*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「22-269-1」で検索した結果

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  • 22-269-1
    甘党な男前受け ヤツがどでかいパフェをうまそうに食うのを、 コーヒーを飲みながら眺めるのは嫌いじゃない。 「うげえ、いっつもなんでそんな食えんだよ」と俺が言うと 「欲しいんだったら言えばいいのに」ヤツがスプーンを差し出すので 「別に欲しくないけど」と言いながら一口もらうのがお約束。 そんなヤツは少しでも休みがあると、バイクに乗ってすぐどこかへ出かける。 俺も誘われはするが、俺は青空のもと太陽の光を長時間浴びると 干からびて死んでしまう(気がする)ので、大抵応じない。 この前なんとなくヤツに電話をしたら和歌山県まで行っていた。 「東京から?信じらんねえ」と言うとヤツは 「3徹でゲームする方が信じられない」と言ってきた。 俺たちの趣味趣向は全くもって合わないが、まあ気が合うので そんなかんじで仲良くやっている。 しかし、ひとつ気の合わなそうな...
  • 22-269
    甘党な男前受け  ジャン=ポール・エヴァンにヴィタメール、モロゾフ、極めつけは一番上に乗っかっているゴディバ。  一抱えもある紙の手提げ袋の中には、色とりどりの、一目で本命と分かるようなチョコレートが溢れていた。  小鳥遊は甘いものはにおいをかいだだけで気分が悪くなる、生粋の辛党である。  その小鳥遊がなぜチョコレートのメーカーなどに詳しいのかと言えば  小鳥遊の後ろで上機嫌でローテーブルの上に料理を並べている男、藤崎のために必死で勉強した成果であった。  ――なんでこんな物がここにあるのか。  紙袋の前で、途方に暮れる。先程まで浮かれまくっていたのが嘘のように、小鳥遊の身の内に嫉妬や不安感がもやもやとわき出てきていた。  草食系のステレオタイプを体現しているような外見の小鳥遊と違って、藤崎はモデル張りの長身に少々強面ではあるが精悍な顔つきで、かなりモテる。  そし...
  • 6-269-1
    グラサン×眼鏡 東京の川は汚いけれど、大きな橋の上から見れば大して気にならない。橋の真ん中で、欄干に寄り掛かってホットドッグを食べていた。そうしたら、黒いスーツにサングラスの長身の男に突然肩をつかまれた。鬼気迫る様子で僕の顔を覗き込んだあと、男は声を震わせてこう言った。 「…口の周りに、血が付いていますよ」 僕は…唖然とした。男の容姿は日本人と言われても通用するものだったが、言葉は明らかに外国人のアクセントだった。ごくん、と唾を飲み込んで、こう答えた。 「これは、血ではなくて…ケチャップです。このホットドッグの。でも、心配していただいたようで、ありがとうございます。」 僕は英語には自信があったので、できる限り正確な発音で、ゆっくりそう言った。 すると男は僕の腕を乱暴に引っぱって止めてあった車に押し込むと、僕が何かを言う間もなくすごい勢いで発進した。 「あの…!止め...
  • 10-269-1
    受けよりよがる攻め 無神経な奴だ、勝手な奴だ、ほんと下らない、どうしようもない男だ。 入れるのが駄目だったら、せめて素股でときたもんだ。 せめてって何だ。最初は手淫だけって言ってたじゃないか。 「あ、はあ、ああっ」耳障りな音が絶えず降り注ぐ。 シーツを噛み締め、内股を擦りあげられる、なんとも言い難い感覚に耐える俺とは対象的に、 奴は盛大に声をあげて、やりたい放題だ。 俺の眼球は渇き、唾液はシーツに奪われて、からからだというのに。 奴がはああと息を吐いて腰を引くので、あ、終わり?と思えば、 体を仰向けに返された。 「おい……」 だが文句をつけようとした俺の喉は詰まる。 視覚は暴力だ。 目を濡らし、頬ばかりか全身を赤く染めて、腿を震わせる男の姿に、思わず言葉を呑み込んでしまった。 ひどく甘ったるい調子で名を呼ばれる。 お前は何で、俺の脚でそこまで気持ち...
  • 20-269-1
    僕(受け)には君(攻め)が眩しすぎる 光には、人間の可視できる種類として二つ挙げることができる。 太陽光のように全ての波長(色)の要素を均質的かつ強く反射し、白に見える光を白色光。 レーザー光のように一つの波長(色)のみからなる光を単色光。 周りの人間は彼のことを太陽のような人、と喩える事をよく好む。 温厚篤実かつ怜悧、そこに美形とくれば正に八面玲瓏、全てを照らし出す光だ。 しかしそれは私によって創りだされた幻影でしか無い。 私が、どれだけ彼の為に尽くしたか、周りの人間は知る由もないだろう。 いや知ってはならない。これは私と彼との秘め事でなければならない。 彼は豊かすぎるあまり世界に対して唖でつんぼの振りをしていた。 そして穏やかに気力は衰え、持った才能を使う事無くそろそろこの世界から去ろうとしていた。 だが私は、彼の生来の高尚さに酷く感動したので...
  • 21-269-1
    俺様とおぼっちゃま 「あーぼっちゃん、待ちくたびれましたよ」 校門の前に黒のリムジンが止まっている。父親の運転手が帽子を扇ぎながら立っていた。 「何で君がいるの?」 「お父様が久しぶりに一緒に食事したいと。乗ってください」 僕の今日の予定は、この後着替えて友達とカラオケに行くつもりだ。 「断ってください」 意味分かんないし、と言う前に彼は僕をはいはいと座席に押し込める。 恥ずかしい。これじゃまるで僕が愚図る子供みたいに見えてしまう。 「せめて校門の前に止めるのやめてくれないかな。皆が見てるよ、みっともない」 「何が? むしろ自慢でしょう。イケメン運転手付きベンツのリムジンに乗れる高校生はそういない」 車は有無を言わさず走り出す。 帰宅中の奴らが狭い路地を滑らかに進むベンツを、目を丸くして見ている。 「あーあつまんねー!」 わざとらしく呻いてみた。少しは申し...
