*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレまとめ@ ウィキ内検索 / 「6-299」で検索した結果

検索 :
  • 6-299
    合併 会議では相手側の一方的な意見しか通らずに 結局俺が在籍している霧咲高校は、桃山高校に吸収合併される事になった。 桃山高校は名前も制服も変わらない。80年の伝統は、これからも残される。 霧咲高校は、俺たちが卒業したらなくなってしまうのに。 教員たちが生徒全員の家を回って謝罪していたが、 正直俺は何も聞きたくなかった。教員たちだって辛いはずだ。 それに、どんなに謝られたって霧咲高校の吸収がなくなる訳じゃない。 憧れて、自分なりに頑張って入った高校なのに。 何だか心に穴が空いたみたいだった。 学校の帰りに駅を降りると、中学の時の友達で桃山に入った川島に久し振りに会った。 「うちの高校、お前んとこと合併するよな」 「吸収だけどな」 当然の如く出てきた話題に、俺は少し複雑な思いで相槌を打つ。 こんな嫌味みたいな事、川島に言っても仕方ないのに。 「・・...
  • 16-299
    攻め×攻め 「振られた」 ―またか。 思ったけれど、口にはしない。目の前にそっとコーヒーを置く。 こいつは振られるたびにここに来て、重苦しい空気をまとったまま居座る。 いっそ愚痴れば気が済むだろうに、こいつが相手を悪く言う姿を見たことがない。 だから俺から聞いていく。 「今回の相手は中学時代の後輩か」 「ああ」 「やたらと面食いだったし、お前と付き合うなんて珍しいと思ったんだ」 「優しいから、あいつは」 優しいというか、ただの気まぐれだろ。あれは。 小柄でアイドル系の容姿。少しきつめな印象を与えるが、お兄さんたちには人気があった。 それが先輩だからというだけで、こいつと付き合うとは思えない。 ガタイだけは良くて顔は平均値。そこらの大学生と変わらないキャンパスライフを送る普通の男だ。 良くも悪くも、あの華やかな奴には釣り合わない。 ...
  • 8-299
    ラブレター 「緊褌一番(きんこんいちばん)」 ふんどしをきつく締めろ。 緩みを許さず、心を新たにし、常に 真剣勝負で物事に当たれ。 必要なのは、覚悟だ。  周囲は早朝の喧騒に満ちていた。それとは真逆に、 友人は静かな様子で言葉を紡いだ。  「昨日は、ゆきえちゃんなる人物から封筒で手紙が 届いたわけだ。  帰ってみたら、机の上に思いがけず置かれてたんだよ。 ピンクの封筒が。いやむしろ桜色だ。薄紅だ。とっさに女の 子の好きそうなリップクリームを思い浮かべたね。ほんのり 香ってきそうな、片手のひらに乗せられるような封筒だよ。 泣くかと思ったよ。この世に女神がいたもんだ。陰ながらオレに 想いを寄せる女神がさ。無論中を見たよ。分るかどれだけ 胸が震えたか。分るか何が出てきたか。ええ?」 「気に入らなかったのか」 「考えてみろ気に入るもんかいらんもんか...
  • 7-299
    HELLO ┌――――――――――――――――――――――― │ │  H へんたいで                        │  E EージャンGジャン最高ジャン的な寒すぎる   │  L ロック魂。                         │  L 六十年代に生まれていれば              │  O お前は大物だったかもしれないな          │ └――――――――――――――――――――――― ┌――――――――――――――――――――――─ │ │  H ヘヴィ級の │  E エロ可愛さには │  L ロビンフッドもお手上げさ☆ │  L ロリエロいその表情は │  O 美味しいおかずになってるZE │ └―――――――――――――――――――――――  ごとりとアイツの手からギターが落ちた。...
  • 1-299
    任侠のおっさん同士 任侠それは男の世界。そして運動部以上に厳しい上下関係と対立の中。 ほのかで、しかし確実な思慕の情を立場上隠しているんだよ… そろそろいい歳で無茶して懲役食らうのもきついが、組のメンツのためなら明日をも知れぬ命。 そんな環境の中。 お互い、チンピラ上がりのころから知ってはいる。 あのころは若かったな、と思い出話をしながら酒を酌み交わす。 こんな時間がずっと続けばいいなと思うのに、ひとたび抗争が始まれば次はいつ会えるかもわからない。 約束もない世界だから。 自分たちはもうそこそこの地位を得て下のものを世話する立場だが。 でも二人でいるときだけは「マサ」「ヤス」なんて若かったころの名前で呼び合える。 こんな日だけは、若い衆を少し遠ざけてのんびり昔話でもしようや… なんつって、どこかストイックでよくないか!! 万能後...
  • 2-299
    中国×台湾 台湾は苛立っていた。 あいつさえいなければ、俺はもっと自由にやれるのに、と。 あいつ――中国は月日の経過なんて考えもしないで、俺を縛り付ける。 俺はもう、何も知らないガキじゃないのに。 あいつに頼らねば生きていけなかった昔とは違うのに。 むしろ、そうむしろいつのまにかあいつを追い越してしまっているのに。 一人になりたい。自分の足で立ってみたい。 あいつの背に負ぶわれ、あいつの影に潜むのはもうたくさんだ。 ならば、無理やり逃げ出せばいいと誰かが言う。 武器を取り、炎を放ち、今までの恨みを散々晴らして、 奴の元から逃げればいいではないかと。 ……それが出来るなら、とうにやっている。 でもそんな大それた事出来る筈がない。 だって、結局俺はひどく姑息で臆病なのだから。 一人前になったのを認めては欲しいけれど...
