*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「28-419」で検索した結果

検索 :
  • 28-419
    年下の彼 ガチャリバタンガサガサパタパタと、それまで自分一人で静かだった空間が騒がしくなった。 「せんぱーい!酒とつまみその他買ってきましたよー!」 「はいはいお疲れ様。おつまみはここ置いといてね。お鍋ももう出来るから器とコンロ、テーブルに出しといてくれる?」 来たばっかりで悪いけど、と付け足してから僕はまたお鍋に向き直る。 僕が何も言わなくても勝手知ったる他人の家とばかりに、鍋に使う食器の位置もコンロの置き場所も熟知している彼はいそいそと食事の準備を始めた。 一年前、最初に彼を招待した頃は逐一“これはここ”と教えていたというのに…と少し感慨深い。 「先輩の卒業にかんぱーい!ついでにいただきます!」 「ふふ、ありがとう」 彼が買ってきた焼酎を杯に注ぎチンと軽やかに音を重ねる。美味しそうにぐつぐつ煮える鍋を、二人で囲んだ。 三年の時に同じ学...
  • 8-419
    同じ月を眺めている 眠れない。 自分の眠りがこんなにも浅かったのだと忘れていた。 いつも、アイツがいたから。 アイツの気配はいつだって心地よかった。 寒い季節、隣の温もりは自分を眠りに誘った。 いつだって一緒に夢を見た。 あの日までは。 いつもと同じようにアイツの横で眠りに落ちた。 けれど、何だかいつもとは違って。 顔に近づく気配にうっすらと目を開けた。 そして、唇に触れる何か。 目があった瞬間、アイツはビクリと体をこわばらせた。 何も言わずにアイツが立ち去った後で、ようやくキスだとわかった。 その日を最後にアイツはいなくなった。 アイツといるときはほとんど見ることのなかった月。 今は満ち欠けが追える程だ。 この月に願いが届けばいいのに。 アイツに、願いが届けばいいのに。 あの日、最後だと思って彼に触れた。 拒絶される...
  • 18-419
    泥棒に入る家を間違えた  俺は今絶体絶命のピンチに陥っている。  明らかに泥棒に入る家を間違えた。  入り込んだ先には誰も居ないはずだったのだが、開けた扉の向こうには―――。  「……お前さー、ちゃんと下調べくらいしろよ」  いつも俺を追い掛け回している刑事が呆れ顔で、しかも歯ブラシなんて咥えたまま佇んでいた。  「お前くらいだろ。毎回毎回追いかけられても全く懲りてないの」  予想もしていない状況に俺の頭はすっかりついていけなくて、まるで金魚のように口を開閉させるばかりだ。  「あ…、ちょっとそのまま待ってろ」  そう言ってアイツは扉の向こうに消えていった。  い、今の内に逃げないと!  目の前から姿が消えたことで、ようやく頭が働き出した。  「だから待ってろって言っただろ」  出ようと後ろを向いたところを、襟首をむずっと捉まれた。  「どうせ隣の家にで...
  • 20-419
    あと少しだけ待ってて 2001.3.16 「今日、久しぶりに君に会った。 随分と間が空いてしまって申し訳ない。元気なのは元気なんだが、足の調子が良くなくてね。 君が綺麗だと言ってくれた手も、ほら、こんなにも老いぼれてしまった。 そういえば、今朝、庭の桜が蕾を膨らませていたよ。もうすぐ開花するだろうか。 君に見せられないのが残念だ。」 1953.4.2 「今日は君と桜を見に行った。来年も君と居たい。」 1951.5.10 「お互い皺くちゃの爺さんになるまで一緒に居ようと言われたとき、恥ずかしくて笑い飛ばしたけど、本当は嬉しかった。 ずっとずっと君と居たい。」 1952.6.23 「近頃、君は変な咳が続く。心配だ。」 1961.6.27 「まだ君のところへは行けない。会いたい。」 1974.7.1...
  • 1-419
    たまねぎ×長ねぎ 今日も一人の仲間が部屋から連れて行かれて原形をとどめないほどに切らて殺された。 自分にもすぐにそのときが来るのを俺は知っている。 これは俺達の運命なのだ。 新しい奴が部屋につれてこられた。 俺の上にそっと寝かされたそいつは、まっすぐに伸びたその緑色の髪をドアで折り曲げられて ずいぶん怒っていた。 そのプライドの高さ。美しい髪。真っ白なすっきりとした目鼻立ちの顔。 俺は一目で恋に落ちた。 その夜彼は一度外に出され、その自慢の髪をバッサリと切られた。 短くなった髪でも十分に彼は美しかったが、彼は一人静かに涙を流していた。 口下手な俺は掛ける言葉を見つけられず、ただ彼の涙を見ているしかなかった。 翌朝俺は熱湯に溶かされた味噌の匂いで目覚めた。 「味噌汁か・・・」 彼はまだ無事か?と上を見れば、まだそこにいた。 だが、それ程に神は優...
  • 7-419
    自分の萌えを熱く語れ!  皆さん今晩は。 萌えについての勉強ですが、今日は『自分の萌を熱く語れ!』というテーマで少しお話しをしたいと思います。  大きく分けて属性というものは装備系統と基本系統にわかれますが、属性は日々誕生し、増え続けるものであります。 その多くの属性を全て理解することは不可能に近いと思いますが、理解を広げることにより自分自身をより深く理解、分析することが出来ますし、また新たな属性を発見する手助けになると思います。  たとえば青木君、君の萌え属性は、この用紙には猫耳と書かれていますね? 中にはもとから生えている物でないといけないという方もおられますが、猫耳というのは系統に置き換えると装備系と言えるでしょう。 何の変哲もないキャラや人物でも、そのアイテムを付加することによって簡単に萌えるキャラや人物にレベルアップするというものです。 猫耳に代表され...
