*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「25-189」で検索した結果

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  • 25-189
    傭兵 やっぱり、傭兵なんてロクなもんじゃねぇや。 腕っ節にはそれなりに自身もあり、運もあった。 気付けば『黒の狂犬』なんて呼ばれて名も知れ渡り、荒稼ぎして、そこらの貴族連中よりずっと賢い生き方をしてるんだと粋がっていた。 それが今となってはザマだ。 掃き溜め以下の場所に死体と一緒に打ち捨てられた俺自身、何で生きてるんだか… こんなことになってまで運の良さを発揮されても困るってもんだ。いっそ、おっ死んだほうが良かったのにな。 血の匂いと腐臭がめちゃくちゃキツくて、生きてた喜びなんて微塵もねぇ。 「あー、血が足んねー…」 意識がだんだん遠のいていく。 クソみたいな人生をクソみたいな場所で終わらす。それもお似合いかもしんねぇな。 最期は一人で静かに死ねるってんだから、上等なもんだ。 「おい、そこのゴミ。………死んだのか?」 一人で静かに死ねる。 その...
  • 5-189
    敬語眼鏡×アホの子 「あれ、イインチョ何よ? 俺に何か用~?」  痛んだ茶髪をカラーゴムで括ったアホの子が、菓子パンを頬張りながら椅子に座ったまま敬語眼鏡を振り仰ぐ。  馬鹿な子ほど可愛いというやつで、案外と皆に可愛がられていたりする彼だったが、密かに勝てない相手がいた。  それが、敬語眼鏡だったりする。何故ならマイペース、そして穏やかに強引。上手い事転がされて、いつの間に か思うように動かされている事が多かった。  そして、今日も。 「アンケート、提出していないの君だけですよ。……って、何て顔してるんですか」  呆れ顔で眼鏡の蔓を押し上げながら、膝に落ちたパンくずを払ってやる敬語眼鏡。 「あんがと~。イインチョほんとに優しいねぇ」 「おや、有難うございます。優しいだけとは限りませんけどね。で、アンケートは?」  口元を指先で拭ってやりながら、もう一度聞き返す...
  • 15-189
    結婚するAとAに片思いしていた幼なじみのBとC 「俺さ、女でなくてよかったなーって今思ったよ」 今日一日馬鹿の一つ覚えみたいに貼り付いた笑顔を見せていた佐藤は、マイクのスイッチを切ってテーブルに転がすと、ぽつりと呟いてスツールに腰掛けた。 けたたましいクラッカーの祝砲で幕を開けたニ次会も半ばに差し掛かり、次の余興までの短い歓談タイムに突入したところだった。 「好きな奴がお前も幸せになれっつってブーケなんかくれちゃったりしたらさ、そんでめっちゃ綺麗に微笑んでくれたりしちゃったら、おめでとうって言わないわけにいかなくなるじゃん」 佐藤は手近にあった受付名簿か何かを引き寄せて、それに視線を落としながら囁く。 少し硬くなったその口許から、店の奥、中央に並んで座る二人を囲む女性陣のうちの一人が手にした、丸い花束に目をやる。 いましがた行われたブーケトスで獲物を獲得した...
  • 5-189-1
    敬語眼鏡×アホの子 「俺、お前が殺されたら真っ先に疑われるかも」 「…何てこと言うんですか貴方は」 おとなしくテレビを見ているかと思えば彼は急にそんな脈略のないことを言ってきた。 「えー!だって火サス見てると考えない?自分が殺されたらーとか誰かが殺されたらーとかさ」 どうやら彼の中ではきちんと繋がっているらしいがこちらにはさっぱりだ。 「考えませんよ、そんな物騒なこと」 「マジで?俺なんか月のない夜に背後から襲われたときの為に、ダイイングメッセージまで考えてあるのに。」 この都会のド真ん中に住んでいて月のあるなしが襲われやすさに関係があるとは思えないのだが。 とはいえ、そんなことを言えば拗ねられるのは目に見えている。 だからと言って聞き流しても確実に拗ねる。ということで無難なところ。 「そんなものを考えるより、身...
  • 12.5-189
    思い出すために 異音がするビデオデッキに不安を覚えたが、今回もなんとか無事に再生できた。 画面の中で大写しになった歯を見せて笑う口元、 それが誰のものかなんて考えなくても分かる。 映像はとうに古くなって黄ばんでいたけれど、俺の中ではいつだって原色のまま変わらない。 ”お前達って友達のくせに仲いいよな” いつだったか誰かにそう言われて、苦笑いしながらも誇らしいような気持ちになったのはいい思い出だ。 けれども今、「友達」の俺に残っているのはこのビデオテープだけだった。 気づけば暗い部屋の中、映像を映し終えたテレビがぼんやりと光っていた。 巻き戻しボタンに手をかけながら考える。 きっと俺はこのテープを壊れるまで、壊れるほど見返すんだろう。 そうやって年々かすれていく思い出を繋ぎとめていくんだ。 いつもの人
  • 4-189-2
    刀と鞘の関係 「行くな!」 と、お前を止めたのは、あれは、何時の時代だったろうか。 「仕方ないんだ。」 お前は泣きながら出掛けて行って、その美しい刃をボロボロにして血濡れて帰って来たね。 あの時、お前は私の中で泣いたんだっけ。 若く美しい剣士だったそうだね。 知ってたよ。 あれは、お前の憧れていた相手。刃先を交し合う度に、お前はあの若い剣士にますます惚れて、煌めきー。 彼の肉を絶つのは、さぞかし辛かったろう。 そして、あれは何時の時代だったろう。 もう人間に惚れるのはよせって言ったのに、今度は、仲間の隊士だから大丈夫って。 そう思って安心してたのに…。 あの時こそは、お前も、もう立ち直れないかと思うほどだった。 こうして古美術商の奥に眠るようになってからは、 今はもう、みんな遠い時代の事だけど。 「そうですね。みんな遠い過去になってし...
