*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「5-689」で検索した結果

検索 :
  • 5-689
    マイナーの哀しみ 「やっぱりマイナーなんですよ。」 そう言ってマスターはレコードに針を落とした。薄暗い店内にコーヒーの香りと 少ししゃがれたボーカルの声が満ちる。 「CDよりもレコードの方が断然音がいいのに。」 「私もそう思いますよ、だからこんな店やってるんですけど。」 そういって愛しそうにスピーカーを見る横顔がいい。 「もう少し若い方にも来ていただけるといいんですが。」 「それでここが騒がしくなるのも嫌ですよ俺は。」 「うーん、確かにそういうのはありますが…でもやっぱり この音を好きになってくれる人は増えて欲しいですね。」 自分は音を聞きに来ているのかそれとも彼に会いに来ているのか、 最近はどちらなのかよくわからない。どちらにせよ居心地のいい空間が 壊れることのないよう、ここは少しマイナーであって欲しいと思った。 ...
  • 12.5-689
    暗闇に目を覚ませ ああ君、騙されちゃいけない。 もう二度と、けしてあの男への愛しみを語ってはならない。 そうやって切なく掴む胸から、君の盲目が生まれている。 何も見えやしないだろう。こんな明るい陽光のした、君の世界は彼へ彼へと翻っているのだ。 「……それは彼を皮肉っているのですか。嘲っているのですか。彼は紳士です。世間は彼を知らない……。本来ならもっともっと上の爵位を戴いて然るべき方です。あの」 だが君は知っているだろう。 「あの、生まれつきだという弱視さえなければ、彼は」 君の言葉を詰まらせた処に真実がある。君は知っている。 彼はすでに人でない。 それでもなお君は言い募るつもりか。降り注ぐ陽光。大地を染める暗緑。今また一陣の風が行過ぎて、君は何かを願うように風の道を仰いだ。 「世界は美しい。善良な瞳を灼くものなど存在しないのだ」 「ならば灼かれます」 「堕...
  • 25-689
    顔を隠す 「えー、じゃあこんなんはどーお?『な、七瀬クンのばかぁ!!』」 ご丁寧に女声まで作ってバッと顔を手で隠すしぐさをした鹿山に 「う~ん駄目、何かありきたり、嫌いじゃないけど惜しい」 と返す僕は少女漫画家の七ツ星ひかる、本名は七瀬光 何故こいつが真夜中にこんな子芝居をしているのかというと 『後輩から突然キスされたヒロインに最適な反応が思いつかない』 という事を夕方ごろ鹿山になんとなく相談してみた所 「俺今日暇だし協力しに行っちゃおっかな~」 と自ら扱き使われに押しかけて来たからである 「いいじゃんもうありきたりでー、俺王道好きよ?」 などとぶつぶつ言っているが多分鹿山は僕が納得するまで付合うだろう この鹿山順平というやつは案外律儀な男である 例えば僕らがまだ高校生の頃、鹿山に誕生日プレゼントの希望を聞いたことがある 鹿山は今まさに良い悪戯を思い...
  • 15-689
    ここぞという時 「ここぞ!」 「うわ、何するんだ君は」 「何って…今日の星占いでここぞという時は勢いで行きなさいって言ってたんだよ」 「だからっていきなり人に飛びつく奴がありますか。ちょっと大人しくしてなさい」 「はい」 「素直か!ていうか君、占いとか信じるの?」 「信じまくりだ!そりゃあもうこの20年間ずっと占いに従って生きてきたようなもんだ」 「それは大げさかと…」 「でもさあ、ここぞって言われてもわからないもんだよな。そういうのって大抵後から気付いて後悔しねえ?」 「……あー、いや、そうかも、しれないね」 最近、自分の恋心に気付いた。この頭の悪い男に惚れているという事実に。 ずっと言うか言うまいか迷っていて、朝の占いを見て、ハッとしたのだ。 『ここぞという時は、勢いで行きましょう』 後から気付いて後悔するなんて、僕は絶...
  • 7-689
    受→攻フェラと攻→受フェラ なあなあそんなに怒るなよ 確かに勢いあまって俺の無理やり口につっこんでしゃぶらせたのも そのあと俺がお前のズボン引き落としてしゃぶっちまったのも、 おいおいおい顔が赤いぞ、かぁーわい…っいってえ!!殴るこたねえだろ!! まあそういう行為に無理に至ってしまったわけは 俺がお前のことが好きで好きで仕方なかったからで いやコレほんと、ほんとだって、信じろよ 信じてって、信じてくださいって だってお前だってそうだろ?俺のこと好きだろ? じゃなきゃ無理に突っ込んだからって あそこまでしゃぶってくれるはず・・・いってぇ!!蹴るこたねえだろ!! なー俺のこと好きだろ?好きだよな?好きって言えよ!言えってば!!嘘嘘、言ってくださいお願いします え?なに?聞こえないかった なになに?ほらもういっかい、ほらほらもっと大きな声で!! ・・・いって...
  • 1-689
    お道具プレイ お道具プレイと言う事で。 大人のおもちゃで、ヤオイ穴がぐちょぐちょになるくらい攻めると言うのもいいですが 今回は別のもので攻めてみましょう。 まずはそこら辺にある、ボールペン。  キャップのあるモノないものどちらでもよし、指より少し奥の所を攻められます。  しかも、本数を増やしていけば、穴の拡張にも役立ちます。  ただし、キャップのあるものは、キャップを穴に置き忘れてはいけません。 次は、冷蔵庫の中にある野菜。  キチンと洗ってから、中に入れましょう。  受けの穴の状態によって、さまざまな野菜で攻めるのがいいでしょう。  おすすめは、にんじん。  ちなみに、その後の処理については、各自の判断にお任せします。 最後は、ほうきの柄。  いきなりコレを突っ込むのは厳禁、受けの穴を最良の状態までほぐしてから  優しく入れていきましょう。 ...