  • 3-299
    愛弟子 私の元で修行をしている彼は非常に出来が悪い。 小説家になりたいと、私の元に押しかけてすでに一年以上たつが、 いまだにろくな文章がかけないのだ。 私が何度文章の書き方を指導しても一向に改善される兆候が見られない。 てにをはの使用がおかしいだけでなく、いまだに役不足と力不足の区別さえついていない。 しかし、構想だけはなぜか非常に出来がいい。 彼の頭の中に展開されている物語が素直に相手に伝わることができるのは、 その彼自身の口から吐露されるときだけなのである。 ゆえに、彼によって作られる素晴らしい物語を実際に知ることができるのは 他の誰でもない私だけなのだ。 しかし、一方で、いつか彼が小説の文章を書く際に恵まれたときを 恐れている自分も存在している。 今はまだ手に余るほどの才能を知っているのは私だけであるが、 それ...
  • 4-299
    216 ごめん、どうしても萌えたんだ  都内のオフィス街に位置する蕎麦屋は昼にはスーツ姿の男女で埋まる。  熱い掛け蕎麦を啜りながら、私は向かいに座る上司を見る。 社会人野球で鍛えたがっしりとした身体は黒のスーツに良く似合う。黒々とした短髪に浅黒い男らしい顔つきと傍から見てもいい男だと思う。 しかし気が弱い性格なためか、彼のミスを問うたりするとその顔で涙を浮かべる。  そんな彼は最後まで取っておいたきつね蕎麦のお揚げを箸で掴むと口元を緩ませていた。  ふと、来月に控えた出張の事を思い出す。 「柳川さん」 「ん、どうした?」  最後まで食べ終えた彼は満足そうにため息をつくとお茶を啜る。 「出張で泊まる宿は、露天風呂に浴衣付きで、料理をオプションで頼めるようにしませんか?」  その提案に対して、何故か慌てふためいた。ついでにお茶をテーブルに零した。いつものことなの...
  • 5-299
    アリとキリギリス ある草原に働き者のアリと歌が上手なキリギリスがいました。 キリギリスは歌は上手で姿も素晴らしいのですが、それを鼻にかけて歌ってばかり、自分の緑の綺麗な衣装を見せびらかしてばかりいました。 地味な黒い姿のアリはそんなキリギリスを横目で見ながらせっせと日々働いていました。 さて夏が過ぎ秋になり、冬の足音が近づいてきました。歌ってばかりいたキリギリスもさすがに簡単には食べ物が得られなくなり、またこれまで住んでいた居心地のいい茂みも枯れてなくなってしまいました。 困り果てたキリギリスの近くを、相変わらず働いてばかりの地味な黒いアリが通りがかりました。 「アリ君、僕に食べるものと住むところを少しばかり貸してくれないか」 地味なアリにキリギリスが声をかけたのはこれが初めてでした。 「住むところがなくなってしまっててねえ、もうすぐ冬になるだろ?君には毎晩歌を唱っ...
  • 9-299
    屈辱 生まれてきて早二十数年 運動会でも受験でも給食のあまった揚げパンの残りを貰うのも 全部勝ち野ってきた。 俺は"負け"というものを経験したことはない しかしなんてことだ 「はい。オレの勝ちですね」 たかが崩し将棋ひとつに こんな細っこい軟弱男にこの俺が"負け"ることがあるなんて こんな屈辱は生まれてきてはじめてだ 「あーーーーもう!インチキしてんだろお前」 「あなたがガサツなだけでしょう」 「お前この俺様に向かってなんて口のききかたを!!」 「うぜー」 「むっきゃーーーーーーー!!お前今すぐシメてやる」 「ハイハイ勝ってからそういうこと言ってくださいねー」 「!!!!!!!!コロス!!!」 でも、俺が駒の塊を破壊するたびの こいつの憎らしい笑顔を見るのが好きだったりす...
  • 24-299
    何考えてるのか分からない受け その1 憂い顔で物思いにふける受。 攻はそれを、「儚げで美しい」と思う。 だが、実際の受は「帰ったら洗濯しなきゃな」とか、日常的なことで憂いている。 気づかない攻は、「彼の憂いの元凶は俺が断ち切る!」とか、「俺が守ってやらねば」と決意する。 その2 たおやかでのんびり屋な受は、常日頃周りから 「なに考えてるかわからない」と言われる。 攻もその内の一人で、受が困るような事をワザと振り、反応を見ていた。 そんな受が、あるきっかけで攻に心の内を零す。 攻は、ここで初めて受への感情に気づき、その内側に秘めたものに触れた事でカッコいいとかおもったりする。 その3 受はいつも笑顔なのだが、秘密主義でミステリアスな空気を持っている。 攻はそんな受が好きなのだが、やがて秘密が多すぎる事に疑念をいだく。 ある日受は攻に呼び出され...
  • 18-299
    馬鹿が風邪ひいた 友達が風邪ひいたみたいでさ。 一人暮らしだから、と言ったコイツの手には、救援物資と思われる物が入っているスーパー袋が下がっていた。 「風邪なんか引かないような馬鹿なんだけどな。」 困った様に、でもどこか嬉しそうに笑って緩む頬を夜の冷たい風が撫でていく。 風邪っ引きの病人の世話がそんなに楽しいのかよ。 そのトモダチとやらに会えるのがそんなに嬉しいのかよ。 そんな言葉が喉まで上がってくる。 ああ、この道を通らなきゃ良かった。 そしたらコイツに出くわさなかった。 嬉々として他のヤツの看病に向かう姿など、見なくて済んだ。 「んじゃあオレそろそろ行くわ。アイツ瀕死みたいだし。」 踏み出された一歩が人通りの少ない道に音となって響く。 足音はゆっくりゆっくり遠ざかり、何故か途中で止まった。 「…?」 振り返ると、遠い視線の先でアイツが声を上げた。 ...
