちている証拠なのかもしれないな。  俺は汗で湿ったシーツに背をつけて、白い粉を鼻から吸って束の間の天国にトリップする男の白い背中を眺めていた。  くたびれて色褪せた若草色のカーテンがずれて、昼下がりの陽光が光の柱となって裸の背に降り注ぐ。太陽に暴かれた部屋の埃がキラキラと反射して、むき出しの肩甲骨の輪郭を曖昧に照らしている。 「……天使の羽だ」  ぼんやり呟いた言葉は、俺のやさぐれた精神状態を反映してか意図せず嫌味っぽい響きになった。  腕を伸ばして、骨の浮く...
  • 20-249
    殊勝なことを言ってはいるが 「……何でお前が家にいるんだよ」 「マネージャーですから」 エプロン姿で菜箸を扱う仏頂面の男は、当たり前のようにそう答えた。 俺は絶望した。 年末年始は受験生の俺だけ残して父母姉貴で旅行に行く……そう聞いていた。 だから、予備校の仲間との年越しパーティーの後、俺は心なしかわくわくした気分で家に帰ったのだった。 それがどういうことだ。 がらんどうであるはずの家では、幼なじみがおせちを作り溜めながら俺を待っていた。 「答えになってねえよ。たかが陸部のマネージャーが、なんで人ん家まで来てお節作ってんだよ」 「OBの進学実績向上も、部の将来のためには必要不可欠だからな」 「進学実績向上?それがこれと何の関係があるんだよ」 「急激な外気温の変化から、ただでさえこの時期に体調を崩す受験生は多い。最悪の事態を避けることができるか...
  • 20-349
    優しいキスをして 白百合のように清楚な純白のドレス。みずみずしい摘みたての白薔薇。華奢な金細工のティアラ。朝霧のようなヴェール。 もちろん、忘れてはいけないのは指輪だ。最高級の金剛石をあしらった、プラチナの指輪でなければ。 ……うん、完璧。 ヴィルヘルムは、おのれの用意した婚礼用の一式をあらためて眺めて満足そうにうなずいた。 これなら、きっと満足してもらえるだろう。 「さて、これから準備だ。急がないとな」 なにしろ、これはサプライズなのだから。 「……それがコレか。このアホ」 トレイシーは、容赦なくしくしくすすり泣くヴィルヘルムを踏みつけた。 「人の家に忍び込んでドレス着て女装して薔薇しきつめたガラスの棺に入って眠ったあげくに酸欠だと!? よっぽど見てみぬフリして昇天させてやったほうがよかったかドアホ! てめぇ脳みそ腐ってんだろ!」 ...
  • 20-749
    当て馬同士の恋 俺は祐樹に告白しようと決断した。 その恋は一目ぼれだった。 7歳のとき、転校してきた祐樹を見て何かの病気じゃないかと心配になるほど心臓が動いたことを思い出す。 おでこを出して笑う祐樹の顔を見るたびに息ができなくなった。 「僕、転校したばかりで不安だったけどまこちゃんがいてよかった。まこちゃんの傍って安心する」と言われてなんと返したのか覚えていない。 ただ、その後歳の離れた姉に泣きじゃくりながら病気で死んでしまうかもしれないと言った日のことを昨日のことのように思い出せる。 この気持ちが恋だと気づくのに結構な時間がかかった。 小学生高学年になってから祐樹がスポーツの中で1番バスケが好きだということを知った。 そう知った俺は、興味のもてなかったバスケを始めた。 祐樹が好きだといったり興味を持った選手はビデオを何度も見直して真...
  • 20-549
    チョコレート×マシュマロ 冷え切った俺の体と心は、カチカチに固まっていた。 けれどそれは、強い力が加わればたちまちぽきりと折れてしまう脆さでもあった。 そんな俺と一緒になりたいと言うのか。その汚れない身を汚してまでも? 「君が僕を貫いてくれればいい」 恐れを知らぬ眼差しで彼は言った。 「もしくは、僕を潰してくれ。その腕で力一杯抱きしめて」 「馬鹿を言うな、俺は一人が気に入ってるんだ それに簡単じゃないぞ、そんなことしたらお前は元のお前じゃなくなる」 拒んだ。たとえようもなく惹かれる気持ちを押し殺して。 なのに、彼は晴れやかに笑うんだ。 「いいんだよ。確かに僕は元の僕じゃなくなるだろう、そして君も。 でもそれが今より良くないなんて、どうして思うの?」 なんのためらいもなく、白い手が差し出される。 「馬鹿、俺にさわるな」 「どう...