  • 4-189
    刀と鞘の関係 「お主も難儀な男だな」 周りの人間はあいつについて俺によくそう言う。 「幼馴染とはいえ、あのような付き合い難い男も珍しいだろう」 時代遅れの剣の道しか知らぬ、そう、まるで抜き身の刃のような俺の幼馴染。 出世にも何も興味がないから上のご機嫌取りなどすることもなく、口から出る言葉身振り態度の全てが白刃の切っ先の如き男。 周囲と関係が拗れたり対立するのはしょっちゅうで、その仲裁に駆り出されるのは幼馴染の俺であって。 ――いつもすまんな ――すまんと思うのならどうして同じようなことを繰返す ――分かってはいるつもりなんだが、どうしても駄目なんだ 抜き身の刃のような鋭さが内に煌く眼差し。ああそうだ、俺は、こいつの―― 「俺はあいつの鞘のようなものですから」 そんな時俺は決まって周りの人間にこう答える。 「鋭すぎる刀にはそれを収め...
  • 7-189
    雨中の銃声 かつかつとしつこく音を立てる自分の革靴に舌打ちしながら、それでも走り続けた。 先行して走る奴の姿は、決して見失わない。必ず俺が捕まえる。 鬱陶しい霧雨は俺のスーツをずっしり重くしてくれたあと、むかつくような大雨に変わった。 でも、だからこそ解った。奴が俺に追いかけて欲しいんだと。 いつまでも開かない、この距離が証拠。 この小路を行って、上手くすれば追い詰めることができるかも知れない。 思いつきだったが、俺の行動は足音で筒抜けなはずだ。でも奴は来る。俺に捕まる為に。 俺が仕掛けた行き先に奴は乗ってきて、確信は深まる。 雨の匂いに混じって海の匂いがする。この先を行けば。 俺が仕掛けた行き先に奴は乗ってきて、確信は深まる。 雨の匂いに混じって海の匂いがする。この先を行けば。 狭い道を抜けたら、そこは港の小さな角だ。 道は倉庫の間を抜ける、俺が来た...
  • 1-189
    女顔細身青年×マッチョオサーン 繁華街の片隅の超弱小ホストクラブ。 なんとか客がたえない理由は、料理が旨いせいと、No. 1の人気のせいだ。 コックの受介さんは、物騒な上腕二頭筋をした恐い坊さんみたいな人。 実はイタリアの庶民食堂で武者修行した、本物以上の料理人だ。 そんな受介さんの賄いを人外魔境的に貪り喰らうのが、No. 1の攻太だった。 客が見たら驚くだろう、女顔の細い男がよくこんなに食える。 変な青年で、客の機嫌を取っている間と喰っている間以外は、仏頂面で本ばかり読んでいた。 受介さんは、少し厳しく攻太に言った。 「水商売でもこの道で生きてくならもっといい店で自分を磨け。  自分の人生に野心と、そして責任を持つんだ。それが男ってものだ」 「・・・野心なんか、持ちたくない」 ハタチにもならない青年のその諦観の表情に、受介さんは驚かされ...
  • 3-189
    非ちゃねら×ちゃねら 「なんだもう我慢できないのか、ここをもうこんなにして」 「オマエモナー」 「こっちもこんなに垂れ流して中がぬるぬる、ぽってり充血してるぞ」 「ガッ」 「なんだ嫌なのか、でもお前の身体はそうは言ってないようだぜ」 「嘘を嘘と見抜けな(ry」 「ほら足上げろ、高くな」 「age」 「中が熱くて、絡みついて、良すぎてもういきそうだ」 「逝ってよし」 「…い…い…いくっ」 「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」 「よし、もう一回戦やろっ」 「がいしゅつです…」 眼鏡とネクタイとスーツ
  • 8-189
    かぶとむしとくわがた かぶとむしといえば、昆虫の王様です 大きくて逞しくてとてもかっこいいですね 一方のくわがた もちろん、ノコギリクワガタのように大きくて立派なくわがたもいますが コクワガタのように小さくてかわいらしい子もいるわけです いつもどちらが強いか争うかぶとむしとノコギリ その理由がコクワガタの「僕のためにケンカはやめて!」とかだったら… そんな三角関係を想像しつつ、とりあえず木の幹に蜜を仕込みつつ鑑賞 新学期
  • 2-189
    追われる者×追う者 ああ、いっそ立ち止まれたなら。 このまま永遠に、俺はあいつの手の届かない位置に居続けるしかないのか。 時折振り返り、俺を追うあいつの姿を確かめているだけのこの状況。 捕らえられてしまおうか、とちらりと心を過ぎる想い。 …けれど。 俺が足を止めた時、 アイツの頭ん中を占めている、俺は消えるだろう。 アイツに追われる為だけに、 俺は走り続ける。 何故、追っているのか? 最初は確かに理由があったのに。 今でも、それは変わらない筈なのに。 けれど。 時折向けられる、アイツのあの瞳の奥の、カゲロウのように揺れる何かが気になる。 …無くなりそうで無くならない、アイツと俺の距離。 アイツを捉えるべく追っているのか、 その『何か』を知りたくて追っているのか。 ...
  • 9-189
    ロボット×少年 この子の頬に触れる我が手の冷たさを幾度呪った事だろう。 この子の笑みに上手く返してやれない我が顔の強張りを幾度呪った事だろう。 しかし今ほど己の存在を呪った事は無い。 己の、人とは違う所を呪った事は無い。 「ずっと…一緒にいられるよな」 笑え。 笑って、『ずっと一緒にいますよ』と言ってこの子を安心させてやれ。 例え三日後、自分が廃棄処分されることを知っていたとしても。 例え自分の、この子への気持ちが廃棄処分される原因となったとしても。 笑え笑えわらえワラエワラ 『申し訳アリマセンガ、ソレハ出来マセン』 <ロボット条例第二十三項:人間に嘘をついてはいけない> ああ。 今ほど機械脳に縛られた己を呪った事は無い。 今ほど、この子を泣かせる己の存在を呪った事は無い。 ...
