*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「22-619-1」で検索した結果

検索 :
  • 22-619-1
    うたた寝 あぁ、腰が怠ぃ…。 よっこらしょ、と声を出した自分に苦笑しながら、縁側に腰を下ろす。 三十路の身体に一晩に3回はさすがにキツいか。 小春日和の日差しの中で中で、昨夜のことを振り返る。 「慎二さん、ね、もう一回だけ、いいでしょ?」 年下の恋人はとてもねだり上手だ。 可愛さにほだされてつい3回目もつき合ってしまった。 だって、しょうがねーよなあ。可愛いものは可愛いんだから。 「慎二さん、大好き!」 嬉しそうに抱きついてきた翔太の笑顔を思い出すと自然と頬が緩む。 今の俺、デレデレと締まりのない顔してんだろうな…。 そんなことを思いながら、日だまりの温もりに眠気を誘われて、 いつのまにかうとうとしはじめた。 バイトを終えて、弾む足取りで家へと急ぐ。 慎二さんは今日は仕事が休みで家にいるはずだ。 ただいまー!と元気よく玄関の扉を開ける。 「慎...
  • 2-619-1
    穏やかな優等生×やんちゃな熱血バカ キャンキャン吠える仕草は、仔犬に似ている。 「だーかーらー、この公式が分かんねぇと俺、留年するかもしれねーんだよ!」 「…お前は、野球のルールを分かっても、数学の公式は解けないんだもんなぁ…」 期末試験前夜、隣に住む俺の部屋に来て、真っ先に教科書を広げて言う様は、 受験生のようだ。明日受験する訳でもないのに、一年先だろ?…少しは落ち着けよ。 他の連中ならまかり通る冗談もこいつにとっては、何の役にも立たない。 少し気を抜けばいいと思って、言った俺の言葉は奴のカンに触ったらしい。 あ、また吠える。きた。ワンワンワン。仔犬のような叫び。 「…っ…俺が、留年してもいいってのかよ?きちんと一緒に高校卒業してっ、  お前と一緒の大学行こうと思ってっ!ど、どーせっ、俺みたいなスポーツ馬鹿は、  お前の...
  • 22-619
    うたた寝 最悪だ、と田中は唇だけをその発音どおりに動かし、なんとか声は出さずに押し留めた。 目の前にはソファで眠りこける男が一人。 女性的な顔立ちをしてはいたが、その人物が男であることは間違いなかった。 なにせ鈴木は田中の幼馴染だ。彼が田中と同じくXYの染色体を有することは、子どもの頃から知っている。 「おい」田中はうたた寝をする鈴木を小突いた。 田中の住むアパートを、夕食時を狙って鈴木が訪れることは少なくなかった。 今日も今日で、食べるものを食べたら後片付けもせずにこのとおりである。 メグミはこんな男のどこがいいのか、と田中は考えた。メグミとは田中の妹で、どういうわけか このだらしがない男に思いを寄せている。なんでも鈴木には好きな奴がいるとかで、 彼女は可哀想なことに、もう二度も振られていた。 尤も、メグミのことをとやかく言えないのは田中も同じだ。 自分の感...
  • 6-619-1
    伝わらない いやいやいやいや、ありえないから。 絶対ないね。まじでない。 伝わってるわけねーじゃん。 だってほら、今だってすごい目で睨まれてるわけで。 はい、すいません。静かにしますよ。 俺なんかちょっとうるさいクラスメイトくらいの存在です。 いいのいいの伝わらなくても。 俺、今のままで充分天国。 大体、引っ込み思案な俺っちは、伝えられるようなことを何にもしてないからね。 精々できてるのは、授業中にじっっっっっと背中を見つめるとか、 プリント渡すときにそっと手を握るとか、 体育の授業のときにさりげなく身体をすり寄せてみるとか、 登下校のとき、10メートル後からついてってるとか、 あいつのバイトしてるコンビニの周りを、2~3時間うろうろするのが日課とか、 そんな程度ですから。 「立派なストーカーだな」 ストーカーとは失礼な! 失礼...
  • 8-619-1
    さあ踏んでくれ ……え?ホントにいいの? いつもパリッとしたスーツを着て、颯爽とビジネス街を歩く一流企業のサラリーマンが 僕の前に素肌を晒している。 「……でも……」 「いいんだ。思い切り踏んでくれ……それが快感なんだ」 高校時代、ラグビーで鍛えた体はうっすらと日に焼けて、逞しくて。 綺麗な逆三角形を描く、胸から腰のライン、引き締まった太腿。まるで彫刻のような体。 あぁ、どうしよう。 身長も体格も、体重だって完全に負けている僕なんかが、この人を踏みつけにするなんて。 いつもなら、乗っかられるのは僕の方なのに。 「なぁ、頼む。我慢できないんだ。酷くしていいから」 そんなに、切なそうに切れ長の目を潤ませないで。 あなたの望むように、僕は何でもするから。 「あっ……あぁ、イイ……」 僕の体の下から、快楽の声が聞こえる。...
  • 20-619-1
    慣らす 「ここが今日からお前の部屋だ」 背負ったままのリュックをぽんと軽く叩くと、細い身体が大袈裟に跳ね上がった。 直接触れたわけでもないのにこれほど大きな反応を示すのは、親戚中をことごとくたらい回しに されたその過程で何度か虐待を受けたからだろう。目で確認したわけではないが、季節外れの 長袖の下にはいくつも痣が隠れていると聞いている。 俺は気づかれないようにため息をついて、小さな部屋を見回した。 簡素なベッド、勉強机、押し入れにすっぽりはまっている小さな箪笥。それがこの部屋の家具の 全てだ。 「悪ぃな、テレビも本棚もなくて。必要なら揃えてやるから、しばらくはこれで我慢してくれ。 押し入れに箪笥が入ってるから、好きなように自分で収納しな。荷物はそれで全部か?」 リュックを指し示すと、ゆらりと頭が前後する。頷いたのか揺れただけなのか、判別が難しい。 無言で半歩身...
