*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「27-519」で検索した結果

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  • 27-519
    一人称「僕」×「私」 大丈夫です。安心して下さい。何があろうと僕はあなたの側から離れませんから。 男は口もとを綻ばせた。私の右手を両手で握り、親指のはらで慈しむようにそっと撫でる。 このまま何も言わなければ、足を折って恭しく手の甲にキスもしかねない雰囲気だった。慌てた私はその手を振り払い距離をとって男を睨んだ。 「睨まないで下さい。あなたを困らせるつもりはないんです」 確かに、この男に困らされたことはなかった。それどころか私がこの男を困らせていたくらいだ。 「おい、お前、俺の側にいろ。命令しやすいからな」 男とは高校からの付き合いだった。友人としてではない。この男はいじめの対象だった。 背だけは昔から高かったが、骨と皮しかない軟弱な身体をしていて、おまけに話すことも苦手だった男は、あの頃やんちゃだった私にとって恰好の餌食だった。 いじるのは楽しかったし、男は...
  • 7-519
    駄菓子屋 久々に滞在した田舎は、ひどく懐かしく、そしてひどく空虚だった。 こんな季節外れに帰省したぼくが悪いのだけど、めぼしい幼なじみたちはほとんど不在で、 ぼくは誰と会うでもなく、ただ朝晩母の手料理を味わって過ごした。 それはこの町を出ていく人間がいかに多いか表している。 ぼくもその例に漏れない。 今の学校を卒業したら、そのまま東京に居着くだろう。 だってこんな空虚な町に。 ただ懐かしいだけの、今は空っぽな町に、どうして帰りたいだろうか…。 それは都会の密度に慣れた、ぼくの傲慢さかもしれないが、そう思わずにはいられなかった。 車の通らない路地をとろとろと散歩するぼくを、下校途中の小学生たちが駆けっこしながら追い越して行く。 ねえ君達、知ってるかい。あそこのシャッターが降りている店、あれは昔駄菓子屋だった。 ぼくは小銭を握りしめて、近所...
  • 17-519
    腹痛 しまった、腹がいたい…… きっと朝飲んだフルーツ牛乳がいけなかったんだな。 それとも昨日の夜飲みすぎた酒の残滓が今頃、腹の中で暴れだしたんだろうか…。 そんなことを考える間にも、額に冷や汗が玉になって浮かび上がる。 汗はつぅ、と眉頭を越え、メガネの弦を伝ってポタリと滴り落ちた。 落下する雫を目で追うと、それは臙脂のネクタイに着地し、生地を黒ずんだ色に染めた。 伏し目になってそれを睨みつけた俺は、傍目には硬直しているように見えるだろう。 だが、内なる俺は悶絶している。それはもう、もんどりうって転がりまくっている。 電車は中途半端に混んでいる。 座れないけど、不審な動きをすれば注目されてしまう程度には空いている。 いっそ満員だった方が気が紛れただろうに……。 「――大丈夫?」 「……」 「具合悪りぃの?」 不意に横からかけられた柔ら...
  • 7-519-1
    駄菓子屋 アイス食いたい。 部活帰りに寄り道して久々に小学校前の駄菓子屋に足を向けたら、 店先を絵に描いたような外人の兄さんが行ったり来たりしていた。 「あのさ、…日本語オーケー?」 「あ、はい。大丈夫です」 金髪碧眼、貴公子みたいなその兄さんは、予想外に流暢な発音で俺に答えた。 「ここのばあちゃん耳遠いから、この呼び鈴押さないと聞こえないんだ。」 俺らの代から学校前と言えば万引き商店、とかも言われていた。 まあ実際は、近頃のガキは駄菓子屋で万引きするほど貧しくもかわいらしくも ないし、最近は小学校の警備員もいるんで実害はそれほどでもないんだそうだが。 呼び鈴で出て来たばあちゃんは相変わらず無愛想で無口で小さかった。 俺はばあちゃんにアイスと言って小銭を渡し、クーラーの中をまさぐった。 「あとさ、ばあちゃん、そこの外人さんの兄さんがなんか用みたい...
  • 2-519
    ポジ×ネガ 「リュクサンブールかな?」 色彩の反転した異国の街並みを、矯めつ眇めつ眺める。 いつもの事ながら奇妙だとポジは思う。 同じ景色を見ていても、うつるものは真逆なのだ。 けれど、こうして彼を頼りに、自分の姿を容易く思い描くことができる。 「君は写真であって写真じゃない。写実とは違う、不思議な魅力がある。」 何の前振りもなくポジは言った。 ポジは良くも悪くもストレートな男だ。忌憚がない。 「自分に無いものだから惹かれるのかも知れないな、君に。」 「…俺はあんたが大嫌いだ。あんたの色は一々目に痛い。」 ネガはとっさにそう返し、ポジは随分嫌われちゃったなぁとぼやいた。 しかし声色には僅かに笑いが滲んでいる。 ネガはそれを黙って聞いていた。 率直なポジとは対照的に天邪鬼な性分だから、 口を開けば思いと裏腹な事を言ってし...
  • 1-519
    ぶっかけ スポーツマン系の新入社員、元気くんがいる。さわやか好青年で誰からも好かれるタイプ。 メガネの上司がいる。いつも冷静で、むだ口はたたかないタイプ。 でも、たまに笑うと目元にしわがよってかわいい感じになる。 それが元気くんにはたまらないわけだな。 元気くんとメガネくんはできていて、残業後の誰もいないオフィスで不埒な所業に及んだりする。 メガネくんは見た目のストイックさからは想像も付かないくらい、エッチには積極的。 元気君のうまい棒を自分から咥えて、あえぐ元気君の姿を上目遣いで見て楽しんだり。 元気君はすぐにガマンできなくなって、「もう離して……俺もう……ッ」とか訴えるんだけど メガネくんは面白そうに眉を上げるだけでしゃぶりついたまま離してくれない。 ムリヤリ引き剥がそうとした元気君、間に合わずに発射。メガネくんの顔に飛び散る白濁。 「すすす、すみません!」...