  • 4-419
    皇帝ペンギン 「ほら、あっちゃん見て、すごいよ!」 頬を上気させた従兄弟が、今にも走り出しそうな勢いで俺の袖を引いている。 従兄弟の目指すガラスの向こうには、寒そうな氷の上でのんきな寝顔を晒す皇帝ペンギン。 あーあー、目ェ輝かせちゃって。 好きだとは知ってたけど、こんなに喜ぶんならもっと早く連れてきてやればよかった。 「かーわいいなぁ。よちよち歩いててさ、赤ちゃんみたいだよね~」 かわいいのはお前の方だよ。ああクソッ、その笑顔、無理して会社休んだ甲斐があったってもんだ。 「…ねぇ、あっちゃん。」 突然、コツンと水槽ガラスに額を当てて。 「転勤しちゃっても、また来ようね」 明るい声とは対照的に、ぎゅっと手のひらを握られた。 「…帰りにぬいぐるみ買っていくか」 明日から居ない俺の代わりに、お前が寂しくないように。 でもな孝平。俺の転勤先にも、お前...
  • 3-419
    スターの恋 「おい、ドア開けろ!部屋に入れろよ!ていうか服!!服返せよ!!」 都内某高級マンション一室の廊下。 扉のドアを外からガチャガチャやりながら、声を殺しつつ必死に叫ぶ不審な男が居た。 彼の名は工藤雅也。今や歌にドラマにバフラエティーにと、多方面で人気を誇るアイドルであり その名を知らぬ者は居ないといって過言ではないだろう。 しかし今の彼には大スターの面影は微塵も見られない。というのも彼は今現在、世にも奇妙な格好をしていたからだ。 乱れた髪に上半身裸、下半身パンツ一丁で靴下着用。そして何よりも目立つのは顔から胸にかけてこびりついた、精液。 「おまえっ!手でしてやるだけだって、約束しただろ…!卑怯だぞ…!」小声でドアに向かい怒る雅也は涙声だった。 まあ思えば最初から罠だったのだ。 雅也もデビュー当初は五万といた若手アイドルのうちの1人だった。 多少人...
  • 6-419
    催眠術でたぶらかす 隣で寝ている彼。 昨日あんなに乱れて、求めて、溺れた彼。 ベッドシーツは昨晩の情事の余韻に乱れ、空気は甘く気怠く体にまとわりつく。 欲しいから、何もかも欲しいから、どんなことをしても彼が欲しかったから。 卑怯だと知っていたけれど。欺瞞だと分かっていたけれど。 それでも、使わずにはいられなかった。 この眠りから覚めたら、彼はきっと離れていってしまう。 無理矢理彼の心の内を暴き立て、淫靡に、卑猥に、深層意識をかき乱し。 そうやって手に入れたものは後悔と、行き場のないさらなる愛情。 彼が、微かに目を開けた。眩しそうにこちらを見る。 手放すものか。商売道具に手を伸ばし、彼の目をのぞき込む。 「…あなたはだんだん…」 vvvlove(ノ^^)八(^^ )ノlovevvv
  • 9-419
    相手を「さん」づけで呼ぶ 「あのさぁ、もう付き合って半年になるんだし先生はやめようよ。  だいたい俺、別にお前の先生じゃないし。好きに呼んでいいからさ。」 ある日突然、俺の恋人がそういった。 確かに、彼の言うことは正しい。 俺たちの出会いが医者と看護師なんて立場だったから、ついそう呼んでしまうんだけど。 職場でならともかく、普段そう呼ぶのはおかしいってのはわかってた。 でも、外で呼ぶ機会がそうあるわけでもないし、ついそのままになっていた。 そもそも、何て呼べばいいんだ? 「もう、呼び捨てでもいいって。」 悩みが顔に出ていたらしく、彼にはそう言われたけど。 俺より年上で、キャリアなんてずっと上で。 憧れと尊敬の入り混じった想いを抱えている相手を、呼び捨てになんか出来るわけがない。 でもなぁ、苗字で呼ぶのは他人行儀だしなぁ。 あとは、「くん」づけか...
  • 5-419
    共依存 ふと後ろに何か気配を感じて、振り向く前に声が上からかかってきた。 「何読んでんすか、センパイ。心理学?うわっ」 「なんで、何が、『うわ』なんだよ」 ページに目を落としたまま応えると後ろの気配が横に移動する。 ギイイと音を立てて椅子を引きずり、彼は座った。机の上で手を組んで、俺の本を覗き込む。 「いや、いかにもアンタが読みそうって思って」 「部活はどうしたよ」 「え?雨降ってるじゃないすか」 「……」 「たまには休まないと。面白いですかセンパイ、こういう本…」 言いながらさらに身体を傾けて、覗いてくる。おい、読めません。あ、君左巻きか。…。 「…」 「…君が読んでもつまらないでしょ。しかも途中から」 「…なんか、これ、アンタと滝センパイみたいっすね」 「ハア?」 「『きょういぞん』」 「…」 これ、ここ、と彼は一文を指しているらしい。うん。...
  • 2-419
    日本人×独逸人 「今日残業になってしまったので…すみません」 言いつつ男は、我ながらちっとも済まなそうではないな、と思った。声に感情を出すのが苦手だ。 すると電話口の向こうでも、抑制の効いた声が、構わないから仕事を優先してください、と言ってきた。 もう一度謝り、電話を切る。ため息が出た。 仕事を優先しろと言われた以上、もしこれで無理をして会いに行ったら、 きっと彼は男を軽蔑するだろう。以前同僚にいたフランス人が同じことをした時、 自分の役目を果たしもせず恋愛事にうつつを抜かす人間は、もっとも軽蔑すべき対象だと 童顔に皺を寄せて言っていた。彼の母国ではそんなことは有り得ないらしい。 久しぶりの逢瀬になるはずだった。本当は会いに行きたい。 けれどやはり自分も、与えられた職務を全うすることが優先だと思ってしまう。 どんなに辛くとも、果た...
