*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「4-299-1」で検索した結果

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  • 4-299-1
    216 ごめん、どうしても萌えたんだ 『出張で泊まる宿は、露天風呂&浴衣をメインにすえて、料理をオプションで頼めるようにしますか?』 部下から送られてきたメールに目を通して、はぁと思わず心から深く嘆息する。 一体、何を考えてるんだあいつは。来月のアレは出張なんだよ出張。 いくら俺とお前と二人だけでどこかに泊まるのが初めてだっつっても、所詮仕事なんだっての……。 ビジネスホテルを二部屋予約しとけって指示しておいたはずなのが、何をどうすれば露天風呂付きの旅館に変わってるんだ。 眩暈と偏頭痛がするのを無理に気力で押さえ込んで、眼前のキーボードにかたかたと返信を打ち込む。 『セクハラだ』 その素っ気無いほどに短い文面を送信すれば、二分と待たず相手からのメールが返ってくる。 それを開いて確認すれば、俺は益々頭を苛む鈍痛が強くなったのを感じる。 『じゃぁ、これで決定にします...
  • 24-299-1
    何考えてるのか分からない受け 《日本人は何を考えているのかわからない》 というのは、外国人にとって共通認識としてあるらしい。 わからないでもない。 日本には、はっきりと言葉にしないでも空気読めよ的な文化があるから。 俺が今いる大学の寮には様々な国から来た留学生がいる。 英語圏の人間は、世界中どこでも言葉が通じると思ってる。 日本に留学しに来てるなら、もう少し日本語の勉強して来い。 《日本人はミステリアスだ》と言って、 自分の勉強不足をこっちのせいにするなとは思う。 特に俺と同じ部屋で生活している金髪の男には声を大にして言いたい。 《コージは日本人だから仕方がないけど、たまには愛の言葉も言っていいんだよ》 じゃねーよ。 百歩譲って愛の言葉を言うにしてもお前にじゃないから。 お前には言ってるから。俺はお前が本気で嫌いだって言ってるから。 ...
  • 9-299-1
    屈辱 唇が離れ、二人を繋ぐ透明な糸が途切れる。 ほうっと吐いた息が妙に卑猥に聞こえて口元を押さえる。 「もっとしたい?」 その質問に少しだけ頷いて視線を合わせる。 「したいなら、「もう1回して。」って言って。」 「い……嫌だよ。」 そんな恥ずかしい台詞言えるわけが無い。 「嫌だから聞きたいんだよ。」 あいつはくすくす笑って俺の髪を梳く。 「それとも、もうしたくない?」 耳元で囁かれるくすぐったさに首をすくめる。 「……も、っかい、して。」 震える声に耐え切れずぎゅっと目をつむる。 あいつの顔が近づく気配を感じながら、今なら恥ずかしさで死ねるかもしれないと思った。 ========= 何かエロい雰囲気のを書きたかったの。 変人でサイコな攻と、それにおびえつつも離れられず、ついついチョッカイを出すツンデレ
  • 3-299-1
    愛弟子 「どうでしょう?」  日に焼けた額に汗を光らせ、真剣な顔で振り返った加藤に、小杉は無言で頷くと 釜から取り出されたばかりの炭に屈み込んだ。  良く出来ている。加藤が、小杉の元で炭焼きを学ぶようになって、まだ一年にも満たないが 彼は飲み込みが良く、忍耐強くもあった。だからこそ、十日ほど前に仕事を終えた小杉は 次の仕事を加藤一人に任せたのだ。  小杉は、丁寧に選り分けられた炭を二本、手に取って互いに打ち付けた。軽く、乾いた音が 耳に心地よい。本当に、良く面倒を見た、いい炭だ。  代々受け継いだ釜で、五十の声を間近に聞くこれまで、ずっと一人で炭を焼いていた 小杉の元に、加藤が転がり込んで来たのは、つい昨日の事のようなのだが。 「……まあまあだな」  ようやくそれだけ言うと、小杉はシャベルを手に、釜に落ちた細かな炭を掬おうと立ち上がった...
  • 5-299-1
    アリとキリギリス 「だから、俺は言ったんだ。ちゃんと働いておけって」 再三の忠告を無視しやがった大馬鹿は、背中の上で静かにしている。 クソ重いその身体に苛付きながら、俺はぶつぶつと吐き捨てる。 「遊んでばっかいるから、こうなるんだよ、アホ」 その言葉に黙して答えない相手に、ますます苛立ちが増す。 頭上を振り仰げば、空一面に積み重なった今にも雪の降りそうな灰色の雲の山。 ああ、急いで巣に戻らなけりゃ。途中で吹雪くと厄介だ。 そのためにも、自分の足で歩くことすら出来ない無能はこの辺りに捨て置いてしまおうか。 そう思って、その場に一旦足を止める。 奴の身体を地面に放り投げて、その腹を俺の細い脚でガシガシと無造作に蹴る。 それでも、奴は自分から起きようともしない。不平すら、言わない。 「置いてくぞ、馬鹿」 もう一度、蹴る。六本の足で交互に、何度も何度も体中のあちこ...
  • 27-299-1
    ひょろい×筋肉質 リストバンドを買いにスポーツ用品店に行ったら、 レジの前でクラスメートの峰と鉢合わせした。 峰が手にしていたのはダンベルだったので、俺は少し驚いた。 峰は、勉強は得意だが運動は苦手な典型的なインドア派で、 肌が白く体型もひょろりとしている。 女子には案外人気があるようで、クラスの子が「峰くんて中性的で素敵」 「王子様みたいだよね」と話しているのを聞いたことがる。 女の子から「王子様みたい」と言われるなんて、 ラグビー部所属で色黒がっしり系の俺からすれば少しばかり羨ましかった。 そんな峰とトレーニング器具の取りあわせは、だから全くしっくりこない。 「よぉ」 「あ、佐々原…」 「ダンベル、買うの?」 「あ、うん」 「なんか意外だな。お前がそういうものに興味持つの。スポーツとかさ、あんまりやらないじゃん?」 「うん、そうなんだけど…...
