*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「25-829-2」で検索した結果

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  • 25-829-2
    イカ×タコ 「よう無事だったか、タコ」 「その呼び名、やめてくんないっすか。手賀木さん」 悪りい悪りいと悪びれなく笑い、手賀木さんは俺の頭、正確にはカツラをぐしゃぐしゃにする。それを無視しながら、俺は今回の報酬のアタッシュケースを無造作に放った。 「にしても、タコは本当化けるな。この前の筋肉バカの姿と今のインテリが同じ奴とは誰も気づかねえよ」 アンタ以外はな、そう脳内で呟く。いわゆる"普通の世界"で、自分の特技を自己満足に披露していたのは、もう随分前だ。 『なあ兄ちゃん、タコって知ってっか?他の生物に化けては、周りに溶け込んで、体の形まで変えちまうんだ』 安らかな深海に留まっていた。 『兄ちゃん。普通の世界つうのは、つまらねえと思わねえか?』 急流や危険ばかりある海中を泳ぐ気なんてなかったのに。 ...
  • 25-829-1
    イカ×タコ 神様は不公平だ。 イカもタコも海の悪魔と呼ばれ同じように恐れられているのに、実は奴と僕には差がある。 今まさに、それを思い知らされていた。 イカの手に僕の五本の手と大事な部分は絡み付かれ抵抗出来なくされているのに、イカにはまだ二本も自由な手があってそれが僕の体をくまなく這い回る。 「離せこのすっとこどっこい!」と悪態をついても、いずれこの唯一動かせる口の中にもイカの手が潜り込んで掻き回されるんだ。 悔しい。 手の本数が違うだけで抵抗出来ないなんて……。 以前、腹が立ってイカの顔に墨を吐いてやった。 でも僕の墨は辺り一面に広がるけど、その分拡散するのも早くて何の役にも立たない。 仕返しとばかりにイカが吐いた墨は粘度があって、目の前を塞がれたように何も見えなくなってしまった。 そのせいで、イカの手の動きを何時もより強く感じてしまった。 歯がゆい...
  • 25-829
    イカ×タコ ※*9から12時間経ったので どちらも優れた擬態能力を持つ海のハンターなんですけど、意外と力強くて小型のサメなら倒してしまうタコにイカは惚れ込んでしまうのです。 惚れ込んだといっても最初は同じ頭足類である親近感と、腕力に対する憧れ。イカはタコは愛嬌ある顔の元気な後輩だなーと思ってる。 でもいつしかイカは知勇兼備なところに惚れ、慕情へと変化していくのですよ。 そして抱きしめたいと思うんだけど、イカの吸盤には棘があって吸い付くと傷ついてしまう。 けれど好きで好きで悶々としているところに、タコが足を一本欠いたままやってきて、 訊いたら大したことないような態度で「ウツボに絡まれたので足を切って逃げてきた」というものだから、 その暢気な物言いにぷつんとキレて思いの丈をぶつけるんですよ。 その思いに絆され、もっと自分を大事にする。でもお前になら傷つけら...
  • 7-829-2
    もし明日死んでしまうとして もし明日死んでしまうとして、 俺が18年間生きてきたこの世界に悔いを残さないよう締め括る為には何をしようかと、 退屈な授業の合間に、そんな意味のない事をふと考えてみた。 (まずエロ本捨てるだろ、んで、美味いモン腹いっぱい食って……つーか俺童貞じゃん。そりゃせつねえだろ…誰でもいいからヤって…) そこまで考えて顔を上げると、目の前にイライラ顔の山田がいて驚いた。 「てめぇ聞いてんのかボケ!」 「ボケじゃねーよ!何だよいきなり」 「いきなりじゃねーよ!ずっと話しかけてんだろ」 いつのまにか授業は終わったらしく、気の短い山田は前の席にドカっと座り込んで不機嫌そうに眉を寄せていた。 山田とはかれこれ10年近くの付き合いだが、いまだに切れどころが掴めないで困る。 (そういやコイツ、彼女とか聞いた事ねぇなぁ…) 「なぁ、お前ヤった事ある?...
  • 16-829-2
    男の娘受け          ,. -‐'""¨¨¨ヽ          (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!           |i i|    }! }} //|          |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは女の子に痴漢をしていたと         i| !ヾ、_ノ/ u { }//ヘ        思ったらいつのまにか男の子だった』         |リ u }  ,ノ _,!V,ハ |        /´fト、_{ル{,ィ eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが      /   ヾ|宀| {´,)⌒`/ | ヽトiゝ        おれもナニを触ったのかわからなかった…     ,゙  / )ヽ ...
  • 5-829
    俺の生死を握る人 「…攻めがいなくなったら、生きていけないかもしれない。」 信号待ちの間、ポツリと受けが呟いた 「らしくないこと、言うな?」 そんなキャラじゃないくせに、と攻めが肩を竦めると 冗談じゃないよ、とハンドルを握っている受けの手に力が込もった 「…じゃあ、俺が死んだらオマエも死ぬのか?」 「……あぁ。」 青に変わった信号に気を取られたのか、一瞬遅れた答え。 受けはアクセルを深く踏み込んだ 出逢った時から。 攻めの命は受けのものだった 受けがいたからこそ、生きてこれた 「…事故りそうなスピードだな」 微笑しながら オマエが決めたらいい、と攻めは静かに目を閉じた 行ってくんなきゃわかんねーよ言ってくれよ×言わなくてもわかれよ馬鹿
  • 9-829-1
    ノンケ親友に片思い 兄さん、お元気ですか。そちらは相変わらず暑いですか。 今日は下宿先に春日が、貸していた本を返しにやってきました。 上は白い袖なしのランニングシャツに、紺色のジーンズを履いて、 足元は健康サンダルと、いつも通りの気安さでした。 春日とオレは本の好みが似ているみたいで、 この時の本も気に入ってくれたようでした。 板塀沿いの木戸をくぐったら裏庭があって、犬小屋があって、 縁側が張り出していて、棹に干した洗濯物が揺れていて、 お世話になってる下宿先のご夫妻は旅行に行ってて、だから今日は 日がな一日オレが留守番をしていて、冷蔵庫を開いて麦茶のグラスに 氷を入れて、しま模様のストロー立てて、 風鈴がちんちろ鳴ってる下で、サンダルの足をぶらぶらさせながら、 春日とオレは本の話をしました。今度映画になるのもあって、 それは見てみたいなあと、春日は言っ...