  • 19-419
    似た者カップルと正反対カップル 「俺は辛いのダメだって、何度も何度も!何度も!!伝えてんだよ。  そろそろ通じたかなって思ってたのにさ、あいつ昨日の夕飯何出したと思う。  カレー、それもド辛口!口入れた瞬間、火花散ったよ、目の前で」 「君のド辛口は、世間的には中辛だと思うけどな。食べられたの?」 「あんなの食える訳ないじゃん!牛乳で薄めて…、そんでも辛かったから、あと半熟卵作って貰って……」 「結局食べてるじゃない」 「……腹減ってたし、どうにか食ったけどさあ」 「うち、二人ともカレーにはチーズ派だなあ。とろけるチーズ試した?」 「試した試した。美味しかったから勧めたんだけどさ、何なのあいつのカレーに対する情熱。  『カレー様にトッピングなんて失礼だろ!』って頑なに拒否。意味分からない」 「あー……、今すごくイメージ湧いた」 「あんたんトコは良いよね。俺、味覚...
  • 28-469
    プリクラ 「よし、プリクラとろうか」 UFOキャッチャーに熱中していた俺を、アイツが引っ張ってきた。 「待てって、あのピ○チュウがあと2回で取れるんだってば」 「時間ないんだから急げって!」 脇から手を回されて強制送還。ああ、俺のピ○チュウが。 ……時間がないのは分かってる。電車の時間、あと30分だってことも。 だから何か記念になるものを残したいんだってこともわかってる。 あんなゴツイ面で可愛いもの好きだから、ぬいぐるみでもあげようと思ったのに。 アメリカでも人気なんだから話のとっかかりにはなるだろうに。 「ほらUFOキャッチャーなんていつでもできるんだから、入れって」 ぐいぐいと強引にプリクラの機械に押し込まれる。 「お前一期一会って知らないのかよ。ああいういいプライズはなかなかないんだぞ」 「あーもーうっさいなー、いいから撮るぞ...
  • 28-459
    罰ゲームをきっかけに変わった関係 ※女装注意 「まったく、まいったよ」 友人の柴本にそうこぼしたのは、別に奴に助けてもらおうと思ったわけではない。ただちょっと、愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。 「どうしたの?」 「実は罰ゲームで今度のゼミ合宿の時に女装で歌わなきゃいけないことになってさ」 「……それは、大変だね」 そう答えた柴本の様子が少しおかしかったことに、その時の俺はちっとも気付かなかった。 「そうなんだよ。女装自体もあれなんだけど、それよりも服をどうするかが問題なんだよな。  誰かから借りるにしても、俺と変わらないくらいでかい身長の女の子の知り合いなんていないしさ。  着物だったらちょっと小さくてもなんとかなるだろうから、姉ちゃんの振り袖でも借りるかな」 「でも西田のお姉さんって西田の肩くらいまでしか身長ないって言ってなかったっ...
  • 28-489
    希望に満ちた朝 朝になって目覚めた。夜明け前の冬の朝、窓の外には真っ暗闇がまだ広がっているであろう時間。 片隅に押しやった一人用テーブルの上には、昨日の夜食べ散らかした弁当ガラとカップ麺の容器、ビールの空き缶なんかが そのまま雑然と影になっている。 寒くてたまらなかったから大智にくっついて寝た。それで間違いが起こった。 大学に入って初めて親友と呼んだ男の部屋へ、初めてのお泊まり。いったいどっちにより多くの下心があったのか。 飲んでるうちに好きな奴の話になって、お互いに試すような言葉を投げて確信を深めて、それでも勇気が無くてそのまま寝た。 『寒いからそっち行っていい?』は絶好の口実だった。肌が触れた途端二人ともが生唾を飲み込んで、 その音を聞いたせいで告白よりも衝動が先走った。 何も言わずに口づけあって、そのあとやっと「朋希が好きだ」と聞き取れ...
  • 28-449
    リアリスト×オカルト好き 俺はオカルトなんてもの信じない。超常現象なんて言うが、そんなのいくらでも科学で説明できる。 幽霊?そんなもの有り得ないに決まってる。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」なんて言うし。 「カズ、見ろよこれ!ヤバくね?!」 それなのにこいつ、幼馴染み兼恋人の長谷川は大のオカルト好きときた。 今日も俺がそういうの信じてないって知ってる癖に、心霊写真だとか言って別に何ともないものを押し付けてくる。 「はぁ…どうせまたブレてるだけとか木の影とかだろ?」 「いやこれは本物だから!」 読んでいた本から顔を上げもせずに言い切った俺に長谷川は尚も食い下がる。肩に腕を回して、俺が開いていたページの上に写真を落とした。 「…邪魔なんだけど」 「まあまあそう言わずにぃ」 家だから許すけど、外でやったら怒るぞ。 「で?どれが何だって?」...
  • 28-499
    生意気な後輩に手を焼く先輩 「だ・か・ら! どうして白い靴下をはく、ただそれだけのことができないんだ!」 「やる気ないからじゃないっすかね」 へらへら笑うバカの頭を一発はたく。 どうして校則が厳しいことで有名なうちの学校に来たのか疑問なレベルで、こいつは校則違反常習者だ。 だから毎日下級生の指導担当の僕が呼び出されては指導する羽目になる。 「御託はいい、やる気を出せ! お前は張子の虎か!」 「出していいっすか?」 表情は相変わらずへらへらしているが、心なしか目が鋭くなった気がする。 「できるなら最初からやれ! そもそも何でこんなに違反ばっかりするんだ!」 それはもう、校内新記録を塗り替えるレベルでひどい。むしろ狙ってるんじゃないだろうか。 「何でって、そりゃ違反する度に先輩と二人っきりでデートできるし」 「……は?」 何を言い出すんだこいつは。 「怒り狂...