  • 2-689
    主従関係  非常に優秀で、数多くのエリートを輩出させた名門家出身だが、その性格ゆえ王に嫌われる文官。  彼が各部署をたらい回しにされ、たどりついた場所は第一王子の教育係。  王子は正妻から生まれた王太子の有力候補であったが、  側室を愛し、側室との子である第二王子を設けた王にとっては邪魔な存在だった。  彼らはお互いがよく似通っていた。  特に「嫡男である」ことを理由に、父に折檻に近い教育を受け、  一度として父に抱きしめられ愛されなかったという点を知り、  彼らはお互いに惹かれあい、心の闇を共有しあうようになった。  「王に嫌われた者同士」お似合いだとの嘲笑を周囲から受けながら、二人は暗躍する。  外には、王子の軍師として参戦した文官とともに、数々の戦場で戦功を挙げていく。  内には、王子が父に任された国務をこなし、文官も疲れを厭わ...
  • 8-689
    接触過多な変態×常識人なツンデレ 爽やかな朝なのに、俺の気分はどんよりと重い。 校門を目前に、嫌な予感は的中する。 「おはよう」 声が聞こえると同時に、頬に生暖かい吐息がかかり背後から伸びてきた腕が体を 拘束する。 「朝からやめんか気色悪い!」 振り払おうと身を捩るも、べったりとまとわりついた体はびくともしない。 首筋に顔を埋めるな、ブレザーのボタンを外すな、息がかかるんだよ、あぁもう だから気色悪いんだっつってんだろ。 「朝から幸せだなぁ」 俺の平穏を犠牲にして幸せを感じるな。 心底嬉しそうなのが、また腹が立つ。 大体この男には、節操というものがない。 ところ構わず絡み付いてくる。 不幸なことに同じクラスなおかげで、休み時間のたびにニヤけた面をしたこいつから逃げなければいけない。 「いい加減離せ。歩けんだろーが」 「無理」 即答するな...
  • 9-689
    人間と人外 むかし、むかし、あるところに、大きな沼がありました。 沼にはいっぴきの蛇がすんでおりました。 蛇はあんまりながく生きたので、沼の近くの村人は、蛇を神さまだと思っておりました。 村人は蛇をおこらせないように、沼にちかづいたり、魚をとったりしないようにしていました。 しかし、ながいあいだに村人はだんだんと蛇のことをわすれてしまい、魚をたくさんとったり、ごみをすてたりして、沼はだんだんきたなくなりました。 蛇は村人にむかむかしたので、大雨をふらせ、村長の家をたずねて、いけにえをよこせとおどしました。 それから何日かすると、村人が沼のほとりにひとりの人間をおいていきました。 それは、とてもかわいいこどもでした。 蛇はその子をひとめですきになってしまい、あんまりはずかしくて出ていけなくなってしまいました。 雨にぬれたその子がとてもさむそうだったので...
  • 4-689
    日本史×音楽 とてもとてもベタですが高校教師というのはどうでしょう。 マイペースでつっけんどんで淡々としてる日本史先生。撫でつけ髪で、痩せている。 穏やかさんでにこにこしてていつも楽しそうだけど、どっかルナティックなところがある音楽先生。 ふわんふわんパーマで年齢が分かりにくい感じで。 教室も教官室も棟からして違う二人だけど、吹奏楽部の顧問と副顧問なんだ。 副顧問の日本史先生がたまに部活に来ると、 音楽先生はまあまあこちらへ、コーヒー飲みます?と言いながら音楽準備室に連れ込むんだ。 西日が射し込んで金色の音楽準備室で、隣の音楽室から学生たちの演奏が流れてくる。曲は『ボレロ』。 音楽先生の作ったインスタントコーヒーを飲みながら、 日本史先生は音のする方に顔を向けてたりする。 「あ、ボレロですか」 「ええ、いい練習にもなりますから」 「すきなんです、私、ボレロ...
  • 3-689
    生徒指導室 ―それはいつもの事だった。 県でもレベルの低い馬鹿高校。 名前だけの生徒指導室は、煙草や喧嘩に対するただの説教部屋だった。 「来なさい」 去年から生徒指導を任されたばかりだった。 茶色く髪を染め、ブレザーをだらしなく着た生徒を捕まえては指導室へと連れこみ、脅し文句を並べて叱りつける。 その日もポケットから覗いていた煙草を取りあげると、教師は指導室へと足を向けた。 珍しいことではない、いつもの事の筈だった。 ―そう、その扉を閉めるまでは。 「生徒指導室でこんなことされたなんて、恥ずかしくないの?」 「……ッ…」 幾度となく絶頂に追いやられ、腰が痺れたようになっている。ぬるりとした感触は恐らく中に出されたモノ。 何があったか覚えてはいるが、思い出したくもない。 オレンジ色をしていた景色はいつの間にか真っ暗だった。 普段下にし...
  • 17-689
    台風一過 「世の中には良い人っているもんだなあ」  いつも不機嫌そうにしている友人が、妙に嬉しそうにそう話しかけてきた。 頻繁にトンネルの中を走り抜けるこの電車の中は会話には不向きな場所なのだが、それにもかかわらず饒舌に話し続ける。 何でも先月の台風の時、駅で途方に暮れていた友人に傘を渡して、自分は雨の中を走り去った男がいたというのだ。 この傘を使いなさい、安物だから返さなくていいよ、とだけ言い残して。 「走って行ったってことは、予備の傘じゃなくて差してた傘か」 「多分そうだろ」  そう言ったあとで、友人は何故か、悔しそうな顔になった。 「ただなあ……俺はあの人がどこの誰かも知らないからさ、傘も返せないし、礼も言えないんだよ」  どんな男だったかと冗談半分に訊いてみれば、髪の長さから背の丈まですらすらと答えるのには少々呆れた。 進級してから半年経っても級友の顔...
  • 26-689
    浦島太郎と亀 「なーなー行こうよ、遊園地。バイト代入ったばっかりだしおごるからさ」 「何で俺がお前のおごりで遊園地行かなきゃいけないんだ。そもそもおごられる理由がない」 「え、理由? そりゃ、えーと、お礼だよ。この前宿題見せてもらったお礼。亀だって太郎ちゃんに助けてもらったら恩返しするだろ?」 「確かに俺は太郎だが、浦島太郎でも桃太郎でもない。それにいったいお前のどこが亀なんだ」 「あ、それを聞いちゃう? しかたないなー、太郎ちゃんがどうしてもっていうのなら、俺様のご立派な亀の頭を……(カチャカチャ)  いてっ、ちょ、何でいきなり殴るんだよ」 「お前が悪い」 「うー、確かにちょっと悪ノリしすぎたけどさ」 「だいたい亀の恩返しってなんだ。お前が俺を遊園地につれていって、年上の綺麗な乙姫さまでも紹介してくれるのか」 「あ、いや、それは違う。っていうかそれは困る」 「...