  • 2-269
    米国×日本 (この無神経野郎…。) 日本は思う。 大きくて、強くて、陽気で、どこまでも明快。 いっそ米になりたいとまで思うほど、ひたすらに憧れた時期があった。 同時に、何もかもを自分の思い通りにしようとするその無神経さを憎んでもいた。 相反する感情は時に耐えがたいほどの葛藤をもらたす。 「全てお前の為なんだ。お前の身は守ってやってるだろう?もっと俺に寄り掛かればいい。」 別れ話の腰を折って、米は慣れた仕草で肩を抱き寄せた。 小柄な日本はすっぽりと包み込まれる形になる。 日本は微かに眉を寄せたが、物憂げに微笑んで、続きを飲み込んだ。 日本が押しに弱いことは初めての時から百も承知だった。 米に半ば強引に体を開かされて以来、ひきずられるようにして続いている関係。 理不尽な要求を突きつける米に日本は時折こうして別れ話を切り出そう...
  • 22-469-1
    執事と僕 「書類は揃えましたし、当座はあれで大丈夫でしょう。  …さて、御主人様は…軽い脳震盪、ですかね。  気絶というより、もう眠っておられるようだ。  だいぶお酒を召し上がられているようだし、最近お忙しくてお疲れだった影響もありそうですね。  ベッドに運んでおきましょうか」 ファサ 「一応、朝起きたら医者を呼ぶようには指示しておきましたが、  変ないびきもかいていないようですし、とりあえず無事そうですね。  …良かった。」フウ 「さて、待ち合わせまであと1分少々ありますね…ふむ。」 「ご主人様、起きて下さい。」 「…うーん、もうちょっとー…」 「朝ですよ。起きて下さい。」 「…あと少し…だけ…」 「起きなさい!ぼっちゃま!」 「ひあ!爺!?ごめんなさい!…え?」 「おはようございます、御主人様。  …まったく、だからあれほど御就寝前のお酒...
  • 22-369-1
    yahho知恵袋 回答受付中の質問 僕は若い頃にモデルだった母に似て、いわゆるイケメンだそうです。 女顔なので自分ではコンプレックスがありますが、今は中性的な男がいいらしく、社内では多くの女性社員にアプローチをかけられます。 正直言って、僕は女性が好きではありません。特に恋愛に対しギラギラした人が嫌いです。 仕事に集中したいのに、暇な女子社員にやたら声をかけられて困ります。 こんな自分ですが、最近とても気になる人が出来ました。 総務部で地味に仕事をしている人です。 営業部にいた方ですが、大きな失敗の責任をとって飛ばされたようです。 でも僕は斬新な発想力が認められなかっただけだと思っています。 それなのに女性社員からはひどい扱いを受けていて、見ていてとても辛くなります。 この間は年下の女子社員から大声で怒鳴られていました。 それでもその人は黙って聞いています。そ...
  • 22-869-1
    滅んだ民 どんよりと曇った空の下、彼は黙って花を置いた。 栄華を誇った都市の、その面影が静かに風に吹かれて消えていく。 本当に何も残っていない。それを再確認して、彼の頬を涙が伝った。 故郷を捨てた。友を捨てた。愛した恋人すら捨てた。 そんな自分に涙する資格などないのだ思いながらも、落ちる雫を止めることもできなかった。 どれほど時間が経っただろうか。 彼は花に背を向け、歩いてきた道を戻り出した。 『もう帰るのかい?』 耳に響く優しい声。 たまらず振り返ると、そこには捨てたはずの恋人の姿があった。 最後に見た時と同じ、皮肉げな笑みを浮かべていた。 「…俺を、恨んでるだろう?」 やっとのことで絞り出した声は震えている。 『君はいつもそうだ。僕の言葉なんて聞かないんだから』 「そうだ、俺はいつもそうだった。だから、逃げ出したんだ」 すると恋人は、な...
  • 22-669-1
    国際会議 金髪碧眼アメリカ人×黒髪黒目日本人は良く見かける。 留学して右も左もわからない身長160cm未満の日本人を、ルームメートになったアメリカ人が美味しく頂く…有り得る。 日本人×アメリカ人の場合はどうだろう? アメリカ人=ガタイが良いという日本人の発想から、なかなか王道となり難い。 ならば走るべきはショタか。 近所に住んでいる天使のような少年をパクリ。…いける。 生まれも育ちも日本、英語はからっきし。外国人相手に戸惑うアメリカ人と、知っててからかう日本留学中のイギリス人。 イギリス人×アメリカ人も素敵だろ? アラブ人が攻めなのは何故か。金髪褐色肌はなかなかいないが、黒髪褐色肌の受けがいてもいいじゃないか。 海外出張でアラブに来た東洋人に一目惚れされる石油王受け萌え! チャイニーズマフィア×ロシアンマフィア禿萌エス。 ジャパニーズ“...
  • 22-069-1
    女装が似合う攻め×女装が似合わない受け 「お帰りなさいませ、お嬢様」 薄く整った唇から、甘く蕩けるような声が流れる。 フリフリのスカートを摘んで、軽くお辞儀をすれば、女子の黄色い声が教室に広がった。 「玲様可愛すぎるー」 「可愛いっていうより美人系!」 きゃあきゃあと騒ぐその女子達に微笑みかけて席へと案内する。 「凄えなあ…」 そんな玲也を見ながら、ぼんやりと呟いた。 「おい健太、ぼーっとしてないでこっち手伝えよ!お前どうせ暇だろ」 「うるせえ」 頼まれた力仕事をするには動き辛いが、そうも言ってられないと段ボールを持ち上げた。 文化祭の出し物でメイド喫茶しようなんて提案があったときは、こんな事になるなんて思ってなかった。 クラスの可愛い女子のメイド服やらコスプレやらが見たいからと、クラスの男は皆賛成してた。 俺も大賛成だった。 でも、お菓子やら料...