  • 16-419
    わんこ攻めとへたれ受け 後輩の園田はわかりやすい奴だ。 いつも好奇心に瞳を煌めかせ、楽しいこと嬉しいことを見つけるとぱっと顔が輝く。 理不尽なことを見れば真剣に怒る。 他人が困っていれば共ににおろおろし、人の悲しみに一緒になって涙を流す。 何かに落ち込むことがあればショボンと項垂れるが、 前向き思考で立ち直りが早く、すぐにまたにこにこと顔を輝かせる。 俺に何故か懐いていて、先輩先輩とまるで子犬がじゃれつくように俺にまとわりつく。 そんな園田を俺は煩いと思うよりむしろ可愛く感じていた。 楽しげに笑うその姿が傍にいないとなんとなく寂しく感じるようになっていた。 だから、 「萩野先輩、俺、先輩のことが好きなんです!俺の恋人になってください!」 真っ赤な顔で真剣にこちらを見つめる園田に、 「お、おう」 つい、肯いてしまったのだ。 もちろんその言葉に嘘はなかった。...
  • 25-419
    昔、あるところに 昔、あるところに世界を護った孤独な竜がいました その竜は優しい竜でしたがとても大きく強かったので 小さな人間達にはどうしても竜が恐ろしく見えてしまいました ある日その竜の巣に一人の旅人が転がり込みました 全身傷だらけで今にも息絶えてしまいそうな旅人は言いました 『自分は世界を脅かす恐ろしい事実を知ってしまった  これを皆に伝えるまでは死ぬ訳にはいかない  不躾な願いとは分かっているがこの巣でしばし休ませて欲しい』と 竜はその願いを聞き入れました、旅人の瞳が真実を物語っていたからです 旅人は介抱のお礼代りにいままでしてきた旅の話を沢山しました 年中雪がふる国の話、夜の明けない街の話、双子ばかりが住む島の話 魔法が発達した都市の話、そしてこの世界に迫る闇の話 幾分か元気になった旅人が巣を立つ前日の夜、竜は旅人に聞きました 『お前は私が恐ろしく...
  • 23-419
    まとも×電波 「仲哀天皇からの電波を受信しました。あなたは自分と結ばれるべきなのです」 「はあ?」 部活を終えて体育館脇の水道で手足を洗っていたら学年随一の変人がやってきた 確か歴史研究部だったよな。こないだ同級生の同じ部のヤツから話を聞いた なんか馬鹿なオレにもすぐ分かるようなマジキチな仮説を大マジで唱えたらしい 「モーゼもキリストも仏陀も孔子もムハンマドも全て日本人なのです」 「漢字も楔形文字もひらがなとカタカナを参考に発明されたものです」 「古事記と日本書紀を参考にしてヘロドトスは『歴史』を司馬遷は『史記』を書いたのです」 「アレクサンダー大王は神武天皇、始皇帝は応神天皇なのです」 …………なんか似たようなことを言っている新興宗教があったような気がするな 無視に限る。無視。無視……オレはそそくさとその場を後にしようとした …………ついて来やがる。うぜー...
  • 13-419
    倒した戦闘員のマスクをはいでみたら マスクの下から、見慣れた素顔がご対面。シュールな展開だ。 俺は衝撃に打たれ、地面に組み敷いた黒づくめの男を呆然と見下ろした。 「えーと、師匠……?」 「よお。久し振り」 「あ、どうもご無沙汰してます……ってアンタ何してんですか!?」 「見ての通り、戦闘員」 「……」 師匠だ。間違いなく師匠だ。 一年前にふっつりと消息を絶った師匠が、敵にまぎれて襲いかかってくるなんて。 空白の一年間に、一体何があったのだろうか。 沈黙に耐えかねたのか、師匠はふにゃりと笑って口を開いた。 「いや、不肖の弟子がしっかりやってるかなぁと心配して、ちょっと様子見に」 「それは、半分嘘ですね」 「半分は本当だ」 「で、もう半分は?」 「あっ!痛たたた……さっき蹴られたところが……肋が折れたかも…痛たたた」 上からどいてやると、師匠は痛い痛いと...
  • 21-419
    まわし 327 名前 風と木の名無しさん [sage] 2016/02/17(火) 17 54 20.61 ID hY801abL0 まわし ああ、またまわされちゃった。 僕がもっと魅力的だったら、まわしさんもGJをつけてくれるのかな。 何が足りないの? 僕もう萌えがわからないよ、まわしさん。 ねえまわしさん、一言でいいんだよ。 ねえ、まわしさん。 まわし
  • 24-419
    いつもと違うお父さん ぼくのおとうさん いちねんさんくみ さいとう りょうた ぼくにはおかあさんがいません。 だけどおとうさんとおにいちゃんがいます。 おにいちゃんはほんとうのおにいちゃんじゃないけど、いつもおうちにいます。 ぼくは、おとうさんもおにいちゃんもだいすきです。 おとうさんがおしごとでおそいときも、おにいちゃんがあそんでくれます。 このまえおとうさんとおふろにはいったとき、おにいちゃんがはいってきました。 ぼくはたのしかったけど、おとうさんはおかおがまっかでした。 なんだかいつもとちがって、おもしろかったです。 おにいちゃんはぼくたちのかぞくです。 これからも、かぞくさんにんでなかよくしていきたいです。 矢追小学校、1年3組の教室 授業参観で保護者が見守る中 元気よく発表された作文に スーツ姿の二人の男性が顔を真っ赤...
  • 14-419
    無口、無愛想、世俗離れ 「何だって客人に愛想のねぇ主人だなあ」 「…………」 「まあいつもの事だが」 勝手に上がり込んでくる浪人をもてなす由はないとでも言いたそうに、男は瞼を伏せただけだった。 険しい山奥の小さな屋敷。ここでこの家主は一人句を詠み書を書き綴り、土を耕しては日々を営んでいる。いつからそうしているのか知らぬ。 ある時浪人が山越えの道に迷い、夜半過ぎに助けを求めこの屋敷の戸を叩いたときから、この主はここにこうして在った。 警戒とも歓迎とも違う、ただただ愛想のない簡素な招き入れに、浪人は訝しんだ後、この男に興味を持ったのな俗な興味をぶつけることもやめにした。 今はただ、町で見つけた魚の干したものや甘い菓子、また浪人の大好きな酒と肴など、ここでは手に入らないだろう物を土産とし 「今日はお天道様がよくみえるねえ」 「そろそろ蝉の鳴くのもききおさめだねえ...
