*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「25-579」で検索した結果

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  • 25-579
    わたしのお兄ちゃんは… わたしのお兄ちゃんは、自慢の兄です。いつも優しくて面倒見の良い、自慢のお兄ちゃんです。 勉強でわたしが困ったときも、一生懸命教えてくれます。でも、そんなお兄ちゃんを困らせる人がいます。 それは、 「よっす、コースケ。おっはよ」 「章太郎。苦しい」 この人。真壁章太郎さんです。名前のカタイ感じのイメージなんて本人には1ナノグラムもありません。 いつもマイペースでへらへらしてて、ナンパな人。わたしは正直この人が好きではありません。 でも。 「ちさとちゃんもおはよ」 「……おはようございます」 「今日も赤いランドセルがキュートだね」 「章太郎、何いってんの」 「(あ、)」 少し眉間に皺を寄せて笑う。このお兄ちゃんの笑顔を見せてくれるのは、真壁さんだけなんです。 わたしでもなくお父さんでもなくお母さんでもなく、真壁さんだけなんです。 だ...
  • 5-579
    変態と基地外  あのさ、自慢じゃないけど俺お前以外の奴らには結構怖がられてる んだぜ?気に入った奴はどんな手段を使ってでも手に入れる。挙句 の果てに暴走してなぶり殺しちまう変態ヤローってよ。ま、もちろん事 実だし、否定する気もねえけど。  なのに、なんでお前はいつも俺の隣で笑ってられるんだよ。いつだって 妖艶な笑みを浮かべて「お前はおもしろい男だな」って。なんだそれ。お前 は気でも違ってるんじゃないのか?そんなだからお前は、この世界からは 浮いてる感じだ。正直、お前は俺に近い型の人間なのかもしれない。  ……参ったな、本気なんて。人間なんて、俺にとっては小せえ存在なの に、お前はいつも傍で笑ってるから、この手で壊しちゃいけない。――ずっと 傍にいたい、と、ガラにも無く願ってしまう。 でも、そんなの無理に決まってるんだ。気の違ってるようなお前を想いながら...
  • 15-579
    まわされよう 彼が今の車に買い替えてもう二年になるでしょうか。 彼の両手の中から僕は毎日彼を見ています。 車を彼の行きたい方向に向ける。 彼のためならその使命が誇らしいものに思えるんです。 だって彼はとってもかっこいいんです。 この間この車に乗ってきた彼の友人との会話を聞くと、彼は重大な仕事を任されているみたいです。 彼はやっぱりすごい人なんだと嬉しくなりました。 でもその仕事がうまくいってないという話も聞きました。 僕は心配になりましたが彼は大丈夫、と笑っていたので安心しました。 彼はいつも笑っています。 仕事がうまくいかないときも、恋人に振られたときも、彼は笑っていました。 でも、彼が泣くことだってあります。 銀行の角を右にまがったところの小さなアパート。 そこに住む彼より少し若い青年に会うと、彼は吸い寄せられるように青年に...
  • 12.5-579
    嘘つき じゃあ一連の流れを無視して久々に語りますね 拙い文章ですが目をつむってくださると幸い。 『嘘つき』って凄い短いのに思い単語だよね。 会話の中でぽつりと出すと途端に生まれる独特の空気。漢字変換すると『嘘吐き』とも出る。それがまた嘘っていうのは人間の口からしか吐かれないものだという現実を突き付けられるんだよね。 嘘にも種類は多様に在る。同人界ではよく『優しい嘘』『自己犠牲の嘘』が使われる。 萌えるよな。凄く萌えるテンプレだよ。 例えば攻めが物凄く身分の高い輩だったとして、受けが攻めのために身を引こうとする。この時に使われるのが『自己犠牲の嘘』だと思うんだ。 「俺…ホントは攻めなんか好きじゃねえし!攻めがしつこいから…っ仕方なく付き合ってただけだ!攻めなんか大嫌いだ!」 こんな風に吐き捨てて攻めから逃げる受け。でも、自分で吐いた嘘が自分に...
  • 9-579
    かごめかごめ 「想像してみてください。あなたは今かごめかごめをしています。」 「な、なんだよいきなり。…鬼?それともまわるほう?」 「鬼です。」 「…わかった。」 「じゃあいきますよー。  かごめかごめ かごのなかのとりは いついつでやる  よあけのばんに つるとかめがすべった  うしろのしょうめんだーあーれ  はい!」 「うわっ」 「今あなたの心に浮かんだ人は誰ですか!?」 「…誰ですかって……そのタイミングで突然そんなに顔近づけられたら…」 「いいから!誰が思い浮かびましたか!?」 「いや…思い浮かんだっていうか……まあ…おまえ。」 「…えっ……」 「いや、『えっ』じゃないだろ。」 「そ…その人があなたの…運命の相手です。」 「……。」 「う、浮気とかしたらダメです!…即死しますよ。」 「即死ですか。」 「…運命ですから。」 「ふ~...
