*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「26-889」で検索した結果

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  • 26-889
    義兄弟 姉さんの3回忌に訪れた墓所で、俺と義兄さんは静かに手を合わせる。 親代わりになって歳の離れた俺を世話してくれた姉さん。 それを陰から支え続けてくれた義兄さん。 福祉課の職員と相談に訪れた市民という、色気の欠片もない出会い方をした二人は、バレンタインデーに告白して、ホワイトデーに返事をするという、今時小学生でもやらない幼稚で不器用な恋愛を経て結ばれた。 なのに、たった一年足らずで姉さんは逝ってしまった。 義兄さんは今も変わらず、市民の良き相談相手として働きながら、大学に通う俺の面倒を見てくれている。 まるで困っている人に尽くすことが、人生の生き甲斐みたいな人だ。 「お腹空いただろう? 何か食べて帰ろうか」 「はい」 合掌を解いた義兄さんの、眼鏡の奥にある瞳が少し潤んでいる。 二人に見守られて十代の後半を過ごした俺は、両親がいなくても十分に幸せだった。 本...
  • 4-889
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「カメダ、ホントにグッジョブだよな~うま~」 カメダのかきピーを頬張りながらそう呟く俺の背中に、突然どさ りと何かが降って来た。 「いってぇ!何すんだよ!?」 床にうつぶせている俺の背中に、達哉のケツが乗っかっている。 「お前が掃除しないからだろ。何もしないんだったら座椅子 にでもなってろ。あー疲れた」 俺の幼馴染み・達哉は、異様な程の潔癖性だ。 大雑把でものぐさな俺とは全く正反対なのだが、だからこそ気 が合うのかもしれない。俺のアパートに遊びに来ると、あまり の散らかりように文句を言いつつも毎回掃除して帰って行く。 「またかきピーの袋溜めてる!!」 達哉は俺をにらみつけながら天板の上の大量の空き袋をゴミ 袋に放り込んだ。 ホントこいつ掃除好きなんだな… 俺の背中に腰掛けながらも、...
  • 4-889-1
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 「ちくしょー!!」 パソコンにかじりついていたKが、いきなり大きな叫び声を上げた。 夕食どきに近所迷惑な奴だ。とりあえず黙らせるか、そう思って振り返る。 だが、先にKの方がパソコンの前を離れて、泣きながら俺に抱きついてきた。 なんなんだ。そう思ってパソコンの画面に目を向けたけれど、 いい加減度が合わなくなってきている眼鏡では、 いくつかのウインドウが開かれているのがおぼろげに見える程度だ。 どうせもう外出しないからと、コンタクトを外してしまったのは失敗だったか。 仕方ない、まずは奴を落ち着かせよう。 「落ち着け。どうした」 「お、俺……ちくしょう……」 「いいから落ち着け。泣くな。そして説明しろ」 今度はどんなくだらない理由だ、と言いたかったがそれは呑み込んで...
  • 4-889-2
    880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます。 4-889 書き込み完了!さぁて、次はどんな萌えリクが来るかな?と期待しながら 掲示板を閉じようとマウスを操作した瞬間、背後にとんでもなく冷ややか な風が吹いた。 全身が凍りつくのを感じながら後ろを振り返ると、いや振り返るまでも無 く、俺の顔の横には奴の顔があった。 「『 880とカメダにGJ!とささやきつつ、踏まれます』・・・・・・?」 「や、ややややっ山田!?」 「なにこれ、どういうこと?」 「なんだよ、ビックリすんじゃん。てっきり妖怪かなんかの類かと・・・」 「な、どういうこと?」 耳の近くで喋られるくすぐったい感覚に耐え切れず、俺は山本の顔を押し やった。山本は不満そうに眉を寄せ、睨みつけるように俺を見た。 「人が風呂、入ってる間に・・・」 「え?なに?」 山本が何...
  • 6-889
    握り返された手 ベッドに横たわりながら、俺は軽く彼の方を見た。 彼はぐっすりと寝入り、一向に目を覚ます気配がない。 無理もない、と思った。 先程、俺は彼に強い疲労を強いる事をしたばかりなのだから。 抱かれる側の疲労がどれほどのものなのかは、俺にはわからない。 だが、終わった後、気が付けばすぐに寝入ってしまっている彼の様子を見るかぎり、相当な疲労なのだろうと思う。 俺は半身を起こし、彼の、軽く汗の残る額にかかる前髪をかき上げ、唇でそこに触れた。 当然の事だが、やはり起きる気配はない。 彼の、力なく投げ出された手に触れて、軽く握ってみる。 その時、眠っていたはずの彼が俺の手を握り返した。 俺は驚いて彼の方を見たが、彼はいまだに間の抜けた寝顔で眠っている。 ふと、彼の唇が何かを呟いているのに気が付いた。 寝言だろうか。 俺は、彼の寝...
  • 16-889
    来ないで 君が、光る女性の唇を、かわいいねと褒めたから。 姉の口紅を塗ったのは、ほんの好奇心だったのに。 「―――来ないでッ!」 ドア越しに僕は怒鳴った。 こんな大声は久しく出していなくて、喉がヒリヒリと痛んだ。 「…どうした?」 僕のみっともなく掠れた声を聞いた彼が、心配そうに声を掛けてくる。 「君にだけは…見られたくないんだ…。」 噛み締めたピンクの唇はぬるりとすべって、人工的な味が惨めさと共に喉を流れた。 違うんだ。 僕が本当になりたかったのは。 こんな姿じゃなくて。 ドン!とドアを乱暴に叩く音にびくりとして、一瞬背が浮いた隙に彼はドアを開けた。 「!」 「お前、何――――…ッ?」 僕の顔を見た彼の口許がひきつる。 ああ、だから、君にだけは見られたくなかったのに。 だが彼は踵を返すこともなく、瞬きもでき...