  • 12-269
    あなたが最近目覚めた萌え 語りでもSSでも 満月の夜。二人の男が、とある縁側に並んで座っていた。 黒髪の男が葉巻をくゆらせ始めた。 彼は火を隣の男に渡そうとしたが、隣に座っている金髪の男は、柔らかい手つき でそれを退けた。 「俺ぁいいですぜ、俺にゃあこれがありますから」 そう言って笑う金髪の手には飴玉が握られていた。 「前から少し気になっていたけれど、お前はひょっとすると、酒とか葉巻が苦手 なのかい」 黒髪が金髪の顔を覗き込んだ。 「苦手ってんのとは違います」 金髪は飴玉を口に放り込むと、黒髪の顔を見て寂しそうに笑った。 「味がしねぇんでさ。貴方方の仰る、辛い、酸い、苦い、後は何だったか忘れ ましたが、とにかくそういうのが俺にゃあ分かんねぇんです。まぁ分かる方にお 話ししても、合点はいかないでしょうね」 黒髪は目を丸くし、数秒金髪を見つめた後、なるほど...
  • 21-269-2
    俺様とおぼっちゃま 深窓の、ときたら、普通その後に続くのは「麗しき御令嬢」であるべきだと 誰でも思うだろう。 幼い頃の俺ももちろんその例にもれず、ある夏俺は町外れの大きな屋敷へと 忍び込んだ。誰もが一度はやってみたくなる冒険ごっこだ。 獰猛な魔犬…という設定の、その屋敷で飼われていた愛らしいスピッツをおやつで 従えて、こっそり潜り込んだ、別荘地でも一番上等な家の、一番上等な窓の下。 そこにいるはずのお姫様は、あろうことか、生意気でこまっしゃくれた、 同じ年くらいの餓鬼んちょだった。 あんまり癪に障ったから、つまらなさそうに本を読むそいつを無理やり外に 連れ出して、それから毎日のように、日が暮れるまで野山を引きずりまわしてやった。 そうして遊んだ懐かしい夏休み。 今じゃどこでどうしているんだか、もう会うこともないだろうと思っていた。 そして立派な一...
  • 22-289-1
    博奕打ちの恋 「負けたらどうなるか、判ってんだろうな」 「ああ」  目の前で凄む男に、オレは軽く頷く。  適当に遊んで来たつもりだが、負け無しのオレが気にいらないらしくついにルーレットでサシの勝負。  イカサマ防止で玉を入れてからオレが賭けて、その逆を奴が賭けるいたってシンプルな方法だ。  ルーレットが回り玉が入ると、いつものようにフッと脳裏に数字が浮かぶ。  今回は19。  オレは迷わず黒にチップを置き、奴は赤に置いて後は勝負を待つだけ。  スピードの落ちてきた玉はコツンコツンと音をたて、赤の19に収まった。  瞬間、奴の顔が笑顔になる。  そりゃ嬉しいだろう、初めてオレに勝てたんだからな。  奴は笑顔のままオレを見て、 「約束どおり、今までの分体で返してもらうぜ」 「好きにしろ」  奴の言う取り立てがタコ部屋送りか、臓器を抜くのか、それとも言葉通りか...
  • 22-299-1
    さあ、踏め! 「みんなでメシ食った時、どっちかつーとSだって言ってたじゃん」 「あー、思い出した。言ったな。確かに言った。つーかお前も、俺ドMでいいやーとか  適当ぶっこいてただろ」 「……」 「……」 「ともかく、これまで色々しておきながら、お前がサドだってことに気付かなかったのを悔やみまして」 「ちょっと外したすきに、人の部屋で全裸になったと」 「うん」 「ベッドの脚に手錠つないで待ってたと。……わざわざ買ったのかこれ」 「そう。慌てたら鍵すっ飛ばしちゃって、自力じゃ外せなくなった」 「……」 「で、そこの箱を開けて下さい。……ハイヒールです」 「見りゃわかるよ! これも買ったのか!?」 「うちの下駄箱で一番かかと高くて細かったやつ。多分上の姉ちゃんの」 「……」 「それを履いて、俺を思い切り踏んでいいんだよ」 「色々可哀そうだろ姉ちゃんが! サ...
  • 22-249-1
    権力者の初恋 仕事も一段落した昼時。 快晴を喜ぶかのように小鳥達が歌いながら窓に映る空を横切るのを見送ってから、穏やかな気分でコーヒーをすする。 「大統領、私の話、聞いてましたか?」 「…ああ、すまないね。もう一度言ってくれるかい?」 私の言葉に秘書はため息をついた。 先程から口うるさくスケジュールを述べ続けていた彼女の顔が、仕事モードから急に“子供を見守る親”のようになった。 「…ええ何回でも言いますとも、しかし今日のあなたは私の話を聞いてくれるとは思えない」 ごもっともな答えだ。 私はしばらく考えて、彼女を見上げる。 「…信じられるかい?今夜の事を思うと心が浮き立っていて食事もままならないんだ。この私がだよ」 お昼に出された大好物のラム肉でさえもなかなか喉を通らなかったのだ。 俗にいう、胸がいっぱいというところだろうか。真意はわからない。 何せ初め...
  • 9-269
    四面楚歌 いつも歩きなれていたはずの山道が、今日は違う道のように感じられる。 後ろで息を切らせている彼の手をひき、俺は必死で北へと向かっていた。 「この山を越えれば、逃げ延びることができる。走れ」 振り返ると、汗でびっしょり濡れた彼の青い瞳が、俺を見つめていた。 俺は、言葉の裏にある俺の感情が読まれていないか、彼の目を確認する。 彼の目はすぐに俺からはずれた。 しかし彼は俺の手を離そうとはしなかった。 無理もない。今、彼が頼れるのは俺だけだ。 俺は、生まれた時から親に山に捨てられ、土や木の皮を食べて生きてきた。 村の人たちには石を投げられ、「泥棒」と蔑まれたまま、いつか飢えて死ぬと思っていた。 何もかもを恨んでいた。彼が来るまでは。 「せんきょうし」というのが何をするのかは分からない。 ただ彼は、「俺も外国の神様の子だ」とか何とか言い、毎日美味しいも...