  • 4-579
    いやいやながら女装 この場合、定番としては 「お姫様扱い」を受けてる可愛いオトコノコが 学園祭の模擬喫茶辺りで、クラス全員の推薦を受けてというか 半ば強制的に脱がされて着替えさせられるわけだ。 当然、本人は暴れるが、姫扱いなのはちっちゃいからだったりで 大柄な男に押さえつけられて、剥かれちゃう訳だ。 押さえつけた大柄男(柔道部中軽量級位が美しいか?)が ふと見下ろした姫扱いの、やたら細っこい手首やら首筋の白さに ちょっとドッキリしちゃったり。 …逆に受け狙いで、この大柄男にもメイド服が用意されてて 姫扱いの逆襲が始まったり始まらなかったり。 抵抗したくても、なぜか出来なくて赤面の大柄男、とか。 いやいやながら女装
  • 8-579
    レイープした攻←レイープされた受 あいつは俺の親友だった。 大切な仲間だったし、誰よりも信頼していた。 だけどあの日、あいつは俺の友情とか信頼を全部踏み躙って、俺を犯した。 俺の意志なんか無いみたいに。 あいつのやった事が理解出来なくて、それ以上に許すことなんか出来なくて。 あいつと、あいつの思い出との、決別を決めた。 そうしないと自分を保つことが出来なかったから。 それなのに。あの時、あいつが俺を呼んだ切なげな調子とか、苦しげに耳元で好きだと囁いた声だとかが、俺の頭から離れていかない。 あいつが初めて俺に強要したあの行為の意味を、考えずにはいられない。 そうして今日も俺は、浅い眠りの中であいつの夢を見る。 目隠し
  • 3-579
    スーパーハカー スーパーハカーは僕の友達だ。 本当にすごいんだよ。僕が解らないことはなんでも知ってるんだ。 IQだって200以上あるんだって。ルパソ三世もびっくりだ。 いっぱい会社を持ってるし、いっぱいお金も持ってるんだ。 家なんか学校よりもずっとキレイで広いんだよ。 それにとっても優しいんだ。僕、スーパーハカーが大好きだよ。 でもね、なんでだろう。 僕が話しかけると、困ったような、恥ずかしそうな顔をするんだ。 なんでだろうね?へんな機械に向き合っている時だってそんな顔しないのに。 僕が話しかけた時だけ、そんな顔をするんだ。 ねえ、なんでだろう。 587 801穴だから問題無し。
  • 2-579
    のほほん社員×やる気が空回りバイトの子 社員は主任に怒られているバイトを見てまたかと思った。 やる気はあるんだけどねぇ。と思いながら三時のお茶をすする。 お客さんの目を引きたいと商品陳列をがんばったらしいが工夫しすぎて一つ取ったら雪崩が起きた。 幸いそれに引っかかったのは自分だったのだけれども。ちょっと痛かった。 うん、痛かったよ。それにびっくりした。 長い説教が終わってバイトが帰ってくる。僕を見て、泣きそうな顔をする。 「すみませんでした」 「まぁ、いいよ。死んだわけじゃないし」 「殺すつもりなんてありませんよ!」 あのさ、冗談なんだからそんなに真っ直ぐ受け止めなくても。 「お茶飲む?」 「いらないです」 「お茶請けはギコせんべいだよ?」 バイトが余計に泣きそうな顔をする。彼がさっきやらかした商品がこれだ。 「君が売...
  • 1-579
    落語家×銀行員 良い高校、良い大学、そして良い就職。エリート街道を進んできた銀行員。 かたや、学生時分には落研で落語三昧、卒業してからも落語家に弟子入りして修行の日々な落語家。 趣味は仕事ですと言わんばかりの銀行員には、落語なんて世界は無駄の極み。 落語家は何をするにもおもしろおかしく会話する。 銀行窓口で口座を作るときにも窓口嬢とそんな様子だから、「なんてふざけた客だ」と思う銀行員。 度々訪れては、そんな事を繰り返している落語家を苦々しく思っていた銀行員も、対応する時が来た。 落語家は世間話からなにからいろいろと話しかけてくる。銀行員は始め、うっとうしく思っていた。 でも、その語り口は見事で、世間に対する優しさに満ちていた。 銀行員は落語家の話にのめり込み、そして初めて声を上げて笑った。 「ようやくその顔が見れましたねぇ」嬉しそうに笑う落語家。 「え?」 「...
  • 7-579
    兄→友→妹 あの人が、町に帰って来ているらしい。  噂好きの姥さんに聞いた話を伝えた途端、兄の顔が引き攣った。  しかし瞬間表情は霧散し、いつもの気難しげな態に戻る。  お手伝いの姥さんは夕には帰り、兄妹だけの食卓は、兄の寡黙もあって常に静かだ。近頃は日に一杯だけの晩酌を煽って、兄は息をついた。 「そうか。なら、いっぺん久方ぶりに呼ばうが、ええかね」 「あにさんの好きにすればええじゃに」 「そうかね」「そうよ」  久しいなと、呟く兄の箸から米粒が零れる。それと気づかず箸先を口に含んでから、ひょっとした風に無骨な手元を見下ろした。  私は知らぬふりで菜っ葉を食みながら、正座で足袋のつま先を身じろがせた。 「──離れに呼ぶがよろしよ」  番茶を飲み下し、息をついでから言うと、うたれたように兄の顔が上がる。 「久方ぶりじゃけえ、積る話もあるやろう。女の前じゃあ...
  • 6-579
    夜道 今日は暑かったからいつもより薄着で出かけた。 しかし、夜になると昼間からは一変しとても冷え込んでいた。 居酒屋から出た瞬間余りの寒さに本気で帰りたくなかった。 「マージ寒いって…」 「お前が真夏みたいな格好してるのがいけないんだろ?」 「しょうがねぇだろ、昼間あんなに暑かったんだから」 「自業自得だな」 佐々木はふふん、と鼻で笑うと昼間は着ていなかったパーカーを ヒラリと靡かせて俺より先を歩いた。 体を摩りながら空を見上げると星なんか1つも見えなくて。 それが余計寒さを感じさせた。 「寒い…」 「うるせぇな、何度も何度も」 「しょうがねーだろ!寒いんだから!」 「薄着してるお前が悪いんだろ、当たるなら自分に当たりやがれ」 「……」 佐々木が言ってる事は正論で。 確かに俺が悪いんだけれども。 …何か風邪引きそう。 体が小さく震えた。 「…...
  • 24-579
    酒と煙草 「くせーな!お前、また人ん家で煙草吸ったろ!」 「自分、俺ん家の冷蔵庫を勝手にビールまみれにしたやろ!」 「俺、マジで無理なんだって。このタクシー臭いの。換気すっぞ、換気」 「あーもー!隣の人におすそ分けせなあかんやん…つか、ビールなんて苦いのん、よう飲めんな」 「……あんさ、確かに煙草吸ってたお前に一目惚れしたよ。でも、今はお前に惚れてんの。ガチで死なれたら困っから。それに臭いから。止めろよ、煙草」 「じゃあ2人で飲めるチューハイ?そういう問題ちゃうわボケ!酒ばっか飲むな、つか人ん家に置くな言うてんの!」 「…口寂しいから、行って来ますと行ってらっしゃいとおやすみのキスを義務付け?いやいや、お前と俺じゃ家離れてんじゃん」 「…ほな、晩酌の代わりに甘くて苦いのん毎晩飲む?………下ネタかい!?つか、自分と俺やったら家全然ちゃうや...
