*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「26-959」で検索した結果

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  • 26-959
    泣くなよ ばか、泣くなよ、こっちも悲しくなるだろ。あきらめよう。 いやいや、待てって、そんなに泣くなって、悪かった。 長い人生、こういう日もある。風が吹くと桶屋が儲かる。 桶屋儲かってよかったよね。人生いいこともあるってこと。 え、棺桶?……そうなんだ。悪かった、そうじゃない。 人間万事塞翁が馬。じいさんが馬になることもある、何が起こるかわからない人生。 今日はこんなに最悪でも、明日はいいことがある。 ……だーかーらー。泣くなよ、俺また悪いこと言った?……あ、そう。ごめん。 困った、俺どうしたらいいんだろ。 もう酒は飲まない。飲み過ぎない。 夜は寝る。早寝する。徹夜、アンド、飲み過ぎ。これ最凶だった。まじ覚えてないもん。 ……また。泣くなよ、鼻かむ? これ、ティッシュ。 ちょ、やめろ、それ俺のシャツ! うわ、俺、どうやって帰ればいいの。 痛い、蹴るな、わ...
  • 6-959
    俺様受の告白 A「はあ?俺様が告白?するわけねーだろ。何寝ぼけたこと言ったんだテメェ  ってーか誰によ?この俺様が一体誰に告白するってんですか?あぁ?」 B「相変わらずガラが悪いね。おとなしくしてりゃカワイイのに」 A「急に呼び出しといて、くだらねぇこと言ってんじゃねーぞ」 B「そんなムキになるなよ。まあ飲め」 A「ムキになんかなってねえよ」 B「そろそろ、ちゃんと言ってやってくんねえか」 A「だから何を、誰に?」 B「誰になんて言わなくても分かんだろ」 A「わかんねーな」 B「俺もいい加減、お前ら見ててイライラすんだわ」 A「知るかよ」 B「好きなんだろ?」 A「はあ?何言っちゃってんのお前、はあ?」 B「このままだとあいつ、ほんとに結婚しちまうぞ」 A「…するわけねーだろ」 B「いや、今回ばかりはわからんよ。親やら親類一同で回りをがっちり固められ...
  • 16-959
    妖精 「ちょ、ちょっと待ってください、斉藤君」 「待たない。高校の入学式で出合って、先生と生徒のままじゃ駄目だって 言われて、気持ちなんかわかりきってるのに卒業までキスもさせなかった 上に、未成年相手にそういう関係を持つのは問題だって、俺の二十歳の 誕生日の今日まで清い関係を続けさせられたんだよ?俺もよく我慢したと 思わない?先生」 「あ、はい。斉藤君が僕を大事にしてくれていたのは、よくわかっています」 「だから、もう待たない。二十歳の誕生日プレゼントに、先生をいただきますから」 「わかってます!わかってますから、覚悟はしてますから、ちょっと待って!!」 「この期に及んで、何を待てと?」 「あのですね。...妖精って知ってます?」 「は?!」 「この間、生徒に言われたんです。『先生、妖精だろ?』って。後で意味を 教えてもらったんですが、その、30歳すぎて...
  • 3-959
    流されすぎな受! 「ねぇ、お茶でもしてこうよ」「やだ」 「じゃ、ご飯食べてこうよ。おごるから」「やだ」 「そんなら、ホホホ…ホテルにでも行こうか、俺が払うからさ」「……アホかお前」  根本的には何も変わらないお誘いを三度とも蹴り飛ばして、僕はすがるように追いかけてくる あいつを無視して大股で歩いた。 「ちぇっ、ツレナイなぁ。せっかくのコイビトのお誘いだってのに」 「誰がコイビトか、誰が」 「決まってるじゃない、あ・な・た・と・ワ・タ・シ」  妙なしなを作ってウインクされた。はっきり言って気持ち悪い。 「お前、アホか」  同じ悪態をもう一度繰り返す。 「そうだね……じゃ、いい。俺帰るよ。お休み」 「わ、分かればいいんだよ分かれば」  突然しゅんとうな垂れた情けない顔が、心に突き刺さる。いきなり前言撤回とは、それでも男かお前は。 ...
  • 2-959
    ツンデレ 「計算式はつまりF=maを表しています。ここでのFとはすべての力の合計です」  眼鏡のフレームを細い指で押し上げながら彼はそう言った。  期末テストまであと一週間。  馬鹿で運動しか能が無い俺の家にまでわざわざ来て、  今年知り合ったばかりのクラスメイトの彼は勉強を教えてくれていた。 「mは運動している物体の質量、aは加速度で…」  言葉に言いよどむことなく、説明を続ける。  彼との勉強会は、楽しかった。  俺が恥ずかしくなるようなおそらく基本的な質問にも、  彼は決してバカにしようとはせず、丁寧に答える。  彼は俺から何万光年もリードしそうな勢いで頭がいいのに、  バカな質問にも丁寧に、分かりやすく、優しく解説してくれる。  こんな態度、教師にさえとられた事さえない。 「さて、この運動方程式より、ⅹ方向への力の合計を...