  • 11-419
    動かないで 「動かないで」 小さく、抑えた、懇願する声。 え、なになになにが起こったんだ。 動かないでって、俺はただ喉渇いたから冷蔵庫に行こうとしただけなんだけど。 それだけでも離れてほしくないということなのだろうか。 ちょっと待て、こいつどれだけ可愛いんだ! (顔まで可愛くて言動も可愛いってそんな、) 自分を見上げる必死な顔。奴の両手は俺の腕にすがっている。 正直嬉しすぎるこの状況、しかし混乱して上手い言葉が見つけられない。 やっとのことで捻りだした言葉は結局全く格好良いものじゃなかった。 「え、なに?どしたの」 「コンタクト落とした…」 凄く慌てた顔をしている。 眼鏡家に置いてきたからコンタクトが見つからないと何も見えないのだと言う。 聞きながら、俺はちょっと不貞腐れた気分にならざるをえなかった。 はいはい、そうですよね、...
  • 10-419
    囚人のジレンマ 「ねぇ……寝ちゃった?」 隣からの小さな声。 「……まだ、寝てないよ」 「そか」 そう言うとクスクスと笑いながら身を寄せてくる。 「おい」 「いいでしょ。恋人、なんでしょ?」 「そうだけど」 だけど、今はまずいだろう。 今自分達がいるのはラブホでも自室でもなく古い旅館。 ここにいる理由というのは一般的に言う修学旅行というやつで 周りには雑魚寝したクラスメートがたくさんいる。 「見られたらマズイだろ」 「そうだね。でも、こうしてたい」 そう言いながら腕を回されれば逆らえない。 惚れた弱みは絶大だ。 「寝るまでこうしててやるからさっさと寝ろよ。明日、辛いぞ」 「どうしようかな……」 「おい」 胸に埋められていた頭が耳元に移動してくる。 「ね……シたくない?」 ベッドでしか聞けない甘い声に背筋がしびれる。 「…………だめ」 本...
  • 17-419
    思い出のなかに生きる人と見守る人 会話の途中で目が不自然に揺れたのに気づいてしまった。 テーブル横の通路をトレーを持った集団が通りすぎる。 夕方のファーストフード店。学生らしき客が多く、店内は雑然としていた。 この席もそうだった。 確か、クラス委員長の山本の彼女が可愛いらしいという会話だった。 「で、可愛いって何系よ?」 何も気づかない振りをして話の続きを促す。 「ん、あー…、あっ○ーな?らしい」 「マジか!それは意外なとこきたな」 だよな、と笑う。さっきの一瞬なんてなかったことになった。 これでいいんだと安心する。 たまに見せる表情に本当は気づきたくなかったんだ。 いつも同じ他校の制服を目で追うことも、その似合わないピアスを触る癖も知ってる。 ワックスを変えた時に微妙に避けられていたのも分かってた。 だけど理由は知らない。知りたくもない。 なぁ、も...
  • 15-419
    メンズブラ 「で?これは何なんだ?」 「ブラです」 「で?これをどうしたいんだ?」 「勇次につけ....あたっ!殴るなよ!」 「もう一度聞くぞ?これをどうしたいんだ?」 「勇次につけてもら....ぶへっ!!グーはやめて!グーはっ!!」 「俺を女扱いするつもりか?お前は!」 「してないよ!これ、メンズブラだもん!」 「メンズ...?」 「男性用ブラジャー、メンズブラ。勇次の白い肌に映える黒! セットでこっちのレースの超ビキニブリーフも!」 「お前なあ、こんなの、俺に着せたら楽しいと思ってるわけ?」 「楽しいと思うよ!いや、別に似合う似合わないの問題じゃなくてさ、 非日常っつうかさ。いつもなら絶対しないような格好をさせたらさ、 勇次もちょっと恥ずかしくなっちゃって、頬なんか染めちゃったりして、 『そんなに見るなよ』とか言っち...
  • 5-419-1
    共依存 ある一夜。 村外れのあばらやに一人の旅人が忍んでおりました。 年の頃は十二、三。 透けるように白い肌は、破れた屋根から零れる月光に照らされ、その腕から流れ落ちる朱い筋さえもキラキラと反射させています。 彼は今、訳のわからぬままに「敵でも味方でもないもの」に取り囲まれておりました。 その名を「ニンゲン」という生き物です。 彼も以前は、そう呼ばれた生き物でした。 彼の両親が一年に一度、森に現れる獣を退治すると出掛けるまでは。 …貧しい我が家に一人取り残された彼が、自らが誠の孤独になったことを悟るまでは。 彼は祈りました。 獣を捕えるまでは旅を続け、けして見失うことなく獣に復讐を、と。 獣を追うことが彼の生きる縁になり、年を季節を忘れて、幾年も十幾年も獣は彼の姿を確認し、彼も獣の後ろ姿を追いました。 その内に幾度も通り過ぎた街や村で噂が立ち始めました。 ...
  • 17-419-1
    思い出のなかに生きる人と見守る人 双子の弟が事故でいなくなってしまった。 しばらくして、弟のパソコンを開くと沢山メールが届いている。 全部同じ人物からで、英語だった。 内容は、メールが返ってこないことへの不安がひたすら書かれていた。 弟は最近まで留学していたから、多分そこでできた友達だろう。日本の知り合いには一応連絡をしていたけれど、彼のことは気づかなかった。 僕は弟のメールソフトから、彼に弟はもういないことを告げた。 なのに、未だに彼から毎日のようにメールが送られてきている。 内容は、今日何をしたとか、こんなことがあったとか、そんな些細なことが綴られていた。勉強し始めたのか、短い拙い日本語でメッセージが添えられていた。 「あいたい」「さびしい」「またあいましよ」 彼のメールを読んでいると、まだ弟がここにいるような気がする。 「日本 い...
