*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「24-819」で検索した結果

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  • 24-819
    女みたいに可愛い攻め 「涼さんって、優しいよね」  俺の目を覗き込むようにして、ヒカルは言う。その距離があまりに近いせいで、さらりとした前髪の先が額に触れてくすぐったい。  瞳に映った俺の表情さえ見て取れそうな近距離で、彼はにんまり笑って見せた。 「こんなんしても怒んないし。優しいなー惚れ直しちゃうなー」 「お前が可愛いからな」 「え、それって顔の方のこと?」  形のいい大きな目が、ぱちくりと悪戯っぽく瞬く。  俺の視界の九割以上を占めるヒカルの顔は、ああ、可愛いよ。顔は小さいわ、睫なんて俺の倍はありそうだわ、色は白いわ。手足も華奢で、背も俺とは頭一つ分違う。  だから本当は四肢に乗る体重なんて軽いくらいで、押し退けるのも逆に押し倒すのも、俺次第じゃいくらでもできるんだと――俺もヒカルも解っている。はずだ。  だから俺は首を少し持ち上げて、やつの...
  • 4-819
    リロミス 「うわーしまった、リロードし忘れてた!」 「こいつバッカでー!とっくに俺がレスしたっつの」 「「26分もたってケコーンとかありえねー!!」」 「…………え?」 「えーと、これってもしかして、お前?」 あるインターネット喫茶での出会いのひとこま。 隣り合った見知らぬ二人が現実のケコーン(もどき)に至るまで、あと三ヵ月弱。 お前の小さな台所で寝かしてくれ
  • 14-819
    無意識誘い受け 「間にっ合っ…たっ!?」 「ギリギリ。ちなみに一限目は自習」 「まじでぇ!?なんだよも~…だったらメールしろよ、凄い頑張って走ったし!というか起こしに来ないお前が悪い」 「委員会だっての。昨日言ったろ?」 「…そうだっけ?うんまぁいいや、それよりぎぶみー水分」 「ほら。全力疾走する労力とあと5分早く起きる労力、どっちが大きいか身に染みただろ」 「あふぁほぶぉふんふぁ、にひようひふふぁふぁひふぉ、ひふふぇいひひふぁんにひっふぇきふふほふぁ!」 「朝の5分は日曜昼下がりの昼寝一時間に匹敵するよな」 「ぷはー生き返るー。ほら朝から運動なんて健康的だし水は美味いし」 「じゃあ明日からは自力で起きるという事で」 「それはまた別という事で」 「もちろん明日までのレポートも別で」 「そ、それはもっと別で…」 「…あと何枚だ?」 「…………………7枚?」...
  • 4-889
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「カメダ、ホントにグッジョブだよな~うま~」 カメダのかきピーを頬張りながらそう呟く俺の背中に、突然どさ りと何かが降って来た。 「いってぇ!何すんだよ!?」 床にうつぶせている俺の背中に、達哉のケツが乗っかっている。 「お前が掃除しないからだろ。何もしないんだったら座椅子 にでもなってろ。あー疲れた」 俺の幼馴染み・達哉は、異様な程の潔癖性だ。 大雑把でものぐさな俺とは全く正反対なのだが、だからこそ気 が合うのかもしれない。俺のアパートに遊びに来ると、あまり の散らかりように文句を言いつつも毎回掃除して帰って行く。 「またかきピーの袋溜めてる!!」 達哉は俺をにらみつけながら天板の上の大量の空き袋をゴミ 袋に放り込んだ。 ホントこいつ掃除好きなんだな… 俺の背中に腰掛けながらも、...
  • 1-819
    若頭x組長 深夜の繁華街。悪趣味でド派手なネオンと虚ろに歩く人間達の群れ。 俺は冷えた地面に重い腰を下ろして、膝に顔を埋めた。 軽蔑した様な視線が、時折俺のボロボロな肉体に刺さるのを感じる。 馬鹿にしてんのか?そうだな、お前らは家に帰れば温かい家族と食事が 待ってるんだもんな。それとも、他人の不幸は蜜の味って? …ああ、もう何も見たくない、何も聴きたくない。 「…おいガキ、ここで死ぬつもりか?」 何時間そうしていたんだろう。頭の上で低い声がして、俺は顔を上げた。 サングラス越しでもはっきり分かる、鋭い眼光。 黒いスーツの下にはきっと逞しい身体が隠されているんだろう。 …モノホンか?俺、殺されるのかな。そんな事をぼんやり考えていると、 「来い。せっかく貰った命、粗末にするモンじゃねぇ。」 「…!?」 ぐいっと腕を掴まれて、乱暴に引き摺られる。 ...
  • 3-819
    太陽×ひまわり 言葉の通り眩し過ぎるその姿をひまわりは見上げる。 「やあ、ひまわり」 はにかんだ表情は優しかった。ひまわりも彼に微笑み返す。 こんなことがどれだけ続いただろう。 ひまわりが物心ついたころから、太陽は彼の前にいつも姿を現した。 毎日とはいかなくとも、いつもその柔らかい笑顔でひまわりの様子を見てくれていた。 ひまわりはすぐに彼に惹かれて行った。 夕方になると必ずどこかへ帰ってしまう太陽を、追いかけたい気持ちが空回りする。 「何故僕はここから一歩も動くことができないんだろう?」 幼かった頃のひまわりの無知な問いに、太陽は困ったように優しく笑った。 やがて自分の幹がしっかりしてきた頃になると、 ひまわりは自分が植物であるということをようやく認識した。 マンションの屋上で、どこかの部屋の子供が夏休みの宿題に育てたひまわり。 眼下に揺れる街路樹やベラ...