  • 28-689
    拘束プレイ 「すみません、これは一体どういう状況なのでしょうか」 目覚めた先輩の第一声はいつも通り冷静だった。いつも通りすぎて涙が出てくる。 「もう少し怯えるとか怒るとか混乱するとかしてくださいよ、盛り上がらないなぁ」 「以降気を付けます。それで、これは一体どういう状況なのでしょうか」 ……全然改善されてない。 「熟睡していたようなので、ちょっとベッドに拘束してみました」 「馬鹿なことを言っていないでほどいてください」 先輩の真似をしてみたが、あっさり流された。 「いやいやいや。というか、これ仕返しなんで」 「仕返し。恨まれるようなことをした覚えはありませんが」 うそつけっ! 「毎度毎度こっちの話も聞かないで好き放題やってくれて! これレイプだよレイプ!」 「大丈夫です。男同士ではただの暴行罪にしかなりません」 「そういう問題じゃないよね!? とにかく、...
  • 21-689
    真夏の夜の夢 ふたりの少年がいた。 夜の寺社だった。 真夏の夜のことだった。 ふたりの少年と青年がいた。 夜の寺社だった。 遠くで祭囃子が聞こえる。 「10年ぶりだっけ?おまえ今いくつになったんだ?」 「25だよ。同い年なんだから、わかるだろ」 「いやぁ、あんまりおっさんになっちゃってるからつい、確認のために」 「25はまだおっさんじゃねぇよ。……おまえは、変わらないな。あのときのままだ」 「あたりまえだろ。永遠の15歳だ」 ふいに祭囃子が途絶えた。 たのしい、たのしい祭の時間はもうおしまい。 「……んじゃ、そろそろ行くわ。元気でな」 「なぁ」 祭の時間はもうおしまい。 さあさみなさん帰りましょう。 あるべき場所に、帰りましょう。 「最後にひとつだけ。思い出、くれよ」 そう言った青年の目からあつい水...
  • 24-689
    ギリギリアウト  どこからが駄目で、どこからまでが大丈夫なのか。その境界線はとうにわからなくなった。 伏せられた長い睫毛が作る影を見つめながら、息を漏らして彼の頬を撫でる。 びくりと震えるその様子がまた愛おしくて、指先でそのまま首筋に触れた。 僅かに濡れた瞳がじっとこちらを見つめてくる。何かを期待しているような、はたまた怯えているような。 そんな様子がまた加虐心を煽った。どうにかおさえようとするも、自然と微笑が浮かび上がる。 「ねえ、誘ってる?」 「……」 彼は答えず、唇を僅かにかみ締めたまま視線をそらす。 茶色い鮮やかな髪が揺れた。それが俺をさらに煽ることに、きっと彼は気付いていない。 ゆっくりと近づいて、真っ白な頬にくちづける。ちゅ、とはじけるような音がした。 そのまま舌を這わせてやると、躊躇いがちに彼の低くも高くもない変わった声が吐息...
  • 20-689
    兜合わせ 「それではお二人に兜を合わせていただきましょうか」 チェリー商事の薄田課長が下衆な笑みを浮かべる。 僕の会社801デザイン(株)にとってチェリー商事は大切なお得意様であり生命線。 彼らの命令は絶対と言っても過言では無い。 絶対に逆らえない事を知っていながら薄田は僕と係長に「兜合わせをしろ」と要求している。 なんて卑劣で品性の欠片も無い行為なんだ。 「お言葉ですが薄田課長」 主任が立ち上がって薄田を見据える。 801デザイン(株)きってのキレ者、身長185センチ、鋭く研ぎ澄まされた端正なマスク、 時折見せる優しい笑顔に、女子社員だけでは無く男性社員までもが憧れる存在。 そんな主任といえど、このピンチを乗り切れる術は無いだろう。 主任は薄田のいやらしい視線を挑発するようにベルトを外し下半身を露にした。 僕...
  • 18-689
    長年の同居人が人外だと今知った 僕が初めて設楽に会ったのは十年前の雪が降る朝だった。 母に手を引かれ、長い長い静寂の中をひたすら歩き続けた。 「今日からこの人の元で暮らすんだよ」 そう言って手を離した母に、僕はただ黙って頷いた。 設楽との生活は穏やかに過ぎ、僕は中学三年生になっていた。 あまり客の来ない骨董屋でどうやって生活できるのか、母はなぜ僕を設楽に預けたのか。 僕は深く知ろうとはしなかった。 知ってしまったら今の生活が壊れるような気がして。 その日も朝から雪が降っていた。 手足が痺れるくらいの寒さに身を固くしながら、足早に家路に辿り着くと、 いつもは西日に目を細めながら『おかえり』と微笑む設楽が血の色に染まり倒れている。 他には二人、正確には一人と一匹と言ってもいいのだろうか。 大きさや形は人間に近いが、全身が鱗に覆われ、頭が二匹の蛇に...
  • 10-689
    かわいいでっかいワンコ受 「せーんぱーい!トーモせーんぱーい!!」 俺を呼ぶ脳天気な声と、いきなり背中に強い衝撃。 図体でかいんだから全力タックルだけはするなと何度言えば解るんだこの馬鹿、と怒鳴り散らしたいところだが、その前に廊下の床へとノーガードで顔面からダイブ。衝撃を受けた肺が潰れ、ぐへ、と妙な声が出た。 「やーっと追い付いたー!何で逃げるんスかトモ先輩ー!」 ぐるん、と視界反転。俯せで倒れたのを仰向けにひっくり返されたと理解できるまでに少々時間がかかった。 あぁこれはアレだ。『ダメ犬しつけ大作戦』とかの特番によく出てくる、人間大好きで落ち着きのない犬。こっちがどんな状況かなんてお構いなしにじゃれついてくるおバカな大型犬。 そんな事を考えていたせいか、目をキラキラさせて心底嬉しそうにこちらを覗き込むバカハルの頭に犬耳(レトリバー風垂れ耳仕様)を幻視した。あぁ衝撃で頭...