  • 7-829-1
    もし明日死んでしまうとして 白色とクリーム色が支配する部屋の窓から、揺れる最後の花を見ていた。 ノックの音に振り返れば、四角く切り取られた空間に いつも通りの感情を読ませない顔がある。 今日の授業の内容を告げる口調にも一切の私情は見られない。 (知ってるくせにッ……!) 学校に行けない俺のために、 せめて遅れないようにと気遣ってくれていることはわかっている。 届けてくれるノートのコピーもわかりやすいようにと丁寧に書いてくれている。 それでも、その無表情が辛い。 「もし……もし、明日の手術に失敗したら……きみの苦労もムダだよ」 流れるように続けられる言葉を遮るように口を開く。 知っているはずなんだ。俺の気持ちも、明日の手術の成功率も。 無言で、ただまっすぐに見つめてくる視線。 耐えられず、顔ごと逸らした。 逸らした目に...
  • 6-829-1
    金魚すくいにいる亀  自分より小さい「魚」は、自分の餌だ。  私は長い間かけて自分の居場所の特徴を悟った。このつるんとした場所は 仕事場。自分の仕事は「そこにいる」こと。もう大人となったこの身体で。  ごく稀に、遊びとして<モナカ>の―あるいは<紙>の―網を身体の下に 滑り込ませる客もいる。しかしもちろん自分を持ち上げられるはずはない。  そんな時興行主はこう言う。 「お客さん、あの亀、とって帰ってくれませんかね。こいつ、金魚を喰っちまう  んですよ。全く仲間意識のない奴でね」  時には、私が水槽中で食欲を抑え切れなかったときには特に、こう話すことで 彼は客からの更なる数回分の散財を引き出すことに成功するのだ。 ―ばかな。餌をちゃんともらっていれば、彼らを食べる必要などないのに。  ああ神様、彼を食べさせないで下さい。どこで聞いてきた...
  • 12.5-829
    どうしようもないバカ野郎 夏にはまだまだ早いだろうに、額にも背中にも汗が伝う。 狭苦しい四畳半に二人きり。 なのに、奴はトランクス一枚で、部屋のど真ん中に転がっている。 「アチーよークーラー買おうよー」 起きたままそんな寝言を呟いて、大の字に伸ばした手足をモゾモゾさせる。 「無理。欲しけりゃそれだけの金を稼いで来るんだな」 吐き捨てるように返せば、不貞腐れてそっぽを向く。 空気の重い沈黙に耐えかねたのか、のっそりと立ち上がって部屋を出て行った。 本当にどうしようもないバカ野郎だ。 怠け者のくせに貪欲で、耐えるということを知らない。 奴への憤りに、体の内側からも暑くなる。 外気の熱を吸った壁は、凭れさせている背中の皮膚を焼いていくようだ。 中からも外からも暑さを押し付けられ、あんな奴とはもう別れようと考えていた。 「たっだいまー!はい、キンちゃ...
  • 18-829-1
    「目を覚まさないで」 目を覚まさないでほしい。 そう思ったのは雪の降るある日のことだった。 可愛い寛和。このまま目を覚まさずに眠り続けてほしい。 そう思って生まれた時から彼が眠り続ける部屋に入って髪を撫でた。 弟の寛和は良く分からない子だ。なにせずっと眠り続けているのだから当たり前だ。 生まれたとき頭を打ったわけでもなく健康そのものだというのにずっと眠り続けている。 けれども他の同じような子供とは違って栄養もほとんど必要とせず、美しく成長し続けて現在に至る。 そして俺はその傍ら、寛和を心配し続ける両親とともにその過程を見続けてきた。 美しく伸びてゆく髪。白い項から覘く、年々すべらかになってゆく肌。その鼻梁。その足その肌その顔その腕その首その唇。すべてすべてすべてすべて。すべて、俺は見続けてきた。 それを不思議がりながら、それならば目を覚ましてくれと祈りなが...
  • 28-829-1
    追伸 好きでした 「前略 お元気ですか」 そんな一文から始まる手紙が俺に届いたのはGWを目前に控えた週末のこと。 細いペン字は書いた人間通りに角ばって、ちょっと左上がりの癖がある。 2年ぶりに見る字は相変わらず綺麗だ。 「君はどう過ごしていますか。堕落などしていませんか。 僕が居なくても大丈夫と言ったのは君のほうですが、以来何の連絡もしなかった僕は少々意地が悪いのではないかと最近思うようになりました。 元気でなくとも良いのです。君が君であれば良いと思っています。」 薄墨で引いたような色の文字に、同じく淡々とした文章が続く。 大学進学を機に離れた幼馴染は相も変わらず年相応のことを言いはしない。 きっと俺と違って変わりもせず、変わりものでいるのだろう。 ぼんやりとだけ思い出せる、メタルフレームの似合うあいつの横顔を思い出しながら便箋を捲る。 ...
  • 16-829-1
    男の娘受け 長い・無理矢理あり・厨 注意 世界は危機に瀕していた。 異次元からの侵略者が刻一刻と進攻してきており、この世界を我が物にせんと画策しているのだ。 しかし、地球に住む人類はその脅威を知らず平和に暮らしている。 なぜならば…!! 「ダイナミィイイイイィック!イクァイブリリウム!」 真紅の短髪を逆立てた少女がそう叫ぶと、彼女が持つステッキの先から火球が飛び出し、宇宙空間に浮かぶ戦艦を破壊した。 「よし!頼んだぞイエロー!」 「了解レッド!…本当の秘密は永遠に秘密のまま…クオリア…マリーズルーム!」 小爆発を続ける戦艦に向かい金髪を波打たせた美少女が手を広げると、空間がぐにゃりとゆがみ、月よりも大きな戦艦がたちまち収縮を始める。 「「ブルー!止めだ!!」」 「らじゃっ!」 軽快に答えたのは青のポニーテールもりりしい少女で、手に日本刀型のステッ...