  • 22-299
    さあ、踏め!  それは突然の事だった。昼時、畑仕事をしていたおれ達の前に厳つい顔をした役人どもが現れおれ達を追い立てる様に奉行所へと集めた。  奉行を含めずらりと並ぶ役人どもの姿に、すわ何事かと戸惑うおれ達の前へと投げ置かれたのは一枚の汚れた真鍮板だった。 (絵踏じゃ……!)  泥にまみれたその表面に見える女の顔。弾かれるように隣のヨシロウへと顔を向ければ、ヨシロウは静かにじっとその板を見つめるばかりだった。 「前へ」  奉行の声に一人ずつ村人が板の前へと連れ立てられる。皆心得た様に泥まみれの足で女の顔を踏みつけた。 「次」  順調に事は済み、次にヨシロウが前へと進み出る。同心に促されるよう肩を押され板の前へとたどり着くと、ヨシロウは足を止め――跪いた。  一気に奉行所がざわめきで満たされる。 「ヨシロウ! 踏まんか!!」  思わず声を張り上げた。 「そんな...
  • 14-299
    ほのぼの忍者 「拙者、影に生きるもの故、歓待は無用でござるよニンニン!」 「その色々混ざってる日本語を誰から教わったのかきりきり吐け……!」 独学でござると言い切った目の前の男に泣きたくなった。 大体二メートル近い金髪碧眼が影で生きていけるほど日本はまだ無法地帯じゃない。 ネットでは堅苦しい日本語を一生懸命駆使していたはずだ。日本語の響きは綺麗で好きですと、だから間違った 使い方はしたくないと、将来のことなんて何も考えていなかったアホ高校生だったオレを言語学の道へ導いたの はいったい誰だ。お前だ。 「実は拙者、ずっと忍に憧れていたのでござるニンニン」 すいまセーン…ボクウソついてまーしたとか言い出しそうなオレの恩人は空港で出会った瞬間にもうどうしてや ろうかと思うくらい腹立つ言動を繰り返してばかりだ。何せ開口一番「拙者」だ。誰だお前。オレの初恋の相手だ。 「ほっ...
  • 10-299
    腐れ縁 「またおなじクラスだよ~、これで10年目だぜ?晴れて二ケタ!」 「ほんとに腐れ縁だな.」 高2のクラス替え. 小学校の時からずっとおなじクラスで過ごしてきたこいつと、またおなじクラスになった. ここまで偶然が重なると、だんだん俺たちが一緒にいることが必然のように思えてくる. それ以上に最近、こいつと話すときに胸の奥に妙なわだかまりを感じる. 今の関係、要は親友に、満足しているはずなのに. …何処か胸の奥で、それ以上の気持ちを欲しがっているような気がする. 「またおなじクラスだよ~、これで10年目だぜ?晴れて二ケタ!」 わざとおどけて、俺の隣にいる親友に言ってみる. 「ほんとに腐れ縁だよな.」 そんな答えが返ってきた. 小学校の時からずっとおなじクラスで過ごしてきたこいつと、またおなじクラスになった. 正直、それがとてもうれしい. こうして...
  • 11-299
    進路の違い 部屋に入って直ぐに腕ごと引き寄せられた。ぼふ、とかたい胸に丁度僕の顔が当たる。 メガネのフレームが歪むだろ、と思ったけれど言葉にする前に口を塞がれた。 お前は知らないだろうけど、僕は舌を絡めるキスは嫌いなんだよ。 粘膜の感じが、とてもいやだ。お前が近くに居ることが気持ちいいだけで、 ほんとうはセックスなんてしたくないんだ。 目をつむるとメガネを外されて、ああ、これから多分一時間は抱き合うんだなと思うとうんざりした。 目を開けると部屋が青かった。横で裸のおっさんが眠ってる。 眠ってる顔はずいぶん幼くて、かわいいし、幸せそうだけれど 僕は彼が今幸せかどうか知らない。じっと見ている内に目を覚まして、 僕を見ないかなあと思ったけれどどうも眠りは深いみたいだ。 お前は知らないだろうけど、僕はお前とただ仲良しでいて ずっとずうっと楽しい話をしたりして過ご...
  • 20-299
    大嫌いだけど…仕方がない 「大事な話があるから早く帰ってきてね」普段わがままを言わない受けが そう言ったから今日だけは急いで帰りたかったのに、そんな時に限って ミスが発覚して、後始末に時間が掛かってしまった。 もうそろそろ日付も変わろうかという時間だし、夜に弱い受けはもう眠って しまっただろう。明日は早起きして謝ってから改めて話を聞こう。 そう思ってもう寝ているだろう受けを起こさないようにそっと家に入る。 「ただいま」 小声で言いながら靴を脱ぐと、リビングからガタガタと音をさせながら 足取りの覚束ない受けが顔を出した。 「おかえり、攻め!」 明らかに眠そうな顔で抱きつかれて、そんなにまでして待っててくれたのかと 嬉しさと申し訳なさが入り交じった気持ちで、もう一度ただいまと言った。 「遅くなってごめんな」 「いいよ、今日中に帰って来たから許してあげる。それ...
  • 25-299
    嫌いで別れたのではない男と再会 柔和な笑顔、笑うとぐっと細くなる茶色い瞳、ふわふわの黒い髪。 その何から何までに見覚えがあった。思わず言葉を失っていると、 健人はひらりと片手をあげて、やあ、と口にする。 やあ、じゃねえよ、とか、いつ帰ってきたんだ、とか、色々言いたいことはあった。 あったけれど、何より、今目の前にいる健人が本物かどうか確かめたくて、思いきり抱きしめた。 「祐君、苦しいよ」 耳元でゆるい笑い声が聞こえる。苦しめ。苦しんじまえ。 そしてそのまま俺から離れるな。 「本当に、健人?」 「……うん。本物だよ」 そう口にして、俺の腕に細い指先を絡める。すっかりやせこけてしまったらしい、 背中はくっきりと骨が浮かんでいて、ほんの少し怖かった。 「お前、やせたな」 「まあね」 「これから太らせてやる」 だから。そういって、健人の身体を剥がす。 丸っ...
