*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「27-629-1」で検索した結果

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  • 27-629-1
    恋心を自覚する攻めと天然受け 本スレ投稿できなかったので、こちらに。 「お前、俺と付き合え」  学内で猛獣と噂される男、畠中からの告白。突然連行されていた宮間は、何を言われているのか分からなかった。 「えーっと、失礼ですが、頭大丈夫ですか? 俺達男同士ですよ」 「んなもんわかってんだよ。うっせえな。ぐだぐだ言わず、付き合えよ」 「いや、だから」 「お前に拒否権はねえよ」  そう押しきられたのが、5日前。 「ふーん……じゃあまだ、キスすらできてないのか」 「はい、まあ、しないですけどね。畠中先輩が見た目に反して優しいのは、この5日間で分かりましたけど、それとこれとは話が別っていうか……そんなことより山神先輩、すごく楽しそうですね」  宮間がうんざりして見ると、山神はそれすら楽しそうに、目を細めた。 「当たり前じゃん。楽しまないと、なんのための罰ゲー...
  • 7-629-1
    開かない扉の向こうとこっち 「そこに誰かいないのか?」 閉ざされた扉の内側で、幾度も幾度も扉を叩く。 もうどれくらいこうしているのだろう。声は枯れ、握り締めた拳は腫れて紅くなっても、呼び掛けずにはいられない。 喩えようもない孤独。 この扉の内側は狭くて明かりも射さず、聞こえるのは虚しく壁に跳ね返る自分の声ばかりだ。 誰からも返事は返らない。 「そこに誰かいないのか?」 「そこに誰かいないか?」 「そこに誰かいないの…か……?」 呼び掛ける声が弱々しく掠れて、黙り込んだ。 もう本当に誰もいないのだろうか。外はどうなっているのだろう。 絶望に襲われ、その場に屈み込みそうになりながら、それでも一縷の望みを棄てられず、再び扉を叩いた。 自業自得。 こんな孤独の闇の空間に陥ってしまったのは、自分の保身のためにあいつを裏切ってからだ。自分を信頼し、自分だけを見詰め愛し...
  • 27-629
    恋心を自覚する攻めと天然受け 「ゆーうや!一緒に帰ろ!」 「あ、わりぃ……ちょっと今日、学校残るから」 「……じゃあ、俺も残る」 「は!?そんなのいいって、悪いし」 「だって最近ぜんぜん裕也と帰ってない」 むっすー、という表現がぴったりな顔をして俺の目の前に立っているのは、幼馴染の卓真だ。 こいつは自分の言葉の重みってやつを全然わかってない。  垂れ目がちな目は大きくて肌は綺麗な上に色白で、少し長めの髪はくるんとした癖毛で、そこらの女子より可愛いくせにそんなことサラッと言うなよバカ。  元はと言えばお前が悪いんだ。お前がへらへら笑いながら「俺、裕也となら付き合ってもいーな。てゆーか付き合いたい」とか言うから悪い。  冗談だってことは百も承知だよ。つーか冗談だから余計に性質悪ぃんだよ。反射的に想像しちまって、「アリ」だなとか思っちゃった俺はどうすりゃいいの。...
  • 7-629-2
    開かない扉の向こうとこっち 「そこ、自転車」 言うまでもなく、彼は歩みを緩めることなくひょいと障害物を避ける。 「ありがと。大丈夫だよ、杖の扱いも慣れたし」 彼は微笑みながら手を伸ばし、寸分違わず僕の頬に触れた。 数か月前の事故で視力を失った彼。傷ついたその目に、光が戻ることはないらしい。 事故より後に出会った僕の顔を、だから彼は知らない。 「元からあまり目はよくなかったからかな、見えなくなったことにはそれほど未練はないんだ」 彼はいつもそう言う。そして、こう続ける。 「ただ、君の顔を知ることができないのが、残念だけど」 「……僕は、酷いかもしれないけど、かえってほっとしてる」 だって、もしも彼が僕の顔を知っていたなら、こんなに近しい関係にはなれなかったはずだ。 「どんな顔してても、君は君だろ」 けれど、そう言ってくれるのはきっと、今の彼だからだ。 ...
  • 9-629-1
    年下の先輩 昨今の囲碁ブームに踊らされて、初級者教室の門を華麗にくぐったのが 半年前だ。仕事帰りに一端緩めたネクタイを、鉢巻代わりに、も一度 きりりと締め直すのが毎週水曜夜七時。パチリパチリといい音響かせ、 「音は良くなりましたね」と無理のある褒め方をしてもらったのが、 ついこの間の水曜日。たまにはサロンの方にも顔を出して、へぼ碁の 相手を探そうかなあと同じビルの階段を一つ昇ったところ、人の影、 聞き覚えのある話し声、震える言葉、駆け降りてくる、駆け抜けていく 見慣れた学生服の見知った少年の背に不穏なものを感じ、踊り場を 見上げると、いつも馴染んだ羽織姿の、温かな笑みを崩したことのない 指導の先生のその瞳、縁なし眼鏡の奥の底、青ざめた表情に反射的に きびすを返し、何があったのか、とにかくさっきの高校生の姿を求めて 追っかけっこを始めたのが五秒前、日曜日の午後...
  • 6-629-1
    さぁ俺を踏み越えて行くが良い どうしてこうなったのだろうと、考えるのはやめにした。 考え方の違いは出会った時からわかっていて、それでも互いに手を伸ばしあった、 その過去は決して変わらない。 七年も前に袂を分ったからといって、今、敵軍の将として遭い見えたからといって、 貪るように抱き合ったあの日の想いに嘘などない。 たとえ、互いに遠慮容赦ない戦いを繰り広げようとも。 たとえ、今この瞬間に、お前の剣が俺を切り裂こうとも。 わざわざ跪いて、倒れ伏した俺を哀しげに見つめなくたって、いいんだ。 一軍の将たるものが、そんな様でどうする。 「―――…に、してやがる…」 どうにも掠れる声を振り絞る。情けないほどに弱々しいが、こいつに聴こえればそれで十分だ。 「さっさと、行け…!」 さぁ、俺を踏み越えて行くがいい。お前ならきっとどこまでだって行けるから。 俺の信念も忠誠も今...