  • 6-189
    何度繰り返しても。 「だからさ、何でも一人でやろうとしすぎなんだよ。」 今日もあの人が守るゴールを割ることが出来なかった。 しかも真剣な試合とかじゃなくてたかが練習な訳で。 まあ同じチームなんだから当然なんだけどさ。 「でもFWってそういうもんでしょ?」 「まあなぁ、それぐらい自分勝手な部分って必要だと思うけど。 それでじっさいお前は試合で決めてるわけだし。でも…」 そういってまだなにか言いたそうなところをさえぎっていきなりボールを蹴ってみた。 …それでもなんで駄目なわけ!? 「ちえっ。」 「あぶねーな!!」 余裕って感じで笑ってるし。なんかムカつく。 「まだ修行が足りないね。」 いつになったら悔しがらせることができるんだろう?わからないけれど それができるようになるまで俺は何度も何度も繰り返り挑みつづけていくん...
  • 18-189
    堅物×飄々 「いつまでいる気だ」 視線もよこさずに冷たい声で俺に言い放った 少し暗い部屋の中でアイツの顔が青白い光を受けている 「そうだなー、お前の仕事が俺にかまってくれるまで、かな」 わざとアイツの声とは正反対の間延びした声で答えてやる 「それならお前はずっとここにいることになるな。いい迷惑だ」 相変わらずその視線はディスプレイへと向いたままだ 「そーんなつれない事言うなって。早くそれ終わらせて飲みにでもいこうぜ」 いつものように軽い口調で誘ってみた 「お前なら電話一本で相手してくれる奴が見つかるだろう」 「ばーか、今日はお前と飲みたい気分なんだって」 わざとアイツの台詞を否定しない そしてわざといい加減な理由で固める しばらくしてキーボードとマウスの音が止み、代わりに紙を捲る音が響いてきた 「なーなー」 ...
  • 13-189
    昼は暑くて夜は熱い 夏休み中、アルバイトすることにした。 ビルの建設現場での作業は、工事用車両の搬入口における交通整理や 地道な資材運び、数量チェックなど、学生にも何とかこなせる雑用がメインだ。 支給された作業服を着て、その上からゴワゴワする反射材のジャケットを羽織り、 安全第一のヘルメットを被って首にタオルを分厚く巻き、埃よけのマスクを着ける。 安全靴代わりの長靴の中は、疲労を軽減する厚手靴下の二重履きだ。 直射日光と、トラックが土埃をもうもうと巻き上げる中、時に走り、時に立ちつくす。 汗が浸みる目は朦朧と見えにくい。 顔がほてり、唇がかさつく。 水分は取っても取っても蒸散していく。 こめかみが、締め付けられるように痛い。 永遠に続くかのような勤務時間。拷問。 そうして俺は今日も、ただ赤白旗を振るだけの、または足場パイプを運ぶだけの、 ただの機械になって...
  • 16-189
    丁寧語天然ぼけ優等生×幼なじみで口の悪い不良だけど常識人 ゴトン。ザクッ。何の音だ! すっげー不安。見ててはらはらする。 「おい、なんだその包丁の握り方は」 とうとう我慢できなくなって、まな板に向かう背中に声を掛けた。え?とピンクのエプロンをつけた健也が振り向いて、 包丁の切っ先がひゅっと目の前をかすめる。危なえな! 「そんな持ち方で大根切れんのかお前はよ」 「嫌だなあ、剛くんは黙って待っててくださいよ。今日は僕が家事全部するって約束じゃないですか」 さわやかな笑み。俺は昔から――幼稚園の砂場にいたときからルームシェアを始めた今までずっと、 この笑顔には勝てない。 「さっき洗濯もしましたよ。それから今お風呂にお湯ためてます。ご飯食べたら、入ってくださいね」 「お、おう」 はっきり言おう。健也には生活能力が極端に不足している。いわゆる天然ちゃんだ。 小学校の思...
  • 12-189
    背中合わせ 都会の一角に、時代に取り残されたような小さな公園がある 公園内の誰もが弱々しいと笑った、僕の背中の半分にも届かない小さな背 僕に気付くと明るい声を上げて駆け寄ってくる 『いつでもおいで、受け入れるよ』と囁くと、楽しそうなお喋りが背中越しに聞こえた 今では彼の肩甲骨に僕の肩があたる 花の降る春、日光に炙られる夏、紅葉色が彩る秋に白く閉ざされる冬と月日が流れても、彼はこうしてここに現れる 「ねえ」 あの頃の可愛らしさとは正反対の、低く落ち着いた言葉が背筋を撫でる 「今日こそ聞きたいんだけど」 僕は黙って下を向いた 「アンタただのベンチ?それとも俺に惚れてる霊?」 公園内の誰もが息を潜めた 僕は曖昧に微笑み返す 「どっちにしても、俺のこと好きならいい加減顔見せろよな」 その公園には、仲睦まじく語り合う幽霊と青年がいるらし...
  • 24-189
    芸術学部生×体育学部生 人も疎らな午後の食堂。 トレーを持った斎藤に話しかけられたとき、俺は戸惑いを隠せなかった。 何故ならば一貫校である中学入学から、大学に進学した今までの約七年。会話なんて数えるほどで、はっきり言って接点もない。 そんな彼は、ごく当たり前のように俺の前に座り、笑顔で言った。 「一緒に食っても良い?」 「いいけど…。」 「なにその怪訝そうな顔。」 何故か気分を害してしまったらしい彼は、よく見ると凄く整った顔をしている。なんてことも今気付いた。 「俺らさ、中学から実はずっと同じクラスだったんだよね。」 知ってた?とテンション高めに言われて、思わずへぇーと漏らしてしまった。 「まさか本当に知らなかったとは思わなかった…。」 しゅん、と肩を落とす彼が何だか居たたまれなくなって、慌てて付け足した。 「いや!でもお前のことは知ってるよ?何...