  • 5-819
    新たな職場で、懐かしい出会い 「……たっちゃん?」 えらく懐かしい呼び方に振り返ると、眼鏡をかけた気の弱そうな男が、胸に抱えた図面ケースの後ろからこちらをうかがうように見つめていた。 「たっちゃん、だよね?」 細い首になで肩。 眼鏡の奥の澄んだ瞳。 細い顎に小さなホクロ。 俺の脳裏にピカッと何かが閃いた。 「……ピカソ?」 ここ十数年の間口にしなかったあだ名を言うと、相手の顔がぱあっと輝いた。 「たっちゃん! 何そのヒゲ!!」 ピカソは笑顔で俺に向かって手を伸ばし、俺たちは自然と握手を交わした。 「じゅうご……十六年ぶり?」 「小学校卒業したっきりだから、そのくらいか」 「びっくりしたなぁ、まさか同じ会社なんて」 「俺も驚いた。世間って狭いな」 屋上の手すりに寄りかかり、灰色に霞む都会のビル街を眺めながら、俺達はパンとコーヒー牛乳という昼飯をお...
  • 7-819
    成就しない片想い 「秋斗」 俺は話しかけた。秋斗は俺の気持。よるが、しっている 秋斗は怒ってた。俺の告白を怒ったのが理由 恋人になるのが怒ってるなら… 寒かった 「秋斗怒らないで」 5分後 「二度と俺に顔見せるな拓夫」 俺にとって死刑にされたのとおなじみだった。何故! 「秋斗!」 秋斗は見なかった。「秋斗… たが拓也涙した。 もし明日死んでしまうとして
  • 6-819
    よりによってなぜこの上司 よりによってなぜこの部下  昔の友人達との集まりの帰り、何となく車に乗る気分にならずに久しぶりに電車で帰る事にした。 終電間際の慌ただしい駅の構内をほろ酔いで呑気に歩いていたら、ふと背後から近寄ってきた人物に肩を組まれた。 顔を見合わせたが、知らない男だ…酔っぱらいか?それともやはり知り合い…などと混乱しているうちに、 いつの間にか後ろにも二人、あっさりと人目に付かない場所に誘導されてしまった。 「…おっさん何やってんの?つかマジ何したらこんないいスーツ着れんの。」 「すっげー、俺らどんなに頑張ってもこんなカード一生持てねぇー」 無精髭をはやし目立つアクセサリーを身に付けて体格もそれなりにいい彼らは、 私の鞄を物色しながら些細な事でいちいち笑い声を上げる。 私は…情けない事にただそれを見ていただけだった。私が呆然としていたのは、 もち...
  • 9-819
    遊び人×まじめっこ 「嫌だ」 「え。何で?」 「こんな昼間から」 「いいじゃねーか。今日休みだし」 「ここは居間だ」 「布団は外に干してるじゃん。ソファのが楽だろ」 「その前提が既におかしい」 「カーテン閉めてるし外からは見えないって」 「絶、対、に、嫌だ」 「じゃあ布団取り込んでベッド行く?」 「そういう問題じゃない」 「じゃあどういう問題だよ……ちぇー、キスはさせといて、おあずけかよー」 「……お前って」 「ん?」 「日曜の昼間にキスしたらそのまま最後までいくのが当たり前なのか」 「当たり前っつーか、好きな相手といちゃいちゃしたいのは当然だろ?」 「……へえ」 「何だよその間。……ったく、お前ってたまに妙なところで頑固だよな」 「……」 「昔もそうだったけどさ。頭良くて真面目だけど融通が利かなくて一本道歩いてるっつーか」 「……」 ...
  • 8-819
    ハリネズミのジレンマ  あるとき、ぼくは――恋をした。  寒い寒い冬の風が吹く頃だ。  背の高い草を掻き分けてご飯をさがしてた僕は、大きな広場に出ていた。  金属の冷たい木がところどころに立つ、大きな広場だ。  ひくひく鼻を動かして広場を歩いていると、ふと僕の耳に大きな大きな声の波が押し寄せてきた。  驚いてぱちんと目を瞬かせる。よくよく見れば、広場の中央に大きな生物が座り込んでいた。  ――ぼくはちゃんと勉強していたから、それがなんなのか直ぐに分かったんだ。  ふわふわの毛を頭の上だけに生やし、不思議な布で体を覆う白い肌の動物。それは、人間、って言うんだ。  人間はね、皮の靴でぼくたちを踏み潰そうとする――って先生は言ってた。だから、ぼくも先生のいいつけどおりに逃げ出そうと思ったんだ。  だけどね、その人間は全く動かない。  あれ、と思ってじいと目を凝ら...
  • 2-819
    telinkoもみもみ もーみもみー telinkoもみもみ もーみもみー そして、姐さん方の心のtelinkoが喜ぶリクどうぞ。↓ 「やめろ!触るな、偽者め!」 「・・・少し静かにしろ。」 「黙れ、偽者・・!!  お前は本当は存在しないんだ・・  シナプスの片隅の欲望が生んだ、妄想に過ぎないんだ・・・!  お前、なんて・・存在しないくせに・・・っあ・・・!」 「ここに俺はいるだろう。じゃあお前の目の前にいる俺はなんだ?」 「違う、違う・・っあ、やめろ、や、やめ・・いやだっ   お前なんて・・・いない・・・いない・・・!!」 「・・・いないと言い張るのなら・・・それでもいいさ」 「あっうぁ、ああ、嫌だ、嫌、だ、ああ、・・・お前、なんて、」 (本当は存在しないことなんて) (俺がいちばんよく知ってる) ...
  • 4-879
    カキピー ベストカップルである。 他に、彼らを例える言葉はない。 官能的ともいうべき、艶やかな褐色の肌をしたカキのタネと、 思わず歯を立てたくなるような、しっとりと象牙色の肌を持つピーナッツ。 そんな彼らを似合いのカップルと見込んだカメダさんが、 二人を一つ袋の中で同衾する仲に仕立て上げたのだった。 ピリッとエッジの利いたカキのタネを、ピーナッツがまろやかに包み込む。 その絶妙なコンビネーションは、 いわばエネルギッシュなやんちゃ攻めと、包容力溢れる年上受けである。 今や日本中の酒飲み達に愛され、外国人向けのお土産としても人気の彼らだが、 一つだけ、悩ましい問題を抱えていた。 誰かに食されることでしか、交わることができないのだ。 こんなに近くにいるのに一つになれないなんて…! もどかしい思いを胸に秘め、彼らはひたすらにそのときを待つ。 ―...