  • 9-829
    ノンケ親友に片思い ノンケ親友に片思い。 一瞬ノンケが、親友(男)に片思いしてるのかな~と妄想してしまい、 ノンケのくせに男(親友限定)が気になり葛藤する様子(脳内劇場)に悶えました。 この場合本人に自覚はない方がさらに萌えます。 親友に彼女ができてなんでかわからないけど嫉妬してる?くらいがベストです。 本人に自覚がないので、互いに彼女を連れてダブルデートとかしちゃいます。 もちろん移動は自分 親友、彼女達の2列です。 彼女s 親友はちょっと変だなーと思い始めます。 極めつけはお化け屋敷です。ジェットコースターでもいいです。 ナチュラルに親友と二人で座ろうとし、流石に彼女から指摘を受けます。 ここらでようやく自覚します。俺、こいつが好きなんだ!的に自覚します。 ここから毎日自分と葛藤したり、意識しだして触れただけで勃起したりと ストーリー的には一番...
  • 1-829
    鬼畜受け 「あ…はっ いれ、させて…」 「まぁだ。やらしいやつだな」 「うく…」 攻めが体を朱に染めて身じろぎすると、体を固定している縄が体に食い込んだ。 真面目な優等生だった攻めは、いまや受けのされるがまま。 もう何十分もこうしているだろうか。受けの止まない辱めに翻弄され続ける攻め。 「あぁ…っ」 「もうイっちゃったの?お前早すぎ」 攻めを見る微笑みは冷たく、しかし抗いがたい熱があった。目をそらすことも出来ずに、攻めは受けに懇願した。 「お願い、こんなのイヤだ…受けが、いい…」 「ふぅん?」 おもしろそうに小首をかしげる。しかしその瞳の熱は、受けも欲しがっていることを攻めに知らせる。 それが容易に分かってしまうほど、攻めは幾度も地獄のような甘い夜を受けと過ごしてきた。 「受け、お願いだ…」 「ふふ…かわいいよ、攻め…」 動けない攻めに自らまたがり攻め...
  • 4-829
    お前の小さな台所で寝かしてくれ 夜中に喉が渇いて目が覚めた。 積まれた本の隙間、かろうじて床が見える場所を選んで歩き、台所へ向かう。 毛布にくるまった物体につまづきかけて、口の中で「おっと」と呟いた。 三畳程度しかない狭い場所に、無理矢理長い体を折り曲げて眠っているのは、中学時代の同級生だ。 (何でわざわざこんなところで寝るかなぁ) もちろん、本がみっしり詰まった1DKの安アパートで、人が寝られる場所はここしかないから、だが。 (家に帰りゃいいのに) 寝入る客をまたぐようにして、水道からコップに水を汲む。 よっぽど疲れているのか、足の間にいる男は目を覚ます気配すら見せない。 こんなところで良く眠れるもんだと、そろそろと足を引っ込めながらため息をついた。 別に付き合いが深かったわけではない。 母親が女優だかモデルだかで、見た目も育成史もひときわ注目の的だ...
  • 2-829
    干渉主義×傍観主義 干渉主義はちょっかいを出さずにおられない。 「お前うざいんだよ」 傍観主義は顔を上げぬまま静かに答える。 「君も暇人だな」 干渉主義は言葉を続ける。 「いっつも涼しい顔しやがってよ。お前なんて傍で見ているだけで何もできやしないじゃないか」 「ああ、俺は何もできない。無力なもんさ」 「お前のそのすぐ韜晦する態度が気に食わねえんだよ」 傍観主義は少しだけ顔をあげそして言う。 「俺が気に食わないなら俺に関わらなければいいじゃないか。人生は有限だ。その有限な時間を俺に費やしてもつまらんだろう」 「つまるとかつまらんとか、俺の時間だ、俺の好きに使っているだけだ」 「お前ひょっとして、俺のこと好きか」 干渉主義は目を剥き言葉を荒げる。 「んなわけないだろ!」 「好きの反対は嫌い、ではなく無関心とはよく言うからな」 ...
  • 6-829
    金魚すくいにいる亀 ひらひらと目の前を綺麗な赤い色が通り過ぎる。 他の誰とも違う色を、あの子は纏っていた。───それは目を奪われずにはいられないほどの。 傍に行きたくて。せめて、もっと近くでその色のひらめきを見てみたくて。 一生懸命泳いでみるけど、4本もある僕の足はどれもこれも短くて、バタバタとただ不恰好に水を掻くだけだった。 追いつけない、どうしても。 たくさんのひらめき。たくさんの色。 美しく、優雅に泳ぐ彼らの中で、僕だけが異質だ。誰もが僕を避けるように通り過ぎていく。 どうしてだろう。どうして僕だけが、こんなに彼らと違うかたちをしているんだろう。 もしかして今はこんなに異質でも、いつか重い甲羅は脱げて、足は優雅に水を滑る、しなやかな尾ひれに変わるのだろうか。 そうしたら、あの子に追いつけるのかな。 きっときっと、追いつける。 いつか来るその日...
  • 7-829
    もし明日死んでしまうとして 此処最近、他所の国から物騒なものが飛んできたと ニュースで流れているのを見る度に ”もし明日死んでしまったら”等と 時々の気紛れで、そんな事を考えた。 実際そうなると、日常なら仕事場か運が良くて自宅だよな。なんて あいつに冗談交じりで話したら、あいつは本当に 明日にでも、俺の命がこの世から消える様な表情で 俺を抱き締めながら”一緒に俺も追い掛ける”なんて切ない声で震えていた。 その抱き締められた腕の中で この日俺は、言って良い気紛れと悪い気紛れのある事を思い知った。 もし明日死んでしまうとして
  • 8-829
    魔法使いと仮病使い 魔法使いなんて出来損ないにとっては苦痛なだけだ。 人間よりも勉強することは多いし、色々と面倒だ。 今日は一応大事らしい進級試験の日だが、サボってやる。 どうせ、課題の魔法は使えないし、受けるだけ時間の無駄だ。 ゆっくり寝てやるつもりだったのに、なぜかクラスの委員長が迎えに来た。 ベッドに潜り込んだ俺にさっきから苦言ばかり言いやがる。 大体こいつは面倒見が良過ぎるんだ。 俺なんてほっとけば良いのに、絶対一緒に進級するんだってうるさくて仕方ない。 無視する俺に焦れたのか委員長は布団を捲ろうとするから俺は魔法をかけた。 俺の耳が蛸になるように。 布団が捲られた時、委員長が見たものは顔全体が蛸になった俺だった。 だが、これは失敗して良かったかもしれない。 委員長のあまりにも真剣な顔を見た俺の表情を隠すのに一番都合が良かったから。 ...