  • 13-299
    orz 憎しみで人が殺せたら 「は~い、次の方どうぞ~」 『憎しみで人が殺せたら』 「え!何!今の何!?」 「屁だ」 「へぇ?あ!先輩久しぶりです!  あれ?次の患者さんって先輩?じゃあさっきのも先輩が言ったの?」 「落ち着け後輩。さっきのは俺の屁の音だ。」 「屁?おなら?」 「そうだ。数日前からおかしいんだ。だから恥を忍んで黄門科を受診しに来た。」 「はぁ…。先輩のお尻は、なんでまたあんな恐ろしい文句を吐くようになったんすか…」 「さっぱりわからん。だが屁を出す度に周囲の者が怯えてしまって困っている。 そこで思い出したのがお前のことだ。 お前は老若男女問わず、とにかく肛門を見、触ることに並々ならぬ情熱を傾けていたな、と。」 「仕事だから!代々続いた家業だから! 肛門マニアのど変態みたいな思い出し方やめて!」 「さあ後輩!肛門を見、そして触るがいい!...
  • 15-299
    執事 「坊ちゃま、そろそろお休みになられては?」 「だけどレナード、僕まだ全然眠くないよ」 「ベッドにお入りになって、目をつむってご覧なさい。じきに夢の国から小人がやって参ります」 「小人? レナードは小人を見たことがあるの?」 「えぇ、ございますよ。幼い頃はよく一緒に遊んだものです」 「へえ、僕とも遊んでくれるかな」 「もちろんですとも」 「あのね、僕、他にも遊びたい子がいるの」 「ほう、どちらのお方ですか?」 「一昨日お父様のお友達がいらしたでしょう」 「アスター様ですね」 「その1番下の子が僕と同じ歳なんだ、とっても優しくて面白い子だった」 「アスター家の末のお子様と言いますと、ドミニク様でございますね」 「僕ね、ドミと結婚するんだ。まだお父様とお母様には内緒だよ」 「おや坊ちゃま、もう婚約なされたのですか」 「うう...
  • 17-299
    なんて男らしい 窓を覆う厚手のカーテン越からのやんわりとした淡い日の光りによって、眠りの世界から浮上した。 まだ意識はぼんやりとしていて。 俺の隣には、まだ眠りの世界にいるらしい男が一人。向かい合うように、こちらを向いて眠っていた。 ふと時計に目をやるとすでに12時をまわっている。 けれど、カーテンに守られた日差しが少ないこの部屋は薄暗く、まだまだ眠気を誘う。 ぼんやりと見ていた天井から、健やかな寝息をたて眠り続けている隣の人物へと目を向けた。 綺麗な瞳は閉ざされているけれど、整った顔立ちは変わらない。 まつげ、ながい。 ちょっとばかし開かれた口が、エロい。 思い出すのは昨日の情事。なんてぼんやり思ってみた。 欲望のまま明け方までフル稼働した身体はずしりと重く、暖かなベットからは抜け出したくない。 だが、徐々に暇になってきたのも...
  • 27-299
    ひょろい×筋肉質 対戦相手は、いかにも柔道家然とした筋肉むくつけき男、金丹玖高校柔道部主将、豪山岩雄。 「ひゃあ……」 対するは柳葉日和路、廃部寸前の灯火高校柔道部を救うべく、急遽勧誘された助っ人部員だ。元バスケット補欠部員。 「どうして柳葉を主将にしたんだ……」「だって、みんな怖がっちゃって……」 顧問教師と部員が頭を抱える中、「始め!」の声が無情にもかかって試合が始まってしまった。 「ヒョロー! いや、ひよろー! ケガだけはするなー! 逃げろー!」 顧問の声が日和路に届いたかどうか。 「オラオラオラオラオラオラ!」 背こそ互角であったが三倍も違う厚みの巨体が、日和路に襲いかかる。 あっというまにいい形で襟をとられ、日和路はその名の、嵐の中の柳のようにふりまわされる。 日和路の長くて細い手が、それでも豪山の襟ににょろりと伸びて、 ...
  • 19-299
    見てないようで見てる 「なんだ、もう寝ちまったのか?」 今夜はオールで飲もうって約束してアパートに呼んだのに、同僚の遠野はすっかり夢の中だ。 いつの間に運んだのか、ベッドの上に置いてあったクッションを敷いて寝息を立てている。 俺は半分ほど中身の残ったビールの缶をテーブルに置いた。 テーブルの上には空き缶や食い散らかされたつまみの残骸が散乱している。 あいつコロッケは絶対付けろって言うから、わざわざ買ってきてやったのに…言ったからには全部食えよな そう思いながら食い残しのコロッケを手づかみで口に運ぼうとするとした。 だがその手を、下から伸びてきた手が制止した。 「…食うな、俺の」 「遠野、起きたのか?」 「寝てない…ずっとみてた…」 そう言いながらも声は寝起き特有の擦れた声だ。 「嘘つけ」 そう言いながら俺は、あいている方の手で平野...
  • 23-299
    ツンデレ×クーデレ 「誕生日、おめでとう」 「あ?」 きれいに包装された酒を睨み、恋人は若干不機嫌そうに俺を見た。 「だから、誕生日おめでとう。これは俺からの選別」 「お前、一昨日自分が言ったこと覚えてないのか?」 「何だっけ」 しばらく考えたが、さっぱり思い出せず、首を傾げた。 すると恋人は、苛立たしげに一度、テーブルを殴りつけた。 「俺の誕生日なんか、覚えてねーって言っただろ 」 「あ、うん。だって今日思い出したから」 「今日かよ!また今年もサプライズかと期待した俺のドキドキ返せ!」 確かに去年は、無駄に派手に祝ってみた。 でも、彼は結局不満しか言わなかったから、サプライズ嫌いかと思ったんだけど。 「猫耳メイドはそんなに良かったか?」 「あれは確かによ、か…ねーよ!にゃんとか語尾につけたってな、本物の猫にはかなわんからな!」 「だから、今年はシン...