  • 27-189
    好きと言えない関係 「健司ー、オレのパンツ混ざってねえ?」 軽いノックの後、ドアを開けた昌弘の肩にはタオルがかかっていた。 「見てないからわかんね。そこに置いてある」 壁を背もたれにベッドで漫画を読んでいたオレは、タンスの足元を顎で示した。 そこには昌弘の母親がたたんで持ってきた洗濯物が、持ってきたままの状態で積みあがっている。 オレも昌弘も体型が一緒なので、洗濯物が混ざるのはよくあることだ。 名前でも書いてないかぎり、見分けろというほうが無理な話。 「それ新刊? いつ出た?」 「帰り本屋寄ったら売ってた」 目的のパンツを見つけた昌弘が、ベッドに上がってくる。 「どこまでいってたっけ。話忘れた」 オレの手元を覗き込む昌弘の頭が、肩に触れる。 ヘアワックスのすっとした匂いが鼻をかすめて、オレは視線を漫画から昌弘に移した。 「あとで...
  • 14-189
    肉体派 話し合おうと言うのが、どだい無理な話だった。 気がつけば、いつもと同じ展開。 かわいげのない大男とふたり、ひとつ褥で組んず解れつ、時間を浪費している。 無為な時間だ。 この関係をそんな風に評した途端、お前は殴りかかってきた。 短い応戦は、距離を詰める手助けでしかなかった。 俺達は互いの股の強張りに気がつくよりも早く、いつしか激しく揉み合っていた。 相手を抱き潰さんとマウントポジションを争う姿は、端から見たらさぞや滑稽だろう。 だが俺達はいつだって真剣で、この瞬間は、この永遠にも等しい瞬間だけは、ひたすら相手を組み伏せたいと願っているのだ。 こんな糞ッたれな関係、とっとと終わらせてやると考えていても、挑まれれば本気で抗い、ねじ伏せにかかる。 向きになりすぎたのかもしれない。 わずかに足元が狂ったところを狙われ、バランスを崩し、俯せに倒れた。 ...
  • 23-189
    春を待つ むかつくぐらい底冷えのする日が続いていた。 辺りは一面雪に覆われて、今までのことが嘘のように全てが白く塗りかえられている。だが、俺の腕の中にある銃は幻でもなんでもない。 昨日の激しい銃撃戦も、壕の中に並ぶシートを被ったかつての友人たちも、決して無かったことにはなってくれない。 こんな日はどうしても故郷のことを思い出す。一面に広がる麦畑とリンゴの木、暢気な牛ども、そしてあいつの栗色の髪の毛。 少しばかり頭の回転が遅い奴で、それが原因で糞餓鬼どもにからかわれてたところを、よく追っ払ってやったりしてたっけ。 あいつは元気にしているだろうか。ここには来ていないはずだ。礼状はあいつの家にだけは届いていなかった。だが、今となっては分からない。戦況も厳しくなってきた、体には問題のないあいつも呼ばれたかもしれない。 事情を知らない上官にのろまだの、グズだのとどやしつけられな...
  • 19-189
    偽装結婚 いわゆる限界集落に住んでいる。 子供の頃からの生家ってだけでこだわりもなかったが、田舎だが市内まで一時間強と不便もないので 一昨年親が死んだ後もそのまま暮らしていた。 集落の人は、みんなそれなりにいい人だ。 不幸が続きひとり暮らしとなった俺に、ぽつりぽつりとやれ野菜だ、それよりおかずだ、 米はあるか、酒を飲むかと世話を焼いてくれた。 正直お節介が過ぎることもあったが、兄弟もいない俺が天涯孤独の寂しさからどうにか立ち直れたのは ひとえにじいさん、ばあさん達のおかげだった。 ……いや、違う。あいつもいた。認めがたいが、ひとりで過ごさずに済んだ、という意味では あいつの世話にもなったのだ。 「集落のタカユキさんからもらった茄子をな、麻婆茄子にしてみた。ビールとあうよ。  それから食っても食ってもなくならないミニトマト、ごまドレで死ぬ気...
  • 25-199
    真っ直ぐな人と裏のある人  時折、お前が眩しい。 いつだったかお前が太陽みたいだと例えたことがあったけれど、それは嘘じゃない。 また適当なこと言って、と笑っていたけれど紛れもなく事実だ。 優しくて明るくて格好良くてまっすぐで可愛くて、輝いていて。 俺にとっての太陽はお前なんだよ。  だからこそ、本当に時々。眩しすぎるお前は俺に暗い影を落とす。 何もかもがダメで汚い俺の、濁った感情を全て浮かび上がらせる。 「や、 やだ、 やめ、ろ……」 「嫌だ」 「と、もあ、き」  きっかけは些細なことだ。単なるヤキモチ。それだけ。でも俺の狭い心をぐちゃぐちゃにするには充分なほどで。 赤らんだ頬に綺麗な涙が一滴流れる。 慌てて彼はそれを隠すけれど、その表情をもっと見ていたくて、右手を無理矢理にどけた。 すると恥ずかしそうな表情で、見ないで、とハスキーな声...
  • 17-189
    花火 「あっちいなぁー。」 暑いな。お前なんでサンバイザーなの。ソレ妙に似合うな。 「ヤブ蚊が多いな。」 な。俺はいいんだけど、 お前さっき腕にかけてたのただの8×4だぞ。 「お前花火好きだろ?」 好きだ。特に線香花火だな。地味って言うなよ。 「地味だよなぁ、線香花火好きとか。ネズミ花火とかのが絶対 面白いじゃん。」 うるさい。綺麗だろうが。 何だお前ソレ。まさかここでやるのか。 「ライター借りるよ。」 バカお前、こんなとこで 「ほれ、ついた。綺麗だなぁ。」 …ああ。綺麗だな。 「オレやっぱ線香花火好きだわ。」 うん。俺も好き。 「ほら、ここ入れとくぜ。」 あ、バカ!そこは線香供えるとこだっつの! いや線香だけど線香じゃないだろ!花火だよ! テングザルは天狗...