  • 19-269
    甘やかしてくれる人 「あああ…!また喧嘩してきたのかい」 「…………俺はケガしてねえっすよ」 「そんなこと言って、手が酷いことになってるじゃないか!ジャケットもこんなに血まみれで…」 「安堂サン、サツに追われてんだ。中、入れてくんないっすか」 「……治療は受けてくれるんだよね?」 「……どうぞ」 許可するとこの人は、どう見ても年相応に肥えた丸顔のメガネのおっさんの癖に、教会で見たマリア様のような顔を浮かべた。 この人は俺が何をしても、俺の身を案じるだけでそれを咎めることが無い。 教会の神父やシスターどもとはえらい違いだ。 「大助ももう二十歳になるんだから、あまり無茶なことはしないでおくれ」 「夜は昂ってしょうがねえんだよ」 「……教会の人達と、折り合い悪いのかい?」 「そりゃもう餓鬼でもねーのにいつまでも居座ってっからな。タダ飯食える...
  • 9-169-1
    年賀状を書きながら 「明けましておめでとう。今年も・・・よろしく・・・か。」 なんとも短く愛想の無い文面を見つめるが、他の言葉が浮かばない。 何故ならこの手塚智弥と俺は、今まで3回程度しか話した事がない。 同じバンドが好きで、同じクラス、席が斜め前って事くらいしか近しい記憶はない。 話しかけるタイミングだって逃してばっか・・・8ヶ月で話した記憶が3回て・・・ 「年賀状出しても、俺のこと知らないんじゃねぇか?」 最悪の予感がよぎる・・・っていうかあいつ、俺の名前知ってるのか? 俺なんて名前どころか顔すら思い出せない程度の存在なんじゃないかとも思う。 「あああああーーーー冬休み前にもっとアピっとけば良かったああああ・・・」 あのバンド、年明けにアルバム出すんだよな。 2月には武道館でライブもあるし、行けたらいいよなー・・・って、話題...
  • 2-469-1
    病院と注射 真っ白なアイツ。 ココにはじめてきた時、はにかみながら挨拶してきた。 綺麗なアイツ。 「僕は嫌われ者なんだ。」 アイツは笑いながら、そういった。 「混んでるし、痛いことするし、」 いや、そのイメージの半分くらいは俺たちのせいだろうが。 「治ってく患者さんたちを見るのは嬉しいんだけど、やっぱりなくなっちゃう人もいるしね。」 そう、寂しそうに笑った。 アイツとは包装のビニール越しにいろんなことを話した。 でも俺はやっぱりアイツの笑顔が好きみたいだ。 どんどんと俺たちの仲間が減っていく。 この前新入りの奴も来た。 仕方が無い。 オレたちは一回きりの命だ。 アイツと同じ空気を感じられるのは、針を携えて赴く時だけ。 そしてそのまま捨てられる運命だ。 ある日、とうとう俺の番が来た。 ...
  • 5-269
    マフラー 「マフラー、ほどけてますよ」 俺が指摘すると、先輩はマフラーに目をやりもせずに「うん」と頷いた。 「先輩、マフラー」 「わかってるよ」 先輩は煩そうに答えながら、前髪を引っ張るような仕草をする。 10分前はその手にはめていた手袋も今はしていない。 「わかってる」 「じゃあ、なおさないと…」 「無茶、言うなよ」 「でも」 だって、見るなと言ったのは先輩じゃないか。このままじゃどうしたって見えてしまう。 先輩は、引っ張った前髪をぐしゃりと握り締めた。 「なら、お前がなおせ」 「…!…はい」 俺はほとんど床につきそうなくらいに先輩の右肩から垂れ下がったマフラーの端を口にくわえた。 両手はふさがっていたから。 ゆっくりと立ちあがり、右肩から左の肩へ、先輩を抱きしめるようにマフラーを回してやる。 「これで、いい?先輩…」 「…ん」 「…続けて...
  • 4-269
    帽子を脱いだところを見たことがない 帽子を脱いだところを見たことがない。さて。 帽子が必要な職業というとおまわりさんとかですかね。 こう、自分の住んでる街の小さな派出所に最近来た若いおまわりさん。 仕事に行く時、帰ってくる時。買物に行く時、遊びに行く時。 駅前にあるその派出所をなんとなくいつも見てしまうわけですよ。 いつもそのおまわりさんはそこにいるのに、帽子を脱がない。 なんで建物の中なのにかぶってるんだろう、とか どんな髪型なんだろう、とか 脱いだら印象変わるのかな、とか。 とにかくその帽子が気になってる自分がいるわけです。 で、そのうち。 気になってるのは帽子じゃなくて中身じゃなかろうかと思うわけです。 そして自分の自転車が盗難されたりして、おまわりさんと初の会話。 さてどうなる。彼は帽子を脱ぐのか脱がないのか! 眠る男
  • 7-269
    六月の結婚式 何度も何度も練習した。 「女の子の憧れはやっぱりジューンブライドなのよ」と笑っていた彼女。 相手を見たい、と何度言っても「6月まで秘密」と笑った。 何度も何度も練習した。 大好きだったけど愛せなくて、傷つけてしまった彼女。それなのに赦してくれたひと。 どうか、誰よりも幸せになれるように。 しつこく式場の空きを調べて、6月に式をするのだと聞いてから、 お祝いの言葉を考え、練習した。僕は彼女にそんなことしかできないから。 白く細いドレスを纏って、微笑む彼女は幸せそうで、嬉しかった。 その横に並ぶのが、彼だと知るまでは。 誰も悪くない。彼女も彼も、そして僕も、愛する相手の想う人を知らなかっただけだ。 「来てくれてありがとう!」と笑う、幸せな彼と彼女に、 何度も練習したお祝いを言いに、僕は歩いた。 緊縛プレイ中に蚊が登...