  • 9-519
    福袋 風邪で寝正月になったあの人に、福袋を買った。 早く渡して、喜んでもらって元気になってほしくて、小走りで道を急いだ。 それがいけなかったんだ。 道路脇の学校のグラウンドを囲うフェンスが破れてて、太い針金が歩道側に伸びているのに気付かなかった。 ちょうど雨が降っていて、足元は水溜り。 急いで歩く腕が振り回す福袋は、当然紙袋。しかも雨の水気を含んで若干ヨレヨレになっていた。 ビリっていって。 バサバサっていって。 ビチャビチャっていって。 「うわっ!? 」 って悲鳴を上げた時には、あの人の為に買った福袋は破れて大口を開け、 温かそうなマフラーやセーターや、中身の判らなかった商品が水溜りの水を吸って地面に広がっていた。 お天道様と同様に、両目から雨を降らせながらお見舞いに来た僕を、 あの人はまだちょっと熱い手の平でふわりと僕の頬を包...
  • 3-519
    魚屋×パン屋 同じ商店街にありながら魚屋は昔ながらの江戸っ子、パン屋は今風な新参者。 そこの息子たちはまあ801的必然から恋に落ちるわけだが当然ロミオとジュリエット。 魚屋がパン屋に行くとパパに「親子まとめて窯の中に放り込みますよ!」と怒鳴られる。 逆にパン屋が魚屋に行くと親父に「てめぇら親子の尻にマグロ突っ込むぞ!」と怒鳴られる。 (ここで魚屋親父×パン屋パパのフラグも立つので熟年萌えの人は分岐お勧め) 学校や放課後も短い時間愛し合う二人だけど家を捨てることは出来ない。 「なあ、高校卒業したら家出ねーか?」 「できもしない事言うなよ、馬鹿。」 「……ごめん。じゃあさ、じゃあさ!結婚しよーぜ!」 「もっとできないだろ。」 「(´・ω・`) 」 二人はまだこの世にフィッシュバーガーがある事を知らない…。 そんな田舎の出来事。 バ...
  • 6-519
    クルデレ×ツンデレ 部活が長引いて帰る頃にはずいぶん暗くなっていた。 帰り道、俺はいつもどおりあいつを乗せて川沿いの土手を自転車で走った。 風が涼しいせいか、いつもより背中の温かさが嬉しくって、つい 「俺、この学校に来て、お前と会えてほんとによかったよ。」 と、思った事をそのまま口にしてしまった。…ちょっと唐突だったかな、 とか思っていたら、突然転げ落ちるようにあいつが自転車から飛び降りた。 「な…、大丈夫か?弥生。」 「……っっ、それは俺の台詞だっ!!何言ってんだお前、馬鹿じゃねぇの!?」 俺は自転車を止めて、地面に転んでるあいつに手を差し伸べた。 「いや、だって本当にそう思ったから。」 「思うなそんな事っ!!俺は全っ然、一回もそんなこと思った事ねぇ!!」 あいつの白い肌が、暗がりでもわかるくらい真っ赤になっている。 「…そうなのか。」 俺がそう言うと...
  • 8-519
    失望させないで 「陛下? もう会議が始まる時間ですが」 コンコンと扉をノックして、彼の私室へと足を踏み入れた。 室内へと目をやれば、視線の先にいる男は、未だ寝台に横になったまま面倒くさそうに頭を掻いている。 殆ど裸同然の格好でふわぁと大欠伸をする彼に、私は思わず語気を荒げて詰め寄った。 「……まだ、御支度なさっていなかったんですか!?」 「ああ」 相手はそう生返事をして、にやりと愉しそうに口の端を歪める。 「こいつが、ついさっきまで放してくれなくてな」 言いながら、彼は自分の横で眠っている少年の髪を、骨ばった指先で乱暴に梳いた。 カールした毛先に指先が絡まるのを力任せに引き抜くと、その指先をあろうことかそのまま少年の胸元へと持っていく。 こちょこちょとくすぐられる指の動きに反応するかのように、少年の吐息が荒く、けれど甘いものへと変わった。 思わず目を逸らした私...
  • 4-519
    星の王子さま 十一月十七日(木) 晴 あいつは不思議で、変わり者だった。もうそれくらいのことしか思い出せない。 子どものくせにインテリを気取っていた僕も、傍から見れば十分に変わり者に 違いなかったのだろうが、しかしながらその僕から見ても、いや、その僕から 見れば余計に、彼は変わっていて不思議だった。 思い出すだに懐かしい。 損得でしかものごとを捉えられない、嫌な大人のミニチュアだった僕を、あいつは 笑いながら粉々に砕いていった。 嗚呼、今、彼はどうしているのだろう。 元気でいるのだろうか。元気でいてほしい。 そして出来ることなら、彼に今の僕を見せてやりたい。 物語など古文・漢文・英文しかまともに目も通さない学生だった僕が、今こうして この生業で大成している、この姿を。 すべて君のおかげだ。ありがとう。 今日の午後、図書館で久々に...
  • 5-519
    ツンデリズム 最近、ハルのやつはツンデレツンデレと煩い。 そんなに好きなら、僕がそのツンデレとやらをやれば喜んでもらえるだろうか。 まずは調査。インターネットなどによると、どうやらツンデレとは性格の一種らしい。 『人目のあるところではツンツン、二人きりだとデレデレ、略してツンデレ』だそうだ。 つまり、人前ではつれなくして、誰もいない時にベタベタすればいいようだ。 よし、今日にでも早速、と考えたところではたと思い出した。 今日は一日、家の中で二人だけで過ごす予定だった。ということは終始ベタベタすることになる。 これではいつもと変わらないじゃないか。 困り果てていると、ふと、ツンデレにはもうひとつのタイプがあるらしいことに気付いた。 『表面上はツンツン、内心はデレデレ、略してツンデレ』というのがそれだ。 一言で言えば、意地っ張り、のようなものか。 これなら...