  • 22-189
    生徒が先生の家にお見舞い 「あれ、わざわざ来てくれたの!?ありがとねぇ」 「いえ、ただ数学で質問したいところがあったので」 「まま、あがってあがって。ごめんねぇ部屋汚くて」 「……きたない…」 「あはは、ごめんね。まぁ独身男の部屋なんてねぇ」 「菓子パンの袋にカップ麺の容器に…こんなのばっか食べてるから体壊すんですよ」 「はは、違いない」 「とりあえずなにか消化にいいもの作りますんで先生は寝ててください」 「えっでも」 「冷却シート買ってきたのでどうぞ。自分で貼れますか?」 「は、貼れるから!大丈夫だから!」 「おいしかった」 「お粗末様です。では僕は帰るので。しっかり寝るんですよ」 「あはは、お母さんみたい」 「もう大人なんだからちゃんと自己管理してください」 「がんばりまーす」 「…次はもっとおいしくて栄養あるもの作りますから」 「えっ...
  • 25-139
    軽薄色男受けが本気になる瞬間 軽薄色男受けにも種類がありますよね 1:ビッチ受け  今まで快楽のためにとか、金のためにとかで気安く通りすがりの男と関係を結ぶ受け  そんなビッチ受けがある日、真実の愛に目覚めちゃうわけですよ!  その辺の男に対しては気軽に体を開いていたのに、本命攻めに対しては処女のようにウブになってしまう受けはもはや様式美ですよね 2:軟派受け  美男子で賢くて運動神経も良い受け。当然周りの女の子達が放おっておくわけがありませんよね  周りからキャーキャー言われてヘラヘラする受け  女の子をつまみ食いするもよし、ヘラヘラしているけれども誰とも付き合わないってのもいいですよね  で、モブとか当て馬から  「あんなに可愛い子達がいるのに、何で誰とも付き合わないんだよ」  とか言われちゃうわけですよね   可愛い女の子達に本気になれない受けが...
  • 11-189
    オクテなふたり 「あれ、桜だ」 夕がそう言って指差した方を見ると、確かに二本の桜がピンク色の花を咲かせていた。 花見をするのにちょうどいい咲き具合である。 しかし季節はもうすぐ夏。 桜前線はとっくの昔に日本から旅立ったというのに、あまりにも遅い開花ではないか。 「珍しいね」 「今年は季節感皆無の気温だからな。だけどこれは季節を間違えすぎだろう」 不可思議現象である。 世界七不思議とまではいかなくとも、世界百不思議ぐらいには入るんじゃないか? そんなことを考えながら桜を眺めていると、夕が小さく笑い声を立てた。 「しかも二本仲良く間違っちゃってるね」 「そうだな」 二本の周りにも桜の木はあるが、その桜たちはちゃんと青々とした葉を生やしている。 これが通常の姿というものだ。 太陽光線を吸収しようと葉緑体が活性化するんだぞ。 話し...
  • 20-189
    神を信じる人と無神論者 一心に祈りを捧げるその背中に剣を突き立てたらどんな顔をするだろう。 嘆くか、怒るか。その両方か。 神の家と呼ばれるこの場所で、血を流すことに対して。 あるいは穢れを。暴力を。 この世の人間のありとあらゆる欲に蓋をして生きているようなこの男は、自分の末期ですらもそうするのだろうか。 見てみたい、と思った。 人間が勝手に作り出した神という偶像を信じ続けて、そのまま死んでいくのか。それとも。 それとも。 「おや、どうしました、こんな時間に」 「あんたの顔が急に見たくなってさ」 「それは……喜んでいいのやら、悪いのやら」 困ったように浮かべられる、それでも穏やかな微笑みは同じ神とやらを信じる人間に向けるそれと何ら変わらない。 所詮は俺も大多数の、誰かが作り出した神とやらに救われるべき哀れな生き物だということか。 全く、反吐が出る。 「折...
  • 25-119
    離れてしまった幼馴染み 今時、文通なんて流行らない事をやってる奴はそうはいないだろう。しかも男同士で。 チヒロからの手紙は、教科書のような綺麗な文字と丁寧で上品な文体。まるで小説のようだといつも思う。 それに比べて俺は、小学生が夏休みに無理矢理書かされされる日記のようにお粗末だった。 友達と買い物に行っただの、サッカーの試合に勝っただの。 そんな意味のない近況報告のようなやりとりを、もう十年近くも海をまたいで続けているから驚きだ。 そう、彼はずっと日本に住んでいて……俺は今、ドイツで暮らしていた。 『いつか絶対に、君に会いに行くよ。』 チヒロの手紙の最後にはいつもその一文が書いてあったけれど、一年前ほどからソレが無くなっていた。 俺は内心ほっとしていた。チヒロがやっと、俺に会うことを諦めてくれたのだと思っていた。 だが、実際は全くの逆だった。 ...
  • 4-189-1
    刀と鞘の関係 「……また、仕事か?」  何気ないそぶりでそう尋ねる鞘に、刀は弱弱しく微笑んで掠れた声で答える。 「すぐ、戻ってきますから」  自分の腕からいなくなっている間に刀が何をしているのか、鞘だって知らないわけではなかった。  全身雨に降られたように血塗れで戻ってくる刀。それでも、戻るとすぐ自分ににこりと笑いかける刀。 『仕事』の後のその姿を見るたびに、鞘は己の無力さに唇を噛み締めていた。  ――こんなことを、させたくはなかった。  彼の滑らかな肌に似合うのは薄絹で織った着物か何かで、あんな醜いやつらの血液ではない。  たとえどんなに非道な相手だとしても、あの細腕で誰かの命を奪うなど、してほしくはなかった。 「鞘さん、済みません」 「……何が」  振り返りざまにそう頭を下げた刀に、鞘は不審そうに一言呟く。  その問に心苦しそうな声で、刀は口を開いた。...
  • 25-169
    大人びた子供×大人気ない大人 「タカノリー!!帰ったぞー!ビール!」 「の前にシャワー浴びて下さい」 「嫌だー!ビール飲みてえ!」 「スーツが皺になるでしょう。じゃあせめて着替えて下さいよ」 あぁめんどくせえ、生意気だなぁとぶつぶつこぼしながら、ちゃんと手洗いうがいはしてくれる。 「営業で疲れてるあんちゃんをもっと労れ~」 「何か言いましたか。はい、これ並べて」 好物のムニエルを見て目を輝かせ、口から出かかった文句を忘れてしまう31歳。 童顔なのを差し引いても、一回り違う大人とは思えない。……可愛い。 「ちぇー、冷てぇ甥っ子だぜ。せっかく月に一度の早帰りデーだってのによお」 「だから晩メシ豪華にしてんだろ」 「……え?」 居間に一人ぼっちの食事の味気なさが分からないのか。あんたの笑い声のない食卓のつまらなさが分からないのか。 自分一人のために、まともな料理...