  • 23-689
    枕返し ドン、と決して軽くはない力が身体にぶつかる衝撃で目が覚めた。その次の瞬間にはベシャリ、と全身を強打していた。 鈍い痛みのおかげで寝ぼけていた頭が覚醒した今、はっきりと状況が理解できる。 有り体に言えば、寝ているところをベッドから落ちた。いや、落とされた、と言うのが正しい。 布団から放り出された身体は冬の余韻を大いに残す夜の寒さにぶるりと大きく震えた。 露出した肌と触れ合う、冷えきったフローリングの床は、容赦なく指先から爪先から体温を奪っていく。 冷たい床と頬を寄せ合いながら、どうしようもないほどの悲しい気持ちに苛まれた。次いで、どうしようもないほどの苛立ちが腹の底からこみ上げてくる。 この間、僅か数秒のこと。 苛立ちに突き動かされるまま、すくっと立ち上がると、枕に足を乗せて腑抜けた寝顔を晒す男を見下ろした。 もう何度目だろうか。そう、この男にベッドから蹴落と...
  • 13-689
    中年王子と老いた忠臣 「懐かしいな」 目の前にいる、誰よりも何よりも大切な御方が呟いた。 彼の目は窓の外を向いている。 自分もそこへと目を向ければ、翼を大きく広げた鳥が飛んでいるのが見えた。 この御方が幼い頃より、この時期になると飛んでいる鳥だった。 「あの鳥が欲しいと言って、お前に取りに行かせたなあ」 そうだ、今でこそこの様に立派になられたが、小さな頃は酷い我侭で一度言い出したら聞かない性格をされていのだ。 あの時は結局捕まえる事ができなくて、ぐずるこの御方の手を引いて帰ることとなった事を思い出す。 今、私の動かない手を握る彼の手は、その頃とは似ても似つかない。 ただ、暖かさだけが同じだった。 攻→明るく陽気で優しい、音楽好きな王 受→笛の名手、しかし極度のあがり症な使用人
  • 14-689
    何回やっても何回やっても○○が倒せないよ 「ッあーー!!ちくしょー!」 「うるさいよ」 「だって後ちょっとだったんだよー!ラスボス倒すの!」 「さっきからそればっか言ってね?」 「いつも後ちょっとで勝てねーの。『くいあらためよ』痛すぎだろ……」 「裏技使えば?」 「それは俺の流儀に反する。あーどうしよ、もう街にも帰れねーのに」 「なあ」 「ん?」 「何で俺らイブの晩にこんなことしてるわけ?お前はマゾいレトロゲーやって、俺は漫画読んで」 「マゾいとは失礼な。それに、そりゃお前が来いって言ったからだろ」 「で何でお前は呼ばれただけでホイホイ来るの」 「そりゃ他に予定のない俺に対する嫌味か?」 「予定がなかったのはお互い様だろ」 「それもそうだ」 「…………俺もさぁ、今やってるゲームがあるんだけど」 「うん?」 「全っ然ボスに攻撃が当たらないんだよな。...
  • 16-689
    禁じられた遊び 「いって、…あ。  お前爪切り持ってる?引っかけて割れちった」 「あぁはい、ちょっと待ってください…はい」 「ありがと」 「あー結構いってますね、痛そー」 「切んなきゃって思ってた矢先にこれだもんなぁ」 ぱちん、ぱちん。 「そういやさ、お前の爪綺麗だよな。何かぴかぴかで」 「あーこれトップコート塗ってんすよ。割れないように」 「トップコートってマニキュアみたいなやつ?あれいいの?」 「んー短いとどうなんすかねぇ。俺は伸ばしてるんで」 「そういえば右だけ長いよな、何で?長いとギター弾くのに邪魔じゃね?」 「あ、俺サークルとは別でクラシックギターやってんすよ」 「あぁ、なるほど。クラシックは指弾きなんだっけ」 「はい。だから逆に切れなくて」 「ふーん」 ぱちん、ぱちん。 「なあ、クラシックギターっつったら、アレ...
  • 19-689
    擬人化 【包丁】 これまで幾多の食材を切ってきた男。あるときは鮮やかに、あるときは素早く、 またあるときは以前の面影がなくなるほど激しく、食材たちを翻弄してきた。 刃鋭く、態度も言動も尖っているが、その裏では切れ味を衰えさせないため 自己研磨を欠かさないなど、努力を惜しまない一面がある。 「俺に触るな。怪我をするぞ」 【まな板】 目立たないが縁の下の力持ちタイプ。 包丁の激しさを受け止められるのは彼だけなのだが、肝心の包丁本人は 食材を切る事の方に意識がいっており、内心寂しい思いをしている。 料理の後はいつも風呂に入り(※殺菌消毒のため)、一人物思いにふけっている。 「この傷は、あのひとにつけられた傷……」 【圧力鍋】 情熱を語らせたら右に出るものはいない。一度熱が入ると冷めにくい。 どんなお堅い食材も、彼にかかればトロトロになってしまう。...
  • 9-689-1
    人間と人外 その青白い男は、やはり雨の日に現れた。 庭先に浮かぶぼんやりとした陽炎が、徐々に確りと姿形を成していき、 地面に落ちていくはずの雨が、いつの間にか男の肩で撥ねている。 足を地につけているのに泥濘に足跡が残らないのは何故だろう、と ぼんやり考えているうちに、男は軒先の三歩ほど先で立ち止まった。 雨に打たれるその男の肌は異様に白く、瞳の色は水底の泥を思わせる暗い色をしている。 その場に佇んだまま視線を彷徨わせる男に、俺は自分から視線を合わせてやる。 男の目があまり利かないことに気づいたのは、二月ほど前だ。 「そろそろ来る頃だと思っていた」 「決心は、ついたか」 俺の言葉を無視した唐突な問いかけにも、いい加減慣れていた。 雨に打たれながら、男は繰り返す。 「決心は、ついたか」 「いいや」 俺が首を振るのも、半ばお決まりの...