  • 13-519
    両片想い 俺は知ってますよ。あんたがずっとあの人の事を好きだってこと。 ずっと横にいて、ずっと一緒の時間を過ごして、 その間ずっと気持ちを隠し続けて来たってこと。 あんたがあの人の事を好きって言うなら、俺はそれでかまいません。 でも俺が好きでいる事も許して下さい。 オレは知ってる。お前があいつの事を好きだってこと。 オレがあいつを紹介した時、お前は一瞬で心を奪われてただろう。 その後も、あいつと一緒にいる時間が長いオレを辛そうな目で見てきて、 それで気づかない方がバカだ。 お前の気持ちを分かってるのに、無視してあいつとお前の間に入る。 こんなイヤな先輩を持って不幸だったな。 こんな先輩に好かれて…かわいそうな奴だなお前は。 「これ、俺の彼女!なーかわいいだろー」 「はづきです、初めまして~」 親友の中条が紹介した彼女とやらは、女子高生...
  • 27-509
    膝枕をする 「朝から膝枕について考えている」 「暇なんですか。暇なら洗濯物たたむの手伝ってくださいよ」 「というのも『膝枕は男のロマンだ』と耳にしたのだ。ロマンと聞いては捨て置けん」 「聞いてないし。まあいいですけど。……で、膝枕がどうしたんですか」 「それが不可解なのだ。まず私は、第一の命題として、枕たりえる膝の高さについて考えたのだが」 「ああ、それで今朝メジャー持ってうろうろしてたんだ」 「床に座ったときに膝の位置というのは、案外と高さがある。正座すると更に高くなる。  椅子に座った場合は、首の長さがいくらあっても足りないほどだ。あの高さを平気で枕にできるのは猫くらいだな」 「猫は膝の上に乗るの好きですからね」 「しかし残念ながら私は猫ではない。ついでにキリンでもない」 「そうですね」 「そこで私は今回の考察の前提として椅子というものを除外した。世...
  • 27-579
    女装×筋肉  俺の恋人はとても綺麗で、とても嫉妬深い。  お仕置き、と称して手首をぐるぐる巻きに縛られた俺は恐る恐る目の前の恋人を見上げた。目が合った瞬間、グロスで光る唇を美しくしならせて微笑みかけられる。 ぞくり、恐怖と甘い痺れとに背筋が戦慄いた。  つつつ、としなやかな指が筋肉の隆起をなぞるように、露わになった肌を胸元から下腹まで辿っていく。たったそれだけのことに息が乱れた。 「すっごぉい筋肉ぅ」  瞬きをする度にパチパチと音が鳴りそうな睫毛に縁取られた切れ長の目、スッと通った鼻梁、誰もが見惚れるほどに整った顔立ちから、掠れ気味の裏声が洩れた。 反響するように甘ったるい声が頭の中で再生される。ついでに腕に当たるふくよかな胸の感触も思い出していた。 「って言われてうれしかった?随分頭の悪そうな女だったけど、ああいう女好きだもんね?」  オクターブ以上下がった声音に...
  • 27-569
    夢見る人 「起きろ!」  頭をぽこんと叩かれて俺は楽しい夢から引きずり戻された。  寝起きの目をしばたたいて見上げれば、仁王立ちの飯島が丸めた教科書を握りしめて俺を睨んでいる。  突っ伏していた机にはヨダレの小さな水たまりが出来ていた。「汚ねえなあ」という罵声を聞き流しながら袖で拭く。さてと。 「おはよ」 「おはよーじゃねえから。お前ずっと寝てたろ午後の授業中。ふざけてんの?」 「ふざけてはいないんだけどさ、夢見があんまりよかったから、つい」 「先生に当てられても起きねえし。怒るの通り越して諦められてたぞ」  顔に似合わず優等生な飯島は、まるでその先生の代理にでもなったかのようにぷりぷり怒っている。  もしかしたら授業中、後ろの席から居眠りをする俺をずーっと睨みながらイライラし続けていたのかと思えば、ちょっと嬉しい。 「そんなに見つめられたら照れるじゃん」 ...
  • 27-549
    羊の皮をかぶった狼×草食系ツンギレ 「……まっきーって好きな人とかいないんだっけ」 「今んとこな。あんまり興味ないし。誰だよまっきーって」 「そっか。あ、これ半分食べる? 甘いの好きだったよね」 「食う。いただきます」 「はい、あーん」 「な、ふっざけんなよてめー!」 「……ふざけただけなのに」 「だからふざけんなって言ってんだろうが」 「全くその通りだね。ごめんなさい」 「……」 「真木君って恋愛話も割と興味ないよね」 「なんだよ今日は。武藤はそういう話したいのか?」 「そういう話がしたいというか……安心したいというか」 「は?」 「やー、ほら、僕と一番仲いいのって真木君だからさ。彼女できたりしちゃうと、こうやって日々だらだらしたりできなくなるかな、と。それって寂しいし」 「お前の方ができそうなんじゃねえの。モテるじゃん」 「どうかなー」 「好...
  • 27-599
    顔も名前も知らないあの人 俺は小さな頃から祖父に懐いていた 一緒に本を読んだことや眼鏡を掛けたら若い頃の祖父に瓜二つだといわれて嬉しかったことを今でも覚えている 祖父が亡くなったのは先週のことだ 事故だった とはいってもそれなりに長く生きていたし突然のことに驚きはしたものの案外冷静に受け止められた 葬儀も終わり落ち着いて実家から帰った次の日 俺の簡素な1Kに大量の段ボールが送られてきた 「お父さんの部屋にたくさんあってさ~中ぜーんぶ本みたいだから、おまえ好きだろ?棚にあったのも詰めといたぞ!」 急に狭苦しくなった部屋でとりあえず一箱開けてみる 一番上の古古しい本に手を伸ばす 発行日を見ようと本を開くと一通の手紙が滑り落ちた 「僕は貴方を振ったけど今でも貴方を愛しています」 「お互い妻に先立たれた今貴方と共に余生を送りたい」 …これ...
  • 27-559
    水と油 「水と油」というものは決して一つになれないという悲しい運命の元に生まれた二人を的確に表す言葉だと思われる。 包容力のある水と飄々とした油でのcpなら、水→油の悲恋がいい。 水がどんなに大きな心で油を抱擁しようとしても油はするりとすり抜けてしまうのだ。 また、油は水の上に浮かぶことから身分違いの悲恋としても妄想が成り立つ。 底辺にいる水がどれ程手を伸ばそうとも、油は遙か高みに君臨する高嶺の花なのである。 そして「交じり合わない」を「互いの心が分からない」と捉えても美味しい。 どうしても相手の事が理解出来ない二人は対立することしか出来ない。 それでも「自分をいつか殺すならきっと奴なんだろうな…」とそれぞれ相手の事はある意味での「特別」として認めている。 それぞれが泥沼に嵌まって抜け出せない最後の最後まで喉元に刃を突き付け続けるしかない二人。 生まれ変わ...