  • 25-179
    徐々に好きになる  最初はただの共演者だった。 同業者で、いい声をしてるなあ、演技うまいなあ、とその程度の認識。 でも少しずつ、仕事が重なる機会が増えて、彼の中身が見えるようになってきた。 それが俺たちのファーストステップ。 「あれ、それ、健くんも好きなんだ?」 「え、うん」  そういって話しかけられたのがセカンドステップ。 背後からそう言われて驚いたのも、いい思い出。人に引かれてしまうほどにはゲームオタクだった俺にとって、 同様の趣味を持つ同年代の友人は貴重すぎるほどに貴重だった。 それから確か、話すことが増えた気がする。 「今度俺に服選んでよ」 「ええ? なんで」 「健、センスいいじゃん。ね、お願い」  服選びという名目で二人で出かけたのが、サードステップ。 これがきっかけでちょくちょく遊びにいくようになったのを、覚えて...
  • 25-159
    犬好き×猫好き 「お前は犬に似てるよね」  賢哉様は着物の裾を翻し、俺を見上げながら微笑んだ。 大きくて黒い犬。それが俺のイメージらしい。 僅かに首を傾けてそうですか、というと、彼は困ったように笑いながら「そうだよ」と返してくる。  歩を進めると玉砂利の音が響いて、その品のよさすら賢哉様に合っているような気がした。 「賢哉様は、犬はお好きですか?」 「ああ、好きだね。従順で愛らしいじゃないか」 「……俺は愛らしいですか?」 「ああ。俺なんかに仕えるところが愚かで愛らしいよ」  爪先で砂利を弾いて、嘲るようにつぶやいた。 愚かなものか。貴方は仕えるに相応しい人、なのに。 そういいたくて仕方なかったが、口を噤む。何を言ってもこの人は、理解しようとしないから。 光栄です、とだけ呟けば、賢哉さんは黙り込んでしまった。 静かな沈黙が落ちて、広がる...
  • 25-109
    ドン引き、でも好き×好きすぎてド変態 最近あいつが怖い。いや怖いのは以前からなんだけど、なんというか、いつにも増してというか。 少し前だってやけに静かに台所に立っているかと思ったら、 俺のパンツを煮込んでいた。昨日履いていた紺色のボクサー。 洗濯しようと洗濯機の中に突っ込んでいたはずなのに。 「なんでてめえ俺のパンツ煮込んでんだよ!」 「だって食べたかったからさー、お前だって食べたいだろ?俺の手料理」 「いや……まあ、お前の手料理は食べたいけれど、 でもパンツはねえよパンツは! つーか鍋どうすんだよもう使えねえじゃねえか」 俺の罵声にも興奮するのが気持ち悪いを通り越して怖い。 今だってそうだ。フェラするのはいいけれど、必ずと言ってもいいほどチン毛を抜いてくる。 痛い! と叫ぶと肩を大きく揺らして驚いた後、にへらと薄い笑みを浮かべてそのままキスをしてくる。 口の...
  • 25-149
    弟に依存する兄と、依存されていることに気が付かない弟 いつも通りの夕飯を終えて2階へ上がっていく弟の背中に、僕はいつも通りに声をかけた。 「春也、宿題たくさん出たんだって?兄ちゃんが手伝ってやろうか」 じりじりとした気持ちの揺らぎが声へ現れないよう、頭痛がしそうなほど細心の注意を払った。 弟の答えもいつもと同じ。 「なんでだよ。自分でやるからいいよ」 「そうか、わからないところがあったら言えよ」 僕の答えもいつもと同じ。 「ありがと。おやすみ」 「ああ、おやすみ」 カチャリと軽い金属音を残して閉まった部屋の扉を、僕はいつまでも眺めていた。 こんなことを考えている間にそれほどの時間が経ったのだろうか。はっきりとした感覚がない。 自分の立ち位置すら不明瞭に感じる。 それは2年前から徐々に、僕を蝕んでいた。 15歳の誕生日を目前に控えた春也が、深夜に僕の...
  • 25-129
    常連客の紳士×髭のマスター マスターの作るコーヒーは日本一。いやあ、世界一だよ。強面髭親父が作るコーヒーとは思えない! 「はいはい。休日に毎週来るなんて、あんたも暇人だね。ほら、ミルクいるんだろ」 ぱあっと顔を明るくする様子は、まるで5歳の子供。嬉々とミルクを手に取る。紳士服と表情が全く合わない。 どうしたんだい?そんなに見つめて。コーヒーと私の姿が似合って仕方ないのかい?それとも、君が飲んだら髭にミルクが付くなあとか? 「黙って飲め、ばかものが」 溜息を吐いてもにこにこと見つめてくる。ミルクを楽しそうにコーヒーへ入れている。 黙っているじゃないか。そもそもお客様がいない! 「あーはいはい。もう熱くないからさっさと飲め」 そうすると、ずいっとコーヒーを見せてきた。カップの中には白いハート。 僕は紳士的な気の利い...