  • 19-579
    嫌われ者のたった一人の理解者 「にげろ!あいつだ!」 先生が廊下を歩くと、入院しているちびっ子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。大きな体を揺らすように、のしのし歩く先生は確かに怖い。 体が大きいだけじゃなくて、目つきも悪いし声も低い。 物言いはぶっきらぼうで、看護師さんたちに対して厳しく怒鳴りつけているところをよく見かける。 そんな先生だけど腕はいいから、このあたりの小児科では一番患者が多かったけれどみんな先生を怖がっていた。 「待たせてすまない……、……なんだ、また君か」 診察室で待たされていた俺のところへ、先生が急ぎ足でやってくる。けれど俺の顔を見た途端、呆れたような顔をされた。 「うん。今日は風邪引いたみたいでさー」 そんなことは気にせず、俺はシャツのボタンを外して先生を待つ。のしのし歩いて、どかりと椅子に座った先生はポケットから聴診器を取り出し...
  • 21-579
    誘拐犯と人質 「明日私は脳病院へ連れて行かれるようだ」 「なんだと?」 裸電球がチリチリと鳴っている。窓のない部屋の唯一の明かりに誘われ蛾の群れが集っていた。 この部屋はまるで牢獄だ。剥き出しの砂壁、煤茶けた畳、外から錠の掛けられる扉。置かれた家具は小さな長持と古くて引き出しが開かなくなった帳場机のみ。 その机で黙々と書き物をしているのがこの部屋の主、佳次である。 酒屋の次男坊なのだが、気が狂れたとして離れのこの部屋へ収容された。 「……ったく……ここに入れられた時もそうだが、狂ってんのは親父さんの方じゃねえのか?」 「滅多なことは言わないでくれ。それにこの部屋は君のせいじゃないか」 佳次の隣でいかがわしい本を読んでいるのが、遠縁にあたる七緒。数年前の夏、七緒との情事を女中に見つかった。それが佳次の父親に知れ、七緒は出入り禁止となり佳次は幽閉されたのだが、人目を忍ん...
  • 13-579
    満月の夜に人になる 神様では、なかったのかもしれない。 『明日の満月の夜、お前を人間の姿にしてやろう。  ただし、次の満月が沈むまでに相手と結ばれれば本物の人間になれるが、  愛されなければ朝日と共に死ぬさだめだぞ』 それでも僕は頷いた。 だって、トモ君のことを見ていられなかったんだ。 親友を好きになってしまって、眠れずに悩んでいたトモ君。 彼に好きな人がいると知って、毎夜枕を濡らしていたトモ君。 その涙を拭ってあげたくて、震える肩を抱きしめてあげたくて、鳴咽が聞こえるたび僕は願った。 ――僕が人だったら、トモ君を慰めてあげられるのに。 ――僕が人だったら、トモ君を愛してあげられるのに。 ――神様、僕を人間にしてください。 って。何度も何度も。 だから、悪魔の囁きでもよかった。 人間になって、トモ君を支えることが出来るなら、結局泡になるのでも...
  • 16-579
    その笑顔に心は千々に乱れる 「ん?」 気まぐれに名前を呼んだら、振り向いたその顔はやっぱり笑顔だった。こいつは、いつもいつも笑顔だ。 少しだけ嘘くさい。作ったようにも見える笑顔。 「どうした?」 自分から呼んだ癖に、続く言葉が思い浮かばなくて黙り込む俺にそいつは少しだけ腰を屈めて、視線を合わせてくる。いつもは自分が見上げるだけの笑顔に、ドキリと心臓が跳ねたような気がする。 言葉が喉の奥に引っ掛かったまま、出てこない。「なんでもない。呼んだだけ」と、笑って言えば良いだけなのに。 言葉の代わりに、思わず手を延ばして、頬に触れていた。驚いたように微かに肩を竦めたそいつの髪がさらりと揺れる。 シャンプーとワックスの混じり合った匂いは、女の子の甘いそれとは全然違う。分かっているのにくらくらして、気付いたらそいつを引き寄せて唇を合わせていた。 一瞬だけ触れて、直ぐ...
  • 17-579
    中ボス 姫という人質をとり、勇者を我が城へ誘い出すことに成功した。 罠を仕掛け、挟み撃ちにした!これで勇者は終わりだ! …そう思っていたのに、 「姫を放してもらおうか!」 何故玉座に辿り着いてるんだ! 必死で部下を必死で呼ぶが来ない。 クソ、こんな時に何をやっているんだ…。 まさか、全滅したとでもいうのか? 「放さないというのなら、実力で取り戻してやる」 ええい、どいつもこいつも役に立たない! 仕方ない、我が直々に相手をしてやる。 「やれるものならやってみろ!返り討ちにしてやる…」 「そうやって余裕でいられるのも今のうちだ!」 我は自慢の爪で勇者を切り裂こうと襲い掛かった。 さあ、苦痛で歪む貴様の顔を見せてもらおう! …我が負けた…だと? 立ち上がる体力などなく、勇者の前で無様に倒れてしまうなんて…なんという屈辱だ! …勇者が我の方へと近寄...
  • 22-579
    日韓友好 「邪道だ」 俺は激怒した。 必ず、爽やかなはずの朝の食卓に鎮座する、邪悪な赤色の物体を除かなければならぬと決意した。 わりと本気で言っている。冗談を言っているわけではない。 「その赤い悪魔をすぐさま下げろ!不愉快だ!!」 「またそれ?もういいじゃんか。おいしいから食べてみろって。納豆キムチ」 赤い悪魔を食卓に置いた張本人、いわば悪魔を裏から操る大魔王は、実に嫌そうな顔をして言い放つ。 食卓に並ぶのは、まだ米がよそられていない空の茶碗と、白いパックに入ったままの納豆。と、その隣の小鉢にいれられたキムチなる赤い物体。 朝からこの悪魔と大魔王の嫌な顔をいっぺんに見なきゃならないなんて、まったく腹がたつ。 「ふざけるな!納豆はな、ストレートに食うのが一番うまいんだよ。ありのままでうまい納豆になにか別のものを混ぜるなんて邪道でしかない。生卵だ大根おろしだ、そんなチ...