  • 22-419-1
    知りたがり×隠したがり 「なぁなぁ、受けは俺のどこが好き? ちなみに俺は全部好きだよ」 「ああそうかい」  また始まった。 「受けはいつ俺を好きになった?」 「忘れた」  冷たくしてもこたえず、また問い掛けてくる。 「えー。俺はね、忘れ物して慌ててたら何も言わずブッキラボウに貸してくれた時に、いいなーと思った」 「……」  無視しても同じだ。 「じゃあさ、俺のことどれだけ愛してる? 俺は空よりも広く愛してる~!」 「教えない」 「それじゃあ」 「ああもう、いつもいつも五月蝿!」  怒鳴っても、攻めはなぜ怒ってるのか判らず不思議そうに首を傾げる。 「好きな相手の事は、何でも知りたいじゃないか」 「だからって、何度も同じことを聞くな」 「だって聞きたいんだモン」  口を尖らせ拗ねたように言う攻めに、呆れたように背を向けた。  そうしなきゃ平静を保てな...
  • 12.5-419
    昆虫採集 「……まだ三月の初めだぞ?」 「何が?」 一応確認してみたのだが、神崎はわずかに眉を寄せただけだった。 「昆虫採集つったら夏だろ?」 俺が首を傾げると、今度は少し呆れたような表情になる。 「そんなことない」 「でもさ、セミはまだ地面の下で爆睡してるんじゃねーの?」 「どうして蝉限定……というか、蝉は地中で眠っているわけじゃないから」 淡々と答えながら、神崎は白衣をハンガーに掛けて隣のジャケットを取った。 白衣を脱いだら見た目年齢が少し下がるなあと頭の片隅で思いつつ、俺は声を投げる。 「じゃあ蝶か。それでもまだ早いだろー。菜の花咲いてねえし」 「違う。なんで菜の花……いや。そもそも、俺はただ昆虫採集に出かけるわけじゃないんだけど」 「あれ、違うの?でもムシ採るんだろ?」 「遊びじゃない。フィールドワークだ」 「一緒じゃん」 軽く言ったら睨まれた...
  • 23-419-1
    まとも×電波 血の臭いが嫌いだと言う。 だったらその場に留まっていないでさっさと離れれば良いと薦めたのだが 「そしたら血の臭いで僕だけ浮きだってデフレスパイラルだ。ストレスで血を吐く」 と返って来たので、それきりその提案はしないでいる。 血の色も服が汚れて目立つから嫌いだと言う。 その割にいつも白地のパーカーを着ていることを指摘すると 「服が白くないと僕は夜から出られなくなる。何も見えない。カラスは鳥目だから」 と返って来たので、服についてはもう何も言わないことにして、よく落ちる洗剤を買ってやった。 臭いが付いたり服が汚れたりするのが嫌なら、せめて返り血をなるべく浴びないようにしろ、 そんな忠告をしてみたところ 「努力してみる」 と素直に頷かれた。たまに会話が普通に成立する分、この男は厄介だ。 俺はビルの階段を昇っている。 一階でエレベータのボタン...
  • 10-419-1
    囚人のジレンマ 愛しい貴方へ。 真円だった月が、半分に欠けました。僕らの処刑が執り行われるという新月まであと半分です。 『自分が間違っていた』と一言告げさえすれば、晴れて自由の身になれる事は保証されています。二度とお互いに会えなくなるという一点を除いて。 僕らがいかに不道徳か、非を認め改心しろと説いていた父親も、無駄と悟ったのかここ三日程姿を見せません。 僕は、貴方を愛した事、貴方に愛してもらえた事を決して後悔も恥じもしていません。 だから、貴方と重ねたこの唇で貴方との愛を否定するような真似はどうしてもしたくないのです。 例え命を絶たれるとしても。 ……けれど、貴方はどうなのでしょうか。 約束してくれましたよね。『新月の日に一緒に逝こう』と。 命が惜しくなったりしていませんか? もしかして、僕らの在り方を否定してでも、生きる道を選びたくな...
  • 21-419-1
    まわし 「お前の親父、化粧まわし作ってたんだって?」 「そうだよ」 「あの相撲取りの?」 「うん。脳梗塞で入院してからやめたけど」 「え? そうなの? 大変だな」 「今はだいぶ良くなったから大丈夫」 「じゃあ、今はどうしてんの? お前が作ってんの?」 「そんなわけないだろ。俺は不器用だし性にあわなかった」 「お前、頭がいいからなあ。職人じゃもったいないよな」  それどういう意味?とちょっとだけ反論したかったが、やめておいた。 どうせ他人に言ってもわかるわけがないので。 「なら親父さんの代で終わりなんだ」 「大丈夫。将ちゃんがいるから」 「将ちゃん?」 ----------------------  規則正しく機を織る音が作業所に響く。  俺は彼の手が止まる瞬間を見て声をかける。 「将ちゃん」  将ちゃんがやっと振り向いて俺...
  • 28-449-01
    リアリスト×オカルト好き 「くだらねえよなあ」 出来上がった見本誌を興味なさそうにぺらぺら捲りつつ編集長がぼやいた。 読んでいるのは我が出版社の唯一にして看板の雑誌、その最新号である。 オカルト雑誌なんてくだらない、というのがうちの編集長の口癖だ。 この口癖を聞き続けてそろそろ一年になるが、そのときの俺はその言いようが聞き流せなかった。 「それじゃあ聞きますけど。なんで編集長は編集長なんですか」 「なんだその質問。哲学か?」 「違います。どうして編集長はオカルト雑誌の編集長やってるんですかってことです」 言い直すと、編集長は皮肉っぽく笑ってから答える。 「そんなもんお前、日々の生活の為だよ」 「生活の為に、くだらない雑誌作って世間にバラまいてるんですか」 先月いっぱい取材して二徹までして完成させた記事(『死の世界へ繋がる公衆電話』現地レポート)を 軽んじら...