  • 20-149
    もうどーでもいい もうどーでもいい、と大の字に寝っころがった。 竹下は困った顔をして、「お、おい……俺は、そんなつもり、じゃ」とモゴモゴ言った。 「そんなつもりなんでしょ? もうわかったからさー、1回だけいいって言ってんの」 俺は意地悪くせせら笑った。 竹下のことは嫌いじゃないが、ウジウジとまわりくどいのにたまにイライラさせられる。 もともと竹下が言い出したんじゃないか、俺のことが好きだって。 でも見てるだけでいいから、このまま友達でいさせてって。 わかった、と俺は答えた。正直すごく驚いていたし思いも寄らなかったし、 なにより恋愛感情とか隠しそうなキャラだと思っていたから、男らしいじゃんとちょっと見直しさえした。 ところがだ、その日からジットリ熱視線攻撃がすごい。 講義もそうでない時間もまとわりつくって感じで、そんで話すことが 「藤井は女の子とつきあったこと...
  • 20-449
    真面目なバカヒーロー×嫉妬深い無愛想ライバル 怪獣を前に痛手を負い、立ち尽くす俺の前に大きな爆炎が巻き起こった。 そして炎の中からさっそうと現れた奴に、俺は抱えられ、岩場の影へと避難させられた。 「ブラック、大丈夫か!」 レッドの喧しい声が響き渡る。 何でいつもいつも俺がピンチの時に現れるんだ、コイツは。 今回も情報をいちはやく先に掴んで、この事件は俺が一人で解決するはずだったんだよ。 「何で先走って行ってしまったんだ!心配しただろ!」 「うるさい。 俺は一人でもやれるんだ、お前の手なんか借りたくないね」 「何いってんだ、仲間は協力しあうものだろ? お前はよくやったよ、後は俺達に任せてくれ!」 俺の悪態をさらっと躱し、レッドは奴の仲間の元へ駆け戻って行く。 ヒーロー戦隊のブラックという、孤高でクールな好敵手の位置...
  • 20-949
    そんなつもりじゃ無いんだけど 「まいったなぁ、そんなつもりじゃ無いんだけど…」 ああ、やっぱりそうだ。 普段はバカみたいにニコニコ笑ってばかりいるこいつが 眉毛をハの字みたいにして苦笑いしてるとこなんて、今まで見たことがなかった。 こいつとは2年で同じクラスになってから、本当にいつも一緒にいた。 いや、1年の冬に転校してきて学校に馴染めず、一人でいる方が気楽だったおれを、こいつは独りにしてくれなかったんだ。 たまたま同じクラスってだけなのに、休み時間毎に隣にやってきては話し掛けられ 何を聞かれても的外れな言葉を吃音りながら返すことしかできないおれに、こいつは言った。 「おもしれー!井野ちゃんみたいな奴、俺大好き!」 それ以来こいつは事あるごとにおれに絡んできては、背筋が寒くなるような好意の言葉を浴びせてきた。 「可愛い」、...
  • 20-649
    いまさら言えない 「好きだ」 何度口に出そうと思ったか。 でも、お前の想いは知っていたから、言えなかった。 言ってしまえば、優しいお前の事だ…真剣に悩んでくれただろうな。 もしかしたら、身分違いの恋なんて諦めて、俺の傍に居てくれたのかもしれない。 でも、もう遅い。 お前がこの国から居なくなって10年。今日、この国に新たな法律が加わった。 同性同士の婚姻の自由。 記念すべき同性婚第一号はこの国の元王子と、その側近の騎士。 正直、まだ世間の風当たりは厳しい。 心無い言葉で彼らを罵倒する民衆も少なくない。 それでも幸せそうな二人の姿を見て、逆風は収まりつつあった。 ああ、本当に幸せそうで、涙が出る。 悔しいのか?悲しいのか?…分からない。 一つだけ分かるのは、素直に祝福できないという事実だった。 休日、街の市場で最悪...
  • 10-859
    鼻歌 1出会い 団長が連れてきた新しいシナリオ書き、それがカキだった。 うっとうしい前髪の下と眼鏡の下に隠された顔は別に美形なんかじゃなく、 神経質そうな目が光っているだけ。なんか怖い奴だなあ、というのがモモのカキに対する第一印象。 あ、百田だからモモで、垣根だからカキね。のちのちホモなのに果物とか言われるんだけど。 その後、カキの書いてくれた台本を見てびっくりするわけだが。 え、こいつこんなにめろめろのどろどろ書いちゃうの、なんて。 なんか哲学系とかパラドックスとかもっと他にもあるじゃん、カキに似合う系。 気になったら行動。俺のポリシー。 「メロメロでどろどろ、好きなんだ?」 劇団の事務所(っていっても、団長の家なんだけど)で、何やら書いているカキの前に座って聞いてみる。 「ああ」 目線もくれないできっぱり答えが返ってくる。 「おれも結構好きよ」 ...