  • 6-889-1
    握り返された手 お互いに嫌いだったはず。 相手は違う人だったけど、俺もあんたも長いこと片思いしてた。 その人を見る目や、気持ちが、手に取るようにわかった。 おんなじ、叶わない思いを持て余してた。 お互いの気持ちがわかる分、俺たちは近かった。 自分を見ているようで、あんたの事大嫌いだったんだ。 片思いの相手を諦めなきゃいけない時も、おんなじにやってきた。 気まぐれ、寂しさ、理由なんて何でも良かったんだけど、俺はあんたの手を握ってみた。 まさか、握り返されるなんて思ってもなかった。 いつのまにか近くにいる相手が大事になっちゃった所まで、おんなじなんて。 *8あいしてる
  • 16-889-1
    来ないで だめだよ、と言って彼は笑った。 「どうして」 「まだ根を上げるには早すぎるんじゃない?もうちょっと頑張りなよ」 「俺は十分頑張った」 「まだ、まだだよ。君にはまだ、与えられた分が残っているだろう?」 そう軽い口調で俺を窘める目の前のこいつを、少しだけ睨みつける。 俺は今まで、精一杯この世の中で頑張ってきたはずだ。 俺の頑張りを俺の傍で見ていなかった奴に、何が分かる。 「あ、今ちょっと失礼なこと考えたでしょ」 「人の思考を読むな!」 「見てたに決まってるじゃない、そこら辺の草の陰から」 「な、うわ、お前そんな悪趣味な奴だったのか」 「別に、誰も彼もを覗き見してるわけじゃないって」 君だからだよ、 少しだけ目の前の男から身を離した俺との距離を詰めるように、 一歩こちらへと近づいたそいつは、俺の耳元でそう囁いた。 ...
  • 9-889
    受が攻を下克上(性的な意味で) 変だ、絶対。 背中には冷たいフローリングの感触がするし、しかも、あいつが俺に馬乗りになってる。 「ちょっと待って…どういうことだ?」 「俺だってやられっぱなしは嫌だ。お前も俺の気持ちを味わえ」 あいつの言葉に、頭の中がぐちゃぐちゃになる。 「え、どういうことだ?」 「こういうことだ」 いきなりのキス。 絶対におかしい。どうして俺がこんな事されなきゃいけないんだ。 どうして俺がこいつなんかに服を脱がされなきゃいけないんだ。 「ちょ…ぁ、待て…ッ」 どうして、俺がこんな声出さなきゃいけないんだ。 「どうですかぁ?下克上されてる気分は?」 黒い笑顔。 「さいあく、だよっ…ぁ、ンっ…」 「最悪?こんな事で最悪なんて言ってられないでしょ。まだこれからだから…」 冷たい笑顔に鳥肌が...
  • 5-889
    誰もがそれを笑ったとしても 「笑えよ」 そう言って、向かい合う俺の幼馴染氏は、ぶすくれた顔でそっぽを向いた。 「そんなに笑って欲しいかよ」 「当たり前だろ! こんなカッコしてまでウケ取ってんだよ! 笑えよ!  終いにゃくすぐり倒すぞ!」 アイツ笑わないよな。気味悪ィ。だの何だのと俺が噂されてるのは知って た。こいつがムキになってそれを否定してたのも。 『ちげーよ! あいつは気ィ許した奴にしか笑わねぇだけだよ!』 って。お前、それフォローになってないのに気付かないのはおかしいぞ。 俺が手酷い振られ方をして以降、誰の前でも笑わないの、随分気にして くれるんだな。ありがとう。でも、よせよ。そんなことされたら、笑うどころか 泣いちまいそうだから。だから、もういいよ。 俺の目の前で、真っ赤な顔をしたセーラー服のお前。 うん。すごく変だ。ていうか誰...
  • 3-889
    年下攻患者×医者 高校二年の夏休み、俺は交通事故が原因で入院した。 事故さえなければ、今頃気の合う仲間達と夏休みを謳歌しているはずだった。 海でナンパしたり、花火大会でナンパしたり、夏祭りでナンパしたり……そんな予定が全てパア。 来年はもう三年だ。大学受験を控えた高校最後の夏休みは気楽に遊んでいられない。 つまり、素晴らしき青春といえる時間を俺は失ったのだ。 「A君、調子はどうかな~?」 担当の先生が決まった時間にやって来る。俺の担当の先生はまだ若いらしい。母親が「担当の先生が若くてかっこよくて嬉しいわ。なんでもまだ30前らしいわよ」と弾んだ声で話していた。息子が入院事故で入院したっていうのに、なんて不謹慎な。 俺が先生と直接会うのは三回目。一回目は全身麻酔が効いていいたためあまり覚えていない。二回目に会ったとき、この先生の口調にげんなりした。まるで子ど...
  • 2-889
    どうしようもないタラシだけど包容力のある兄×誠実な優等生だけど恋愛に不器用な弟 兄「弟ちゃぁん、暗いよ~どしたん?」 弟「顔合わすたびに抱きつくな。いま悩んでんだから」 兄「恋の悩みだったら相談のるよ~? 体位についてとか?」 弟「鯛とかじゃなくて…。俺、告白されちゃったんだ……クラスの女の子から」 兄「うん、うん」 弟「でも、俺、好きとかよく分からないから、付き合うのもよくわからない」 兄「うん」 弟「付き合うってどれくらい好きになったら、付き合うべきなの?   兄ちゃん、いっつもいろんな人と付き合うけど、どれくらい好きってこと?」 兄「いやー頭で考えちゃ駄目っしょ、そういうのは」 弟「でもこういうのはちゃんと考えないと、相手が傷つくから……」 兄「そんなん恐れてたら恋愛なんてできないぞー。ほら、ちょいこっち向け」 弟「そういうも...