  • 18-299-1
    馬鹿が風邪ひいた 吉田はバカだ。 もう中学生なのに、真冬でも半ズボンでTシャツしか着ない。 学校でも、体育の授業もないのに勝手に体操服でうろついている。先生も最近はほったらかしてる。 しかも体育があると、終わった後手洗い場で頭まで洗って、あちこちびしょぬれのまま教室に入ってくる。 去年幽霊の足跡だと思って廊下の水の跡を辿ったら、上履きの中ギュポギュポ言わせて歩いてる吉田でムカついた。 給食の時間は人一倍食べるし、余った牛乳は必ず吉田が持っていく。ゼリーの争奪戦にも出る。 吉田は雨の日でも傘を差さない。穴の開いたボロボロの運動靴で自分から水溜りに突っ込んでいく。 吉田はバカだからあんまり友達がいない。 俺以外の奴らとは喋るというよりバカにされてるか怒られてるかばっかりで、 それを吉田がいつもみたいにニコニコ笑って聞いてる所しか見たことない。(多分何言われてるか...
  • 22-299-1
    さあ、踏め! 「みんなでメシ食った時、どっちかつーとSだって言ってたじゃん」 「あー、思い出した。言ったな。確かに言った。つーかお前も、俺ドMでいいやーとか  適当ぶっこいてただろ」 「……」 「……」 「ともかく、これまで色々しておきながら、お前がサドだってことに気付かなかったのを悔やみまして」 「ちょっと外したすきに、人の部屋で全裸になったと」 「うん」 「ベッドの脚に手錠つないで待ってたと。……わざわざ買ったのかこれ」 「そう。慌てたら鍵すっ飛ばしちゃって、自力じゃ外せなくなった」 「……」 「で、そこの箱を開けて下さい。……ハイヒールです」 「見りゃわかるよ! これも買ったのか!?」 「うちの下駄箱で一番かかと高くて細かったやつ。多分上の姉ちゃんの」 「……」 「それを履いて、俺を思い切り踏んでいいんだよ」 「色々可哀そうだろ姉ちゃんが! サ...
  • 17-299-1
    なんて男らしい 話があると部屋に呼んで、小柄な体をすっぽりと胸に包んだ。 ……堪らない感情からと、顔を見ずに済むという理由のためだった。 「祐一のことは大好きだ……でも、別れよう」 髪にそっと口づけながら、とうとう言った。この3ヵ月、考え続けた結論だった。 同僚から恋人へ、想いがゴールを迎えてハッピーエンドのつもりだったが、人生はそう単純じゃなかった。 人は、恋だけに生きられない。 三十という年齢を過ぎて、社内での責任が重くなり、他の同僚が家庭を築き、 家族や親戚から圧力が高まり…… ありがちな、しかし誰でも直面する壁が俺達に立ちふさがった。 祐一はひとり息子だ。これ以上、俺に縛りつけておく訳にはいかない。 「このまま関係を続けても、俺達は幸せになれない。  このあたりが潮時だよ……素晴らし思い出をありがとう、祐一」 なんとか、重くならずに言えたと思う。し...
  • 4-299
    216 ごめん、どうしても萌えたんだ  都内のオフィス街に位置する蕎麦屋は昼にはスーツ姿の男女で埋まる。  熱い掛け蕎麦を啜りながら、私は向かいに座る上司を見る。 社会人野球で鍛えたがっしりとした身体は黒のスーツに良く似合う。黒々とした短髪に浅黒い男らしい顔つきと傍から見てもいい男だと思う。 しかし気が弱い性格なためか、彼のミスを問うたりするとその顔で涙を浮かべる。  そんな彼は最後まで取っておいたきつね蕎麦のお揚げを箸で掴むと口元を緩ませていた。  ふと、来月に控えた出張の事を思い出す。 「柳川さん」 「ん、どうした?」  最後まで食べ終えた彼は満足そうにため息をつくとお茶を啜る。 「出張で泊まる宿は、露天風呂に浴衣付きで、料理をオプションで頼めるようにしませんか?」  その提案に対して、何故か慌てふためいた。ついでにお茶をテーブルに零した。いつものことなの...
  • 5-299-2
    アリとキリギリス 兄は何もできない。 針を持てば指を刺し、鍋を持てば髪を焦がす。 「あーもう、何やってんだよ。貸せよ」 「ごめん、ごめんねケンちゃん」 そのたび、僕は横から手を出す。 仕事を奪われ、兄は突っ立って泣くばかりだ。 兄は何もできない。 兄は何もできない。 人見知りの激しい兄は友達も作れない。 それどころかいじめの対象になっているようで、毎日どこかしらに傷を負って帰る。 「ケンちゃん、」 「いいから。腕、見せて」 「ごめんね、ごめんね」 血の滲む肘に消毒を吹き掛けると、兄はか細い悲鳴をあげて泣く。 兄は何もできない。 兄は何もできない。 僕がいないと何もできない。 「あ、ケンちゃん、ケンちゃ、あぁっ」 ただひたすら、僕の下で鳴くだけ。 君はキリギリス、僕は獰猛なアリ。 ...
  • 24-299
    何考えてるのか分からない受け その1 憂い顔で物思いにふける受。 攻はそれを、「儚げで美しい」と思う。 だが、実際の受は「帰ったら洗濯しなきゃな」とか、日常的なことで憂いている。 気づかない攻は、「彼の憂いの元凶は俺が断ち切る!」とか、「俺が守ってやらねば」と決意する。 その2 たおやかでのんびり屋な受は、常日頃周りから 「なに考えてるかわからない」と言われる。 攻もその内の一人で、受が困るような事をワザと振り、反応を見ていた。 そんな受が、あるきっかけで攻に心の内を零す。 攻は、ここで初めて受への感情に気づき、その内側に秘めたものに触れた事でカッコいいとかおもったりする。 その3 受はいつも笑顔なのだが、秘密主義でミステリアスな空気を持っている。 攻はそんな受が好きなのだが、やがて秘密が多すぎる事に疑念をいだく。 ある日受は攻に呼び出され...