  • 27-529
    躾と盲従 「ふむ、猛獣にはやはり躾が必要か」 何でもないことのように、俺の顎にするりと手を添えながら男は嗤った。 ジャラリと鳴る鎖、噎せ返る程のクスリと血と雄の入り混じった臭い。 親友も両親も、故郷でさえ―全てこの男に奪われた。 もう何もない。 俺には、何も。 「これはまた、随分と綺麗な狗をお飼いで」 「あぁ、いいだろう?この間村を一つ潰した時にね…少し厳しく躾け過ぎたか、私の言う事しか聞かなくなってしまったが」 「だが、美しいものじゃないか。女子供が人形を愛でるのも分かる」 男の手に握られた鎖、その先に繋がれた哀れな狗には盲目的に主人に付き従う術しか残っていなかった。 羊の皮をかぶった狼×草食系ツンギレ
  • 22-519
    ロボット×ヘタレ妖怪 昔々ある樹海に、一匹の弱虫なサトリが住んでいました。 本来サトリとは、他者の本音を漏らさず読みとる力を持ったとても強い妖なのですが、このサトリはどうにも臆病で脆弱な質でしたので、都で人間達の心の真ン中の、真っ黒くて汚い部分を嫌というほどに知ってしまった結果、 すっかり人間という存在に恐れ、そして不信の念を抱き、誰も訪れないような樹海の奥深くで、一匹ひっそりと暮らしていたのでした。 何十年、何百年と変わらない暮らしに変化が訪れたのは、一体何時頃でしょうか。度々、人間がサトリの住む樹海に迷い込むようになり始めました。 彼等は森をやたらに荒らすわけでもなく、ただ適当に居処を定めると、首吊り・服毒・断食とやり方は様々なれど、一様に己で己の命を摘み取るのでした。 それを不思議に思ったサトリが、偶然見つけた一人の死に損ないの心をぱっくりと覗きますと、どう...
  • 18-519
    ホームステイ 日本なんかに来るんじゃなかった。 誰だよ。日本人はみんなシャイだなんて言った奴。 めっちゃ話しかけてくるんですけど? ホームステイ先のオカーサン、めっちゃ話しかけて来るんですけど。日本語で。 意味わかんねーよ。日本語わかんねーよ。せめて「ハロー」くらい言えつーの。 誰だよ。日本人は真面目だなんて言ってた奴。 オトーサン「U・S・A!U・S・A!」って手拍子してるぞ。めっちゃ笑顔で。 外人ナメてんのか。テンション高すぎだろハゲ! 誰だよ。日本人はみんな親切だなんて言った奴。 この家の長男、ケンイチとかい言う奴、めっちゃ無愛想だぞ? 唯一英語が喋れるのに。喋れるのに!! お前いる意味ねーだろ。何の為に英語可のステイ先を選んだと思ってんだよ。 サムライか?サムライだから喋らねーのか? 何時代だっつーの。江戸か?お前だけ江戸時代なのか?...
  • 16-519
    ポケットティッシュ 「何、ポケットティッシュなんて買ってんだよ。駅前でいくらでも配ってる じゃないか」 「駅前で配ってるのは質が悪いんだよ。保湿ティッシュじゃなきゃダメなんだよ」 「貯金したいって言ってたのユタカじゃん。協力してくれなきゃ、金なんか溜まんないぞ」 「それはそうだけど、生活必需品ってのはあるんだよ」 「生活必需品はティッシュであって、保湿ティッシュじゃない」 「お前、今、全国2000万人の花粉症患者を敵に回したぞ!自分が花粉症じゃないから って、人を思いやる気持ちを忘れやがって!」 「大体、なんで急に貯金なんだよ」 「...そりゃ、誰にも頼れないゲイカップルの老後に必要なのは金だから...」 「へ?」 「何?お前、俺と老後を過ごすこと、考えてなかったの?」 「...考えてなかった...」 「......何だよ、真剣だったのは俺だけか?」 ...
  • 10-519
    勘違いしないで 「お前がね」 彼がこちらに視線を向けて、にこりと微笑む。 「俺のことを好きだって、見てればわかるんだ」 「…そんなとんでもない勘違いしないで下さい。アナタらしくもない」 僕は鼻で笑って、彼の視線を受け止める。 「勘違いぐらい好きにさせろよ。…なあ」 そんな僕に、彼は優しい。昔も今も。 「なんです」 「好きだよ、俺も」 その言葉に、僕はなにも言い返せない。言いたいことは なにひとつ言えないままだ。今も昔も。 そんな僕のために、アナタは勘違いしてくれる。優しい人。 (どうか、お願いですから) ずっと、勘違いしていてくださいね。 僕がアナタを好きだって。 フォーウ
  • 21-519
    言葉が通じない そう、五月三十日。今から二週間前の、五月三十日です。 僕は彼の待つ河川敷に出かけました。生憎の雨でした。 何をしにって?兄さんの手紙を彼に渡すためですよ。 可哀想に、彼は僕らの国の言葉が理解出来ないのです。 そしてとても恥ずかしがり屋なのです。 折角、碧色の綺麗で大きな瞳をしているというのに、彼は兄さんを見ようとしない。 だから兄さんが何を言っているのか、何を言おうとしているのかすら、分からないのです。 兄さんの方は彼の事を好いているというのに。 しかし手紙なら彼も平気な筈だと、僕は兄さんに手紙を書くことを薦めました。 僕が昔父に買ってもらった辞書を片手に、一晩かかって、兄さんは手紙を書き上げました。 先ほども言いましたが、その日は雨だったので 僕は兄さんから預かった手紙を大事に大事に懐に入れて、走りました。 前髪が雨に濡れて額に張り付...