  • 21-299
    パンツをかぶってみた パンツをかぶってみる事にした いつものように部屋へ入ってきたあいつは驚いた顔で俺をみつめていた 変態だとののしられるだろうか 「本当にお前は面白いな。馬鹿ばっかやって俺を笑わせようとするんだから」 彼はまた俺がやった馬鹿なことを許してくれた。 どうしてだろう。今までだってさんざん馬鹿な事をしてきて なんとか彼に嫌われようとしてきたのに。 早く俺なんか嫌いになってこの病室にくるのを止めれば良いのに 俺の余命はあと3ヶ月 今度はどうやって嫌われようか ノンケ×ノンケ
  • 28-299
    堅物と愉快犯 「どうせお前はまた面白がってやってるんだろ」 片霧朔 2-B所属 指導回数 7回目 サラサラと小奇麗な文字がプリントを走る。ついでに溜息も一つ。 「またお前か…ちょっとは大人しく出来んのか」 眼鏡を取って目元を指で揉んでる。そんなに歳食ってない筈なのに親父臭い。 「無理っすね!てかピアスぐらい良いっしょ普通」 「馬鹿モン、没収に決まってるだろ。放課後取りに来い」 「あでっ」 ファインダーで頭を叩かれた。うちの校則厳し過ぎる。校則も厳しいが、ついでに言うとこの生徒指導の金剛はもっと厳しい。 ちょっとでも校則に違反してると一瞬でアウト。見逃してなんてくれない。怒った顔がまた怖い。「鬼の金剛」なんてベタなあだ名が付くぐらい怖い。 40、50代にありがちな熱血体育系でもない28歳優男風の癖に空手有段者だと。 皆は恐ろしが...
  • 5-299-2
    アリとキリギリス 兄は何もできない。 針を持てば指を刺し、鍋を持てば髪を焦がす。 「あーもう、何やってんだよ。貸せよ」 「ごめん、ごめんねケンちゃん」 そのたび、僕は横から手を出す。 仕事を奪われ、兄は突っ立って泣くばかりだ。 兄は何もできない。 兄は何もできない。 人見知りの激しい兄は友達も作れない。 それどころかいじめの対象になっているようで、毎日どこかしらに傷を負って帰る。 「ケンちゃん、」 「いいから。腕、見せて」 「ごめんね、ごめんね」 血の滲む肘に消毒を吹き掛けると、兄はか細い悲鳴をあげて泣く。 兄は何もできない。 兄は何もできない。 僕がいないと何もできない。 「あ、ケンちゃん、ケンちゃ、あぁっ」 ただひたすら、僕の下で鳴くだけ。 君はキリギリス、僕は獰猛なアリ。 ...
  • 3-299-1
    愛弟子 「どうでしょう?」  日に焼けた額に汗を光らせ、真剣な顔で振り返った加藤に、小杉は無言で頷くと 釜から取り出されたばかりの炭に屈み込んだ。  良く出来ている。加藤が、小杉の元で炭焼きを学ぶようになって、まだ一年にも満たないが 彼は飲み込みが良く、忍耐強くもあった。だからこそ、十日ほど前に仕事を終えた小杉は 次の仕事を加藤一人に任せたのだ。  小杉は、丁寧に選り分けられた炭を二本、手に取って互いに打ち付けた。軽く、乾いた音が 耳に心地よい。本当に、良く面倒を見た、いい炭だ。  代々受け継いだ釜で、五十の声を間近に聞くこれまで、ずっと一人で炭を焼いていた 小杉の元に、加藤が転がり込んで来たのは、つい昨日の事のようなのだが。 「……まあまあだな」  ようやくそれだけ言うと、小杉はシャベルを手に、釜に落ちた細かな炭を掬おうと立ち上がった...
  • 9-299-1
    屈辱 唇が離れ、二人を繋ぐ透明な糸が途切れる。 ほうっと吐いた息が妙に卑猥に聞こえて口元を押さえる。 「もっとしたい?」 その質問に少しだけ頷いて視線を合わせる。 「したいなら、「もう1回して。」って言って。」 「い……嫌だよ。」 そんな恥ずかしい台詞言えるわけが無い。 「嫌だから聞きたいんだよ。」 あいつはくすくす笑って俺の髪を梳く。 「それとも、もうしたくない?」 耳元で囁かれるくすぐったさに首をすくめる。 「……も、っかい、して。」 震える声に耐え切れずぎゅっと目をつむる。 あいつの顔が近づく気配を感じながら、今なら恥ずかしさで死ねるかもしれないと思った。 ========= 何かエロい雰囲気のを書きたかったの。 変人でサイコな攻と、それにおびえつつも離れられず、ついついチョッカイを出すツンデレ
  • 5-299-1
    アリとキリギリス 「だから、俺は言ったんだ。ちゃんと働いておけって」 再三の忠告を無視しやがった大馬鹿は、背中の上で静かにしている。 クソ重いその身体に苛付きながら、俺はぶつぶつと吐き捨てる。 「遊んでばっかいるから、こうなるんだよ、アホ」 その言葉に黙して答えない相手に、ますます苛立ちが増す。 頭上を振り仰げば、空一面に積み重なった今にも雪の降りそうな灰色の雲の山。 ああ、急いで巣に戻らなけりゃ。途中で吹雪くと厄介だ。 そのためにも、自分の足で歩くことすら出来ない無能はこの辺りに捨て置いてしまおうか。 そう思って、その場に一旦足を止める。 奴の身体を地面に放り投げて、その腹を俺の細い脚でガシガシと無造作に蹴る。 それでも、奴は自分から起きようともしない。不平すら、言わない。 「置いてくぞ、馬鹿」 もう一度、蹴る。六本の足で交互に、何度も何度も体中のあちこ...