  • 14-299
    ほのぼの忍者 「拙者、影に生きるもの故、歓待は無用でござるよニンニン!」 「その色々混ざってる日本語を誰から教わったのかきりきり吐け……!」 独学でござると言い切った目の前の男に泣きたくなった。 大体二メートル近い金髪碧眼が影で生きていけるほど日本はまだ無法地帯じゃない。 ネットでは堅苦しい日本語を一生懸命駆使していたはずだ。日本語の響きは綺麗で好きですと、だから間違った 使い方はしたくないと、将来のことなんて何も考えていなかったアホ高校生だったオレを言語学の道へ導いたの はいったい誰だ。お前だ。 「実は拙者、ずっと忍に憧れていたのでござるニンニン」 すいまセーン…ボクウソついてまーしたとか言い出しそうなオレの恩人は空港で出会った瞬間にもうどうしてや ろうかと思うくらい腹立つ言動を繰り返してばかりだ。何せ開口一番「拙者」だ。誰だお前。オレの初恋の相手だ。 「ほっ...
  • 9-299
    屈辱 生まれてきて早二十数年 運動会でも受験でも給食のあまった揚げパンの残りを貰うのも 全部勝ち野ってきた。 俺は"負け"というものを経験したことはない しかしなんてことだ 「はい。オレの勝ちですね」 たかが崩し将棋ひとつに こんな細っこい軟弱男にこの俺が"負け"ることがあるなんて こんな屈辱は生まれてきてはじめてだ 「あーーーーもう!インチキしてんだろお前」 「あなたがガサツなだけでしょう」 「お前この俺様に向かってなんて口のききかたを!!」 「うぜー」 「むっきゃーーーーーーー!!お前今すぐシメてやる」 「ハイハイ勝ってからそういうこと言ってくださいねー」 「!!!!!!!!コロス!!!」 でも、俺が駒の塊を破壊するたびの こいつの憎らしい笑顔を見るのが好きだったりす...
  • 19-299
    見てないようで見てる 「なんだ、もう寝ちまったのか?」 今夜はオールで飲もうって約束してアパートに呼んだのに、同僚の遠野はすっかり夢の中だ。 いつの間に運んだのか、ベッドの上に置いてあったクッションを敷いて寝息を立てている。 俺は半分ほど中身の残ったビールの缶をテーブルに置いた。 テーブルの上には空き缶や食い散らかされたつまみの残骸が散乱している。 あいつコロッケは絶対付けろって言うから、わざわざ買ってきてやったのに…言ったからには全部食えよな そう思いながら食い残しのコロッケを手づかみで口に運ぼうとするとした。 だがその手を、下から伸びてきた手が制止した。 「…食うな、俺の」 「遠野、起きたのか?」 「寝てない…ずっとみてた…」 そう言いながらも声は寝起き特有の擦れた声だ。 「嘘つけ」 そう言いながら俺は、あいている方の手で平野...
  • 4-499-1
    ttp //www.excite.co.jp/News/bit/00091129788010.html「抱擁売ります」 マンションのエントランスに足を踏み入れてゾッとした。 下品な安物の香水の匂いを忘れきれていなかった愚かな自分にだ。 畜生。忌々しくてしょうがない。 「おつかれ」 忌々しいといえばこの男じゃないか。よくもこうノコノコと顔を出せたもんだ。 別れ際家にある包丁全部持ち出して散々脅してやったの忘れたのか。 果物ナイフやチーズナイフまで振り回していた自分が、今考えると滑稽でならない。 「おい、だいじょうぶか。自慢のスーツがヨレヨレじゃないか」 そんな顔してそんな声音で、絡めとろうたって無駄なんだよ。僕だって成長したんだ。 しかしいつもながらお前のタイミングの良さは本当に素晴らしいな。弱りきった最高潮の晩に現れやがって。 お前はタイミングの良さと運の良さ...
  • 4-699-1
    裏切り者 「うわーん、タケルー。ヨシが裏切ったぁ」 ぴーぴー泣きわめきながらカズヤが首にしがみついてくる。 背中を撫でてなだめ、タケルは憮然とした表情で後からやってきたヨシヒロに視線を向けた。 「で、今度は何事?」 「なんもしてねぇよ、俺は」 「嘘つけ、裏切り者のくせに!」 瞳いっぱいに涙を溜めたまま、カズヤは振り向いてヨシヒロに人差し指を突き付ける。 タケルははしたない、とその指を握って、ヨシヒロに目で促した。 「つか俺ァ、カズの『同盟ごっこ』に参加した覚えはないぞ」 「ごっこって言うな!」 「ごっこで十分だ。なんだ『バージン同盟』って、こっぱずかしい」 カズヤの趣味は同盟を組むことだ。それもほとんどが「抜け駆け禁止」を掲げたもので、 タケルとヨシヒロはいつも引きずり込まれている。 同じ先輩(♂)に惚れていたときの『紳士同盟』から始まって、全員フラれて...
  • 9-699-1
    ふみなさい 「ホントに踏んでいいの?俺でいいの?」 「いいって言ってるだろ。早く踏めよ」 裕人と俺が今見つめているのは、パソコンだ。 サークルの連絡と親睦の目的で作られたパスワード制のHPだ。 管理人は裕人。メンバー数50ほどの一大学のサークルのHPにしては本格的だ。 何故か大学の全景、雑多な部室の風景などのフォトコーナー、 メンバー全員のプロフや連絡掲示板、画像アップもできるなんでもBBS、ご丁寧にチャットまで備えている。 webデザイナーを目指している裕人らしくセンス良く効率的に配置されたページは使い勝手が良い。 しかしせっかくのBBSやらチャットは開店休業状態。 週に2、3度顔合わせるのに、わざわざネットにまで出向いて親睦をあたためようなんて輩はそういない。 せいぜいスケジュールの確認に訪れるくらいだ。 なんでもBBSには、裕人のつぶやきや先日行...
  • 6-299
    合併 会議では相手側の一方的な意見しか通らずに 結局俺が在籍している霧咲高校は、桃山高校に吸収合併される事になった。 桃山高校は名前も制服も変わらない。80年の伝統は、これからも残される。 霧咲高校は、俺たちが卒業したらなくなってしまうのに。 教員たちが生徒全員の家を回って謝罪していたが、 正直俺は何も聞きたくなかった。教員たちだって辛いはずだ。 それに、どんなに謝られたって霧咲高校の吸収がなくなる訳じゃない。 憧れて、自分なりに頑張って入った高校なのに。 何だか心に穴が空いたみたいだった。 学校の帰りに駅を降りると、中学の時の友達で桃山に入った川島に久し振りに会った。 「うちの高校、お前んとこと合併するよな」 「吸収だけどな」 当然の如く出てきた話題に、俺は少し複雑な思いで相槌を打つ。 こんな嫌味みたいな事、川島に言っても仕方ないのに。 「・・...