  • 24-89
    あなたと見る朝日 暗い中、どこからかすずめの鳴き声が聞こえた。 「もう朝か…」 時間はわからない。腕時計は昨夜殴られたときに顔を庇って壊れたし、携帯の電源は切っていた。 誰とも、違う、ただ中根と繋がりたくなかった。 昨夜のことが思い出される。 「ああなんで俺…あんなこと」 キスをした。 酔っていたからではなく好きだったから。 二軒目三軒目と酔いを重ねる毎に中根と高橋の距離は近くなった。 普段あれだけしかめっ面をしている男が、綺麗な歯を見せて笑い、あれだけ近寄りがたい男が、自ずから肩を組んできた。 惚れ惚れするような眉間の皺は消え、代わりに細い睫が笑うたび揺れた。 「だってさぁ、あれはだって…」 中根のせいにしようと頑張ってみても、上手く結論付けられない。 高橋は無機質さを増した携帯電話を握りしめた。 「会社行きたくねえ…」 同居の妹と顔を合わせるのも嫌...
  • 4-889-1
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「ちくしょー!!」 パソコンにかじりついていたKが、いきなり大きな叫び声を上げた。 夕食どきに近所迷惑な奴だ。とりあえず黙らせるか、そう思って振り返る。 だが、先にKの方がパソコンの前を離れて、泣きながら俺に抱きついてきた。 なんなんだ。そう思ってパソコンの画面に目を向けたけれど、 いい加減度が合わなくなってきている眼鏡では、 いくつかのウインドウが開かれているのがおぼろげに見える程度だ。 どうせもう外出しないからと、コンタクトを外してしまったのは失敗だったか。 仕方ない、まずは奴を落ち着かせよう。 「落ち着け。どうした」 「お、俺……ちくしょう……」 「いいから落ち着け。泣くな。そして説明しろ」 今度はどんなくだらない理由だ、と言いたかったがそれは呑み込んで...
  • 17-819
    絶叫系男子 「今日は平日だし、そこそこに空いているのも当然だろうな」 「そうですね!」 「タモさんを目の前にした観客になるな。で、俺をここに連れてきてどうするつもりだ」 「普通、遊園地って行ったら遊ぶもんだと思うよ」 「そりゃそうだけど、男二人で仲良く遊ぶってのもどうなんだ」 「馬鹿だな、女の子と来たらジェットコースター三昧なんて出来ないだろ。お前も嫌いじゃないよな?」 「そりゃ嫌いじゃない。別に特別好きでもないけど」 「またまたー。ほらほらさっさと行くぞ。丁度時間になるっぽいし」 「もう勝手にしろ……」 「あードキドキする!すっげードキドキする!でもこのドキドキがいい!」 「変態か」 「おっ、出発するって。ほんの数分だけどドキドキだね!!」 「ちょっと静かにしろよ……うおっ」 「出発ー!」 「すげえ!こええーー!」 「……っうわ…...
  • 16-819
    おしゃべりワンコ系×無口素直クール 「ね、ね、ね。アイス、スイカとメロンがあるんだけどどっちがいい?オレはねースイカがいいかなぁ、いや今日はあえてメロンかな?うーん迷う。どっちにしよう!ね、シュウは?」 「・・・・・・どっちでもいい」 「えええ。あ、じゃあオレはスイカにするから、シュウはメロン食べて。でさ、一口ちょうだい?」 「ん・・・」 シュウの綺麗な瞳が、今はその前髪に邪魔されて見えない。つまらない。 手元の本に夢中なシュウはこっちを見てくれない。つまらない。 ねぇ、つまんないよ、シュウ。 「オレの話聞いてる?シュウ」 「聞いてるよ」 「その本おもしろい?」 「まあまあ・・・」 「オレとその本とどっちの方が好き?」 そう言うと、ようやくシュウが顔を上げてくれた。 黒曜石みたいな瞳には少しだけ驚きの色が浮かんでいる。 いつもほとんど無...
  • 15-819
    海の底 遠くで鳥が鳴いている。僕は、静かに潮風を吸い込んだ。 君と僕が駆け落ち同然に将来を誓い合ったのはずっとずっと昔の事で、 君が病に倒れたのもまた、ずっと昔の事だ。 血族も知り合いも居ないこの土地で日ごと癌に体を蝕まれていった君は、どれだけ心細かったろう。 僕は、少しでも君の支えになれていただろうか。今では知る術も無い。 それでもあの時、僕らは二人で病気に立ち向かっていた。 君を取られぬ様、僕は必死だった。 だが、忘れもしない十年前の今日、君は僕を遺し逝ってしまった。 『君を遺して先に逝ってしまう僕を許して欲しい。』 そんな書き出しで始まった遺書には、墓は要らない、灰は海に撒いてほしい、といった要望が簡潔に書かれていて、最後に、 『君は生きてくれ。生きて、恋人をつくり、幸せな家庭を築いて、僕の事など忘れてくれ。』 と...
  • 10-819
    お互いに向ける感情が恋だと気付いていない二人で 「なあ、俺病気かもしれない。さっきからやたら動悸がして顔が熱い」 「麻疹じゃねえの」 「違うって!ここ何ヶ月、時々こうなるんだよ。もしかしたら何かヤバい発作かもしれん」 「ちょっと額かしてみ。……熱は無いな。気のせいだろ」 「嘘だ。絶対ある。お前の体温が高いんだ、きっと」 「――そういえば、心なしかさっきから動悸が……てめぇ、移しやがったな!?」 「まさか、空気感染……?なんという強力なウイルス。これは間違いなく新種」 「えんがちょ。これ以上近付くな汚染物質め」 「ひでぇ。親友に向かって何という暴言を」 「あー、なんか本当に熱っぽいから帰って寝るわ」 「この上シカトかよ」 『もしもし、俺。今どこだ?』 「さっき駅に着いたとこ。何かあったのか?」 『あのさ。お前が帰った途端に治ったんだけど、これってお前...