  • 8-889
    さよならも出来ない 八つ年上の大好きな隣のお兄ちゃん。 僕がものごごろついたときには、いつも膝に抱っこして絵本を読んでくれたり、 お仕事で忙しいママを待つ間、お風呂に入れて綺麗に身体洗ってくれてご飯食べさせてくれたり、 優しい大好きなお兄ちゃん。 なのになのに、ある日学校から帰ってお兄ちゃんちに行ったら… 鍵開いてるのにお兄ちゃんいなくて、おばちゃんもおじちゃんもいなくて、 玄関に沢山出しっぱなしだった靴は半分くらいになってて、 お部屋の中はいつも通りみたいなのによく見るといつもあったものが無くなってたり、 なんか1日しか経ってないのに何年も経っちゃったみたいな違和感があって。。 お兄ちゃん何処にいるの? なんか不安になって、僕は狂ったようにお兄ちゃんの部屋もベッドの下もお風呂もトイレも押入も探したんだ。 だけど、いない。 何日も何日も待ってたのにお兄ちゃん...
  • 1-889
    クールなインテリメガネ×ちょっとお馬鹿な熱血君 カリカリ、とシャーペンの音だけが響く室内。 「…なぁ」 「…」 「なぁってば!」 耳元で大声を出してやると、やっとあいつは俺の方を向いた。 銀のフレームの奥の瞳に、鬱陶しそうな色が浮かんでいる。 「…何だ。」 「何だじゃねーよ!いっつもいっつも家で勉強ばっかで飽きねーのかよ!」 俺達は一応今現在、男同士だけど恋人関係にある筈だ。 それなのに、お互いの家に行く度に甘い会話をするでもなく、試験勉強だの物理のレポートだの、 と何かと理由を付けてこいつは勉強を始めてしまう。 それなのに 「…飽きない。」 きっぱりはっきりとそう言われては、もう言い返す事もできない。 俺はすっかり脱力して、またペンを動かし始めた男をじっと見つめる事に徹した。 男の俺でもドキッとしてしまう、シャープな輪郭のラインに、通った鼻筋。 切...
  • 18-889
    先輩に対して信仰に近い尊敬を抱いてる後輩 先輩と俺が出会ったのは、高校二年のときだった。 廊下ですれ違ったその時、先輩はふと振り向いて、どうしてだか俺に声をかけてきてくれたのだ。 その時先輩は髪の毛を丁度黒く戻していた頃で、夕日にその黒髪は酷く優しく映えていたのを覚えている。 すっと切れ長に通った紅茶色の瞳を細めて、確かお前は崎塚っていったっけ、と呼びかけてくれたあの声を俺は今でも忘れていない。 その後の高校時代を、俺は先輩の後ろに付き従うようにして過ごした。 髪もぼさぼさで図体のでかいだけの自分が、いくら許容してくれるからと言って先輩のお傍にいてはならない。 それは分かっていたけれど、全くもって俺の体はそれを許さなかったので、せめて先輩のお役に立てるように努力したつもりだが、果たしてそれはきちんと功を奏していたのか分からない。 先輩が殴られそうならかわって殴られた...
  • 23-889
    葉桜はきらいだ 「身分違いの者が無理矢理寄り添っているようで、嫌いなんですよね。葉桜」 そんな洒落こいたことを呟きながら、八重樫は放課後ここへ来て二本目の煙草を消した。 三本目に手が伸びたので、我にかえってそれを止めた。 「八重樫、いつも言うけどここは禁煙だよ」 「それ以前に生徒の喫煙を嗜めるのが教師の役目では?」 …もっともだ。普段から見慣れていたせいで注意するのを忘れていた。 「そもそも葉が先で花は後でしょうに。順番がおかしい」 それだけ言うと八重樫はふぅ、と煙を吐いた。 髪の隙間まで燻されていく気がする。思わず眉間に力が入る。 「そんなイヤな顔しないで下さいよ、先生」 「生徒会長なんて名ばかりだな、お前みたいなのが一番危ない」 「だから、息抜き」 「お前の息抜きは私の息が詰まるんだよ」 八重樫は窓際の長椅子に腰掛けると、室内履きのサンダルを脱ぎ捨てて...
  • 14-889
    あいつじゃなきゃ駄目なんだ 「いいかげんにしろよ!」 俺は隆の腕を捕まえた。 「あいつはお前のことを都合の良いときに好きなように扱える玩具だと 思ってるんだよ。社長令嬢と結婚して、子供も生まれて、それでも 男遊びはやめられないから、口の堅いお前をキープしてるだけなんだ! こんな関係で、お前はいいのか?お前は幸せなのか?!」 隆は笑った。とても、とても寂しそうに。その笑顔を正視し続けることが できなくなって、俺は隆を抱きしめた。 「俺なら、お前だけを大事にする。贅沢なマンションは与えてやれないけど、 ずっとお前の側にいてやる。俺なら....っ!」 俺の腕の中で、隆はそっと、でも確かな意志を込めた手で俺の胸を押した。 うつむいたまま体を離し、隆は言った。 「ありがとう......でもごめん。あいつのことも、君の真剣な気持ちもわかって るんだ。でも、理屈じゃな...
  • 25-889
    本当の顔を知らない 財布を拾ってくれた君は、小さな顔には不似合いな大きなマスクをしていたね。 昔からの気性なのか、不信感を抱かない素直で優しい君は、お礼をしたいと言っても全く受け取ろうとしなかった。 …今思えば、ご飯でもなんてなったらマスクを取らなきゃならないもんね。うん。 それから、連絡先を半ば強引に交換して、根気よく友人関係を紡ぎ続けた。 そんなある日、ポツポツとマスクのお話をしてくれた。 10年前に受けた酷いイジメ。大きな火傷を負わされたという。 「貴方には話したかった。初めて信頼できた貴方には。マスクを取った本当の顔を知ったら、きっと貴方は気味悪がるよ?」 僕は黙って君のマスクを取り、ゆっくりと口付けた。火傷の跡をなぞりながら、それはもう、丁寧に。大切に。 キレイだよ、君の本当の顔は。 そう言うと、君はキレイな涙を流して僕を抱...