  • 3-269
    自分を最高に可愛いと思ってる男 ねえ、僕可愛いでしょ? みんな言うよ。僕に「君は可愛い」って。自分だって可愛いって思ってるよ。 色々な人に可愛がられるし、ちょっと甘えたら優しくしてもらえる。 だから…… …本当のこと言うよ。 僕、いろいろな人に「可愛い」って言われるのはそんなに嬉しくない。 だけど、ただ一人、大好きで大切な人に「可愛い」って言われるのは凄く嬉しい。 だから努力してるんだよ。その人に可愛いって、言って貰いたいの。可愛がってほしいの。 大好きな人ただ一人に「可愛い」って言ってもらえる。可愛がってもらえる。 それだけで、僕は嬉しいの。 だからね、可愛いって、言って。 このシュートを決めればチームが優勝するFW×決められたら二部落ちケテーイなGK、二人は幼馴染
  • 1-269
    夜明け前のカポー 「何見てんだ」 言われて初めて、自分がさっきから窓の外を見つめ続けていることに気がつく。 床に座っている相手の方に目線をやる。 「別に…何も」 俺が電話口で眠れない、と言うと、奴はすぐにうちにやってきた。 こんな明け方に、明日も学校があるのにもかかわらず。 奴ととは中学からの仲で、高校も同じだ。 不愛想な奴だが、何故か俺には優しい。だから今もこうして、インフルエンザで学校を休み続けている俺の側に居てくれるのだろう。 「お前、予防接種受けたよな?」 「二回もな」 窓を開けながら言う 「早く治せよ」 「わかってるよ。わかってるけど、そうすぐに治るもんじゃないし」 また無意識に目線が窓の外にいってしまう。 すると、背後で奴がいきおいよく立ち上がるのを感じた。振り向こうとしたとき 「寂しいん...
  • 6-269
    グラサン×眼鏡 「だから、似合わないって言ってるじゃないですか」 直後、スッと視界が明るくなった。向かい合う眼鏡がキラキラと光った。 「眩しいって言ってるだろ」 「嘘。みんなと居る時は、かけない癖に」 キラキラと眼鏡が光る。 やめてくれ。そのサングラスを返してくれ。 眩しいんだよ。お前が。 グラサン×眼鏡
  • 8-269
    20センチ差 身長159センチな俺だけど、最近このチビっぷりもそれほど悪くないと思っている。 「だけど179センチは羨ましすぎ」 新学期始めの健康診断。コイツは俺の身長+20cmの長身。 足は長いし顔はカッコいいし、ってか付き合い始めて1ヶ月半だし本当に惚れ惚れする。 「お前、159……そこらの中学生より低いよな……カルシウム大丈夫か?」 「毎日牛乳飲んでますんでご心配なく」 うーん、改めて言われると結構むかつく。 小学生の頃は俺のほうが高かったのに、中1になってから劇的に伸びやがって。 「…まぁ、小さい方がかわいいんだけどな」 「ん? 何か言ったか」 「小さい方がかわいいって言った」 「嫌味か」 「そんなつもりじゃないけど」 そう言ってお前はあたりを見回して誰もいないことを確認すると、 突然俺を抱き締めた。 「はぁ!?」...
  • 19-169-1
    あなたの子供が欲しいのに 「貴仁義兄さん。いきなりですが、今日は折り入って義兄さんにご相談が」 「まあ茶飲めや。しかしお前が俺に相談なんて珍しいなあ」 「あなたのお子さんを俺に下さい」 無情にも彼の率直な願いは、彼の義理の兄によるアッパーフックではね除けられた。 「義雄よ、俺は残念だよ。非常に残念だ」 「クッ……義兄さん、危うく脳震盪起こしかけるほど見事な攻撃でした……」 「誉めんなよ。照れんだろ?」 「誉めて無いですよ!」 「で、なんの話だったっけか」 「だからあなたの子供が欲しいからおくれって話……や、ちょっ構えを取らないで構え」 「ああ、スマンいつもの癖でイラッと来るとつい。……えっと何?お前ってホモだったの?」 「ええ。姉は知ってますよ。ちなみに俺の初恋兼恋人は義兄さんの同僚の義純さんです」 「マジでっ!?あ、あーでも確かにアイツボディ...
  • 26-569-1
    今日から両思い 「――今日から、両思いだね」 フ、と唇の端で気障な笑いをして、奴は手の中のグラスを揺らした。氷が涼し気な音を立てる。 窓の外の三日月と同じ形に細められた流し目から、俺は顔を背けた。 「言葉は正確に使え。お前の今の台詞は明らかに間違っている」 「え? ……え? うそ? 違うの!?」 裏返った声と、グラスが乱暴にテーブルに触れる音が絶妙な不調和を生む。騒々しい。 「だって! 俺さっきお前が好きだって言って、お前だって頷いてくれたのに!」 「声の大きさを考えろ。個室とは言えこの店は貸切ではない」 「あ、はい」  大げさに肩を落としてしょぼくれたような顔をしてみせる、その様に少しだけ苛立った。 「……やっと言えたのに」 小さな子供がいじけるように口を尖らせて呟く。声は少し震えているようだった。 「ずっとずっと好きで、やっと両思いだと思ったのに……」...
  • 26-869-1
    狸×狐 「あっはは、また騙されてやがる。無様なやつめ。気分が良いなあ。うすのろをからかうのは気分が良い!」 俺の腹の上に跨がって、目尻をきゅ、と細め、口角を吊り上げケラケラ笑う奴の顔を見上げ、溜め息をつく。 襦袢の裾から飛び出た奴の尻尾がぱたぱたと動いて俺の太ももの辺りを着物越しに掠めるのがこそばゆい。 「いい加減どいてくれないか」 「嫌だね」 「なあ、ならせめて、俺の腕を膝で抑えるのはやめてくれよ、痺れてきた」 「ふうん」 そう言うやいなや、ぴしゃりと俺の手の甲を叩く。 指先が痺れる感覚に眉をしかめると、奴は一層ニンマリと笑った。 「な、僕は綺麗だったかい?まったく綺麗な女だったろ?お前はいつも、あんな風に女を口説くの?お前なんかに着いてくる女なんて、いるの?答えてみてよ、さあさあ」 言い淀んでいると、またぴしゃぴしゃと痺れた手を叩いてくるので、仕方なく口を開...