  • 7-959
    口紅 鏡に映った俺の顔。 決して柔らかくはない顔の輪郭と、一重の細い目。 適当に短く切られた真っ黒な髪に、筋の浮く太い首。 そして、薄い唇。似合わない紅色。 色彩を増やしても男の顔でしかなく、溜息を吐く。 ヤツの好みは、丸い頬に大きな目を輝かせた少女だった。 ふわふわした長い茶色の髪に絡まるネックレスを、苦労して取っていたのも覚えている。 小首を傾げる少女の首は折れそうなほど華奢で、ぽってりとした唇がさくらんぼうのようだった。 昨日、ヤツは俺とは正反対のその少女に振られた。 慰める言葉は掛けられなかった。 浅ましい本音が透けて見えてしまいそうだったから。 鏡に映る醜い姿に、我に返ってティッシュの箱を引き寄せる。 だけど拭っても拭ってもティッシュは色を吸わない。 ただ、溢れた涙だけが染めていった。 お菓子作り
  • 5-959
    シーラカンス 「うお、シーラカンスの剥製!!」 「…あったって不思議じゃないだろ、水族館なんだから」 「そういえばシーラカンスってさ」 「何?」 「不味いんだってな」 「…」 「しかも肉にワックス入ってるから下痢になるって」 「…食うなよ」 「食わないよ」 「…なんでお前と水族館なんて来ちゃったんだろ…」 「そりゃお前、俺とお前が付き合ってるからだろー」 「ごめん、今すっげぇ後悔してる」 「うわひどっ!」 「…まぁ、でも」 「ん?」 「お前のシーラカンスみたいなところは結構好き」 「は!?どこ!?」 「…言わない」 …4億年だろうが、それ以上だろうが。 変わらぬ愛をくれそうなところ、なんて、絶対言わないから。 シーラカンス
  • 1-959
    お古のディスクトップパソコン×最新式ノートパソコン 「まだか?」 「うーん」 「じれったいな。まだかよ」 「えーと待って。もうちょっと……」 「イライラすらなあもう! 早くしろよ!」 「あっ来た! 来た来た来たキター!!」 「よっしゃあ! そのまま俺に流しこめ!」 「……あ。やば」 「ん? どうした」 「壊れちゃった」 「何ぃ!?」 「どどどうしよう。ええとこうしてこうしてこうやって」 「あー馬鹿よせ! 焦って抜くんじゃねえ!」  プツン。  コンセントをふたたび差し込み、再起動。 「きゅう……」 「大丈夫かデスクトップ! しっかりしろ!」 「ごめんノート。データ消えちゃったみたい」 「いいよ気にするな。せかした俺が悪かったよ……」 また最初からやり直しだ。がんばれPC! と、その持ち主! 「誕生日おめでとう」という...
  • 8-959
    故郷 「そんな顔しないで。俺、頑張ってくるよ」 そういって君は、真っ白な羽二重のマフラーを巻いて行ってしまった。 もう二度と、故郷の土を踏めないことを知りながら。 君のいない春が来た。 僕は亡国の名を冠した病のおかげでここにいて。 あんなに元気だった君はいなくなった。 ふと目を落とした先に、小さな真っ白い花が咲いていた。 ああ、ここは。 僕が君にマフラーを渡した場所だ。 「…帰ってきて、くれたんだね」 震える肩
  • 4-959
    やっぱすきやねん 「やっぱすきやねん」 「…何なん、その不自然な関西弁は。いや、関西弁ちゃうでソレ」 「ふーん、そうなんだ」 「しゃあないから俺がほんまの関西弁で言うたるわ。 『やっぱ好きやねん』」 「…」 「ん、どないしたん?本場の発音にまいったんか?」 「いや、…お前にしては感情に乏しい言い方で珍しいなと」 「もっかい言って欲しいんやったら素直にそう言えばええんに…」 「ちげーよ、別にそんなことねえって―」 「やっぱ好きやで、お前のこと」 -------------------- 関西人と関東人で。 やっぱすきやねん
  • 9-959
    4分遅れの時計 新入社員と入社して、もうすぐ1年。 俺が知る限り、俺の直属の上司である片岡さんは、一度もネクタイをゆるめたことも、 髪に寝癖がついたことも、忘れ物をしたと慌てることも無い。 いつも同じように、キッチリしている。(そして俺は、情けない姿ばかり見せている) さらに仕事はで完璧で、早い。接待もスマートにこなす。 堅物に見えるからか、女がいないようなのが、マイナスといえばマイナスなぐらいだ。 「木田。ぼんやりするな。考え事しないで手を動かせ」 書類をプリンタに打ち出しながら、静かな声で片岡さんは言った。 俺はビクッとして、あわててパソコンに向かう。 「木田、今こっちに届いたメール転送するから、書類に文面付け加えてくれ」 「はい」 返事している間に、メールは届いた。相変わらず仕事が早い。追いつくだけで必死だ。 『A社プレゼン資料について2   200...
  • 23-959
    そして僕は逃げ出した 「おっしー」 学校帰りに寄ったマックで、加藤が急に口を開いた。いつもはシェイク飲んでるときだけは黙っているのに。あといつも言ってるけどその呼び方やめろ。 「なんだよ加藤。おとなしくシェイク飲んどけ」 「いやー、おっしーっていい奴だよなと思って。おれこんななのに長いこと一緒にいてくれてるし」 「はぁ?」 こいつは急に何を言い出すのか。シェイクに変なものでも入ってたのか? 幼馴染ゆえ付き合いは長いが、こんな事言われたのはじめてだ。キモイ。 「だってさ、おれ超おしゃべりじゃん?」 「もう慣れた」 「おれ超ドジじゃん?」 「小学生のころよりマシだ」 「おれってば自ら危険に首突っ込むところあるじゃん?」 「何かあるとすぐ逃げる僕よりマシだ」 「おれゲイじゃん?」 「面食いだから僕に実害ないだろ」 「でもおれおっしーの事好きになっちゃったよ?...
  • 10-959
    ひよこ鑑定士。 その養鶏場を訪れた者はまずそのあるじ家族の容姿に驚き、さらにその特殊技術に慄くこととなる。 「あんまじぃーッと見らんでくれん?恥ずかしいけん…」 そう言いながらも耕治の手は止まることなくひよこを選別していく。 畜舎の角に設えられたひよこの選別スペースでせっせと働く耕治は、 まるで鄙びた南国の田舎には似合わない人形のような美しさを備えていた。 それには理由がある。 耕治の親父さんは、昭和55年度全日本初生雛雌雄鑑別選手権大会優勝選手…つまり ひよこ鑑定士の日本大会で優勝し、農林水産大臣賞を授与されたのちに、ベルギーへ派遣されていた。 そこで、美しい奥さんと結婚し耕治とその兄の耕一さんが生まれたわけだ。 簡単に言うと、ベルギー人とのハーフだから耕一さんも耕治も日本人離れした容姿をしているわけだ。 耕治の、赤茶色のサラサラした髪に、ガラス玉...