  • 28-819
    豆×さや この場合豆は究極のヒモ、さやは何人かの男を抱え込む寂しがり屋のビッチだと言えるでしょう。 豆達は一様にさやに向かって「テメェの価値なんて俺がいてこそのもんだろうが」と言い放ち、 あくまで“自分がお前といてやってるんだ”というスタンスを崩しません。 さやは自身の価値を悟っているし豆達のことを心から愛しているので何も言い返さず、 言われるままに豆達を優しく保護し続けています。 豆達の気まぐれの優しさがあるだけで、さやは寂しさが満たされ生きていけるのです。 豆達はお互いにさやが他の男を抱えているのを知っていますが、さやのことが満更でもないので仕方ないと思っています。 食卓に並ぶ日、さやは豆達と離れたくない思いでいっぱいですが、豆達は最後まで冷たく「じゃあな」と軽く去っていきます。 けれども豆達は人間に喰われるのがどれだけ辛く苦しいものか知っていました。 「俺...
  • 18-819
    雨でシャツが透ける  近頃暑い日が続いていたが、今日は昼前から降り出した雨のせいで寒いくらいだった。  赤井が部活の練習を終え、着替えて帰ろうとした時も、随分と弱まってはいたが、まだ 止む気配がない。汗をかいた体に外の空気は冷たくて、赤井は身震いした。傘を持ってき ていない赤井が体育倉庫に投げ込まれたボロ傘の存在を思い出し、取りに行くと、倉庫の そばの木で雨宿りをする少年がいた。  友人ではない。しかし赤井は彼を知っている。 「えーと、黒部?」 「……赤井。同じ、クラスの」  俺のことなんか知ってたのか、と少し驚いた。去年、今年と続けて同じクラスだったの に、授業以外でこいつがしゃべる所を見たことがない。虐められているわけではなさそう だが、彼は孤立していた。 「何してんの、お前」 「待ち、合わせ」  傘もささずにどれだけここにい...
  • 25-819
    必死過ぎた告白 「こーや!かえろう!」 「うん。まって、道具箱てさげに入んなくて」 「はーやーくー!」 「ちょっと待ってね、あ、入った」 「よっしゃ!サッカーゴール確保するぞ!ダッシュ!」 「ダッシュ!」 「え、もう5時!?嘘だ!」 「おなかすいたしねぇ」 「嘘だ!」 「鐘なったよ、かえらなきゃ」 「嫌だ!」 「だめだよ暗くなっちゃうよ」 「だめ!こーやもかえっちゃだめ!」 「だってごはんたべないとしんじゃうよ?なんで?」 「だってあしたから夏休みだし!こーやとあそべないし! おれこーや好きだからずっとこーやと学校にいる!だからかえっちゃだめ!」 「はは、けんくんないてる。おもしろい」 「おもしろくない!ふざけんな!ばか!あほ!」 「だってもうにどと会えないみたいなんだもん。夏休みでも学校きてあそべばいいじゃん」 「あ...」 「ぼく...
  • 21-819
    夏祭りの思い出 綿菓子でベタベタになって かき氷で舌を虹色にして 一番の思い出は、神社裏で、ひとつの大きな林檎飴を二人でかじったことだ。 その流れで初めてのキスをされた。よく覚えている。 「甘酸っぱい思い出だー」 仕事帰りに浴衣を纏った女の子たちが、下駄を軽やかに鳴らしながら歩いているのを見て、今日が地域の夏祭りなのだと知った。 高校2年、彼と結ばれて初めて行った夏祭り。その思い出を逡巡しながらひとりごちる。 「夏祭り」 連絡はない。というか、一人でだってここ何年も夏祭りなんて行っていない。 どうせ今年もいつも通りだ。自分に言い聞かせながら帰路を辿る足を速めた。 「うわ、なにこの匂い。」 安いアパートはドアを開ければすぐにキッチンだ。外から明かりが見えたから、彼が来ていることは分かっていた。 それにしてもこの甘いにおいは… ...
  • 20-819
    さよならの季節 もう少しで4月になる。 卒業生は新入生や新入社員となり、 彼らはさよならの言葉を残して新たな旅立ちを迎える。 丁度12年前の今日、卒業式の日、私は大切な友人と別れを迎えた。 高校時代の3年間、初対面から、ひたすら眩しい彼の笑顔に惹かれ続けていた。 地味な私と違って彼は明るく賑やかで、友人も多く、私の記憶の中では彼の周りにはいつも側に誰かがいた。 それなのに、何処が良かったのか彼は私をいたく気に入り、私にだけ、やけにくっついて回った。 彼は私を純粋に、本当の親友のように扱ってくれた、そう思う。 そして、私は親友という文字通りのその関係が心底から、辛かった。 「ずっと好きだった」「もう親友では居られない」 私は彼に想いを告げた。もうそれ以上行き場のない想いを抱えては居られなかった。 「知って欲しかっただけだから」 ...
  • 22-819
    こんなお姿になって 「ああ、なぜこのようなお姿に…!姫、愛しの我が君よ!願わくばこの口づけに、黒き魔法が消え去らんことを…!」 「……」 「…はいオッケー!いやー、いいよ谷口!完璧!最高!」 「そうか?」 「おう、文句なし!オスカーも真っ青!本番もこの調子で頼むわ!」 「ん、わかった」 「長谷、お前は鏡見て来い」 「う…」 「あのな、お前がひ弱で大道具できないわ不器用で小道具やれないわドンくさいわセリフは棒だわっつーから一番セリフの少ない姫役にしたんだぞ! ただ呪い殺されてるだけの役なんだぞ!発表時間の3分の2以上は棺桶ん中で寝てるだけだぞ! それがなんでまともにできないんだよ死んでる姫がそんなに顔赤くなるわけねえだろ顔洗って来い!」 「わ、悪い…」 「はぁー…」 「長谷!」 「谷口…」 「ごめんな俺、顔近かった?」 「いやいいよ、キスシ...