  • 23-579
    バスケ選手×野球選手 「好きだ!!」 「また君か」 「また俺だ!今日はとっておきの口説き文句を考えてきた」 「どんな」 「お前へのダンクシュートを、俺に決めさせてくれ!」 「うん。アウト」 「持久力には自信がある。お前が一点とる間に、俺は二点でも三点でも取ってみせる!」 「アウト」 「お前が憧れているビールかけ、してみないか?俺と一緒に!!」 「アウト。スリーアウトチェンジ」 「何故だ!?俺はゴール下でずっとお前を待っているのに、なぜ走りこんで来ないんだ!?」 「当たり前だろう。俺の帰る場所は一塁側ベンチだ」 「ずっと中腰で待ってるんだぞ!?けっこう脚にくるんだぞこれ!トレーニングになるからいいけど!」 「俺の知ったことか」 「リー、リー」 「阿呆。俺にその指示が出来るのはランナーコーチだけだ」 「!? まさかお前、そのコーチのことが好きなのか?」 ...
  • 14-579
    虫で801 ※ちょいグロ・アンハッピーエンド注意  それはある夏の日だった。  12歳になったばかりの俺は、昼から仕事がある母に連れられ、近所の親戚筋の家に預けられていた。  母は看護婦として病院に勤めており、仕事で夜遅くなることも多かったので、今までもそういったことはよくあった。  その家には2つ年上の圭という少年がいた。  彼は物静かな性格で、休みの日でも外で遊ぶことは少なく、レコードをかけながら本を読んでいることがほとんどだった。今思うと友人も少なかったのかもしれない。  俺は彼の隣で絵を描いたり、学校の宿題をしたりして過ごした。  交わす言葉はそれほど多くはなかったが、彼は俺の存在を肯定も否定もしていなかったように思う。  昼食のそうめんを食べ終わった頃、洗い物をしている叔母に声を変えた。 「おばさん、山に行って虫を捕ってきてもいい?」 「...
  • 27-579
    女装×筋肉  俺の恋人はとても綺麗で、とても嫉妬深い。  お仕置き、と称して手首をぐるぐる巻きに縛られた俺は恐る恐る目の前の恋人を見上げた。目が合った瞬間、グロスで光る唇を美しくしならせて微笑みかけられる。 ぞくり、恐怖と甘い痺れとに背筋が戦慄いた。  つつつ、としなやかな指が筋肉の隆起をなぞるように、露わになった肌を胸元から下腹まで辿っていく。たったそれだけのことに息が乱れた。 「すっごぉい筋肉ぅ」  瞬きをする度にパチパチと音が鳴りそうな睫毛に縁取られた切れ長の目、スッと通った鼻梁、誰もが見惚れるほどに整った顔立ちから、掠れ気味の裏声が洩れた。 反響するように甘ったるい声が頭の中で再生される。ついでに腕に当たるふくよかな胸の感触も思い出していた。 「って言われてうれしかった?随分頭の悪そうな女だったけど、ああいう女好きだもんね?」  オクターブ以上下がった声音に...
  • 20-579
    やっと追いついたと思ったのに やっと追いついたと思ったら、彼は次に行ってしまう人だった。 自分が四回転に成功したと思ったら、彼は難易度の高い四回転に成功して翌日の新聞に大きく載った。 常に同じ技に挑戦していたから、ファンからは彼の劣化コピーとなじられた。 僕は彼より高い表彰台にのぼった事はない。そして、もうそれは出来ない。 「西谷選手、世界選手権優勝おめでとうございます」 「ありがとうございます」 「完璧な演技でしたね」 「イメージ通りに滑れたのは良かったと思います」 「このプログラムは今は亡き佐武選手の代表作と同じ曲ですが、プレッシャーはありませんでしたか?」 「大事な曲なので大切に滑ろうと思いました」 「もうあの難易度のプログラムを滑る選手は日本からは出てこないのではと言われていましたが」 「一つの形に出来た事には満足しています」...
  • 18-579
    郵便配達員 「頼むよ、いつもの通り送っておいてくれ」 すっかり恒例となった友人とのやり取り。その最中にインターフォンの音を聞いた俺は 会話を手短に済ませて携帯を机に置くと玄関へ急いだ 軽く深呼吸してから扉を開けると、真新しい郵便配達員の制服が目に飛び込んだ 「郵便です」 そう言って笑う彼の初々しい姿に自然と胸が高鳴った。ここ二か月ほど週に何度も顔を合わせているので その笑顔は営業スマイルではなく本心からなのだろう…と、自分に都合のいいように思っている 本来であれば手紙は玄関に取り付けてある郵便ポストに入れられ、こうして配達員と顔馴染みになる ということも少ないのだろうが そんな邪魔なものは新任の配達員としてやってきた彼と、初めて顔を合わせたその日に取り外してしまった 2人を隔てる無粋なポストなんてものは俺には必要ないのだ 「いつもの田中さんからですよ」 「...
  • 11-579
    ネタばれ 10月24日(火) 今日はダビデ君(偽名)と遊んだ。 メガネ君とは違ってダビデ君は友人として好きだ。 二人で近所の池に釣りに行った。 一時間粘ったけど何も釣れない。 隣でダビデ君がぶつぶつ独り言を言ってたが無視した。 すると突然『エサが悪いのかな~…』と言って、 何を考えたか知らんが噛んでたガムをエサとして使いだしやがった。 さらに『まだ微妙に味付いてるし大丈夫だろ…。グレープ味だし…。』とほざく。 大丈夫の基準がよくわからん。 そもそもグレープ味が彼の脳内でプラス要素として扱われていることがよくわからん。 まあ…それでも釣れなかった。 すると突然『カロチンが足りないのかな~…』と言って、飲みかけのトマトジュースを池に流し始めた。 池がほんのり赤くなっていった。 『いい色になってきたじゃんか♪』と彼はほざいた。 『魚も...