  • 6-689-1
    好きで好きでどうしようもない それとこれとは関係ない 「本当に、辞めるのか?」 「はい」 迷わず答える俺に部長は少しためらって、でも引き止めようと身を乗り出してきた。 「スタメンになれたりなれなかったりするのは、監督が相手に応じて考え抜いた結果だ。身長というネックはあるが、お前のテクはうちの部にとって…―――」 「部長。それとこれとは、関係ねーっスよ」 間接的には関わってるけど。心の中で続けた言葉は部長には聞こえない。 名門と呼ばれるこのバスケ部に不満があったわけじゃない。部長でさえ時に外されるっていうのに、スタメン落ちに今更文句を言う奴はいない。 監督の鬼のような厳しさも、本気で最強を目指してのことだと誰もが知っている。同じように突っ走っている。 だからこれはただの、いや、どうしようもないわがままだ。 「……そうか」 それ以上何も言わないで、これは俺から監督...
  • 8-689-1
    接触過多な変態×常識人なツンデレ 扉を開け放つと同時に体をやわらかな光に包まれ、視界に満ちた清冽なまぶしさに、思わず息を呑んだ。窓際ではかすみの色のカーテンが風をはらんで波打ち、その合間を小魚の泳ぐように、白衣のナースが動き回っている。室内に備えられた二台のベッドのうちの片方には、午後の日差しを一身に受けて、所在無い様子で新見が腰を下ろしていた。 お友達ですか、はいそうです。必要な物を届けてくれるよう頼んだんです。いきなりの事でも頼れる奴が他にいなくて、などと二人が会話を交わしている間、紙袋を手にぶら下げ、服部はただ新見の頭部に白く巻きついた包帯を凝視していた。 「服部、そこ、邪魔」 扉の前に立ち尽くしたその脇を、ナースが一礼し、きりきりとした足取りで去っていく。後姿をぽかんと見送っていると、「いつまでそこにいるんだ、さっさと入れ」と苛立った声がした。 「済まなかった...
  • 18-689-1
    長年の同居人が人外だと今知った パキッ 猫缶を空ける音で、俺は目を覚ました。 窓を見る。きらきらと浮き上がる埃の向こうにやや傾いた日が見えた。 俺はひとつ欠伸をするとベッドを降り、よたよたとリビングに向かった。 「おー、起きてきた。食事の気配にだけは敏感なんだね」 「うるせぇ」 「今日はちょっと高いやつだよ、ほら」 「ほらじゃねぇよ。横着してないで皿に出せ」 「えー」 「缶のまま食うなんて畜生のやることだろうが。一緒にすんな」 「……それは俺に対する挑戦?」 そう言う奴の背後には、空になった焼き鳥缶とフォークが転がっていた。 俺はため息をつきつつ、奴の使ったフォークを再利用した。 「なぁ」 「ん」 「原稿どんくらい?」 「あとちょっと」 「人間って大変だよな。かまえよ」 机に向かう奴の背に、べたりと寄りかかった。...
  • 24-689-1
    ギリギリアウト 「先生、卒業したら俺を男として見てくれるっていったよね」 卒業式も終わり、クラスの生徒ももう帰っていった教室。 教壇にのしかかって、上から押さえつけてくる石神に答えを出せない。 目を逸らして窓の外を見る。 既に夕陽も落ちて、昼夜変わらぬ桜だけがハラハラと風に飛ぶ様が見える。 「…気の、迷いだ。卒業したんだから、そんな冗談…」 「3年間。ずっと迷うわけないだろ!」 ドンと教壇を叩く肘の音に情けないくらい震える。 「石神…」 「先生、好きだ」 ぎゅうと抱き締められる腕に、応える事は出来ない。 思春期に大人に対する憧れの延長で、身近な教師に対する尊敬を錯覚する事など良くある話だ。 確かにそれは恋かもしれない。 だがしかし、一過性の熱で将来に持ち得る本当の恋人や家族を奪うような事は、教師として大人として人間として決してしてはならない。 「石神、…...
  • 22-689-1
    タチ経験だけある受け 「…えっちょっと待てお前」 「えっ?」 きゅるん、と効果音が付きそうな視線でオレを見て首を傾げたこいつは今、明らかに、俺の上に乗っかっていて。ちょっと待てどうしてこうなった。 さっきまでは普通にオレが作ったご飯食べてこいつは美味しい美味しい言ってて。そんなとこも小動物みたいで可愛いなんて考えてたオレは勿論、押し倒す気満々でベッドに向かったのに。いつの間にやらオレの手はシーツの上だ、どういう事だ。 「…えっ、だってする雰囲気じゃ…」 「いや、雰囲気はそうだけど、普通オレが上じゃね?」 体格だってオレの方がいいし、オレの方が年上だし、第一オレこっち側の経験無いし! そう訴えたらふにゃっ、て表情を崩すみたいに笑って、こいつはオレのシャツの裾に手を掛けた。 「だいじょーぶ!僕、男の人でも挿れられるから!」 いや、だから、そうじゃなくて! 反論を紡ご...
  • 23-689-1
    枕返し 「あれま、まだ起きてんのか」 深夜。能天気な声が頭上から聞こえてきて、僕は机の上の問題集から顔をあげた。 振り返ると、男が一人、まるで鉄棒にぶら下がっているかのように天井から釣り下がっている。 男の腕は天井を透過していて、その先の手までは見えない。天井裏の梁にでも掴まっているのだろうか。 ものすごく異様な光景だが、僕は動じない。もう慣れたからだ。 黙ったままの僕に痺れを切らしたのか、男は場の空気を取り繕うようににかっと笑った。 「いやはやどうも。なんかよーかい?」 「……それはこっちのセリフ」 僕は溜息をついた。 「いつから天井下りに転職したんだよ」 問えば、男は更に愉快そうに笑う。 「天井から下がれば天井下りだろうなんて、安直だねえ。奴らが聞いたら怒るよ?」 そう言って、両腕を上げたまま身体を大きく前後に揺らしたかと思うと 男は「えいっ」という掛...