  • 13-819
    自称親分×無理矢理子分 「ねえ、今日もやるんでしょ親分! 連れてってくださいよ」  金曜日、仕事を切り上げてロッカールームに向かう俺に、後輩がすりよってきた。  ないはずの尻尾をびちびちと振り回しているのが見えるようだ。 「だめ。お前弱いもん」 「えー! それじゃ永遠に加われないじゃないですか! やらなきゃ上達しませんて!」 「うるせ。よそで修行してこいよ」 「オレはもう親分を心の師匠と定めたんすよ!」  親分なんだか師匠なんだかはっきりしろよ、と俺はジャケットに袖を通しながら後輩をにらんだ。 「だいたい、お前顔に出すぎんだよ色々と。おまけに戦略もなにもあったもんじゃねえ。  俺らのやってるチップの天井で、30分もたないだろ。向いてねえよポーカー」 「そんなあ」  じゃあ、見てるだけでいいですから連れてってくださいよう、と彼は訴える目つ...
  • 24-899
    ドMな主に逆調教される従 セックスが苦痛で仕方ない。そう思ったのは初めてだった。 割とあらゆることの敷居は低い方だった。 だから親の借金のカタに使用人にされようと、そこの同い年の坊ちゃんに無理難題言われてコキ使われようと、さして苦痛ではなかった。僕は器用だったから。 外の世界を知らないことにも不満はなかったし、今じゃ顔も忘れた両親のことなどもっとどうでもいい。 そんなことに思いを馳せるより、冬の暖炉に炭をくべたり、夏にクソ坊ちゃんを仰いでいることの方がよほど意味があると思えた。 一生ここで、自分のできる限りのことを果たして生きようと、そう思っていたのに。 先週金曜日、20時17分、旦那様と奥様は会食でお出掛けに。お嬢様は海を飛び越えラムBBQに。 そして借金のカタ系男子である僕の目の前には、どんぶらこどんぶらこと、それは見事な桃に似た、お尻が白く揺れていたのです。 ...
  • 24-839
    お前の方がかわいいよ  ぎゅう、と正面から抱きつかれ、俺はのけぞった。 「ゆーすけ君マジかわいい」  抱き潰すつもりかと思うほどにぎゅうぎゅうと締められる。痛い痛い。マジで痛い。 「あっ、ご、ごめんね」  抗議の声を上げればあっさりと腕は離れていった。  それでも顔は近いままで、その表情はといえばまるで飼い主に叱られた犬を連想させる、哀れっぽい感じのものだ。 「痛えよ」 「うん……ごめんね、ゆーすけ君」  幼馴染みのコイツは、同い年にも関わらず俺より20cmも背が高い。  どこで差がついたのか分からないが、多分、遺伝だろう。  そういう事にでもしておかないと理不尽な怒りがふつふつとこう、頭を擡げてくるので仕方ない。  なんで俺はこいつより背が高くならなかったんだ、と。 「分かってんならいい」 「……うん!」  ほら、と腕を広げ...
  • 24-859
    軽薄な大阪弁受け 午後11時過ぎ。その男は路地裏のポリバケツの影に隠れるようにして座っていた。 座っていたというか、転がっていたというか。 「何をしてるんだ」 見下ろしながら問うと、男は顔を上げ眩しそうに目を細め、右手をひらひらと振った。 「あれ。新堂さんや。久しぶり。こんばんは」 呑気に挨拶を口にしながら、少しだけ身体を起こしている。動きが妙に緩慢だった。 奇遇やね、などと嘯くので「奇遇だな」と返してやる。 この場所は俺の家から50メートルも離れていないので奇遇も何も無いのだが、敢えて触れない。 「何をしている。散歩か」 もう一度問えば、男はにやりと笑った。 「かくれんぼや」 「へえ。鬼は」 「怖いおっさんが七、八人。いやマジでな、ほんま鬼やであれ」 冗談めかした口調だったが、嘘ではなさそうだ。 よく見れば唇の端が切れている。暗さの所為で一目では分から...
  • 24-849
    高額賞金首と賞金稼ぎ その世界は全てにおいて貧しかった。 警備隊が腐敗、自警団が役立たずの代名詞として謗られる世で、 唯一発展を遂げたのがハンターギルドと呼ばれる組織だった。 どんな軽犯罪でも、どんな貧乏人でも、報酬らしきものを用意すれば誰でも憎い相手を賞金首として手配できる。 ギルドに登録されたハンターが、その報酬のために人を狩る。 依頼者とハンターの間に立つ、情報を統括する中継ぎ人として、それは存在していた。 「旦那ー」 「………………」 「腹減ったぁー。ひもじいよ、旦那ぁ」 「…………うるさい」 体を引きずるようにだらだらと歩いている男に力のこもらない苛立ちをぶつける。 もう数日、何も食べないまま歩き続けていた。 果てしない荒野の中、思い出したようにぽつぽつと点在する町までまだ距離がある。 「やばいよ旦那。今度こそ年貢...
  • 24-889
    平凡攻×変人受 僕には変わった友人がいる。 彼は周囲の人が興味を持つことに一切関心を持たないで、周囲の人がどうでもいいと思っていることにのめりこんでいるんだ。 3年前には本と睨めっこしながら僕と自分のマフラーを編んでくれた。 ついでに手袋と耳あてと帽子も作ってくれた。 それは別にいいんだ。温かかったし嬉しかったし。 けれども彼はそれを全部犬で作ったんだ! まあ、犬と言っても皮を剥いだわけじゃないんだけどね。 ブラッシングして溜まった犬の毛を集めていた彼はネットで偶然見つけた犬の毛でセーターを編んだ人を見てコレだ! と思ったらしい。 毛を洗って、梳いて、紡ぎ車をドイツから輸入し――この異様な熱意はなんなんだ!!――毛糸にしてから編んだらしい。 普通に買えばいいじゃん。 マフラーとか手袋とか耳あてとか帽子を合計した金額より紡ぎ車1台のほうが絶対高いよ? ...