  • 5-299
    アリとキリギリス ある草原に働き者のアリと歌が上手なキリギリスがいました。 キリギリスは歌は上手で姿も素晴らしいのですが、それを鼻にかけて歌ってばかり、自分の緑の綺麗な衣装を見せびらかしてばかりいました。 地味な黒い姿のアリはそんなキリギリスを横目で見ながらせっせと日々働いていました。 さて夏が過ぎ秋になり、冬の足音が近づいてきました。歌ってばかりいたキリギリスもさすがに簡単には食べ物が得られなくなり、またこれまで住んでいた居心地のいい茂みも枯れてなくなってしまいました。 困り果てたキリギリスの近くを、相変わらず働いてばかりの地味な黒いアリが通りがかりました。 「アリ君、僕に食べるものと住むところを少しばかり貸してくれないか」 地味なアリにキリギリスが声をかけたのはこれが初めてでした。 「住むところがなくなってしまっててねえ、もうすぐ冬になるだろ?君には毎晩歌を唱っ...
  • 8-299
    ラブレター 「緊褌一番(きんこんいちばん)」 ふんどしをきつく締めろ。 緩みを許さず、心を新たにし、常に 真剣勝負で物事に当たれ。 必要なのは、覚悟だ。  周囲は早朝の喧騒に満ちていた。それとは真逆に、 友人は静かな様子で言葉を紡いだ。  「昨日は、ゆきえちゃんなる人物から封筒で手紙が 届いたわけだ。  帰ってみたら、机の上に思いがけず置かれてたんだよ。 ピンクの封筒が。いやむしろ桜色だ。薄紅だ。とっさに女の 子の好きそうなリップクリームを思い浮かべたね。ほんのり 香ってきそうな、片手のひらに乗せられるような封筒だよ。 泣くかと思ったよ。この世に女神がいたもんだ。陰ながらオレに 想いを寄せる女神がさ。無論中を見たよ。分るかどれだけ 胸が震えたか。分るか何が出てきたか。ええ?」 「気に入らなかったのか」 「考えてみろ気に入るもんかいらんもんか...
  • 7-299
    HELLO ┌――――――――――――――――――――――― │ │  H へんたいで                        │  E EージャンGジャン最高ジャン的な寒すぎる   │  L ロック魂。                         │  L 六十年代に生まれていれば              │  O お前は大物だったかもしれないな          │ └――――――――――――――――――――――― ┌――――――――――――――――――――――─ │ │  H ヘヴィ級の │  E エロ可愛さには │  L ロビンフッドもお手上げさ☆ │  L ロリエロいその表情は │  O 美味しいおかずになってるZE │ └―――――――――――――――――――――――  ごとりとアイツの手からギターが落ちた。...
  • 1-299
    任侠のおっさん同士 任侠それは男の世界。そして運動部以上に厳しい上下関係と対立の中。 ほのかで、しかし確実な思慕の情を立場上隠しているんだよ… そろそろいい歳で無茶して懲役食らうのもきついが、組のメンツのためなら明日をも知れぬ命。 そんな環境の中。 お互い、チンピラ上がりのころから知ってはいる。 あのころは若かったな、と思い出話をしながら酒を酌み交わす。 こんな時間がずっと続けばいいなと思うのに、ひとたび抗争が始まれば次はいつ会えるかもわからない。 約束もない世界だから。 自分たちはもうそこそこの地位を得て下のものを世話する立場だが。 でも二人でいるときだけは「マサ」「ヤス」なんて若かったころの名前で呼び合える。 こんな日だけは、若い衆を少し遠ざけてのんびり昔話でもしようや… なんつって、どこかストイックでよくないか!! 万能後...
  • 2-299
    中国×台湾 台湾は苛立っていた。 あいつさえいなければ、俺はもっと自由にやれるのに、と。 あいつ――中国は月日の経過なんて考えもしないで、俺を縛り付ける。 俺はもう、何も知らないガキじゃないのに。 あいつに頼らねば生きていけなかった昔とは違うのに。 むしろ、そうむしろいつのまにかあいつを追い越してしまっているのに。 一人になりたい。自分の足で立ってみたい。 あいつの背に負ぶわれ、あいつの影に潜むのはもうたくさんだ。 ならば、無理やり逃げ出せばいいと誰かが言う。 武器を取り、炎を放ち、今までの恨みを散々晴らして、 奴の元から逃げればいいではないかと。 ……それが出来るなら、とうにやっている。 でもそんな大それた事出来る筈がない。 だって、結局俺はひどく姑息で臆病なのだから。 一人前になったのを認めては欲しいけれど...
  • 3-299
    愛弟子 私の元で修行をしている彼は非常に出来が悪い。 小説家になりたいと、私の元に押しかけてすでに一年以上たつが、 いまだにろくな文章がかけないのだ。 私が何度文章の書き方を指導しても一向に改善される兆候が見られない。 てにをはの使用がおかしいだけでなく、いまだに役不足と力不足の区別さえついていない。 しかし、構想だけはなぜか非常に出来がいい。 彼の頭の中に展開されている物語が素直に相手に伝わることができるのは、 その彼自身の口から吐露されるときだけなのである。 ゆえに、彼によって作られる素晴らしい物語を実際に知ることができるのは 他の誰でもない私だけなのだ。 しかし、一方で、いつか彼が小説の文章を書く際に恵まれたときを 恐れている自分も存在している。 今はまだ手に余るほどの才能を知っているのは私だけであるが、 それ...