  • 28-469-01
    プリクラ 「男同士でプリクラってのは恥ずかしくないか?」 「堂々としてれば、そう気にする人はいませんよ」 「しかし…こんなおじさんとで大丈夫か?」 「まだ三十半ばでしょう。まだまだですよ」 彼と知り合ったのは、ゲイコミュニティの掲示板だった。 ヤリ目的でタチネコスリーサイズが踊る中、ただ「誰かと話がしたいです」というメッセージだけが残されていた。 場所も近かったので好奇心で待ち合わせてみると、やってきたのは疲れた顔をしたサラリーマンだった。 誰かと話したいというわりには彼はひどく無口で、佐山さん、という名前を聞き出すのさえ1時間くらいかかった。 それでも、ぽつぽつとたわいない話を続けているうちに、少しずつ自分のことを教えてくれた。 昔、とても大切な幼馴染がいたこと。 その人に友情というだけでは片付けられないほどの想いをもっていたこと。 それ以上好きにな...
  • part28
    part28 年上の幼馴染 ■ 三角関係 大家族×核家族 憧れのスーパースター 許されない二人 ■ 介抱 ■ 恋わずらい 厚顔不遜だけど片想い ヘタレの告白 お風呂あがり わんこ系同士 着膨れ 引退 キスのし損ない ...
  • 28-199
    ハーゲ○ダッツを買い込む客とコンビニ店員 よれっ……と効果音の書き文字をつけたいような姿だった。 コートには雨が滲みて、髪もびしょびしょで、寒いのか顔色も悪くて、目の回りだけが赤い。 深夜2時過ぎの住宅街のコンビニに、客なんか滅多に来ない。ましてや今夜は雨だ。 そこへきてそのサラリーマンらしい男が棚のハーゲ○ダッツを全部、全種類カゴに入れて持ってきたので、普段客に干渉したりなんかしない松永だったが思わず「すごいっすね……」と話しかけてしまった。 「……大好きなんだよ、悪いか」 男が気分を害したようだったので、しまったと思い黙る。ピッ、ピッ、と次々にハーゲ○ダッツをレジに通すと 「……以上、37点で11273円です」 と男に告げた。 男は万札2枚を叩きつけると「釣りはいらない」といった。 「や……あの、困るんですけど」 「だっていらないもん」...
  • 28-319
    明日からずっと一緒 『 「明日からずっと一緒」 あらすじ 主人公の大学生、笹山はじめはある時から奇妙な夢を見るようになる。 その夢に出て来る少年は名前も顔も思い出せないが、どこか懐かしい感じがした。 そして偶然にもその少年―悠宇と出会うはじめだが、その頃から彼の周りに謎の現象が起こり始める。 混乱するはじめの傍に寄り添いながらも徐々に本性を現し始めた悠宇。 果たして彼の目的とは… 登場人物 笹山はじめ 優柔不断な大学生。押しが弱く、押し掛けてきた悠宇に流され同居をすることに。 夢に出て来た少年が本当に悠宇なのか未だ分からずにいる。 周囲で不可解な事件が相次ぎ、犯人が悠宇ではないかと疑いを持つ。  「君が本当にあの子なの?」「俺は君のことをどう思っているのか分からないんだ」 舟橋悠宇 はじめの前に突然現れた...
  • 28-719
    桜の木の下で泥酔した二人。 「だからよぉ、俺はこのままじゃダメなんだよぉ」 「んなこと言ったって、お前元々ダメ人間じゃねーかァ」 見えるのは、提灯に照らされて暗闇に浮かぶ春の花だけ。 聞こえるのは、酒に呑まれたバカ二人、つまりオレとあいつの管巻く声だけ。 いつの間にか他の奴らはどこかに行ってしまって、オレたちだけが地面に寝そべっている。 「なぁ、桜の木の下には死体が埋まってんだってよ」 それまで自分がいかにダメかを熱弁していたあいつが、ふと声を落とした。 「何だよォそれ、どの漫画に出てきたネタだ?」 あいつはオタクだから、時々変なことを言う。茶化すつもりであいつの方に顔を向けると、 「……俺さぁ、お前と一緒に埋まりてぇや」 目が合った、と思ったら、手首を掴まれていた。 「このまま桜が散ってよぉ、花吹雪がどんどん積もってよぉ、なぁんにも見えなくなんだよ。...
  • 28-119
    着膨れ 冬になった途端、こいつは二回りほど大きくなった。 別に太ったとか身長が伸びたとかそういうことではない。こいつの成長期は既に終わっている。 ようするにこいつは、極度の寒がりなのだ。 「…お前今日何枚?」 「うー…五枚、かなぁ」 「着過ぎだろ女か」 「だって寒いんだからしょーがないじゃん…うぅ、もうちょい着てくればよかった…」 もこもこ、そんな擬音が付きそうな格好でまだ寒いと言うか。完全防備にも程がある。 「高校が私服のとこで良かったな、お前」 「寧ろそれで選んだし」 「アホか」 ゆっくりと歩く通学路に俺達以外の姿はない。毎回着替えるのに時間がかかるこいつに合わせて早めに家を出ているから、皆が登校し始めるにはまだ少し早い。 ふと悪戯したくなった。 数歩前を身体を縮こまらせて進むこいつの、赤くなった頬に手袋をしていない...
  • 28-619
    10年以上の片想い 二度目の高校の同窓会で、懐かしい奴に逢った。 二次会に盛り上がる連中を尻目に抜け出して居酒屋に入る。日本酒をちびちびと飲みながら話を聞いた。 あの先生まだ生きてたんだな、二組のあいつ結婚してたんだな、○○は老けたよな、親御さんは元気か… 「しかしもう三十手前か…早いねぇ」 二杯を空にした辺りでどちらからともなく溜息を吐く。 「でも皆元気みたいで安心したわ」 その笑顔と言葉に、泣きたくなった。 変わっていない、“変われない”俺の親友。 今でも忘れられない二年の夏。あの日からこいつの時は止まったままだ。 「部屋、来いよ」 アパートへの道をゆるゆる歩きながら考える。傍には親友がゆらゆら漂っている。 果たして、俺はこいつに言えるだろうか。 あの時からずっと胸に押し込んでいた想いを。あの時言えなかった言葉の続きを。 果たして、俺は聞けるだ...