  • 24-879
    ワンコ攻め×ヤンデレ受け 「ほげええええ!諏訪ちゃん!?どうしたのその包帯!」 「……階段から落ちた」 「今度は階段!?先週は原付と衝突で、その前は草野球のホームランボールが直撃だったよね!?」 「…………」 「諏訪ちゃん運なさ過ぎだよー!お払いとか行った方がいいよぉ…」 「…大丈夫だから…いつものおまじないして」 「あ、うん。じゃあペロペロするから包帯とって?」 「ん…」 「うわぁ!痣だらけだぁ…痛そう」 「ん…だから早くおまじない…」 「わかった!」 「……っ!…んっ…」 「あ!ゴメン!痛かった?」 「…平気。だからもっとして…」 「え?あ、うん」 「これで全部終わったかな?大丈夫?痛くない?痛くない?」 「ん…アキのおまじないのおかげで早く治りそう」 「よかったー!あ!あんね!来週の日曜に竜さんたちと一緒に残暑見舞いBBQやるんだけど来...
  • 24-869
    潔癖症だった攻め 「お前がはじめてなんだよ。家の中まで入った同業者って」  家に招かれて、リビングまでの少しの距離を移動している途中で、ぽつりとそうこぼされた。 何でも前野曰く、他人にトイレを使われたりするのが嫌なんだそうだ。 へえ、と相槌を打って、右手で座るよう促された場所に着席する。 「茶いれてくる」 「あ、いいのに別に」 「うっせー遠慮すんな! 緑茶でいい?」 「なんだよそれ、じゃあお願いします」 妙なツンデレらしき反応に苦笑で返すと、前野は満足げな表情を見せてキッチンに消えていく。 思わず部屋を探ってしまいそうな視線をどうにかおさえ込んで、彼の帰還を待った。 「そういや前野さー」 「なにー?」 「お前、潔癖症なの?」 「あー、ちょっとあるかもねー。ぶっちゃけ他人に自分のもの触られるのあんまり好きじゃない」 あらかじめ用意してあったのか...
  • 24-829
    攻めにべた惚れな無表情受け 酒を飲むのは好きだった。 垣間見える水原の本音がたまらなく愛しくて。 常にむすっとしてつまらなそうな、堅物を絵に描いたような水原が、ひょろ長い図体を納めようとしてソファでもぞもぞと転げるのを見るのが好きだった。 「水原、寝るならベッドに行けよ、使っていいから」 「んー…」 いつもそう、きっと今日もそう。このままソファで寝付いて寝違えて、明日にはすっかり首を痛めて一日を過ごす。 それでもいつもと変わらぬ、少し不機嫌そうな無表情のまま。 「水原、起きないとチューするよ」 普段なら怒られるような幼い言葉遣いにも、「あー」と呻いて応えただけだった。 「水原ぁー?」 肩を引いて無理矢理に頬に口付けると、「…ふへ」と小さな声が聞こえる。 「…なんだよそれー、かわいすぎるでしょー」 少し頭を冷やそうとテーブルに向き直る。...
  • 4-889-2
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 書き込み完了!さぁて、次はどんな萌えリクが来るかな?と期待しながら 掲示板を閉じようとマウスを操作した瞬間、背後にとんでもなく冷ややか な風が吹いた。 全身が凍りつくのを感じながら後ろを振り返ると、いや振り返るまでも無 く、俺の顔の横には奴の顔があった。 「『 880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます』・・・・・・?」 「や、ややややっ山田!?」 「なにこれ、どういうこと?」 「なんだよ、ビックリすんじゃん。てっきり妖怪かなんかの類かと・・・」 「な、どういうこと?」 耳の近くで喋られるくすぐったい感覚に耐え切れず、俺は山本の顔を押し やった。山本は不満そうに眉を寄せ、睨みつけるように俺を見た。 「人が風呂、入ってる間に・・・」 「え?なに?」 山本が何...
  • 3-819-1
    太陽×ひまわり 太陽とひまわり― 神々しい貴方。 貴方は呆れていらっしゃるでしょうね。 僕の思いはあまりに開けっ広げで、人にはからかわれ、花たちからは非難すらされますが、憐れな捕われ人のように僕は自分をどうする事も出来ないのです。 いっそ、イカロスの様に翔んで貴方の炎に焼かれたい。 でも、大地の囚人でもある身ではそれも叶わず貴方への想いは募るばかり。 どうか、地上にあるこの身をそこから、貴方の熱で溶かしてくださいませんでしょうか。 貴方は何も仰らない。貴方はいつもあらゆる者に光を注いでいる。 ――晩夏――― 僕は今、死体のように無様に横たわる。 夏中、貴方への恋慕でこの身を焼き付くした焦げた死体のような僕の種は、貴方の憐れみの具象化なんですね。 ついばまれるこの身。ついばむのは、鳥でも獣でも、人間でもない、貴方。 貴方の逞しい手が...
  • 8-819-1
    ハリネズミのジレンマ 知ってるか否かの前に 間違えてるよ、ソレ。 と、小さく肩を竦めると 「んん?」 間抜けな声を上げて、ヤツがきょとんとした表情を浮かべた。 「…それ、ハリネズミじゃねーって」 「え?え?」 溜息が出る。 「ヤマアラシだよ…」 「ええっ!ハリネズミじゃねーの?」 …夜中なんですが。 リアクションでけーよ。煩い。 「うん。ハリネズミじゃねーの…」 だから俺はごく静か小さく応える。眠い。 「ヤマアラシ?」 「…ヤマアラシ」 まだ疑わしそうな声に、厳かに言い返せば ちぇ、なんて ヤツは似合うような似合わないような、少し拗ねた顔をして 「おまえは何でも知ってんだなぁ」と、次の瞬間には笑顔。 なのに。 「そーでも無い…」 気恥ずかしくなって、さり気なく視線を逸らし目を閉じかけた俺に 「あぁ、そういやそーか。ふはははっ...
  • 23-819-1
    朴訥無口×わかりにくくデレる俺様 「この小説って実体験が元になってんの?」 「あ、いや、違う・・・」 「ふーん。お前も兄貴亡くしてるだろ?この辺のカズヒコの喪失感って自分で感じたことじゃねーんだ」 「違うけど、その時の担当さんも少し私小説ぽいって・・・」 「やっぱ言われたのか。つか私小説でよく賞もらえたな」 「その後の展開、俺と全然違うから…」 「確かに、年齢誤魔化して夜働くタイプじゃないもんな。じゃあそんな見当違い言われてムカつかなかったのか?」 「・・・少し、似せた自覚あったし」 「兄貴のことくらいだろ?今の編集の・・・児島さん?お前の意向とかちゃんと汲めてんの?てかお前そんな言葉ったらずで  よく小説家なんてなれたと思うわ。賞までもらってそこそこ売れて、この度めでたく処女作が映画になって、幸運残ってんの?」 「どうだろう・・・」 「まあ、俺と付き合ってる...