  • 4-299-1
    216 ごめん、どうしても萌えたんだ 『出張で泊まる宿は、露天風呂&浴衣をメインにすえて、料理をオプションで頼めるようにしますか?』 部下から送られてきたメールに目を通して、はぁと思わず心から深く嘆息する。 一体、何を考えてるんだあいつは。来月のアレは出張なんだよ出張。 いくら俺とお前と二人だけでどこかに泊まるのが初めてだっつっても、所詮仕事なんだっての……。 ビジネスホテルを二部屋予約しとけって指示しておいたはずなのが、何をどうすれば露天風呂付きの旅館に変わってるんだ。 眩暈と偏頭痛がするのを無理に気力で押さえ込んで、眼前のキーボードにかたかたと返信を打ち込む。 『セクハラだ』 その素っ気無いほどに短い文面を送信すれば、二分と待たず相手からのメールが返ってくる。 それを開いて確認すれば、俺は益々頭を苛む鈍痛が強くなったのを感じる。 『じゃぁ、これで決定にします...
  • 27-299-1
    ひょろい×筋肉質 リストバンドを買いにスポーツ用品店に行ったら、 レジの前でクラスメートの峰と鉢合わせした。 峰が手にしていたのはダンベルだったので、俺は少し驚いた。 峰は、勉強は得意だが運動は苦手な典型的なインドア派で、 肌が白く体型もひょろりとしている。 女子には案外人気があるようで、クラスの子が「峰くんて中性的で素敵」 「王子様みたいだよね」と話しているのを聞いたことがる。 女の子から「王子様みたい」と言われるなんて、 ラグビー部所属で色黒がっしり系の俺からすれば少しばかり羨ましかった。 そんな峰とトレーニング器具の取りあわせは、だから全くしっくりこない。 「よぉ」 「あ、佐々原…」 「ダンベル、買うの?」 「あ、うん」 「なんか意外だな。お前がそういうものに興味持つの。スポーツとかさ、あんまりやらないじゃん?」 「うん、そうなんだけど…...
  • 24-299-1
    何考えてるのか分からない受け 《日本人は何を考えているのかわからない》 というのは、外国人にとって共通認識としてあるらしい。 わからないでもない。 日本には、はっきりと言葉にしないでも空気読めよ的な文化があるから。 俺が今いる大学の寮には様々な国から来た留学生がいる。 英語圏の人間は、世界中どこでも言葉が通じると思ってる。 日本に留学しに来てるなら、もう少し日本語の勉強して来い。 《日本人はミステリアスだ》と言って、 自分の勉強不足をこっちのせいにするなとは思う。 特に俺と同じ部屋で生活している金髪の男には声を大にして言いたい。 《コージは日本人だから仕方がないけど、たまには愛の言葉も言っていいんだよ》 じゃねーよ。 百歩譲って愛の言葉を言うにしてもお前にじゃないから。 お前には言ってるから。俺はお前が本気で嫌いだって言ってるから。 ...
  • 18-299-1
    馬鹿が風邪ひいた 吉田はバカだ。 もう中学生なのに、真冬でも半ズボンでTシャツしか着ない。 学校でも、体育の授業もないのに勝手に体操服でうろついている。先生も最近はほったらかしてる。 しかも体育があると、終わった後手洗い場で頭まで洗って、あちこちびしょぬれのまま教室に入ってくる。 去年幽霊の足跡だと思って廊下の水の跡を辿ったら、上履きの中ギュポギュポ言わせて歩いてる吉田でムカついた。 給食の時間は人一倍食べるし、余った牛乳は必ず吉田が持っていく。ゼリーの争奪戦にも出る。 吉田は雨の日でも傘を差さない。穴の開いたボロボロの運動靴で自分から水溜りに突っ込んでいく。 吉田はバカだからあんまり友達がいない。 俺以外の奴らとは喋るというよりバカにされてるか怒られてるかばっかりで、 それを吉田がいつもみたいにニコニコ笑って聞いてる所しか見たことない。(多分何言われてるか...
  • 12.5-299
    悪の総帥に惹かれる正義の味方 『やあみんな!いつも正義の味方コットンファイぶろぐを応援してくれてアリガトウ! 広報担当、マーブルコットンことこの俺、木綿沢五兄弟三男のタツヤが 今日もゲキアツな情報をお届けしちゃうっすよ~。 っっっっつー、か!!もう!!!聞いて!! コットンファイブ大 ピ ン チ ! ! ! ! ただいまストライプとギンガム、マジ喧嘩中です・・・(|||_ _)シーン… ・・・え~、とゆーのもですねぇ、この前からみんなにもちょこちょこ報告してた うちの末っ子・フラワーの初恋!?の話あったじゃん? あれの相手っていうのが、な・ん・と!! 暗 黒 真 空 連 合 総 帥 ・ ダ ー ク 市 松 大 帝   …だったことが発覚 (O口O) おっさんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! …って言ったら、「31歳はおっさん...
  • 22-299-1
    さあ、踏め! 「みんなでメシ食った時、どっちかつーとSだって言ってたじゃん」 「あー、思い出した。言ったな。確かに言った。つーかお前も、俺ドMでいいやーとか  適当ぶっこいてただろ」 「……」 「……」 「ともかく、これまで色々しておきながら、お前がサドだってことに気付かなかったのを悔やみまして」 「ちょっと外したすきに、人の部屋で全裸になったと」 「うん」 「ベッドの脚に手錠つないで待ってたと。……わざわざ買ったのかこれ」 「そう。慌てたら鍵すっ飛ばしちゃって、自力じゃ外せなくなった」 「……」 「で、そこの箱を開けて下さい。……ハイヒールです」 「見りゃわかるよ! これも買ったのか!?」 「うちの下駄箱で一番かかと高くて細かったやつ。多分上の姉ちゃんの」 「……」 「それを履いて、俺を思い切り踏んでいいんだよ」 「色々可哀そうだろ姉ちゃんが! サ...