  • 21-619-1
    愛さないでください  ひとつだけお願いがあるんです、と青年は静かに言った。 ――私を愛さないでください。  烏色の髪が風に撫ぜられて蒼ざめた頬にかかり、ただでさえ感情を内に秘めがちな青年の表情を一層読み辛くしていた。  けれども、日頃から禁欲的な彼が、そうして一陣の風の中に無防備に身を置くさまを見るのが、私は存外に気にいっていた。  だからたびたび夜になると、青年を連れて、この静かな湖畔を訪れた。  ここに吹く風は無粋な障害物に遮られることはなく、ただ穏やかにさざ波の上をやってきた。  そして、私と青年に沈黙が訪れると、その間を優しく風が通り過ぎていくのがわかるのだった。  青年もまた、この時間を好んでいた。  明るい日差しの中では人目を集める彼の容姿は夜の帳にしっくりと溶け、湖畔に吹く水気を含んだ風は彼の故郷の風にどことなく似ているのだと言う。 ――私を愛さない...
  • 16-619-1
    閉じこめる 綾乃と駆け落ちをする、と、透は俺の眼を真っ直ぐに見つめて告げた。 叶わない恋だと嘆く、かつての弱々しい眼差しの面影は既に無く、瞳は強い光を帯びているのに気づいた。 遠くで蜩が鳴き、畳には、ふたつの影が這うように伸びていた。 「家はどうするつもりだ」 尋ねると、透は痛みを堪えるような顔をしたが、それも一瞬のことだった。 「知るものか。あいつらの傀儡にはならない。そんなものはもう御免だ」 「――いつ、発つんだ」 「明日の深夜、綾乃と峠で待ち合わせる。……和志、すまないがおれを助けてくれないか」 瞳の輪郭が和らぎ、幼い頃と変わらない眼差しが俺を捉えた。透が頼みごとをするときの眼だ。 頷くと、食い縛っていた透の唇が綻んだ。 「助かる。おれひとりでは囲いを越えられないんだ」 しばらくの間の後、透は大きく息を吐き、眉根を下げた。 「本当にすまない。…...
  • 14-619-1
    冷たい人が好きなタイプだったのに何で? 「なんでおまえ手袋もしてないんだよ。」 ほら、手貸せ。 一方的に繋がれた手から、相手の体温が流れ込んでくる。 冷てーなおまえの手。昔から、冷え症だっけか。 彼は、優しい苦笑いを潜ませた声でそう言って、歩き出す。 温かすぎるその熱にめまいを感じながら、手を引かれて歩いた。 半ば俯けていた視線を少し上げて、繋いだ手を視界の中心に据えた。 手を引っ込めようとするのに、その度に掴み直されて、指は絡め合ったまま。 その内に互いの温度が混ざり合って、何処から何処までが自分のものなのか、 境界が曖昧になってしまう。 堪えきれなくなって、眼を逸らした。 胸が痛い。悲しさや苦しさでなく、得体の知れない切なさが喉を締め上げる。 辺りはもうすっかり冬景色で、明け方には雪が降った。 時折氷点下の空を過ぎる風は首筋を脅かし、...
  • 10-619-1
    受の命令(お願い)で女装させられて、更に白昼堂々デートさせられる攻 「ねえお願い。女の子になって?」 「は?」 いきなりの言葉に耳を疑った。 「だから、女装して」 そういいながら差し出される服はヒラヒラだ。 「こんなもんいつの間に用意したんだ!」 「今日。さっき買ってきた」 「無駄使いすんな!」 いやまて、そういう問題じゃない。 「……女装したオレにヤられてみたいとか?」 「バカか。デートすんだよ、外で」 「羞恥プレイかよ!」 「まだ恥ずかしいと思うだけの理性はあったのか」 「普段理性飛ばしっぱなしですいませんね」 「悪いと思うなら言うこと聞けよ」 「それは嫌」 キラキラと見つめてくる目は期待に満ちている。 ……諦める気はないらしい。 「そもそもどっから出てきた思いつきだよ」 そう言うと目を反らして口ごもってしまう。 言えないような理由でもあ...
  • 2-619
    穏やかな優等生×やんちゃな熱血バカ 彼のどこが嫌いかって? そうだな、あの押し付けがましいところが苦手だ。独善的というか。 結局は一人で突っ走るくせに、チームワークが大好きだから何でも一緒にやりたがるんだ。 僕は一人で計画して実行する方が性に合ってるって、何度言っても聞かない。 口論になることもしょっちゅうだね。…仲直り?まったく問題ないよ。 なにせあの性格だろ?厭なことを後に引きずらないんだ。 喧嘩しても一晩寝れば忘れる。馬鹿だからな。 僕ら相性は最悪だと思ってるんだけど、何故か離れられないんだよなぁ。 あいつ無茶を無茶とも思っていないから、危なっかしくて目が離せないし。 勝手に暴走した挙句顔に傷なんかつくって帰ってきて心底頭にきてても、 あのしゅんとした犬ころみたいな顔見るとつい許しちゃうんだ。 悪かった、これっきりにするから...
  • 19-619
    ちょ、痛いって たとえば部屋で寛いでいるとき、二人で眠る前、情事の後なんか。そんなときにあいつは俺の体に噛みついてくる。コンプレックスだった白い肌に目立つ赤い歯形が独占欲の証のように増えていく。 俺はいつも、かすかな痛みと心地良さ、あいつに愛されているだろう事実がもたらす優越感に溺れてしまう。被虐嗜好があるわけでもないけれど、ほんの僅かな間残る跡は見るたび痛みと快感がつのった。 今日もあいつは俺を噛んだ。痛みと歯形が残る程度に、しかし傷にはならない強さで。 「ちょ、痛いって」 「いいじゃん。血だって出てないし、すぐ消えるよ」 そう言ってまた、肩やうなじや指や脇腹に噛み付くのだ。その控えめな歯形が消えるのを、どこか惜しく思いながら見ていた。 いっそ一生ものの跡がついてしまえば、あいつは俺から離れがたくなるんじゃないかなんて、浅ましいけれど、思わずにはいられなかった。 ...