  • 26-819-1
    旅行先で出会った運命の人  あいつとは沖縄を旅行中に知り合った。今から六年前で、あいつは卒業旅行中の大学生。  馴れ馴れしく写真撮影を頼まれて、成り行きで会話をしていたらお互い近くに住んでいることが判明し、  微妙に付き合いが始まって、いつの間にか恋人になっていた。  俺はその頃から、男の癖に占いに凝っていた(性差別的な文言だが)。  当たると噂の占い番組で、「今週の天秤座は旅行が吉。運命の相手に会えるでしょう」といわれたことが、  旅行の一つのきっかけだったほどだ。  両思いになってからそれを思い出し、俺は他愛もなく、そして年甲斐もなく浮かれた。三十前の男がである。  男同士であることも、年が八つほど離れていることも、その時は大したことには思えなかった。まあ、若かったのだ。  付き合って三ヶ月くらいした頃だったか、俺は、酔った勢いで、その占いのことを喋ってしまった...
  • 15-819-1
    海の底 ひい爺さんが死んで3ヶ月。 俺はチャーターしたクルーザーで沖縄の海にいた。 ひい爺さんは、白内障の手術もしたし、補聴器も手放せなくなり もしたし、足腰も弱くなったけれど、80歳を越えてもボケたり せずに新聞を毎朝隅々まで読むしっかりした老人だった。 ゲイカップルの俺と淳司にひい爺さんは最後まで味方をしてくれた。 カミングアウトして親父に勘当されそうになった時、「ワシの所有 株は全部正樹に生前贈与する。それでも勘当できるもんならして みろ」と言い放って親父を黙らせた。 言った通りに生前贈与の手続きをすことになった時ひい爺さんは、 「正樹と二人きりで話がしたい」と言い出した。 親父も弁護士も部屋から追い出すと、ひい爺さんはセピア色の ボロボロの写真を出した。 それは男たちの集合写真だった。 皆、そろいのつなぎ姿だ。襟元に白いマフラー、頭...
  • 12.5-819
    来るの遅過ぎだよ 黒く縁どられた彼の顔は見たこともないほどの満面の笑みを浮かべていた。 陸上部のユニフォームを着てるから、きっと大会かなんかのとき撮ったんだろう。 ああ、そういえば。あいつは陸上部だったっけ。 友達と知り合いの中間、俺達の関係を言葉にするとしたらそんな感じで 話したことはあってもアドレスなんて知らないし、ふたりきりになったらまず間違いなく沈黙。 だから昨日急に俺んちにやってきた時だって冷静に考えてみればなんで場所知ってんだよ て感じなんだけど、とにかくそのときはうわ、なに話そう…そればっかり考えてて。 だから宿題のことだのクラスの女子のことだの色々頭をめぐらせている俺の腕を掴んで スキって言ったかと思えばたちまちキスしてくるなんてことはまったくの予想外な上に そんな状況で俺の身体は拒否するどころか縋るようにあいつに抱きついて、俺も。 なんて...
  • 24-809-2
    武家×軽業師 〈中世〉 高麗や唐土や天竺や波斯よりさらに西の果てから使節団が来朝した 俺は北面武士として、使節団が宿泊する屋敷の警備に当たっていた 端的に言うと一目惚れだ 使節団への歓迎の宴席で警備をしていたときだ 使節団に同行していた軽業師の少年が歌舞を演じ始めた その美しさは言葉に表しようがなかった 髪は見たこともない白金色 瞳は秋晴れの澄んだ空の色 口さがない輩は「鬼のようだ」などと陰口を叩いていた 俺にはまさに極楽で神仏に仕える小姓の如く見えた そして、その日の夜に警備係の職権を悪用して……夜這いした 無理矢理に向こうの獣の毛皮で織られた服を剥がすと下には雪のような肌が広がっていた 俺は夢中でその雪原に手と足と舌で跡を付けた 本当はどう考えているかは分からないが、はっきりと俺を拒んでないのも確かだった それから連夜に渡って俺は体を重ねた しか...
  • 24-809-1
    武家×軽業師 軽業師とお武家様は本来身分が違う者同士。 出会いは町中。軽業師が綱渡りをしている場にお武家様が出くわす。 軽業師の華麗な技にお武家様は虜になってしまう。 そのうち軽業師の方も武士が気になってきて、ある日声をかける。 そしていつしか軽業師から誘って一夜の関係をもつ。幸せな一夜を過ごす。 だがお武家様はそれ以降、町には来なくなる。傷つく軽業師。 軽業師の技が話題となって、あるお殿様の屋敷で芸を披露することになった。 だがそこは軽業師を馬鹿にするようなゲスな武士ばかりの宴だった。 軽業師は顔に笑みを浮かべつつ武士に対し腹立たしい。特にお殿様は下品な人だった。 綱渡りの最中に武士の中に、関係をもったお武家様を見つける。 動揺して綱から落ちる。見ていた武士たちからは馬鹿にされる。 宴の後、心配したお武家様が軽業師の様子を見にくる。 ...
  • 24-869-1
    潔癖症だった攻め 自分以外のものが不潔に思えて仕方のない時期があった。 例えば、ジュースの回し飲みなんてありえなかったし、ちょっとした物の貸し借りすら苦痛だった。 携帯用の除菌スプレーがお守り代わりだった。 潔癖症を隠したくて周囲から一歩退いていたら、「気難しい孤高の人」というレッテルを貼られていた。 お前と出会ったのは、その頃だ。 明るくて人懐っこくて、ぎこちない態度の俺にも屈託なく話しかけてきた。 お前は俺の対極にいて、俺の理想だった。うらやましかったし、憧れていた。 興味があると言っていたCDを貸した。「すげー良かった!」と笑顔で言われて、つられて笑った。 寒い冬の日、風邪気味だと言ったら巻いていたマフラーを渡された。ほんのり残った温もりが心地よかった。 お前の部屋で、二人で鍋をつついた。その日以降、誰かと同じ器から物を食べても平気になった。 ...