  • 14-629-1
    ふんで 「は?」 短いムービーを見終え、俺が真っ先に発した言葉はそれだった。 新幹線の到着時間を知らせるメールにくっついてきたそれには、音が入っていなかった。 画面の向こうでは、座席に座ったあいつが満面の笑みを浮かべている。 掲げて見せる漫画やゲームを見るに、これで遊ぼう!と言いたいのは何となく分かるが、 ……問題は最後だ。突然真顔になったこいつは、口を尖らせて「う」の形を作り、 続けてかたく引きむすび、 最後にわずかに開きながら顎を下げ、困ったように眉を寄せて視線を落とし、 ……映像はそこまでだった。 「……謎解きかよ」 何かの言葉なのだろうか? 車内でうるさくできないのは分かるが、こんなの読唇術の心得があるわけでもなし、 俺にはさっぱりわけがわからない。メールで問い返したが返信もない。 「……ったく」 苛立ちまぎれに画面のあいつにデコピンし(爪がちょ...
  • 23-629-1
    あなたさえ居なければ ※ヤンデレ注意 恋に狂うのは、ひどく罪深いことだ。 あの人を見ているとそれがよくわかる。 あの人の相談を受け始めた当初、薄い恥じらいの表情が空気を幸せの色に染め、僕はその時間が大好きだった。 あの人が彼を手に入れてからも僕への相談は続いていたが、しばらくはただの惚気で、半分呆れながらも微笑ましく話を聞いていた。 いつからおかしくなったのだろう。 もしかして、あの人は、はじめからーー彼に恋をはじめた時からーーおかしかったのかもしれないと、今になって考えてみる。 僕には見えていなかっただけで。 あの人は彼のいろいろなものを奪っていった。 友人、家族、生活、時間。彼を監禁し始めたようだった。 僕への相談の時間が、赤黒い、苦しい色に染まるようになった。 僕はあの人が罪を犯しているのを知りながら、止めることが出来なかった。 あの人は苦しみな...
  • 15-629-1
    長い冬の終わり 雪が溶け始める頃に、今年もあいつはやって来る。交代に来たよと優しい笑顔を浮かべて。 「何か変わりはあった?」 自分の軽い体を枝の上に座らせながら、春が聞いてくる。枝に残っていた雪は静かな音を立て、真下に落ちていった。 「あの赤い屋根の家に赤ん坊が生まれたよ」 すっと俺が指差すと、春は思い出したように目を細めた。 「そうだったね、この前はお腹の中にいたのに、早いもんだね」 後で見に行ってみようと楽し気にはしゃぐから、俺はわざとらしく溜め息をついた。 「お前は少ししかこの町にいられないから早く感じるかもしれないけど、俺はもう飽きるほどだ」 この町の冬は長いから、その間ずっと一人でただただ雪を降らせるだけの仕事。降らせ過ぎれば嫌われるし、降らさなければ心配される、加減の難しい仕事。 春はけたけたと、柔らかな髪を揺らして笑う。 「冬の仕事は大変だね...
  • 24-629-1
    戻らない 好きだと伝えてしまったら、戻れないのはわかっていた。 あの日からあいつは、俺のノートを借りにこない。 俺の飲みさしのペットボトルを奪わない。 出会い頭のヘッドロックもかましてこないし、意味もなく浮かれて体当たりもしてこない。 戸惑ったように揺らぐ目をして、奇妙に引きつった挨拶をよこし、 手が触れない細心の注意を払った位置で、うわっつらの笑みを浮かべるばかりだ。 戻れないのはわかっていた。俺はあいつの友達ではなくなった。 無邪気な友達の距離間は、俺の高校生活にささやかな幸せをくれたけれども それがいつまでも続くものではないことに、高校時代の友人なんて繋がりのその脆さに、 気づくのをいささか遅らせた。 愉快で楽しい遊び仲間でなく、いちばんのともだちになれていたなら、もう少し違っていたろうか。 戻れないのはわかっていた。かまわない...
  • 7-629
    開かない扉の向こうとこっち 扉が閉まった瞬間、自分の呼吸まで止まった気がしたのは、きっと勘違いではない。 結局自分は恐ろしかったのだ、同情されることが。最後のプライドの瓦解が。 恐れていたことが現実になったから逃げる、なんて。 (臆病な子供でもないのに、) 苦笑しながら呟いたと思った言葉は、乾ききって掠れていた。 それでもこうして拒絶するしかないのだ。 後戻りしてやり直すことは出来ないし、今更感情を表すことも出来ない。 そもそも一緒にいられるなんて、勝手な幻想にすぎない。 氷のように冷ややかな壁の向こうでは、まだ彼が辛抱強く声を張り上げている。 いっそ初めから、とことん突き放してやればよかったのだ。 彼と関わりすぎてしまったのは何より痛い失策だった。 こうなることが予測できないわけでは無かったはずだ。 わからない。なぜ気付かなかった? 扉の向こう側で彼が自...
  • 17-629
    結婚指輪のかわりに 女子にとって「けっこんゆびわ」ってのは相当大事らしい。 つーか何?「こんやくゆびわ」とか別にあるってどんだけだよ! 結構なおっさんでも最近指輪してるヤツ多いよな。 あくせさりーなんてモン、俺は付けるシュミねーんだよ。 それに女子も高望みし過ぎ!相場が上がってるって聞くぞ! 指輪なんてなくっていい。幸せって指輪に宿る訳じゃねーだろ。 世間に踊らされんなよな! 「でもよかったな!お前の嫁さんがそこらの女と違ってしっかりした子で!  お前がブランド女に喰われちゃってたら、親友としては大変かなしいっ!」 アイツの披露宴の二次会、俺今変なテンションだぜ! もう披露宴も半ばあたりから記憶が飛んでるし! そんなに飲んだ訳でもねーけど! なんか、頭がフワー!! そのままアイツに絡んじゃってる俺、イヤッホーーー!! 「じゃ、お祝いに~...