  • 22-689-1
    タチ経験だけある受け 「…えっちょっと待てお前」 「えっ?」 きゅるん、と効果音が付きそうな視線でオレを見て首を傾げたこいつは今、明らかに、俺の上に乗っかっていて。ちょっと待てどうしてこうなった。 さっきまでは普通にオレが作ったご飯食べてこいつは美味しい美味しい言ってて。そんなとこも小動物みたいで可愛いなんて考えてたオレは勿論、押し倒す気満々でベッドに向かったのに。いつの間にやらオレの手はシーツの上だ、どういう事だ。 「…えっ、だってする雰囲気じゃ…」 「いや、雰囲気はそうだけど、普通オレが上じゃね?」 体格だってオレの方がいいし、オレの方が年上だし、第一オレこっち側の経験無いし! そう訴えたらふにゃっ、て表情を崩すみたいに笑って、こいつはオレのシャツの裾に手を掛けた。 「だいじょーぶ!僕、男の人でも挿れられるから!」 いや、だから、そうじゃなくて! 反論を紡ご...
  • 22-609-1
    インド人DK ドムの野郎だ・・・ドムが今朝も迎えに来やがった・・・毎朝のことながら実に欝だ ドムというのは同級生のインド人だ。母ちゃんが日本人だから正確に言うと日印ハーフだ ただ見た目は母ちゃんの遺伝子はどこに消えた状態の褐色の肌で高い鼻で真っ白い歯の完璧なインド人だ オレが自宅の外に出ると象に乗って六人ほど御付きを従えたドムが居やがった 「ナマステー! おはようございまーす。今日も公信さんはきれいですねー」 ドムってのはあだ名だ。インド名がプラヤースと言って、向こうの言葉で努力という意味らしい で、そこから日本名が努務(つとむ)。で、あだ名はドム。もうちっと親も考えて名前をつけてやればいいのにw 「もう迷惑だから来るなと言ってるだろ! せめて象は止めろ!」 「公信さん! 本当は嬉しいんでしょ。また照れちゃって」 「てめー! ぶちのめすぞ!」 オレたちが言い争い...
  • 22-669-1
    国際会議 金髪碧眼アメリカ人×黒髪黒目日本人は良く見かける。 留学して右も左もわからない身長160cm未満の日本人を、ルームメートになったアメリカ人が美味しく頂く…有り得る。 日本人×アメリカ人の場合はどうだろう? アメリカ人=ガタイが良いという日本人の発想から、なかなか王道となり難い。 ならば走るべきはショタか。 近所に住んでいる天使のような少年をパクリ。…いける。 生まれも育ちも日本、英語はからっきし。外国人相手に戸惑うアメリカ人と、知っててからかう日本留学中のイギリス人。 イギリス人×アメリカ人も素敵だろ? アラブ人が攻めなのは何故か。金髪褐色肌はなかなかいないが、黒髪褐色肌の受けがいてもいいじゃないか。 海外出張でアラブに来た東洋人に一目惚れされる石油王受け萌え! チャイニーズマフィア×ロシアンマフィア禿萌エス。 ジャパニーズ“...
  • 22-639-1
    眼鏡の僕系男子 語ってみる。 眼鏡をかけているので、目が悪い。普段は本を読むか、パソコン、スマホいじり。 一人称が僕なので、少し精神年齢が低め。プライドも高め。親からは溺愛されている一人っ子。 同級生からは嫌われ気味だが、プライドが高いが故に、馬鹿な奴らはどうでもいいなんて思っている。 社会にでたら、奴らと仕事をしなければならないのに、解っていないのが幼さの証拠。独断で受け認定。 合う攻めを考えてみる。 ●いじめっ子タイプ… 弱みを握って体を要求するか、脅して無理やり関係を持つ。 体は手に入ったけど、心が手に入らないのでヤキモキする。 受けには嫌われる。体を開発しても嫌がられる。仕方ないので無理やりしてしまい、また嫌われるのループ。 ●受けよりも能力のあるタイプ… 受けよりも成績が良く社交性もあり運動能力もある。 受けの劣等感を刺激...
  • 22-319-1
    無気力系年下×おっとり系年上 電話が留守電になっていたけれど、どうせいるだろうなと思ったらやっぱりいた。 洗濯物が畳まれずにまだ山になっている。その横に灰色の塊が落ちていて、そよ風に前髪を揺らしながらべっとりと床に癒着している。 うつ伏せているのでよく分からないが多分まだ寝ているのだろう開きっぱなしの窓を閉める。風を含んでいたカーテンが音もなく戻ってくる。 昨日ぶりに洗濯物をたたみ始める。寝ている頭が洗濯を枕にしているのでちょっとやりづらい。そう思ってふと見ると、真っ黒な目が開いていた。 「プリン」 と口だけが動く。 「プリンくれ」 コンビニの袋がガサガサしていたので分かったのだろう。また袋をガサガサさせてプリンの蓋をむいてやる。 「あーん」 一口分救ったプリンを口元まで持って行って、食べようとした瞬間に手を引っ込める。 自分で口に含んでしまうと露骨に恨めしそう...
  • 22-419-1
    知りたがり×隠したがり 「なぁなぁ、受けは俺のどこが好き? ちなみに俺は全部好きだよ」 「ああそうかい」  また始まった。 「受けはいつ俺を好きになった?」 「忘れた」  冷たくしてもこたえず、また問い掛けてくる。 「えー。俺はね、忘れ物して慌ててたら何も言わずブッキラボウに貸してくれた時に、いいなーと思った」 「……」  無視しても同じだ。 「じゃあさ、俺のことどれだけ愛してる? 俺は空よりも広く愛してる~!」 「教えない」 「それじゃあ」 「ああもう、いつもいつも五月蝿!」  怒鳴っても、攻めはなぜ怒ってるのか判らず不思議そうに首を傾げる。 「好きな相手の事は、何でも知りたいじゃないか」 「だからって、何度も同じことを聞くな」 「だって聞きたいんだモン」  口を尖らせ拗ねたように言う攻めに、呆れたように背を向けた。  そうしなきゃ平静を保てな...