  • 24-419
    いつもと違うお父さん ぼくのおとうさん いちねんさんくみ さいとう りょうた ぼくにはおかあさんがいません。 だけどおとうさんとおにいちゃんがいます。 おにいちゃんはほんとうのおにいちゃんじゃないけど、いつもおうちにいます。 ぼくは、おとうさんもおにいちゃんもだいすきです。 おとうさんがおしごとでおそいときも、おにいちゃんがあそんでくれます。 このまえおとうさんとおふろにはいったとき、おにいちゃんがはいってきました。 ぼくはたのしかったけど、おとうさんはおかおがまっかでした。 なんだかいつもとちがって、おもしろかったです。 おにいちゃんはぼくたちのかぞくです。 これからも、かぞくさんにんでなかよくしていきたいです。 矢追小学校、1年3組の教室 授業参観で保護者が見守る中 元気よく発表された作文に スーツ姿の二人の男性が顔を真っ赤...
  • 24-199
    猛獣使い 猛獣使い……人には懐かないとされる猛獣をいとも容易く手懐け、 それを連れてあてどない旅を続ける孤高の存在…… 人々はそんな猛獣使いに、ある一種の憧れと畏れを抱いていた…… 「よぉ、"蛇使い”のエルじゃねぇか!相変わらず辛気臭ぇ顔だな!」 「"獅子使い”レオンか……」 馴れ馴れしく話しかけてきたこの男、馬鹿みたいに陽気で話していると疲れる…… --こいつと会わないように、反対方向に旅してきたのに…… 何故出会ってしまったのか……エルはふっと、溜息をついた。 「どうした?また今日はいつにもまして元気が無ぇじゃねぇか」 「いや……この暑さでチャッピーの元気がなくてな」 「ちゃ、チャッピー……?」 「……あぁ、あいつのことだ」 エルが指さした先に居るのは、大きな白蛇……エルの相棒だ。 「……あいつチャッピーって顔か!...
  • 24-619
    自転車二人乗り 「……違う。確かに俺は自転車で二人乗りがしてみたいといったが、これは違う」 「何が違うんだ、立派に二人乗りしてるだろ」  そう、確かに今俺が乗っているこれは自転車に分類される乗り物で、そして二人乗りだ。  だから決して間違っているとは言えない。けれど、それでもこれは違うと叫んで許されると思う。 「普通、二人乗りがしたいってリクエストに対して『二人乗り用自転車』を持ちだしてくるか!?」  普通の自転車より長い全長。小さめの車輪。縦に2つ並んだサドルとペダル。  休日に突然呼び出された俺の前にこいつが嬉々として出してきたのがこの面白自転車だった。  こんな漫画でしか見たことのない自転車が普通に存在するということにまず驚いたが、 自分が発した「二人乗りをしてみたい」という発言に対する答えがこれだということに更に驚いた。 ...
  • 24-319
    フェラにまつわるエトセトラ エトセトラですねー。 まあ、先ずはごっくん。 無理矢理飲ませるのは、鬼畜攻めは勿論、ピュアなヤンデレにも任せてみましょう。「僕の命たちが君の全身に廻ってるって考えるだけで嬉しい…」受けはこの辺から攻めの異常に気付いてる、けど離れたくない…ヤンデレ×ヤンデルいいよね。 次は、顔射。 エロばか×ツンデレ。 「やべーエロい!一度したかったんだよね!」「ふざけんな!」こんなやり取りは素敵だ。あと、この時の受けは色黒であってほしい。何でかって?分かるだろ。 最後に、受けが無理矢理。小悪魔→←真面目。 「ヤっていいんだよ?ほら、おっきくなった。だから、体だけでいいから…」って泣きそうに迫りなよ。幸せになれよ、すれ違いハッピーエンド万歳。 あと番外編では、バカップルのいちゃつきで読みたいな。ないんだよね、抜きっこはあっても、ふぇ...
  • 24-719
    負けるわけにはいかない勝負 幼なじみのあいつと再会したのは、なんの変哲もない、家具もない、監視カメラが四方にあるだけの、のっぺらぼうみたいな部屋の中だった。 一瞬で息が止まる。そんな再会。 負けるわけにはいかない勝負だった。負けた方には死が、生き延びた方には生が与えられる。それもまた、次の勝負へと送り込まれるだけの 生なのだけれども。だがそこでまた勝利を得られれば、その命は生き延びる。果ての無い次の勝負の時へと。 俺はもう、その繰り返しに疲れていた。気が狂いそうだった。涙だけはどうしても流れなかったけれど。 監視カメラの向こうには、この勝負の行く末に金を賭け、上質の酒を飲みながら愉しんでいる奴らがいる。 反吐が出そうだ。 わざと負けたなんて、ばれるわけにはいかない勝負だった。俺はうまくこなしたと思う。 床に膝を折った俺を見降ろして、...
  • 24-919
    顔以外は完璧な男と顔しかとりえのない男 「お前、いつでも主夫になれるな。炊事洗濯ゴミ出し気配り、いいね、羨ましい」 と、言われつづけてはや5年。 今の所、主夫になれそうな兆しは無い。 というのも、自堕落の見本のような友人の方が、圧倒的にモテるからだ。 身長やその他学歴、趣味や色々共通点も多いが、人並みの俺と、目の覚めるような男前美形の友人が並べば、 大体アイツに目がいく。 女性関係にだらしなく、自炊もしたことのない、 それでいてヒモのような生活をしている友人だが、何事にも不自由していないのが、若干、羨ましかった。 「そうか?俺はお前の方が羨ましいぞ。一人でも生きていけるし、なにより主夫になれる」 肉じゃがを摘みながら、友人は笑ってさらに付け加えた。 「好きな奴を胃袋から掴めるなんて、最高だろ」 笑顔で心を鷲掴みにする方が、凄いだ...
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