  • 22-109-1
    甘えるのが苦手 アイツは人に甘えるのが苦手のようだ。 家庭の事情が複雑で、児童相談所に世話になったこともある。 何故そんなことを知っているかと言えば、俺が隣の家の住人だからだ。 隣の夫婦げんかは内容まで知っているし、物が倒れる音がしたと思うと 翌日あざの出来たアイツに会うという事は日常茶飯事だった。 通報があって一時保護が決まった時には、さすがのアイツも嫌そうだったので、 俺の家に来てもいいぞといったが無視された。 まあ、保護決定してるんだから来られる訳もなかったけど。 借金の督促もたくさんあった。郵便物がポストから溢れていた。 「親に死んで欲しい」と物騒な事をアイツが言っていたら、本当に事故で亡くなった。 自殺じゃないかと近所で噂になったが、自殺するような夫婦ではないという両親の火消しで なんとか沈静化した。自殺するなら夜逃げだと俺も思う。そんなにしおらし...
  • 22-149-1
    硬貨で六角関係 僕の名前は若木一(わかぎ・いち)といいます。このたび日本硬貨に新入社員としてやって参りました いきなりこんなことを言うのもどうかと思いますが言います。好きな先輩が居ます。一年先輩の稲穂計五(いなほ・けいご)先輩です 実家は林業だそうです。なんか金色にピカピカしているようなオーラの見える素敵さです 僕にはライバルが居ます。常盤十郎(ときわ・じゅうろう)先輩です。京都出身。実家は平等院鳳凰堂の近くだそうです もの凄いチャラ男です。日焼けサロン通いで冬でも銅線のような肌の色です。もちろん髪も真っ茶っ茶です どうやらこの常盤のクソが稲穂先輩に手を出しているのです。稲穂先輩がアンアン言わされているみたいなんです ひどいことに常盤のボケは二股をかけています。その二股のもう一人は五十嵐菊(いがらし・きく)先輩です 五十嵐先輩はとても気が弱い人のようです。本命さんが居...
  • 2-249-1
    短気な後輩×卑屈な先輩 創作活動同好会兼文学部という名称で通っているうちのサークルは、 30人もの幽霊部員に支えられ実質10人弱で活動している。 とは言え創作活動は個人でやるものなので、10人集まろうが 「ネタに詰まった」だの「神が降りてこない」だの言い訳をつけて 結局は菓子の袋を床に散らばらせ談笑で終わることが多い。 仲が良いのは宜しいことだろうが、 この馴れ合いの空気にいまいち馴染んでいない人物が2人いる。 俺と、1つ上の先輩だ。 先輩は出版業界を広く見渡せば数多いる学生作家の内一人で、 部室に来ても部屋の隅でいつも頭を抱えている。 俺と違い人当たりはいいのだがパソコンに向かう彼に話しかける部員はいない。 凡そそんなオーラを発していないからだろう。 一年ながらこのいい加減なサークルの会計を務めさせられている俺はでも たまに彼に声をかける。すると飛び出...
  • 23-269
    冬の海  月のない夜のことだった。 砂浜と海と空の間にある境界は、星達が届かないところへ行ってしまっていた。 空は穏やかなのに、俺の部屋のすぐ下に広がる海は何故か荒れていた。 爺ちゃんはそんな波の様子を見ると、読みかけだった俺の漫画を仕舞い、黒電話の前から離れなくなった。 しばらくして、夕飯に呼んだ春樹が来れなくなったことを告げられた。 がなる黒い飛沫は、どろどろとして生臭そうだった。  いよいよ轟々と打ち寄せる波に集中力をさらわれた俺は、宿題の手を休め、ついでにココアを取りに行こうと席を立った。 その腰を浮かせた一瞬、結露で濡れた窓の向こうに、荒波の中を沖に向かって進む人の姿が見えた。 「……春樹?」  嫌な確信がよぎって、俺は混乱した。 闇の中に春樹だけが見えたことは、全く不思議に思わなかった。  どうしてあんな危ない海に!春樹が死んじゃう!! ...
  • 18-269
    帝王学 「先日内乱があったそうですね」 「小さいやつだがな。兵をやったらすぐに収まった」 「首謀者の一族郎党、女子供まですべて殺したと聞きました」 「反乱を起こすというのなら、そのくらいの覚悟はもってやっているだろうさ」 「恐怖で人は縛れませんよ」 「恐怖がなければ、やつらは思い上がる」  彼の手が酒器へ伸びた。彼がめったに飲まない酒を飲む時はたいがい機嫌が悪かった。 「北へ兵を進めようとしているとも聞きました」 「そうだな」 「何故そんなに急ぐのです。あなたが他国に出している兵は駒ではない。 私たちと同じ生を受けている者たちなのですよ」 「俺は玉座の重みは知っている。出来る限り少ない犠牲で済むようにしている。 それはお前には見えないだけだ」 「今以上に国を広げてどうなさるのですか」 「国が豊かになって何が悪い。国を治める者は民の事を考えろ、 国が豊...
  • 27-269
    異端者×実験体 何日かぶりに扉の開く音がした。続けて一人分の足音が近付いてくる。 僕は床から起き上がり、足音が僕の方へと近付いてくるのを聞いていた。 ああ、遂にこの日が来たのだなと、ぼんやり思う。 不思議と怖くはなかった。 頭の中にある教典の一説を諳んじる。 ――生きることは罪であり枷である ――罪とは苦痛であり快楽であり、枷とは戒めであり抱擁である ――汝、罪に溺れるなかれ、枷に囚われるなかれ ――許しあい、助け合い、共に祈りを捧げよ ――祈る者の前に神は現れ、神により全ての罪は浄化される ――汝、罪を濯がれた者、終末を超え、楽園へ導かれる 足音が僕の目の前で止まる。 頭を上げて、僕は眼前に立つ人に言った。意識して、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「僕は、貴方がたを許します」 それは僕にとって、最初で最後の『託宣』だった...