  • 21-619-2
    愛さないでください 「……そんなに嫌われることもないのに」 「え?俺?」 「あ、いえ、えっと」 ぼそっと口をついて出た言葉だったが、黒川さんにはしっかりと聞こえてしまったようだった。 黒川さんのスーツにピンマイクを付ける俺をじっと見つめる黒川さん。 テレビ画面の中からでも鋭いとわかる視線が直接俺に向けられているものだから沈黙など十秒ともたず、仕方なく俺は続きを話し始めた。 「いえ、あの、黒川さんてその、番組の中じゃ悪役、っていうかどうしても嫌われる……あ、すみません失礼ですよねすみません!」 「いいよ別に。そういう風に見られてるのは知ってるし、愛されキャラとか似合わないだろ」 「……そんなこともないと思いますけど」 お世辞でなく、そう思う。きつい感じの顔立ちだけれどその辺の俳優に負けないくらい整ってはいるし、こうして俺と普通に喋る分には優しい声をしてい...
  • 9-619
    記憶の中で苦しめる人 「好きだ」 舞い散る雪のなかでそう告げた。 チラチラと舞う雪の中のアイツは堪らなく美しかった。 雪にさらわれてしまいそうだった。 街灯の光はまるでスポットライト。 一枚の絵画か舞台のワンシーンのように目に焼き付いている。 今も思い出すだけで…… 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!」 「な、なんだよ」 思い出すだけで恥ずかしい! なんださらわれるって。 スポットライトとか言ってんじゃねえ。 何処の夢見がちな乙女だよ! 「いきなりどうしたんだよ」 「……恥ずかしい過去を思い出した」 恥ずかしい。 なんであんな風に思えたんだ。 コイツが儚げなのは外見だけで中身が全く違う事だって知ってたのに。 「恥ずかしい……ああアレか?告白の時の……」 「思い出すなー!」 「無理。思い出した。いきなり真剣な顔してさぁ」 「止めてくれー!」 ...
  • 3-619
    タバコ喫み×嫌煙家(リバ可) 「お疲れさまー。もう遅いし晩飯食っていこうよ」 「寄らないで下さい」 必死のアプローチにもかかわらず冷たい声で一言。 「なんでー。なんでー。俺お前のことがこんなに死ぬほど大好きなのにー」 「タバコの匂い嫌いなんです。何度も言ってますよね?いちいち忘れるんですか?馬鹿ですか?」 ああ、禁煙できない俺にいつもの台詞。 「死ぬほど大好きなら禁煙してから出直してくださいね。じゃあお疲れ様」 「いやいやいや、タバコはやめるとほんとに死んじゃうし…」 「じゃあその死ぬほど大好きなタバコ様と結婚でも心中でもしてください」 ……禁煙セラピー、買って帰ろうかなあ。 生徒会長な優等生×不良生徒
  • 7-619
    ヒトメボレ×ヒトデナシ この部屋に入居してまだ二週間ほどのことだ。 カタン、と物音がした。振り返ったけれど、誰もいない。 (気のせいかな。) そう思っていると、また、カタンと物音がした。 不動産屋が破格の値段で持ってきた物件だけに、なにか周囲に問題でもあるのかと思っていたけれど、 今のところそれはない。むしろ、周囲はとてもよくしてくれる。 「わざわざこんなところに来なくたってよかったんじゃないの?」 そういう声もあったけれど、気にしていなかった。そう、……その日までは。 〔カタン。〕 ぼくは振り返る。不自然な物音は少しずつ近づいている。 〔カタン、カタカタ。〕 ぼくはばっと振り返った。すぐ後ろに聞こえる物音に、心臓をびくつかせながら。 と、出し抜けに、 『ここ、ぼくの部屋です』 そんな声がした。か細い、ボーイソプラノのような声。 ぼくはがた...
  • 5-619
    ひろゆき@どうやら管理人 創立者であり、神でもあるあの人。 周囲の奴らは「ひろゆき」なんて呼んでいる。 勝手に呼び捨てにするなよ、と何度愚痴ったことだろう。 俺は、あの人と呼ぶのが精一杯なのに。 俺と彼とは……きっと、絶対に結ばれないのだろう。 ある意味、親子みたいなものだから。 だけど、どうしても諦めることが出来なくて、 俺はそっと呟いているんだ。 ひろゆき ラブ。 俺がその気になれば1000回も言える。 場所を変えて、何度だって言いなおせる。 あの人の為なら、自分の体を捧げることなんて何とも思わない。 好きだ、あの人……いや、ひろゆき。 ……届いてくれ、この思い!! 削除人「……たまに2ちゃんが自動的に書き込みを始めるんだよな。     何だろこれ、ウイルスか?」 あぼーん。 ………そして、2ちゃんの思...
  • 6-619
    伝わらない 愛してるよ。 君を愛している。 「『愛してる』って分かんない。 父さんは大勢に言った。 母さんは僕を殴った。 姉さんは大金を使った。 でも、貴方の『愛してる』は僕の知るどれとも違う。 だから、僕は『愛してる』が分からないし、貴方に『愛してる』って言ってあげられない」 それでいいよ。 ここに私がいて、君がいて、そして私が君を愛している、そのことが重要なんだ。 それだけなんだよ。 「やっぱり分かんない」 分からなくていい。 伝わらなくていい。 ただ知っていればいい。 私は君を愛している。 愛してるよ。 伝わらない
  • 4-619
    そろそろ手袋買わなきゃなぁ 「そろそろ手袋買わなきゃなぁ」  色付き始めた、ケヤキの並木道。  そこを幼馴染みの彼と歩いている時に、耳に独り言のような言葉が滑り込んできた。  視線を向けると、彼は寒そうに首を縮め、手に息を吹き掛けている。それに微笑ましいものを覚える。 「お前って、手冷たいもんな」 「だから、冬って嫌いなんだよ‥‥‥。霜焼けとかなるしさ」  寒さで赤くなった頬とか、鼻をすする仕種とか、そんなのを可愛いって思ってるなんて、お前は知らないんだろうな。  息を吹き掛けつつこすり合わされる手を掴み、ダッフルコートのポケットの中に引き込む。 「こうすれば、暖かいだろ」  びっくりしたようにこちらを見ていた彼は、はにかんだように微笑み 「うん」 と、短い返事を返してくる。  そうして半ば強引に、家に帰るまでポケットの中で手を繋ぎ続けた。色付いた葉より...