  • 5-679
    医学部長×薬学部長  心地よい音を立てながらワインを注いでいく様子をソファーに座って眺めていた。 「お疲れだったな」  労いの言葉と共にグラスを置く博之に、軽く肩を竦める。 「独身の出張は疲れるさ。……研究発表の他に、旅行の支度も何もかも自分だけでしないといけないからな」  博之は、それくらい大したことないだろう、と眉を顰めた。 「私だって独身だ。学会の度に、何もかも一人で準備している」 「俺が疲れる理由はそれだけじゃない。……ただでさえ、俺は注目の的なのに」  研究内容が実に興味深いものだからと言外に含めたことに気付いて、博之は苦笑した。 だから、間合いを計るようにすっと息を吸ったことには気付かなかったのだろう。 「――女性に絶大な人気を誇るのに、今だに独身男として有名だからな」  沈黙が落ちた。  もう一杯ワインでも飲むか、と全然減っていないグラスを眺め...
  • 5-699
    謀反 たまには萌え語ってみます。 謀反の最大の萌えは「相手に気持ちが通じてなかった」 という点にあると思います。 謀反される側(A)→謀反する側(B)への片思いの場合、 AはBと互いに慕い合っていると思っているが、 BはAの気持ちを利用して謀反の機会を耽々と狙っている。 いざ謀反!となったときのAの絶望感は サディスティックな欲望を刺激してやまないでしょう。 逆に謀反する側(B)→謀反される側(A)への片思いの場合、 気持ちを受け入れてくれないAへの思いが募り 可愛さ余って憎さ百倍となったBが謀反を起こし、Aは処刑される。 自分が企てたこととはいえ、BはAを失ったことを一生後悔し続ける…。 マゾ的気質がお好きな方にも十分対応できるのではないでしょうか。 自分の中の潜在的なSM欲求を満たしてくれる謀反! 例がベタ過ぎるのは堪忍orz ...
  • 5-619
    ひろゆき@どうやら管理人 創立者であり、神でもあるあの人。 周囲の奴らは「ひろゆき」なんて呼んでいる。 勝手に呼び捨てにするなよ、と何度愚痴ったことだろう。 俺は、あの人と呼ぶのが精一杯なのに。 俺と彼とは……きっと、絶対に結ばれないのだろう。 ある意味、親子みたいなものだから。 だけど、どうしても諦めることが出来なくて、 俺はそっと呟いているんだ。 ひろゆき ラブ。 俺がその気になれば1000回も言える。 場所を変えて、何度だって言いなおせる。 あの人の為なら、自分の体を捧げることなんて何とも思わない。 好きだ、あの人……いや、ひろゆき。 ……届いてくれ、この思い!! 削除人「……たまに2ちゃんが自動的に書き込みを始めるんだよな。     何だろこれ、ウイルスか?」 あぼーん。 ………そして、2ちゃんの思...
  • 5-609
    隠れヲタ×一般人 「おい、ゴミついてるぞ(…なんて触る口実だけどな)」 「あ、先輩すいませ――ん(げッッ!!!)」 「なんだこれ、シールか?(俺今顔赤くないか? 大丈夫か?)」 「み、みたいですね。電車でついたのかなぁはははは(スクリーントーンです…あぁ、俺今顔青い気がする)」 「ふーん。ああそうだ、明日つきあえよ、おごってやるから(…今日こそ)」 「え、明日ですか?(明日は…原稿やらないと…入稿できねぇ!!) 「……。カノジョ?(そんな嫌そうな顔するなよ…凹むだろ)」 「ち、ち、違いますよ!(男ですしかも二次元です!)」 「そっか……(やっぱ、ストレートなのかなこいつ)」 「……(あれ、黙り込んじゃった。……まさかバレてないよな)」 「……(ゲイに嫌悪感持ってたらどうしよう…)」 「……(先輩って誰かに似てると思ったら○○だ……アニメキャラそっくりってすご...
  • 5-639
    女の子大好き!な受け 知り合った頃は、女なんか面倒だ、それよりお前といるほうがずっと楽しいと言っていた。 その言葉に安堵した俺を彼はどういう気持ちで見ていたんだろう。 俺といるほうが楽しいと言う言葉をどうして真に受けていたんだろう。 どうして俺はもっと焦らなかったんだろう。 どうして、俺は彼に好きだと告げられなかったんだろう。 いつからだったか、人が変わったように 彼女が欲しい、女が欲しいと繰り返す彼にどう接していいのか分からない。 笑うべきなのか、諌めるべきなのか。それとも怒るべきなのか。 俺はどの選択肢も選べない。 彼女が出来たと報告されたら。 考えただけで寒気がするこの感情は恋なのか、それとももっと違う倒錯した何かなのか。 好きだ好きだ好きだと馬鹿みたいに繰り返したら 彼は振り向いてくれるのか。 恋愛の選択肢に女じゃない俺を入れて...
  • 5-669
    別れたいわけじゃなかった 同級生同士、いつも一緒にいて、仲のいい友達で、 そういう関係になってからも友達同士の延長みたいな、 同性ってことで人から連想されがちなドロドロしたことなんて おれたちにはほとんどなかった。 学校行って、卒業してからは仕事に行って、アパートに帰って、 テレビ見て、たまには夕飯作って食ったり。 そんで風呂入って、盛り上がればエッチして、寝る。 その繰り返し。平凡で幸福なぬるま湯生活。 なにも言わなくてもお互いの気持ちがわかったし、 わかってることもお互いわかってた。 一生愛し続けるだの浮気したら殺すだの まわりまで巻き込んで大騒ぎしてるカップルよりも おれたちの方が幸せだって信じてた。実際その通りだったかもしれないのに。 あいつの帰りが遅くなったり 休日に一緒にいられないことが多くなったり。 おれはすぐに気づいた。 部...
  • 5-629
    自己中×苦労性 「なおちゃん、俺さあ、やっぱ今日はこのまま海に行くべきだと思うんだよね」 「てめえふざけんなよ、今から学校だろうが」 高校に入って一番にできた友人が、コイツ、由紀だった。 隣りの席から、ねぇねぇなんて名前なの?と呼びかけられて、にこにこと可愛く笑って、 なおちゃんかあ、俺はね由紀っていうの、よろしくーなんて言われて、俺はそれにまんまと騙されたわけだが。 可愛いやつ、だなんて思ったことを、今は少し後悔している。 ひょろっとした長身にへらへらした雰囲気のとおり、コイツはどうもいつもふらふらしていて、 どこか抜けていて、それでもって自分勝手で、人のことっつーか主に俺のことをあまり考えていないような気がする。 由紀は毎回テストの度に、なおちゃんどうしよう俺留年しちゃう!と言って俺を頼ってきて、 俺のテスト勉強プランをめちゃくちゃにし、ギリギリで赤点をクリ...