  • 3-829
    パジャマ B×Aということでパジャマ萌えしたいと思います。 こいつが、お気に入りのパジャマじゃないと眠れない…と泣いていたのは、ついこの間のような気がするんだけれども。 いつから俺は、あの泣いていた子供に押し倒されているんだろう。 「Aさん、さっきから何考えてるんだよ」 俺の首筋に歯をたてながら、Bがつまらさそうにささやく。 「いや、…お前、いくつになってもパジャマなんだなー、と思ってさ」 俺は、年上の余裕を見せるためにも、平然と聞こえるような声で答える。 Aは、顔をあげると、俺の顔をのぞきこみながら、ニヤリと笑った。 「だってさ、エッチする時は、パジャマの方がよくない? こう…ボタンをひとつひとつ  はずすのとかさ…。すんげー、征服欲にかられるんだけど」 「…どうして、あのガキがこんな変態に育っちまったんだろうな…」 俺がため息をつくと、Bは俺のパジ...
  • 17-829
    人生3度目のモテ期 今は現代、ネットの波がメディアを揺るがすそんな時代。 ここに、PCと格闘している男子一名。 最近ネットで検索することを覚えた様子。 某巨大掲示板への書き込みもはじめたようで、 でも俺はあんまり深入りはしてほしくない。 お前期末の成績下がったろ。 「なぁなぁ、モテ期占いってしってる?」 画面に視線を落としたまま俺に聞いてくる。 「知らねぇ、勉強始めるぞ、電源落としとけ」 ベッドのうえに置かれてる参考書に目を落とすと 問題を解き始めたと思われる場所が何箇所か見えた。 …範囲間違ってるし。 「質問に答えていって、結果ボタンを押せば、不思議! モテ期が占えるんだって!」 「あー、俺パソコンは資料作成と調査にしか使わないからな。 早く終わらせろよ」 「エロサイトとかは見ないの?俺ね、おススメのサイト教えてあげるよ?!」 「一...
  • 28-829
    追伸 好きでした 雄太郎へ お前がこの手紙を読んでいる頃には、俺はもう空の上にいるんだろう。 なんか遺言状みたいな書き出しになっちゃったけど、とりあえず飛行機が落ちないように祈っていてほしい。 物心ついた時からずっと一緒に馬鹿やってたお前とも、もう簡単には会えなくなる。 まあ全然寂しいとかないけどな。むしろ離れられて清々するってのな。 これからはもう夜中にお前のしょーもない電話で叩き起こされて次の朝寝坊しなくて済むし、 俺の部屋にゲームだの漫画だのパジャマだの持ち込まれて散らかされなくて済むと思うと涙が出るほど嬉しいよ。 いい機会だから、お前も自立しろよな。いつまでも俺が世話してやれるわけないんだしさ。 あとそろそろ彼女の一人でも作れって。夏休みもクリスマスも正月も、俺はもう付き合ってやれないんだから。 お前さみしいと死んじゃうだろ。俺がいなくなった途端に死なれ...
  • 14-829
    明日はカレー 「ハッピーバースデー!!」 そう言ってあいつが差し出してきたのは適度なサイズの箱。 …いや、予想はしてたけどさ。 まさか本当に覚えてるなんて。 「…ありがたくうけとってやんよ」 あいつは本当に嬉しそうな顔をする。 …なーんか、おもしろくねぇ。 もっとさー。可愛い女の子とかだったら、そりゃ俺だって諸手を挙げて喜ぶよ? だけど俺は男であいつも男。すっげー複雑な気分。 こんな花柄のラッピングにシフォンのリボンとかマジで勘弁してくれ。 奴が開けろ開けろとうるさいので仕方なく包装を解く。 …。 「なんだよ、これ」 「お弁当箱だよ。カレー用の。知らない?」 全く意味が分からない…。 「小学校の時にさ、お前、カレーの時だけは一日中落ち着かなくて、給食係と密談までしてただろ?」 「…!?」 なんでお前がそんな事まで知ってるんだよ! つーか、そ...
  • 20-829
    受けの逞しい筋肉にうっとりする攻め 素晴らしい。 風呂上がりの彼の姿を見て、いつものことながら見惚れてしまった。 硬く、鍛えられた上腕二頭筋・三頭筋に三角筋。 背中の脊柱起立筋もなかなかに良いフォルムを描いている。 首を動かしたときの胸鎖乳突筋の素晴らしさ。 大胸筋は全てを語っている。 今日の夜は寝かさないってことだろ? 「風邪ひくよ」 春だと言っても夜はまだ寒い。暖房のついた部屋だからと上半身裸の彼に、服を渡す。 「あー、サンキュ」 何故か恥ずかしそうにしながら、受け取った服をモソモソと着る。 服の上からでも、彼の体はとても魅力的だとわかる。 あの体に触りたい。あの体と繋がりたい。 なんて性的な体つきをしているんだろう! 後ろからそっと近付き、その体を抱きしめる。 「今日、良い?」 今日こ...
  • 16-829
    男の娘受け 「ですから」 楓は、困惑したように眉を寄せた。 「僕は普通の男なんですよ。こんな格好をしていますし、顔も父よりは母似ですが」 「知っている」 そう言うと表情が歪んだ。警戒の色はますます濃くなる。 「知ってるのなら尚更……本気なんですか、僕を『娶る』だなんて」 「分家風情は、本家の命令には逆らえんのさ」 「そんなのおかしいです」 言いながら後ずさろうとするが、その後ろにはもう壁が迫っている。 向こうもそれに気付いたのか、一瞬だけこちらから視線が外れた。 その隙に距離を詰めて、手首を掴む。「痛い」と小さく漏れた声は無視して、その手をじっと眺めた。 「細い腕だ。色も白い。今このときでも、女だと言われたら信じそうになる」 子供の頃に一度だけ、楓を見たことがある。 父に連れられて、旧正月の挨拶をしに本家を訪れたときのことだ。 ――あそこに...