  • 1-619
    あう×ボーダフォソ まぁ、噂を聞く限りではあいつ自分を安売りして夜な夜な若い奴らと…その、なんだ、 いろいろやってるらしいからな。オレに目を向けるなんてことが有るわけないのさ。 昔はオレの方が人気者だったのにな…それに昔はあいつとも仲が良かったよ。 アレだよな、傲慢だけど、人気があったから周りに優しくできたのかもしれないな。 あいつと会う約束をしていたあの夜に出会った外国の奴に、ホイホイついていったオレがバカだったよ。 あの間違えさえなければなぁ。今はもっとあいつと仲良く出来たかもしれない。 今いつでもオレの隣にいるのはあの夜を共にした外国の奴さ。 今日も一日が終わりそうだ。いつも隣にいる奴は国に遠征しに行ってる。 そんなとき誰かがやってきた。こんな夜中に来る奴にろくな奴はいない。 追い返そうと思って窓を開けたら、あいつがいるじゃないか。 「…テレビ見せ...
  • 19-119-1
    「ん?」 「なーなー、聞いてんのかよ」 「ん?」 「だから!明日の最終の夜行列車!発車時刻はわかってるよな?」 「ん」 「なにその適当な返事。ホントにわかってる?」 「最終」 「そうだよ最終列車だよ!でもなんか今の言い方ですげー不安が増した!逆に!」 「ん?」 「今の、耳に入ってきた単語を適当に繰り返しただけだろ?アンタやる気あんの!?」 「ああ」 「その『ああ』はどっちへの『ああ』だよ!」 「後者」 「本から目ぇ離さずに言われても、全然説得力ねーんですけど!?」 「ああ」 「だから『ああ…』じゃねえっつーの!自覚してるんなら改善しようぜ改善!」 「ん」 「心こもってねえ……いいやもう。とにかく!明日の最終の夜行列車だからな!」 「ん」 「発車時刻は二十二時、五十三分!脳髄に刻み込めよ!?」 「ん」 「あーもー…知ってるけどな!アンタの性格...
  • 2-119-1
    慇懃攻め 「紅茶を」と言われれば紅茶を。 「ケーキを」と言われればケーキを。 それが私の仕事。 しかし彼の望むことならなんでも叶えてあげたいと思うのは、 それが仕事だからだけではない。 幼い頃からずっとお世話をしてきて、それが今も当たり前の ように続いている。 そしてこれからもそれがずっと続けばいいと、それだけが私の願い。 私の想いを知ったらきっと彼は困るだろうから。 天才×秀才
  • 16-619
    閉じこめる 現実か、あるいは長い夢か、僕の妄想なのか。 僕はあの男に閉じ込められている。それもかなり長い間。 あの男は僕のことが好きなんだろうか。だから閉じ込めているんだろうか。 あの男のことを考える。不思議と憎しみはない。 それどころか、あれが時おり見せる笑顔を思い出すと、胸が温かくなる。 けれど同時に切なくなる。どうしてだろう。 ふいに呻き声がして、そっと後ろを振り返る。あの男が小さな檻の中で蹲っていた。 足首に鎖が巻きつけられて、動けない状態だった。 「おかしい、これじゃあまるで、お前が僕に閉じ込められているみたいじゃないか」 そう呟くと、男は僕の方を睨みつけて、ああまさしくその通りだよ、と唾を吐きかけた。 何はともあれ、僕はこの男に閉じ込められている。それもかなり長い間。 現実か、あるいは長い夢か、それとも。 閉じこめる
  • 28-619
    10年以上の片想い 二度目の高校の同窓会で、懐かしい奴に逢った。 二次会に盛り上がる連中を尻目に抜け出して居酒屋に入る。日本酒をちびちびと飲みながら話を聞いた。 あの先生まだ生きてたんだな、二組のあいつ結婚してたんだな、○○は老けたよな、親御さんは元気か… 「しかしもう三十手前か…早いねぇ」 二杯を空にした辺りでどちらからともなく溜息を吐く。 「でも皆元気みたいで安心したわ」 その笑顔と言葉に、泣きたくなった。 変わっていない、“変われない”俺の親友。 今でも忘れられない二年の夏。あの日からこいつの時は止まったままだ。 「部屋、来いよ」 アパートへの道をゆるゆる歩きながら考える。傍には親友がゆらゆら漂っている。 果たして、俺はこいつに言えるだろうか。 あの時からずっと胸に押し込んでいた想いを。あの時言えなかった言葉の続きを。 果たして、俺は聞けるだ...
  • 10-619
    受の命令(お願い)で女装させられて、更に白昼堂々デートさせられる攻 「巧ィー。ネズミーランド行こうぜネズミーランド~」 俺は、もう買ってしまった前売り入場券二枚で巧の頬をぺしぺし叩いた。 巧は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せる。 可愛い顔が台無しなどと口に出したらまた怒られそうなことを考えつつ、 その眉間の皺すら扇情的に感じる俺は相当ヤバいとも思う。 巧が心底嫌そうにチケットを振り払った。 「嫌だ。何が悲しくて男二人でそんなとこ行かなくちゃいけないんだ」 彼は最高に険悪な表情だったがこれくらいでめげる俺ではない。 地道な努力を重ねに重ねて、漸く部屋の中まであげて貰えるような仲になった俺だ。 「でもさ、もうチケット買っちゃったんだよ。 お前ネズミーランド行きたいって言ってたじゃん、 お前の誕生日も近いしさ、 プレゼントだってことで俺と一緒にネズミーランド行って...