  • 20-959
    露出狂×お巡りさん 2×××年、ネオ東京801番街。 この街は犯罪に溢れている。 秩序を失ったこの街で僕達は日夜、犯罪者と戦っていた。 事件はビルの隙間から夕日が沈み、夜のネオンが消えかけた深夜に起きた。 「屋良内科ビル付近に不審者がうろついている」との通報を受け、 僕と先輩は小雨の降る中、現場に向かった。 「アイツが今日の獲物か」 先輩がそう呟く視線の先には全裸で太鼓を叩く男の姿があった。 「ソイヤッ!ソイヤッ!」 男は僕達に気づくと逃げるどころか挑発するように股間を隆起させ向かってくる。 天高くそそり立つそれはまさに凶器。 「う、動くな!」 警棒を構え威嚇する僕を先輩が静止する。 「コイツはそんな棒じゃ収まらねぇぜ」 そう言うと先輩は自らも全裸になり股間の警棒を隆起させる。 犯人のモノに負...
  • 27-959
    真面目×真面目 無遅刻無欠席、校則遵守。何が楽しいのかって? 何も楽しくなんかない、ただ楽なだけだ。 昔から、「高木くんは真面目だよね」とよく言われた。 褒め言葉じゃないって気づいたのは、割と最近。 いつまで経っても友だちができない理由に気づいたのも、同じ頃。 「高木くん」 金曜日の帰り道、俺を呼び止めたのは遠山。こいつも無遅刻無欠席のぼっちだ。 授業で二人組を作る時は余り物同士で組むことが多いが、友人と言えるほどの会話はない。 遠山は休み時間、いつも背筋を伸ばして分厚い本を読んでいる。 周りがどんなに騒いでいようが、たまにつつかれようがお構いなしに。 寝たふりしか出来ない俺とは、大違いだ。 その遠山が、俺に何の用だろう。 「な、なに?」 今日初めて誰かに話しかけられたな、と思いながら振り返ると、 「単刀直入に言う。僕は君に好意を抱いている」 真...
  • 15-959
    人×異形の者 「また今日も残されたのですか。少しはお召し上がりいただきませんと……」  私は目の前にいる年若い主人にそう言った。  年若い主人と言っても、年齢は私とそう変わりない。 見た目は若い少年の姿。誰もが憧れる永遠の命。  彼は自ら望まずして、それに近い体を手に入れている。  彼は傷だらけの体を長椅子にまかせ、ぼんやりと外を見ている。  一夜にして白くなった髪は、日にあたると銀色に見える。  この方の髪は、昔はとても美しく黄金色に輝いていた。 「別にいいじゃないか。餓死してやろうかと思っても、お前がそうさせてくれない。 口から摂取するか、管から摂取するかの違いだけだ」 「……それでは、お下げいたします」  銀食器を私は片付けた。 「どうされました?」 「腕が痛い」 「ああ」  腐敗臭がどこからか漂っているのに気がついた。 また...
  • 24-959
    踏み台になる 「攻めさん攻めさん」 「なんだ、受け」 「踏み台になってください」 「ん?どうした」 「戸棚に置いてるマグカップ、棚の位置が高すぎて取れないのです」 「ああ、あれか。なら俺が取ってやるよ。ほら」 「あ。……ありがとうございます」 「せっかくだから一緒にココア飲むか」 「攻めせん攻めさん」 「なんだ、受け」 「踏み台になってください」 「ん?どうした」 「この壁を乗り越えて向こうへ行きたいのですが、まず上のところに手がかかりません」 「おお、これか。なら俺が通れるよう壊してやるよ。うおおおおお!」 「あ。……ありがとうございます」 「破片踏まないように気をつけろ。さ、行くか」 「攻めさん攻めさん」 「なんだ、受け」 「踏み台になってください」 「ん?どうした」 「身長180センチからの風景というものを見たいのですが、僕...
  • 21-959
    お前が大人になるのをずっと待っていた 小さい頃毎年夏になると、俺はじーちゃんの家によく泊まりに行っていた。 じーちゃんちはまあとにかく田舎にあって、俺の住んでいる場所から電車をいくつか乗り継いで、しかも鈍行しか止まらないような駅で降りる。 駅は当然のように無人駅で、着く時間を連絡しておくと、じーちゃんがにこにこして迎えに来てくれた。 ばーちゃんはスイカを用意してくれてて、じーちゃんととりあえずそれを食べて。 家の裏には川に下りられる階段があって、俺は必ずその川へ遊びに行っていた。 その川で、毎年一緒に遊ぶ友達がいた。 小柄な俺よりさらに少し背の低くてふわふわした髪をしたそいつは、田舎のガキらしく真っ黒に焼けて、麦わら帽子をいつもかぶっていた。 都会育ちの俺と、根っからの野生児のあいつは、滝からダイブしたり、洞窟を冒険したり、俺がじーちゃんちにいる間は毎日のように...
  • 19-959
    そら涙 1年ぶりの町は何も変わっていなかった。電車を降りてこじんまりとした駅に着くと 俺はまっすぐにあいつの元へと向かった。 空はオレンジ色に染まり、そろそろ日が沈もうという頃。田舎の小さな駅だけあって 行き交う人の姿もまばらだ。 そんな駅から歩いて10分程の墓地に、あいつは眠っている。 「去年ぶりだな」 墓石に水をかけて花を供えると、俺は奴に話しかけるようにそう声をかけた。 こうして毎年墓を訪れるようになって、もう5年になる。 「なあ」 一呼吸置いてから、俺は再び口を開いた。これも毎年のことだ。 「…俺はお前なんて嫌いだったよ」 こいつとはこの町で2年と3ヶ月一緒に暮らしたけれど、次第に嫉妬深くなり友人と遊びに 出かけただけで誰と何処へ行ってきたのか、俺に逐一報告させようとするこいつに段々と 嫌気がさしていったのはやむを得ないことだっただろう 暴力を...