  • 27-129-1
    汗っかきと冷え性 「ねぇねぇ」 「……」 「ねーねーってば」 「……なんだよホッカイロのくせにうるせえな」 「ひどい。……ねえ、いつまでこうしてるの」 「朝まで」 「くっつきあったまま?」 「イエス」 「ひどい」 「だまれ抱き枕」 「ひどい……てかさ、まじめな話、俺汗かきだからさ、現に手汗すごいし、こんなんしてると 冬でも汗臭くなるからさ、そろそろ離」 「それもまたいい…」 「へ、ヘンタイだーッ!」 「うるせえ」 「いたっ! っていうかそーちゃん平気なの? 暑くないの?」 「ふははは冷え性なめんなよ。おまえから体温奪ってちょうどだ。…つーか」 「ん?」 「おまえなんでそんな暑いの」 「……それわざわざ言わせんの?」 「言えねえのか」 「……ひどい……」 「……もう寝ようぜ。…おやすみ」 「……おやすみそーちゃん。……………だいすき」 ...
  • 27-029-1
    甥っ子×叔父さん 「おじさん結婚しないの」 19歳下の甥っ子に突然尋ねられた。ついに兄貴が婚期を心配しだしたのだろうか。 「もしかして今日、見合いの話持ってきた?」 「違うって。親父からは別に何も言われてないよ。ただ俺が聞きたいだけ」 「なんだよ焦った。まったく予定ない。残念なことに彼女もなし。  それよりお前はどうなんだよ。コレ、できたか?」 小指を立てて聞いてみる。 「それおっさんくせえからやめたほうがいいよ。彼女なんていない」 「20過ぎたら30まであっという間だぞー。ちなみにその先の30代はもっと早い。  今のうちにいい子つかまえとけよ」 「……んん」 アラフォーからのありがたい忠告だというのに、テーブルに頬杖をつきながら適当な相槌を打たれた。 しょっちゅうお馬さんごっこやヒーローごっこをして遊んでやったこいつも、あと10日で成人だ。 時の流れは恐...
  • 27-329-1
    一緒に暮らそう 「お金も節約出来んじゃん」  篠原との関係は、高校だけだと思っていた。 「もしかして、俺、森君にもてあそばれてたの?」  ショックーと言いながら全然衝撃を受けてなさそうなのに、少しばかり腹が立つ。 「お互いの大学の真ん中あたりは、ちょうど物価高くなさそうだし……」 「待てよ。話を進めるなよ」 「……もっと好きな相手が出来たらフって良いって、森君はいつも言ってたけどさ。俺はフる気ないし。少子化問題に取り組むつもりもないし」  モテる奴がこういうこと言うと、持たざる者はどう反応していいのか分からない。怒っていいのか。いや、まずは 「自分勝手過ぎるだろ。俺の気持ちは分かってんのかよ」 「自分勝手なのはどっちなんだよ。もっと好きな人が出来たらフれとか、好きな子から言われて、俺が傷ついてないとでも思ったの」  篠原の眼差しが痛い。だって仕方ないじゃないか...
  • 27-729-1
    ヤケ酒 「もうやめなよ、朔ちゃん。彼女にフラれて辛いのは分かるけど、そんなに飲んだらまた戻しちゃうよ」 「うるへー!」 朔はあおるように酒を飲んだ。アルコールに耐性のないその身体は、真っ赤に染まっている。また懲りずに酒を注ぐと、夏希がそれを取り上げた。 「らにすんだよ!ばかぁ!」 手を伸ばしても、背も足も、腕も長い夏希が遠くのところに置けば、届かなくなってしまう。 「もう終わりにしよ。明日も仕事があるんでしょ? そんなにあの子のことが好きだったなら、デートの約束も守れば良かったのに」 「夏希との約束があったらろ」 「彼女との約束を優先すべきだったんだよ。しかもその日、彼女の誕生日だったんでしょ」 「……んだよ、夏希は、おれが彼女を優先してもよかったのか」 朔が据わった目で、憎々しそうに夏希を睨むと、夏希は肩をおとした。 「いいに決まってるでしょ。放置された彼女...
  • 9-629
    年下の先輩 「結城くん、結城くん」 出た、インテリ眼鏡!結城は鼻に皴を寄せる。 「最近、授業出てないけど、単位大丈夫なのか?」 もちろん、授業に出ていないからといって単位が取れる方法はいくらでもある。 なので、彼の言動は結城にって非常にうざったいおせっかい。 「あんまりこんなこと言うもんじゃないって分かってるけど、 やっぱり授業は大事にしないと、この先4年間大変だよ?」 先輩面するんじゃねえ!と噛み付けたらどれくらい楽だろう。 実際、この目の前のインテリ眼鏡は先輩なのだが。 いやしかし、人生のという意味ではこちらのほうが先輩だ。 苦節三年漸く受かった大学で、何が悲しくて年下の説教を受けなければならないのか。 「大丈夫っスよ、久遠先輩。俺要領いいんで」 「……」 インテリ眼鏡は困ったような顔をして、もごもごと何かを呟いた。 「何ですか。」 「一応、これ...
  • 27-299-1
    ひょろい×筋肉質 リストバンドを買いにスポーツ用品店に行ったら、 レジの前でクラスメートの峰と鉢合わせした。 峰が手にしていたのはダンベルだったので、俺は少し驚いた。 峰は、勉強は得意だが運動は苦手な典型的なインドア派で、 肌が白く体型もひょろりとしている。 女子には案外人気があるようで、クラスの子が「峰くんて中性的で素敵」 「王子様みたいだよね」と話しているのを聞いたことがる。 女の子から「王子様みたい」と言われるなんて、 ラグビー部所属で色黒がっしり系の俺からすれば少しばかり羨ましかった。 そんな峰とトレーニング器具の取りあわせは、だから全くしっくりこない。 「よぉ」 「あ、佐々原…」 「ダンベル、買うの?」 「あ、うん」 「なんか意外だな。お前がそういうものに興味持つの。スポーツとかさ、あんまりやらないじゃん?」 「うん、そうなんだけど…...