  • 5-929-2
    酔った勢い 明日は結納だと言うのにこんな遅くまでいいのかと言ったら、飲みたいのだと奴が駄々をこねた。 男にも結婚前になんちゃらブルーとかいうのがあるんだろうか。 深酒になった。 「本当はさァ、結婚なんかしたくねぇのよ、俺は」 終電も逃して、飲み代で大枚はたいた後だけにタクシー代は二人合わせても俺の部屋まででギリギリで、いいよ泊まれよ、と久し振りに切り出した。 まだ入社間もない頃は良く終電が無くなるまで飲み歩いた。 こんな風にタクシー代を折半して俺の部屋へ雪崩れ込み、人肌が恋しくて、戯れに抱き合ったこともある。 唇を重ねたのは一度だけ。互いに我に帰り、『酔った勢い』だと笑い合い、それ以降、どちらからか飲みに行っても終電を逃す前にお開きにするようにしていた。 …今日までは。 「結婚したくねぇんだよ」 台所で水をコップに汲んでいる最中も、その声は繰り返した。 それ...
  • 18-829
    目を覚まさないで  彼は毎夜俺に抱きしめられて眠る。俺の体は彼よりずっと大きい から、彼をすっぽり包み込める。冬は自らくっついてくるくせに、 夏はあからさまに厭そうで、でも暑いからって服を脱いだ彼の素肌 が俺に触れるから、俺は夏のほうが好き。  段々暑くなってきて、日を追うごとに薄着になっていく彼に幸福 を噛み締めて一晩を過ごしたある早朝、枕元で彼の携帯が鳴った。 ただ一人専用のメロディを聞いて、俺はいつもの朝よりもさらに強 く、起きるな、と願った。  もちろん願いはむなしく彼は携帯に手を伸ばし、ぼんやりした声 で会話に応じる。何しろ殆ど年中彼と夜を過ごしている俺なので、 相手が誰だかはよく知っている。彼の恋人だ。俺がこの世で一番嫌 いな男だ。  彼は携帯を切って俺を放って起き上がり、顔洗って歯を磨いて トースターに食パンを突っ込んだ。...
  • 10-829
    階段 男はもう半世紀以上の間、その四七〇段の石段を毎日のように上っていました。 上り詰めた先にある寺の境内はひっそりとしていて、明け方は霧深く、まるで雲の上にいるようでした。 とある山間の小さな村にある、四七〇段の石段を持つ古い山寺。 そこに、男が恋焦がれる、美しい人はおりました。 男がまだ少年の時分、ひと目で恋に落ち、その日からこうして石段を上り続けているのです。 まだ人の寝静まる暗いうちに家を出て、皆が畑仕事を始めるまでには村に戻る。 そうして夜明けの数時間を恋人と共にするのが男の幸せでありました。 しかし、長い年月で苔生し磨り減った石段は、いつも湿っていて滑りやすく、最近では何度も踏み外し、手をつかずにはいられません。 数歩上っては休み、また数歩上っては休み、かかる時間と息の切れることに、男は自らの老いを感じていました。 あと何年、こうして会いに来ることがで...
  • 24-829
    攻めにべた惚れな無表情受け 酒を飲むのは好きだった。 垣間見える水原の本音がたまらなく愛しくて。 常にむすっとしてつまらなそうな、堅物を絵に描いたような水原が、ひょろ長い図体を納めようとしてソファでもぞもぞと転げるのを見るのが好きだった。 「水原、寝るならベッドに行けよ、使っていいから」 「んー…」 いつもそう、きっと今日もそう。このままソファで寝付いて寝違えて、明日にはすっかり首を痛めて一日を過ごす。 それでもいつもと変わらぬ、少し不機嫌そうな無表情のまま。 「水原、起きないとチューするよ」 普段なら怒られるような幼い言葉遣いにも、「あー」と呻いて応えただけだった。 「水原ぁー?」 肩を引いて無理矢理に頬に口付けると、「…ふへ」と小さな声が聞こえる。 「…なんだよそれー、かわいすぎるでしょー」 少し頭を冷やそうとテーブルに向き直る。...
  • 22-829
    聖職者の祝福に苦しむ勇者 「おお勇者よ、そなたはまだ洗礼を受けて居なかったのか」 「・・・悪かったな、まだ剥けてねえよってそんないい方するな畜生」 「では、神の名の元に洗礼の儀式を執り行いましょう」 「っていきなりドコのナニを掴んでんだよ」 「神よ、哀れなる勇者に祝福をお授けください」 「いてえ!引っ張るな!いてえいてえなにしやがんだよ!」 「この痛みに耐えてこそ真の勇者、神の祝福を得た勇者に…ん、ちょっとアレですね もうちょっと神の滴があふれてからの方が剥きやすそうですかね、痛いのも紛れそうですし」 「揉…むな!しぼっ・・・んな…シャレに…ならん・・・やべって… 方言
  • 13-829
    根暗引きこもり×俺様ドS プチ引きこもり大学生Aと高校生Bは幼なじみですよ。 「いいか兄ちゃん」 「はい」 「就活が怖いつったって、やり方調べないで何もしないでいたら、 確実にもっと怖いことになるだろこの引きこもり」 「うん、分かってるんだけどさ…」 「分かってねーよ、馬鹿じゃね?マジ馬鹿」「う…」 「床屋も行けよ豚。話しかけられるのが怖いってアホか。一生髪切らないでいるか? 豚は毛刈らないかもしんねーけど人間はそうもいかないんだよ豚」 「豚…え、でも僕が豚なら毛は刈らない方向でも…あ、いえすいません…」 「…兄ちゃんさあ」 「はい」 「俺より年上なんだろ?大学生なんだろ?」 「そうだったね」 「じゃあ俺の言うことはいはい聞いてんじゃねーよ」 「いや、聞かないと怒るじゃん…」 「口答えすんな豚。ニート予備軍。...