  • 10-899
    B面タイプ×A面タイプ 彼との間で何度も繰り返された議論(否、単なる口論)を今夜も蒸し返してしまった。 「あんな弱いチームのファンなのは、お前の単なるマイナー趣味をひけらかすためだろう?  大体、弱いチームのファンって何が楽しいわけ? お前マゾなのか?   ああ、俺に対してサド気味だから、釣り合いを取っているってわけだな」  それを聞いた彼は、俺の顎を掴むとおっとりと微笑んで、額に優しく口付ける。 「僕はあのチームが好きなだけだよ。ユニフォームも素敵だし。  君のご贔屓のチームのように強くはないけれど、応援したくなる」 「…ひねくれもの…この、B面趣味野郎が」 その表現を聞いた彼が軽く首を振る。 「なら君はA面趣味って訳だ。  それで…?僕がひねくれているって?  ああ、実際、この不自然な関係は好きだけれどね」 今度は唇にキスされ、その後喉...
  • 10-839
    フェラ勝負 「ルールは?」 「一、手を使わない」 「はい!足はいいんですか?」 「訂正。口以外使わない」 「はい!言葉攻めはアリですか?」 「ナシで」 「了解」 「二、早くいかせた方が勝ち」 「意義あり!イク時間には個人差があると思います!」 「まあ、お前は早ろ「個人差があると思います!」 「んじゃどうやって勝敗決めるんだよ」 「早くいかせたから巧いってわけじゃないだろ!」 「個人差とか言い出したら、被験者同じじゃないと比べらんないぞ?」 「だけど!」 「第三者よんで決めてもらうとか?」 「却下!」 「だって公平な判断となるとやっぱり」 「断じてNO!」 「ならお前が自分で自分の咥えるか?」 「いや、さすがにそれは無理」 「となるとやはり誰か他の」 「ダメ!絶対ダメ!!俺以外とはやらせません!」 「俺もお前が他の奴の咥えんのなんて許可しま...
  • 10-809
    飛んでいくよ あの日、珍しく里に見知らぬ子供が紛れ込んでいた。乞われるまま、ひらりと麻を飛び越えてみせると、 まるで鳥だと言って、その子供は目を輝かせた。いずれ我らの主君となられる方だと、兄から聞いた。 かれこれ二十余年も昔のことだ。長じて忍となり、兄の言葉通りかの人に仕えることとなる、ずっと前の話。  決して忘れたことはないが、こんな時に思い出されるのが不思議でもあった。こんな時だからこそ、だろうか。 掌で押さえた傷口から、とめどなく血が溢れ続けていた。不覚をとったものだ。 確かめるまでもなく、致命傷だと判っていた。脇腹深く食い込んだ短刀には毒が塗られていた。 参ったな。独りごちた声は掠れ、語尾は囁くようであった。この分では、あと半時ももつまい。 死ぬる覚悟はあった。予感もあった。ただ、帰りを待つ主のことがひたすらに心残りだった。 生きて帰還せよと、主は繰り...
  • 10-869
    おもらし あぁ、こいつのこんな情けない顔を見るのは何年ぶりだろうか。 茫然自失、という四文字熟語でしか言い表せない様子の山田を、トイレの 個室に押し込んだ。洋式便器に座っても、山田はまだぼんやりとしている。 「山田。山田? 大丈夫か? …具合は悪くないか?」 気遣いながら声をかけると、山田はゆっくりと俺を見た。その目はいつもの 気の強さは面影もなく、不安に左右に小刻みに揺れている。 「大丈夫? 冷たいなら、脱いだら?」 俺がそう言うと、山田は俺を見たのと同じように、ゆっくりと自分の下半身を 見た。ズボンは裾から雫がたれるほど濡れ、高価な革靴は大雨にあたった ように、グチュグチュと音をたてている。 「…自分で自分が信じられない…」 消え入りそうな弱弱しい声でそう言いながら、山田は頭を抱えた。 「山田、財布貸せって。ジャージか何か買ってきてやるから。  な? ...
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