  • 13-619
    メガネとワイシャツと私 メガネもYシャツもあんたに触れられるのにネクタイの私は触れられない・・・ 「あんたにこんなに触れたいと思ってんのに・・・そんなに私は必要無いのか?」 「ご主人にはお前も俺もメガネだって必要だろ。ってか、お前俺じゃ足りないのかよ。」 ・・・Yシャツのことも好きだけど肉体をつなげてわかった。好きの違い。だから・・・ 「・・・・・・たりっ・・・ない・・・」 小さな声でボソリとつぶやくように言う。 「ああ、そうかよ!!じゃあ、もう俺を抱くのは止めろ!!」 あ・・・また捨てられる・・・嫌だ・・・ 「足りないから・・・埋めさせて・・・」 咄嗟についた嘘。 あれから、何ヶ月たっただろう・・・あの時体をつなげたYシャツ達はご主人にボロボロになるまで扱われ、捨てられた。もうすぐ私も捨てられるだろう。あんたにこの空白を埋められることのないまま。 ...
  • 23-619
    大好きだからさようなら 「おい、石川のちっちゃいの。酒」 「小石川です教授。お酒はもうダメです」 「ダメってなんで。俺の家だ、腐るほどある筈だろ。持ってきて」 「ダメです」 「いいだろもう日本には帰ってこないんだ、最後をお前と飲もうっていうのに」 「友達がいないだけでしょう。大体アメリカ行きだって自分で勝手に決めたくせに。最後を一緒になんて都合が良すぎます」 「………石川(小)」 「小石川です」 「俺だって別に行きたかないよ」 「じゃあどうして、行っちゃうんですか」 「逃げるためさ」 「どうして、最後の夜なのに酔おうとするんですか」 「それも逃げるため」 「根性無し」 「なんとでも言え。…なぁヒロキ」 「小石川です」 「愛してるよ。でもお前を見てると頭が狂っちまう、ごめんな」 「……もう二度と、あなたの様な意気地の無い意固地な人を好きにはならない...
  • 17-619
    花にたとえるなら あなたは 花にたとえるなら あなたはソメイヨシノ あれほど美しいのに 決して結実することの無い 花を咲かせはしても 子孫を残すことの無い徒花 通り過ぎる強い風が枝を揺らし 花びらを震わせ あられもなく乱し 身も世もなく舞い散らせても 次の年にはまた 何もなかったかのように 静謐に美しく咲く そんなところも似ている ソメイヨシノは傷に弱いのに 手折るとできた傷から 腐敗して 死んでしまうのに それがわかっていても 手折りたくなってしまうほどに 自分のものにしたくなってしまう そんなところも似ている 花にたとえるなら あなたはソメイヨシノ ただ 風にかき乱され悶え 狂ったように舞い散る様を私に見せ付ける 触れることを禁じられた花 結婚指輪のかわりに
  • 14-619
    冷たい人が好きなタイプだったのに何で? 彼がそっとさりげなく接近して来るようになったのはいつの頃か。 嬉しくてつい、はしゃいでしまう。 多分、気まぐれだと分かってる。 彼が好む相手と自分は、あまりにも違い過ぎだから。 手に入らないものを欲しがるばかりの人が、 こんな容易い僕に価値を見出すとは思えない。 ゲームでいえばレベル1で出て来るザコキャラみたく、 僕は落とし甲斐の無い代物だろうから。 そう考えると、酷く切ない。 自分は、目一杯弄ばれてるんだ。 柔いところを目一杯突かれて、優しくされて舞い上がって。 そして僕は、彼と寝てしまった。 嬉しくて嬉しくて、泣いて喜んで 馬鹿みたいだ。 遊びでもいいから離さないでと、切に願ってしまった。 何故自分と、問う訳でもなく。 深夜の車が行き交う喧騒の中で、聞こえた呟き。 ...
  • 24-619
    自転車二人乗り 「……違う。確かに俺は自転車で二人乗りがしてみたいといったが、これは違う」 「何が違うんだ、立派に二人乗りしてるだろ」  そう、確かに今俺が乗っているこれは自転車に分類される乗り物で、そして二人乗りだ。  だから決して間違っているとは言えない。けれど、それでもこれは違うと叫んで許されると思う。 「普通、二人乗りがしたいってリクエストに対して『二人乗り用自転車』を持ちだしてくるか!?」  普通の自転車より長い全長。小さめの車輪。縦に2つ並んだサドルとペダル。  休日に突然呼び出された俺の前にこいつが嬉々として出してきたのがこの面白自転車だった。  こんな漫画でしか見たことのない自転車が普通に存在するということにまず驚いたが、 自分が発した「二人乗りをしてみたい」という発言に対する答えがこれだということに更に驚いた。 ...
  • 26-619
    狼男と吸血鬼 「んで、旦那。これからどうします?」  日の当たらない深い森の中、青白い肌をした少年が立っていた。周りには動物の屍が 散乱し、血液が全て抜き取られていた。少年は口の周りを無表情で拭いながら、ゆっく りと近づく男に目を向ける。 「お食事も済んだことですし、そろそろ俺の方も何か頂けないでしょうか?」  飄々とした口調で少年にせがみながら、背後から白い首筋に手を優しく当てた。男の 目はギラギラと光らせ、鋭い舌と歯を覗かせていた。 「気安く触るな」  少年は男の意図が分かると、抑揚の無い言葉でそれを拒むが、男はお構いなしに首筋 に唇を近づけていた。 「もう一度言う、俺に気安く触るな」 「旦那は半分人間の血入ってますから俺のことを完全には支配出来ない……なんなら今 ここで」  そういいかけた瞬間、男は殺気を感じ、後ろに退く。向かい合った少年の手には短剣...
  • 18-619
    相容れない敵同士が一時的に手を組む 窓のない小部屋に、男が二人座り込んでいる。一種異様な光景である。 部屋と呼ぶのも憚られる殺風景な空間には調度品の一つもなく、 重厚な金属製の扉は頑なに閉ざされている。静かな午後だった。 その静けさに抗うように、男の片割れが絶え間なく喋り続けている。 「よく喋る男だ。すこし口を閉じていろ」 それまで無視を決め込んでいたもう片方の男が、とうとう耐えかねて声を上げた。 やけに剣呑な目つきをしたこの中年男、正体は私服警官である。 元より愛想の良いタイプではないが、ここまで不機嫌なのには理由がある。 一つには、敵意ある組織に監禁されているというこの状況。 もう一つには、武器を没収された上に怪我を負い、これという打開策も浮かばない己の状態。 そして何より神経を逆撫でるのは、同室に閉じ込められているのが名うての詐欺師という事実である。 ...