  • 5-649
    職員トイレで 『先生! エッチしてください!』 朝、職員専用トイレに入ったら、トイレのドアに赤いスプレーで、デカデカとそんな 稚拙な落書きがされていた。 県内でも最低ランクの高校で、しかも男子高校ときたら、こんなイタズラも日常茶飯事だ。 本日の職員朝礼でも、その件に関して、一切触れられることはなかった。 俺だって、あのメッセージを深刻にとらえていたわけではない。 だいたい、「先生!」と呼びかけられる人間なんて、うちの学校だけで50人を越えている。 中高一貫教育であることを考えると、さらに対象者は倍だ。 イタズラした犯人も、できれば対象者をしぼってくれれば、非常事態に対処できるのに。 そして俺は今、そんな不親切な犯人のせいか、トイレの個室に押し込まれて、男の手によって 服を脱がされようとしている。 「ちょ…っ、先生、何考えてるんですか」 「...
  • 25-669
    ハッピーエンドが怖い 冬の文芸部の部室はとても静かだ。 他の部員はとっくに帰って、向かいの席に座る菊池がシャーペンで原稿用紙を叩く、とんとんという音だけが聴こえる。 我が文芸部では、毎年冬に出す部誌での企画として、クジを引いて同じ番号だった相手と合作小説を書く。 そして俺は全く話したことのない菊池と合作を書いているのだが… 合作を書いている間も、俺は菊池と話さない。ただ原稿用紙の空白に「ここの展開どう思う?」とか「ここ伏線?」とか「食事シーン書くと腹減るよね」とか。 原稿用紙の隅に書かれた筆圧の薄い綺麗な字を見るたびに俺は。 部室を漁って読み耽った菊池の作品はどれもハッピーエンドだった。 今菊池が書いている最終章もきっと、ハッピーエンドなのだろう。 でも俺は、原稿用紙のあの字を、向かいの席に座って原稿用紙をじっと見つめる伏せた目にかかる前髪を...
  • 15-609
    親友以上恋人未満 いつも受けを叱り付ける攻め 「ただいまー。お、祐樹来てたのか」 「ん、おじゃましてます」 「すげー!洗濯おわってる」 「すげーじゃない。またあんなに洗濯物溜め込んで」 「ごめんなさーい」 「あとごみはちゃんと捨てる。なんでこんな簡単なことができないんだ」 「気を付けます、おかーさん」 「誰がおかーさんだ馬鹿」 「うぉ、ロールキャベツ!お前のロールキャベツ超好き!」 「どうせ食事もコンビニばっかなんだろ」 「……祐樹」 「んー、頭撫でられて喜ぶ歳じゃないんだけどな、俺」 「いーから撫でられときなって。」 「やめろって。なんか居心地悪い」 「気付いてない?お前、何か嫌なことあると俺んち来てロールキャベツ作んの」 「何それ。俺そんな単純じゃないんだけど」 「いいから。黙ってこうしてなさい」 「命令...
  • 25-639
    酌み交わす 「酌み交わす」……それは雑音さえもBGMとして、二人の世界がそこに存在することを意味する。 20代前半同士が仲間内の賑やかな飲み会から少し隅に外れて二人だけで酌み交わすとか。 30代中頃の隠れゲイが恋人にフラれた同僚を慰めつつ胸を締め付けられつつ平気な顔で酌み交わすとか。 30代後半同士が会社で独身なの俺らだけかー、などと言いながら少しずつ、でも確かに近くなる距離を感じながら「まさか」「もしかして」という予感に戸惑いつつ、だけど世間体やら突き進んでみるには遅すぎる年齢やらを気にしてちょっとした後ろ暗さを抱えて酌み交わすとか。 40代ノンケ同士が行きつけの飲み屋でいつものモツ煮をつまみながらキャッキャウフフと娘息子の話に花を咲かせつつむしろ二人がお花ですみたいな状況で酌み交わすとか。 50代同士幼馴染あるいは腐れ縁がお正月に家族ともども互いの家を訪れ騒がし...
  • 25-609
    汗の匂い 自分は汗の匂いは、臭いじゃなく匂いぐらいの方が萌える 体育や部活の後に、偶然受けが攻めの着替えたシャツを発見し、 「…攻めさんの匂い…」とそっと顔を近づけるのがいい その後我に返り、「俺は変態だ…」と落ち込んでもいい そのまま盛り上がってソロプレイに発展して、シャツの持ち主に見付かって 軽蔑ルートでもお仕置きルートでもいい 落ちてるシャツ一枚で無限の可能性へと広がっていく 体育のあと、スプレーをシューしてる攻めに恐る恐る 「あ、あの…シュー貸りてもいい?」(「シュー」がポイント)と聞く受けに 「じゃあ返せよ?w」とか言われながら借りて、 「攻め君とおんなじ匂いだ…」と自分の匂いにどきどきする受けが可愛い 後日、本当にスプレーを「この前借りたから…」と攻めに返せばもっと可愛い 制汗スプレーには夢も詰まっている 汗をかいた受けが攻めに抱き...
  • 25-619
    爪を切る ヒリつく背中に眉を寄せて、気の抜けた声で騒ぐ頭をはたく。一通りの作業を終えた右手を解放し、緩慢にパタパタと動く左手を取っ捕まえて、爪切りをあてがう。 「いっ、ひっ」 「……………」 「きょっ」 「……いい加減面白い声出すのやめてくんないか」 「だってなんか人に爪切られんのって思ってたよりくすぐった……いひっ」 パチンパチンと小気味良い音を立てて爪が切れる度に、短く意味の分からない悲鳴をあげてはプルプルと震える。 「あーもうやすりはやめてー」 「丸くしなきゃ意味ねえだろ、爪痕から血ぃ滲むとか尋常じゃねえぞ」 「あっちょっ、あーあーもうやっぱりゾワゾワするし…!」 「自業自得だ、我慢しろ。……ほら終わったぞ。」 「あ゙ーー…」 唸りながら枕に顔を埋めるのアホを横目に、ついでに俺も切ってしまおうかと思い爪を見る。が、すぐにそんな必要は無いと知る...