  • 24-269
    敬語攻め×方言受け 「なぁなぁ。なんであかんのん?」 「しつこいですよ。だめったらだめです。必要ありません」 「なんでぇや。このまま東京と大阪やったらずっと週末しか会われへんやん。 だから俺がこっちに越してくる言うてんのに、なんで必要ないん?何があかんのん?」 「生まれも育ちも大阪で、他所では住めないって言ってたのは誰ですか?」 「そんなん、あんたとこんな仲になる前やん。東京の人怖いし。大阪馬鹿にしてる気ぃするし。 言葉使いもなんや冷たいし、気取ってるし」 「冷たくて気取った言い方で悪かったですね。 馬鹿にされるかもって一人で買い物も出来ないくせに生活出来る訳無いでしょう?」 「そんなん、こっちに住むようになったら、ちゃんとするやん。 なんでそんな意地悪言うん?もっと会いたくないん?俺の事飽きたん? だからホテルに泊らせたん?なんで服着んのん?もう帰ってまうの...
  • 15-269
    初恋の女の子(仮)は現在身長180cmの男前 「本日のゲストは雑誌のボーイズコンテストで入賞され、 現在テレビやドラマで大活躍中の鈴木琢磨さんです!」  拍手の指示がスタッフから出て、俺は幼なじみの登場に拍手する。 馬鹿馬鹿しいと思いつつも、憧れていたテレビ業界の雰囲気はやっぱりわくわくする。 「背がお高いですね。身長おいくつなんですか?」 「180㎝に少し足りないくらいだと思います」 「本当に素敵。人気があるのもわかりますね」 「いえ、そんな」 「質問のFAXがこんなに来ているんですよー。いいですか?」 「どうぞ」 「デビューのきっかけは」 「幼なじみが応募していて、同じ業界に行きたくて」  その幼なじみは、今日は観客になってますー。よくある話ですー。 「初恋はいつ頃ですか?」 「3才くらいじゃないかな。大人になったら...
  • 17-269
    鼻血 ボタッ 「あーーっ、立花さん!」 あっ、と私が思う前に、いつもの世話焼きな声が飛んできた。 下を向けば、白衣の腹辺りに赤い液体が落ちた跡。 「あー……」 「『あー……』じゃないスよ!何下向いたままになってんスか!鼻血ですよ、鼻血! 実験器具ン中とかに落ちたらどうするんスか!」 私は一応この研究所の先輩のはずなのだけれども、いつの間にかこの杉浦には頭が上がらなくなっている。 飲み干して一日経ったコーヒーカップでもコーヒーを継ぎ足して飲み続けるのが普通だった私の日常は、 杉浦が配属されてからすっかり変わってしまった。 何しろカップを洗うまでこの杉浦が「うわっ信じられない」と言いたいばかりの視線を投げかけてくる。 しぶしぶ洗っても「それじゃ水かけただけっスよ!」と私の手からカップを奪って指をゴシゴシ滑らせて洗う始末。 一事が万事、私...
  • 25-269
    トリック・アンド・トリート 「trick or treat!」 やたら小気味よい発音と共に現れた猫耳野郎を見て、俺はがくりと肩を落とす。 無言のまま部屋に入り、何か菓子がないかと探れば、学校で貰ったチョコを発見した。 包み紙をあけて、ほれ、と呟けば、タクは嬉しそうに口を開くので、そこに放り投げてやる。 「んっ! おいひい」 「何か高いヤツらしいから」 「! 俺が貰っていいの?」 「…口モグモグしながら言われても少し説得力に欠けるっていうか…」 苦笑しながら招き入れれば、にゃんにゃんっ、と自作のにゃんにゃん鼻歌を奏でつつ入室した。 そっか、ハロウィンか、などとのんきに思いつつタクのマグカップを取り出した。 「(…そうだ)」 ふと思いついた悪戯に、頬が緩む。 コーヒーを淹れて彼の前に置いてから、頭につけられたネコミミカチューシャを装着してみた。 タクは目を丸く...
  • 13-269
    花火の音が聞こえたら 「いいか、下を向くんだ」 皆が空に見惚れるその隙なら、 あんたの唇くらいは奪えそうだと思った。 この瞬間くらい、奪わせて欲しいんだよ。 ぶつけた唇が、微かな熱をちらつかせたまま 大袈裟な溜め息を地面に落とした。 台風
  • 14-269
    今は無き思い出の場所 「随分変わったな…」 この町に来るのは14…もう15年振りになるだろうか。 転校というものを数回経験した俺は小学校のうち2年間を過ごした土地なんてほとんど忘れてしまっていた。 しかしあれから15年、俺も父と同じく転勤の多い職に就き、再びこの町に住む事になった。 町というのは15年でこんなにも変わるものなのだろうか。 俺の記憶が正しければ今日から俺が住むマンションは昔小さな公園があった場所だ。 確か学校の帰り道にあって、毎日日が暮れるまで一緒に遊んだ奴がいた。 俺の家があった場所には知らない家族の知らない家があった。 引っ越しで無くしてしまったがあの頃の俺の部屋には奴が水族館の土産にとくれたマンボウの置物があった。 いつも奴と一緒に行っていた駄菓子屋はコンビニになっていた。 俺が好きだった駄菓子は電子レンジで温めると膨らんで柔ら...
  • 10-269
    受けよりよがる攻め 明らかに僕に気があるそぶりを見せるから、ちょっとからかってやるくらいの つもりだったんだ、最初は。 その日、バイト帰りに家来る?って誘ってみたら、万歳しださんばかりに 喜んだヤツは、幻のしっぽ(もちろんぶんぶん振られてる)が見えるほどに 食いついてきた。わかりやすすぎる。面白くて仕方ないから、しこたま 買い込んできた酒の勢いってことで、ちょっと股間に手をやってみた。 ほんとに、言葉通りの「ちょっと」だ。もちろん服の上からだし。 狼狽えるかな、止めてくださいよ先輩とか言うかな。引かれても別に構わない。 その時点で僕は、こいつに対してからかいくらいの感慨しか抱いてなかったのだ。 だけど、乗ってきたらおいしいかな。見た目は割と好みだし。そんな程度で。 あっ、と、切羽詰まった声が聞こえたのを、最初は聞き間違いか幻聴だと 思った。だってそんな。...