  • 21-619
    愛さないでください ああ、まだ玄関付近をうろついてる…。 窓からこっそり覗き見て、俺は酷く後悔した。 今、俺ん家の玄関付近をフラフラしている彼は部活の後輩。 明るくて親切で男なのに超綺麗。そんな後輩に懐かれて、俺も最初は悪い気はしていなかった。 けど仲良くなるにつれて、どんどんスキンシップが過激になって 抱きつかれたり、キスされたり、「抱かせて下さい!」とまさかのお願いをされたり 花束を手渡されたり、毎日弁当を作って来てくれたり、誕生日に指輪をプレゼントされたり 最近ではなぜか原点復帰して「手…繋いでもいいですか?」と不安げに聞かれたり 「俺の事嫌いですか?先輩が嫌ならもう二度と近づきません。」って気を使かってくれたり その事で考悩みすぎて知恵熱出した俺のお見舞いにわざわざ来てくれたのに 何故かチャイムを押さずに玄関前で考え込んでたり。 いくら鈍感...
  • 25-619
    爪を切る ヒリつく背中に眉を寄せて、気の抜けた声で騒ぐ頭をはたく。一通りの作業を終えた右手を解放し、緩慢にパタパタと動く左手を取っ捕まえて、爪切りをあてがう。 「いっ、ひっ」 「……………」 「きょっ」 「……いい加減面白い声出すのやめてくんないか」 「だってなんか人に爪切られんのって思ってたよりくすぐった……いひっ」 パチンパチンと小気味良い音を立てて爪が切れる度に、短く意味の分からない悲鳴をあげてはプルプルと震える。 「あーもうやすりはやめてー」 「丸くしなきゃ意味ねえだろ、爪痕から血ぃ滲むとか尋常じゃねえぞ」 「あっちょっ、あーあーもうやっぱりゾワゾワするし…!」 「自業自得だ、我慢しろ。……ほら終わったぞ。」 「あ゙ーー…」 唸りながら枕に顔を埋めるのアホを横目に、ついでに俺も切ってしまおうかと思い爪を見る。が、すぐにそんな必要は無いと知る...
  • 20-619
    慣らす キャベツの味噌汁に文句を言わなくなった。 炒り卵なら自分で作れるようになった。 焼酎を飲むようになった。 肘をついて食べるのをやめた。 俺が納豆を食っても顔をしかめなくなった。 おでんの汁は飯にかける派だとカミングアウトした。 やっと自分の歯ブラシを覚えた。 パジャマを買った。 たまに連れだって外出しても、スパイみたいな挙動不審をしなくなった。 一駅くらいなら歩けるようになった。 そんで次の日筋肉痛を起こさないでいられる体力がついた。 俺の好きなガムを覚えた。 読んだ新聞をたたむようになった。 熱帯魚にやる餌の適量を覚えた。 俺がすすめた本をやっと読んだ。 俺の煙草をやめさせた。 見つめても、すぐには視線をそらさなくなった。 電気さえ消していれば、体を強ばらせなくなった。 好きだと言ってもう...
  • 22-289-1
    博奕打ちの恋 「負けたらどうなるか、判ってんだろうな」 「ああ」  目の前で凄む男に、オレは軽く頷く。  適当に遊んで来たつもりだが、負け無しのオレが気にいらないらしくついにルーレットでサシの勝負。  イカサマ防止で玉を入れてからオレが賭けて、その逆を奴が賭けるいたってシンプルな方法だ。  ルーレットが回り玉が入ると、いつものようにフッと脳裏に数字が浮かぶ。  今回は19。  オレは迷わず黒にチップを置き、奴は赤に置いて後は勝負を待つだけ。  スピードの落ちてきた玉はコツンコツンと音をたて、赤の19に収まった。  瞬間、奴の顔が笑顔になる。  そりゃ嬉しいだろう、初めてオレに勝てたんだからな。  奴は笑顔のままオレを見て、 「約束どおり、今までの分体で返してもらうぜ」 「好きにしろ」  奴の言う取り立てがタコ部屋送りか、臓器を抜くのか、それとも言葉通りか...
  • 19-669-1
    半人半獣 我輩はケンタウロスである。名前は佐藤。 都立高校に通うごく普通の男子高校生だ。 太古の昔は神と呼ばれ信仰や畏怖の対象であったが 現代日本においては「絡みづらい」と見て見ぬフリをされる。そんな存在だ。 そんな我輩にも心を許した友がいる。同級生の鈴木君。 我輩は毎朝、朝寝坊の鈴木君を家まで迎えに行き、背中に乗せて登校する。 「佐藤君、おまたせー」 「鈴木君、急がないと遅刻だよ」 「ごめん昨日遅くまでゲームしてて、あ、今度一緒にやろうよ」 「うん、とにかく急ごう」 遅刻ギリギリでものんびりとしてる彼を乗せて走り始める。 数分もしない内に背中に彼の体温と寝息を感じながら、 我輩は彼との出会いを思い出していた。 入学式から数日、クラスメイトが目を合わそうとしない中、我輩に話しかけてきたのは彼一人だった。 「佐藤君チンコ丸出しだよ...
  • 22-109-1
    甘えるのが苦手 アイツは人に甘えるのが苦手のようだ。 家庭の事情が複雑で、児童相談所に世話になったこともある。 何故そんなことを知っているかと言えば、俺が隣の家の住人だからだ。 隣の夫婦げんかは内容まで知っているし、物が倒れる音がしたと思うと 翌日あざの出来たアイツに会うという事は日常茶飯事だった。 通報があって一時保護が決まった時には、さすがのアイツも嫌そうだったので、 俺の家に来てもいいぞといったが無視された。 まあ、保護決定してるんだから来られる訳もなかったけど。 借金の督促もたくさんあった。郵便物がポストから溢れていた。 「親に死んで欲しい」と物騒な事をアイツが言っていたら、本当に事故で亡くなった。 自殺じゃないかと近所で噂になったが、自殺するような夫婦ではないという両親の火消しで なんとか沈静化した。自殺するなら夜逃げだと俺も思う。そんなにしおらし...