  • 18-959
    殺し愛 ずるり、と腕の中の体から力が抜け、そのまま地面へと崩れ落ちる。 ふう、とため息をつけば今補給した食事の鉄の味が口の中へと広がって、 なかなか甘美だと言えた。 そっとかがんで足元の体を持ち上げる。戯れに襲ったその青年は浅い息を立てていた。 今まで基本的に女を獲物としていたが、男も選べばなかなかのものだ。 しかし満ちる力とは別に、私はまるで凪の中で座るような気分だった。 何が不足か。そう仲間なら聞くだろう。なぜなら私もそうだった。 しかし今は違う。 一ヶ月。 たった一ヶ月で私は変わってしまった。 一ヶ月前の満月の日、あの夜あの場所あの時以来、いくら美女を捕まえれど、いくら 甘美な血を吸えど、私は満たされない。 それは遠大な戯れ。どんなに贅を尽くした晩餐、どんなに清らかな血、穢れた血よりも 甘美なもの。 銀色と青灰色と紅。それが私を支配して、ひととき...
  • 28-959
    にっこり笑顔が二つ あのさ、とか言っているこの人が愛おしかった。 オレの恋人は、高校のころの先輩で今は会社の上司で頼れる人だ。 バリバリ仕事をして、余暇はしっかりと取るし公私混同は絶対にしない。 それにめちゃくちゃ頼りになるし優しい。 たとえば、めちゃくっちゃ困難なことがあってそれで話を振るとする。 そうしたら、この人はどんな相手にだって (どんなにめんどくさい人にだってだ!)手を差し伸べる。 自分の仕事を抱えながらも、そっちの仕事もこなして、さらに周りに気も使える。 女子の同僚からは”高嶺の人”とか言われていて、 上司にしたい人理想の恋人私生活が気になる人ナンバー1。そんな人。 …のはずなんだけど、なぜかオレの前ではそんなそぶりは見せないし、 もっと力が抜けている。Jホラーの予告を見ただけで ぎゃーぎゃー悲鳴を上げるぐらいの怖がりだし、 甘...
  • 14-959
    お互いに恋愛感情のない友達とキス 和室だか洋室だか判らないような変な部屋で 俺は割り箸を握らされて 王様だと名乗る山ちゃんと呼ばれている奴が、 「3番と5番がチュー」とか言って、 俺の割り箸には3と書かれていて、 「あ、俺5番。僕が5番でーす。」と嬉しそうに斉藤が宣言した。 最悪だ。 俺の『初めてのキス』という、人が言うには なかなか素晴らしい思い出になるらしいイベントは よく知らない観衆の前で、酔っぱらった斉藤相手に行われるらしい。 「私は4番」「え~、私は7番」と 眼の周りをキラキラさせた女達が3番を探す。 5秒後には確実に騒がれて笑われて変な期待の眼差しを向けられるだろう。 それは何となく嫌だ。 仕方ない。 勢いよく立ち上がり、力任せに斉藤の肩を引いて、 驚く斉藤の顔を見なかったことにして目を瞑り、唇に当たりにいった。 これは当たっただけで...
  • 26-949
    セクサロイドとインキュバス また、夜が変わった。 ほんの一眠りしてる間、加速度的に世界は人工の光で満たされていく。 以前は赤や緑など雑然とした色にまみれていたが、今はただ青く白く統一され、どこか病的な印象を受ける。 あれからどれほどの時間が流れただろう。なんにせよ、目覚めたということは餌が必要になっているということだ。 感覚を広げ、ややあって一つの魂を見つける。好都合にも近くに他の反応はない。 さっそくその場に跳躍すれば、瓦礫とともに一人の若い男が横たわっていた。 浮浪者だろうか、酔いどれだろうか。そういう類の者にしては身なりは整っているように思える。 しかし、そんなことは久々の食事にあっては瑣末なことにすぎない。端正な上物とあってはなおのことだ。 「さあ、お前はどんな夢を望むんだろうな……?」 女か、それとも男か。無意識に潜む理想の姿を探ろうとする。 しかし...
  • 26-939
    陰間の恋 「お前は本当に可愛いね」 初会の時から会うたびに囁かれるその言葉が、今ではもうただの世辞でしかなくなっているのだと分かっている。 この人と出会った頃は顔や体つきにまだ辛うじて残っていた幼さは、今ではもうすっかり消えてしまった。 飯を減らしても背が伸びる。朝晩抜いてもひげが生える。子供から男になってしまった自分が陰間でいられる時は、もう長くはない。 それとも陰間を辞めるよりも、この人に世辞ですら可愛いと言ってもらえなくなる方が早いのだろうか。 「旦那様……」 それでも少しでもその時を遅らせたくて、作った高い声で上目遣いに呼びかければ、その人は苦い顔になった。 「今日も私の名を呼んではくれないのかい?」 申し訳ありませんと謝るのも白々しい気がして、何も言えずにただうつむく。 他の客ならばいくらでも求められるままに名を呼べる。一夜だけの恋を捧げて、朝になれば忘...
  • 26-969
    シャチ×シロナガスクジラ 「きみはほんとうにすごいね」 そう言うと、彼はぎらぎら光る眼で僕を睨みつけた。 「てめえが弱っちいだけだろ、でけえナリして」 今際の際ですらいつもと変わりはしない口調。 「俺らはなんでも食うし、なんでも殺す。知ってただろ、てめえだって」 そうだね、と口に出そうとして掠れた息だけが漏れた。 血という、僕にはあまりなじみのない赤色がそのあたりに広がっている。 この色が赤だということは、彼が教えてくれた。 深い青の中で、僕はぬぼーっとその無駄に大きな体を漂わせつづけ、彼はいつでも悠然とそして俊敏にその黒い姿態を動かしていた。 その姿はまさしく僕の理想で、僕の欲しいもので、暗い世界で唯一の光だ。 いつまでも。 敵だと知っていても、その光に触れていたかった。 「お前の敵は、いつでも俺だけだ」 「うん」 「お前が死ぬのは、お前が弱くて、俺が...