  • 21-889
    主人公×ラスボス お互い、あと一撃で勝負が決まることを予感していた。 肩で息をし、額から流れる汗と血を乱暴に拭うと、二人は同時に動いた。 一瞬の交錯。 倒れたのは、全世界の民に恐れられ続けてきた魔界の王の方だった。 聖剣と呼ばれるそれが、禍々しい体を突き抜ける。王の体からは黒い霧のようなものが吹き出して、その聖剣へと吸い込まれていった。 世界に平和が訪れた後、青年は目を覚ました。 見慣れない、簡素な山小屋。彼が固いベッドに身を起こすと、すぐ近くの扉が開いた。 「お目覚めか?」 両手にトレイを持って現れたその男こそ、聖剣を手に魔界の王と戦ったその人に違いなかった。 それを理解した瞬間、青年は男を殺そうと跳ね起きた。だが男は、口元に笑みを浮かべるだけだ。 それは、男がすでに青年が無力であることを知っているがゆえのことだった。 「どういう…...
  • 15-889
    パートナーに望むこと 「こっち持って」 そう言って制服のポケットから差し出されたのは、一本の赤い毛糸。 その、三十センチほどの紐の一端をこちらに向けて、諒はにこりと笑う。 「…なんだこれ」 夕暮れの帰り道、天下の公道。 燃えるように赤い光の中にあってなお浮き立つ毛糸を摘み上げ、俺は不信感たっぷりに言った。 「まぁいいじゃん。ちょっとしたお遊びだと思ってさ」 「なんの遊びだよ」 いいからいいから、とのらりくらりとかわされて、腑に落ちないながらも俺は渋々それを握る。 右の掌に馴れない手触りを確かめていると、反対側の端を諒が左手で握った。 「…なんなんだよ」 「まーまー」 何がまーまーだ、と苦々しく思ったけれど、一度握ってしまった毛糸は何となく離しがたくて、仕方なくそのままで歩き出す。 二人並んで、さりげなく歩幅を合わせて、ただ黙々と...
  • 17-889
    バカップルのシリアス大喧嘩 「何で逃げた」 「逃げただと?貴様、この我輩が逃げたとぬかしたか」 「ああそうだ。お前は逃げたんだ」 「…ふん、いいだろう。では、我輩が何から逃げたと?」 「俺からだ」 「貴様ごときに我輩が逃げる価値があったとでもいうつもりか。 大した自信だな」 「ああ。あの時のお前にとって、俺は唯一絶対の存在だった」 「……」 「あの小さな辺境の村に似合わない程、お前は優秀だったな。 学問、人望、剣の腕…全てにおいて村の奴らより遥か高みに立っていた。 …俺の次にな」 「貴様…」 「あの時のお前にとって俺は絶対だった。最高に苛立つ敵で、どうしても 届かない羨望の先で、そして、共に力を磨きあう友人だった。 一人で見つからないものも二人でなら発見できたし、いつ追い抜かされるかと 気...
  • 24-889
    平凡攻×変人受 僕には変わった友人がいる。 彼は周囲の人が興味を持つことに一切関心を持たないで、周囲の人がどうでもいいと思っていることにのめりこんでいるんだ。 3年前には本と睨めっこしながら僕と自分のマフラーを編んでくれた。 ついでに手袋と耳あてと帽子も作ってくれた。 それは別にいいんだ。温かかったし嬉しかったし。 けれども彼はそれを全部犬で作ったんだ! まあ、犬と言っても皮を剥いだわけじゃないんだけどね。 ブラッシングして溜まった犬の毛を集めていた彼はネットで偶然見つけた犬の毛でセーターを編んだ人を見てコレだ! と思ったらしい。 毛を洗って、梳いて、紡ぎ車をドイツから輸入し――この異様な熱意はなんなんだ!!――毛糸にしてから編んだらしい。 普通に買えばいいじゃん。 マフラーとか手袋とか耳あてとか帽子を合計した金額より紡ぎ車1台のほうが絶対高いよ? ...
  • 22-889
    ギャップ萌え 僕の兄正直いつも仏頂面なんだけど この前兄の部屋が深夜になっても電気が消えない 僕よりも先に風呂に入ってたし、もう寝てると思ったのに… ひょっとしたら電気消え忘れて寝てるのかもしれない たまにこれがあるから困る ノックすると返事がないので開けてみる すると 兄がおばさんの土産で貰ったぬいぐるみを抱えて寝てる あんなに渋々もらってたのに… 顔は眉間にしわが寄ってるのに… そんなに大事そうに両手で包むようにして寝るなよ とりあえず僕はそっと電気を消して部屋から出た 雪の降る町降らない町
  • 26-899-1
    他校の後輩  小さい頃から得意で続けて来た競技は中学で全国大会に出場するほどの腕前で、高校もその推薦で決まったくらいだ。  卒業式に柄にもなく花なんぞを手渡して見送ってくれた後輩達に、俺は明るく声を掛けた。 「後は任せたぞ」 「はいっ!」 「それで一年後、俺ん所に来い。また鍛えてやる」 「判りました!」 「頑張ります!」  高校に入学しても日々練習に励み、一年でも選手に選ばれ充実した生活を送った。  春が来て新入生の中には見知った顔が何人かいたが、一番期待していた奴はいなかった。  聞いてみると、進学のため県外に出たらしい。  一番伸びそうで期待していた奴だが、将来の目的のためじゃ仕方ないな……。  残念に思いながらも、鍛錬を続け迎えたインターハイ。  当然のように勝ち進み、地域ブロックの試合会場で見つけた懐かしい顔。  少しデカくなった?  いや...