  • 20-269
    僕(受け)には君(攻め)が眩しすぎる 「卒業したら海外に行く。世界中を回って、世界中をこの目で見てみたい」 小さい頃からの夢だから、と、いつもの仏頂面で、でも少しだけ照れくさそうに君は言った。 それは、夢も希望もなく、ただ安定だけを求めて教師になった僕には、眩しすぎる夢だった。 「何考え事してんの?」 「え?」 「こっちに集中しろよ」 「んんっ・・・」 そう言って、高校生とは思えない器用さで僕の体を責めたてる。 僕はその快感を余すところなく受け止めて、あっけなくイッてしまった。 目の前が真っ白になるほどの絶頂に体を震わせているうちに、後孔に脈打つ雄を押し当てられる。 校舎の真北。薄暗く、肌寒い科学準備室。埃くさいセックス。 きっと、これが最後。今日で、君との関係は終わる。 君は今日から、自分の夢に向かって走り出すんだから。 無造作に脱ぎ捨てられたブレ...
  • 16-269
    花嫁の父 今日、娘が嫁いだ。 妻を早くに亡くし、親子二人だけで過してきた家はとうとう私だけの家となってしまった。 小学校の時は真っ暗な家にいたくないと泣きながら会社に来た。 中学校になると部活があると言いながらも、私より早く帰って出迎えてくれた。 高校に入ったときは夕食の支度までして私の帰りを待っていてくれた。 大学は家から通える場所、と主張し、いつまでここにいる気だと笑いながら話した。 長いようで、あっという間だった。 白いドレスを見に纏った娘は美しく、妻の若い頃を彷彿させた。 目を瞑れば幸せになるから、と笑いながら泣いた娘の姿が浮かんでくる。 夫となる男はきっと娘を支えてくれる。 私はここで彼女たちの家庭を見守るだけだ。 もうするべきことはない。 正直、全力疾走でここまで来たことがたたってか、疲れがどっと来た。 このまま、妻の...
  • 9-069-1
    毛布に包まる 「適当に座っててくれ。」 「おー……。」 と言いつつ奴は辺りを見回している。 珍しいものなんか何も無いぞ。 「布団発見!突撃ー!」 俺の布団に寝転ぶな、子供かお前は。 ゴロゴロと転がっているリュウジを無視してお茶を用意する。 茶葉を急須に入れていると何度も俺を呼ぶ声がする。 茶を入れるのに集中したいのに何事だ。 「五月蝿いな、白湯飲ますぞ。」 「これすっっっっごく気持ちいい!なにこれ!」 何って、 「毛布だろ。」 リュウジは何が楽しいのか毛布に包まって笑いながら脚をバタバタさせている。 そうかと思うと急に体を起こしてシャツを脱ぎ始めた。 「なっ、何やってんだよ……。」 「これの感触をもっと味わおうと思って。」 相変わらず突拍子も無いことを思いつく奴だ。 「風邪ひくからやめろ。」 そう言っても「えー。」とか「お前も一緒にどうよ。」...
  • 9-669-1
    色鉛筆 「おい、何とろとろしてんだよ。置いてくぞ」 「待ってよぉ。みんな慌てて走ってくから僕にぶつかっていくんだもん。転んじゃうんだもん」 「だぁーからおまえと遊びに行くのヤダったんだよ。トロいし鈍いし運動神経ないし」 「それ全部同じじゃん。そんなに怒らなくてもいいでしょ。」 「だいたいなぁ、おまえは八方美人なんだよ。言い寄ってくるやつみんなにイイ顔してよ、 ちったぁ自己主張ってもんしろ。あぁまったくイライラする」 「酷い。そんな顔真っ赤にして怒らないでよ。激情型なんだから」 「煩せぇ!顔が赤いのは生まれつきだ。悪いか。嫌なら一緒に遊ぼうなんて誘うな」 「だって、いつもみんなの中心で人気者の君に、なかなか声かけられなかったんだもん。 昨日、マリコちゃんが初めて隣同士にしてくれて…嬉しかったんだ。 せっかく…勇気出して、、誘ったのに、怒らなくても…」 「おまっ...
  • 6-169-1
    笑わない人 「なあ、俺そんっなにつまんないオトコ?」 「…は?」 自分で言うのもナンだけど、今言ったの俺の十八番のギャグ、伝家の宝刀よ?自信無くしちゃうなー。 おどけた口調で言うと、アイツはいつものしかめっ面を更に歪め「馬鹿」と一言で切り捨てた。 最初はただの興味。 校長のヅラが風に舞った時も体育教師のジャージのゴムが切れてズリ落ちたときも クスリともしなかったアイツは何をどうすれば笑うのかって。 顔面の筋肉おかしいんじゃないかと思って顔グリグリしたら殴られたこともあった。 ここ1年とちょっと、少なくとも学校にいる間は一緒に行動するようになって、 色々と知らなかった部分も見た。全く無表情ってわけじゃないんだよ、絶望的にわかり辛いだけで。 怒るし、睨むし、驚くし。悔し泣き寸前の顔も見た。 ―――でも、笑わないんだ。笑わないんだよ。 どんなに自...
  • 7-169-1
    どうして自分じゃなくてあの子なんだろう ずっと、欲しかったんだ。 俺は震える手でそっと彼の頬に触れた。 酒に潤んだ目には普段の鋭い光は宿っていない。 いつもは堅く引き結ばれた口元も、わずかだけど弛んでいる。 頬から瞼、額へと、触れるか触れないのかのタッチで辿っていく。 短く刈り込んだ髪が、触ると意外に柔らかいことを知った。 俺は手をとめて、じっと彼の顔を見た。 酔いに濁った目は俺を映しているのに、何も見ていない。 「……も……」 何か呟いたと思ったら、急に腕をとられて引き寄せられた。 びっくりして固まっている俺の腰を硬くてゴツゴツした指先が掴んで、 服の下に無遠慮な手のひらが潜りこんでくる。 「ちょ…ちょっと滝…!?」 本当に酔ってるのかと疑いたくなるような巧みさだった。 硬い指先に官能を引きずりだされて、あっという間に茹で上がる。 酔った男は、しきり...
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