  • 10-579
    愛したい その男はにっこりと微笑んで倉をあけた。「ここにある全て、あなたのお父様があなたに残されたものですよ」 私の義父は素晴らしい小説家であったらしい。今私の教えている小学校では彼のある家族団欒の一遍が記載されてあるくらいだからだ。 素晴らしい小説家であることは確かであったが、彼の人間性は非常に神経質で攻撃的であった。 私の母と義父の間には、長年子宝に恵まれず、やっと二人に授かった子は義父の種ではなかったらしい。 故に義父は私を憎んだ。少しでも仕事がうまくいかないとことあるごとに、ああ足音がうるさいだの声がでかいだのと 私の腹や顔を何度も殴り、飯を抜かせ倉に閉じこめた。 今思えば体罰というよりは虐待に近かった。 私は彼を恨んでいたし憎いと感じていた。ただ、彼の唯一尊敬すべき点は彼は心から母を愛していたので 彼女を淫売と罵ることはあっても一切暴力をふらなかったことで...
  • 25-569
    食えない男受け 付き合ってる女、狙ってる女、知り合った女・・・俺に関わった女は右か ら左で村崎に流れていく。 友人からは「あいつとの付き合い考えろ」と言われていた。 俺も村崎もシモ事情は緩い。だから俺は女を取られたなんて全く思わ いし、向こうも寝取ったとは思ってないだろう。 徹底的に嫌われるタイプではないものの、友人の言うこともわからなく はない。村崎は要領のよさが目に付くところがある。 例えば今夜のように、翌日朝イチで講義がある場合、学校に近い俺のア パートに泊まったりするところとか。 「次は男にすっかな。おまえに手ぇ出されないように」 アパート近くの中華屋で晩飯を食いながら、眺めていたナイター中継が CMに切り替わった時、俺は冗談のつもりでそう言ってみた。 村崎がどんな反応をするか見てみたかったという気持ちもあった。 「じゃあ俺でいい...
  • 25-559
    ノンケ(→)←ナルシスト というわけで部屋は1つしか空いてないと、素っ気ないフロントは言った。 いい加減長い言い訳を聞くのも疲れたので、俺はあきらめた。 「じゃあ、それで良いです。簡易ベッドあるでしょう、運んでください」 料金はもちろん、二人分より割り引くよう付け加える。 加藤は何故かふんぞり返った。 「ふーん」 してやったり、の笑顔だ。 それっきりもの言いたげな顔のくせに黙り込んで、部屋まで後ろをついてきた。 歩きながら俺が 「簡易ベッドはジャンケンな」 と言うと、「……別にどっちでもいいんじゃないの?」とうそぶく。 絶対文句言うタイプなんだが。小さいベッドじゃ体が痛いとかなんとか。 だから、絶対なにか誤解している。 いい顔してるのは認める。仕事もまあできる方だと客観的に評価できる。 だから自分を過大評価する癖も、処世術の一つだろうと大目に...
  • 25-529
    ちゃんと俺の背中に隠れてろよ 投下無さそうなので拙いですが萌え語りさせて下さい 個人的には死角である背後に隠せるっていう信頼がこの言葉一番の萌え所だと思います パターンA、世話焼き幼馴染と気弱な苛められっ子 心は優しいけど気弱なせいでよく面倒を押し付けられる苛められっ子 しかも真面目だから押し付けられた事全部しっかりこなしちゃう手を抜けないタイプ 中々怒れない苛められっ子の代わりにキレて庇って手伝ってと大忙しの幼馴染 勿論幼馴染の口癖は「○○、ちゃんと俺の背中に隠れてろよ」 庇ってくれる幼馴染が居るから毎日頑張れる苛められっ子 いずれ持ち前の真面目さを生かして成功し幼馴染に恩返ししまくったりする パターンB、何事にも動じない男と臆病へたれ霊感男 常に無表情で淡々としてる動じない男とそれと正反対に リアクションが大きくちょっとした事でもびびる霊感男 ...
  • 25-599
    神経質な敬語攻め 「――こら、宮島さん。ソファで転がってアイス食べない。前もそれで零したじゃないですか」 「あ。……あー、そんなこともあったねえ」 「大体貴方、さっき歯磨いたばかりでしょう」 「うん。後でもっかい磨く。暖かい部屋でごろごろするの幸せだよ、タカもやんない?」 「やりません」 呆れ顔で頭痛を堪える隆之の前で、宮島がにへらと笑う。 取り上げたバニラのアイスをダイニングテーブルに置くと、ご飯を置かれた犬みたいに、つられてふらふら起き上がってきた。 「立ち食いじゃなく、椅子に座って食べて下さいよ」 先に釘を刺すと、はあい、とのんびりした返事が宮島の口から発せられる。 大の男が行儀良く、そして幸せそうにアイスクリームを食べているのをじっと見守って。 そして少しだけ、眉を顰めた隆之に、宮島が首を傾げた。 「……どうしたの、難しい顔して。ごめんな、怒っ...
  • 25-549
    大掃除で発掘 年末ということもあり、俺と恭平は気合を入れて掃除をしていた。 いるもの、いらないものにきっちりとわけてものを漁っていると。 「(お)」 懐かしすぎるモノを、見つけた。 少し色あせた色の封筒をあけ、紙を開く。カサリ、という音がなんだか懐かしい。 高校生のときに貰った、彼からのラブレター。あまりに稚拙な字並びに思わず笑みがこぼれる。 「海?」 背後から声が聞こえて、心臓が大きく飛び跳ねる。振り返ると、恭平が人懐こい笑顔でこちらを見ていた。 俺は胸をなでおろしてこれ、と紙を見せると、彼の顔がかあ、と赤くなる。 「お前、ほんと、なんでとっておいてあるんだよ!」 「バッカとっておくだろそこは!」 当時、あまりにシンプルな一文に、ひどく胸が震えた。 真っ白い紙に、ただ一言「好きだよ」と。 「俺、これもらったとき嬉しくて仕方なかったんだぞ!」...
  • 25-519
    全部嘘だったんだ 祖国があって、組織があった。そこにはお互いを同志と呼ぶ人たちが出入りしていた。 彼らは熱心に話をしたり、武器の手入れをしたり、肖像画の男を崇めたりして過ごす。 暇なときには銃の扱い方や、理想の世界や、悪い政治家の話を僕に聞かせたりもした。 気まぐれに、煙草やキャンディをくれることもあった。 決まった時間に「先生」がやって来る。長い時間をかけて一通りの勉強をする。 僕が十七歳になった日、「先生」は言った。 「君は優等生だ。祖国のため、立派な働きを期待しているよ。同志」 返答に迷っていると、彼は親しげな仕草で僕の肩を叩いた。 「大丈夫、君は本来は存在しないはずの人間なんだからね。何者にだってなれる」 名前と経歴と身分証明書をもらって、僕は組織の人間になった。 外へ出て人と接触し、情報を持って帰る。 特に満足感も不満もなかった。蜜蜂にでもなっ...