  • 7-889-1
    もうちょっとだったのに ごめん、すみません、面目無い、と 思いつくままの言葉で謝り続ける攻めを、受けは煙草をふかしながら横目で見ている 謝られたって、お人好しにいいよ、気にしないでなんて この状況じゃ口が裂けても言えない 「…自信満々だったくせに」 汗で湿った髪をかきあげて、受けはわざと大きく煙りを吐き出しすと、 「あーもう!」 と唸るように言い、乱暴に煙草をもみ消した 攻めが悪い訳ではないと、分かっているけど この火照ったカラダをどうしてくれよう 「…もうちょっとでイケたのに」 ぶーぶー文句を言いつつ。 最中も最中、めちゃめちゃいい時に気の毒にも情けなく ぎっくり腰を発症させた攻めを病院に連れて行くかと、 受けはタクシーを呼ぶべく携帯を手にした もうちょっとだったのに
  • 7-889-2
    もうちょっとだったのに パチ まるで漫画のような擬音が聞こえそうな勢いで、アイツが綺麗に目を明けた。 「あーあ、もうちょっとだったのに。」 もうすでに起き上がりながら、アイツが俺に聞き返す。 「え、何が?俺何かした?」 「あー、いいから。こっちの話。気にするな。」 そう、今はまだ知らなくてもいい。 俺がお前のことを好きだとか、 寝ているお前にこっそりキスしようとしてたとか、そんなことは。 そのうち、このもうちょっとの距離を埋めてやるから。 素麺×ひやむぎ
  • 26-859
    暑くても離れたくない 男と男の荒い息づかいが部屋にこもる 「はあ、はあ…んっいくっ」 「んあっ」 果ててすぐベットに倒れ込み俺達は大の字になった 今日三回目だ 夜中帰ってして朝起きてして真っ昼間から… 「もう中ぐちょぐちょだよ」 「…もう一回する?」 そう提案すると智は流石に無理と屈託のない笑顔で答えた 智は腕を回して手を繋いでくる 「暑いね、シャワー浴びる?」 暑い… 湿っぽい部屋で運動したんだ、しょうがない それでも、ベタついた手を繋いでいても、心地よかった 俺が何も答えずにいるとじゃ、お先にと真っ裸で浴室に消えて 腰にタオルを巻いて戻ってきた 「久々だったから濃かったね、またいつでも呼んでね」 ベットの脇に無造作に脱ぎ捨てられた衣服を拾っている 「離れたくない…」 智の手をぐいっと引いてベッ...
  • 26-879
    踏まれにきました ――踏まれにきました。 ああ、そんなに口を大きく開けないでください。みっともない顔が更に締りがなくなりますから。 え? 言い間違い? そんなわけないじゃないですか。あなたのような頭で思ったままのことを考えもせずに口にするとでもお思いですか? もしそうなら心外です。 三歩歩いたら大体のことを忘れてしまうような軽いおつむのあなたには、私の気持ちなんてわからなくて当然ですけれども、私が冗談でこのような頼み事をしにくるとでも? 何困惑したような表情してんですか。全く可愛くありませんよ。 キョロキョロ挙動不審になるんじゃありません。一体いくつなんですかあなたは。全く、これで私よりも年上だというのだから嘆かわしい。 ……仕方がないですね。耳の遠いあなたのためにもう一度だけ言って差し上げます。 私を踏んでください。 その身長に反して大きな足で、私の背中に体重をの...
  • 26-849
    両片想い 親同士が仲が良くて、あいつとは生まれる前からの付き合い。いわゆる幼馴染だった。 人付き合いが苦手で勉強が趣味なんていう根暗な俺とは違い、あいつはいつだって明るくて、誰に対しても優しくて、俺には勿体無い友人だ。 中学、高校、大学まで同じ所に通うことが出来て、友人の少ない俺にとってはありがたいことだったが… いつからだろう、あいつの女癖が悪くなっていったのは。 女に縁がない俺からしたら羨ましく思えるぐらい昔から女にモテてはいたんだ。けど、取っ替え引っ替えに恋人を作るなんて真似はしなかったのに。 あいつの女癖の悪さに口を出すつもりは無かったんだ。強く言って、嫌われたくなくて。 でも今回ばかりは口出しせざるを得ない。 大学で俺が世話になってる先輩があいつと付き合い、こっぴどくフラれたらしい。 泣きじゃくる先輩を慰めながら俺は、あいつに対して初めて怒りを...
  • 10-889-1
    煙突のある風景 投下させてください。あと長くなってしまいました、すみません。 ______________________________ 僕の住んでいる町には巨大な煙突がある。 町のどこからでも見える、とても大きな煙突だ。 煙突の横には小さな家がちょこんと建っているのだが、空き家のようなので誰が 何のために建てたのかさっぱりわからない。 両親や祖父母にも聞いてみたが知らないと言う。なんとも不思議な話だ。 煙突と、まるで煙突のおまけのように小さな家(廃墟と言ったほうがいいかもしれない)は 子供たちの絶好の遊び場だった。 まわり一面原っぱで民家がなく、雨をしのげる家までついている。 これで秘密基地にならないはずがない。 僕とあいつも毎日ここで遊んだ。道で拾ったエロ本や捨て犬を持ち込んだりしたな。 そしてなんともありがちな話だが、煙突には足場...
  • 12.5-889
    戦士対魔法使い  戦いの終わった証として、そしてもう二度と繰り返さないという誓いとして、二つの国はあるものを取り替えた。  それは旗でも王冠でもなく、同じ頃に生まれた二人の王子だった。その儀式の場で二人は出会った。 「こちらの国では王子がお生まれになる前から、どの家の者が騎士として仕えるのかが決まっている。俺はずっと心待ちにしていた。その方のために命を捧げて生きるのだと、それしか考えずに今までを過ごしてきた」  大人ばかりの場で緊張した顔をややゆるませて、彼は話した。口ではそうと言わないが寂しげな顔をしていた。  少年は、言うことは大人びても話す調子は年相応の印象だった。ノスアは思わず気安くなり笑ってこたえた。 「争いごとは終わったんだ。平和が続けばいつでも会えるさ」  相手の少年もつり込まれたように笑顔を見せた。  宮廷魔術師であるノスアが自分の立場を告げると、少年...