  • 4-249-1
    普段クールな攻が、泥酔して意外な行動をとるのに、ふりまわされるけど、嬉しい受 酒好きなのに、酒癖が悪いって、最悪じゃないか。 DJイベントで、好きな曲かけまくって、踊って歌って、気持ちよかったのは分かる。 終わった後に、ファンの子やイベント主催者さんからもらったお酒を、移動中の車の中で 飲み干して、さびしい気持ちも分かる。 今日は移動日で、ほぼ一日中車の中だから、暇なのも分かる。 でも、運転手やってくれてるスタッフさんとか、他のメンバーの目もあるんだけど。 「ほら、ユウ、チューしよ、チュー。」 「やめろって、気持ち悪い」 「何言ってるんだよ、いっつも喜んでしてるじゃん。ほら、チューしよって。こっち向けって」 「やめろって! 酒臭い!」 機材車の最後部で、俺達、何やってるんだ。 他のメンバーやスタッフは、前の席に座っているから、どういう顔で、...
  • 24-699-1
    シナモンの効いたアップルパイ 一回行っただけじゃ覚えれない様な辺鄙な場所にある小さな喫茶店。 アンティーク調の落ち着いた店内には珈琲を点てる音だけが響いている。 場所は忘れてしまうけど忘れられない味と評判のケーキは店主の手作りだ。 30代後半くらいの渋目のおっさんがケーキ作りしてる姿は少々笑えるが何せケーキが絶品なのと とある理由で俺は足繁く通っていた。 この店を見つけたのは1年前の冬だ。 受験のため大学に向かってる最中、有ろう事か迷ってしまった俺は 大学に辿り着くことが出来ず戦う前に破れ意気消沈しながらフラフラと彷徨っていた。 寒さと虚しさの中歩いているとふとシナモンの香りがした。 香ばしく甘い香りに誘われる様に出向いた先がこの喫茶店だった。 寒さで真っ赤になった鼻を啜りながら中に入るとそこにあったのは優しく柔らかな笑顔と甘いアップルパイ。 「特別な日にしか...
  • 14-599-1
    悪に立ち向かう少年 少年がどんなにもがこうとも、戒めは緩みもしない。 最大の脅威は今や掌に。世界を支配せんと企む邪悪なる存在はほくそ笑んだ。 身を魔道に堕とし、陽炎のように揺らめく黒い影。憎悪で形作られた悪そのもの。 そんなものに身をやつしてしまうと、今度は輝きが欲しくなった。 「さあ、諦めるがよい。我が僕となるのだ」 「いやだ!お前の言うことなんか聞くものか!」 キッと向けられた真っ直ぐな眼差し。 恐れを知らぬ少年。純粋な魂よ。 自由を封じられてもまだ絶望せぬか。 「ならば、これではどうだ?」 手始めに悪は、少年の故郷を魔法の像で映し出した。 懐かしい木々の緑。暖かい人々。 それらを一瞬に焼き尽くし、灰燼に変えた。 「嘘だ、この場から村を焼くなんて、お前にそんな力はない!」 震えは隠せぬものの、気丈につぶやく声。 見透かされている。そうとも、これは心...
  • 4-289-1
    高校生にしかみえないけど実は中学生×どうみても中学生だけど本当は高校生 先輩と初めて会ったのは夏祭りだった。金魚掬いが上手な奴がいるなって興味を持って、のぞき込むと、ちょっと可愛い顔立ちで、しゃがみ込んだ浴衣の裾から白くて華奢な足がのぞいてた。 なんか一目惚れって感じで、側に行って一緒にしゃがみ込んで話し掛け、すぐに親しくなって帰り道、神社の裏手の木陰の暗闇で無理矢理キスしてた。あんまり抵抗もなかったから、そのまま押し倒して、それから何度か関係を持ってから、初めて気が付いた。 相手は高校生だったって。向こうも、背の高い俺のことを同じ高校生だと思ってたみたいで、ちょっとショック受けてたみたい。押し倒された相手が中学生だったなんて。 しかも、最初に「何年?」って聞いたら、ただ「2年。」って、それ以上、学校の話しは出なかったから後輩だと思ってたぐらいで。 でも、ホント華奢で可愛...
  • 24-399-1
    死ぬまで愛してると、死ぬほど愛してる 「死ぬまで愛してる」 そういった草野は死んだ、トラックとキスして。 馬鹿な奴。相手のドライバー居眠りじゃないかってまぁそいつも死んじゃったワケだけど。 ああもう俺は誰を恨めばいいのかとか。 誰も恨まないで良いように草野が運転手まで連れてっちゃったのかとか。 もう8年も、瞼の裏には横断歩道の黒と白、それに本来加わるはずの無いお前の赤。 フラッシュバックがなんだお前に会えるなら安いもんだ。 トラウマがなんだ、俺はまだこんなにもお前を愛してる。 「死ぬまで愛してる」 そう言った草野。 難しいことを考えるのが嫌いだった草野。 なぁおい死ぬまでって、誰がだよ。俺かよお前かよ。 お前だったらもう8年も経っちゃってさ、乾パンだって期限切れるっつうの。 それとも俺が死ぬまでかよ、なんとか言えよ草野。 お前知らねえの?俺まだあ...
  • 14-699-1
    渡せなかったプレゼント (惨敗だ……) これ以上なくみじめな気持ちに、思わずうずくまる。 暗澹たる気持ちをよりいっそう落ち込ませてくれる部屋の惨状からも、目を背ける。 昨夜はクリスマスイブ。世間的には恋人達の甘い夜、ということになっている。 彼氏いない歴二十ウン年の哀れなホモである自分だが、街のクリスマスムードについ浮かれて、 密かに片思い中の同僚、鈴木にアタックしてみる気になった。 二人で、買ってきたチキン食べて。ビール飲んで。ワイン飲んで。ケーキ食べて。 良い感じになったところでプレゼントの包みを渡す。 『プレゼント?何……香水? 男が男に香水をプレゼントだなんて、なんだか意味深だな』 『……そんな意味に取ってくれても俺、全然構わないよ……?』 流れる微妙な雰囲気、そして二人は……なんて。妄想してたのに。 鈴木にアポを取ると二つ返事。 「ああ、いい...