  • 22-149-1
    硬貨で六角関係 僕の名前は若木一(わかぎ・いち)といいます。このたび日本硬貨に新入社員としてやって参りました いきなりこんなことを言うのもどうかと思いますが言います。好きな先輩が居ます。一年先輩の稲穂計五(いなほ・けいご)先輩です 実家は林業だそうです。なんか金色にピカピカしているようなオーラの見える素敵さです 僕にはライバルが居ます。常盤十郎(ときわ・じゅうろう)先輩です。京都出身。実家は平等院鳳凰堂の近くだそうです もの凄いチャラ男です。日焼けサロン通いで冬でも銅線のような肌の色です。もちろん髪も真っ茶っ茶です どうやらこの常盤のクソが稲穂先輩に手を出しているのです。稲穂先輩がアンアン言わされているみたいなんです ひどいことに常盤のボケは二股をかけています。その二股のもう一人は五十嵐菊(いがらし・きく)先輩です 五十嵐先輩はとても気が弱い人のようです。本命さんが居...
  • 9-119-1
    dat落ち 「それじゃ!名無しにもどるよ」 そう書き込んだ君は、それを最後に本当に現れなくなった。 見慣れたトリップはもう使われないんだろう。 『ボロ原付で日本を一周するスレ』 そんなスレがたったのは、一ヶ月くらい前だったか。 「スペック 男 18歳 童貞 原付歴1年半 相棒もうpしとく」 お決まりの文句とともに書き込まれていたURLをクリックすると、 そこにはホントにボロとしか言いようがないカブが どこか頼りない後姿の君とともに写真でうpされていた。 君は左手を細い腰に当てて、右手は人差し指を伸ばしたポーズで立っている。 その指先をたどると『名古屋駅』の文字が見えた。 細い体の君と、ボロボロのカブ。 「無理だってwwwwwもう止めとけwwww」 そう煽られる事もあった。 でも君は気にする様子も無く、旅を続けた。 そしてその...
  • 19-229-1
    華道家とフラワーアレンジメント講師  花を生けていると背後で人の気配がした。斜め後ろの方からじっとこちらを見てくる気配はまず間違いなく彼だろう。いつもの紺の着流しを着て、腕組みをして。妙に熱心に観察してるはずだ。  いつものことだ。邪魔をしないようにとの気遣いだろう声をかけられたことはない。気になったのは、この家に住み始めた頃のこと。今はごく当然のこととして受け止めている。彼いわく、西洋の文化の良いところも学んで取り入れようと思うとか何とか。そのくせ、派手すぎるとばかり言っている。外国の文化にわびさびを求められても。 (ん……?)  背後の、どこか落ち着かないようなそわそわした気配に気づいて、そっと苦笑する。横目に時計を見て、もうこんな時間だったかと少し驚く。 (まあ、もう終わりますし)  もう少しだけ待ってもらうことにして、終わらせる。 (……よし) 「用事があるな...
  • 22-649
    わんことにゃんこ うちの犬は賢い。 室内犬で大人しい。名前を呼べば飛んできて、尻尾をブンブン振って大きな瞳でこちらを覗き込む。 膝の上に乗せればされるがままで、ブラッシング中も静かに横になっている。 俺が風呂に入ればトトトッとついてきて、いつの間にか一緒にバスタイムを堪能する。 お風呂上がりはドライヤーの後にミルクを一杯。 うとうとし始めると我先にとベッドにダイブし、俺を待っている。 「あいつもこれくらい大人しけりゃ良いのに」 眠りにつく前、飼い犬を見て思ったのは秘密。 うちの猫は気まぐれ。 いつでもどこでもフラッと行ってしまう。朝起きたら姿が見えないなんてザラ。 帰ってきたかと思えば、こちらを一瞥し『いたの?』と言わんばかりの態度。 帰ってきたならばと名前を呼んでも聞こえないフリ。何故かこちらが猫なで声でご機嫌を伺いながら近づけば、仕方がないと隣に...
  • 22-629
    俺の子供を産んでくれ 俺の子供を産んでくれ。 「……って告白したらふられた?当たり前だろ、馬鹿」 「なんでだよ!俺の心からの想いをそのまま言葉にしただけなのに、なにがいけないんだよ!」 馬鹿な告白をしてふられたらしい馬鹿な男が、若干の涙目で訴えてくる。 なんでって、それをわかっていないところが馬鹿だというのだ。 「あのな、普通の女の子はそんな告白されたら、どん引きこそすれキュンとはならないの。なんでおまえはもっと言葉を選べないかね」 「だって、だってしょうがねぇじゃん。俺にとっての恋愛は、そういうことなんだもん。好きになった人とは、結婚して、子供産んで家族つくって、死ぬまで添い遂げたいって、俺は本気でそう思うんだもんよ」 大の男が、もん、とか言ってるんじゃねぇよ。 この男はいつもこうだった。毎回、誰かを好きになるたびに、こんなくそ重いことを言い出して相手に引かれてふ...
  • 22-609
    インド人DK 私は大きな通りの片隅でケータリングカーでドルネケバブを作って売っています 今はすっかりこの場所にも馴染んで、それなりに売れるようになりました 昼時なんか凄い列になったりもします 私にはとても意識しているお客さまがいました それは近くにある高校の生徒さんでした 公立高校ですが、東大や早慶合格者をゴロゴロ出すような凄い進学校でした 低偏差値おバカ高校を経て調理師専門学校卒の私には想像も付かない世界です 私が始めてここに店を出したのは七年前の秋の酷い雨の日曜日でした 昼からずーっと一人もお客さまが来なくて泣きそうでした 夕方頃に初日はお客さまゼロのまま諦めて帰ろうとしたら、車の前に一人のブレザー姿の若い男性が立ってました 「あのー、もう終わりですか?」 「いや、やってますよ」 「ならドルネケバブ下さい。肉はビーフとチキンですか? 自分はヒンドゥーなん...
  • @wiki全体から「22-619-1」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索