  • 2-629
    大正浪漫 男は几帳面な所作で便箋を折りたたむと、通りに目を遣った。 晩夏とは言え、日差しは真夏と然程変わりはないようだ。 人力車の間を縫うようにして 思い思いの装いをした人々が行き交い、 胡散臭さと活気が雑多に混じり合った、 一種独特な雰囲気を醸し出している。 「先生、そろそろ御昼になさいませんか。」 引戸を開け、書生が遠慮がちに呼びかける。 先生、と呼ばれた中年の男は申し訳なさそうな顔をして、 眼鏡の蔓を指で押さえた。 「済まないが後にして呉れないか。こうも暑いと食欲が湧かなくてね。」 「なら、水菓子は如何です。西瓜が冷えて居ますよ。」 「それは好い。少し頂こうか。」 二人並んで西瓜を齧る。うまい具合に冷えており、咽に心地よい。 「先程から何を御覧になってたんです?」 「益田から手紙が来た。細君が君に宜しくとの事だ。」 ...
  • 4-629
    Now, I wanna be your........! お隣に住む外国人は、さっぱり日本語を覚えない。 なんでも、どえらい外資系の会社の社員らしく、二つ返事でオーナーが部屋を 貸したのだそうだが、雇われ管理人の俺としては、言葉が通じないので、何を しているのかはさっぱり分からない。 しかし、異文化交流とでも思っているのか、俺に、頻繁に話しかけてくる。 最近では、朝食と夕食を俺が作り出すと、インターフォンを押して、一緒に ゴハンを食べていくようになった。 外国人というのは、こんなにも強引で図々しいものなのか。 でも、家賃を持ってくる時に、大きなプレゼントをいくつも買ってくるので、 多分下宿か何かと勘違いしているのだろう。"I love you."と頻繁にささやいて くるので、親愛の情は持っているようだし。まぁいいか。 "...
  • 8-629
    ちょいワルおやじ/薔薇 「Tさんってちょいワルおやじって感じっすよね」 あぁん?冗談じゃねぇ! 不良中年を自認する俺だが、ちょいワルおやじだぁ? 誰がズローラモだ!一緒にすんな。 「誕生日には薔薇の花束なんかさりげに抱えちゃって。 きっと似合うだろうなぁ。いいっすよねぇ、俺ももらいたいなぁ」 何無邪気に言ってんだか。 だいたい薔薇なんて買ったこともねぇぜ。花を買うのは墓参りと決まってら。 「でもさぁちょいワルって紳士なんでしょ?Tさんの彼女は幸せだなー」 何がでもだ!誰が紳士だ!? はじめて商談をまとめた部下を労う上司のふりで 下心ありありでマンションに誘った俺がか? 「今回だってTさんのアドバイスがなけりゃまとまるもんもまとまらなかったし。ほんと感謝してるんすよー。」 東奔西走するおまえをただほっとけなかっただけさ。 「仕事はで...
  • 1-629
    賞味期限ギリギリの牛乳×冷蔵庫 初めて受け入れた時から、既に奴の余命は宣告されていた。 外出のたびに体重が減っていく。 いつか自分のあずかり知らぬ場所で消えてしまいそうな奴は、 それでも必ず俺のところに戻ってきた。 生きながらえても、見苦しい姿を見せるだけだから。 そう言いながらも俺のところに戻ってきたのは、 本当は奴も生きていたいからじゃないかと思っていた。 死期が近づいた彼をいっそ閉じこめておけたならと、 そう願った回数はもう覚えていない。 そんな彼は。 宣告された期日を待たずに、いつものように外出して、そして永遠に戻らなかった。 黒猫×白猫
  • 3-629
    生徒会長な優等生×不良生徒 「あとで生徒会室に来てくださいね」 「……うっぜー…」 抜き打ちの校門前検査。 まあ、事前に知らせていても結果は同じだっただろうけど、案の定彼は違反箇所10項目以上 突破の罪にて生徒会室ご招待と相成った。 本当ならこの場合職員室なんだろうけど、進学校として有名なうちの学校には彼を御せるような 教師はいない。 それをいいことに僕が買って出たわけなのだけれど。 「やあ、来たね」 「お前、チェック細かすぎ。神経質とか言われねえ?」 「だってそれだけ細かくチェックしなきゃ君をここに招待できないからね」 おいで、と手を伸ばすと不機嫌な表情を作りながらも素直に身体を預けてくる。 抱きしめると煙草の匂いが鼻を掠めた。 「喫煙で停学なんて食らわないでくれよ。君が来ないと寂しい」 「恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ、バ...
  • 5-629
    自己中×苦労性 「なおちゃん、俺さあ、やっぱ今日はこのまま海に行くべきだと思うんだよね」 「てめえふざけんなよ、今から学校だろうが」 高校に入って一番にできた友人が、コイツ、由紀だった。 隣りの席から、ねぇねぇなんて名前なの?と呼びかけられて、にこにこと可愛く笑って、 なおちゃんかあ、俺はね由紀っていうの、よろしくーなんて言われて、俺はそれにまんまと騙されたわけだが。 可愛いやつ、だなんて思ったことを、今は少し後悔している。 ひょろっとした長身にへらへらした雰囲気のとおり、コイツはどうもいつもふらふらしていて、 どこか抜けていて、それでもって自分勝手で、人のことっつーか主に俺のことをあまり考えていないような気がする。 由紀は毎回テストの度に、なおちゃんどうしよう俺留年しちゃう!と言って俺を頼ってきて、 俺のテスト勉強プランをめちゃくちゃにし、ギリギリで赤点をクリ...
  • 6-629
    さぁ俺を踏み越えて行くが良い  死屍累々。  そんな言葉が脳裏に浮かんだ。  オレたちは今日、高校を無事に卒業した。  問題ばっかり起こしてたけど、いざ卒業してみるとサミシイもんがある。  いやでもめでたい。何にせよめでたい。  そんなわけで、卒業式のあとにはお決まりの宴会がスタートしたわけだ。  みんな浴びるように酒を飲んでいたが、オレは味覚がコドモなのか、酒をあまりうまいと思わない。  必然的に、飲む量は誰よりも少なくなった。  大量にあった酒がどんどん減っていって、酔いが回っておかしなことになる奴が増えてきた。  そして、この有様だ。  もちろん本物の死体というわけではない。死体はこんなにぎゃあぎゃあうるさくないはずだ。  素面なのは自分一人。もしかして後片付けも自分一人、だったりするのだろうか。  未だ見ぬ悲しい未来を思い浮かべながら、と...