  • 14-399-1
    いじめっこ勇者×いじめられっこ魔法使い 紅蓮の炎が蛇のように地をはしり、轟音とともに爆ぜた。 断末魔の悲鳴をかき消すように、二発三発と容赦なく炎の塊が撃ち込まれる。 闇の眷属であった獣は苦痛に身をよじりながら地に崩れ、一抹の灰に還った。 魔法使いはロッドを掲げたまま、すこしの間無表情に火柱を見つめていたが、 はっと我に返って、すこし離れた場所にいる仲間のもとへ駆け寄った。 「ゆ、勇者さんは!?」 「生きてるわ。気を失ってるだけね」 戦士に抱きかかえられ、勇者はぐったりと目を閉じたまま身じろぎもしない。l  僧侶が呪文の詠唱をはじめるとじきに出血は止まったが、損傷は大きく、すぐには意識が戻りそうになかった。 「よかった……死んでしまったかと……思い…ました」 魔法使いは、へなへなと勇者の傍らに膝をついた。既に涙目である。 (やっぱり変わった子だわ) 戦士...
  • 18-299
    馬鹿が風邪ひいた 友達が風邪ひいたみたいでさ。 一人暮らしだから、と言ったコイツの手には、救援物資と思われる物が入っているスーパー袋が下がっていた。 「風邪なんか引かないような馬鹿なんだけどな。」 困った様に、でもどこか嬉しそうに笑って緩む頬を夜の冷たい風が撫でていく。 風邪っ引きの病人の世話がそんなに楽しいのかよ。 そのトモダチとやらに会えるのがそんなに嬉しいのかよ。 そんな言葉が喉まで上がってくる。 ああ、この道を通らなきゃ良かった。 そしたらコイツに出くわさなかった。 嬉々として他のヤツの看病に向かう姿など、見なくて済んだ。 「んじゃあオレそろそろ行くわ。アイツ瀕死みたいだし。」 踏み出された一歩が人通りの少ない道に音となって響く。 足音はゆっくりゆっくり遠ざかり、何故か途中で止まった。 「…?」 振り返ると、遠い視線の先でアイツが声を上げた。 ...
  • 22-299
    さあ、踏め!  それは突然の事だった。昼時、畑仕事をしていたおれ達の前に厳つい顔をした役人どもが現れおれ達を追い立てる様に奉行所へと集めた。  奉行を含めずらりと並ぶ役人どもの姿に、すわ何事かと戸惑うおれ達の前へと投げ置かれたのは一枚の汚れた真鍮板だった。 (絵踏じゃ……!)  泥にまみれたその表面に見える女の顔。弾かれるように隣のヨシロウへと顔を向ければ、ヨシロウは静かにじっとその板を見つめるばかりだった。 「前へ」  奉行の声に一人ずつ村人が板の前へと連れ立てられる。皆心得た様に泥まみれの足で女の顔を踏みつけた。 「次」  順調に事は済み、次にヨシロウが前へと進み出る。同心に促されるよう肩を押され板の前へとたどり着くと、ヨシロウは足を止め――跪いた。  一気に奉行所がざわめきで満たされる。 「ヨシロウ! 踏まんか!!」  思わず声を張り上げた。 「そんな...
  • 23-299
    ツンデレ×クーデレ 「誕生日、おめでとう」 「あ?」 きれいに包装された酒を睨み、恋人は若干不機嫌そうに俺を見た。 「だから、誕生日おめでとう。これは俺からの選別」 「お前、一昨日自分が言ったこと覚えてないのか?」 「何だっけ」 しばらく考えたが、さっぱり思い出せず、首を傾げた。 すると恋人は、苛立たしげに一度、テーブルを殴りつけた。 「俺の誕生日なんか、覚えてねーって言っただろ 」 「あ、うん。だって今日思い出したから」 「今日かよ!また今年もサプライズかと期待した俺のドキドキ返せ!」 確かに去年は、無駄に派手に祝ってみた。 でも、彼は結局不満しか言わなかったから、サプライズ嫌いかと思ったんだけど。 「猫耳メイドはそんなに良かったか?」 「あれは確かによ、か…ねーよ!にゃんとか語尾につけたってな、本物の猫にはかなわんからな!」 「だから、今年はシン...
  • 21-299
    パンツをかぶってみた パンツをかぶってみる事にした いつものように部屋へ入ってきたあいつは驚いた顔で俺をみつめていた 変態だとののしられるだろうか 「本当にお前は面白いな。馬鹿ばっかやって俺を笑わせようとするんだから」 彼はまた俺がやった馬鹿なことを許してくれた。 どうしてだろう。今までだってさんざん馬鹿な事をしてきて なんとか彼に嫌われようとしてきたのに。 早く俺なんか嫌いになってこの病室にくるのを止めれば良いのに 俺の余命はあと3ヶ月 今度はどうやって嫌われようか ノンケ×ノンケ
  • 28-299
    堅物と愉快犯 「どうせお前はまた面白がってやってるんだろ」 片霧朔 2-B所属 指導回数 7回目 サラサラと小奇麗な文字がプリントを走る。ついでに溜息も一つ。 「またお前か…ちょっとは大人しく出来んのか」 眼鏡を取って目元を指で揉んでる。そんなに歳食ってない筈なのに親父臭い。 「無理っすね!てかピアスぐらい良いっしょ普通」 「馬鹿モン、没収に決まってるだろ。放課後取りに来い」 「あでっ」 ファインダーで頭を叩かれた。うちの校則厳し過ぎる。校則も厳しいが、ついでに言うとこの生徒指導の金剛はもっと厳しい。 ちょっとでも校則に違反してると一瞬でアウト。見逃してなんてくれない。怒った顔がまた怖い。「鬼の金剛」なんてベタなあだ名が付くぐらい怖い。 40、50代にありがちな熱血体育系でもない28歳優男風の癖に空手有段者だと。 皆は恐ろしが...
  • 10-299
    腐れ縁 「またおなじクラスだよ~、これで10年目だぜ?晴れて二ケタ!」 「ほんとに腐れ縁だな.」 高2のクラス替え. 小学校の時からずっとおなじクラスで過ごしてきたこいつと、またおなじクラスになった. ここまで偶然が重なると、だんだん俺たちが一緒にいることが必然のように思えてくる. それ以上に最近、こいつと話すときに胸の奥に妙なわだかまりを感じる. 今の関係、要は親友に、満足しているはずなのに. …何処か胸の奥で、それ以上の気持ちを欲しがっているような気がする. 「またおなじクラスだよ~、これで10年目だぜ?晴れて二ケタ!」 わざとおどけて、俺の隣にいる親友に言ってみる. 「ほんとに腐れ縁だよな.」 そんな答えが返ってきた. 小学校の時からずっとおなじクラスで過ごしてきたこいつと、またおなじクラスになった. 正直、それがとてもうれしい. こうして...