  • 25-589
    殺したいくらいの愛情 喉から言葉が出かかった。 思うさまに罵詈雑言を浴びせ、罵り、蔑み、殴りつけてやりたかった。 それを止めたのは、皮肉にも目の前でうなだれている奏太の言葉だった。 「ごめん。ほんと、反省して……」 「反省って、何のだよ」 「いじめ、の事」 目は泳ぎ、顔色も悪い。 当たり前だ。 今、彼の命運を握っているのは、表情を無くして立っている隼人だからだ。 隼人の手は、奏太の腕をしっかりと掴み、ギリギリと締め上げる。 「俺、別にお前の反省なんていらないよ」 「じゃあなんで!?」 「ただ憎い。それだけだよ」 手を離せば、奏太は落ちる。 自分が招き寄せておいて、それが少しだけ惜しくなる。 「や、めろ!だったらお前だって、俺が死ねばいいって……!」 「思ってるよ、もちろん。この手を離しても、いいくらいだし」 「じゃあ」 ...
  • 25-509
    移り気 小学校何年生だっただろうか。 当時高校生だか大学生だった叔父に、自由研究の手伝いを頼んだことがあった。 紫陽花の花で土質がわかると何かの本で見て、花に詳しい叔父を頼ったのだ。答えはノーだった。 「紫陽花の花はあれじゃない。あれはただのガク」 そう言ってあしらわれた。 かじかんだ指先に凍える息を吐きかけながらふと、そんなことを思い出した。 あれから何年経っただろう、恒例と化した年末年始のアルバイトで僕は、叔父の経営する花屋にいた。接客の合間、延々と花束や鉢植えにつけるためのリースを作る。柊がささくれた指にチクチクと痛い。 「おじさーん、おじさんも手伝ってよ、一人じゃ終わんないよ」 お客が切れたので声をかけると、外から花屋に似つかわしくない男がずかずかと店内へ入ってきた。 「弘平くん、お店で大きい声を出さないでくれるかなー?」 貼り付けたような笑顔に向かって...
  • 4-579-1
    いやいやながら女装 この場合、学園物は定番過ぎると、時代劇の萌えあらすじを。 ある城に政略結婚をさせられそうな姫がいます。だが、姫には相思相愛の身分違いの相手がいて、ふたりで駆け落ち、でなければ心中しようかと。 そこで、姫の恋人に密かに恋をしている若侍が、恋する相手に悲しい思いをさせたくないがために、自分の想いは胸に秘めたまま、泣く泣く想い人の恋を成就させようと、深夜、ふたりを手助けして逃がしてやります。 当然、翌朝城は大騒ぎ。姫は居ないは、婚姻の日取りまで間がないは、なんせ弱小国ですから、この結婚を破棄して相手の大国に恥をかかすなんて死活問題。 そんな大騒ぎの中、姫を手助けして駆け落ちさせたのが、若侍だとばれて、責任を取って切腹させようかという事に。若侍も元よりそれは覚悟の上、白装束を身に纏い、いざ切腹をしようとした所、若侍の美貌に目を付けた侍従が、別の形で責任...
  • 9-579-1
    かごめかごめ 「かごのなかのとり、とは腹の中の赤ちゃんのこと。夜明けの晩に滑って流産したって比喩だ。 しかし一説には息子を溺愛する姑に背中を押されたって説もある。いずれにしろ悲しい唄なんだ。軽々しく口にすんな」 まーた始まった。 『日本の民話童謡研究会』なるサークルの一員である彼は、何かにつけ俺の話の腰を折る。 「じゃいいよ。明日ははないちもんめで遊ぶから」 「花一匁とは花=子供、匁=金銭単位。つまり口減らしのための人身売買の唄だ。 あの子が欲しい、この子が欲しいと売られていった子供の気持ちを考えた事あるのか」 「…。」 そんな唄なんかよ。 「あっえっとさ、今日さ、初めて絵本読ませてもらったんだ。純真無垢な瞳に見つめられてドキドキしたよー」 「何読んでやったんだ?」 「ピーターパン!ちょっとトチッちゃったけどどうにかうまく、」 「ピーターパンなんて野蛮な話...
  • 27-579-1
    女装×筋肉 「今日は勇樹にいいモノを持ってきたんだ」 「ん、何?………なんだ、コレ?」 「見ての通り、ひらひらフリルのドレスだよ。勇樹に似合うと思って」 「つまり、俺にコレを着ろと?」 「うん」 「嫌だ」 「え、なんで?」 「なんでって、俺に似合うわけねぇだろ?」 「絶対に似合うって。ねぇ、お願い、勇樹。一回だけでいいから着てみて」 「嫌だ、つってんだろ!?」 「だって、想像してみてよ。ひらひらフリルを引きちぎるとそこにはみっしりした筋肉が…!すごくそそられる光景じゃない?」 「そそられねぇよっ!つか、キモいわ」 「えー、そうかなぁ…。ひらひらフリルって男のロマンだと思うんだけど」 「男のロマンは否定しねぇけど、この場合は当てはまらねぇよ。っていうか聡、そんなにひらひらフリルが好きならお前が着ればいいじゃねぇか。お前細っこいし女顔だし、俺よりよっぽど似合...