  • 21-889-1
    主人公×ラスボス ラスボス「よくぞここまでたどり着いた勇者よ」 ラスボス「我が右腕となれば世界の半分をくれてや…」 勇者「お前が欲しい!!!!!!!」 ラスボス「え?」 勇者「ラスボスたんラスボスたん本物のラスボスたんktkrハァハァハァァアあああああ!!!」 勇者「結婚してくれラスボスうぅうううううう!!!」ガバッ ラスボス「ひぃっ!!」 女戦士「バインド!!」ビシィッ 勇者「ハァン!」 女戦士「すまないラスボス。勇者はこちらで抑えておくから続けてくれ。」 ラスボス「いや、ちょっと状況がよくわからないんだが」 女魔法使い「とりあえず~、"断られた"ってことでぇ~、すすめて?」 ラスボス「あ、ああ…」ゴホン「では」 ラスボス「我が誘いを断るとは愚かな!では力づくでかかってくるがよ…」 勇者「 力 づ く...
  • 26-869-1
    狸×狐 「あっはは、また騙されてやがる。無様なやつめ。気分が良いなあ。うすのろをからかうのは気分が良い!」 俺の腹の上に跨がって、目尻をきゅ、と細め、口角を吊り上げケラケラ笑う奴の顔を見上げ、溜め息をつく。 襦袢の裾から飛び出た奴の尻尾がぱたぱたと動いて俺の太ももの辺りを着物越しに掠めるのがこそばゆい。 「いい加減どいてくれないか」 「嫌だね」 「なあ、ならせめて、俺の腕を膝で抑えるのはやめてくれよ、痺れてきた」 「ふうん」 そう言うやいなや、ぴしゃりと俺の手の甲を叩く。 指先が痺れる感覚に眉をしかめると、奴は一層ニンマリと笑った。 「な、僕は綺麗だったかい?まったく綺麗な女だったろ?お前はいつも、あんな風に女を口説くの?お前なんかに着いてくる女なんて、いるの?答えてみてよ、さあさあ」 言い淀んでいると、またぴしゃぴしゃと痺れた手を叩いてくるので、仕方なく口を開...
  • 26-859-1
    暑くても離れたくない 続編というかおまけ ============================== 「ごめんっ…俺べとべとだった」 身体を離そうとするとぐいっと押し戻された 「俺も涙でべとべとだから気にしないで…俺も離れたくないし」 普段の余裕のある智ではなくて、 「やっぱもういっ「だめ」 「キスだけ…」 いつもとは違うぎこちないキスは心地よかった 狸×狐
  • 26-849-1
    両片想い 先輩は有能な営業マンで上司にも部下にも厚い信頼を得ている 俺は気さくで仕事にひたむきな先輩にすぐに懐いて…恋情を抱いた そうしてみると途端に真っ直ぐに尊敬の眼差しを向けてきた事が恥ずかしくなった 先輩には奥さんがいる 先輩はあまり話したがらないけれど、絶世の美女とだけ言っていた 「俺の眼鏡どこにある?」 「童顔隠しの伊達なら給湯室にありましたよ」 「…お前生意気だぞ」 大丈夫、先輩の幸せを壊すつもりはない 俺は後輩として先輩を尊敬してるんだ 俺には男前の部下がいる たまに生意気だが素直で仕事の覚えも速いいい部下だ 「甘党な先輩にケーキのストラップ買ってきました」 そういって面白半分に買ってくる乙女チックな物が年々溜まっていく 「あなたって意外と乙女なのね」 そうレズビアンの妻から笑われる 相手はストレート、しかも直属の後輩...
  • 26-819-1
    旅行先で出会った運命の人  あいつとは沖縄を旅行中に知り合った。今から六年前で、あいつは卒業旅行中の大学生。  馴れ馴れしく写真撮影を頼まれて、成り行きで会話をしていたらお互い近くに住んでいることが判明し、  微妙に付き合いが始まって、いつの間にか恋人になっていた。  俺はその頃から、男の癖に占いに凝っていた(性差別的な文言だが)。  当たると噂の占い番組で、「今週の天秤座は旅行が吉。運命の相手に会えるでしょう」といわれたことが、  旅行の一つのきっかけだったほどだ。  両思いになってからそれを思い出し、俺は他愛もなく、そして年甲斐もなく浮かれた。三十前の男がである。  男同士であることも、年が八つほど離れていることも、その時は大したことには思えなかった。まあ、若かったのだ。  付き合って三ヶ月くらいした頃だったか、俺は、酔った勢いで、その占いのことを喋ってしまった...
  • 4-879
    カキピー ベストカップルである。 他に、彼らを例える言葉はない。 官能的ともいうべき、艶やかな褐色の肌をしたカキのタネと、 思わず歯を立てたくなるような、しっとりと象牙色の肌を持つピーナッツ。 そんな彼らを似合いのカップルと見込んだカメダさんが、 二人を一つ袋の中で同衾する仲に仕立て上げたのだった。 ピリッとエッジの利いたカキのタネを、ピーナッツがまろやかに包み込む。 その絶妙なコンビネーションは、 いわばエネルギッシュなやんちゃ攻めと、包容力溢れる年上受けである。 今や日本中の酒飲み達に愛され、外国人向けのお土産としても人気の彼らだが、 一つだけ、悩ましい問題を抱えていた。 誰かに食されることでしか、交わることができないのだ。 こんなに近くにいるのに一つになれないなんて…! もどかしい思いを胸に秘め、彼らはひたすらにそのときを待つ。 ―...
  • 6-899
    8あいしてる 双子の弟が、さっきから珍しく机に向かって何かやってる。 「アラタ、なにやってんの。」 「んー、ラブレター」 …はぁ? アホか。 「……………誰に。」 「よっし、できた!!」 アラタは興奮した調子で俺の方を向くと、読むからな?と言って咳払いをした。 「*8あいしてる  はじめまして、でも俺はいつも*8のことを考えてます!  *8はもしかして誰かが自分のこと見てるなんて思ってないかもしれないけど  俺はやさしくてしっかりものでいつもみんなを支えてくれる*8が大好きです。  みんな*9や*0のことばっかり褒めるけど、その*9や*0が輝けるのも  *8のおかげだってこと全然わかってないよな!  だから俺がみんなのぶんもお礼を言います。  いつもありがとう!!  これからもずーっと*8のファン 小岩井新 ……どう?!」 …*8っていう...