  • 7-609-1
    その瞳に映るもの あいつはよく哀しそうな顔をして俺に言う。 今の世の中が辛い、と。 欲望、混沌、狂気。 そんなものに染められた現代社会が、耐え難いほど辛いと。 ――人は人としての生き方を、なくしちゃったのかもしれないね。― あいつの何気ない一言が、いまだに俺の胸に突き刺さっている。 『人としての生き方をなくす』というのは、俺の事も指しているのだろうか。 人が恋心を抱く相手は、普通は異性と決まっている。 そうでなければ、人は子孫を遺す事ができないから。 同姓であるこいつを愛した俺は、こいつがいう所の『人としての生き方をなくした』人なのかもしれない。 こいつの瞳は、同姓を愛した俺をどう映すのか。 そんな事はこいつに聞いて見なければ分からないが、聞く勇気は俺にはない。 俺と同じく同姓を愛した自分に対する自嘲の言葉だったなん...
  • 7-699-1
    性格悪い人×根性曲がった人 「やっぱ連れて歩くんだったら女の方がいいなあ。  男二人ってなんか華ねーじゃん?」 俺はそいつの真っ黒の瞳を見て一息ついてそういった。 なんのことはないように、ああ、そう、と呟いて時計をちらりと見た。 全く、こいつの考えていることは分からない。 さっきの嫌味も効いてるんだか効いてないんだか効いてないふりをしてるんだか。 ああはいったが俺はこいつよりも美しい女も人間もはたまた物も今までに見たことはない。 「早くしないと映画が始まるよ。」 振り返る人がこいつを見てため息をつく。 鞄からペットボトルの水を取り出して一口飲んだあと聞いた。 「お前なんの映画みるかわかってんの?」 「そんなことは知らなくていいだろう。  アンタの見たいもので構いやしないんだから。」 死にネタの感動もの、美談、ホラー、どんな映画でもまゆ一つ動かしやしない ...
  • 7-679-1
    お前は幸せになれば良い。 「お前、何やってんの?」 金曜の夜。強か酔って帰ると、アパートの部屋の前に後輩の須藤が立っていた。 飲み終わったコーヒーの缶にタバコを捻り潰し、立ち上がる。 何が面白くないのか、たいそう不機嫌な面構えだ。 「飲んでたんですか」 「来るなんて聞いてなかったからな」 「誰と」 「誰でもいいだろ。それよりお前、こんなとこいていいのか?」 「いけませんか?」 こいつは明日、結婚する。 俺が今夜、飲まずにいられなかった理由である。 「今日中に伝えておきたいことがあって」 ドアの前から須藤をどかし、鍵を探して鞄の中を掻きまわす。 酔いの回った頭も手先も言うことを聞かず、鞄の中身がいくつか零れ落ちた。 スッと目の前に影が落ちたと思うと、須藤が俺のポケットから鍵を取り出していた。 身体を抱え込むように反対側に手を回し...
  • 7-669-1
    かっこいいナンパ 曰く、雑誌にだまされたのだそうだ。 彼曰く、これが礼儀なのだと雑誌に書かれていたそうなのだ。 つまり彼はホモで、目覚めたてのホモで、衆道の礼儀として、 初心者なりに、カタギと間違われないための礼儀として、 聞いたままにアロハシャツを着、サングラスをかけ、 出来れば髪も染めたいがちょっと照れるのでせめて刈り上げ、 万全を期して初夏のナンパに臨んだのだそうだ。 ところがいざフタを開けてみれば、万全どころか、シーズンを 外してキャンプ地はガラガラ、ヤブ蚊はブンブン。 虫を払いつつ川面に出てきたものの、わずかに存在した、 哀愁漂う釣り客に「ひぃっヤクザ!」と怯えた声を出され、 (この時点で雑誌にだまされたと気付いたそうだ) やむなく彼は、今度は人気のない上流へと向かったのだ。 途中で別に好みの男を見つけたものの、さすがにパパママボクの...
  • 20-629
    約束を破って 「今後絶対に俺に告白なんてすんな、バカ!約束だからな!それが出来なきゃ死ね!」 高二のころだった。何をトチ狂ったか、幼馴染の幸生は俺に告白をしてきた。 今も今までもこれからも、ずっとずっとみっちゃんが好きだよ、と帰り道でコンビニの肉まんを食いながら、あいつは言った。 男の幼馴染にまさかそんなことを言われると思っていなかった俺は、そんなことを幸生に言ってしまった。 幸生は見たこともないような悲しそうな表情を浮かべたあと、変な顔で「ごめんね、みっちゃん」と言った。 本当は、好きだと言われて嫌だったわけではない。いや、本当はすごく嬉しかった。俺は素直になれなかった。 俺だって幸生が好きだった。幸生以外と過ごすのなんて退屈で仕方なかった。 でもあの時の俺は、幸生の思いを受け入れられるほど大人じゃなかったし、好きの意味がわからないほど子供でもなかった...
  • 21-629
    一人称「俺」、二人称「あんた」 「あんた」に対してはくだけた敬語の受け あれ、こんな時間にどうしたんすか? 俺?見ての通り今帰ってきたところですけど。 酒の匂いがするって、そりゃしますよ。接待で飲んできたんですから。 美人と2人でタクシーに乗り込むのを見た? ああ、いたんですか。声をかけてくれればよかったのに。 誰って、大学の教授ですよ、あの人。 うちで協賛する講演会のために招いたんじゃないっすか。 っていうか接待だって本来は社長のあんたの仕事なんですよ? はいはい、苦手なんですよね、そういうの。 知ってますよ。だから俺が代わりに行ったんじゃないすか。 飲み過ぎたらしいんでホテルまで送って行っただけですよ。 誘惑?されてませんし、されても断ってますよ。 っていうか、あんた俺のこと信用してないんすか? してるけど心配? そりゃね、以前の俺だったらあんな美人...