  • 6-189-1
    何度繰り返しても。  誰もいない、いや、正確には俺と先輩しかいない放課後の図書室。 俺は机の上に座って足をぶらつかせながら、本の整理をしている先輩を見つめていた。 「先輩、キスしていいですか?」 そう言って机から降りて先輩に近づく。  先輩は見事なまでに固まり、ギギッと言う効果音が付きそうな動作で俺から顔を背ける。 「キス、していいですよね?」 いつも顔を背けるだけで抵抗しないから、返事は聞かずに抱き寄せる。 短いキスをいくつもすると、強ばっていた体から徐々に力が抜けていくのを感じる。 何度繰り返してもキスに慣れない先輩が可愛くて、俺は抱きしめる腕に力を込めた。 何度繰り返しても。
  • 2-189-1
    追われる者×追う者 深夜の呼び出しに応じてふらりと自宅に現れた彼は、 ソファに組み敷かれ、諦めたように目を閉じた。 その強張った表情が甘くとろけるまでの短い時間、男は決まって考え事をする。 今はまだ到底認められないが、大雑把に括るならライバルであるはずの自分に、 彼はいったいどんな気持ちで抱かれているのか。 プライベートでは驚くほど無口な彼の本心は、掴みどころのない雲のようだった。 知りたい、と思う気持ちを容赦なくねじ伏せる。 そんなことはどうでもいい。知って、どうしようというのか。 彼に出会った瞬間、男はある予感を抱いた。 将来、自分からトップの座を奪い取るのは間違いなくこいつだと、直感的に悟った。 実力は折り紙つきだし、野心もある。努力も惜しまない。 しかし、頂点に上り詰めるにはそれだけでは足りない。 王者の素質とでもいうべき何かを、彼は備...
  • 2-189-2
    追われる者×追う者 この森のことは何でも知っている。 光の差さないまっくらなこの森はいつも幾つもの気配に満ちて、誰かの息遣いを隠す。 この森のことは何でも知っている。 耳を澄ましても何も聞こえないけれど、誰かのその視線が僕を捜しているのを感じる。 心地良い微睡みの中でも、細く目を開いた真夜中にも、いつでも。 その存在に気付いたのはいつからだっただろう? 今日じゃなく今じゃなく、きっとあの鏡を覗いたときから彼はいた。 さかさまに映った鏡のぼく。 ひとり取り残されて、今ではこの森で僕を捜しているんだろう。 彼は分かっていないのだ。 誰よりも彼を捜しているのは僕なのに、 彼がそうやって捜すから僕はこうして追われてあげることしかできない。 誰よりも必要としているから。誰よりも彼を欲しているから。 この森は意地悪だ。 欲する者に与えず、追う者に捕らえさせ...
  • 24-189-1
    芸術学部生×体育学部生  しゃっ、と鉛筆が紙の上を滑っていく音が聞こえる。その音が、何を描いているのか俺には見えない。だからただ、鉛筆をころころ変えていく先輩をぼーっと見つめていた。  どうせすぐ汚れるから、なんて安物のシャツばかり着ているくせに、どこか洗練された雰囲気と。  大変機嫌良さそうに和んだ、端麗な顔。  その顔が俺の方を見て、手を止めて、笑う。自分が軽くときめくのが分かって、なんか悔しい。 「……やー、本当にナオ君っていい体してるよね」 「んな、そういう言い方やめてくださいってば」  音声がつくだけで雰囲気が台無しだから。 「え、褒めてるんだよ、ナオ君の筋肉凄いって。好みだよ」 「いや、俺のことじゃなくて」 「そういえば、そろそろ寒いでしょ。もう上着ていいよ、モデルありがとう」  俺の言葉をさらっと流して、先輩はまた鉛筆を握る。マイペースな様に脱力し...
  • 17-189-1
    花火 岡田が、花火大会に誘ってくれた。 「あれ、俺なの?誰か女の子誘えばいいのに」 内心嬉しかったが、同時に不思議に思った。 岡田はバイト先の女の子やらゼミの後輩やらにもてまくり、よりどりみどりのはずだ。 「んー、いいのいいの。……どう?行く?無理?行けるよな?」 自分でそう豪語していたくせに、今日は俺を強引に誘う。 「……はいはい、行くよ、人が多いの苦手なんだけどな。早めに帰ろうな」 小さな地方都市である我が市の、この夏唯一の大イベント。 当然結構な人出だろうと思っていたが、これは想像以上だった。 これでも余裕を見て、始まる30分前には会場の駅に着いたのだ。 だけど、駅から河川敷までの道が、すでに人の波に逆らえない状態。 「……これじゃ、屋台でビールって無理かな?」 「無理じゃないかな、並ぶのも厳しい」 「ッ……はぐれそうだ、加野、手ぇつなぐ?」...
  • 6-189-2
    何度繰り返しても。 「いかないでくれ…っ」 言っては無駄とわかっていても、言わずにはいられなかった。 ベッドに力無く横たわる手を、俺は必死に握る。 「…泣かないで…本当に、すまない…」 そう言いながら、どんなに痩せこけても変わらない眩しさで、お前は笑う。 お前はいつも、俺が行き詰まっていると、目を細めて微笑んでくれた。そして、優しく優しく抱きしめてくれた。 しかし今はその腕も、女のようにか細くなって。 だけど懸命に、抱き締められない代わりとでも言うように、俺の手を握り返してくれる。 「お前はっ…こんなときまでどうして微笑っていられるんだっ…」 目前に、死という恐怖が迫っているのに。 言葉が嗚咽で邪魔されて続かない。 涙なんかながしても、何も変わらない、何もしてやれないんだ。 うずくまったまま握り続けていた指が、...
  • 20-189-1
    神を信じる人と無神論者  街からちょっと離れたところにあるこの教会はなぜか日曜礼拝にくる人も滅多にいなくて、 最初のうちは俺に聖書を読み聞かせていた牧師も 毎度のように俺が「ここにきているのは散歩のついででキリストを信仰するつもりはない」 とつっぱねてきたせいで、ほとんど世間話しかしないようになっていた。 「今日はよいお天気ですね。北田さんは今日のご予定はあるのですか?」  穏やかな笑みを浮かべて、初老の牧師は俺に尋ねる。 「午後からバイト。」 「働き者なんですね。」 「学生だから土日くらいしかがっつり働けないんだよ。」  宗教には興味ないし知識もほとんどない俺だが、キリスト教徒は日曜には働かないということは さすがに知っていた。彼が何か講釈をたれるのではないかと危惧したが、静かにほほ笑んだままだった。 「んで、牧師サンはこのあと何すんの?」  ...