  • 16-899
    if 「なあ、もしもの話しようぜ」 「明日地球がなくなるなら何したいー? とか? 俺とりあえず屋上から愛を叫ぶ!」 「誰にだよ。……そういうんじゃなくてさ、もっとこう、身近なかんじで」 「ひーみーつ!……身近?」 「たとえばー、もしも俺が女だったらどうする? とか」 「えっ! たっつん女だったのかよ! それ何てエロゲ?」 「ちげーよ。つーかお前、俺と何年の付き合いだよ。俺の裸さんざん見てるだろーよ。バッチリついてます。お前よりデカいです」 「いや、いやいやいや。知ってる。知ってるけどノってやっただけ。あとね、男はデカさじゃない。心意気!」 「うん。で?」 「だから……え、えー……うん。とりあえず、おっぱいもましてもらう」 「おっまえ……即物的すぎるだろそれ。  エロゲとかなんとか言ってたときも思ったけどいい加減思考が下半身直結すぎだよ」 「そんなもんだよ、...
  • 26-089
    やっと愛するお前のところへ行ける 俺は大学時代にサッカー部だった 大学は海の向こうのあの国の大学となぜか提携をしていた なんだかよく知らないが毎年秋に交流試合をしてた 一年おきにこっちが訪ねたり向こうが来たりしてた こっちが訪ねるときはメンバーは三年生と四年生のみだった 交通費もバカにならない 俺が三年生のときは向こうが来た そして向こうのディフェンダーと一夜を一緒に過ごした 俺はフォワードだったし体は凄くいい相性だった そのときにメルアドの交換を忘れるという痛恨のミスを犯した それから一年間のオナネタはアイツだった そこそこの女好きだった俺が全く異性への性欲を喪失した 織姫との再会を待ちわびる彦星のような気分で一年を過ごした そして四年生になり俺たちがいよいよ訪ねる秋になったときだった そりゃ国境の海の波が荒いことはニュースで聞いていた ただガチでド...
  • 26-489
    あえぎ声がうるさい攻め(notショタ)と声を我慢する受け 隣の部屋のカップルのあえぎ声がうるさくて、というベタな事があって引っ越した。 やった、これで壁殴り代行を呼ばずに済むぜ! と喜んでいたのもつかの間。 初めて俺の部屋に相手を招いたら、むしろそいつの声の方が酷かった。 「あー、あーこれマジヤバいわ、気持ちよすぎ。なあ、なあ、お前はどう?きもちーか?」 通常音量でそのセリフ言われても、返せるわけないだろ。 お前のドヤ顔マジウザい。 ムダにいい声、もっとウザい。 きもちーけど、まだこらえられる。 「なあ、俺…もうイキそうなんだけど。中でいい?なあ、返事しねえとこのまま出すぞ…?」 嫌だけど、中は嫌だけど、まだ声は我慢できる。 「いいのか?なあ、このまま…出すぞ!」 さっきから首を横に振ってるだろ、意思表示はしてるから! なあ、やめてくれよ。 お前...
  • 26-289
    些細なことで嘘を吐く  シーフのサラキは些細なことで嘘をつく。 嘘つきな男だと思われたいのだ。 自分は茶葉の目利きの天才であるとか、 この先の教会は十字の代わりに矢印が飾ってあるのだとか、 水竜のなめらかな背中は怒るとトゲトゲが出るのだとか。 すぐばれる嘘を、法螺を、軽やかに揺れる赤毛と 道化た手振りに乗せて日々繰り出している。 真摯な男だと思われてはたまらない。 いつか一番大事な場面で、 彼が大事なもののために命を投げ出す時に、 彼が思わず本音をこぼしてしまうだろう時に、 あいつのことだから本気かどうか分かりゃしないと、 笑い飛ばしてほしいのだ。 彼が心と剣を捧ぐ主に。 **** その日も、冗談で場を盛り上げていたサラキは いつの間にか酔いつぶれてしまった。 宿屋の酒場。 パーティーの仲間や荒くれ...
  • 26-789
    ヤクザと公務員 「う、嘘吐きィィィィッ」  大の男がボロリ、と涙を零した。序でに言うなら鼻水だって垂らした。 「あのね、ショウちゃん、俺は嘘なんてひとっつも吐いてないよ?」 「だ、だってお前!!!公務員だって言ったじゃねぇかッ!!」 「うん、だから公務員だって」 「じゃあこれは何なんだよッ!!!」  ビシッと効果音が鳴りそうなくらい勢いよく眼前に突き出されたのは、ついうっかりコートのポケットから落してしまったものだ。 それを目敏く、いや、見た目と職業を裏切って存外繊細で気配りのできる心優しい彼は拾ってくれたのだ。 その瞬間、凍ったように動かなくなった彼の表情は傑作だった。思わず携帯で撮った画像はしばらく待受けに設定しようと思う。  彼が涙ながらに突きつけるそれは一見黒いパスケースに見えなくもない。ただ表にも中にも燦々と煌めく文字が記されている。 「け、け、警察だ...
  • 26-689
    浦島太郎と亀 「なーなー行こうよ、遊園地。バイト代入ったばっかりだしおごるからさ」 「何で俺がお前のおごりで遊園地行かなきゃいけないんだ。そもそもおごられる理由がない」 「え、理由? そりゃ、えーと、お礼だよ。この前宿題見せてもらったお礼。亀だって太郎ちゃんに助けてもらったら恩返しするだろ?」 「確かに俺は太郎だが、浦島太郎でも桃太郎でもない。それにいったいお前のどこが亀なんだ」 「あ、それを聞いちゃう? しかたないなー、太郎ちゃんがどうしてもっていうのなら、俺様のご立派な亀の頭を……(カチャカチャ)  いてっ、ちょ、何でいきなり殴るんだよ」 「お前が悪い」 「うー、確かにちょっと悪ノリしすぎたけどさ」 「だいたい亀の恩返しってなんだ。お前が俺を遊園地につれていって、年上の綺麗な乙姫さまでも紹介してくれるのか」 「あ、いや、それは違う。っていうかそれは困る」 「...