  • 24-629
    戻らない 高校時代の友人たちと、良い歳こいて祭りに来ている。 そしたら上野が、これまた良い歳こいて迷子になりやがったので、友人たちから花火までに見つけてこいとの指令を拝命した。 迷子て。子って歳じゃねぇぞ。 上野はマイペースな奴だ。いつもフラフラどっか行くあいつを、探してくるのもいつも俺で。 久々に地元に帰ってきたと思ったらすぐこれだ、と少し笑う。 案の定、上野は祭りをしている神社の真裏の、倒壊しかけた古い石段の途中に座っていた。昔からここが好きだな。 「上野、皆が待ってるぞ。ここからじゃ花火見えないだろ。戻ろうぜ」と、俺が後ろから話しかけると「やっぱりおれを探しにくるのはお前だな、金澤。おれは戻らないよ。いいじゃないか花火なんて。座れよ」 そう言って、隣に座るように促す。 「まあな。花火で喜ぶほど若くない」そういいなが...
  • 14-629
    ふんで  同僚の鹿島が訪ねてきたのは、夜の12時をまわった頃だった。 「どうしたんだ…。その格好…」 「終電に乗ろうと思って走ったら、鳩のふんで滑って転んだ。終電も逃した」 「あらら」 「悪いが泊めてくれないか…?」 「水臭いな。どうぞ」 「すまん」  俺の部屋は職場の近くで、時間ギリギリまで寝ていられるのが決め手の部屋だった。  だが職場の近くであるが故に終電を逃した同僚がちょくちょく泊まりに来るようになっていた為、 睡眠時間に関しては前より減っている。 「お前がここに泊まりに来るのは初めてだな」 「いつも誰かが泊まっている状態の時もあっただろ。来れないよ」 「騒がなきゃいいよ」  そういって俺はビニールに入ったスウェットや下着を鹿島に渡した。 「これ、サイズきついと思うけど新品だからさ」 「悪いな。今度同じもの買ってくるよ」 「...
  • 7-829-1
    もし明日死んでしまうとして 白色とクリーム色が支配する部屋の窓から、揺れる最後の花を見ていた。 ノックの音に振り返れば、四角く切り取られた空間に いつも通りの感情を読ませない顔がある。 今日の授業の内容を告げる口調にも一切の私情は見られない。 (知ってるくせにッ……!) 学校に行けない俺のために、 せめて遅れないようにと気遣ってくれていることはわかっている。 届けてくれるノートのコピーもわかりやすいようにと丁寧に書いてくれている。 それでも、その無表情が辛い。 「もし……もし、明日の手術に失敗したら……きみの苦労もムダだよ」 流れるように続けられる言葉を遮るように口を開く。 知っているはずなんだ。俺の気持ちも、明日の手術の成功率も。 無言で、ただまっすぐに見つめてくる視線。 耐えられず、顔ごと逸らした。 逸らした目に...
  • 7-329-1
    唇ではなく 貴方の唇にくちづけしたい。 顔を見るだけで満足して帰るはずだったのに、涙に濡れる貴方を見た途端、そんな思いが抑えられなくなった。 かつては何度も重ねた唇だ。荒れてカサカサした固いこの唇が、私にとって最上の唇だった。 私は思いを込めてくちづける。 これはくちづけであってくちづけではない。重ねられているのは唇だけれども唇ではない。 私の唇はもう温度を無くし棺に納まっているはずで、目の前にいる貴方は私を見ることすら出来ない。 私の唇に貴方の固く荒れた唇は感じられず、貴方もまた私の唇を感じることは出来ない。 貴方の唇には何も残らない。 貴方に、私はなにも残せない。人並みの幸せも家庭も子供も私自身さえ。 それでも、この唇の重ならないくちづけで、私は貴方となにかを重ね合わせられるだろうか。 貴方に、なにかを残せるだろうか。 メガネクール受け
  • 7-529-1
    七夕 今年もまた 今日が来る・・・ ―リリリン… 午前零時、ドアベルが鳴った。 そして一人の男が入ってくる。 鍵は開けておいてある・・・ 今日は特別。 俺は男の姿を確認してふと笑った。 男もなんとなく眉を下げて笑い返して、カウンターに着いた。 「こんばんは。」 「・・・ピッタリだったね。」 「まだやってる?」 「バカ言え。もう終わってるよ。」 「ふふ、これ去年も言ったっけ。」 「・・・その前も、その前も聞いたよ・・・」 「・・・・・・」 最初の俺たちの会話は大抵2、3言交わした所で終わってしまう。 そうすると俺はこう言う、 「飲み物は?」 「・・・・いつもの。」 「かしこまりました。」 「・・・・・」 ―シャカシャカシャカ 「今度はどこ行ってたの?」 シェーカーを振りながら尋ねた。 「ん、インドの方にね・・・」 「ぷはっ、イ...
  • 23-629
    あなたさえ居なければ ※女絡み注意  週末ぐずつくはずだった天気は、まるで彼女を祝福するように式の間だけおだやかな陽光をサービスして  ささやかな結婚パーティはつつがなく幸福に終わった。  ごく親しい友人と身内だけの会に、二人にとって「学生時代の後輩」なだけの自分が招待されたことは  きっと幸せに思うべきだった。  真っ白いドレスは彼女らしくシンプルで、腰から床へとなめらかなラインを描いていた。  おれはその流線をじっと見るだけだった。  新郎であるところの先輩はおれの祝福を本当に喜んでくれて、何の曇りもない笑顔で何度もお礼を言ってくれた。  先輩と、彼女と、二人のご両親は笑いあいながら酒を注ぎあい  家族みたいに(家族なのだ)笑い合っていた。とてもとても遠かった。  なんだかもう、どうしようもなかった。  あの幸福さの前には、おれなんかの淡い恋...
  • 22-629
    俺の子供を産んでくれ 俺の子供を産んでくれ。 「……って告白したらふられた?当たり前だろ、馬鹿」 「なんでだよ!俺の心からの想いをそのまま言葉にしただけなのに、なにがいけないんだよ!」 馬鹿な告白をしてふられたらしい馬鹿な男が、若干の涙目で訴えてくる。 なんでって、それをわかっていないところが馬鹿だというのだ。 「あのな、普通の女の子はそんな告白されたら、どん引きこそすれキュンとはならないの。なんでおまえはもっと言葉を選べないかね」 「だって、だってしょうがねぇじゃん。俺にとっての恋愛は、そういうことなんだもん。好きになった人とは、結婚して、子供産んで家族つくって、死ぬまで添い遂げたいって、俺は本気でそう思うんだもんよ」 大の男が、もん、とか言ってるんじゃねぇよ。 この男はいつもこうだった。毎回、誰かを好きになるたびに、こんなくそ重いことを言い出して相手に引かれてふ...