  • 14-519
    体育会系×体育会系  校舎裏にある今は使われなくなった焼却炉の傍、俺はそこに隠れるようにしゃがみこんでいた。  明日は高校生活の最後になる試合だった。大会決勝戦そして初の優勝。長年目指していたものが目の前にあった。小学校からあいつとずっとバスケをやり続け、やっときたチャンス。  けれど俺はそこには出れない。  ゆっくり腕をあげる。やはり肩から上にはいかず鈍い痛みが広がった。必死にやった練習に寝る暇も惜しんだトレーニング。親や先生に「無理をするな」と注意されても無視したツケが、ついにきた。  止められるのを恐れて二カ月間肩の痛みを我慢し続けた。その結果がこれだ。情けなさすぎて涙も出ない。  体育館なんて行けるわけがない。練習なんて見ていたら自分が何をするかわからなかった。 「遠矢」  かけられた声に反射的に顔を上げる。上げなければ良かったと思うが遅かった。そこにはキャプ...
  • 25-519
    全部嘘だったんだ 祖国があって、組織があった。そこにはお互いを同志と呼ぶ人たちが出入りしていた。 彼らは熱心に話をしたり、武器の手入れをしたり、肖像画の男を崇めたりして過ごす。 暇なときには銃の扱い方や、理想の世界や、悪い政治家の話を僕に聞かせたりもした。 気まぐれに、煙草やキャンディをくれることもあった。 決まった時間に「先生」がやって来る。長い時間をかけて一通りの勉強をする。 僕が十七歳になった日、「先生」は言った。 「君は優等生だ。祖国のため、立派な働きを期待しているよ。同志」 返答に迷っていると、彼は親しげな仕草で僕の肩を叩いた。 「大丈夫、君は本来は存在しないはずの人間なんだからね。何者にだってなれる」 名前と経歴と身分証明書をもらって、僕は組織の人間になった。 外へ出て人と接触し、情報を持って帰る。 特に満足感も不満もなかった。蜜蜂にでもなっ...
  • 15-519
    グーチョキパーの三角関係 隙を見て繰り出したはずのチョキの目突きは、グーの左拳にあっさりと はじかれ流された。 喧嘩にしては物騒な最後の手段を簡単にガードされ姿勢を崩された チョキのボディに、グーの右拳がめり込んだ。 「チョキ!」 膝を突くチョキにパーは駆け寄った。 「もう勝負はついたよ、このくらいで勘弁してあげてよ!チョキ、チョキ、 大丈夫?」 チョキはパーの手を振り払った。その手が軽くパーの頬にぶつかり、 チョキははっとした。 しまったという気持ちは心の奥にはあった。しかし、素直な謝罪の言葉よりも 先に、またもグーに負けた苛立ちがチョキの口からあふれ出た。 「うるさい、触るなっ!」 「チョキ、貴様...」 目潰しをしかけられても冷静だったグーの表情が変わった。 「グー!駄目!!」 パーが慌ててグーとチョキの間に...
  • 11-519
    褐色の肌 生まれつきでした 焼いたわけじゃありません、だから子供の頃は本当に野蚕の布のようでした …こちらから売りに出さなくても売れたものです まぁ、今では少し上背が高くなりすぎてしまいましたかね でも、あれから十年ほどたった今でも、この肌は私の持つ貴重な財産です このように産んだ親を恨むことはありませんでした。元から居ませんでしたから 逆に心中しないで置いてくれた分、今の主に出会えましたからね。今では感謝していますよ 今の主はこの肌を、『本から出てきた英雄のようだ』と、誉めて下さるのですから 少なからずこの肌のおかげで、今の主に仕えることができたのですから 真面目×(゚∀゚)アヒャヒャヒャ!
  • 27-579-1
    女装×筋肉 「今日は勇樹にいいモノを持ってきたんだ」 「ん、何?………なんだ、コレ?」 「見ての通り、ひらひらフリルのドレスだよ。勇樹に似合うと思って」 「つまり、俺にコレを着ろと?」 「うん」 「嫌だ」 「え、なんで?」 「なんでって、俺に似合うわけねぇだろ?」 「絶対に似合うって。ねぇ、お願い、勇樹。一回だけでいいから着てみて」 「嫌だ、つってんだろ!?」 「だって、想像してみてよ。ひらひらフリルを引きちぎるとそこにはみっしりした筋肉が…!すごくそそられる光景じゃない?」 「そそられねぇよっ!つか、キモいわ」 「えー、そうかなぁ…。ひらひらフリルって男のロマンだと思うんだけど」 「男のロマンは否定しねぇけど、この場合は当てはまらねぇよ。っていうか聡、そんなにひらひらフリルが好きならお前が着ればいいじゃねぇか。お前細っこいし女顔だし、俺よりよっぽど似合...
  • 14-519-1
    体育会系×体育会系 松田がアパートに帰ってきたのは10時を過ぎた頃だった。 風呂から上がったばかりの竹原がおかえりと声をかけると、松田は玄関に座り込み手招きをした。 「何」 「脱がして」 泥だらけの両足を投げ出してそんなことを言う。 松田は子供のような驕慢さがあるのだが、生まれ持った愛嬌のおかげで何故か憎まれない男だ。 「甘ったれ」 そう言いながらも竹原はシューズの靴紐を解き、汚れたソックスを脱がしてやるのだった。 机の上に用意されていた野菜炒めと鶏の竜田揚げをレンジで暖め、すぐに遅い夕食が始まった。 「それどうしたの」 食べながら話すので、松田の口元から米粒がこぼれ落ちる。 黙ってティッシュを渡すと松田はそれで洟をかんだが、もう竹原は口を出す気も起こらなかった。 「それってどれ」 松田は箸で竹原の右腕を指す。 そこには握りこぶし程の大きさの青黒い...