  • 25-139-1
    軽薄色男受けが本気になる瞬間 トロトロ書いてたら被ったのでこっちで萌え語りさせて下さい 恋愛的な意味や性的な意味で本気になる軽薄受けも萌えますが 個人的には戦闘的な意味で本気になる受けを推したいと思います 軽薄で色男、きっと情報を仕入れたり助っ人にするには重宝するけど 一生背中を預ける相棒としては心もとない微妙な存在なのでしょう そしてそういう性格になったのにも暗い過去やらトラウマやらがあるのでしょう そんなめんどくさい受が本気になる程惚れるまで攻は相当苦労したと思います 「そいつは止めとけ」と周りに反対され、実際に何度か受けに裏切られ それでも受けを信じ背中を支え預ける事の出来る男前な攻めさん そんな攻が瀕死のピンチになり逃げる事も出来ない絶体絶命の時こそ受けが本気を出すのです 明らかに格上の敵に囲まれ、攻めに「僕なんか置いて逃げろ!」と言われ それ...
  • 17-189-2
    花火  高層マンションで見る花火は素晴らしい。  必死になって場所を取らずに済むうえに、人込みも気にしなくていい。  革張りのソファに座りながら、私は優越感を覚える。これに酒があれば最高だった。  夜空に咲き誇る花達に見とれていると、ドアの開く音がした。玄が帰ってきたらしい。 「ただいま」 「遅かったな。どこに行ってたんだ?」  振り向きもせずに問いかける。玄は隣に座り、片手に持っている袋を見せる。 「花火大会だよ」 「花火ならここで見られるじゃないか」 「いや、花火を見ていたら急に食べたくなったんだ」  彼は袋から次々と中身を取り出した。  たこ焼きに焼きそば、ベビーカステラやチョコバナナ。様々な食べ物がテーブルに並べられる。  落ち着いた色合いのテーブルクロスにはいささか似合わない面々だ。 「わたあめも買おうか迷ったんだが……」 「いい年した大人が...
  • 17-189-3
    花火 「たまやーっ」「かぎやーっ」 カラコロと楽しそうな足音が表を駆けていった。 がらり、戸を開けると待ちきれぬ高揚が通りを埋め尽くしている。 とろけるような夕日が、江戸の町並みを照らしていた。 「何だ、お前ぇんとこのがよく見えるってのによ」 裏から上がり込んだおれを見て、弥太郎は変な顔をした。 「親父が棟梁達と酒盛りだ。わざわざ相模から親戚まで見物に来やがってうるせぇったらねぇ」 はは、と弥太郎は眉を寄せて笑うと、つけていた帳面を閉じる。 「今日は商売になんねぇな」 早めに店仕舞ぇだ、と云って立ち上がった。 屋根に登ると日はすっかり落ちていた。 川辺の喧騒からは遠く、川から吹く風が心地良い。 隣で胡坐をかいている弥太郎は、蚊に食われたと云って脛をぼりぼりと掻き毟っている。 「どれ、貸して見ろ」 「止せ、お前ぇまた噛むんだろうよ」 伸ばし...
  • 25-789
    そんなに好きって言わないで 数年ぶりに対峙した元恋人は、記憶とは変わった姿で、思い出とは変わらぬ雰囲気で俺の前に現れた。 この世の全てを愛しているかのような視線を、どこに向ければいいのか戸惑っている。 「矢野くん」 部屋に響く横山の声が、俺の体中に共鳴し、染みて行くのがわかった。 懐かしい声。横山の声。 「なにから話せばいいのかな、ちょっと急すぎて、考えてなかった」 横山がなぜか嬉しそうに照れ笑いをする。 それが妙に苛立たしく、俺は「なんでもいいよ、どうせたいして話すことなんかねえだろ」と毒づいた。 そうだ、大して話すことなどないはずだ。 俺と横山が「恋人のようなもの」だったのは、7年前、中学時代の数ヶ月間だけだ。 思春期丸出しの、青臭い付き合い。何があった訳でもなく、ただ「同類だ」とお互いが気付いた。今考えてもあれは恋ではなかった。 「手を繋いで、帰ったのを...
  • 25-389
    騎士と傭兵 なあエスクワイヤ、俺の生き方はこうだ。 はした金貰っては人を殺して、勝っても負けても手前が死なねえ限りはまた次の戦場の次の戦争で次の人殺しをする。 腐れ外道の祖先から代々続く稼業の、染み付いた業や血の臭いは、そう簡単に消えたりしない。 だからなあ、違わず腐れ外道な俺は、刃向かうのなら赤ん坊だろうがガキだろうが構わず殺すよ。勿論、お前も。 だがまあ、俺の御主人サマがご所望なのは、テメェみてえな三下の命じゃねえ…っつーのは、わかってんだろ。 ほら、どけよエスクワイヤ。随分手こずらせてくれたじゃねえか。 怪我はかすり傷だな?じゃあとっとと逃げて、それで……あぁ?おい、何の冗談だ。 死ぬかもしれねえとんでもねえ劣勢の時、俺は泣き喚いたぜ。助けてくれ、死にたくねえ、ってな。周りもそうだった。祈って騒いで銃をぶっぱなして、命からがら生き延びた。 お前は生きたくねえの...
  • 25-689
    顔を隠す 「えー、じゃあこんなんはどーお?『な、七瀬クンのばかぁ!!』」 ご丁寧に女声まで作ってバッと顔を手で隠すしぐさをした鹿山に 「う~ん駄目、何かありきたり、嫌いじゃないけど惜しい」 と返す僕は少女漫画家の七ツ星ひかる、本名は七瀬光 何故こいつが真夜中にこんな子芝居をしているのかというと 『後輩から突然キスされたヒロインに最適な反応が思いつかない』 という事を夕方ごろ鹿山になんとなく相談してみた所 「俺今日暇だし協力しに行っちゃおっかな~」 と自ら扱き使われに押しかけて来たからである 「いいじゃんもうありきたりでー、俺王道好きよ?」 などとぶつぶつ言っているが多分鹿山は僕が納得するまで付合うだろう この鹿山順平というやつは案外律儀な男である 例えば僕らがまだ高校生の頃、鹿山に誕生日プレゼントの希望を聞いたことがある 鹿山は今まさに良い悪戯を思い...
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