  • 13-629
    吐息だけが触れ合うキス 寝る前に、坊っちゃまに「おやすみなさい」の挨拶をするのが、私の日課になっていましてね。 もう2年近くになるでしょうか。 もっとも、いつも既にお休みになられていますから、寝顔に声をかけるほか、ないのですが。 夢の中の坊っちゃまは、今日も幸せそうに微笑んでいらっしゃいます。 近頃、やけに大人びた振る舞いにこだわりはじめ、 「もう『坊っちゃま』なんて呼ぶな」 などと叱られてしまうこともありますが、寝顔はまだまだあどけなくて。 まるで少し歳の離れた弟のように、あるいは、 ……いえ、やめておきましょう。おこがましいにもほどがある。 ですから、お休みのくちづけは、今夜も吐息だけ。 そっと顔を近づければ、かすかな寝息が私の唇に触れ、そこがじわりと火照る気がします。 その熱をお返しするように、彼の唇に向かって、小さく「おやすみなさい」と呟く。 …意気...
  • 15-629
    長い冬の終わり 「暖かくなってきましたね」  そう、柊さんが言うので、俺は手を息で温めながら反論した。 「そうですか? 昨日なんかもう少しで雪になるらしかったですよ」  柊さんは目の前の木をなでながら俺に言った。 「この木が花を咲かす準備をしていますから」  そう言われて目を向けると、その木には小さいけれどつぼみがふくらみはじめていた。 「人間より樹木の方が敏感なので、毎年感心してしまうんです。そうだ。 母からふきのとうが送られてきたんです。食べませんか?」 「俺、山菜の味ってよくわからないんです。ただの苦い野菜にしか思えなくて」 「てんぷらにするとおいしいですよ。作りますからきますか?」  そう言われて、俺は彼の家に行った。 「はい、どうぞ」  目の前に出されたてんぷらは、揚げたてでとてもおいしそうに見えた。 「昔、食べ...
  • 16-629
    Q.あなたの恋人のどこが好きか語ってください え? 恋人のどこが好きか、ですか……そうですね、えーっと、ちょ、ちょっと待ってください。 あれ? どこだろう。どこかあるはずだよなあ……うーん困った。思い付かない。 だいたい彼はとんでも無く自分勝手で……え? ええそうです彼です。それで僕はもう毎日彼に振り回されてばかりなんですよ。 昨夜だって、僕は翌朝早いからすぐ寝るって言ってあったのに、0時近くになって急にDVD見ようとか言い出して……。 明日返さなきゃダメだから一緒に見たんですけど、これがホラーでめちゃくちゃ怖くてですね、見終わった後眠れなくなっちゃって。 布団の中でまんじりともせず過ごしてて、ふと横を見たら、幸せそうな顔して眠っているんですよね、彼が、涎垂らして。 もう本当かわいいなあ……って。おかげで今日は寝不足なんですけどね。 あと一昨日とか僕が知人のところに...
  • 28-629
    春なのに、お別れですか? 学校を出れば、そう思っていた。 あの日不意に掴んでくれた手と、焦ったような表情と、熱すぎる指先がきっとまた僕を呼んでくれるのだと。 そう信じていた、自惚れていた。 『卒業おめでとう、元気でな』 別れの言葉はあまりにも短く無機質で、音も無かった。 白い画面に浮かぶその文字を見つめては、卒業さえしなければと思い続けた。 それだけが繋がりだなんて、知らなかったから。 卒業したら、そう思っていた。 耳にする懐メロに、僕はそんなことにはならないと強がりながら迎えた春は、寂しくて寒くて、空が青かった。 「…さよなら、先生」 一人、部屋で呟いた声に涙が落ちる。目の前があっという間に滲んでいく。 叫ぶような僕の息に、鳥の声がなにか、応えた気がした。 美形で甘えたで淫乱で喘ぎすぎ、な攻。
  • 18-629
    水着 「大丈夫か……?」 気ぜわしげな声が意識を浮上させた。 無意識に付け根を擦っていたのを見咎められたらしい。 俺は慌てて膝から手のひらを離した。 この時期の雨はどうしたってしくしくと古傷を刺激する。 「いや、何でもない。少し冷えたかな」 「毛布でも取ってこよう」 言い終わらぬうちにリビングを出ていったアイツに、俺は胸の内で毒つく。 必要ならば自分で取りに行ける。俺にだって脚はある、……作り物ではあるけれど。 田舎の漁師町に育った子供らのすることなど決まっていた。 毎日毎日。飽きもせず海に飛び込み、これでもかというほど陽に焼け遊んだ。 15の誕生日にも変わらず海に出掛け、 『俺達成長しねーな』 なんて笑い合っていた。 けれども。 岩場の影の見掛けぬ船に。 馬鹿だった俺はアイツが止めるのも聞かずに近付いて。 今思えば密漁船だったのだろ...
  • 7-729-1
    死亡フラグからのハッピーエンド 「ああ、随分昔よりも夏は暑くなったなぁ。  といってもあの頃ァミサイルで家が燃えて  夏でなくとも十分に暑かったがな。」 くくっと隣に住む爺さんは歯を見せて皮肉そうに笑った。 爺さんが出してくれたスイカに被りつき サンダルを履いた足をぶらぶらさせた。 「坊主、うまいか。」 蝉の鳴き声が遠く響く。 うん、と頷くと爺さんは目をくしゃっとさせて、 そりゃいい、と笑った。 「お前さんはよく焼けてるな。  野でも山でも駆け回ってんだろ?  俺ァガキんときゃ体が弱くてな、  なまっちょろい体に真っ白な色してたよ。  そのせいで戦争にさえ行けなかった。  ま、そのおかげで今もこうやって生きてんだけどな。」 そういった後この爺さんの憧れの源さんの話が始まった。 何度も聞いたよと訴えても何度でも聞け坊主、 と理不尽に諌められるので黙...