  • 20-519-1
    ごめんなさい。空気読めなくて 「お前ほっんと空気よめねーなー」 ベッドの上から、ケイ君が僕を蹴り飛ばす。 「ごめんね、本当ごめんね、邪魔しちゃって」 怒声とまではいかずとも、イラつきが充分伝わるような声に、 弱弱しくお腹を押さえながら応える。 「ごめんねじゃねーよ、毎度毎度ヘラヘラしやがって!」 ベッドの上にはケイ君の服と一緒に、女物の靴下が忘れられている。 多分取りに来ないとは思うけれど。 「勝手に入ってくるとかザケんなよ、それもこういう時に…それとも何か、 お前みたいな未だに女も居ないキモ男には何してたか判りませんってか!?」 胸倉を掴まれてすごまれる。僕の目の前には今ケイ君の怒った顔がある。 「ごめんね、だって、お客様ならもてなさなくっちゃって…」 床にひっくり返されたお盆を指差そうとした直後、後頭部を蹴られ顔面を打ち付けた。 「お客様じゃねえよボケ...
  • 12.5-519
    剣豪×ごろつき集団 「嗚呼、清左衛門様、格好良いやなァ…」 「“我が刀の錆となるか”…なぁんつって、渋いやねェ」  細く開けた襖の向こう。  皆で顔つきあわせてきゃいきゃいと頬に手ェ付けて騒ぐ様は、芝居見物を終えた町娘と大差ない。  しかし、その風貌はと言えば頬にゃ刀傷、髭は不精に伸びてやがるし、可愛さとは無縁の顔の造作。 「…おい、おめェら…」  頭領である俺の声も聞こえねェのか、浮かれたそいつらはあの憎き清左衛門の言葉を反芻してやがる。 「なァ、清様が俺を斬ろうとした時の台詞は“観念せよ”だったか?」 「いや、それは俺ン時だ、お前の時は、そうだな…“地獄に落ちよ”じゃあなかったか?」 「嗚呼!清左衛門様に斬られるんなら地獄にだって落ちますよ、ってなもんだな!」 「俺ら一人一人に声かけてくれる辺りに優しさ感じちまうよな」  …あいつら...
  • 27-919
    竜宮城 竜宮城へ行きたい? イミフだなお前相変わらず。探すな探すな、亀なんかいねーよ、こんな南の島でもない普通の砂浜に。 まさかそれで海行くぞって言ったの?本気で? お前な、竜宮城行ったら浦島太郎だぞ。帰ってきたら謎のトラップで老化させられて死ぬぞ。罠だぞ。メリットゼロだざまあ。 あれなんなんだろね、亀助けてこの仕打ち。理不尽すぎる。 ばかなこと言ってないで帰ろーぜ、海めっちゃ寒。コートもないのにさ……誰も来てないぞ、この時期。 瞬殺?何が?亀? 何をごちゃごちゃ……言いたいことがあるならさっさと言え。 ……あ、そ?誰もお前と俺を知らない世界?なんの話。 ああ、竜宮城から帰ってきてからの話。んー、知らない、千年くらい?そんなにじゃないっけ、じゃ百年くらい。 まあそうだな、俺らのことを知る者はこの世にいないって未来だよな。 ……くだんない。だいたい言いたいこと...
  • 27-719
    何でも屋 近所に何でも屋ができた。 「何でも屋ですか」 「ああ」 店にいるのは髪の短い店主のみ、普段の仕事は何をしているんだろう? 何でも屋って言うからにはなんでもするんだろうし……エロイこともしてもらえるんだろうか。ちょっとだけ想像してのどをごくりと鳴らした。 「気になったんで普段どんな仕事してるのか教えてください」 店主に声をかけた。すると店主は掌を上にして軽く揺らした。 「小依頼1つで5000円だ。うちは前払いオンリーなもので」 金の要求……ちょっとした質問ですら金が必要なのか。 「はい、5000円」 しかし知的好奇心は収まらなかった。財布の紐の硬さよりも、好奇心は大きい。 「ん、たしかに」 「基本的になんでもする。多いのは小依頼で一つ5000円。その次に多いのが中依頼で30000円、それ以上の大依頼はものによる。 そうだな、今やってるような小依頼...
  • 7-599
    世界を救った勇者×勇者の故郷に住んでいる村人A (※昔のRPG調です) 勇者は 光の呪文を唱えた!10000ダメージ! 闇の大魔王は ばくはつし きえさった! 勇者達は死闘の果てに「闇の大魔王」を倒し、世界を破滅から 守ったのであった。 ** 「勇者さまだ!勇者さまのお帰りだ!!」 村人は歓声をあげ、勇者一行の帰還を喜んだ。宿屋の女将、武器職人、道具屋 の主人、教会の神父、そして多くの人々が村の広場で勇者達を囲んでいる。 僕は輪の一番後ろでその光景を見ていた。 「勇者」と呼ばれる彼。 神の啓示を受けて「勇者」になる前から、僕はずっと彼に憧れていた。 強くて優しくて清廉な心を持つひと。僕みたいな普通の村人とは全然違う。 彼は自分と同じように神に選ばれた仲間達と冒険の旅に出た。 僕がもし剣の達人だったら。強力な魔法が使えたら。祈りで傷が癒せ...
  • 7-569
    受をいじめるのが大好きな攻と、同性愛に抵抗もっているけれど攻のことが好きな受? A君はB君を見てるとどうしてもいじめたくて仕方なくなるんです。 B君はちょっと鈍臭くて、他人の言うことをすぐ真に受けてしまうお人よし。 俗に言う「いじられキャラ」というやつです。 そしてその「イジリ担当」が自他共に認めるA君なわけです。 ある日、A君はB君に「ちょっと話がある」と神妙な顔をして呼び出しました。 そこで「お前のことが好きだ」と告白をするのです。 驚いて言葉も出ないB君。 ぽかんと口を開けたまま息をするのも忘れてA君を見ています。 驚くのも無理はありません。 実はB君、最近自分のA君への想いが只ならぬものと気付き、ずっと悩んでいたのです。 意地悪をされても、その意地悪に悪意はなく、むしろ「いじる」ことによって、 人と付き合うのが下手なB君が、うまく周囲に溶...