  • 5-959-1
    シーラカンス 目の前で喋るアイツの顔をじっと見ていた。 よく動く口やなぁ。ノート見ながら、熱く語ってるなぁ。 そう思って酒を飲んでいたら、いつのまにか顔をものすごく近づけていた。 アイツと、目があう。「…何?」とアイツが聞く。 しばらくの沈黙。 アイツの目に、少し怯えがはいって、ふっと目をそらした。 俺は、その瞬間、アイツの唇にキスをした。 やわらかい感触。さっきまで喋っていたせいか、少し濡れている。 唇を離して、アイツの顔を観察した。アイツは、眉間にしわをよせて、俺を見ている。 「…どういうんや」とアイツがかすれた声で言った。 さっきまで、お前が熱心に喋っていた、テーブルの上のノートの絵が、視界に入った。 ヒレがたくさんついた魚。シーラカンスって言うてた。 シーラカンスを飼育したい。でも、捕獲したら、3日ぐらいで死んでしまうから 無理なんだって。...
  • 4-959-1
    やっぱすきやねん 「やっぱすきやねん」 一体、今度は何ですか。 いつものようにフローリングに正座し、無表情で年末年始お約束のお笑い特番を見ていた奴が急にこちらを向き、 人の両足首をクソ冷たい両手でガッシリ掴みながら、嬉々として繰り返す。 「やっぱすきやねん」 「何ソレ」 ちょっと動揺してしまったのを隠すために、奴が掴んだままの足を閉じる。 と、奴はバランスを崩したらしく俺の膝に額を強打した。やっぱアホだ、こいつ。 ―――って、なんかこっちもじんじんしてきたじゃねーか!アホ!! 2人で悶絶していると、付けっ放しのテレビからちょうどいいタイミングでお笑い芸人が「いってーー!」と叫んでいた。 芸人たちの気持ちがわかるのが、なんだか妙に悔しい… なんでこいつはクスリとも笑わないクセにいつもお笑い番組を見てるんだ。 今見てたのが『...
  • 24-959-1
    踏み台になる 「はい原くんどうぞ」 横矢が壁に背をついて、バレーのレシーブのように腕を構えた。手は足を乗せるため上に向けられている。 「…横矢お前、マジちゃんとついてこいよ?」 「わかったから原くん、早くのぼって」 「一人で帰んなよ!?」 「わかったってばあ」 いつからだろう。横矢がこんなふうになったのは。 自然と踏み台になり、高いものには必ず手を伸ばす、悲しいほど当たり前になってしまったこの身長差。 見下ろされる居心地の悪さ。 こいつに威張り散らす俺をどこまでも滑稽なものに変えてしまう目線の差。 思春期と呼ばれる俺には吐き気がして当然の違和感だった。 深夜の学校に忍び込もう、そう言ったのは俺だった。 下らない度胸試しの一つで、先週バスケ部の森崎がやったばかりだった。校庭に忍び込み白線で書いた「森崎最強」。 もちろん森崎は翌日には校長教頭揃い踏...
  • 19-959-1
    そら涙 正座させてからおよそ十五分。両手で顔を覆い、ぐしぐし鼻を啜るのを目の前にしても、胡坐をかい た俺は沈黙を守っていた。まだ、まだだ。なぜなら、いまの、こいつの、これは、 瞬間、「うぅぅ」と呻いて肩を窄め、身体を前に倒した。丸くなった背が震えるのを見て、ぎょっと した。あ、やばい。まずい、これは、 「おい、亮。あのな、」 思わず「もういい」などと口走りそうになって、慌てて思い留まる。危ない。またうっかり許しちま うところだった。こいつのいつもの手じゃないか。なんでこう同じ手に引っかかるんだ俺は。こいつ は、風呂上りに着替え一式(パンツ含む)を隠して、タオル一丁で部屋をうろうろする俺をニヤニヤ 眺めてたんだぞ。上下とも見つけても、肝心のパンツがこいつの尻の下にあったもんだから、上は着 てるのに下は相変わらずタオルだけという間抜けな格好の俺を笑いやがったの...
  • 12.5-959
    さみしんぼ 中学高校、大学まで同じだったあいつと俺は、いつも一緒だった。 休みにどっか行くのも、授業サボるのも、飯食うのも登下校も。何するにも二人で連れ立って動き回ってた。 他の奴らが彼女作ってやることやってる間も、俺たちは相変わらず遊んだり、喋ったり、家でだらだら過ごしたりしてた。 いつでも、当たり前のようにあいつの傍にいた。 一緒にいる時間の多さ、というより密度か。それがすごく高くて、家族よりも近い存在のように感じてた。 誰よりも、あいつといるのが一番楽しくて、気が楽で、自然なことだった。 きっとあいつもそうだったんだろう。 だから、いわゆる恋人という仲になったことも、自然な流れだった。 ずっと一緒だと、そう思ってた。 が。 今、あいつは海外出張中。 もう3ヵ月も会ってない。これだけ長く離れてるのは初めてだった。 電話やメールはしてる。毎日毎日ウ...
  • 18-959-1
    殺し愛 「毎回思うんですけど」 男の腕に包帯を巻きながら、少年は嘆息した。 「本当、楽しそうですよね。あの人とやりあってるとき」 今しがた、男の切り裂かれた腕を縫合し終えたところだ。 まともな医学など学んでもいない自分の治療技術がここまで向上したのも、 目を逸らしたくなるような傷を前にして殆ど動揺しなくなったのも、半分以上この男が原因だと少年は思っている。 「上からの指令、ちゃんと覚えてますよね?」 「わーってるよ。……あーあ、邪魔が入らなけりゃもっと楽しめたんだがなぁ」 「楽しんでないで、殺してください」 「だからわかってるって。うるせえぞ」 ぞんざいな口調とは裏腹に、男はずっと上機嫌だった。利き腕に深い傷を負ったにも関わらず、 鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気だ。きっと二ヶ月ぶりの『最中』を思い出しているのだろう。 ニヤついている男に、少年はわざと聞こえる...