  • 7-429-1
    Mなのに攻×Sなのに受 「公の場で糞の匂い振りまいてんじゃねぇ。おとなしく下水を流れてろよ糞は」 初めて彼に出会ったとき、彼は俺(とその他数人)を睨みつけて、そう言った。 小柄でまるで地上に舞い降りた天使のようなその容貌と裏腹のクールな低音ボイス。 俺たちは、そう、確か4~5人いて、それなりにそれぞれ刃物などを隠し持っていて ちょうどその時小金を持ってそうなカモを路地裏に連れ込んで、圧倒的に優位な立場から 「交渉」を行っている最中だった。 にもかかわらず。 わけのわからぬ威圧感、有無を言わせぬ命令口調。…何よりそのあまりにも冷ややかな眼。 「本当に自分が糞であるかのような心地になった…」 と、後にその場にいた一人が語っていたが 俺はと言うと、まるで聖なる雷に心臓を貫かれたかのように…生まれて初めて味わう 甘美な痺れに、頬を染め、呼吸が浅く速く...
  • 27-159-1
    どこか狂ってる人とその彼をうまく扱える人  リュウヤが白衣のまま玄関に倒れこんできた。  疲労困憊、顔面蒼白。まさにそんな感じで。俺は慌てて駆け寄った。 「た、だいま」 「おい!リュウヤ!」  蹲ったまま息を荒げているリュウヤの顔を覗き込むと、リュウヤは思いの外強い眼光でこちらを見た。  そしてもう一度、言い聞かせるように言う。 「ただいま」  やれやれ。言いたいことはわかった。 「……おかえり。大丈夫なのか」  そう言うと、リュウヤは満足そうにニヤッと笑った。  こいつは俺が「おかえり」と言うのを聞くのが好きらしい。  たまに言い忘れると、「おかえり」と言うまでこっちの話を聞いてくれない。 「大丈夫。根を詰めすぎただけ」  そう言って立ち上がろうとするのを押しとどめる。 「待て。肩貸すから、よっかかれ」  よほど辛いのか、素直に肩に手を...
  • 27-169-1
    ノリで女装しちゃった攻めと茶化して褒める受け 「白と赤、どっちが似合うと思う?」 「うっへあッ!?」 随分と情けない声を出してしまったが、 目の前の可愛い子ちゃんがいきなり男友達と同じ声で喋ったとしたら みんなこんな感じでかっこ悪くなるんじゃないかなぁ、とオレは思う。 「おっまえッ! マジ何してんの!?」 「女装。今度の文化祭、男子ミスコンやるでしょ。  今日ノリで"優勝目指す"って言っちゃったから」 「文化祭、明後日ですけど!?」 「うん。だから、協力求む」 驚くオレとは正反対に陸人は無表情でコクコクと頷いた。 この進藤陸人と言う男。中性的な可愛らしい見た目と、 物静かで落ち着いた性格とは裏腹に案外ノリが良く 日常的に真顔でボケをかますような天然モノの変人だ。 今みたいにいきなり突拍子もない行動を取り始めるのも珍しくはない。 ...
  • 27-669
    不思議ちゃん受け 「俺、三崎先輩の事が好きかも知れません」 「そうか、ありがとう」 「はい」 夕日が眩しい部活の帰り道、隣を歩いていた後輩の司がぼそりと呟いたので視線を隣に向けたが、 司は前を見たまま、こちらを見ることもなくいつもと変わらない無表情で歩いていた。 口数の少ない彼は他人との会話を億劫と感じているのか、普段の会話からして自分の意思を一言伝えただけで会話を終わらせる癖がある。 その所為でチームメイトに誤解されている点は多いのだが、本人がそれを苦に思っていないのだから たかだか部活の先輩である自分にはそれ以上何も出来ない。 せいぜい、こっそりと彼の言動にフォローを入れるので精一杯だ。 「……」 「……」 「……ん?もしかして、今のは告白か?」 「はい」 不自然なニュアンスに疑問に感じ、思わず足を止めると同じように足を止めて、変わらず前を見たまま頷...
  • 27-609
    アラビアン アラブジャンルはそこまで詳しくないんだけど、アラブではなくアラビアンな部分にきゅんと反応してみた 受けはアラブの王族の第一皇子 ある日皇位継承で対立する第三、第四皇子あたりの差し金によって攫われてしまう 目を覚ませばそこは801盗賊のアジト 闇市に売られてしまう事になった皇子を、品評と称して手に掛けようとする801盗賊 襲われ意識が朦朧とする中、偶然手にした盗賊たちの盗品の中にあるランプから煙とともに現れるランプの魔人 「我が主よ、そなたの願いを三つ叶えてやろう」 状況からして当たり前だが盗賊から助けてくれと願う皇子の願いを叶え、一瞬で盗賊の姿はミンチに しかし心優しい皇子は自分を陵辱した盗賊といえど、命を奪ったことを悲しみ盗賊たちの墓を作る 「何故あのような下賤の輩の死にまで涙を流す」 「彼らも私の国の民だ」 今まで自分を手に入れてきた主たちと...
  • 27-119-1
    攻めが受けを語る 投下しようと思ったのに躊躇してたら寝ちゃってた 攻めが受けの家族長期不在の実家に帰えるところから始まります ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 攻「あれ?お兄さん帰ってたんですか」 受兄「おう!お前さあ…昨日のまんまだったぞ、ベット」 攻「はい?あ!すみません!昨日、その…そのまま寝ちゃって…」 受兄「いやいや弟を(性的に)可愛がってくれてどうも。で、あのツンツン弟ってどんななの?」 攻「そっそんなこといったら怒られます!」 受兄「いいじゃんここだけの話だからさあ~」 攻「言いませんよ!」 受兄「実は俺、彼氏が出来てさ、どんなことしたら喜んでくれるか知りたいんだよね」 攻「え?そうなんですか?…絶対内緒ですよ?」 受兄「うんうん俺のために人肌脱いで!ぁ」 攻「まあ僕が一番嬉しいのは受のおねだりですね。ちょっと焦らしただ...
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