  • 25-729-1
    寝正月 正月早々病で床についているのは縁起が悪いので『寝正月』と言い換えるとは、先人たちは洒落ている。 だが、言い方を変えも病気は病気だ。 通いの者は三が日は休みを取って家には一人きり、さてとうしたものか。 食欲はないので、水だけで持たないだろうか? ラチもないことを考えていると、縁側のガラス戸の開閉音と小走りの足音が聞こえてくる。 そして私のいる寝間の障子がからり開かれた。 「ああ、やはり寝込んでる」 「入ってくるな。風邪がうつるぞ!」 予想通りの相手に語尾を強めて言うが、彼は聞いていないかのように全く気にせず枕元に腰を下ろした。 「茶会に来ていなかったから、もしやと思ってきてみたら案の定だ」 「・・・・・・」 少しでも接触を避けるためと、こんな情けない姿を見られたくないのとで布団を目元まで引き上げるが、彼は腰を下ろすと手にしていた折り詰めを枕元に置く。 ...
  • 25-859
    有能だけど扱いづらい男 「有能だが扱いづらい男」はとてもおいしいと思う。自分の萌えツボジャストである。よって語る。 黙って動かなければ普通に見えるのに勿体ない、しかし動かねば有能の意味が無い、という周囲のジレンマ。 このキャラはいろいろパターンが考えられるが、ある側面から大別するならば 『それらの希望失望絶望に対してどのようなスタンスであるか』が一手法ではと考える。 ■A■全く気づいてない 周囲の希望失望絶望をまったく意に介してないマイペース型。 有能なのにそれを生かそうという気があまりなく、自分の興味のままに行動する。興味なければ動かない。 一般人にはまったく理解できないポリシーを持っていたりする。 周囲との衝突はあまりないが、ただ言動が稀に(あるいは頻繁に)電波っぽいので 遠巻きに見られていることが多い。周囲と自分の認識差にあまり関心がない。 そのた...
  • 25-849
    恋のライバル同士だったのに 849 「なあ、聞けよって」 「だから聞いてんじゃん、そんで」 見るともなく眺めているだけの雑誌から視線を上げずに答えると、○○はめげた様子もなく再び口を開いた。 窓の外では重く垂れこめた雲が日の光を遮って、辺り一面に夜の気配が漂っている。 凍った天から吹き降ろす寒風がフローリングの床に滲み渡っている所為で何時まで経ってもヒーターの電源を落とせない。 最後に頭痛薬を飲んで何時間になるだろうか。 痛み出した米神に手をやりながらローテーブルに置いた目覚まし時計を横目に見た。 「マジうけるよな、ホント訳分かんねー」 「…お前ホント、最近アイツの話ばっかりね」 「はは、妬いてんの」 妬いてんだよ、と勢いそう返しかけて、すっかり冷えたコーヒーと共に言葉を飲み込む。 人の気も知らずに全く能天気なものだ。 呆れて出た溜息をどう...
  • 25-839
    窓越しに見える人  その人はいつだって、窓の向うに居た。  明治帝の御代に建てられたのだという格式高い洋館の、美しく磨かれた硝子窓に、白い顔がすいと映る。  高い窓の向うのことだから、年の頃はまるで解らぬ。年若い少年のようでもあるし、幼な顔の三十路なのだと説かれれば、そんな気もしてこようかと思う。  何時もほんの少し斜め下を俯いて、額に濡れ羽の髪をかけ物憂げにしている。  果たして彼の人は、黒檀の机に日がな古今の書物でも広げているのか。それとも絹の寝具に半身を起こし、儚くなる日を待つ身であるのかと、私の想像は勝手なままに膨らむばかりであった。  その洋館の傍を走る道は、私のよく通る野道である。  私は山の手で、磁器などを焼く工房に師事していたが、まだとても使い物になる腕ではなかったから、やれ使いだの買物だので、事あるごとに街へ下らされるのは私であった。  その...
  • 25-879
    月と木星とアルデバラン 母が心配している、そう言って帰ろうと、何度も思った。 けれどその言葉は終ぞ僕の口をついて出ることはなく、辺りは夜になっていた。制服とコートだけでは寒い。 僕は冷えた左手をポケットに突っ込みしきりに動かしながら、近江と繋いだ右手を中々動かせずにいた。 横を見ると近江の右手も僕と同じようにコートのポケットに突っ込まれていた。寒さのためか、もぞもぞとポケットが動くのが見えた。 鼻が冷たい。きっと耳も。 近江と繋いだ右手だけが熱い。 「木崎、もう少し遅くなっても大丈夫?」 その時近江の声にこもった、なんとも言えない気持ちを僕は一瞬で理解した。共有した。 そうして僕は、生まれてから今日までと、明日は、今夜は違う。そんなことを確信していた。 「……うん。大丈夫」 近江は僕の手を軽く引いて、青白く光る月の下をぐねぐねと歩いた。 どのぐらい歩いたのか、...
  • 25-819
    必死過ぎた告白 「こーや!かえろう!」 「うん。まって、道具箱てさげに入んなくて」 「はーやーくー!」 「ちょっと待ってね、あ、入った」 「よっしゃ!サッカーゴール確保するぞ!ダッシュ!」 「ダッシュ!」 「え、もう5時!?嘘だ!」 「おなかすいたしねぇ」 「嘘だ!」 「鐘なったよ、かえらなきゃ」 「嫌だ!」 「だめだよ暗くなっちゃうよ」 「だめ!こーやもかえっちゃだめ!」 「だってごはんたべないとしんじゃうよ?なんで?」 「だってあしたから夏休みだし!こーやとあそべないし! おれこーや好きだからずっとこーやと学校にいる!だからかえっちゃだめ!」 「はは、けんくんないてる。おもしろい」 「おもしろくない!ふざけんな!ばか!あほ!」 「だってもうにどと会えないみたいなんだもん。夏休みでも学校きてあそべばいいじゃん」 「あ...」 「ぼく...