  • 15-649
    恋すてふ わが名はまだき たちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか 「忍ぶれど」 部屋の隅から唐突に声がしたので、 俺は驚きこそしなかったものの不思議に思って振り返った。 「忍ぶれど、色にいでにけりわが恋は、ものや思ふと人の問ふまで」 「お前、そんなものどこから見つけた?」 「このダンボールの中」 引越し準備のさなか、手伝いを頼んだ親友は、どこから引きずり出したのか 埃をかぶった段ボール箱を開いていた。 中には中学生時代の教科書やらノートやらが詰まっていたようである。 つまりはもう3年以上も前のものだ。 奴はその中の懐かしい国語の教科書を取り出して読んでいた。 確かに古い本やらノートはダンボールに入れてしまっていたような記憶があった。 「そりゃいいけど、片付けの最中に古い本を見つけて読み始めることくらい  最悪の行為はないぞ。それ...
  • 25-699
    あいみての のちのこころに くらぶれば 友達がたくさんいてみんなに信頼されて、成績もそこそこ良くてサッカー部のレギュラーで。 一度も話したことはないけど、同じクラスのずっと憧れだった奴。 聞こえてくる会話から好きなバンドを知って、新刊の小説を我慢してその分のおこづかいでCDを買ってみたりした。 好きなサッカーチームの話をしてたから夜中にうとうとしながらテレビで試合を見てみたりもした。 会話を交わしたこともないのに馬鹿馬鹿しい、と思いながらも、どこか奴と近づけた気がして頬が緩んだ。 先日席替えで隣の席になった時は素直に嬉しかったが、なにか変なところを見られていないかと気が気ではない毎日だ。 少しでも話せたら、友達になれたら。 いつも通りそんなことをボーっと考えながら、3時間目の国語の教科書を開く。 「やっべ、ごめん!教科書見せて!」 ガタン、と奴の机が俺の机...
  • 25-649
    お坊ちゃん×幼馴染の使用人 幼い頃、父には彼の父親があてがわれたように、僕には彼が専属の使用人として当たり前のようにあてがわれた。 普通とはかけ離れた環境で、年の近い僕たちは互いを唯一の友とした。 時には共に料理をつまみ食いし、時には共に屋敷を駆けまわり、 それぞれの父親に「あまり仲良くしすぎるな」という同じ文句で怒られる仲だった。 「よし、これでうるさい奴らはいなくなった!  せっかく父さんがいないんだ。何をする? 昔みたいにキッチンに忍び込むか?」 「……坊っちゃん、頭が痛いんじゃなかったんですか」 「そんなの、嘘に決まっているだろう」 「そこまでして、社交場に行きたくないんですか……」 そう言って、彼は深くため息をついた。 教育の結果、彼は自分の立場とやらを強く刷り込まれてしまったようで、もう僕と遊ぶことをしなくなった。 「旦那様には仮病のことは黙...
  • 15-679
    身長差 「あーっ、身長欲しい!高くなりてえ!俺より背が高い奴は滅べ!今すぐ滅べ!!」 「どうしたんです、急に」 「急じゃない、前々から思ってたのが今爆発したんだよ!」 「じゃあ、どうしたんです…今更」 「…そっちもムカツクな。つーか、お前滅べ!今すぐ破滅しろ見下ろすな! もしくはその無駄に高い身長俺に分けやがれ」 「僕が滅んだら、先輩は電信柱を相手に愚痴る怪しい人になっちゃいますけど 良いんですか?あと無駄じゃないです、バスケ部員ですし」 「俺の方が一年前からバスケ部員だ。バスケを愛してる」 「はいはい、先輩がバスケにかける情熱は尊敬してます。でもそれってモテない人の台詞っぽいですよ」 「う…そ、それを言うな!」 「…何かありました?」 「……別に、なんもねえよ」 「本当に?先輩、普段は背が低くてもバスケは出来るってマンガみたい...
  • 15-699
    別れの言葉 平日朝イチのN駅新幹線ホームは、静かだった。 三月終わりとはいえ朝はまだ冬の気配が色濃くて、キンと冷えた空気が人気の少ない静かなホームを包んでいる。 「なんで、入場料わざわざ払って、ホームにまでくるかな。...つか、こんな朝早くに見送りに来なくたっていいのに」 「えー?誰かが見送った方が『旅立ち』って感じがしね?」 「裕介はあさって出発だっけ?」 「そう。入寮日が決まってるから」 この四月から、俺は京都で裕介は北海道で、それぞれ大学生活が始まる。 小中高と同じ学校で、気がつけばいつも一緒にいて、一緒にいるのが当たり前で。 でも、俺は高校に入った頃から一緒にいるのが辛くなってきていた。 裕介のことが好きだと、俺自身が気がついてしまったから。 自覚してしまうとどうしようもなかった。 一緒にいればいたで裕介の言動に内心で一喜一憂し、離れていればいた...
  • 25-679
    恋人はサンタクロース 嬉しいな。今日の夜は僕のもとに帰ってくるあの人。 世界中のこどもの夢とあこがれでできている、赤い服と白いおひげのおじいさん。 優しい笑顔といっしょに、心のこもった贈り物をたくさんの人に分け与える。 大きな愛ですべてを包む、神様。 僕は、いつもその人のそばにいる。 あの人が普段何をしているかって、それは世界中の人がいろんな想像をめぐらす永遠の秘密。 プレゼントを用意してる? みんなに手紙の返事を書いてる? それとも休暇中? 僕は知ってる。あの人はいつもね…… 僕はお仕事を手伝う。 膨大なお仕事。気の遠くなるような。 どうやってこなしてるかって? そりゃあたくさんの人数、魔法の力、莫大な資金……なんて。 皆さんのご想像におまかせします。本当のところは誰も知らない。 誰もが知ってるおじいさん。赤い服の神様。 でもあ...
  • @wiki全体から「5-689」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索