  • 17-579-1
    中ボス  腹に熱の塊が食い込んで、俺の身体を容赦なく吹き飛ばした。柔らかい葉を焦がし、華奢な木々をへし折って熱風が後を追ってくる。瞬間目の前が暗転し、気がついたときには濡れた地面の上で、木々の間の狭い空を見上げていた。体中が痺れて感覚が無い。声も出ない。  積もった葉を踏み潰して、人影がこちらに近づいてくる。目がかすんで顔は見えないが、今しがた俺を吹き飛ばした魔術師か、勇者としてその名を轟かせている青年のどちらかだろう。他の者は皆彼等に殺されてしまったのだから。  彼等が何の為にこんな森まで来たのか、予想はつく。恐らく、あちらこちらで暴虐の限りを尽くしている俺の主を殺しに来たのだろう。  胸倉を掴んで引き起こされた。鎧の固い感触。唇が何事か動いているが、言葉が聴こえない。何事か俺に尋ねているようだったが、視界が水の中のようにぼやけていて、何も判らなかった。  殺すか。 ...
  • 17-579-2
    中ボス 裏切ったわけじゃなくて、最初から決まっていたことだったんだよ。 俺は最初からおまえの仲間じゃなかった、だからこれは裏切りではないんだ。 おまえがもし俺のものになってくれるなら、俺はおまえを殺さなくてもいいし、世界をほんの少し分けてやることもできる。 あの方が世界を掌握した暁には、半分は俺に下さると仰っているからさ。 おまえの生まれたあの村、おまえの家族や友人が住んでいるあの村をあのままに残してやることもできる。 でもおまえはそういうことを望みはしないんだろうな。 軽蔑するか?俺を。世界の半分をくれてやるといわれてたやすく靡いた卑怯者だと。 そう思われるのはかまわないし信じてもらえなくてもいい。 だけど俺はあの方を信じただけなんだよ。 あの方の統べる世界を、俺は見てみたかっただけなんだ。 生も死も捧げようと思った、だから死ぬことは怖くない。 ただおまえ...
  • 22-579-1
    日韓友好 夕食を早食いして、洗面所でセミロングの髪を輪ゴムでポニーテールにまとめて、俺は家を出た 行き先は歩いて五分の距離にある築五十年の剣道場。十一月下旬。かなり寒い 短いが急な坂を上った先に旧式の電球型街灯に照らされた日本家屋が晩秋の夜に浮かび上がっている 黒船が浦賀に来航した嘉永六年生まれの俺から六代前のご先祖は、幕末の剣豪の生き残りたちから剣術を直伝された剣士だった 明治の終わり頃に土地を買って、後世に技を伝えるために剣道道場を開いた。数度の建て替えを経て道場は今に至る 実はこの道場の所有者は高校二年生の俺だ。自由に使えるという意味ではない。民法上、正式に俺の名義なのだ 前の所有者は道場開設のご先祖のひ孫、つまり俺の父方の祖父だ。その爺ちゃんが去年の春に急病で倒れた 爺ちゃんは死期が近いと思ったらしい。爺ちゃんの子供は一人娘の俺の母親だけ。娘婿の俺の父親は剣...
  • 25-979
    高給アルバイト 「本当にこの薬飲んだら5万なんだろうな?」 「当たり前だろ、僕が嘘ついたことあるかい?」 「つきまくりだろ。メンマは割り箸煮込んだのっていうの俺中学まで信じてたんだからな」 「ばっかだねえ」 「うるせえ」 「まあまあ早く飲んで。今度のはかなり安全に作った自信作なんだ」 「どーだか」 「どう?」 「うーん、特に変化はねえな」 「ありゃ、失敗かな?」 「どういう薬だったんだよ」 「え? ありていに言うなら惚れ薬かな」 「へ!?」 「どうだい? 効いてる?」 「は!?」 「だーから、薬効を聞いてるの。 今すぐここで、『お前が好きだ』って言ったらバイト代は2倍にして指輪もつけてあげる」 「な、何いって……」 「ねえ、僕のこと――好き?」
  • 25-079
    ツンデレ攻め×ヤンデレ受け  どうしたって好きな事実は変わらない。 俺は間違いなく自分を組み敷いているこの人が好きで、自分より小さいこの人が好きで、 自分よりもずっとずっと輝いているこの人が好きだ。愛している。命をささげられるといってもいい。 白シャツのボタンを丁寧に外していく彼の手首をとって軽く噛み付くと、苦い顔をされた。 「いってえよ」 「ごめん。でも好きだから」 少しの間があって、賢一郎はならいい、と唇を尖らせて言った。 じっくりと外されるボタンを眺めるのは妙にエロい気分になる。全てのボタンが外れて腹部を撫でられる。 ぞわりと、背筋に妙な悪寒が走った。気持ちいいってことなのだろうか。 柑橘系のかおりがしたかと思えば、賢一郎の唇が優しく触れる。普段はキツいことばかりいってくるのに、 ひとつひとつの動きが繊細で優しくて、俺ありき、って感じで好き。俺...
  • 25-879
    月と木星とアルデバラン 母が心配している、そう言って帰ろうと、何度も思った。 けれどその言葉は終ぞ僕の口をついて出ることはなく、辺りは夜になっていた。制服とコートだけでは寒い。 僕は冷えた左手をポケットに突っ込みしきりに動かしながら、近江と繋いだ右手を中々動かせずにいた。 横を見ると近江の右手も僕と同じようにコートのポケットに突っ込まれていた。寒さのためか、もぞもぞとポケットが動くのが見えた。 鼻が冷たい。きっと耳も。 近江と繋いだ右手だけが熱い。 「木崎、もう少し遅くなっても大丈夫?」 その時近江の声にこもった、なんとも言えない気持ちを僕は一瞬で理解した。共有した。 そうして僕は、生まれてから今日までと、明日は、今夜は違う。そんなことを確信していた。 「……うん。大丈夫」 近江は僕の手を軽く引いて、青白く光る月の下をぐねぐねと歩いた。 どのぐらい歩いたのか、...
  • 25-779
    一番知られたくないこと 拝啓 中野君、まだまだ寒いですがいかがお過ごしでしょうか。 僕は元気です。いま、北海道にいます。 君は顔もガッカリですが好みもガッカリなので、日本3大ガッカリスポットの時計台の写真を同封します。喜んでくれるかな? さて、僕がなぜ北海道なんかにいるかというと、面と向かって話す事も出来ない話ですし、この手紙を受け取った君がすぐに僕の元へ訪ねてくる事も出来ないように出来るだけ遠くに行こうと思ったからです。 僕はこれから君に一番知られたくなかったことについて、決心を決めて書こうと思います。 君は、顔は本当に地味で、特徴がなくて、身体つきも中肉中背、黒髪短髪という全くといっていい程個性がないヤロウですね。 親近感が湧くのか知りませんが地味なものやガッカリスポットを好み、友人も似たようなヤツばかりですね。僕を除いて。 その点僕はど...