  • 25-889
    本当の顔を知らない 財布を拾ってくれた君は、小さな顔には不似合いな大きなマスクをしていたね。 昔からの気性なのか、不信感を抱かない素直で優しい君は、お礼をしたいと言っても全く受け取ろうとしなかった。 …今思えば、ご飯でもなんてなったらマスクを取らなきゃならないもんね。うん。 それから、連絡先を半ば強引に交換して、根気よく友人関係を紡ぎ続けた。 そんなある日、ポツポツとマスクのお話をしてくれた。 10年前に受けた酷いイジメ。大きな火傷を負わされたという。 「貴方には話したかった。初めて信頼できた貴方には。マスクを取った本当の顔を知ったら、きっと貴方は気味悪がるよ?」 僕は黙って君のマスクを取り、ゆっくりと口付けた。火傷の跡をなぞりながら、それはもう、丁寧に。大切に。 キレイだよ、君の本当の顔は。 そう言うと、君はキレイな涙を流して僕を抱...
  • 15-029-2
    ツンデレ泥棒×お人好しな刑事 まったくあの馬鹿野郎が! 飛んでくる弾丸をかわしつつ、床で蹲っている男に対し、悪態を吐いた。 男の腹部からは大量の出血。背後には金を盗まれた怒りで目が血走っているマフィア。 あのままだと、あの愚かな刑事は死んでしまうだろう。 長年、自分を追いかけている正義感の塊のような男。 見るたびにイラついてしょうがなかった。 刑事が勝手にしくじったというのなら、「馬鹿な奴」と嘲笑い、そのまま放ってさっさと逃げ出しているのに。 あの男が自分を庇って撃たれたのでさえなければ。 泥棒助けて、自分が死にかけるなんて笑い話もいいとこだ。 世の中、善が報われるとは限らない。むしろ、自分の生きてきた世界ではお人よしであればあるほど早死にしていたのだ。 一向に逃げずにいる自分に苛立ちを覚えつつ、刑事の方に目を戻せば彼の周りは十数人のマフィアで取り囲まれていた。...
  • 15-729-2
    はじめてのおつかい 豚肉と、玉ねぎと、福神漬け。 …たったそれだけの買い物でも、その時の俺にとっては大冒険だった。 一緒に遊んでたマサキを無理矢理引っ張ってって、近所の八百屋に行ったら玉ねぎがなくて、 子供の足で歩いて20分かかるスーパーに行ったら、帰りに思いっきり道に迷って、 こけて、袋破れて、玉ねぎ転げて、悔しくて、…すっげえ泣いたのを覚えてる。 マサキが服の裾で玉ねぎ抱えながら、もう片手で俺の手をぎゅっと握ってくれて、 それが痛いけど暖かかった。とにかく心強かった。 でもマサキは口ひんまげて、泣くの必死で堪えてて、 …家の灯りが見えた途端、俺より大泣きしてたのも、覚えてる。 * 「絶対欲しいの何よ」 「えーと、福神漬け、肉、…豚肉安いからそれで。あと玉ねぎ」 「了解。…マジで?」 マサキが挙げた3つは、見事にあの時と被ってた。 「わざとじゃね...
  • 9-229-1
    たんぽぽ 春になると幼稚園以来の友人がよく持ち出す話題がある。 幼稚園の頃オレがあいつを苛めて困らせた思い出話だ。 当時あいつはタンポポの綿毛を飛ばすのが大好きで、 綿毛になっているのを見つけては吹き飛ばしまくっていた。 あいつがあんまりタンポポに夢中だったから、まわりの子どもや先生も あいつにタンポポの綿毛をあげたりしていた。 でもオレはそういう奴らの差し出すタンポポの綿毛を横から ぷうぷうと吹き飛ばしまくった。 オレは結構そういう悪戯をする子どもだったけど、あの時は 徹底的に邪魔をした。 そうするうちにタンポポはどれも葉っぱだけになった。 「あれすごく嫌だったなあ」 「…ほい、どうぞ」 友人に綿毛のタンポポを差し出した。 友人は笑みを浮かべて受け取るとふうっと校庭に向かって吹いた。 友人にタンポポの綿毛を差し出すのが昨年以来の二人の遊びになった。...
  • 9-529-2
    男ばかり四兄弟の長兄×姉ばかり四姉弟の末弟  ぴぃんぽぉーん、という平和ボケをそのまま音にしたようなインターフォンが聞こえた途端に、 俺の周りをちょろちょろと走り回っていたチビギャングどもが玄関に突撃した。その数、三匹。  「だれー?」だとか「なにー?」だとかうるさいったらない。あいつらのツルツルな脳味噌には まだ『近所迷惑』という言語が刻み込まれていないのだ。そしてそれを刻み込まなければ ならないのが俺。破滅的に面倒くさい。  舌足らずな弟どもは興奮していて、余計に何を言っているのかサッパリ判らない。ので、客人が 誰であるのか、部屋の中まで出向いてくださるまで分からなかったのは事実であったのだが。 「やあ久しぶり、お兄ちゃん」 「うわぁっ先輩!?」  敬愛する先輩に、ひよこ柄の黄色いエプロンでホットケーキを焼いているという、およそ格好 悪さの極致みたいな姿を...
  • 19-229-1
    華道家とフラワーアレンジメント講師  花を生けていると背後で人の気配がした。斜め後ろの方からじっとこちらを見てくる気配はまず間違いなく彼だろう。いつもの紺の着流しを着て、腕組みをして。妙に熱心に観察してるはずだ。  いつものことだ。邪魔をしないようにとの気遣いだろう声をかけられたことはない。気になったのは、この家に住み始めた頃のこと。今はごく当然のこととして受け止めている。彼いわく、西洋の文化の良いところも学んで取り入れようと思うとか何とか。そのくせ、派手すぎるとばかり言っている。外国の文化にわびさびを求められても。 (ん……?)  背後の、どこか落ち着かないようなそわそわした気配に気づいて、そっと苦笑する。横目に時計を見て、もうこんな時間だったかと少し驚く。 (まあ、もう終わりますし)  もう少しだけ待ってもらうことにして、終わらせる。 (……よし) 「用事があるな...