  • 28-019
    三角関係 拝啓、先生。お元気でしょうか。 こちらはすこぶる元気であります。 唯一文句を言うのであれば、この現代社会には楽な死に方なんぞ言うものが存在し得らないことだけでしょうか。 きっと先生がこの手紙を読む頃には、ぼくはさんざん苦しさを耐えて物言わぬ姿になった後なのです。 誉めろとは言いませんが、痛みは苦手なぼくがここまで頑張ったと言うことだけは覚えていてほしいのです。 ああ、でもぼくが何の考えも無しに消えたのだとは思わないでくださいね。 ぼくは生まれ変わったら星になりたいのです。 アルタイルでもベガでもデネブでもなく、名のない小さな小さな星。それでいいのです。 ぼくはあの天の空の中で小さく光っていたいのです。 なぜそんなことを、と先生はきっと笑うのでしょうね。無意識のうちに握る癖のせいでしわになった白衣の裾を、痕を付けるように、ぎゅう...
  • 28-819
    豆×さや この場合豆は究極のヒモ、さやは何人かの男を抱え込む寂しがり屋のビッチだと言えるでしょう。 豆達は一様にさやに向かって「テメェの価値なんて俺がいてこそのもんだろうが」と言い放ち、 あくまで“自分がお前といてやってるんだ”というスタンスを崩しません。 さやは自身の価値を悟っているし豆達のことを心から愛しているので何も言い返さず、 言われるままに豆達を優しく保護し続けています。 豆達の気まぐれの優しさがあるだけで、さやは寂しさが満たされ生きていけるのです。 豆達はお互いにさやが他の男を抱えているのを知っていますが、さやのことが満更でもないので仕方ないと思っています。 食卓に並ぶ日、さやは豆達と離れたくない思いでいっぱいですが、豆達は最後まで冷たく「じゃあな」と軽く去っていきます。 けれども豆達は人間に喰われるのがどれだけ辛く苦しいものか知っていました。 「俺...
  • 8-449
    派閥対立 仮眠を取ろうと足を踏み入れた休憩室には、既に他の人間が居た。 眠そうな顔で目蓋を擦ってソファにどっかと腰掛けた俺に、向かいの椅子に座っていた相手が声をかける。 「あっ、あのっ! 斉藤先生ですよね!」 弾んだ声音は、随分と若々しい。 興奮しきった目でこちらに話しかけてきたのは、先日転任してきたたばかりの若い医師だった。 紅潮した頬を手で抑えると、勢い込んで俺に告げる。 「俺、学生時代に先生の論文を読ませていただいたんです。 それで、その……すごく感銘を受けて小児科に!お、お話できて光栄です!! 」 よほど緊張していたのだろう。 一息にそこまで言って、ふぅ~っと長い息を吐き出す。 顔は見る見る間にさっきの倍は赤くなり、その心臓の鼓動がこちらにまで聞こえてきそうだった。 俺なんかと話すのにこんなに真っ赤になるなんて、全く何て無駄なことを。 そう思いながら...
  • 8-459
    コスモス・時間旅行者 『――いつか、どこかで出会えるはずだから』 そう言って離した手のぬくもりを思い出す。 時間は差し迫っていた。 国は分裂し、同じ血で結ばれたはずの民族は 明日には武器と武器をつき合わせて睨み合う間柄に。 幼かった俺に、そんな事情を理解できるはずもなく ただ肩に置かれた父の手のいつにない力強さに震えていた。 あの人は最後も俺に笑いかけて、大きな手で俺を包んでくれた。 父は。 旧い名誉を重んじる家の跡継ぎとして、捨てるわけには行かなかった。 家を。そして俺を。 もしあの時、俺という存在がなかったら父はどうしていただろう。 何もかも捨ててあの人に着いていったんだろうか。 日々の糧も安寧すら保証されない放浪の旅に。 何度も父に問いかけようとして、口に出せなかった問いに 答えを出さないまま、今日父は逝っ...
  • 8-489
    嘘でもいい あぁ。なんであんなヤツのこと好きなんだろう。 軽いし、嘘つきだし、時間にルーズだ。 今日だって、あいつから誘ってきたくせにもう30分以上、遅刻してる。 遅れるならメールのひとつ位入れやがれ! ありえない。本当に。 今日はおれの誕生日で、いつも通りなら家族で外食のはずだった。 でも、この年にもなって誕生日に家族で外食なんてダサいかなって思ったし、 なによりあいつが、この日に遊ばないかって言ってきたから……。 まぁ、あいつがおれの誕生日なんて知るわけないし。それでも、嬉しかったんだけど。 あーあ。 おれはみじめな気持ちでおろしたてのブーツのつま先を見つめた。 「いやぁ。遅れてマジごめん。」 軽く叩かれた肩。振り返ると、悪びれない笑顔のヤツがいた。 「……」 怒りのあまり、おれはリアクションもできない。 「いやぁ、おばあさんがペットボ...
  • 8-429
    年上ドジっ子 茶筒を開ければ茶葉をぶちまけ、 急須の蓋は閉めたままでお湯を注ぎ、 跳ねたお湯の熱さに驚いて急須を落す。 あまりに期待を裏切らない行為の数々に、俺は笑いを堪えることができなかった。 背後から突然聞こえた笑い声に、部長が振り向く。 「…黙ってみてるなんて人が悪いな」 ばつが悪そうにちょっと頬を赤らめて、俺を睨みつけた。 「すみません、部長がご自分でお茶を淹れるなんてあんまり珍しかったので」 「どうせお茶ひとつまともに淹れられない不器用者ですよ、俺は。お前代わりにやれ、笑った罰」 そう言って不貞腐れた顔をした部長は半歩身をずらして俺を呼び込んだ。 「はいはい、よろこんで」 「…みんなとメシ行かなかったのか?」 「給料日前の節約生活中でして…部長は弁当ですか」 「いや、俺もカップ麺」 珍しい、と思ったが何となく口には出さなかった。 ガサ...
  • @wiki全体から「28-419」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索