  • 7-559
    欠乏症 欠乏症ということですので、何か栄養素が足りてないんじゃねという感じで指摘されてみたらよいと思います 個人的にポイント高いと思うのはカルシウム 成長期なら身長が低いのを気にしてる人に言ってもよし 年齢問わずイライラ、カリカリしてる人に言ってもよし 「カルシウム足りてないんじゃね」と指摘されて、さらにムキになったらよいと思います 小柄だけど気の強い受けとかだったら萌え倍率ドン 言われて気にしてこっそり隠れて牛乳とか飲んでたら、それだけで丼飯3杯くらいいけます ぜひとも攻めに「いいから黙ってこれ食え」とか言われて小魚ピーを渡されてほしいと思います 欠乏症
  • 7-549
    美術室×音楽室 「君には自由になる腕も脚もない。私の鈍重なからだも、この場所から  動くことを是としない。だのに何故だ。何故、君はその白皙の肌を削ってまで、  私の元を訪れてくれるのだ」 「会いたいからだよ。愛しのフリューゲル、この想いを理屈などで測ろうとしないでくれ。  君の歌が、フリューゲル(翼)を私に授けてくれたのだから。  さぁ、今宵も聞かせてくれ。君の声を」 「誰だ!誰か、教室に残っているのか!」  突然、誰何の声が割れ鐘のように響き渡った。それは深夜の音楽室を 大きく震わせるに十分な声量だった。ご、と何かの揺れる音がして、 続いて硬いものが地面にぶつかり、砕け散る音がした。  先ほど怒鳴り声を上げた事務員は、不審な物音の続く音楽室に踏み入ると、 まず電灯のスイッチをパチリと押し、教壇の脇に置かれているグランドピアノを、 見た。それから...
  • 7-509
    ツンデレ攻め×ツンデレ受け 「あ…の、こんなとこにずっといると日射病になる……」  夏日の日差し照りつける第二校舎の屋上に、そいつは午前中からずっと一人でいた。 向かいの、第一校舎の生徒会室からはこの屋上の一角が見えて、昼休みの間も「あの男子 生徒はこのくそ暑いのに屋上で何をしてるんだ」と話題になった。 「嶋ノ辺、あいつここに連れてこい。俺一応説教しなきゃならないかも。同じ一年だろ」 村上先輩は、よく横柄な物言いをするけどそれは誰にも媚びないからで、本当は気さくで 後輩にも威張ったりしない人望の厚い生徒会長で、僕はこの人のおかげで生徒会にも学校 にも気後れせずに居場所を作ることができた。……だから、嫌だったけど村上先輩の頼み だから、僕は屋上にいるそいつを呼びにいった。  屋上の扉を開けると、熱気と光線が額を打つように襲ってきて、それだけで立ち眩みが ...
  • 7-539
    本当にそれでいいの? 「へえ、アイツと、ねえ……」 「お前には、言っとかなきゃなんねえかな、と思って」 「何で?」 「……付き合い長いし、アイツの親友はお前だし」 「そっか」 俺がアンタを好きだって知ってたからだろ。諦めろって暗に言ってんだろ。 言い訳みたいな、無理矢理に理屈付けるような、そんな理由は要らないんだよ。 「じゃあ、奪うしかないんだ?」 「……何をだよ?」 アンタは笑って、でも震えるような声でそう言う。 「アンタを」 「馬鹿言ってんなよ」 誤魔化したいんだろ。俺の気持ちも言葉も、なかったことにしてアイツといたいんだろ。させるかよ。 「本当に、アイツでいいの?」 「……いいよ」 言葉に混じる躊躇い。俺を切り棄てたくても棄てられない。俺はアンタの友達で、アイツの親友だから。 仲がいいから知ってる。アンタの弱点。アイツもそこを狙ってアンタを自分...
  • 7-529
    七夕 1年の中で、現実的な距離を顧みず1日だけ逢瀬をする星の伝説がある 俺と和彦はそれよりも、いや誰よりも近いのだけれど こいつの顔を見る度に触れたいとか変な独占欲が湧いてしまう それを言ったら一瞬で何万光年も離れそうな気がするのに 「梅雨なのに星空見れたなぁ」と和彦がやたら嬉しそうに笑うから 愛想笑いで相槌を打ち、行き場のない感情を望遠鏡の中に投げ込む 1日に何度も会っているのに、この距離はあの星たち以上に遠い 願いが本当に届くのなら、1年で1日だけでもいい、 こいつに触れたい 触れさせてほしい …俺だけのものになってくれ。 七夕
  • 27-119-1
    攻めが受けを語る 投下しようと思ったのに躊躇してたら寝ちゃってた 攻めが受けの家族長期不在の実家に帰えるところから始まります ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 攻「あれ?お兄さん帰ってたんですか」 受兄「おう!お前さあ…昨日のまんまだったぞ、ベット」 攻「はい?あ!すみません!昨日、その…そのまま寝ちゃって…」 受兄「いやいや弟を(性的に)可愛がってくれてどうも。で、あのツンツン弟ってどんななの?」 攻「そっそんなこといったら怒られます!」 受兄「いいじゃんここだけの話だからさあ~」 攻「言いませんよ!」 受兄「実は俺、彼氏が出来てさ、どんなことしたら喜んでくれるか知りたいんだよね」 攻「え?そうなんですか?…絶対内緒ですよ?」 受兄「うんうん俺のために人肌脱いで!ぁ」 攻「まあ僕が一番嬉しいのは受のおねだりですね。ちょっと焦らしただ...
  • 7-579
    兄→友→妹 あの人が、町に帰って来ているらしい。  噂好きの姥さんに聞いた話を伝えた途端、兄の顔が引き攣った。  しかし瞬間表情は霧散し、いつもの気難しげな態に戻る。  お手伝いの姥さんは夕には帰り、兄妹だけの食卓は、兄の寡黙もあって常に静かだ。近頃は日に一杯だけの晩酌を煽って、兄は息をついた。 「そうか。なら、いっぺん久方ぶりに呼ばうが、ええかね」 「あにさんの好きにすればええじゃに」 「そうかね」「そうよ」  久しいなと、呟く兄の箸から米粒が零れる。それと気づかず箸先を口に含んでから、ひょっとした風に無骨な手元を見下ろした。  私は知らぬふりで菜っ葉を食みながら、正座で足袋のつま先を身じろがせた。 「──離れに呼ぶがよろしよ」  番茶を飲み下し、息をついでから言うと、うたれたように兄の顔が上がる。 「久方ぶりじゃけえ、積る話もあるやろう。女の前じゃあ...