  • 26-089-1
    やっと愛するお前のところへ行ける 港を一望できる小高い丘の頂に造成された公営墓地 その東側の片隅にアイツの墓はあった 少しだけ伸び始めた白髪混じりの坊主頭に初冬の風は冷たい 自分は24歳だけど今の自分を見て誰もが40代だと思うだろう あれから7年ですっかり老け込んでしまった ずっとこの日を待っていた ただいざこの日を迎えるとそれが何なのだという虚しさが猛烈に込み上げて来る アイツとはずーっと幼馴染みでダチだった 高1の夏に部活の合宿で行った長野の山奥で関係は劇的に進んだ それからは猿みたいにやりまくった 男子高校生なんて性欲の塊みたいなもんだからな あの日はオレもアイツも17歳の高2の秋の夜だった 一緒に帰る途中に寄ったコンビニで実に他愛ないことで口げんかした コンビニを出て別々に帰宅の途に就いた アイツはオレと別れてから約10分後に何者かに刺され...
  • 26-389-1
    秘密の関係 いつも真面目で、誰からも信頼されて、俺に常識をわきまえろと説教してくるくせに、佐内は俺の『セフレ』をしてる。 最初はじゃれ合いで、悪戯しあってるうちに、お互いなんだか気持ち良くなってきてエッチした。 次は甘えてきた。佐内からだ。 甘い言葉を俺に囁くので、佐内にとってそれが遊びでも、嬉しかったから、またヤった。 気がついたら習慣化してた。 気持ちのいいことを追求する習慣に。 佐内はどれだけヤりたいんだろう。 俺は毎日でもヤりたい。 だからだろうか。普通に友だちと話しながら笑ってる佐内にイライラしてきた。 そいつ、その笑い声よりもっと高い、スゴい声出すんだ。それを俺は知ってる。 真剣に答弁する佐内を見ながらイライラしてきた。 そんな澄ました顔なんかじゃなく、快感にうっとりしてる表情の方が自然だ。それを俺は知ってる。 口うるさく俺に説教して...
  • 26-489-1
    あえぎ声がうるさい攻め(notショタ)と声を我慢する受け ドン、と。地鳴りのような音がした。 すぐにわかった、誰かが壁を叩いた音だと。 陶酔していた雰囲気の中から急に日常に引き戻される。俺が真昼間っから男とセックスしている間、隣の誰かがテレビを見ている洗濯をしている友達と電話している。 途端に顔が熱くなる。「恥ずかしがっている」それをこいつ知られるのが殊更に恥ずかしく、耳元がカイロでも押し当てられたみたいに熱い、それが触れなくてもわかった。 2階建ての安アパート、当然のように薄い壁、最初から声は抑えていたつもりだったが、こいつの実家から持ってきたというちゃちなパイプベッドが高い音を立てながら軋んでいるのに気が付いた。 「うぁ、沢原ぁ……、ちょっ、ゆっくり…」 助けを求めるように後ろに首を向けると、俺とベッドを揺らしている男が幸せそうに笑っていた。 「なに?なんでーこ...
  • 6-859
    人形のような男 何を話しかけても、奴はただ『返事』しかしない。 俺が何をしても、奴はただ『受け入れる』事しかしない。 俺の話す事を『聞く』事もしなければ、俺のすることを『拒絶』することもない。 身体は俺の側にあっても、心は俺の傍にはない。 溜め息をつきながら、彼の髪を手で梳いた。 さらさらと、俺の手から零れ落ちる彼の髪の毛。 まるで今の俺の気持ちのようで、酷くいらいらする。 唇を奪い、―窒息させるかのように―深く口付けた。 奴が苦しんでいるのが分かる。 くぐもった呻き声が、助けを求めるように漏れる。 唇を離してそいつの顔を見ると、目がうつろに宙を見ているのが分かった。 きっと、その瞳は俺を映してなどいないのだろう。 人形のような男
  • 6-869
    40年ぶりの再開 ※人間×エルフ ++++++++++++++ 久しぶりに彼に会った時、僕は何か悪い夢でも見ているのかと思った。 しばらく思考が止まってしまい、考える事が出来るようになってからようやく気が付いた。 彼は、人間だったのだ、と。 知らなかったわけではない。 ずっと一緒にいるうちに、忘れてしまっていただけだった。 僕はおそるおそる彼の手に触れた。 前に僕を力強く抱きしめてくれた手には、もうすでに力などこもってはいない。 僕を魅了した瞳は、もう半ば輝きを失っている。 彼は、呆然とする僕を弱々しい腕で抱きしめてくれた。 彼の腕に抱きとめられた時、僕はなぜか嬉しくなって涙を流してしまった。 あの時の力強さもなければ、抱きしめられるたびに聞かせてもらった甘い言葉を聞かせてもらえたわけでもない。 だけど、彼の腕の...
  • 6-879
    誰そ彼 彼は誰 「あ…おかえり」 「悪い、起こしたか?」 いいや、と首を振る姿はやはり眠そうだ。 俺は伸びをしてその辺に上着やらシャツやら鞄やらを放り投げる。 「だからシワ増えてアイロンがけ面倒になるんだよ、掛け布団はちゃんと畳むくせに」 「それは俺の物だから俺がしたいようにする。別にいいんだって」 とにかく疲れた、横にならせてくれと呻くように口にしたら、 あいつがゆっくりと上体を起こして枕元に手を伸ばした。 「今日買ってきたんだ、君がゆっくり眠れるように。いつも1時間は唸ってるからね」 小さな灯があいつの顔を浮き立たせる。 「いい香りでしょ?」 あいつの微笑みが、触っちゃいけないほど綺麗なのに何故か惹かれる。 右手で頬に触れ、そのまま輪郭をなぞってから一緒に布団へ倒れ込む。 「…これ、お前がつけてるコロンと似てる」 「へぇ、どうしてわかった...
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