  • 11-299
    進路の違い 部屋に入って直ぐに腕ごと引き寄せられた。ぼふ、とかたい胸に丁度僕の顔が当たる。 メガネのフレームが歪むだろ、と思ったけれど言葉にする前に口を塞がれた。 お前は知らないだろうけど、僕は舌を絡めるキスは嫌いなんだよ。 粘膜の感じが、とてもいやだ。お前が近くに居ることが気持ちいいだけで、 ほんとうはセックスなんてしたくないんだ。 目をつむるとメガネを外されて、ああ、これから多分一時間は抱き合うんだなと思うとうんざりした。 目を開けると部屋が青かった。横で裸のおっさんが眠ってる。 眠ってる顔はずいぶん幼くて、かわいいし、幸せそうだけれど 僕は彼が今幸せかどうか知らない。じっと見ている内に目を覚まして、 僕を見ないかなあと思ったけれどどうも眠りは深いみたいだ。 お前は知らないだろうけど、僕はお前とただ仲良しでいて ずっとずうっと楽しい話をしたりして過ご...
  • 20-299
    大嫌いだけど…仕方がない 「大事な話があるから早く帰ってきてね」普段わがままを言わない受けが そう言ったから今日だけは急いで帰りたかったのに、そんな時に限って ミスが発覚して、後始末に時間が掛かってしまった。 もうそろそろ日付も変わろうかという時間だし、夜に弱い受けはもう眠って しまっただろう。明日は早起きして謝ってから改めて話を聞こう。 そう思ってもう寝ているだろう受けを起こさないようにそっと家に入る。 「ただいま」 小声で言いながら靴を脱ぐと、リビングからガタガタと音をさせながら 足取りの覚束ない受けが顔を出した。 「おかえり、攻め!」 明らかに眠そうな顔で抱きつかれて、そんなにまでして待っててくれたのかと 嬉しさと申し訳なさが入り交じった気持ちで、もう一度ただいまと言った。 「遅くなってごめんな」 「いいよ、今日中に帰って来たから許してあげる。それ...
  • 25-299
    嫌いで別れたのではない男と再会 柔和な笑顔、笑うとぐっと細くなる茶色い瞳、ふわふわの黒い髪。 その何から何までに見覚えがあった。思わず言葉を失っていると、 健人はひらりと片手をあげて、やあ、と口にする。 やあ、じゃねえよ、とか、いつ帰ってきたんだ、とか、色々言いたいことはあった。 あったけれど、何より、今目の前にいる健人が本物かどうか確かめたくて、思いきり抱きしめた。 「祐君、苦しいよ」 耳元でゆるい笑い声が聞こえる。苦しめ。苦しんじまえ。 そしてそのまま俺から離れるな。 「本当に、健人?」 「……うん。本物だよ」 そう口にして、俺の腕に細い指先を絡める。すっかりやせこけてしまったらしい、 背中はくっきりと骨が浮かんでいて、ほんの少し怖かった。 「お前、やせたな」 「まあね」 「これから太らせてやる」 だから。そういって、健人の身体を剥がす。 丸っ...
  • 13-299
    orz 憎しみで人が殺せたら 「は~い、次の方どうぞ~」 『憎しみで人が殺せたら』 「え!何!今の何!?」 「屁だ」 「へぇ?あ!先輩久しぶりです!  あれ?次の患者さんって先輩?じゃあさっきのも先輩が言ったの?」 「落ち着け後輩。さっきのは俺の屁の音だ。」 「屁?おなら?」 「そうだ。数日前からおかしいんだ。だから恥を忍んで黄門科を受診しに来た。」 「はぁ…。先輩のお尻は、なんでまたあんな恐ろしい文句を吐くようになったんすか…」 「さっぱりわからん。だが屁を出す度に周囲の者が怯えてしまって困っている。 そこで思い出したのがお前のことだ。 お前は老若男女問わず、とにかく肛門を見、触ることに並々ならぬ情熱を傾けていたな、と。」 「仕事だから!代々続いた家業だから! 肛門マニアのど変態みたいな思い出し方やめて!」 「さあ後輩!肛門を見、そして触るがいい!...
  • 15-299
    執事 「坊ちゃま、そろそろお休みになられては?」 「だけどレナード、僕まだ全然眠くないよ」 「ベッドにお入りになって、目をつむってご覧なさい。じきに夢の国から小人がやって参ります」 「小人? レナードは小人を見たことがあるの?」 「えぇ、ございますよ。幼い頃はよく一緒に遊んだものです」 「へえ、僕とも遊んでくれるかな」 「もちろんですとも」 「あのね、僕、他にも遊びたい子がいるの」 「ほう、どちらのお方ですか?」 「一昨日お父様のお友達がいらしたでしょう」 「アスター様ですね」 「その1番下の子が僕と同じ歳なんだ、とっても優しくて面白い子だった」 「アスター家の末のお子様と言いますと、ドミニク様でございますね」 「僕ね、ドミと結婚するんだ。まだお父様とお母様には内緒だよ」 「おや坊ちゃま、もう婚約なされたのですか」 「うう...
  • 17-299
    なんて男らしい 窓を覆う厚手のカーテン越からのやんわりとした淡い日の光りによって、眠りの世界から浮上した。 まだ意識はぼんやりとしていて。 俺の隣には、まだ眠りの世界にいるらしい男が一人。向かい合うように、こちらを向いて眠っていた。 ふと時計に目をやるとすでに12時をまわっている。 けれど、カーテンに守られた日差しが少ないこの部屋は薄暗く、まだまだ眠気を誘う。 ぼんやりと見ていた天井から、健やかな寝息をたて眠り続けている隣の人物へと目を向けた。 綺麗な瞳は閉ざされているけれど、整った顔立ちは変わらない。 まつげ、ながい。 ちょっとばかし開かれた口が、エロい。 思い出すのは昨日の情事。なんてぼんやり思ってみた。 欲望のまま明け方までフル稼働した身体はずしりと重く、暖かなベットからは抜け出したくない。 だが、徐々に暇になってきたのも...