  • 19-529-2
    夏休みの宿題が終わらない どうしてこんな事になったんだっけ テーブルの上にはほぼ手付かずの課題 毎年早めにやっとけばよかったって思うんだけど いつもギリギリなっちゃうんだよな 「こころ」の感想文、数学のプリント、日本史のレポート、あとなんだっけ? セミの声がうっとおしい クーラーで冷えた畳の表、うつぶせるとわずかにイグサの匂いがする そうだ今年の猛暑がいけない 暑くてだるくてやる気しないのに 追い討ちのようにクーラーがぶっ壊れた 「しばらくこの暑さを楽しもう」とか気が気が狂ってんのかうちの親は 熱中症で死んだらどうする気だ 「じゃあうち来る?」ってこいつが言ったんだよな 熱い息が背中にかかる、 クーラーは24度、ぬるついた汗を乾かして体の表面は冷えてきたのに 触れ合った部分は生あったかい 体の内部は熱いのに、なんだか鳥肌が止まらない ...
  • 6-429-2
    vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv 『☆* ・°★ * ・°やっほ~シマちゃん\(^O^)人(^O^)/起きてるー?(ρ.-) 俺は大学に遅刻しそう~ε=┌(; _ )┘ヒー いやー、昨日は飲み会★⌒(*^^)d_||_b(^^*)⌒☆が長引いちゃって(^_^;ゞナハハ おかげで二日酔い…{{{{(+_+)}}}}ズキズキ 寝起きにシマちゃんの顔を見たら♪( ^o^)\(^-^ )♪一発で治るo(゚ぺ)○☆んだけどなぁ|_・)チラッ うーん、早く会いたいよ~v⌒ヽ(^ε^*)チュッ(*^3^)ノ⌒vチュッ シマちゃーん、(^O^)ア(^o^)イ(^o^)シ(^o^)テ(^o^)ル(^O^)よーVvV vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv(*ノノ)キャーテレチャウ/// シマちゃん、今夜はうち来る?.....((((*^o^)...
  • 7-629-2
    開かない扉の向こうとこっち 「そこ、自転車」 言うまでもなく、彼は歩みを緩めることなくひょいと障害物を避ける。 「ありがと。大丈夫だよ、杖の扱いも慣れたし」 彼は微笑みながら手を伸ばし、寸分違わず僕の頬に触れた。 数か月前の事故で視力を失った彼。傷ついたその目に、光が戻ることはないらしい。 事故より後に出会った僕の顔を、だから彼は知らない。 「元からあまり目はよくなかったからかな、見えなくなったことにはそれほど未練はないんだ」 彼はいつもそう言う。そして、こう続ける。 「ただ、君の顔を知ることができないのが、残念だけど」 「……僕は、酷いかもしれないけど、かえってほっとしてる」 だって、もしも彼が僕の顔を知っていたなら、こんなに近しい関係にはなれなかったはずだ。 「どんな顔してても、君は君だろ」 けれど、そう言ってくれるのはきっと、今の彼だからだ。 ...
  • 4-529-2
    ラーメン屋店長×見習い 店長は無口だ。 仕事は天下一品で、俺は店長のラーメンに一目じゃない一口惚れした。 弟子はいらないと、嫌がる店長に頭下げてなんとか見習いにしてもらって、そろそろ一年になる。 無口な店長の代わりに客に愛想振り撒きながら、なんとか店長の味に近付きたくて、ずっと店長を見てる。 店長は俺の作ったラーメンをいつも一口すすり、麺を食べ、うん、とか、うーん、とか唸るだけ。やっぱり、何にも言わない。 一体どうなんだろう。俺の仕事。 今日はいつもより食べてくれるかな。 うーんじゃなくて、せめてうんうん、とか言ってくれないかな。あの表情は○なのか×なのか、ちょっとは口元緩めてくれないかな。 店長の顔ばかり見てる。 この不安な気持ち、どうしようもないよ。 俺、夢にまで見るんだよ。店長の顔。 無口だけど静かで穏やかな感じの店長の顔。ああ、横向かないで。 今日...
  • 25-299
    嫌いで別れたのではない男と再会 柔和な笑顔、笑うとぐっと細くなる茶色い瞳、ふわふわの黒い髪。 その何から何までに見覚えがあった。思わず言葉を失っていると、 健人はひらりと片手をあげて、やあ、と口にする。 やあ、じゃねえよ、とか、いつ帰ってきたんだ、とか、色々言いたいことはあった。 あったけれど、何より、今目の前にいる健人が本物かどうか確かめたくて、思いきり抱きしめた。 「祐君、苦しいよ」 耳元でゆるい笑い声が聞こえる。苦しめ。苦しんじまえ。 そしてそのまま俺から離れるな。 「本当に、健人?」 「……うん。本物だよ」 そう口にして、俺の腕に細い指先を絡める。すっかりやせこけてしまったらしい、 背中はくっきりと骨が浮かんでいて、ほんの少し怖かった。 「お前、やせたな」 「まあね」 「これから太らせてやる」 だから。そういって、健人の身体を剥がす。 丸っ...
  • 25-229
    言葉責め 「……っ!」 「ちょっと、何泣いちゃってるんですか。部下にイジメられるのがそんなに悔しいんですか?」 私に覆いかぶさった狭山の指が、胸の突起を弄ぶ。 あられもない声を上げそうになる唇を必死に噛み締めたが、涙が浮かぶのは止められなかった。 「違う、これは――」 なけなしの理性で以って抗弁すると、 「ああ、そうですよね違いますよね。悔しいんじゃなくて気持ちよすぎるんだ。そうでしょう、しゃ・ちょ・う?」 滲む視界の向こうで、狭山は侮蔑もあらわに嗤った。 「まったく、呆れ返りますよ。社長がまさか男にヒンヒン言わされるのが大好きなマゾ野郎だなんて、思ってもみませんでした」 ため息とともに、ツツ、と脇腹をなぞられる。触覚と聴覚への刺激は私の上で混ざり合い、何倍にも膨れ上がって襲いかかる。 「わかってます? 自分が今どんなみっともない格好でいるか。どんな無様...
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