  • 17-299-1
    なんて男らしい 話があると部屋に呼んで、小柄な体をすっぽりと胸に包んだ。 ……堪らない感情からと、顔を見ずに済むという理由のためだった。 「祐一のことは大好きだ……でも、別れよう」 髪にそっと口づけながら、とうとう言った。この3ヵ月、考え続けた結論だった。 同僚から恋人へ、想いがゴールを迎えてハッピーエンドのつもりだったが、人生はそう単純じゃなかった。 人は、恋だけに生きられない。 三十という年齢を過ぎて、社内での責任が重くなり、他の同僚が家庭を築き、 家族や親戚から圧力が高まり…… ありがちな、しかし誰でも直面する壁が俺達に立ちふさがった。 祐一はひとり息子だ。これ以上、俺に縛りつけておく訳にはいかない。 「このまま関係を続けても、俺達は幸せになれない。  このあたりが潮時だよ……素晴らし思い出をありがとう、祐一」 なんとか、重くならずに言えたと思う。し...
  • 6-229
    ⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン 『空が飛びたい』 それがあいつの口癖だった。 両手を大きく広げて、そのままの格好で『ブーン』なんて言いながら河原を駆け回る。 そんなあいつを横で見ながら、草笛なんかを吹いてぼーっとしている時間。 それは何より楽しくて、のんびりと流れる優しい時間だった。 「俺が飛ぶところを、健ちゃん絶対見ててくれよ」 そう言いながら土手を物凄い速度で下っていって、そのまま止まりきれず、 川にぼちゃんと落ちて底の石で足を怪我したりする、あいつは酷く馬鹿な奴だった。 それでも俺はあいつが好きだったし、あいつの夢も、好きだった。 応援したいと、思っていた。 次第にこの国は傾いて、暢気な夢など語れない時代になったけれど、 あいつは、自分の望みを諦めたりしなかった。 だけど、だけどだからといって。 あんな小さな飛行機に乗って、何とか片道...
  • 16-229
    最後の手紙 御国のためとは思へども、明日のことを考へると手の震へがとまらない。 字が乱れてしまふのを許して欲しい。 先刻は本当にすまない事をした。 好いてゐる、などと突然言はれても、君は困るばかりだつたらう。 本当は君に告げるつもりはなかつた。早まつた出撃のため、気が動転してゐた。 君に告げた事はどうか忘れて欲しい。 君の記憶の中には、一人の戦友としての自分がゐて欲しいと願ふ。 勝手な事ばかりを言つてすまない。 君と話したい事はまだ沢山あつた。君と行きたい場所も沢山あつた。 君を僕の故郷へ呼び、共に酒を飲み交はしたかつた。 こんなことばかり考へる僕を、君は笑つてくれ。 そして、僕が笑つて征けるやう、どうか祈つてゐて欲しい。 僕も、君の為に祈る。 死して靖国でまた、会はう。 「そろそろ本気だしていいですか?」
  • 26-229
    先生×生徒 故郷を離れて働き始めてもう5年になる。 高校を卒業してすぐに就職した会社の年上の同僚や上司は、高卒で入社した俺にも優しく厳しく接してくれて、おかげで楽しく仕事が出来ている。 先生が褒めてくれた手先の器用さを活かせる仕事が出来るだけで頑張れるのだ。 ただ、生きているとどうしても辛いことや悲しいこと、腹立たしいことはあるわけで。 特にこの季節は思い出したくないことも、思い出す。 そんな時、卒業アルバムを開いてみる。 卒業アルバム本体の写真は見ない。そこに見たい写真はない。 最後のページと裏表紙の間に挟んだ写真、それは、先生と俺が2人で撮った唯一の写真だ。 俺はまだ学生で、考えも甘くて、世間体なんてどうでも良くて。 でも先生はそうにもいかなくて。 卒業式のあとでこっそりと、セルフタイマーで撮ったツーショットの写真。 これを見るだけ...
  • 6-209
    あつくなったりさむくなったり 昨日の夜には君がいた 熱かった でも 今日の朝には君がいない 寒いなぁ 公園
  • 6-269
    グラサン×眼鏡 「だから、似合わないって言ってるじゃないですか」 直後、スッと視界が明るくなった。向かい合う眼鏡がキラキラと光った。 「眩しいって言ってるだろ」 「嘘。みんなと居る時は、かけない癖に」 キラキラと眼鏡が光る。 やめてくれ。そのサングラスを返してくれ。 眩しいんだよ。お前が。 グラサン×眼鏡
  • 6-249
    追い掛ける背中 あんたがこの街を出てったのを、俺が知ったのは2ヶ月もあとのことだった。 「あっちで夢叶えるんだってさ。」 他校の、しかも1学年下の俺とあんたの唯一の接点は共通の夢を持っていることだった。 でもあんたは俺のことなんて・・・知らないよな。 俺は知ってる、通学路で何度すれ違っただろう。 あんたが自転車で俺の横を通る。 その顔はいつも優しい。 俺は気づかれないよう振り返り、意外に細い肩の、その背中を見送った。 前を向いたまま俺の視線に気づかないあんたは・・・ その時にはもう夢を追ってたんだな。 だからあんたは卒業してすぐ出てった。 もう通学路であんたを見ることはない。 すれ違うことも・・・ 振り返ることもできない。 「俺たちも卒業したら行かねぇ?」 そう言ったのは、その話を教えてくれた友人だった。 「え?」 「だからさ、...
  • 6-259
    スクーター 午前2時に、幼馴染の浩太が、泣きながら、僕の部屋の窓を叩いた。 午前3時に、僕は浩太を、逃がすことを選択した。 そして、荷物をまとめて、僕は浩太のスクーターに乗った。 「お前は、朝になるまで、近くのカラオケボックスで待ってろ。  俺が、バイクで遠くまで行って、お前が遠くに逃げたように見せるから。  朝になったら、通勤ラッシュに紛れて、電車乗って、遠くへ逃げろ。  バイク乗り捨てたら、俺も合流するから」 2時間前に、自分が、泣いている浩太に言った言葉を、頭の中で繰り返す。 髪の色は、浩太と同じ色に変えた。 さっき入ったガソリンスタンドでは、印象に残るようなことをした。 大丈夫。大丈夫。僕はまだ、浩太を守れているはず。 午前5時。あと1時間もしたら、朝になる。 朝になったら、浩太の家の窓についた血が、外から見えて、浩太のやったことを 教...