  • 26-929-1
    憎いはずなのに 俺が殺したかったアイツが切られて、嵐の海に落ちていく。 それを見た瞬間、俺は反射的に荒れた海に飛び込んでいた。 何をやってるんだ……。 嵐の海で意識のない人間を抱えて、岸まで泳げるのか? 第一憎んでいた相手を助けようとするなんて、自分で自分が分からない。 それでも動いちまった以上はやるしかなく、必死で俺は岩場まで泳ぎついた。 息も整わぬまま気を失った奴を引きずり岩場を上へ上へと歩き、波の届かない岩の隙間を見つけて中に入りやっと一息つく。 薄暗い中で奴の上半身から濡れた服を剥ぎ取り、絞ってそれを包帯代わりに腹に巻き付け止血を試みた。 思っていたより傷口は浅く、これで何とかなるかもしれない。 初夏だが濡れて体温を奪われ身震いした俺は、仕方なく意識のない奴を抱きしめる。 いつも余裕の冷笑を浮かべている顔は血の気を失い青ざめていたが、整っていて人間離れし...
  • 26-919-1
    ブルーカラー×ホワイトカラー 蒼、蒼、藍色瑠璃の色。 濃淡様々な青色が、空と海とを描き出す。 一見冷たい印象を抱かせるその色が、暖かみを得るその一瞬が、他の何より好きだった。 「青」 一息ついた背中に声をかける。キャンバスに向かっていた青い瞳がこちらを移し、明らかな喜色を孕んでみせた。 「白」 その笑みに微笑み返し、俺はキャンバスの前まで歩みよる。 「見事なものだな」 巨大なキャンバスを目の前にして、俺は言った。すると青は少し照れたようにしながら、あの人に捧げるものだもの。と胸を張った。 1ヶ月後の今日。俺たち色は、全てを作りだして下さった方に会う。それは一年に一度のお祭りで、その時俺たち色は、全員で協力して描いた一枚の絵を、あの方に捧げる。中心となる絵は毎年変わるが、今年は青が、その大役に就いていた。 「見事なものだな」 空と海をとっくりと眺め、もう一度、俺...
  • 26-979-1
    ツンケンしてて恋愛にも淡白そうなのに本当はどうしても手を繋ぎたい年下攻め とうに日は落ちて、息が白く煙る冬の夜。 4つ下の幼馴染(男)が黙々と隣を歩いている。 俺は大学帰り、こいつは部活帰り途中の駅でばったりと遭遇した。 別に隣同士なうえ付き合いは長いから、一緒に帰ることに違和感はない。 ただ、この沈黙がひどく痛々しいのは、何の因果かこいつと付き合うことになったからだ。 きっかけは、俺の家でゲームで対戦してた時のことだ。 どうだー高校生活はーとか彼女はできたかーとか、そんな話題をうざがられつつふっていた。 「女とか興味ねーよ。あんたや友達と遊ぶ方がまだ楽しいし」 「そうなの? 俺はおまえくらいのときは結構楽しんでたけどね。  授業抜け出してさ、こっそり屋上とかで……」 言ってから自分の失言に気付いた。 俺はこいつが通ってる学校のOB、そこはれっきとした...
  • 26-949-1
    セクサロイドとインキュバス 何かなァ、と彼はベッドにうつ伏せて呟いた。横たわった僕のすぐ横に、端麗な横顔が来る。 色の薄い髪の先が滑り落ちて、尖り気味の耳が露わになる。剥き出しの背には蝙蝠のそれに良く似た翼がぱたついて、いかにも退屈そうだった。 「オマエとしても、あんまりキモチヨくないんだよなァ」 そう言われると、僕としてはどうすればいいか分からなくなる。 黙り込む僕の方に顔を向けて、彼は悪戯っぽく笑った。僕が惑うのを楽しむように。 「オマエ夢見ないだろ。オレとしてはソッチがフィールドだからさ? 生身ってナンか変なんだよ」 「……そうでしたか」 「ま、しょげんなよ。へばンない相手は久しぶりだったしさァ」 伸ばされた手に頭をぐしゃぐしゃされながら、伝えられた不満を解析して、どうにかできることがないか考えてみる。 暫しの沈黙の後、やがて一つ、いいことを思いついた。 ...
  • 26-949-2
    セクサロイドとインキュバス 彼は寂しそうに見えた。少なくとも、そのような外的特徴を備えていた。 伏せた目。物憂げな眉。血色の悪い頬。丸めた背。 目があったので話しかけると、しばらくして「ああ」と得心の声をあげた。 よくある反応だ。そして、その次の反応は大抵、私に用がある場合とない場合で大きく異なるのだが、 彼の場合は前者であったらしかった。 私は需要があったものと判断し、彼と共にしかるべき場所に赴いたのだった。 「ばっか、ばっか、馬鹿じゃねーの!? なんで俺がやられる方だと思うのさ、それも男とかねーし!」 挿入の直前で拒否され、私はその機能を一時停止した。 「誘ったのはお前の方だろ? 俺のセックスに興味があるって言ったじゃないか」 「そのしゃべり方もやめろ!気色悪い」 「……そういうご要望でしたので。男らしくやってみろ、と最初に」 「できるのか、って言...