  • 27-299
    ひょろい×筋肉質 対戦相手は、いかにも柔道家然とした筋肉むくつけき男、金丹玖高校柔道部主将、豪山岩雄。 「ひゃあ……」 対するは柳葉日和路、廃部寸前の灯火高校柔道部を救うべく、急遽勧誘された助っ人部員だ。元バスケット補欠部員。 「どうして柳葉を主将にしたんだ……」「だって、みんな怖がっちゃって……」 顧問教師と部員が頭を抱える中、「始め!」の声が無情にもかかって試合が始まってしまった。 「ヒョロー! いや、ひよろー! ケガだけはするなー! 逃げろー!」 顧問の声が日和路に届いたかどうか。 「オラオラオラオラオラオラ!」 背こそ互角であったが三倍も違う厚みの巨体が、日和路に襲いかかる。 あっというまにいい形で襟をとられ、日和路はその名の、嵐の中の柳のようにふりまわされる。 日和路の長くて細い手が、それでも豪山の襟ににょろりと伸びて、 ...
  • 24-259-1
    受けに乳首責めされて喘ぐ攻め 喘ぎ攻めに萌える! ここはひとつ主従関係、主×従でどうだろう。下克上要素が二度美味しい! 例えば攻めは冷えた焔のような王。 自信に溢れた燃える獅子の瞳と牙を隠さず、しかし世の勝利者が必ずそうであったように、 機を窺い獣の息を殺す慎重さは凍えるほどに冷静で、ひとたび燃え上がれば勢いは破竹。 誰もが彼を敬い、恐れ、生きた伝説──怖ろしい神のように周りの人間は魅了された。 そんな君主には、古くから影のように付き従う部下が居た。 一見目立たず、有用な奏上を皆の前で行うわけでもなく、外地で華々しい戦果を挙げるわけでもない。 しかし王は彼を重用し、遠征の時には彼に内地の全権を任せ、第一の者だと言って憚らない。 古株であるだけの腰巾着。王が彼を手放さないのは、使い慣れた道具なだけに『具合が良い』のだろう……、 そのように謗る声...
  • 16-299
    攻め×攻め 「振られた」 ―またか。 思ったけれど、口にはしない。目の前にそっとコーヒーを置く。 こいつは振られるたびにここに来て、重苦しい空気をまとったまま居座る。 いっそ愚痴れば気が済むだろうに、こいつが相手を悪く言う姿を見たことがない。 だから俺から聞いていく。 「今回の相手は中学時代の後輩か」 「ああ」 「やたらと面食いだったし、お前と付き合うなんて珍しいと思ったんだ」 「優しいから、あいつは」 優しいというか、ただの気まぐれだろ。あれは。 小柄でアイドル系の容姿。少しきつめな印象を与えるが、お兄さんたちには人気があった。 それが先輩だからというだけで、こいつと付き合うとは思えない。 ガタイだけは良くて顔は平均値。そこらの大学生と変わらないキャンパスライフを送る普通の男だ。 良くも悪くも、あの華やかな奴には釣り合わない。 ...
  • 9-899-1
    シャワー中に濃厚なキスで 目が回る。 アイツを伝いながら落ちてきたお湯が顔の上を流れていく。 鼻側を通るそれに呼吸もままならない。 口の中を蹂躙しているアイツの舌。 何度も歯を立てかけ、思い止まる。 俺はアイツの声が好きだった。 馬鹿なことをした。 アイツと俺、どっちのキスが巧いかなんてどうでもいいじゃないか。 ああ、目が回る。 震えた膝がタイルに当たる寸前、アイツの腕が俺を支えた。 「……の決着はオレの勝ちだったんだぜ」 「へー、マジで?で、どうやったのよ?」 浮上した意識が最初に捉えたものはシャワー室ではない天井だった。 どうやら気を失っていた俺を運んでくれたらしい。 次いで把握した声はアイツの美声とくぐもった友人の声。 ドアの外にいるらしい友人に得意気に話している。 「いやー、シャワー中だったから後ろに回ってがーっ...
  • 9-599-1
    センター試験 「センター試験直前とはいえ、根詰めすぎじゃない?」 「んなことねーよ」 「たまには息抜きした方がイイと思うんだけど」 「私大の推薦決まってるお前に言われたくないね」 「でも、クリスマスも大晦日もお正月も」 「ウルサイ。邪魔するなら帰れ」 「やほー」 「よう。昨日は本当にあのまま帰るとは思わなかったぞ」 「あは。実はさ、これ」 「お守り?…北野天満…お前京都まで行ってきたのか!?」 「ウン」 「…暇人」 「愛が深いって言ってよ」 「ん。まぁ…ありがとう。もらっておくよ」 「それじゃ、体調崩さないようにしてよ。じゃ」 「ちょいまち」 「ん?何?手?繋ぐの?」 「ん」 「え…そりゃ、願ったりだけど、どういう風の吹き回し?珍しい」 「菅原道真よりお前の方が御利益あるだろ。俺の右手にパワー送れ、学年主席」 「君だって次席じゃん…」...
  • 24-219-1
    インテリ×インテリ  高畑は試薬の調合中なので逃げられない。いかにもうんざりといった顔で肩をすくめてみせた。 「君は変わり者だな」  お前に言われたくない、と俺は思う。 「どうしてそういう結論に至ったのか、過程を聞こうか」  その固い言い方に吹き出しそうになる。おそらくこいつは他の言語を知らない。  実験の毎日、読むのは論文ばかり、真理の探究に捧げる人生。  こいつにわかる言葉で、俺は相手をしてやる。 「検証するつもりか? 瑕疵を見つけたい?」 「錯誤があるだろう、まず前提条件がおかしい」 「前提条件はポテンシャルの範囲内です」 「……この場合、対象における適合事例ではない」 「そこは実験してみないとわからなかった、そうだろ?」  高畑の苦い顔に、俺は思わず笑い出す。 「結果はなかなか良い成績だったと思ったけど」 「それは客観的な考察じゃない!」  高...
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