  • 7-589
    暑苦しい夕方 「どうした、忘れ物か」 ぼくは首を振って、自分の席へと小走りで寄った。 誰も居ない癖に、この教室はグラウンドの野球部員の声とアブラゼミの不協和音がよく聞こえ 思っている以上にやかましい。 そういえば今年はヒグラシを聞かんなあ。 先生の言葉にドキンと心臓がはねた。心を見透かされたと思った。 「あ、あの…ヒグラシ、涼しくないと出ないんですよ」 「ああ、そっか。まだまだ暑いもんな。俺はあいつらのカナカナが好きでね」 先生から見たらぼくは印象の薄い生徒だろうと思う。 発言をする訳じゃないし、他の奴等みたいに先生を囲んで騒いだりもしないし。 それでも、先生はぼくの言葉に何てこと無い、といった感じで返事をくれた。 「オマエは虫に詳しいんだな」 知らなかった。勉強が足らんよ。と先生がぼくを見て笑う。 じっとりとした空気がぼくを...
  • 27-279
    主審とピッチャー その夏、私は恋をした。 青く高い空を背負って、グラウンドの土色を踏みしめて、彼は王様のように堂々と不適に笑う。 九回の裏、二死満塁。ドラマにしても出来すぎている舞台の上で、エースはそれでも真っ直ぐに前を向いていた。 まだあどけない日焼けした頬を汗が伝う。帽子のひさしの影の中で、挫けきらぬ目が弓を引き絞るように眇められる。 その視線に射すくめられ、観客の歓声が瞬間遠のく。十八.四四メートルを隔てて、その瞳に絡めとられた気がした。 否、錯覚だ。その目が見ているのは私ではない。 しなやかな腕が振られ、矢のような速球が放たれる。僅かに外れた。感情を排して告げた声に、彼が唇を噛む。 彼の視線が私に向けられることはない。その獰猛な眼差しは、相対する打者と、捕手の指だけを熱く見つめている。 私は黒子だ。この舞台を最も間近で見ていながら、しかし今...
  • 17-529
    恋人を庇って銃で撃たれる 強盗犯に撃たれた傷口をガーゼで押さえられ、人工呼吸器をつけられ手術室へと運ばれる谷澤は寧ろ穏やかな表情で、ただ眠っているだけの様に見えた。 アレを瀕死の状態と言うのならば、横で座っている津嶋はなんと評すれば良いのだろう。 その顔はまるで死人のように蒼白で、廊下の蛍光灯が、手術中のランプの照り返しが、彼の頬に赤味があるのだと、生きた健全な人なのだと錯覚させる。 だが、その頬は確実に人の色とは言いがたいのだ。 「津嶋。もう帰れ。んで、寝ろ」 「いやだ。例え、それが命令だとしても、帰らない」 「お前、顔も白いし目もどっかいっちまってるぞ。谷澤が起きた時に、お前がそんな状態だったら……――」 「起きないかも知れない……あいつみたいに。だろう?」 「…………」 手術室のランプが赤い光を放っている。 病院の廊下は、外ではもう夜明けを迎...
  • 17-589
    こんなはずじゃなかったのに 今度こそは、綺麗好きで温和で優しくて、割と胸の大きい可愛い子と付き合って 薔薇色の日々を過ごすんだと思っていた。 それなのに――。 平日の夜中に遠慮なくインターホンを鳴らすような相手はあいつしかいない。 口元にへばりついていた唾液をウェットティッシュで拭き取りながら 寝ぼけまなこでドアを開けると、案の定そこにはしまりのない笑顔があった。 「岸さん、なんか喰うもんある?」 「……夜中に人んち来て第一声がそれか」 自分勝手で礼儀知らずでだらしない痩せぎすの男と、俺はつるんでいる。 彼の名は筑波。勤め先の会社でアルバイトしている大学生だ。 「なんか小腹すいちゃってさ。財布も携帯も会社に忘れてきちゃったし」 「はぁ? だったら取りに行けよ」 「それが丁度スイカのチャージ切れちゃったところで」 筑波はスニーカーを脱ぎ捨て、躊躇なく...
  • 17-509
    クリーチャーの恋 「あいつ、……らしいぜ」 「マジかよ、さすが……だな」 「…んとだよ。あーあーゼッタイ俺かなわねー。でも俺たかが任務で死にたくねーし…じゃなくて良かった」 「シッ…聞こえるぜ」  ガヤガヤと雑音が鳴る。  人間じゃないと言われることにはもう慣れた。自分はほんの少し、身体能力が高かっただけだ。  ほんの少し、人よりも、生きている意味が見つからなかっただけだ。  三回ノックして、執務室のドアを開ける。ここだけ息が楽だ。空気が柔らかい。 「ボス。ただ今、任務から戻りました」 「お帰り」 「ご報告を」 「うん。それより――こっちへおいで。血が出てる。誰の血?」  手を取られて俯く。視線を落とすと、胸のあたりから下肢にかけて、べったりと血がついていた。  ほとんどはかえり血だが、自分のものもあるかもしれなかった。 「痛かった?」 「いえ...
  • 17-539
    高嶺の花 なんで、言っちゃったんだ。頭の中ではその重たい後悔がぐるんぐるん回っていて、誰を責めるべきなのかわからなくなる。 学年一の美少女に恋した自分か。それともいけるいける、なんて軽く背中を押してきた同級生だろうか。止めるどころかおもしろがったクラスの女子か。 考えているうちにこの世の全部が敵のように思えてきて、ぐったりと屋上の柵にもたれかかった。 天気がいい。山のてっぺん近くに建てられたこの学校は屋上の見晴らしがよく、絶望するにはもってこいの場所である。 「俺は馬鹿だぁ」 「そうだ馬鹿だ」 賛同の声がいきなりして、ぎょっとして後ろを振り返る。唯一、美少女に告白するなんて暴挙に出た自分を静観していた男が立っていた。 高校まで一緒の腐れ縁のくせに止めてくれなかった彼を恨めしいとはなぜだか思わなかった。 「そう思うなら早く止めてくれればいいものを」 「水戸黄門の歌...
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