  • 26-059
    最期を看取る約束 「俺、アメリカ行くから」 「へぇ。がんばれー」 「何言ってんだお前も行くんだよ」 なにそれどういうこと。疑問符を飛ばしているとニヤリと笑う顔。 「俺の最期、看取ってくれるって約束しただろ」 じゃあ一緒にいないとな、なんてどんな理論だ。 いやいやあんな小さい頃の約束で俺の進路決められるの?! てか英語話せないし!ちょっと人の話聞けって。 「あー…、やばい死ぬかも」 強引にあいつを連れてきたくせに、路地裏に転がっている状況。 事故はしょうがない。予測なんて出来ない。 せめて最期に声だけでも聞きたいと、携帯を鳴らす。 『何言ってんのお前バカなの』 約束忘れてもいいわ、と告げると電話越しに笑い声が返ってきた。 あれここ泣く場面じゃね?俺死にかけてんのに笑われるっておかしくね? 『俺が看取れないとこで死ぬほど、お前って根性無しだっけ』 ...
  • 26-599
    夕暮れ時の二人 あの山がもっとひくければ、くらくならないのに。 泣きそうな気持ちで思ったことを覚えている。 家までどのくらいの距離があるのかもよくわからない。 怒っているであろう親も、とうに始まっているかもしれない夕食のことも、考えないように早足で歩いた。 本当は立ち止まってしまいたい。うずくまって泣いてしまいたい。 靴を無くした足の裏が痛い。泥に濡れたズボンが気持ち悪い。 でも、裕真を連れて帰らなきゃ。自分よりもっと泣き虫な、裕真をうちまで連れて行かなきゃ。 山の端にかかる夕陽は暗くて赤くて、薄暗くなった道には誰もいない。 「……裕真」 手をつなぐのは初めてのような気がした。汚れてかさついた手をとると、裕真がおずおずと握り返す。 顔を見たら崩れてしまうから、裕真を黙って引っ張った。 もう走らない。最後の陽のぬくもりが消えるから、せめて裕真の手を離さないで歩く...
  • 26-259
    人外×人 それと出会ったのは、三日前。 子供が山座りしている位の大きさの、 何かが詰まった麻袋に、でかでかと「粗大ゴミ」と張り紙があった。 酔っていた俺は、何を思ったのかそれを抱えて、アパートに戻った。 正直、その日の飲み会が、思ったより面白くなく、鬱屈していたんだと思う。 でなければ、こんな怪しいものは拾わない。 それに、抱きしめて眠るなんてアホなこともしない。 ただ、袋越しでも、それの温かさとか程よい柔らかさが伝わってくるから、魔がさしたに違いない。 とはいえ、その何とも言えない感触から、どうやら中身は人ではないと結論はでた。 時折、心音のようなものが聞こえてくるのは気になるが、聞いている内に寝入ってしまうため、まだその正体に迫れていなかった。 そして今日、俺はようやく麻袋の中身を見た。 するとそこには、肌も髪も白い子供が眠っていた。 ...
  • 26-159
    甘えていいよ 頑張ってるところを見せたくない。心配させたくない。 人前に立つ仕事をしている彼は、俺と食事をするたびに、いつものふわふわとした口調を一転させてそういう。 ファンの子たちの前では『理想のケイくん』でいたいんだそうだ。 ちら、とすっかり眠りこけているケイを見る。 ここのところ激務だったらしく、前見たときよりも明らかに痩せていた。 元々かなり細いのに、このままだったら消えてなくなってしまうんじゃないか、って不安になるほどに。 人差し指で、茶色くてさらさらの前髪を弾く。長い睫毛が微かに震えて、どきっとした。 起こしてしまったかな、と思ったけれどそれは杞憂だったようで、ほっと胸を撫で下ろす。 もちろん顔だけで彼を好きになったわけじゃない。 可愛らしいのに男前なところがあったりとか、ファン想いなところとか、優しいところとか。 あげていったらキリがな...
  • 26-559
    RPGの中ボス つまりは中間管理職なのか。いや、もしかしたらそれよりも下の立ち位置か。 「可哀想だよなあ……」 「はあ?」 コントローラーを握りながら思わず呟いた俺を、先輩が怪訝な顔で見返した。片手には缶ビール、片手には煙草。週末の午後11時。 「いやコイツ、可哀想じゃないすか。魔王にこき使われて、勇者に倒されるためだけに出てくるとか」 「別に可哀想じゃねえじゃん。悪いことした悪い奴なんだから倒すだろ普通に」 「えーだって、魔王に命令されたら逆らえないじゃないすか。怖いし」 「嫌だったら逆らえばいいんだって。嫌じゃないからやってたんだろ」 「えー……」 なおも言い募ろうとする俺を無視して、先輩は美味そうにビールを煽っている。風呂上りの髪から雫が垂れた。 「てかさ、まだその中ボスとやってんの。俺が風呂入る前からずっと動いてねえじゃん」 「可哀想で倒せないんすよ...
  • 26-359
    遊び人に遊んでもらえない あいつは男なら誰彼構わず寝た。 決して特定の相手を作らず自由気ままに遊んでる。 俺はそんなあいつを気になって仕方がなかった。 あいつとは部活が一緒でよく話すがタイプがまるで違った。 明るく誰とでも仲良く話すあいつに対し俺は勉強だけが取り柄のつまらない男だ。 あいつはいつも俺をからかった。 「あんた経験ないだろ」とか笑いながら言われる。 いつもは適当に流すが今日は虫の居所がわるかった。 なんせあいつの首もとには赤いしるしが着いていたから。 「経験はある」俺がそう言うと一瞬躊躇いながら「うそつけ」と笑った。 「試してみるか?」 「は?」 「だから俺と寝てみれば嘘かどうかわかるだろ?」 「…」 「誰でもいいみたいだし、俺でもいいだろ」 「…だ」 「あ?」 「あんたとは死んでもやだ」 「…俺ってそんな嫌われてたのか...