  • 6-289
    時代劇の主役×斬られ役で  あの人の綺麗な顔が間近に迫ってくるあの瞬間、俺は息が止まり そうになる。 「おつかれさまー」 「ご苦労様です」  収録後の現場にはいつもこんな声がこだまする。俺はそんな声を 聞き流しながら、スタジオの裏にある自販機へと急いだ。。まったく、 なんで和服ってのはこんなに暑苦しいんだ。……それでも、俺は この仕事はそんなに嫌いじゃない。  俺は今、とある時代劇に出演している。……って言っても、俺みたい に名前の売れてない俳優が目立つ役なんかに起用されるわけなく、い わゆる「斬られ役」という超脇役で出演させてっもらっているわけだ。 「……ふう」  スタジオを出た瞬間、それまでこらえていた汗がどっと噴き出した。 俺は着物の袖で乱暴に顔の汗をぬぐってから自販機に近づき、小銭を 入れて、ペットボトル入りのスポーツドリンクのボタンを押し...
  • 6-219
    公園 仕事で忙しそうにしてる瀬戸を誘ったのは良いが、 特に行く場所も思い当たらずに仕方なく公園のベンチに腰かけていた。 カップルが並んで座るように置かれているベンチの一つに 男二人で座ってるんだから、かなり異様な光景だろうな。 まあ今は人がいないから良いけど。 春だと言うのに涼しい風が吹いていて、隣の瀬戸は少し身震いしている。 まだ、コンビニには豚まんが置いてある。 さっき買ったそれを袋から取り出して、ぱく付いた。 少し熱くて、火傷しそうになるのをふうふう冷ましながら食べる。 「お前も買えば良かったのに。うまいぞ」 俺は瀬戸が何かを食べるところをほとんど見た事がない。 ちゃんと食事を摂っているのだろうかと心配になるほど、青白くて細い身体。 「いらん」 瀬戸は長い脚を組んで、ふいと横を向いた。 俺は溜め息をついて、豚まんを指先...
  • 6-239
    あなたの特技は何ですか? そんなものしらねぇよ。 ぶっきらぼうな貴方。いいよ、答えなくても。 いいよ、俺を見てくれなくても。 特技なんざ考えたこともねぇ。 まだ俺を見ない。いいよ、好きだから。 いいよ、その低い声が綺麗だから。 あ、わかった。 閃いた貴方。 おまえみたいな変人を愛せるってこと! ・・・いいよ、許すよ。変人ていわれても。 無邪気に微笑む貴方が好きだから。 あなたの特技は何ですか?
  • 16-209
    「死ぬ気でがんばります!」 「えーと、ローションと、ワセリンと……ああ、先輩。スタミナドリンクなんてどうですか?」 「スタミナドリンクは要らない」 コン、コン、コン、と卓の上に置かれた物を見て、思わず俺は脱力してしまった。 「そうですか?わかりました!」 色気のかけらもない夜だ。 まあ、こいつにも俺にもそんなものを求めるのは酷だ。 「聞いていますか?先輩」 「ああ、聞いている」 「僕、今夜のためにいろいろ勉強して来たんです。本とか、ビデオとか」 「そうか」 「それもこれも、今日の初体験を成功させるためです!」 目を輝かせ、こぶしを握りつつ奴は宣言した。 「今まで散々でした……特にファーストキス」 「ああ」 確かに。歯もぶつかったわ、舌は噛むわで大変だった。 俺の人生の中では最悪の部類に入るキスだった。 「だから、今日は」 ...
  • 16-239
    「そろそろ本気だしていいですか?」 「そろそろ本気だしていいですか?」 凝ってきた肩と首を鳴らして、あくびをかみ殺した。 社長の手慰みにつきあうのも一仕事だ。 いい大人の男が、もう数年来、昼休憩のゲエムにうち興じているのだった。 昼餉をかき込み終えると、社長はニコニコと道具を出してくる。 最初のうちは碁や将棋といった馴染みの遊びだったが、 マンネリズムを感じたのか五目並べ、回り将棋、将棋崩しと手を変えてきて、 それも回数を重ねて後は、何やかんやと様々なゲエムの類をどこからか持ってきて、 時には説明書きを読み読み、試行錯誤に遊ぶようになったのだ。 西洋骨牌はポオカア、お婆抜きが定番となった。 行軍将棋をやった時は審判役がおらず、二人でやるとこれは揉めた。 野球盤はなにしろ乱暴で、あっさりと破れてしまった。 源平碁は簡単な手順ながら良くできた遊戯であった。 麻...
  • 16-219
    手を差し伸べる君 「先輩」 「………ん」 「先輩」 「…うん」 「先輩」 「……」 「先輩」 「さっきからうっさいなお前!! いいからほっとけよ!一人にさせろ!」 「いやです」 「……なんでだよ」 「だって、俺が居なかったら先輩一人で泣くじゃないですか」 「…一人で泣きたいんだけど」 「ダメです」 「なんでだよ…」 「先輩いじめて泣かしていいのは俺だけだからです」 「ドSめが」 「Sでいいから、ほら」 「…なんだその両腕は」 「俺の胸で泣いてみませんか?」 「…」 「一人で泣くと余計しんどいですよ? 心配なんです、先輩が」 「あーもう! 制服鼻水でべたべたにしてやるからな」 「クリーニング代は後で請求しますよ」 「………」 「………」 「……ありがとうな…」 「どういたしましてー」 最後の手紙
  • @wiki全体から「6-299」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索