  • 25-679
    恋人はサンタクロース 嬉しいな。今日の夜は僕のもとに帰ってくるあの人。 世界中のこどもの夢とあこがれでできている、赤い服と白いおひげのおじいさん。 優しい笑顔といっしょに、心のこもった贈り物をたくさんの人に分け与える。 大きな愛ですべてを包む、神様。 僕は、いつもその人のそばにいる。 あの人が普段何をしているかって、それは世界中の人がいろんな想像をめぐらす永遠の秘密。 プレゼントを用意してる? みんなに手紙の返事を書いてる? それとも休暇中? 僕は知ってる。あの人はいつもね…… 僕はお仕事を手伝う。 膨大なお仕事。気の遠くなるような。 どうやってこなしてるかって? そりゃあたくさんの人数、魔法の力、莫大な資金……なんて。 皆さんのご想像におまかせします。本当のところは誰も知らない。 誰もが知ってるおじいさん。赤い服の神様。 でもあ...
  • 25-179
    徐々に好きになる  最初はただの共演者だった。 同業者で、いい声をしてるなあ、演技うまいなあ、とその程度の認識。 でも少しずつ、仕事が重なる機会が増えて、彼の中身が見えるようになってきた。 それが俺たちのファーストステップ。 「あれ、それ、健くんも好きなんだ?」 「え、うん」  そういって話しかけられたのがセカンドステップ。 背後からそう言われて驚いたのも、いい思い出。人に引かれてしまうほどにはゲームオタクだった俺にとって、 同様の趣味を持つ同年代の友人は貴重すぎるほどに貴重だった。 それから確か、話すことが増えた気がする。 「今度俺に服選んでよ」 「ええ? なんで」 「健、センスいいじゃん。ね、お願い」  服選びという名目で二人で出かけたのが、サードステップ。 これがきっかけでちょくちょく遊びにいくようになったのを、覚えて...
  • 25-279
    本物とニセモノ 放課後の教室は、人もまばらでどこか寂しい。 そんな教室に、うるさい奴が入って来る。 「ナイトー、俺、またふられちまった」 遠野はそう言って俺の机に縋りついて来た。これで何度目だか解らない。 遠野がふられるのも、こうしていちいち俺の席へやってきて泣き言を漏らすのも毎度の事だ。 「なあ、ナイトー、俺の何がだめなんだと思う?」 「とりあえず、俺が女ならいちいち事あるごとに友達のところへ来てそういう事を言う奴はお断りだね」 「……ちぇー。ちゃんと聞いてくれると思ったのに、つめてーの」 そう遠野が言うのも無理はないだろう。これまではきちんと遠野の泣き言にも付き合っていたし、それなりに慰めもしていた。 けれど、今回はそんな気になれなかった。気づかない方がいい事に気づいてしまったからだ。 「ほんと、俺、ミリョク? っつーのがないのかな。なあ、ナイトー」 「知...
  • 25-479
    二才の差が埋まらない お前は3月生まれ、俺は次の年の4月生まれ。 1年ちょいしか違わないのに、学年は2つ違い。 これって由々しき問題だと思うんだけど、どう思う? 「…なんだって?」 だから、1年ちょいしか違わないのに2学年も離れてることがおかしいっての! 「はぁ。まぁ。そうなるね」 なんだよその気のない態度! 1学年でも離れてたら同じクラスにはなれないし、一生ずっと同級生にもなれないし、机が隣り合うこともないし、運動会は敵味方に分かれるし、いいことないじゃん! 「…ぷっ」 な、なんなのその馬鹿にした目は! それが愛を訴える恋人に向ける目なの!あ~もうムカつく! 「それならさ、1学年も2学年も違いないじゃないの」 言うと思った!冷たいよねそーゆーとこ!他人とか動物とか、もっと言っちゃえば「俺以外」には優しいくせに...
  • 25-789
    そんなに好きって言わないで 数年ぶりに対峙した元恋人は、記憶とは変わった姿で、思い出とは変わらぬ雰囲気で俺の前に現れた。 この世の全てを愛しているかのような視線を、どこに向ければいいのか戸惑っている。 「矢野くん」 部屋に響く横山の声が、俺の体中に共鳴し、染みて行くのがわかった。 懐かしい声。横山の声。 「なにから話せばいいのかな、ちょっと急すぎて、考えてなかった」 横山がなぜか嬉しそうに照れ笑いをする。 それが妙に苛立たしく、俺は「なんでもいいよ、どうせたいして話すことなんかねえだろ」と毒づいた。 そうだ、大して話すことなどないはずだ。 俺と横山が「恋人のようなもの」だったのは、7年前、中学時代の数ヶ月間だけだ。 思春期丸出しの、青臭い付き合い。何があった訳でもなく、ただ「同類だ」とお互いが気付いた。今考えてもあれは恋ではなかった。 「手を繋いで、帰ったのを...
  • 579-1
    日韓友好 「邪道だ」 俺は激怒した。 必ず、爽やかなはずの朝の食卓に鎮座する、邪悪な赤色の物体を除かなければならぬと決意した。 わりと本気で言っている。冗談を言っているわけではない。 「その赤い悪魔をすぐさま下げろ!不愉快だ!!」 「またそれ?もういいじゃんか。おいしいから食べてみろって。納豆キムチ」 赤い悪魔を食卓に置いた張本人、いわば悪魔を裏から操る大魔王は、実に嫌そうな顔をして言い放つ。 食卓に並ぶのは、まだ米がよそられていない空の茶碗と、白いパックに入ったままの納豆。と、その隣の小鉢にいれられたキムチなる赤い物体。 朝からこの悪魔と大魔王の嫌な顔をいっぺんに見なきゃならないなんて、まったく腹がたつ。 「ふざけるな!納豆はな、ストレートに食うのが一番うまいんだよ。ありのままでうまい納豆になにか別のものを混ぜるなんて邪道でしかない。生卵だ大根おろしだ、そんなチ...
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