  • 26-859
    暑くても離れたくない 男と男の荒い息づかいが部屋にこもる 「はあ、はあ…んっいくっ」 「んあっ」 果ててすぐベットに倒れ込み俺達は大の字になった 今日三回目だ 夜中帰ってして朝起きてして真っ昼間から… 「もう中ぐちょぐちょだよ」 「…もう一回する?」 そう提案すると智は流石に無理と屈託のない笑顔で答えた 智は腕を回して手を繋いでくる 「暑いね、シャワー浴びる?」 暑い… 湿っぽい部屋で運動したんだ、しょうがない それでも、ベタついた手を繋いでいても、心地よかった 俺が何も答えずにいるとじゃ、お先にと真っ裸で浴室に消えて 腰にタオルを巻いて戻ってきた 「久々だったから濃かったね、またいつでも呼んでね」 ベットの脇に無造作に脱ぎ捨てられた衣服を拾っている 「離れたくない…」 智の手をぐいっと引いてベッ...
  • 26-859-1
    暑くても離れたくない 続編というかおまけ ============================== 「ごめんっ…俺べとべとだった」 身体を離そうとするとぐいっと押し戻された 「俺も涙でべとべとだから気にしないで…俺も離れたくないし」 普段の余裕のある智ではなくて、 「やっぱもういっ「だめ」 「キスだけ…」 いつもとは違うぎこちないキスは心地よかった 狸×狐
  • 26-559-1
    RPGの中ボス いま俺の目の前に居る人間が噂の勇者だってのには一発で気が付いた。 だって他の人間とは存在感みたいなのが段違いだったし そもそも並大抵の人間や魔物じゃここまで絶対に来れっこないし。 ただ思ったより小さかったのと、誰とも組まずに一人で来たらしい事には少し驚いた。 そのちっちゃい勇者は不意打ちで攻撃して来ることもなく 話しかけてくる様子も見せず、ただ黙って俺の前に立っている。 このまま見つめ合ってても仕方ないから俺は今適当に作った口上を並べた。 「俺が地下四階の守護者、種族はレッドデビル。  名前は言わない、多分人間には聞き取れないからさ。」 ちっちゃい勇者はやっぱり何も言わずに頷いた、そして俺の後ろの扉を指差す。 「あー、そこ入りたいの? なら俺殺さないと入れないけどヤる?」 さっきちっちゃい勇者が指差した扉は魔王様の部屋に繋がる通路に繋が...
  • 26-759-1
    書生同士  茫として、天井の染みを見上げていた。熱に浮かされた頭が重い。  枕元に置かれた湯冷ましは、先に空にしてしまった。  喉が渇いた、と思うが、立って家人に求める気力も無かった。申し訳程度の手伝いで居候している身であれば、尚更世話になることの済まなさもある。  だから廊下をきしきしと歩む音を聞き、襖が静かに開けられて、その向こうに同じ書生の男を見て取った時、照一は内心安堵した。 「テルさん、御加減は如何です」  問われた声に返事を返すのも億劫で、うん、とだけ喉の奥で唸る。柔和な顔を笑ますのは、隣室に住まいを間借りし、同じ大學に籍を置く斎藤だった。  同じ書生と云えど、法律を学ぶ斎藤と、生物学に傾倒した照一では、まるで畑が違う。  また地方の農家の出である照一に対して、斎藤は上京してきた身とはいえ、中々の名家の出と聞く。  論じることの出来る事物など...
  • 26-599-1
    夕暮れ時の二人 「夕暮れ時って切なくなるよな」 「因果関係がわからない。切なくなる、の主語はマスターか?」 「そうだよ。んー…なんかこう、終わっていくなーって感じ」 「終わるの主語は?」 「今日と言う日が」 「日付が変わるまであと5時間30分程度あるが、誤差の範囲内と考えていいのか?」 「いやそうじゃなくてさ…うん、じゃあ訂正しよう。太陽とサヨナラするから寂しい」 「別れが寂しいから、マスターは夕暮れを見て切なくなるのか?」 「そうそう。誰とだって、お別れするのは寂しいだろ?」 「無生物を生物のように扱う表現を用いるのはマスターのパターンとして既に認識している。  しかし、明日の日の出は午前4時42分だ。同等の表現をすれば、約10時間10分後に  太陽とは再会できる。よって、そこまで寂しいと感じる必要は無いのではないだろうか。  現に、マスターは同僚との別れ...
  • 6-979
    身代わり 渡り廊下を抜け、目当ての部屋に入る手前でふと足が止まった。 寂しい家だ。何処も清潔で徒広く、水底のように静まり返っている。 それも仕方の無い話かも知れない。此処は、死者を迎える為の家なのだから。 胸の内でそう独りごちて障子を開ける。 「…今日は、随分と遅かったじゃないか」 入口に背を向けたまま、屋敷の主は独り言のように呟いた。 いつもと何の変りも無い逢瀬だった。床に引き倒し、うつ伏せに組み敷いて抱いた。 畳を擦る衣擦れの音に、呻くような息遣いが切れ切れに混じる。 強く押付けた背が目の前で二度三度と震えた。泣いているのだろうか、ふとそんな事を思う。 然し顔を見る事はしない。名を呼ぶ事も、言葉を掛ける事さえも。そういう約束だった。 それが何を意味するのかは百も承知だ。 彼は二年も前に死んだ男の事を未だ忘れられずに居るのだ。こんな関係は尋常ではない...
  • 6-989
    声だけで 声だけで。 こんなにも心締め付けられる。 声だけ、なのに。 こんなにも俺はお前に囚われて。 声だけで、 体と心は暴走しだす。 なぁ、早く帰って来いよ。 声だけで、 声だけで我慢なんて出来るはず無いだろ。
  • 6-949
    自覚なしストーカー 「あいつまたコンビニ弁当」 心配だ 「おいコンビニ弁当食ってるのか」 すると驚く男 「何で知ってる」 「そ、それは・・・」 ダッシュで逃げる、俺は怪しいと思われた? 怪しくないからむかつく 家に先回り。すると男が来る 「俺は怪しくない」 「何で家知ってるの」 えっ・・・そういえばなんでだ・・・? 俺様受の告白
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